説明

塩酸ベニジピン含有医薬組成物

本発明は、主薬である塩酸ベニジピンの速やかな吸収を促進するための、速やかな溶出性を有する塩酸ベニジピン医薬組成物等を提供することを目的として、体積平均粒子径1.0〜50.0μmの塩酸ベニジピン結晶、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する体積平均粒子径1.0〜50.0μmの粉粒体を含有することを特徴とする塩酸ベニジピン医薬組成物等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、主薬である塩酸ベニジピンの速やかな吸収を促進するための、速やかな溶出性を有する塩酸ベニジピン含有医薬組成物等に関する。
【背景技術】
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤である塩酸ベニジピンは高血圧症、腎実質性高血圧症、狭心症等の治療薬として特に有用であり、安全性も高いとして汎用されている。また塩酸ベニジピンはニフェジピンやアムロジピン等、他のカルシウム拮抗剤とは異なり、造骨細胞および骨芽細胞に作用し、骨形成を損なうことなく、骨保護作用を示すことが知られており、さらに造骨活性の指標として広く知られているアルカリホスファターゼ活性を増加させ、骨代謝に作用し骨芽細胞機能を刺激していることが知られている。しかし前記のニフェジピンやアムロジピンではこれらの作用は知られていない[カルシファイド・ティシュー・インターナショナル(Calcified Tissue International)、1998年、第62巻、p.554−556]。加えてラットの骨粗しょう症モデルにおいても、塩酸ベニジピンは、骨量増加作用および骨強度の増加作用を示し、さらに骨量増加についてはX線検査によっても観察されている。すなわち塩酸ベニジピンは骨代謝バランスのうち、骨保護側に優位に働くことが示唆されている[新薬と臨床、第42巻、第11号別冊(平成5年11月)、p.58(2298)−66(2306)]。これら一連の塩酸ベニジピンの骨保護作用は、骨代謝に関与する副甲状腺ホルモン(PTH)等のカルシウム代謝調節ホルモンを介した作用と考えられ、塩酸ベニジピンの速やかな吸収と速やかな代謝により達成される血中PTHの一過性の上昇が骨形成側に優位に働いていることが示唆されている。しかしながら、血中PTHの長時間の上昇は、骨代謝に悪影響を及ぼすことが知られている。
以上の理由から、骨代謝への悪影響という副作用を回避するために、速やかな吸収を促進するための、速やかな溶出性を有する塩酸ベニジピン含有医薬組成物の開発が望まれている。
一方、塩酸ベニジピンの一般的な製剤例が知られている(特公平2−51525号公報)。また、塩酸ベニジピンは、水性溶媒への溶解度が非常に低いために経口投与の場合には消化管液中で薬物が医薬組成物から速やかに溶出するような工夫が必要である。
【発明の開示】
本発明の目的は、主薬である塩酸ベニジピンの速やかな吸収を促進するための、速やかな溶出性を有する塩酸ベニジピン含有医薬組成物等を提供することにある。
本発明は、下記の(1)〜(20)に関する。
(1) 体積平均粒子径1.0〜50.0μmの塩酸ベニジピン結晶、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する体積平均粒子径1.0〜50.0μmの粉粒体を含有することを特徴とする塩酸ベニジピン含有医薬組成物。
(2) 体積平均粒子径および個数平均粒子径が4.5〜30.0μmの塩酸ベニジピン結晶、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する体積平均粒子径4.5〜50.0μmの粉粒体を含有することを特徴とする塩酸ベニジピン含有医薬組成物。
(3) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、塩酸ベニジピン結晶と水溶性または水親和性を有する機能性添加剤との重量比が1:99〜99:1である前記(1)または(2)記載の医薬組成物。
(4) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する賦形剤である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する賦形剤がデンプン類、デンプン誘導体、糖類、糖アルコール類、セルロース類、セルロース誘導体またはデキストリンである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が崩壊剤である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7) 崩壊剤がデンプン類、デンプン誘導体、セルロース類またはセルロース誘導体である前記(6)記載の医薬組成物。
(8) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する結合剤である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(9) 水溶性または水親和性を有する結合剤がセルロース類、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンである前記(8)記載の医薬組成物。
(10) コーティングされていることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の医薬組成物。
(11) 塩酸ベニジピンを含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶の体積平均粒子径を1.0〜50.0μmとする、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体を含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体の体積平均粒子径を1.0〜50.0μmとすることを特徴とする、該医薬組成物からの塩酸ベニジピンの即溶出化方法。
(12) 塩酸ベニジピンを含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶の体積平均粒子径および個数平均径を4.5〜30.0μmとする、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体を含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体の体積平均粒子径を4.5〜50.0μmとすることを特徴とする、該医薬組成物からの塩酸ベニジピンの即溶出化方法。
(13) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、塩酸ベニジピン結晶と水溶性または水親和性を有する機能性添加剤との重量比が1:99〜99:1である前記(11)または(12)記載の即溶出化方法。
(14) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する賦形剤である前記(11)〜(13)のいずれかに記載の即溶出化方法。
(15) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する賦形剤がデンプン類、デンプン誘導体、糖類、糖アルコール類、セルロース類、セルロース誘導体またはデキストリンである前記(11)〜(14)のいずれかに記載の即溶出化方法。
(16) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が崩壊剤である前記(11)〜(15)のいずれかに記載の即溶出化方法。
(17) 崩壊剤がデンプン類、デンプン誘導体、セルロース類またはセルロース誘導体である前記(16)記載の即溶出化方法。
(18) 塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する結合剤である前記(11)〜(15)のいずれかに記載の即溶出化方法。
(19) 水溶性または水親和性を有する結合剤がセルロース類、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンである前記(18)記載の即溶出化方法。
(20) 医薬組成物がコーティングされている医薬組成物である前記(11)〜(19)のいずれかに記載の即溶出化方法。
本発明の医薬組成物は、塩酸ベニジピンを含有し、約40%〜100%のD30min値(溶出試験における30分の時点での塩酸ベニジピンの溶出率)を示すことが好ましい。なおこの際の溶出試験の条件は、後記の試験例に記載の溶出試験における条件と同じである。
水親和性とは、静電相互作用や水素結合等の何らかの相互作用により、水分子と引き合う性質をいう。
本発明における塩酸ベニジピン結晶の体積平均粒子径は、1.0〜50.0μmであり、4.5〜50.0μmであるのが好ましく、4.5〜30.0μmであるのがより好ましい。また本発明における塩酸ベニジピンおよび水溶性または水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体の体積平均粒子径は、1.0〜50.0μmであり、4.5〜50.0μmであるのが好ましく、4.5〜30.0μmであるのがより好ましい。塩酸ベニジピンおよび水溶性または水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体を含有することを特徴とする塩酸ベニジピン含有医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶と水溶性または水親和性を有する機能性添加剤との重量比は1:99〜99:1であるのが好ましく、より好ましくは1:50〜1:2であり、さらに好ましくは1:40〜1:4である。
また、該塩酸ベニジピン結晶、ならびに塩酸ベニジピンおよび水溶性または水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体は、それぞれ個数平均粒子径1.0〜50.0μmであることが好ましく、4.5〜30.0μmであることがより好ましく、体積平均粒子径と個数平均粒子径の差が、体積平均粒子径に対して50%以下の値であることがより好ましい。または、個数平均粒子径に関わらず、体積平均粒子径が12〜50.0μmであるのが好ましい。これらの好ましい平均粒子径においては、塩酸ベニジピンの安定性、塩酸ベニジピンの含量均一性等の医薬組成物の品質をよりよく保つことができる。
水溶性または水親和性を有する機能性添加剤としては、例えば水溶性または水親和性を有する賦形剤、崩壊剤、水溶性または水親和性を有する結合剤等があげられる。
水溶性または水親和性を有する賦形剤としては、例えばコムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、α化デンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン誘導体、ラクトース、グルコース、マルトース、プルラン等の糖類、D−マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール等の糖アルコール類、結晶セルロース等のセルロース類、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース等のセルロース誘導体、デキストリン等があげられ、水溶性または水親和性を有する賦形剤の使用量としては、医薬組成物中40〜95質量%が好ましく、さらに好ましくは60〜95質量%である。
崩壊剤としては、例えばコムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、α化デンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン誘導体、結晶セルロース等のセルロース類、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース等のセルロース誘導体等があげられ、水溶性または水親和性を有する崩壊剤の使用量としては、医薬組成物中1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜5質量%である。
水溶性または水親和性を有する結合剤としては、例えば結晶セルロース等のセルロース類、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられ、水溶性または水親和性を有する結合剤の使用量としては、医薬組成物中0.1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
本発明の医薬組成物においては、前記水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が、前記粉粒体以外の医薬組成物中に含有されていることが好ましい。前記粉粒体以外の医薬組成物中に含有される水溶性または水親和性を有する機能性添加剤の量としては、例えば水溶性または水親和性を有する賦形剤では、前記粉粒体中と、前記粉粒体以外の医薬組成物中とで合わせて医薬組成物の40〜95質量%であるのが好ましく、さらに好ましくは60〜95質量%であり、崩壊剤では、前記粉粒体中と、前記粉粒体以外の医薬組成物中とで合わせて医薬組成物の1〜30質量%であるのが好ましく、さらに好ましくは2〜15質量%であり、水親和性を有する賦形剤では、前記粉粒体中と、前記粉粒体以外の医薬組成物中とで合わせて医薬組成物の0.1〜30質量%であるのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜15質量%である。
本発明の医薬組成物には、前記の水溶性または水親和性を有する機能性添加剤に加え、製剤の分野で一般に用いられる他の製剤用添加物、例えば滑沢剤、発泡剤、甘味剤、香料、着色剤等を加えることもできる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ポリオキシル40、タルク、セタノール、ラブリワックス、無水ケイ酸、パラフィン、ホウ酸、ロイシン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、安息香酸ナトリウム等があげられる。滑沢剤の使用量としては、医薬組成物中0.01〜1質量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。
発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等があげられる。
甘味剤としては、例えばアスパルテーム(登録商標)、サッカリン、グリチルリチン等があげられる。
香料としては、例えばレモン、オレンジ、パイン、ミント、メントール等があげられる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、タール色素等があげられる。
コーティングとしては、例えば糖衣、フィルムコーティング、ポリマーコーティング等があげられ、コーティングを行う目的としては、例えば矯味、胃溶性または腸溶性の付与、薬物の酸化や加水分解等による変質防止等があげられる。
矯味のためのコーティングに用いられるコーティング剤としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル・コポリマー(E)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル・コポリマー(RS)等があげられる。
胃溶性の付与のためのコーティングに用いられるコーティング剤としては、例えばメタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ジメチルアミノエチル・コポリマー(E)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA)等があげられる。
腸溶性の付与のためのコーティングに用いられるコーティング剤としては、例えばメタクリル酸・メタクリル酸メチル・コポリマー(L)、メタクリル酸・アクリル酸エチル・コポリマー(LD)、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等があげられる。
なお前記の矯味または胃溶性もしくは腸溶性の付与のためのコーティングに用いられるコーティング剤によってコーティングすることにより、同時に薬物の酸化や加水分解等による変質防止等の目的を達成することが可能な場合もある。
次に、本発明の塩酸ベニジピン含有医薬組成物の好ましい製造法について、錠剤を例に説明する。なお、本発明の塩酸ベニジピン含有医薬組成物の形態としては、錠剤の他、顆粒剤、散剤、丸剤等があげられる。
(1)塩酸ベニジピン結晶の粉砕および造粒工程
塩酸ベニジピン結晶の粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、好ましくはハンマーミル、ジェットミル等が用いられる。この粉砕工程において、塩酸ベニジピンを体積平均粒子径1.0〜50.0μm、好ましくは4.5〜50.0μm、より好ましくは4.5〜30.0μmとなるよう加工することができる。
また、前記粉砕工程において、好ましくは個数平均粒子径1.0〜50.0μm、より好ましくは4.5〜30.0μmとし、さらに好ましくは体積平均粒子径と個数平均粒子径の差が、体積平均粒子径に対して50%以下の値となるよう加工することができる。または、個数平均粒子径に関わらず、体積平均粒子径が12〜50.0μmとなるよう加工することができる。
また粉砕の代わりに、篩過、晶析、スプレードライ等によって塩酸ベニジピンを体積平均粒子径1.0〜50.0μmとなるように加工することもできる。
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体は、塩酸ベニジピン結晶に前記の水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を加えた後に、粉砕、篩過、晶析、スプレードライ等によって体積平均粒子径1.0〜50.0μm、好ましくは4.5〜50.0μm、より好ましくは4.5〜30.0μmとなるよう加工することができる。
また、前記粉砕、篩過、晶析、スプレードライ等によって、好ましくは個数平均粒子径1.0〜50.0μm、より好ましくは4.5〜30.0μmとし、さらに好ましくは体積平均粒子径と個数平均粒子径の差が、体積平均粒子径に対して50%以下の値となるよう加工することができる。または、個数平均粒子径に関わらず、体積平均粒子径が12〜50.0μmとなるよう加工することができる。
続いて、体積平均粒子径1.0〜50.0μmとなるよう加工された塩酸ベニジピン結晶または塩酸ベニジピンおよび水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体に、必要により前記の各種製剤用添加物を加えて造粒を行い、造粒物を得る。造粒の方法としては、特に種類を問わないが、好ましくは湿式造粒が用いられる。造粒機としては、例えば流動層造粒機、転動攪拌造粒機、押し出し造粒機等が用いられる。
本発明の塩酸ベニジピン含有医薬組成物における塩酸ベニジピンの使用量としては、投与量等により異なるが、錠剤中0.01〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜30質量%である。
(2)塩酸ベニジピンを含有する錠剤の製造工程
前記(1)で得られた造粒物を乾燥後、滑沢剤を加えて混合し圧縮成形する。このとき、前記の各種製剤用添加物を加えることもできる。
圧縮成形に用いる打錠機は、特に限定されないが、ロータリー打錠機を用いるのが好ましく、圧縮成形圧力は、300kg〜5000kgであることが好ましい。
また、矯味、胃溶性または腸溶性の付与等のために、医薬組成物にコーティングを行うこともできるが、これには造粒物即ち圧縮成形前の素顆粒にコーティングを行う方法と、圧縮成形後の錠剤にコーティングを行う方法等があげられる。
圧縮成形前の素顆粒にコーティングを行う方法としては、例えばコーティング装置中で、ラクトースまたは結晶セルロースの球形顆粒に結合剤とともに活性成分である塩酸ベニジピン結晶を付着させ、静置棚式乾燥機、流動層乾燥機等で乾燥して、塩酸ベニジピン結晶を含有した素顆粒を得る。さらに、コーティング装置中で、コーティング剤を適当な溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、乳酸エチル、アセトン、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等またはこれらの混合溶媒等で溶解または分散させたコーティング剤液を素顆粒にスプレーしてコーティングし、静置棚式乾燥機または流動層乾燥機等で乾燥して、コーティングされた粉粒体を得る。この時のコーティング装置は、特に限定されるものではないが、好ましくは流動層コーティング乾燥装置、遠心流動造粒装置、転動流動コーティング乾燥装置等が用いられる。
また、圧縮成形後の錠剤にコーティングを行う際のコーティング装置は、特に限定されるものではないが、好ましくはドラム式フィルムコーティング乾燥装置または流動層コーティング装置が用いられる。
本発明の医薬組成物からの塩酸ベニジピンの即溶出化は、塩酸ベニジピンを含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶の体積平均粒子径を1.0〜50.0μm、好ましくは体積平均粒子径および個数平均粒子径を4.5〜30.0μmとする、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体を含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体の体積平均粒子径を1.0〜50.0μm、好ましくは4.5〜50.0μmとすることにより行うことができ、例えば、上記した本発明の医薬組成物の製造法により塩酸ベニジピン含有医薬組成物を製造することによって行うことができる。
次に、本発明を実施例でさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
(塩酸ベニジピン原薬の粉砕)
塩酸ベニジピン原薬(ロットP−010、協和発酵製、体積平均粒子径65.0μm、個数平均粒子径10.3μm)5000gを粉砕機サンプルミル(KIIWG−1F型、不二パウダル製)による1回粉砕処理に付した。さらに、得られた粉砕された塩酸ベニジピン結晶をジェットミル粉砕機(PJM−100SP、日本ニューマチック工業社製)による1回粉砕処理に付し、粉砕された塩酸ベニジピン結晶を得た。粉砕された塩酸ベニジピン結晶の平均粒子径は、流動パラフィン懸濁による湿式法で顕微鏡下イメージアナライザー(オリンパスSP−500型)にて測定した。その結果、粉砕された塩酸ベニジピン結晶は、体積平均粒子径9.4μm、個数平均粒子径4.9μmであった。
(粉砕された塩酸ベニジピン結晶を用いた錠剤製造)
上記の粉砕された塩酸ベニジピン結晶を用いて、以下の処方および製造法により、錠剤を得た。
(錠剤処方)

(錠剤製造法)
粉砕された塩酸ベニジピン結晶、ラクトースおよびバレイショデンプンをポリビニルアルコールの水溶液を噴霧下、流動層造粒機にて造粒し、さらに、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをV型混合機にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を用いて、錠剤径7mmφ、錠剤重量130mgの錠剤を得た。
【実施例2】
(塩酸ベニジピン原薬の粉砕)
塩酸ベニジピン原薬(ロットP−010、協和発酵製、体積平均粒子径65.0μm、個数平均粒子径10.3μm)5000gを粉砕機サンプルミル(KIIWG−1F型、不二パウダル製)による1回粉砕処理に付し、粉砕された塩酸ベニジピン結晶を得た。粉砕された塩酸ベニジピン結晶の平均粒子径は、流動パラフィン懸濁による湿式法で顕微鏡下イメージアナライザー(オリンパスSP−500型)にて測定した。その結果、粉砕された塩酸ベニジピン結晶は、体積平均粒子径14.5μm、個数平均粒子径6.2μmであった。
(粉砕された塩酸ベニジピン結晶を用いた錠剤製造)
上記の粉砕された塩酸ベニジピン結晶を用いて、以下の処方および製造法により、錠剤を得た。
(錠剤処方)

(錠剤製造法)
粉砕された塩酸ベニジピン結晶、ラクトースおよびバレイショデンプンをポリビニルアルコールの水溶液を噴霧下、流動層造粒機にて造粒し、さらに、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをV型混合機にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を用いて、錠剤径7mmφ、錠剤重量130mgの錠剤を得た。
【実施例3】
(塩酸ベニジピン原薬の篩過)
塩酸ベニジピン原薬(ロットP−010、協和発酵製、体積平均粒子径65.0μm、個数平均粒子径10.3μm)5000gを振動フルイ機[100mesh(150μm)篩過]にて処理し、篩過された塩酸ベニジピン結晶を得た。篩過された塩酸ベニジピン結晶の平均粒子径は、流動パラフィン懸濁による湿式法で顕微鏡下イメージアナライザー(オリンパスSP−500型)にて測定した。その結果、篩過された塩酸ベニジピン結晶は、体積平均平均粒子径26.3μm、個数平均粒子径6.6μmであった。
(篩過された塩酸ベニジピン結晶を用いた錠剤製造)
上記の篩過された塩酸ベニジピン結晶を用いて、以下の処方および製造法により、錠剤を得た。
(錠剤処方)

(錠剤製造法)
篩過された塩酸ベニジピン結晶、ラクトースおよびバレイショデンプンをポリビニルアルコールの水溶液を噴霧下、流動層造粒機にて造粒し、さらに滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをV型混合機にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を用いて、錠剤径7mmφ、錠剤重量130mgの錠剤を得た。
比較例1
(未粉砕または未篩過塩酸ベニジピン結晶を用いた錠剤製造)
塩酸ベニジピン原薬(ロットP−010、協和発酵製、体積平均粒子径65.0μm、個数平均粒子径10.3μm)を用いて、以下の処方および製造法により、錠剤を得た。
(錠剤処方)

(錠剤製造法)
塩酸ベニジピン原薬(ロットP−010、協和発酵製、体積平均粒子径65.0μm、個数平均粒子径10.3μm)、ラクトースおよびバレイショデンプンをポリビニルアルコールの水溶液を噴霧下、流動層造粒機にて造粒し、さらに滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをV型混合機にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を用いて、錠剤径7mmφ、錠剤重量130mgの錠剤を得た。
比較例2
(未粉砕または未篩過塩酸ベニジピン結晶を用いた錠剤製造)
塩酸ベニジピン原薬(ロットP−005、協和発酵製、体積平均粒子径147.1μm、個数平均粒子径9.7μm)を用いて、以下の処方および製造法により、錠剤を得た。
(錠剤処方)

(錠剤製造法)
塩酸ベニジピン原薬(ロットP−005、協和発酵製、体積平均粒子径147.1μm、個数平均粒子径9.7μm)、ラクトースおよびバレイショデンプンをポリビニルアルコールの水溶液を噴霧下、流動層造粒機にて造粒し、さらに滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムをV型混合機にて混合し、打錠用顆粒を得た。この打錠用顆粒を用いて、錠剤径7mmφ、錠剤重量130mgの錠剤を得た。
実施例1、2、3および比較例1、2で用いた塩酸ベニジピン結晶の体積平均粒子径および個数平均粒子径を表1に示した。


試験例:溶出試験
溶出試験は日局第1法(回転バスケット法)に従い、試験液[ラウリル硫酸ナトリウムのpH6.8リン酸ナトリウム緩衝液溶液(1→500)]900mlを用いて行い、操作条件は、37℃、50rpmで実施した。試験開始10、20、30、45、60分後にサンプリングされた溶出液を高速液体クロマトグラフィー法[カラム:YMC A−301−1(4.6φ×100mm)、温度:40℃、移動層:0.05mol/Lリン酸二水素カリウム水溶液/アセトニトリル混液(55:45)+1mmol/Lラウリル硫酸ナトリウム水溶液]により定量し、溶出プロファイルとして評価した。
実施例1、2、3および比較例1、2で得られた錠剤の溶出試験結果を表2に示した。

比較例1および2で得られた錠剤では、塩酸ベニジピンの溶出遅延が観察された。一方、粉砕された塩酸ベニジピン結晶を用いて製造された錠剤(実施例1、2)および篩過された塩酸ベニジピン結晶を用いて製造された錠剤(実施例3)では、速やかな塩酸ベニジピンの溶出が観察された。
【産業上の利用可能性】
本発明により、主薬である塩酸ベニジピンの速やかな吸収を促進するための、速やかな溶出性を有する塩酸ベニジピン含有医薬組成物等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積平均粒子径1.0〜50.0μmの塩酸ベニジピン結晶、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する体積平均粒子径1.0〜50.0μmの粉粒体を含有することを特徴とする塩酸ベニジピン含有医薬組成物。
【請求項2】
体積平均粒子径および個数平均粒子径が4.5〜30.0μmの塩酸ベニジピン結晶、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する体積平均粒子径4.5〜50.0μmの粉粒体を含有することを特徴とする塩酸ベニジピン含有医薬組成物。
【請求項3】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、塩酸ベニジピン結晶と水溶性または水親和性を有する機能性添加剤との重量比が1:99〜99:1である請求の範囲1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する賦形剤である請求の範囲1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する賦形剤がデンプン類、デンプン誘導体、糖類、糖アルコール類、セルロース類、セルロース誘導体またはデキストリンである請求の範囲1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が崩壊剤である請求の範囲1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
崩壊剤がデンプン類、デンプン誘導体、セルロース類またはセルロース誘導体である請求の範囲6記載の医薬組成物。
【請求項8】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する結合剤である請求の範囲1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
水溶性または水親和性を有する結合剤がセルロース類、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンである請求の範囲8記載の医薬組成物。
【請求項10】
コーティングされていることを特徴とする請求の範囲1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
塩酸ベニジピンを含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶の体積平均粒子径を1.0〜50.0μmとする、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体を含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体の体積平均粒子径を1.0〜50.0μmとすることを特徴とする、該医薬組成物からの塩酸ベニジピンの即溶出化方法。
【請求項12】
塩酸ベニジピンを含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶の体積平均粒子径および個数平均径を4.5〜30.0μmとする、または塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体を含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する粉粒体の体積平均粒子径を4.5〜50.0μmとすることを特徴とする、該医薬組成物からの塩酸ベニジピンの即溶出化方法。
【請求項13】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する医薬組成物において、塩酸ベニジピン結晶と水溶性または水親和性を有する機能性添加剤との重量比が1:99〜99:1である請求の範囲11または12記載の即溶出化方法。
【請求項14】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する医薬組成物において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する賦形剤である請求の範囲11〜13のいずれかに記載の即溶出化方法。
【請求項15】
水溶性または水親和性を有する賦形剤がデンプン類、デンプン誘導体、糖類、糖アルコール類、セルロース類、セルロース誘導体またはデキストリンである請求の範囲11〜14のいずれかに記載の即溶出化方法。
【請求項16】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する医薬組成物において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が崩壊剤である請求の範囲11〜15のいずれかに記載の即溶出化方法。
【請求項17】
崩壊剤がデンプン類、デンプン誘導体、セルロース類またはセルロース誘導体である請求の範囲16記載の即溶出化方法。。
【請求項18】
塩酸ベニジピン結晶および水溶性もしくは水親和性を有する機能性添加剤を含有する医薬組成物において、水溶性または水親和性を有する機能性添加剤が水溶性または水親和性を有する結合剤である請求の範囲11〜15のいずれかに記載の即溶出化方法。
【請求項19】
水溶性または水親和性を有する結合剤がセルロース類、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンである請求の範囲18記載の即溶出化方法。
【請求項20】
医薬組成物がコーティングされている医薬組成物である請求の範囲11〜19のいずれかに記載の即溶出化方法。

【国際公開番号】WO2004/110448
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505044(P2005−505044)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008821
【国際出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【特許番号】特許第3786287号(P3786287)
【特許公報発行日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】