塩酸アンブロキソールの小型徐放性製剤
【課題】嚥下機能が低下した小児や高齢者にとっても飲みやすく、かつ1日1回投与型徐放性製剤として有効性および安全性が保証された、塩酸アンブロキソールの小型化された製剤を提供する。
【解決手段】少なくとも3層の層状構造を有する顆粒であって、核粒子、核粒子を被覆する塩酸アンブロキソール、崩壊剤および結合剤を含む第1の層、水不溶性高分子および水溶性高分子を含む第2の層、ならびに塩酸アンブロキソールおよび結合剤を含む第3の層を含んでなる顆粒。
【解決手段】少なくとも3層の層状構造を有する顆粒であって、核粒子、核粒子を被覆する塩酸アンブロキソール、崩壊剤および結合剤を含む第1の層、水不溶性高分子および水溶性高分子を含む第2の層、ならびに塩酸アンブロキソールおよび結合剤を含む第3の層を含んでなる顆粒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸アンブロキソールの小型化された徐放性の顆粒、ならびにそのカプセル充填製剤および圧縮成型錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塩酸アンブロキソールは、肺表面活性物質の分泌促進作用、気道液の分泌促進作用、繊毛運動亢進作用を有し、これらが総合的に作用して喀痰喀出を示すものと考えられている薬物で、気管支炎や喘息等の際の去痰剤として、小児から高齢者まで幅広く用いられている。去痰剤は、特に喀痰機能が未発達の小児や低下している高齢者に有用で、それら小児や高齢者は嚥下機能がしばしば低いことから、去痰剤の剤形や製剤の大きさ等の飲みやすさは、服用コンプライアンスにおいて重要な要素となる。
【0003】
塩酸アンブロキソールは、その経口投与用固形製剤として、徐放性顆粒を充填してなる、1日1回投与型のカプセル剤が、既に認可され上市されている。このカプセル剤は、1日1回という観点では患者の服用コンプライアンスが高い。しかし、一般にカプセル剤は錠剤と比較して飲みにくくその主たる因子は大きさと口腔粘膜等への付着性とされる。このうちカプセルの大きさは、充填される製剤の重量に依拠する。上記塩酸アンブロキソールのカプセル剤(上市品)の製剤充填量は、非特許文献1の表3によれば、約230mgおよび160mgであり、この充填量を減らすことができれば、カプセルをさらに飲みやすい程度に小さくすることが可能となる。上市品は、速溶性顆粒と遅溶性顆粒の2種の顆粒の混合製剤であり、それら顆粒の核粒子は共通である。したがって、理論的には特許文献1に開示されているような核粒子を遅溶性層と速溶性層で同心円状に被覆する多重顆粒化(2種の顆粒の単一化)により、少なくとも重複する核粒子の重量分は減量することができると考えられた。しかし、多重顆粒は一般に調製時に遅溶性層が損なわれることが知られており、2種の顆粒の混合製剤に対して同等な溶出特性を維持するという観点で顆粒の単一化には困難がある。
【0004】
一方、塩酸アンブロキソールの錠剤も認可され、上市されている。その上市されている錠剤は、飲みやすさという観点ではカプセル剤に対して優位であるが、通常の速放性製剤であるので1日3回投与が必要な点で1日1回のカプセル剤と比較すると服薬コンプライアンスが良いとはいえない。
【0005】
以上より、塩酸アンブロキソールの1日1回投与型徐放性製剤において、飲みやすく小型化されたカプセル剤、さらには錠剤が望まれている。そしてそのようなカプセル剤もしくは錠剤化においては、上市品と同等な溶出特性を維持することが1日1回投与型の塩酸アンブロキソール製剤としての有効性および安全性を保証するために必要であり、課題である。
【0006】
塩酸アンブロキソールの徐放性製剤としては、上記した上市カプセル剤のほか、特許文献2には、エチルセルロース等の水不溶性高分子を含む添加物と均一に混合し造粒した顆粒を圧縮成型した徐放性錠剤が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されている製剤は薬物の放出機構がマトリックス型であり、上記上市カプセル剤の顆粒の膜制御型とは明確に異なる。したがって、本発明の課題のひとつである1日1回投与型の塩酸アンブロキソール製剤としての有効性および安全性を保証することが困難である。
【0007】
また、特許文献3には、不活性な核、塩酸アンブロキソールを含む内部の多層、および薬学的に活性のある物質を含まない外層からなる、塩酸アンブロキソールの膜制御型の顆粒が開示されているが、塩酸アンブロキソール単位重量あたりの顆粒重量が約186mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール)で、前述の非特許文献1に開示されている上市品(160mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール))に対して多く、またカプセルの小型化や錠剤化に関する記載や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−103012号公報
【特許文献2】特開2008−201706号公報
【特許文献3】特開平5−320044号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】PHARM TECH JAPAN Vol.22 No.8, p73-78(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、嚥下機能が低下した小児や高齢者にとっても飲みやすく、かつ1日1回投与型徐放性製剤として有効性および安全性が保証された、塩酸アンブロキソールの小型化された固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意研究した結果、速溶性と遅溶性の2種の顆粒を用いた先行技術に対し、核粒子を速溶性作用を呈する第1の層、遅溶性作用を呈する第2の層、および速溶性作用を呈する第3の層で順に被覆された、少なくとも3層の層状構造を有する顆粒という単一の顆粒を用いることにより、塩酸アンブロキソール単位重量当たりの顆粒量を低減でき、さらには1日1回投与型徐放性製剤として有効性および安全性が保証された、塩酸アンブロキソールの小型化された固形製剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
〔1〕塩酸アンブロキソールを薬効成分として含み、少なくとも3層の層状構造を有する顆粒であって、
(1)核粒子、
(2)核粒子を被覆する、塩酸アンブロキソール、崩壊剤、および結合剤を含む第1の層、
(3)水不溶性高分子および水溶性高分子を含む第2の層、
(4)塩酸アンブロキソールおよび結合剤を含む第3の層を含んでなる顆粒。
〔2〕核粒子が結晶セルロースである〔1〕記載の顆粒。
〔3〕水不溶性高分子がエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーの(メタ)アクリル酸共重合体、およびポリ酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1つである〔1〕または〔2〕記載の顆粒。
〔4〕水溶性高分子がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキシド、酢酸ビニルポビドンポリマーマトリックス、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびプルランからなる群から選択される少なくとも1つである〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の顆粒。
〔5〕顆粒の平均粒子径が300〜800μmである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の顆粒。
〔6〕第2の層と第3の層の間にさらに水溶性高分子を含む保護被膜層を有し、第3の層がさらに賦形剤および可塑剤を含む〔1〕〜〔5〕いずれかに記載の顆粒。
〔7〕第1の層および/または第2の層にさらにpH調節剤を含む〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の顆粒。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかの顆粒を含んでなる薬物徐放性固形製剤。
〔9〕錠剤またはカプセル剤である〔8〕記載の薬物徐放性固形製剤。
〔10〕〔6〕記載の顆粒のみを圧縮成型してなる薬物徐放性錠剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塩酸アンブロキソールの小型化された固形製剤により、嚥下機能が低下した小児や高齢者を含む幅広い患者にとって飲みやすく、かつ1日1回投与型の、服用コンプライアンスの高い製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1B】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1C】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1D】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1E】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1F】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1G】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1H】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2A】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2B】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す。
【図2C】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2D】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2E】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2F】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2G】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2H】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2I】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:1w/v%PSB80含有McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図3A】参考例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図3B】参考例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP2液(pH6.8)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4A】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4B】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4C】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4D】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5A】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5B】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5C】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5D】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6A】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6B】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6C】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6D】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図7】参考例5で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図8】参考例6で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図9】参考例7で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の顆粒において、塩酸アンブロキソールは、本発明の第1の層および第3の層に含まれ、その含量比は通常2〜8:1、好ましくは4〜6:1である。
【0016】
本発明の第1の層に用いられる塩酸アンブロキソールの含有率は、第1の層の総重量を基準にして、通常30〜80重量%、好ましくは50〜70重量%である。80重量%より高いと溶出特性が不良となり、30重量%未満だと塩酸アンブロキソール単位重量あたりの顆粒重量が多くなり好ましくない。
【0017】
第3の層に用いられる塩酸アンブロキソールの含有率は、最終製剤化のため圧縮成型を施すか否かによって異なり、圧縮成型を施さない場合、すなわち最終製剤が顆粒剤またはカプセル剤である場合は、第3の層に含まれる結合剤によって層を形成できる程度に高い方が好ましい。具体的には、圧縮成型を施さない場合の第3の層に用いられる塩酸アンブロキソールの含有率は第3の層の重量を基準にして80〜99重量%であり、最終製剤が錠剤の場合には1〜20重量%である。
【0018】
本発明の顆粒において、核粒子は顆粒調製時に核となりうるものである。具体的には、例えば結晶セルロース、または糖とデンプンの混合物を単独でまたは組み合わせて用いることができる。なかでも結晶セルロースが好ましい。特に平均粒径が数十〜数百μm程度の結晶セルロース球形顆粒が好ましく、例えばセルフィア<登録商標>CP−203(旭化成ケミカルズ株式会社)(粒径150〜300μm)およびセルフィア<登録商標>CP−305(旭化成ケミカルズ株式会社)(粒径300〜500μm)が挙げられる。セルフィアCP−203は顆粒の小型化や錠剤化の観点で好ましく、セルフィア305は製造性の観点で好ましい。
【0019】
本発明の顆粒において、第1の層の崩壊剤としてはトウモロコシデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプン、もしくはそれらの誘導体のデンプン類;カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、もしくは低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)等のセルロース誘導体;またはクロスポビドン、軽質無水ケイ酸、もしくは結晶セルロースを単独で、または複数種組み合わせて用いることができる。なかでも少量の水で膨潤することで崩壊作用を示すものが好ましく、特にL−HPCが好ましい。
【0020】
本発明の顆粒において、第1の層の崩壊剤の含量は、その種類や第2の層の水溶性高分子の種類と量および第2の層を被覆する際に用いる溶媒の種類等によっても異なるが、第1の層の総重量に対し5〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。
【0021】
本発明の顆粒の第1の層は、さらに結合剤を含む。かかる結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒプロメロース、もしくはポリエチレングリコールを単独で、または組み合わせて用いる。なかでもヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。結合剤の含量は、その種類にもよるが、通常第1の層の総重量に対し1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%である。
【0022】
本発明の顆粒において、第1の層による核粒子の被覆方法は特に限定されないが、特に攪拌転動流動層造粒法により塩酸アンブロキソール懸濁液または溶解液を核粒子へ噴霧して製する方法が好ましい。核粒子を第1の層で被膜することにより、速溶性顆粒が得られる。造粒時は排気相対湿度が70〜95%、好ましくは85〜95%の場合、懸濁液または溶解液中の原料がほぼ理論値通り核粒子へ積層される。排気相対湿度が70%以下の場合、積層されず粉となって飛散する割合が高くなり、排気相対湿度が95%以上の場合、凝集塊の発生する割合が高くなる。排気相対湿度が70%以下または95%以上の場合、溶出特性が不良となる。
【0023】
本発明の顆粒において、第2の層の総重量は、第2の層を被覆する際に用いる溶媒の種類、第2の層の水溶性高分子の種類やその第2の層に対する含量比にもよるが、第1の層が被覆された速溶性顆粒の重量に対して、通常10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%である。第2の層の割合が、10重量%未満の場合溶出特性が不良となり、また顆粒の物理的強度が低くなって好ましくなく、40重量%より多いと溶出特性が不良となり、また塩酸アンブロキソール単位量あたりの顆粒重量が多くなって好ましくない。
【0024】
本発明の顆粒において、第2の層の水不溶性高分子としては、例えばエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー等の(メタ)アクリル酸共重合体、またはポリ酢酸ビニルを、単独でまたは複数種組み合わせて用いることができる。なかでもエチルセルロースが好ましい。
【0025】
本発明の顆粒において、第2の層の水不溶性高分子の含量は、その種類や第1の層が被覆された顆粒の大きさ、形状、重量によっても異なるが、第2の層の総重量に対し、60〜90重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明の顆粒において、第2の層の水溶性高分子としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、もしくはヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキシド、酢酸ビニルポビドンポリマーマトリックス、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、またはプルランを、単独でまたは複数種類組み合わせて用いることができる。なかでもヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、およびポリエチレングリコールが好ましく、特にヒプロメロースとポリエチレングリコールの組み合わせが好ましい。ヒプロメロースは種々の粘度グレードが存在するが、本発明における粘度グレードとしては、20℃における2(w/w)%水溶液の粘度が約80〜約120mPa・sのグレード、約3000〜約5600mPa・sのグレード、約11250〜約21000mPa・sのグレード、または約75000〜約140000mPa・sのグレードを用いることができる。ヒプロメロースは、上記4種類いずれかの粘度グレードのものを単独で用いるか、2〜4種類を任意の重量比率で混合して使用することができる。ポリエチレングリコールは、平均分子量が異なる種々のグレードが存在するが、本発明においては例えば平均分子量4000のものを使用することができる。
【0027】
本発明の顆粒において、第2の層の水溶性高分子の含量は、その種類や第1の層の崩壊剤の種類によっても異なるが、第2の層を被覆する際に用いる溶媒の種類に大きく依存する。溶媒にジクロロメタンを含む場合は、第2の層の総重量中の水溶性高分子の含量は約30重量%が好ましい。溶媒がエタノールと水の混合液の場合は、その混合比にもよるが、ジクロロメタンの場合の1/20程度の量で良好な溶出特性となる。溶媒がエタノールと水の混合液の場合は、良好な溶出特性の観点から、第2の層の総重量に対し、通常0.5〜22重量%の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の顆粒において、第2の層による、第1の層を有する速溶性顆粒の被覆方法は特に限定されず、例えば攪拌転動流動層造粒法を用いることができる。造粒時の溶媒としてはジクロロメタン、エタノール、または水を、単独で、または複数種混合して用いることが好ましく、特にエタノールと水の混合液が好ましい。エタノールと水の混合比は7:3〜9:1が好ましい。これよりもエタノール比が低くなると溶出特性が不良となり、高くなると溶出特性と製造コストの点で好ましくない。ジクロロメタンを含む有機溶媒は、エチルセルロースの被覆溶媒として一般的なものであるが、環境負荷や人への安全性への懸念があり、製造装置上の工夫が施されているのが通常である。造粒時の溶媒としてジクロロメタンを含む場合は、本発明の顆粒における第1の層および/または第2の層、特には第1の層に、さらにpH調節剤を加えることが溶出性維持の上で好ましい。その種類は特に限定されないが、なかでもリン酸系化合物が好ましく、特にリン酸一水素ナトリウムが好ましい。その含量は塩酸アンブロキソールに対して1〜10重量%が好ましく、なかでも5〜10重量%が好ましい。速溶性顆粒を第2の層で被膜することにより、遅溶性顆粒が得られる。造粒時は排気相対湿度が20〜60%、好ましくは30〜50%の場合、溶解液中の原料がほぼ理論値通り核粒子へ積層される。排気相対湿度が20%以下の場合、積層されず粉となって飛散する割合が高くなり、排気相対湿度が60%以上の場合、凝集塊の発生する割合が高くなる。排気相対湿度が20%以下または60%以上の場合、溶出特性が不良となる。さらに厳密に溶出特性をコントロールするには顆粒水分が重要であり、造粒時の顆粒水分が2〜4%、好ましくは2.5〜3.5%の場合、一定の溶出特性が得られる。
【0029】
本発明の顆粒は、遅溶性作用を呈する第2の層の外層に、さらに速溶性作用を呈する第3の層を有する。第1〜第3の層からなる多層構造とすることにより、2種の顆粒の混合製剤である先行技術(非特許文献1)に対し、その溶出特性を維持しつつ塩酸アンブロキソール単位量あたりの顆粒重量が低減された徐放性顆粒剤、あるいはその多層顆粒である本発明の顆粒のみを一定量カプセルに充填することで徐放性カプセル剤を得ることができる。
【0030】
本発明の顆粒において、第3の層の結合剤は特に限定されないが、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒプロメロース、もしくはポリエチレングリコールを、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明の顆粒において、第3の層の結合剤の含量は、その種類によっても異なるが、第3の層の塩酸アンブロキソールが層を形成できる程度に低い方が好ましく、第3の層の総重量に対し、通常1〜20重量%である。
【0032】
本発明の顆粒において、第3の層による第2の層を有する顆粒の被覆方法は特に限定されず、例えば攪拌転動流動層造粒法を用いることができる。造粒時は排気相対湿度が60〜80%、好ましくは65〜75%の場合、懸濁液または溶解液中の原料がほぼ理論値通り核粒子へ積層される。排気相対湿度が60%以下の場合、積層されず粉となって飛散する割合が高くなり、排気相対湿度が80%以上の場合、凝集塊の発生する割合が高くなる。
【0033】
本発明の顆粒を圧縮成型して錠剤とする場合は、第2の層と第3の層の間にさらに保護被膜層を有し、第3の層にさらに賦形剤および可塑剤を配合することが好ましい。この保護被膜層は、第2の層の溶出に関わる特性および機能を変化させずに、本発明の顆粒を圧縮成型する際の圧縮力に耐えうるように顆粒を保護する役割を有する。したがって、本発明で使用しうる保護被膜は、この役割を果たしうるものであれば特に限定されないが、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、もしくはゼラチン等の水溶性高分子;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーもしくはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等の酸可溶性高分子;硬化油類;脂肪アルコール類;ポリオレフィン類;グリセリド類;または例えば脂肪酸類を、単独でまたは組み合わせて用いることができる。なかでもヒドロキシプロピルセルロースまたはポリエチレングリコールを単独で、または組み合わせて用いることが好ましい。保護被膜層にはこれら必須成分の他に、可塑剤等の成分を配合することができる。ここで、保護被膜の被覆方法は特に限定されず、例えばこれら成分の水溶液を第2の層を有する顆粒に噴霧すればよい。
【0034】
第3の層にさらに賦形剤および可塑剤を配合することによって、それらを第3の層に含ませずに圧縮成型して錠剤とする場合に比べて、製造時の錠剤毎の塩酸アンブロキソールの含量の偏析を抑制できる。また、圧縮成型時に賦形剤との混合を要しないので圧縮成型工程が容易となる。賦形剤としては特に限定されないが、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、もしくはエリスリトール等の糖類;小麦デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファ化デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、もしくはカルボキシメチルスターチ等のデンプン類;結晶セルロース等のセルロース類;または軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、もしくはリン酸カルシウム等の無機塩類等を、単独でまたは複数種類組み合わせて用いることができる。なかでもマンニトールが好ましい。可塑剤としては特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリソルベート80、またはモノステアリン酸グリセリンを、単独でまたは複数種類組み合わせて用いることができる。なかでもポリエチレングリコールが好ましい。
【0035】
本発明の顆粒は、その平均粒子径が300〜800μm、さらには300〜600μm、さらには300〜500μmであり、先行技術(非特許文献1における1200μmまたは800μm、特許文献3における600〜1500μm)に対して小さい。なお、本発明における平均粒子径は、第15改正日本薬局方 一般試験法3.04粒度測定法 第2法ふるい分け法に従い、直径76mm目開き600、500、425、355、300μmのふるいを用いて粒度分布を測定し、対数正規確率紙を用い算出したものである。
【0036】
本発明の顆粒によれば、塩酸アンブロキソール単位重量あたりの顆粒重量は50〜150mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール)であり、先行技術(非特許文献1における230mgまたは160mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール)、特許文献3における約310mg(顆粒)/75mg(塩酸アンブロキソール))に対し減量が達成される。
【0037】
本発明の顆粒を圧縮成型して錠剤とする方法は特に限定されず、汎用機器で製造可能であり、本発明の顆粒を、滑沢剤として例えば微量のステアリン酸マグネシウム、タルク、またはモノステアリン酸グリセリンを加えて打錠してもよい。錠剤は、通常用いられる方法により、さらにフィルムコーティングや糖衣錠とすることができる。
【0038】
本発明の顆粒は、そのまま顆粒剤として、あるいはカプセルに充填してカプセル剤とすることができる。カプセル剤とする場合、塩酸アンブロキソールの用量に応じて充填量を調整すればよく、例えば用量が45mgの場合は本発明の顆粒50〜150mg、必要に応じて微量の滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムとともに、4号または5号カプセルに充填して製することができる。
【0039】
本発明の製剤が達成すべき、1日1回投与型の塩酸アンブロキソール徐放性製剤としての有効性および安全性が保証された溶出特性は、後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインに従って実施したとき、標準製剤としての上市品(ムコソルバン(登録商標)Lカプセル)の溶出率30%、50%、80%付近の3時点での溶出率が、標準品の溶出率に対し±15%の範囲内(類似性規格の範囲内)、好ましくは±10%の範囲内(同等性規格の範囲内)である。
【実施例】
【0040】
本実施例で使用した薬剤、および機器等の詳細は、以下の通りである。
塩酸アンブロキソール;Boehringer Ingelheim製
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC):日本曹達(株)製、商品名:HPC−L
低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC):信越化学工業(株)製、商品名:LH−31
結晶セルロース粒:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:セルフィアCP−203
ヒプロメロース:信越化学工業(株)製、商品名:TC−5 R
マクロゴール4000(PEG4):日本油脂(株)製
マクロゴール6000(PEG6):日本油脂(株)製、商品名:マクロゴール6000P
エチルセルロース:The Dow Chemical Company製、商品名:ETHOCEL STANDARD 10 PREMIUM
クエン酸トリエチル:森村商事(株)製、商品名:シトロフレックス2
複合型造粒コーティング装置:フロイント産業(株)製、スパイラフローSFC−50
混合機:明和工業(株)製、クロスロータリーミキサーCM−10
ロータリー式打錠機:(株)畑鐵工所製、HT−AP6SS−U
【0041】
〔実施例1〕カプセル剤の製造と溶出性評価
<速溶性顆粒>
精製水45.950kgに塩酸アンブロキソール11.484kgを加えてホモジナイズした。この操作を4回繰り返し、合計229.736kgの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水83.700kgにヒドロキシプロピルセルロース1.608kgを加えて溶解した。この操作を4回繰り返し、合計341.232kgのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。塩酸アンブロキソール懸濁液28.200kgとヒドロキシプロピルセルロース溶液41.850kgを混ぜ合わせて均一な懸濁液とした後、低置換ヒドロキシプロピルセルロース3.079kgを分散した。この操作を8回繰り返し、合計585.032kgの主薬レイヤリング(第1の層コーティング)液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、結晶セルロース粒21.000kgを核粒子として、主薬レイヤリング液567.650kgを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0042】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール((株)ワコーケミカル:本実施例において以下同じ)31.460kgにヒプロメロース1.027kgおよび0.216kgのマクロゴール4000を分散した後、精製水7.870kgを加えて溶解し、40.573kgのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。精製水7.712kgにエチルセルロース1.665kgおよびクエン酸トリエチル0.126kgを分散した後、無水エタノール30.850kgを加えて溶解した。この操作を4回繰り返し、合計161.444kgのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。ヒプロメロース・マクロゴール溶液9.950kgとエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液40.361kgを混ぜ合わせて均一な溶液とした。この操作を4回繰り返し、合計201.244kgの徐放膜(第2の層)コーティング液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、速溶性顆粒40.000kgに徐放膜コーティング液197.250kgを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0043】
<第3の層を有する顆粒>
第1の層に含まれる主薬と第3の層に含まれる主薬の比が5:1になるように積層する量を補正して製造した。
精製水11.570kgにヒドロキシプロピルセルロース0.326kgを加えて溶解し、ヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水14.590kgに塩酸アンブロキソール3.647kgを加えてホモジナイズし、塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。ヒドロキシプロピルセルロース溶液11.896kgと塩酸アンブロキソール懸濁液17.450kgを混ぜ合わせて均一な懸濁液とし、29.346kgの外層主薬レイヤリング液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、遅溶性顆粒40.000kgに外層主薬レイヤリング液27.500kgを噴霧・積層し、第3の層を有する顆粒を製した。
【0044】
<平均粒子径>
得られた第3の層を有する顆粒を、第15改正日本薬局方 一般試験法3.04粒度測定法 第2法ふるい分け法に従い、直径76mm目開き600、500、425、355、300μmのふるいを用い粒度分布を測定し、対数正規確率紙を用い平均粒子径を算出したところ473μmであった。
【0045】
<カプセル充填>
1カプセル当たりの主薬含有量が45mgになるように充填量を設定した。第3の層を有する顆粒105.17mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表1に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、平成9年12月22日医薬審第487号医薬安全局審査管理課長通知・別添「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」の第3章B.I.2.に示す基準に従って実施した。溶出プロファイルを図1A〜図1Hに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、全て類似性規格の範囲内であった。なお、図1中に示される類似性規格上限/下限は、ムコソルバン(登録商標)Lカプセルの溶出率に対し±15%の範囲内を示すものであり、以下の実施例においても同様である。
【0048】
〔実施例2〕錠剤の製造と溶出性評価
<速溶性顆粒>
実施例1で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0049】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール((株)ワコーケミカル:本実施例において以下同じ)31.460kgにヒプロメロース1.027kgおよび0.216kgのマクロゴール4000を分散した後、精製水7.870kgを加えて溶解し、40.573kgのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。精製水7.720kgにエチルセルロース1.665kgおよびクエン酸トリエチル0.126kgを分散した後、無水エタノール30.850kgを加えて溶解した。この操作を4回繰り返し、合計161.444kgのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。ヒプロメロース・マクロゴール溶液9.950kgとエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液40.361kgを混ぜ合わせて均一な溶液とした。この操作を4回繰り返し、合計201.244kgの徐放膜(第2の層)コーティング液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、速溶性顆粒40.000kgに徐放膜コーティング液197.250kgを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0050】
<保護被膜層を有する顆粒>
精製水52.650kgに5.849kgのマクロゴール6000を加えて溶解した。この操作を2回繰り返し、合計116.998kgの保護被膜層コーティング液を得た。複合型造粒コーティング装置を用いて第2の層を有する顆粒40.000kgに保護被膜層コーティング液111.450kgを噴霧・コーティングし、保護被膜層を有する顆粒(緩衝膜被覆顆粒)を製した。
【0051】
<第3の層を有する顆粒>
第1の層に含まれる主薬と第3の層に含まれる主薬の比が5:1になるように積層する量を補正して製造した。
精製水9.300kgにヒドロキシプロピルセルロース0.261kgを加えて溶解し、9.561kgのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水11.720kgに塩酸アンブロキソール2.929kgを加えてホモジナイズし、14.649kgの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。ヒドロキシプロピルセルロース溶液9.561kgと塩酸アンブロキソール懸濁液14.010kgを混ぜ合わせて均一な懸濁液とし、主薬レイヤリング液を得た。精製水95.550kgにヒドロキシプロピルセルロース3.039kgおよび2.199kgのマクロゴール6000を加えて溶解し、100.788kgのヒドロキシプロピルセルロース・マクロゴール溶液を得た。ヒドロキシプロピルセルロース・マクロゴール溶液32.060kgにD−マンニトール(三菱商事フードテック(株)、商品名:マンニットP)11.359kgを加えて均一な懸濁液とした。この操作を3回繰り返し、合計130.257kgの圧縮成形層レイヤリング液を得た。複合型造粒コーティング装置を用いて緩衝膜被覆顆粒40.000kgに主薬レイヤリング液22.050kg、圧縮成形層レイヤリング液124.050kgの順に噴霧・積層し、第3の層を有する顆粒を製した。
【0052】
<打錠>
1錠当たりの主薬含有量が45mgになるように錠剤重量を設定した。混合機を用いて、第3の層を有する顆粒6000.0gおよびステアリン酸マグネシウム(MALLINCKRODT)1.2gを混合後、ロータリー式打錠機を用いて圧縮成形した。成形条件は、錠剤重量 228mg、Φ8.0mm12Rの杵で硬度約58.8Nとなるよう打錠した。表2に1錠当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
<溶出性評価>
打錠において製した錠剤について溶出試験を行った。試験は、平成9年12月22日医薬審第487号医薬安全局審査管理課長通知・別添「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」の第3章B.I.2.に示す基準に従って実施した。溶出プロファイルを図2に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、図2A〜図2Iに示す全ての試験において類似性規格の範囲内であった。
【0055】
以下の参考例1〜7においては、調製上の便宜性より、速溶性顆粒(第1の層を有する顆粒)と遅溶性顆粒(速溶性顆粒に第2の層を被覆した顆粒)との混合顆粒をカプセルに充填したものを、本発明の単一の顆粒と同等なものとして溶出性の評価に用いた。本発明の顆粒において、第3の層は速溶性であることから第3の層の主薬は0次溶出するので、速溶性顆粒と遅溶性顆粒との混合顆粒をカプセル充填したものは、その遅溶性顆粒に第3の層を被覆した顆粒を圧縮成形して得られる錠剤と溶出性が同等になるためである。そのため、混合顆粒に用いられる遅溶性顆粒における、第1の層および第2の層の各成分およびその配合量は、そのまま本発明の3層の層状構造を有する顆粒における第1の層および第2の層の各成分およびその配合量であるとみなすことができる。混合顆粒に用いられる速溶性顆粒における各成分およびその配合量については、その速溶性顆粒から核粒子と崩壊剤を除いたものを本発明の3層の層状構造を有する顆粒における第3の層の成分およびその配合量とみなすことができる。
【0056】
〔参考例1〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層被覆時の溶媒がジクロロメタンでpH調節剤を含むもの
<速溶性顆粒>
精製水1155.1gに塩酸アンブロキソール291.7gを加えてホモジナイズし、1446.8gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水427.0gにヒドロキシプロピルセルロース27.2gを加えて溶解し、454.2gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水1164.5gに無水リン酸一水素ナトリウム(太平化学産業(株))19.4gを加えて溶解した後、低置換ヒドロキシプロピルセルロース75.9g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液434.2g、および塩酸アンブロキソール懸濁液1377.8gを加えて均一な懸濁液とした。合計3071.8gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、結晶セルロース粒200.0gに主薬レイヤリング液3067.9gを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0057】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)768.7gおよびジクロロメタン(和光純薬工業(株)、グレード:高速液体クロマトグラフ用)767.7gに、ヒプロメロース19.7g、5.6gのマクロゴール4000、エチルセルロース57.6g、およびクエン酸トリエチル4.4gを加えて溶解した。合計1623.7gの徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、速溶性顆粒200.0gに徐放膜コーティング液1559.8gを噴霧・コーティングし、遅溶性顆粒を製した。
【0058】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.2mgと、第2の層を有する顆粒101.3mg(徐放膜コーティング液935.9g噴霧時点のサンプルを使用した。)とをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表3に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0059】
【表3】
【0060】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)、および溶出試験第2液(pH6.8)を用い、それぞれの溶出試験液における溶出プロファイルを、図3Aおよび図3Bに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれの溶出試験においても類似性規格の範囲内であった。
【0061】
〔参考例2〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が22%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が17%のもの
<速溶性顆粒>
精製水8500.1gに塩酸アンブロキソール2125.0gを加えてホモジナイズし、10625.1gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水5819.1gにヒドロキシプロピルセルロース306.3gを加えて溶解し、6125.4gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水9641.1gに低置換ヒドロキシプロピルセルロース1138.9g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液5834.1g、および塩酸アンブロキソール懸濁液10416.5gを加えて均一な懸濁液とした。合計27030.6gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−230)を用いて、結晶セルロース粒1000.0gに主薬レイヤリング液26350.0gを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0062】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)5559.9gにエチルセルロース195.3gおよびクエン酸トリエチル(森村商事(株))14.9gを加えて溶解し、合計5770.1gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。精製水656.6gにヒプロメロース48.7gおよび13.4gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計718.7gのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液5770.1gにヒプロメロース・マクロゴール溶液676.3gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−230)を用いて、速溶性顆粒1000.0gに徐放膜コーティング液5138.0gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0063】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒94.9mg(徐放膜コーティング液4029.0g噴霧時点のサンプルを使用した。)をヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表4に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0064】
【表4】
【0065】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、水、溶出試験第1液(pH1.2)、McIlvaine緩衝液(pH4.0)、およびMcIlvaine緩衝液(pH7.5)を用い、それぞれの溶出試験液における溶出プロファイルを図4A〜図4Dに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれも類似性規格の範囲内であった。
【0066】
〔参考例3〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が22%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が25%のもの
<速溶性顆粒>
精製水2012.5gに塩酸アンブロキソール503.2gを加えてホモジナイズし、2515.7gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水935.8gにヒドロキシプロピルセルロース70.4gを加えて溶解し、1006.2gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水2156.8gに低置換ヒドロキシプロピルセルロース262.0g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液958.4g、および塩酸アンブロキソール懸濁液2395.7gを加えて均一な懸濁液とした。合計5772.9gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、結晶セルロース粒230.0gに主薬レイヤリング液5738.9gを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0067】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)1112.1gに、エチルセルロース39.1g、およびクエン酸トリエチル3.0gを加えて溶解した。合計1154.2gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。精製水131.3gにヒプロメロース9.7gおよび2.7gのマクロゴール4000を加えて溶解した。合計143.7gのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液1154.2gにヒプロメロース・マクロゴール溶液135.3gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、速溶性顆粒200.0gに徐放膜コーティング液1208.7gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0068】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒101.7mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表5に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0069】
【表5】
【0070】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、水、溶出試験第1液(pH1.2)、McIlvaine緩衝液(pH4.0)、およびMcIlvaine緩衝液(pH7.5)を用い、それぞれの溶出試験における溶出プロファイルを図5A〜図5Dに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれの溶出試験においても同等性規格の範囲内であった。
【0071】
〔参考例4〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が20%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が30%のもの
<速溶性顆粒>
精製水17000gに塩酸アンブロキソール4250gを加えてホモジナイズした。この操作を5回繰り返し、合計106250gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水58188gにヒドロキシプロピルセルロース3063gを加えて溶解し、61251gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水19282gに低置換ヒドロキシプロピルセルロース2278g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液11667g、および塩酸アンブロキソール懸濁液20833gを加えて均一な懸濁液とした。この操作を5回繰り返し、合計270300gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、結晶セルロース粒(旭化成ケミカルズ(株))10000gに主薬レイヤリング液全量を噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0072】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方:本実施例において以下同じ)36498gに、エチルセルロース1305g、およびクエン酸トリエチル100gを加えて溶解し、合計37903gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液Iを得た。無水エタノール29551gに、エチルセルロース1057g、およびクエン酸トリエチル80gを加えて溶解し、合計30688gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液IIを得た。精製水4251gにヒプロメロース294gおよび81gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4626gのヒプロメロース・マクロゴール溶液Iを得た。精製水3476gにヒプロメロース241gおよび66gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計3783gのヒプロメロース・マクロゴール溶液IIを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液I 37903gに、ヒプロメロース・マクロゴール溶液I 412gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液Iを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液II 30688gにヒプロメロース・マクロゴール溶液II 3572gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液IIを得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、速溶性顆粒10000gに徐放膜コーティング液IおよびIIを混合して、その混合液72520gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0073】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒105.8mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表6に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0074】
【表6】
【0075】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、水、溶出試験第1液(pH1.2)、McIlvaine緩衝液(pH4.0)、およびMcIlvaine緩衝液(pH7.5)を用い、それぞれの溶出試験液における溶出プロファイルを図6A〜6Dに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれの溶出試験においても類似性規格の範囲内であった。
【0076】
〔参考例5〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が29%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が17%のもの
<速溶性顆粒>
参考例4で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0077】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)4943.1gに、エチルセルロース177.5g、およびクエン酸トリエチル13.5gを加えて溶解し、合計5134.1gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。精製水1312.7gにヒプロメロース65.1gおよび17.9gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計1395.7gのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液5134.1gにヒプロメロース・マクロゴール溶液1313.6gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−230)を用いて、速溶性顆粒1000.0gに徐放膜コーティング液5945.0gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0078】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒94.9mg(徐放膜コーティング液4029.0g噴霧時点のサンプルを使用した。)をヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表7に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0079】
【表7】
【0080】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)を用いた。溶出プロファイルを図7に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、類似性規格の範囲外であった。
【0081】
〔参考例6〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が23%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が30%のもの
<速溶性顆粒>
参考例4で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0082】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方:本実施例において以下同じ)36513gに、エチルセルロース1259g、およびクエン酸トリエチル96gを加えて溶解し、合計37868gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液Iを得た。無水エタノール29537gに、エチルセルロース1018g、およびクエン酸トリエチル78gを加えて溶解し、合計30633gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液IIを得た。精製水4248gにヒプロメロース336gおよび93gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4677gのヒプロメロース・マクロゴール溶液Iを得た。精製水3475gにヒプロメロース275gおよび76gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計3826gのヒプロメロース・マクロゴール溶液IIを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液I 37868gにヒプロメロース・マクロゴール溶液I 4463gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液Iを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液II 30633gにヒプロメロース・マクロゴール溶液II 3613gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液IIを得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、速溶性顆粒10000gに徐放膜コーティング液IおよびIIを混合して、その混合液72522gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0083】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒105.8mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表8に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0084】
【表8】
【0085】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)を用いた。溶出プロファイルを図8に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、類似性規格の範囲外であった。
【0086】
〔参考例7〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が26%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が30%のもの
<速溶性顆粒>
参考例4で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0087】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方:本実施例において以下同じ)36504gにエチルセルロース1210gおよびクエン酸トリエチル92gを加えて溶解し、合計37806gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液Iを得た。無水エタノール36487gにエチルセルロース1210gおよびクエン酸トリエチル92gを加えて溶解し、合計37789gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液IIを得た。精製水4248gにヒプロメロース379gおよび105gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4732gのヒプロメロース・マクロゴール溶液Iを得た。精製水4248gにヒプロメロース378gおよび104gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4730gのヒプロメロース・マクロゴール溶液IIを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液I 37806gにヒプロメロース・マクロゴール溶液I 4514gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液Iを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液II 37789gにヒプロメロース・マクロゴール溶液II 4514gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液IIを得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、速溶性顆粒10000gに徐放膜コーティング液IおよびIIを混合し、その混合液72520gを噴霧・コーティングして遅溶性顆粒を製した。
【0088】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒105.8mg(徐放膜コーティング液72520g噴霧時点のサンプルを使用した。)をヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表9に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0089】
【表9】
【0090】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)を用いた。溶出プロファイルを図9に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、類似性規格の範囲外であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の顆粒は、嚥下機能が低下した小児や高齢者にとっても飲みやすく、かつ1日1回投与型徐放性製剤として有効性および安全性が保証された、塩酸アンブロキソールの小型化された製剤の製造において有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸アンブロキソールの小型化された徐放性の顆粒、ならびにそのカプセル充填製剤および圧縮成型錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塩酸アンブロキソールは、肺表面活性物質の分泌促進作用、気道液の分泌促進作用、繊毛運動亢進作用を有し、これらが総合的に作用して喀痰喀出を示すものと考えられている薬物で、気管支炎や喘息等の際の去痰剤として、小児から高齢者まで幅広く用いられている。去痰剤は、特に喀痰機能が未発達の小児や低下している高齢者に有用で、それら小児や高齢者は嚥下機能がしばしば低いことから、去痰剤の剤形や製剤の大きさ等の飲みやすさは、服用コンプライアンスにおいて重要な要素となる。
【0003】
塩酸アンブロキソールは、その経口投与用固形製剤として、徐放性顆粒を充填してなる、1日1回投与型のカプセル剤が、既に認可され上市されている。このカプセル剤は、1日1回という観点では患者の服用コンプライアンスが高い。しかし、一般にカプセル剤は錠剤と比較して飲みにくくその主たる因子は大きさと口腔粘膜等への付着性とされる。このうちカプセルの大きさは、充填される製剤の重量に依拠する。上記塩酸アンブロキソールのカプセル剤(上市品)の製剤充填量は、非特許文献1の表3によれば、約230mgおよび160mgであり、この充填量を減らすことができれば、カプセルをさらに飲みやすい程度に小さくすることが可能となる。上市品は、速溶性顆粒と遅溶性顆粒の2種の顆粒の混合製剤であり、それら顆粒の核粒子は共通である。したがって、理論的には特許文献1に開示されているような核粒子を遅溶性層と速溶性層で同心円状に被覆する多重顆粒化(2種の顆粒の単一化)により、少なくとも重複する核粒子の重量分は減量することができると考えられた。しかし、多重顆粒は一般に調製時に遅溶性層が損なわれることが知られており、2種の顆粒の混合製剤に対して同等な溶出特性を維持するという観点で顆粒の単一化には困難がある。
【0004】
一方、塩酸アンブロキソールの錠剤も認可され、上市されている。その上市されている錠剤は、飲みやすさという観点ではカプセル剤に対して優位であるが、通常の速放性製剤であるので1日3回投与が必要な点で1日1回のカプセル剤と比較すると服薬コンプライアンスが良いとはいえない。
【0005】
以上より、塩酸アンブロキソールの1日1回投与型徐放性製剤において、飲みやすく小型化されたカプセル剤、さらには錠剤が望まれている。そしてそのようなカプセル剤もしくは錠剤化においては、上市品と同等な溶出特性を維持することが1日1回投与型の塩酸アンブロキソール製剤としての有効性および安全性を保証するために必要であり、課題である。
【0006】
塩酸アンブロキソールの徐放性製剤としては、上記した上市カプセル剤のほか、特許文献2には、エチルセルロース等の水不溶性高分子を含む添加物と均一に混合し造粒した顆粒を圧縮成型した徐放性錠剤が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されている製剤は薬物の放出機構がマトリックス型であり、上記上市カプセル剤の顆粒の膜制御型とは明確に異なる。したがって、本発明の課題のひとつである1日1回投与型の塩酸アンブロキソール製剤としての有効性および安全性を保証することが困難である。
【0007】
また、特許文献3には、不活性な核、塩酸アンブロキソールを含む内部の多層、および薬学的に活性のある物質を含まない外層からなる、塩酸アンブロキソールの膜制御型の顆粒が開示されているが、塩酸アンブロキソール単位重量あたりの顆粒重量が約186mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール)で、前述の非特許文献1に開示されている上市品(160mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール))に対して多く、またカプセルの小型化や錠剤化に関する記載や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−103012号公報
【特許文献2】特開2008−201706号公報
【特許文献3】特開平5−320044号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】PHARM TECH JAPAN Vol.22 No.8, p73-78(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、嚥下機能が低下した小児や高齢者にとっても飲みやすく、かつ1日1回投与型徐放性製剤として有効性および安全性が保証された、塩酸アンブロキソールの小型化された固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明者らは鋭意研究した結果、速溶性と遅溶性の2種の顆粒を用いた先行技術に対し、核粒子を速溶性作用を呈する第1の層、遅溶性作用を呈する第2の層、および速溶性作用を呈する第3の層で順に被覆された、少なくとも3層の層状構造を有する顆粒という単一の顆粒を用いることにより、塩酸アンブロキソール単位重量当たりの顆粒量を低減でき、さらには1日1回投与型徐放性製剤として有効性および安全性が保証された、塩酸アンブロキソールの小型化された固形製剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のものに関する。
〔1〕塩酸アンブロキソールを薬効成分として含み、少なくとも3層の層状構造を有する顆粒であって、
(1)核粒子、
(2)核粒子を被覆する、塩酸アンブロキソール、崩壊剤、および結合剤を含む第1の層、
(3)水不溶性高分子および水溶性高分子を含む第2の層、
(4)塩酸アンブロキソールおよび結合剤を含む第3の層を含んでなる顆粒。
〔2〕核粒子が結晶セルロースである〔1〕記載の顆粒。
〔3〕水不溶性高分子がエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーの(メタ)アクリル酸共重合体、およびポリ酢酸ビニルからなる群から選択される少なくとも1つである〔1〕または〔2〕記載の顆粒。
〔4〕水溶性高分子がヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキシド、酢酸ビニルポビドンポリマーマトリックス、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、およびプルランからなる群から選択される少なくとも1つである〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の顆粒。
〔5〕顆粒の平均粒子径が300〜800μmである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の顆粒。
〔6〕第2の層と第3の層の間にさらに水溶性高分子を含む保護被膜層を有し、第3の層がさらに賦形剤および可塑剤を含む〔1〕〜〔5〕いずれかに記載の顆粒。
〔7〕第1の層および/または第2の層にさらにpH調節剤を含む〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の顆粒。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかの顆粒を含んでなる薬物徐放性固形製剤。
〔9〕錠剤またはカプセル剤である〔8〕記載の薬物徐放性固形製剤。
〔10〕〔6〕記載の顆粒のみを圧縮成型してなる薬物徐放性錠剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の塩酸アンブロキソールの小型化された固形製剤により、嚥下機能が低下した小児や高齢者を含む幅広い患者にとって飲みやすく、かつ1日1回投与型の、服用コンプライアンスの高い製剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1B】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1C】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1D】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1E】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1F】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1G】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図1H】実施例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2A】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2B】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す。
【図2C】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2D】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2E】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2F】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2G】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2H】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 回転バスケット法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:200rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図2I】実施例2で得られた錠剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:1w/v%PSB80含有McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:100rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図3A】参考例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図3B】参考例1で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP2液(pH6.8)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4A】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4B】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4C】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図4D】参考例2で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5A】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5B】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5C】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図5D】参考例3で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6A】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:水、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6B】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6C】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH4.0)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図6D】参考例4で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:McIlvaine緩衝液(pH7.5)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図7】参考例5で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図8】参考例6で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【図9】参考例7で得られたカプセル剤の、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法(試験液:JP1液(pH1.2)、回転数:50rpm)に従って実施した溶出プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の顆粒において、塩酸アンブロキソールは、本発明の第1の層および第3の層に含まれ、その含量比は通常2〜8:1、好ましくは4〜6:1である。
【0016】
本発明の第1の層に用いられる塩酸アンブロキソールの含有率は、第1の層の総重量を基準にして、通常30〜80重量%、好ましくは50〜70重量%である。80重量%より高いと溶出特性が不良となり、30重量%未満だと塩酸アンブロキソール単位重量あたりの顆粒重量が多くなり好ましくない。
【0017】
第3の層に用いられる塩酸アンブロキソールの含有率は、最終製剤化のため圧縮成型を施すか否かによって異なり、圧縮成型を施さない場合、すなわち最終製剤が顆粒剤またはカプセル剤である場合は、第3の層に含まれる結合剤によって層を形成できる程度に高い方が好ましい。具体的には、圧縮成型を施さない場合の第3の層に用いられる塩酸アンブロキソールの含有率は第3の層の重量を基準にして80〜99重量%であり、最終製剤が錠剤の場合には1〜20重量%である。
【0018】
本発明の顆粒において、核粒子は顆粒調製時に核となりうるものである。具体的には、例えば結晶セルロース、または糖とデンプンの混合物を単独でまたは組み合わせて用いることができる。なかでも結晶セルロースが好ましい。特に平均粒径が数十〜数百μm程度の結晶セルロース球形顆粒が好ましく、例えばセルフィア<登録商標>CP−203(旭化成ケミカルズ株式会社)(粒径150〜300μm)およびセルフィア<登録商標>CP−305(旭化成ケミカルズ株式会社)(粒径300〜500μm)が挙げられる。セルフィアCP−203は顆粒の小型化や錠剤化の観点で好ましく、セルフィア305は製造性の観点で好ましい。
【0019】
本発明の顆粒において、第1の層の崩壊剤としてはトウモロコシデンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプン、もしくはそれらの誘導体のデンプン類;カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、もしくは低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)等のセルロース誘導体;またはクロスポビドン、軽質無水ケイ酸、もしくは結晶セルロースを単独で、または複数種組み合わせて用いることができる。なかでも少量の水で膨潤することで崩壊作用を示すものが好ましく、特にL−HPCが好ましい。
【0020】
本発明の顆粒において、第1の層の崩壊剤の含量は、その種類や第2の層の水溶性高分子の種類と量および第2の層を被覆する際に用いる溶媒の種類等によっても異なるが、第1の層の総重量に対し5〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。
【0021】
本発明の顆粒の第1の層は、さらに結合剤を含む。かかる結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒプロメロース、もしくはポリエチレングリコールを単独で、または組み合わせて用いる。なかでもヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。結合剤の含量は、その種類にもよるが、通常第1の層の総重量に対し1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%である。
【0022】
本発明の顆粒において、第1の層による核粒子の被覆方法は特に限定されないが、特に攪拌転動流動層造粒法により塩酸アンブロキソール懸濁液または溶解液を核粒子へ噴霧して製する方法が好ましい。核粒子を第1の層で被膜することにより、速溶性顆粒が得られる。造粒時は排気相対湿度が70〜95%、好ましくは85〜95%の場合、懸濁液または溶解液中の原料がほぼ理論値通り核粒子へ積層される。排気相対湿度が70%以下の場合、積層されず粉となって飛散する割合が高くなり、排気相対湿度が95%以上の場合、凝集塊の発生する割合が高くなる。排気相対湿度が70%以下または95%以上の場合、溶出特性が不良となる。
【0023】
本発明の顆粒において、第2の層の総重量は、第2の層を被覆する際に用いる溶媒の種類、第2の層の水溶性高分子の種類やその第2の層に対する含量比にもよるが、第1の層が被覆された速溶性顆粒の重量に対して、通常10〜40重量%、好ましくは15〜30重量%である。第2の層の割合が、10重量%未満の場合溶出特性が不良となり、また顆粒の物理的強度が低くなって好ましくなく、40重量%より多いと溶出特性が不良となり、また塩酸アンブロキソール単位量あたりの顆粒重量が多くなって好ましくない。
【0024】
本発明の顆粒において、第2の層の水不溶性高分子としては、例えばエチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー等の(メタ)アクリル酸共重合体、またはポリ酢酸ビニルを、単独でまたは複数種組み合わせて用いることができる。なかでもエチルセルロースが好ましい。
【0025】
本発明の顆粒において、第2の層の水不溶性高分子の含量は、その種類や第1の層が被覆された顆粒の大きさ、形状、重量によっても異なるが、第2の層の総重量に対し、60〜90重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明の顆粒において、第2の層の水溶性高分子としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、もしくはヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、アラビアゴム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンオキシド、酢酸ビニルポビドンポリマーマトリックス、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、またはプルランを、単独でまたは複数種類組み合わせて用いることができる。なかでもヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、およびポリエチレングリコールが好ましく、特にヒプロメロースとポリエチレングリコールの組み合わせが好ましい。ヒプロメロースは種々の粘度グレードが存在するが、本発明における粘度グレードとしては、20℃における2(w/w)%水溶液の粘度が約80〜約120mPa・sのグレード、約3000〜約5600mPa・sのグレード、約11250〜約21000mPa・sのグレード、または約75000〜約140000mPa・sのグレードを用いることができる。ヒプロメロースは、上記4種類いずれかの粘度グレードのものを単独で用いるか、2〜4種類を任意の重量比率で混合して使用することができる。ポリエチレングリコールは、平均分子量が異なる種々のグレードが存在するが、本発明においては例えば平均分子量4000のものを使用することができる。
【0027】
本発明の顆粒において、第2の層の水溶性高分子の含量は、その種類や第1の層の崩壊剤の種類によっても異なるが、第2の層を被覆する際に用いる溶媒の種類に大きく依存する。溶媒にジクロロメタンを含む場合は、第2の層の総重量中の水溶性高分子の含量は約30重量%が好ましい。溶媒がエタノールと水の混合液の場合は、その混合比にもよるが、ジクロロメタンの場合の1/20程度の量で良好な溶出特性となる。溶媒がエタノールと水の混合液の場合は、良好な溶出特性の観点から、第2の層の総重量に対し、通常0.5〜22重量%の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の顆粒において、第2の層による、第1の層を有する速溶性顆粒の被覆方法は特に限定されず、例えば攪拌転動流動層造粒法を用いることができる。造粒時の溶媒としてはジクロロメタン、エタノール、または水を、単独で、または複数種混合して用いることが好ましく、特にエタノールと水の混合液が好ましい。エタノールと水の混合比は7:3〜9:1が好ましい。これよりもエタノール比が低くなると溶出特性が不良となり、高くなると溶出特性と製造コストの点で好ましくない。ジクロロメタンを含む有機溶媒は、エチルセルロースの被覆溶媒として一般的なものであるが、環境負荷や人への安全性への懸念があり、製造装置上の工夫が施されているのが通常である。造粒時の溶媒としてジクロロメタンを含む場合は、本発明の顆粒における第1の層および/または第2の層、特には第1の層に、さらにpH調節剤を加えることが溶出性維持の上で好ましい。その種類は特に限定されないが、なかでもリン酸系化合物が好ましく、特にリン酸一水素ナトリウムが好ましい。その含量は塩酸アンブロキソールに対して1〜10重量%が好ましく、なかでも5〜10重量%が好ましい。速溶性顆粒を第2の層で被膜することにより、遅溶性顆粒が得られる。造粒時は排気相対湿度が20〜60%、好ましくは30〜50%の場合、溶解液中の原料がほぼ理論値通り核粒子へ積層される。排気相対湿度が20%以下の場合、積層されず粉となって飛散する割合が高くなり、排気相対湿度が60%以上の場合、凝集塊の発生する割合が高くなる。排気相対湿度が20%以下または60%以上の場合、溶出特性が不良となる。さらに厳密に溶出特性をコントロールするには顆粒水分が重要であり、造粒時の顆粒水分が2〜4%、好ましくは2.5〜3.5%の場合、一定の溶出特性が得られる。
【0029】
本発明の顆粒は、遅溶性作用を呈する第2の層の外層に、さらに速溶性作用を呈する第3の層を有する。第1〜第3の層からなる多層構造とすることにより、2種の顆粒の混合製剤である先行技術(非特許文献1)に対し、その溶出特性を維持しつつ塩酸アンブロキソール単位量あたりの顆粒重量が低減された徐放性顆粒剤、あるいはその多層顆粒である本発明の顆粒のみを一定量カプセルに充填することで徐放性カプセル剤を得ることができる。
【0030】
本発明の顆粒において、第3の層の結合剤は特に限定されないが、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒプロメロース、もしくはポリエチレングリコールを、単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明の顆粒において、第3の層の結合剤の含量は、その種類によっても異なるが、第3の層の塩酸アンブロキソールが層を形成できる程度に低い方が好ましく、第3の層の総重量に対し、通常1〜20重量%である。
【0032】
本発明の顆粒において、第3の層による第2の層を有する顆粒の被覆方法は特に限定されず、例えば攪拌転動流動層造粒法を用いることができる。造粒時は排気相対湿度が60〜80%、好ましくは65〜75%の場合、懸濁液または溶解液中の原料がほぼ理論値通り核粒子へ積層される。排気相対湿度が60%以下の場合、積層されず粉となって飛散する割合が高くなり、排気相対湿度が80%以上の場合、凝集塊の発生する割合が高くなる。
【0033】
本発明の顆粒を圧縮成型して錠剤とする場合は、第2の層と第3の層の間にさらに保護被膜層を有し、第3の層にさらに賦形剤および可塑剤を配合することが好ましい。この保護被膜層は、第2の層の溶出に関わる特性および機能を変化させずに、本発明の顆粒を圧縮成型する際の圧縮力に耐えうるように顆粒を保護する役割を有する。したがって、本発明で使用しうる保護被膜は、この役割を果たしうるものであれば特に限定されないが、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、もしくはゼラチン等の水溶性高分子;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーもしくはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等の酸可溶性高分子;硬化油類;脂肪アルコール類;ポリオレフィン類;グリセリド類;または例えば脂肪酸類を、単独でまたは組み合わせて用いることができる。なかでもヒドロキシプロピルセルロースまたはポリエチレングリコールを単独で、または組み合わせて用いることが好ましい。保護被膜層にはこれら必須成分の他に、可塑剤等の成分を配合することができる。ここで、保護被膜の被覆方法は特に限定されず、例えばこれら成分の水溶液を第2の層を有する顆粒に噴霧すればよい。
【0034】
第3の層にさらに賦形剤および可塑剤を配合することによって、それらを第3の層に含ませずに圧縮成型して錠剤とする場合に比べて、製造時の錠剤毎の塩酸アンブロキソールの含量の偏析を抑制できる。また、圧縮成型時に賦形剤との混合を要しないので圧縮成型工程が容易となる。賦形剤としては特に限定されないが、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、もしくはエリスリトール等の糖類;小麦デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファ化デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、もしくはカルボキシメチルスターチ等のデンプン類;結晶セルロース等のセルロース類;または軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、もしくはリン酸カルシウム等の無機塩類等を、単独でまたは複数種類組み合わせて用いることができる。なかでもマンニトールが好ましい。可塑剤としては特に限定されないが、例えばポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、ポリソルベート80、またはモノステアリン酸グリセリンを、単独でまたは複数種類組み合わせて用いることができる。なかでもポリエチレングリコールが好ましい。
【0035】
本発明の顆粒は、その平均粒子径が300〜800μm、さらには300〜600μm、さらには300〜500μmであり、先行技術(非特許文献1における1200μmまたは800μm、特許文献3における600〜1500μm)に対して小さい。なお、本発明における平均粒子径は、第15改正日本薬局方 一般試験法3.04粒度測定法 第2法ふるい分け法に従い、直径76mm目開き600、500、425、355、300μmのふるいを用いて粒度分布を測定し、対数正規確率紙を用い算出したものである。
【0036】
本発明の顆粒によれば、塩酸アンブロキソール単位重量あたりの顆粒重量は50〜150mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール)であり、先行技術(非特許文献1における230mgまたは160mg(顆粒)/45mg(塩酸アンブロキソール)、特許文献3における約310mg(顆粒)/75mg(塩酸アンブロキソール))に対し減量が達成される。
【0037】
本発明の顆粒を圧縮成型して錠剤とする方法は特に限定されず、汎用機器で製造可能であり、本発明の顆粒を、滑沢剤として例えば微量のステアリン酸マグネシウム、タルク、またはモノステアリン酸グリセリンを加えて打錠してもよい。錠剤は、通常用いられる方法により、さらにフィルムコーティングや糖衣錠とすることができる。
【0038】
本発明の顆粒は、そのまま顆粒剤として、あるいはカプセルに充填してカプセル剤とすることができる。カプセル剤とする場合、塩酸アンブロキソールの用量に応じて充填量を調整すればよく、例えば用量が45mgの場合は本発明の顆粒50〜150mg、必要に応じて微量の滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムとともに、4号または5号カプセルに充填して製することができる。
【0039】
本発明の製剤が達成すべき、1日1回投与型の塩酸アンブロキソール徐放性製剤としての有効性および安全性が保証された溶出特性は、後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインに従って実施したとき、標準製剤としての上市品(ムコソルバン(登録商標)Lカプセル)の溶出率30%、50%、80%付近の3時点での溶出率が、標準品の溶出率に対し±15%の範囲内(類似性規格の範囲内)、好ましくは±10%の範囲内(同等性規格の範囲内)である。
【実施例】
【0040】
本実施例で使用した薬剤、および機器等の詳細は、以下の通りである。
塩酸アンブロキソール;Boehringer Ingelheim製
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC):日本曹達(株)製、商品名:HPC−L
低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC):信越化学工業(株)製、商品名:LH−31
結晶セルロース粒:旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:セルフィアCP−203
ヒプロメロース:信越化学工業(株)製、商品名:TC−5 R
マクロゴール4000(PEG4):日本油脂(株)製
マクロゴール6000(PEG6):日本油脂(株)製、商品名:マクロゴール6000P
エチルセルロース:The Dow Chemical Company製、商品名:ETHOCEL STANDARD 10 PREMIUM
クエン酸トリエチル:森村商事(株)製、商品名:シトロフレックス2
複合型造粒コーティング装置:フロイント産業(株)製、スパイラフローSFC−50
混合機:明和工業(株)製、クロスロータリーミキサーCM−10
ロータリー式打錠機:(株)畑鐵工所製、HT−AP6SS−U
【0041】
〔実施例1〕カプセル剤の製造と溶出性評価
<速溶性顆粒>
精製水45.950kgに塩酸アンブロキソール11.484kgを加えてホモジナイズした。この操作を4回繰り返し、合計229.736kgの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水83.700kgにヒドロキシプロピルセルロース1.608kgを加えて溶解した。この操作を4回繰り返し、合計341.232kgのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。塩酸アンブロキソール懸濁液28.200kgとヒドロキシプロピルセルロース溶液41.850kgを混ぜ合わせて均一な懸濁液とした後、低置換ヒドロキシプロピルセルロース3.079kgを分散した。この操作を8回繰り返し、合計585.032kgの主薬レイヤリング(第1の層コーティング)液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、結晶セルロース粒21.000kgを核粒子として、主薬レイヤリング液567.650kgを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0042】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール((株)ワコーケミカル:本実施例において以下同じ)31.460kgにヒプロメロース1.027kgおよび0.216kgのマクロゴール4000を分散した後、精製水7.870kgを加えて溶解し、40.573kgのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。精製水7.712kgにエチルセルロース1.665kgおよびクエン酸トリエチル0.126kgを分散した後、無水エタノール30.850kgを加えて溶解した。この操作を4回繰り返し、合計161.444kgのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。ヒプロメロース・マクロゴール溶液9.950kgとエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液40.361kgを混ぜ合わせて均一な溶液とした。この操作を4回繰り返し、合計201.244kgの徐放膜(第2の層)コーティング液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、速溶性顆粒40.000kgに徐放膜コーティング液197.250kgを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0043】
<第3の層を有する顆粒>
第1の層に含まれる主薬と第3の層に含まれる主薬の比が5:1になるように積層する量を補正して製造した。
精製水11.570kgにヒドロキシプロピルセルロース0.326kgを加えて溶解し、ヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水14.590kgに塩酸アンブロキソール3.647kgを加えてホモジナイズし、塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。ヒドロキシプロピルセルロース溶液11.896kgと塩酸アンブロキソール懸濁液17.450kgを混ぜ合わせて均一な懸濁液とし、29.346kgの外層主薬レイヤリング液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、遅溶性顆粒40.000kgに外層主薬レイヤリング液27.500kgを噴霧・積層し、第3の層を有する顆粒を製した。
【0044】
<平均粒子径>
得られた第3の層を有する顆粒を、第15改正日本薬局方 一般試験法3.04粒度測定法 第2法ふるい分け法に従い、直径76mm目開き600、500、425、355、300μmのふるいを用い粒度分布を測定し、対数正規確率紙を用い平均粒子径を算出したところ473μmであった。
【0045】
<カプセル充填>
1カプセル当たりの主薬含有量が45mgになるように充填量を設定した。第3の層を有する顆粒105.17mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表1に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、平成9年12月22日医薬審第487号医薬安全局審査管理課長通知・別添「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」の第3章B.I.2.に示す基準に従って実施した。溶出プロファイルを図1A〜図1Hに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、全て類似性規格の範囲内であった。なお、図1中に示される類似性規格上限/下限は、ムコソルバン(登録商標)Lカプセルの溶出率に対し±15%の範囲内を示すものであり、以下の実施例においても同様である。
【0048】
〔実施例2〕錠剤の製造と溶出性評価
<速溶性顆粒>
実施例1で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0049】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール((株)ワコーケミカル:本実施例において以下同じ)31.460kgにヒプロメロース1.027kgおよび0.216kgのマクロゴール4000を分散した後、精製水7.870kgを加えて溶解し、40.573kgのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。精製水7.720kgにエチルセルロース1.665kgおよびクエン酸トリエチル0.126kgを分散した後、無水エタノール30.850kgを加えて溶解した。この操作を4回繰り返し、合計161.444kgのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。ヒプロメロース・マクロゴール溶液9.950kgとエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液40.361kgを混ぜ合わせて均一な溶液とした。この操作を4回繰り返し、合計201.244kgの徐放膜(第2の層)コーティング液を得た。
複合型造粒コーティング装置を用いて、速溶性顆粒40.000kgに徐放膜コーティング液197.250kgを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0050】
<保護被膜層を有する顆粒>
精製水52.650kgに5.849kgのマクロゴール6000を加えて溶解した。この操作を2回繰り返し、合計116.998kgの保護被膜層コーティング液を得た。複合型造粒コーティング装置を用いて第2の層を有する顆粒40.000kgに保護被膜層コーティング液111.450kgを噴霧・コーティングし、保護被膜層を有する顆粒(緩衝膜被覆顆粒)を製した。
【0051】
<第3の層を有する顆粒>
第1の層に含まれる主薬と第3の層に含まれる主薬の比が5:1になるように積層する量を補正して製造した。
精製水9.300kgにヒドロキシプロピルセルロース0.261kgを加えて溶解し、9.561kgのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水11.720kgに塩酸アンブロキソール2.929kgを加えてホモジナイズし、14.649kgの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。ヒドロキシプロピルセルロース溶液9.561kgと塩酸アンブロキソール懸濁液14.010kgを混ぜ合わせて均一な懸濁液とし、主薬レイヤリング液を得た。精製水95.550kgにヒドロキシプロピルセルロース3.039kgおよび2.199kgのマクロゴール6000を加えて溶解し、100.788kgのヒドロキシプロピルセルロース・マクロゴール溶液を得た。ヒドロキシプロピルセルロース・マクロゴール溶液32.060kgにD−マンニトール(三菱商事フードテック(株)、商品名:マンニットP)11.359kgを加えて均一な懸濁液とした。この操作を3回繰り返し、合計130.257kgの圧縮成形層レイヤリング液を得た。複合型造粒コーティング装置を用いて緩衝膜被覆顆粒40.000kgに主薬レイヤリング液22.050kg、圧縮成形層レイヤリング液124.050kgの順に噴霧・積層し、第3の層を有する顆粒を製した。
【0052】
<打錠>
1錠当たりの主薬含有量が45mgになるように錠剤重量を設定した。混合機を用いて、第3の層を有する顆粒6000.0gおよびステアリン酸マグネシウム(MALLINCKRODT)1.2gを混合後、ロータリー式打錠機を用いて圧縮成形した。成形条件は、錠剤重量 228mg、Φ8.0mm12Rの杵で硬度約58.8Nとなるよう打錠した。表2に1錠当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0053】
【表2】
【0054】
<溶出性評価>
打錠において製した錠剤について溶出試験を行った。試験は、平成9年12月22日医薬審第487号医薬安全局審査管理課長通知・別添「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」の第3章B.I.2.に示す基準に従って実施した。溶出プロファイルを図2に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、図2A〜図2Iに示す全ての試験において類似性規格の範囲内であった。
【0055】
以下の参考例1〜7においては、調製上の便宜性より、速溶性顆粒(第1の層を有する顆粒)と遅溶性顆粒(速溶性顆粒に第2の層を被覆した顆粒)との混合顆粒をカプセルに充填したものを、本発明の単一の顆粒と同等なものとして溶出性の評価に用いた。本発明の顆粒において、第3の層は速溶性であることから第3の層の主薬は0次溶出するので、速溶性顆粒と遅溶性顆粒との混合顆粒をカプセル充填したものは、その遅溶性顆粒に第3の層を被覆した顆粒を圧縮成形して得られる錠剤と溶出性が同等になるためである。そのため、混合顆粒に用いられる遅溶性顆粒における、第1の層および第2の層の各成分およびその配合量は、そのまま本発明の3層の層状構造を有する顆粒における第1の層および第2の層の各成分およびその配合量であるとみなすことができる。混合顆粒に用いられる速溶性顆粒における各成分およびその配合量については、その速溶性顆粒から核粒子と崩壊剤を除いたものを本発明の3層の層状構造を有する顆粒における第3の層の成分およびその配合量とみなすことができる。
【0056】
〔参考例1〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層被覆時の溶媒がジクロロメタンでpH調節剤を含むもの
<速溶性顆粒>
精製水1155.1gに塩酸アンブロキソール291.7gを加えてホモジナイズし、1446.8gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水427.0gにヒドロキシプロピルセルロース27.2gを加えて溶解し、454.2gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水1164.5gに無水リン酸一水素ナトリウム(太平化学産業(株))19.4gを加えて溶解した後、低置換ヒドロキシプロピルセルロース75.9g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液434.2g、および塩酸アンブロキソール懸濁液1377.8gを加えて均一な懸濁液とした。合計3071.8gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、結晶セルロース粒200.0gに主薬レイヤリング液3067.9gを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0057】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)768.7gおよびジクロロメタン(和光純薬工業(株)、グレード:高速液体クロマトグラフ用)767.7gに、ヒプロメロース19.7g、5.6gのマクロゴール4000、エチルセルロース57.6g、およびクエン酸トリエチル4.4gを加えて溶解した。合計1623.7gの徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、速溶性顆粒200.0gに徐放膜コーティング液1559.8gを噴霧・コーティングし、遅溶性顆粒を製した。
【0058】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.2mgと、第2の層を有する顆粒101.3mg(徐放膜コーティング液935.9g噴霧時点のサンプルを使用した。)とをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表3に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0059】
【表3】
【0060】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)、および溶出試験第2液(pH6.8)を用い、それぞれの溶出試験液における溶出プロファイルを、図3Aおよび図3Bに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれの溶出試験においても類似性規格の範囲内であった。
【0061】
〔参考例2〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が22%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が17%のもの
<速溶性顆粒>
精製水8500.1gに塩酸アンブロキソール2125.0gを加えてホモジナイズし、10625.1gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水5819.1gにヒドロキシプロピルセルロース306.3gを加えて溶解し、6125.4gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水9641.1gに低置換ヒドロキシプロピルセルロース1138.9g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液5834.1g、および塩酸アンブロキソール懸濁液10416.5gを加えて均一な懸濁液とした。合計27030.6gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−230)を用いて、結晶セルロース粒1000.0gに主薬レイヤリング液26350.0gを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0062】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)5559.9gにエチルセルロース195.3gおよびクエン酸トリエチル(森村商事(株))14.9gを加えて溶解し、合計5770.1gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。精製水656.6gにヒプロメロース48.7gおよび13.4gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計718.7gのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液5770.1gにヒプロメロース・マクロゴール溶液676.3gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−230)を用いて、速溶性顆粒1000.0gに徐放膜コーティング液5138.0gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0063】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒94.9mg(徐放膜コーティング液4029.0g噴霧時点のサンプルを使用した。)をヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表4に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0064】
【表4】
【0065】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、水、溶出試験第1液(pH1.2)、McIlvaine緩衝液(pH4.0)、およびMcIlvaine緩衝液(pH7.5)を用い、それぞれの溶出試験液における溶出プロファイルを図4A〜図4Dに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれも類似性規格の範囲内であった。
【0066】
〔参考例3〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が22%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が25%のもの
<速溶性顆粒>
精製水2012.5gに塩酸アンブロキソール503.2gを加えてホモジナイズし、2515.7gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水935.8gにヒドロキシプロピルセルロース70.4gを加えて溶解し、1006.2gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水2156.8gに低置換ヒドロキシプロピルセルロース262.0g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液958.4g、および塩酸アンブロキソール懸濁液2395.7gを加えて均一な懸濁液とした。合計5772.9gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、結晶セルロース粒230.0gに主薬レイヤリング液5738.9gを噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0067】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)1112.1gに、エチルセルロース39.1g、およびクエン酸トリエチル3.0gを加えて溶解した。合計1154.2gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。精製水131.3gにヒプロメロース9.7gおよび2.7gのマクロゴール4000を加えて溶解した。合計143.7gのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液1154.2gにヒプロメロース・マクロゴール溶液135.3gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−125)を用いて、速溶性顆粒200.0gに徐放膜コーティング液1208.7gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0068】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒101.7mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表5に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0069】
【表5】
【0070】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、水、溶出試験第1液(pH1.2)、McIlvaine緩衝液(pH4.0)、およびMcIlvaine緩衝液(pH7.5)を用い、それぞれの溶出試験における溶出プロファイルを図5A〜図5Dに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれの溶出試験においても同等性規格の範囲内であった。
【0071】
〔参考例4〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が20%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が30%のもの
<速溶性顆粒>
精製水17000gに塩酸アンブロキソール4250gを加えてホモジナイズした。この操作を5回繰り返し、合計106250gの塩酸アンブロキソール懸濁液を得た。精製水58188gにヒドロキシプロピルセルロース3063gを加えて溶解し、61251gのヒドロキシプロピルセルロース溶液を得た。精製水19282gに低置換ヒドロキシプロピルセルロース2278g、ヒドロキシプロピルセルロース溶液11667g、および塩酸アンブロキソール懸濁液20833gを加えて均一な懸濁液とした。この操作を5回繰り返し、合計270300gの主薬レイヤリング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、結晶セルロース粒(旭化成ケミカルズ(株))10000gに主薬レイヤリング液全量を噴霧・積層し、速溶性顆粒を製した。
【0072】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方:本実施例において以下同じ)36498gに、エチルセルロース1305g、およびクエン酸トリエチル100gを加えて溶解し、合計37903gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液Iを得た。無水エタノール29551gに、エチルセルロース1057g、およびクエン酸トリエチル80gを加えて溶解し、合計30688gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液IIを得た。精製水4251gにヒプロメロース294gおよび81gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4626gのヒプロメロース・マクロゴール溶液Iを得た。精製水3476gにヒプロメロース241gおよび66gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計3783gのヒプロメロース・マクロゴール溶液IIを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液I 37903gに、ヒプロメロース・マクロゴール溶液I 412gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液Iを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液II 30688gにヒプロメロース・マクロゴール溶液II 3572gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液IIを得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、速溶性顆粒10000gに徐放膜コーティング液IおよびIIを混合して、その混合液72520gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0073】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒105.8mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表6に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0074】
【表6】
【0075】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、水、溶出試験第1液(pH1.2)、McIlvaine緩衝液(pH4.0)、およびMcIlvaine緩衝液(pH7.5)を用い、それぞれの溶出試験液における溶出プロファイルを図6A〜6Dに示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、いずれの溶出試験においても類似性規格の範囲内であった。
【0076】
〔参考例5〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が29%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が17%のもの
<速溶性顆粒>
参考例4で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0077】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方)4943.1gに、エチルセルロース177.5g、およびクエン酸トリエチル13.5gを加えて溶解し、合計5134.1gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液を得た。精製水1312.7gにヒプロメロース65.1gおよび17.9gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計1395.7gのヒプロメロース・マクロゴール溶液を得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液5134.1gにヒプロメロース・マクロゴール溶液1313.6gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液を得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−230)を用いて、速溶性顆粒1000.0gに徐放膜コーティング液5945.0gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0078】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒94.9mg(徐放膜コーティング液4029.0g噴霧時点のサンプルを使用した。)をヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表7に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0079】
【表7】
【0080】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)を用いた。溶出プロファイルを図7に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、類似性規格の範囲外であった。
【0081】
〔参考例6〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が23%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が30%のもの
<速溶性顆粒>
参考例4で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0082】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方:本実施例において以下同じ)36513gに、エチルセルロース1259g、およびクエン酸トリエチル96gを加えて溶解し、合計37868gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液Iを得た。無水エタノール29537gに、エチルセルロース1018g、およびクエン酸トリエチル78gを加えて溶解し、合計30633gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液IIを得た。精製水4248gにヒプロメロース336gおよび93gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4677gのヒプロメロース・マクロゴール溶液Iを得た。精製水3475gにヒプロメロース275gおよび76gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計3826gのヒプロメロース・マクロゴール溶液IIを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液I 37868gにヒプロメロース・マクロゴール溶液I 4463gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液Iを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液II 30633gにヒプロメロース・マクロゴール溶液II 3613gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液IIを得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、速溶性顆粒10000gに徐放膜コーティング液IおよびIIを混合して、その混合液72522gを噴霧・コーティングし、第2の層を有する顆粒を製した。
【0083】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒105.8mgをヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表8に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0084】
【表8】
【0085】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)を用いた。溶出プロファイルを図8に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、類似性規格の範囲外であった。
【0086】
〔参考例7〕カプセル剤の製造と溶出性評価:第2の層の総重量中の水溶性高分子の割合が26%、速溶性顆粒の総重量に対する第2の層の総重量の割合が30%のもの
<速溶性顆粒>
参考例4で製造した速溶性顆粒を用いた。
【0087】
<第2の層を有する顆粒>
無水エタノール(和光純薬工業(株)、グレード:日本薬局方:本実施例において以下同じ)36504gにエチルセルロース1210gおよびクエン酸トリエチル92gを加えて溶解し、合計37806gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液Iを得た。無水エタノール36487gにエチルセルロース1210gおよびクエン酸トリエチル92gを加えて溶解し、合計37789gのエチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液IIを得た。精製水4248gにヒプロメロース379gおよび105gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4732gのヒプロメロース・マクロゴール溶液Iを得た。精製水4248gにヒプロメロース378gおよび104gのマクロゴール4000を加えて溶解し、合計4730gのヒプロメロース・マクロゴール溶液IIを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液I 37806gにヒプロメロース・マクロゴール溶液I 4514gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液Iを得た。エチルセルロース・クエン酸トリエチル溶液II 37789gにヒプロメロース・マクロゴール溶液II 4514gを加えて均一な溶液とし、徐放膜コーティング液IIを得た。
複合型流動層造粒機((株)ダルトン、ニューマルメライザーNQ−500)を用いて、速溶性顆粒10000gに徐放膜コーティング液IおよびIIを混合し、その混合液72520gを噴霧・コーティングして遅溶性顆粒を製した。
【0088】
<カプセル充填>
速溶性顆粒16.3mg、第2の層を有する顆粒105.8mg(徐放膜コーティング液72520g噴霧時点のサンプルを使用した。)をヒプロメロースカプセルに充填し、カプセル剤を製した。表9に1カプセル当たりの各成分の重量(mg)を示す。
【0089】
【表9】
【0090】
<溶出性評価>
カプセル充填において製したカプセル剤について溶出試験を行った。試験は、第15改正日本薬局方 一般試験法6.10溶出試験法 パドル法に従って実施した。試験液として、溶出試験第1液(pH1.2)を用いた。溶出プロファイルを図9に示す。得られたカプセル剤の溶出曲線は、類似性規格の範囲外であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の顆粒は、嚥下機能が低下した小児や高齢者にとっても飲みやすく、かつ1日1回投与型徐放性製剤として有効性および安全性が保証された、塩酸アンブロキソールの小型化された製剤の製造において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸アンブロキソールを薬効成分として含み、少なくとも3層の層状構造を有する顆粒であって、
(1)核粒子、
(2)核粒子を被覆する、塩酸アンブロキソール、崩壊剤、および結合剤を含む第1の層、
(3)水不溶性高分子および水溶性高分子を含む第2の層、
(4)塩酸アンブロキソールおよび結合剤を含む第3の層、を含んでなる顆粒。
【請求項2】
核粒子が結晶セルロースである請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
水不溶性高分子がエチルセルロースである請求項1または2に記載の顆粒。
【請求項4】
水溶性高分子がヒプロメロースである請求項1〜3のいずれかに記載の顆粒。
【請求項5】
顆粒の平均粒子径が300〜800μmである請求項1〜4のいずれかに記載の顆粒。
【請求項6】
第2の層と第3の層の間に、さらに水溶性高分子を含む保護被膜層を有し、第3の層がさらに賦形剤および可塑剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の顆粒。
【請求項7】
第1の層および/または第2の層にさらにpH調節剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の顆粒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の顆粒を含んでなる薬物徐放性固形製剤。
【請求項9】
錠剤またはカプセル剤である請求項8に記載の薬物徐放性固形製剤。
【請求項10】
請求項6に記載の顆粒のみを圧縮成型してなる薬物徐放性錠剤。
【請求項1】
塩酸アンブロキソールを薬効成分として含み、少なくとも3層の層状構造を有する顆粒であって、
(1)核粒子、
(2)核粒子を被覆する、塩酸アンブロキソール、崩壊剤、および結合剤を含む第1の層、
(3)水不溶性高分子および水溶性高分子を含む第2の層、
(4)塩酸アンブロキソールおよび結合剤を含む第3の層、を含んでなる顆粒。
【請求項2】
核粒子が結晶セルロースである請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
水不溶性高分子がエチルセルロースである請求項1または2に記載の顆粒。
【請求項4】
水溶性高分子がヒプロメロースである請求項1〜3のいずれかに記載の顆粒。
【請求項5】
顆粒の平均粒子径が300〜800μmである請求項1〜4のいずれかに記載の顆粒。
【請求項6】
第2の層と第3の層の間に、さらに水溶性高分子を含む保護被膜層を有し、第3の層がさらに賦形剤および可塑剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の顆粒。
【請求項7】
第1の層および/または第2の層にさらにpH調節剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の顆粒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の顆粒を含んでなる薬物徐放性固形製剤。
【請求項9】
錠剤またはカプセル剤である請求項8に記載の薬物徐放性固形製剤。
【請求項10】
請求項6に記載の顆粒のみを圧縮成型してなる薬物徐放性錠剤。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−72133(P2012−72133A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191771(P2011−191771)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】
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