説明

塩酸ランジオロールを含有する頻脈性不整脈の治療剤

【構成】(1)重症患者および/または術後患者に対して高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、所望により引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)を行い、さらに所望により引き続いて上記(a)および(b)の組み合わせを1〜4回行うことを特徴とする頻脈性不整脈の治療剤、および(2)高含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルと低含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルを組み合わせてなる頻脈性不整脈の治療用キット。
【効果】塩酸ランジオロールは短時間型β1遮断作用を有し、頻脈性不整脈の治療に有用であり、またその作用が短時間であるため、その投与方法を適宜最適化することにより心臓にかかる負担が小さく、患者にとって有益な薬剤となる。またそれを用いたキット製剤としても有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短時間型β1遮断薬である塩酸ランジオロールを含有する頻脈性不整脈の治療剤および塩酸ランジオロールを用いてなる頻脈性不整脈の治療用キットに関する。
さらに詳しく言えば、短時間型β1遮断薬である塩酸ランジオロールを含有する重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈の治療剤、および塩酸ランジオロールを用いてなる重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈の治療用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
(−)−[(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル−3−[4−[(S)−2−ヒドロキシ−3−(2−モルホリノカルボニルアミノ)エチルアミノ]プロポキシ]フェニルプロピオン酸・1塩酸塩(CAS 登録番号:144481-98-1;以下、塩酸ランジオロールという。)は、短時間型β1遮断薬として、手術時の頻脈性不整脈(心房細動、心房粗動、洞性頻脈)に対する緊急処置に使用されている(特開平3-072475号公報(特許文献1))。
【0003】
不整脈とは、心臓の興奮が異所性であるもの、伝導障害があるもの、または興奮頻度が毎分60回から100回の範囲外にあるものを総称していう。
不整脈は、期外収縮性不整脈(心房性期外収縮、心室性期外収縮など)、徐脈性不整脈(洞不全症候群、房室ブロックなど)、および頻脈性不整脈(心房頻拍、心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動、WPW症候群など)の3つに分けられ、β遮断薬が抗不整脈作用を発揮する不整脈は、心拍数が100回を超える頻脈性不整脈である。
【0004】
頻脈性不整脈は、特に心疾患を有する患者の手術時に心筋酸素消費量の増加をもたらし、予後を悪化させ、合併症や死亡の原因となる。β遮断薬は生体内の交感神経β受容体に拮抗して交感神経の興奮を抑え、心拍数および心収縮を低下させ、心筋酸素消費量の増加を抑える。また心拍数の減少に伴い、心拡張周期を延長することにより、冠血流の増大をもたらし虚血性心疾患の進展を抑制する。
【0005】
手術中においては、麻酔導入、気管内挿管、皮膚切開、手術操作、気管チューブ抜管などの手術中のストレスや侵襲により一過性の強い交感神経興奮を引き起こし、生体内のエピネフリンおよびノルエピネフリンが異常レベルに達し、一過性の頻脈を生じやすい。
【0006】
一方、手術中に限らず、重症患者(例えば、集中治療を要する患者)や、術後患者もまた頻脈性不整脈の症状を呈することがある。かかる患者における塩酸ランジオロールの有用性についてはこれまで全く知られていない。
例えば、手術後においては、心臓の器質的障害に加え、外傷や手術による炎症、カニューレ挿入等による心膜炎の発生、手術による自律神経系の崩壊、虚血性の傷害、心停止や心肺バイパス術の残留効果など、また手術後は心拍出量の減少症や体液量減少症を引き起こすことがあり、β作動薬であるドーパミンおよびドブタミンや電解質が投薬される場合もあり、非常に多数の要因が複雑に絡み合って頻脈を高頻度に発生する。手術後は安静時、伏臥時であっても、患者は術中と比べて厳重な管理下に置かれているわけではなく、またその動きが活発になることもあるため、手術を受けた際の傷跡が疼いたり、傷口が開くなど、患者の病状は大きく変わる恐れがある。
また重症患者においても、内科系、外科系など重篤な疾患を有する患者や救急外来に運ばれてきた重症患者は、心拍数の上昇が生命に影響を与える可能性がある。
【0007】
手術中は、主に因果関係の明確な交感神経系の興奮が関与した頻脈が発生すること、および全身麻酔薬等で管理された状況下にあることから、医師の裁量により投与量を臨機応変に調節することが有用である。
一方、重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈は、その原因が様々であり、複雑な要因が絡みあって頻脈が発生する。交感神経系関与の割合も様々であり、患者は必ずしも厳重な管理下におかれているわけではないので、高用量による過度の心抑制が問題となるおそれがあり、低用量から徐々に用量を上げていくことで有意に所望の心拍数を得る投与治療法が望ましい。
【0008】
上記に示すように、手術中の患者と重症患者や術後患者においては誘発される頻脈の要因は大きく異なることから、β遮断薬の投与量および投与方法が異なって然るべきである。
【0009】
頻脈性不整脈に対しては、現在、カルシウム拮抗薬、塩酸プロプラノロールなどの既存の長時間作用型のβ遮断薬などが用いられている。しかしながら、カルシウム拮抗薬は過度の血圧低下や心抑制の遷延が懸念され、既存のβ遮断薬は半減期が2〜5時間と作用時間が長く、過度の心機能抑制作用やβ2受容体遮断作用を介した気管支収縮作用を引き起こす可能性があるため、その使用が制限されている。
【0010】
塩酸ランジオロールは、血中および肝臓のエステラーゼで速やかに非活性体に分解されるため、ヒトおよびイヌにおける生体内消失半減期は各々3.96分および4.6分と、既存のβ遮断薬に比べきわめて短いものである。またそのβ1選択性(β1/β2)は約250(プロプラノロールは約0.8)と極めて高い心臓選択性を有し、気道系への影響は少ないことが推測される。
【0011】
なお、術後における頻脈性不整脈は、器質的な心臓疾患を有する患者で、特に心臓手術(冠状動脈バイパス術、僧帽弁置換術、大動脈弁置換術など)後に高頻度(術後2〜5日をピークとする。)に発生し、集中治療室での滞在を余儀なくされ、それに伴い医療費を圧迫することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平3−072475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記から、手術中のみならず集中治療を要する重症患者および/または術後患者においても、刻々と変化する生理機能に対しては、塩酸ランジオロールのように短時間型の調節性の優れた医薬品が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記事情を鑑み鋭意研究した結果、重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈の治療方法として、驚くべきことに、塩酸ランジオロールを使用することによってきわめて安全に、重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈の非常に優れた治療効果などが得られ、臨床上十分に有用であることを見出し、さらに、目的とする治療効果を得るのに適した投与量および投与方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、
(1)塩酸ランジオロールを含有する頻脈性不整脈の治療剤、
(2)頻脈性不整脈が重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈である前記1記載の治療剤、
(3)頻脈性不整脈が重症患者における頻脈性不整脈である前記2記載の治療剤、
(4)重症患者が集中治療室に入室している患者である前記3記載の治療剤、
(5)頻脈性不整脈が、術後患者における頻脈性不整脈である前記2記載の治療剤、
(6)高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を1回行うか、または高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)の組み合わせを1〜4回行うことを特徴とする前記2記載の治療剤、
(7)高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行う前記6記載の治療剤、
(8)塩酸ランジオロールを0.0625mg/kg/分を実質的に1分間投与する前記7記載の治療剤、
(9)高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)を行う組み合わせを1〜4回繰り返し行う前記6記載の治療剤、
(10)工程(a)が30秒〜3分間であり、工程(b)が5〜30分間である前記9記載の治療剤、
(11)工程(a)が実質的に1分間であり、工程(b)が実質的に10分間である前記9記載の治療剤、
(12)工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを1回行う前記9記載の治療剤、
(13)工程(a)が0.0625mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、工程(b)が0.01〜0.04mg/kg/分を投与する工程である前記12記載の治療剤、
(14)工程(a)の投与量が0.015〜0.125mg/kg/分であり、工程(b)の投与量が0.005〜0.04mg/kg/分である前記12記載の治療剤、
(15)工程(a)が0.015〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、工程(b)が0.005〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である前記12記載の治療剤、
(16)工程(a)が0.03〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、工程(b)が0.01〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である前記12記載の治療剤、
(17)工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である前記12記載の治療剤、
(18)工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である前記12記載の治療剤、
(19)工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを2回行うことを特徴とする前記9記載の治療剤、
(20)1回目の工程(a)が0.015〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03〜0.125mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01〜0.04mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である前記19記載の治療剤、
(21)1回目の工程(a)が0.03〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.01〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.06〜0.125mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.02〜0.04mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である前記19記載の治療剤、
(22)1回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である前記19記載の治療剤、
(23)1回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.125mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.04mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である前記19記載の治療剤、
(24)工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを3回行うことを特徴とする前記9記載の治療剤、
(25)1回目の工程(a)が0.015〜0.03mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005〜0.01mg/kg/分を5分〜30分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01〜0.02mg/kg/分を5分〜30分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.06〜0.125mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.02〜0.04mg/kg/分を5分〜30分間投与する工程である前記24記載の治療剤、
(26)1回目の工程(a)が0.015mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である前記24記載の治療剤、
(27)1回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.125mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.04mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である前記24記載の治療剤、
(28)工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを4回行うことを特徴とする前記9記載の治療剤、
(29)1回目の工程(a)が0.015mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005mg/kg/分から0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、4回目の工程(a)が0.125mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、4回目の工程(b)が0.04mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である前記28記載の治療剤、
(30)(i)高含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルおよび(ii)低含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルを組み合わせてなる頻脈性不整脈の治療用キット、
(31)頻脈性不整脈の治療剤を製造するための塩酸ランジオロールの使用、
(32)高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)を行う組み合わせを1〜4回行う前記31記載の使用、
(33)有効量の塩酸ランジオロールを哺乳動物に投与することを特徴とする頻脈性不整脈の治療方法、
(34)高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)を行う組み合わせを1〜4回行う前記33記載の治療方法、
(35)静脈注射剤である前記1乃至5のいずれかに記載の治療剤、および
(36)工程(a)が静脈内急速投与であり、工程(b)が静脈内持続投与である前記1乃至5のいずれかに記載の治療剤に関する。
【0016】
本発明において、重症患者とは、特に限定されないが、例えば、集中治療を要する患者、例えば集中治療室に入室した患者を表わす。
集中治療を要する患者とは、特に限定されないが、例えば、急性循環器疾患、急性消化器疾患、急性呼吸器疾患、急性末梢性疾患、急性中枢性疾患、急性傷害、急性アレルギー疾患、急性泌尿器系疾患が挙げられ、また心不全、脱水、脳血管障害、虚血性心疾患、消化性潰瘍、感染症、発熱、蕁麻疹、炎症などの疾患に罹患した患者が挙げられる。
【0017】
術後患者の受けた手術の種類としては特に限定されないが、例えば、細胞移植、臓器移植、開腹術、開胸術、癌手術、神経手術などが挙げられる。術後の症状としては、特に限定されないが、例えば、重症疾患(例えば、幹細胞移植後敗血症、食道癌術後症例、開腹術後成人呼吸促拍症候群症例、開胸術後症例など)が挙げられる。
【0018】
本発明において、工程(a)における短時間静脈内急速(ボーラス)投与のための高用量とは、塩酸ランジオロールの導入にあたり定常の血中濃度を速やかに得るのに必要な投与量をいう。
【0019】
重症患者における頻脈性不整脈に対して、工程(a)における高用量としては、例えば、患者体重1kgあたり0.04〜0.12mg/分の範囲内の投与量が好ましく、特に0.0625mg/分が好ましい。
術後患者における頻脈性不整脈に対して、工程(a)における高用量としては、例えば、患者体重1kgあたり0.015〜0.125mg/分の投与量が好ましい。0.03〜0.125mg/分が特に好ましい。
【0020】
工程(a)における短時間とは、塩酸ランジオロールの導入にあたり定常の血中濃度を速やかに得るのに必要な時間をいう。
重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈に対して、工程(a)における短時間とは、塩酸ランジオロールの導入にあたり定常の血中濃度を速やかに得るのに必要な時間をいう。具体的には、約30秒〜約5分間が好ましく、より好ましくは約30秒〜約3分間である。最も好ましくは約1分間である。
【0021】
工程(b)における長時間静脈内持続(インフュージョン)投与のための低用量とは、不整脈患者が定常的に正常な脈拍数(例えば、50〜100回/分)を得るのに十分な投与量をいう。
重症患者における頻脈性不整脈に対して、工程(b)における低用量としては、例えば、患者体重1kgあたり0.01〜0.04mg/分の範囲内の投与量が好ましい。術後患者における頻脈性不整脈に対して、工程(b)における低用量としては、例えば、患者体重1kgあたり0.005〜0.04mg/分の投与量が好ましく、0.005〜0.02mg/分が特に好ましい。
【0022】
工程(b)における長時間とは、不整脈患者が定常的に正常な脈拍数(例えば、50〜100回/分)を得るのに十分な時間をいう。
術後患者における頻脈性不整脈に対して、工程(b)における長時間としては、例えば、約5分〜約24時間が好ましく、より好ましくは約5分〜約6時間である。更に好ましくは約5分〜約30分間であり、最も好ましくは約10分間である。
【0023】
工程(a)における静脈内急速投与とは、上記の投与量を短時間投与することをいい、例えばインフュージョンポンプや輸液ポンプなどの機器を使った投与または手動での投与をいう。
工程(b)における静脈内持続投与とは、上記の投与量を長時間投与することをいい、例えばインフュージョンポンプや輸液ポンプなどの機器を使った投与または手動での投与をいう。
【0024】
本発明において、工程(a)で高用量を静脈内急速投与するのは、迅速に塩酸ランジオロールの血中濃度を上げることを目的とし、一方、工程(b)で低用量を静脈内持続投与するのは、半減期の短い薬物である塩酸ランジオロールの血中濃度を一定に保つことを目的とする。
【0025】
「静脈内急速投与」とは、上記の高用量を短時間投与することをいい、ボーラス投与と同じ意味を表わす。「静脈内持続投与」とは、上記の低用量を長時間投与することをいい、インフュージョン投与と同じ意味を表わす。
【0026】
「工程(a)での高用量」と「工程(b)での低用量」の比は、工程(a)を行った後工程(b)を行うにあたり、その比が2:1〜5:1の比であることが好ましい。術後患者における頻脈性不整脈においてはさらに好ましくは、2:1〜4:1の比であり、特に好ましくは3:1の比である。
重症患者における頻脈性不整脈においては好ましくは3:2〜6:1の比である。
【0027】
1回目の工程(a)および工程(b)の投与量に対して、それに引き続いて行われる2回目の工程(a)および工程(b)の投与量は、それぞれ1回目の(a)および(b)よりも高用量である。3回目および4回目の工程も同様である。
特に好ましい投与態様としては、以下が挙げられる。
【0028】
工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を1回行う場合として、
1)(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、
2)(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、
3)(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、
4)(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/分
の投与方法が好ましく、特に2)および3)が好ましい。
【0029】
工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を2回行う場合として、
1)(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、続いて(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、
2)(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、続いて(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、
3)(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、続いて(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/分
の投与方法が好ましく、特に2)および3)が好ましい。
【0030】
工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を3回行う場合として、
1)(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、続いて(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、続いて(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、
2)(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、続いて(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、続いて(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/分
の投与方法が好ましく、特に2)が好ましい。
【0031】
工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を4回行う場合として、
(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、続いて(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、続いて(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、続いて(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/分
の投与方法が好ましい。
なお、重症患者に対する投与として好ましくは、
(a)0.0625mg/kg/分、続いて(b)0.01〜0.04mg/kg/分
の投与方法である。
【0032】
本発明において、(i)高含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルおよび(ii)低含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルを組み合わせてなる重症患者における頻脈性不整脈の治療用キットとは、10mg〜100mgの塩酸ランジオロールを含有するバイアルおよび30mg〜300mgの塩酸ランジオロールを含有するバイアルの組み合わせである治療用キットをいう。
【0033】
本発明に使用される塩酸ランジオロールは、特許2,004,651号および特許3,302,647号に記載された化合物であり、その化学名は(−)−[(S)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチル−3−[4−[(S)−2−ヒドロキシ−3−(2−モルホリノカルボニルアミノ)エチルアミノ]プロポキシ]フェニルプロピオン酸・1塩酸塩である。
【0034】
塩酸ランジオロールは、それ自体公知の方法、たとえば特許2,004,651号または特許3,302,647号公報に記載された方法に従って、医薬組成物として種々の剤形に用いることができる。例えば静脈投与できる剤形であればいずれでも良いが、とりわけ液剤および用時溶剤に溶解して用いる凍結乾燥剤が好ましい。かかる剤形においては、塩酸ランジオロールを1バイアルあたり1mgから1,000mg含有する剤形が好ましい。より好ましくは10mgから100mgであり、更に好ましくは50mg含有する剤形である。
医薬組成物に使用されるものとしては、一般的に使用されている賦形剤、結合剤、潤沢剤などから適宜選択して用いられる。
【発明の効果】
【0035】
塩酸ランジオロールは、その投与量および投与方法を最適化することにより、重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈の治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明の塩酸ランジオロールの投与による重症患者および術後患者における頻脈性不整脈患者の臨床効果を、実施例および製剤例を挙げて詳しく述べるが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させた態様も本発明に含まれる。
【0037】
実施例1:重症患者に対する塩酸ランジオロールの作用
対象患者:
集中治療を要する重症患者症例10例(幹細胞移植後敗血症3例、食道癌手術後症例2例、開腹手術後成人呼吸促拍症候群症例3例、開胸術後症例症例2例;対象患者の平均年齢65.8歳)を対象に、各症例で心拍数が120以上になった時点で通常の頻脈発作への治療を施行してもなお頻脈が持続する場合に以下の投与方法に従って塩酸ランジオロールを投与した。
【0038】
方法:
初期投与量0.0625mg/kg/分を単回投与し、続けて0.01mg/kg/分で持続投与を開始し、目的とする心拍数が得られるまで随時0.04mg/kg/分まで増量した。この間の血圧変動、心拍数の変動、効果発現までの時間と0.0625mg/kg/分の単回投与の効果持続時間、塩酸ランジオロールの総投与量等を検討した。
結果:
・心拍数
対象患者に対して0.0625mg/kg/分の単回投与後、約1分で心拍数の低下を認めた。単回投与の効果持続は平均12分であった。
【0039】
実施例2:臨床試験例
術後頻脈性不整脈患者を対象にして、以下の条件で比較試験を行った。
用法:
(1)被験薬(塩酸ランジオロール)投与群、
(2)偽薬(プラセボ)投与群。
治験薬の剤型・含有量:
(1)被験薬:塩酸ランジオロールを1バイアル中に50mg含有する白色凍結乾燥品、
(2)偽薬:塩酸ランジオロール50mgと外観上識別不能なプラセボバイアル。
【0040】
被験薬投与群および偽薬投与群の投与方法・投与量(工程(a)および工程(b))を表1に示す。
【表1】

【0041】
被験薬または偽薬各4バイアルを治験薬溶解用生理食塩水(20ml)に溶解し、インフュージョンポンプを用いて投与を行った。患者に対し、1分間の急速静注後に10分間の静脈内持続投与を行った(第一段階)。投与後11分時点で徐拍目標に達した場合は投与を終了した。投与後11分時点で徐脈目標に達しない場合には用量を漸増し、さらに1分間の急速静注後に10分間の静脈内持続投与を行った(第二段階)。第二段階の途中で徐脈目標に達した場合は投与を終了した。
【0042】
徐脈目標は投与直前心拍数に対する20%以上の徐脈化かつ心拍数100回/分未満とした。
なお、徐脈目標は、投与直前心拍数に対する20%以上の徐拍化かつ心拍数100回/分未満、ただし、心拍数100回/分以上を徐脈目標とする場合は投与前に予め設定した。
【0043】
症例数:偽薬投与群 患者数48
塩酸ランジオロール投与群 患者数48
成績:
最終用量における血圧の改善率の結果を表2に示す。
【表2】

表2から、塩酸ランジオロール投与群での最終用量改善率は60.4%であり、プラセボ投与群(0.0%)に比較して血圧の有意な改善が認められた。
【0044】
心拍数の変化率の結果を表3に示す。
投与直前と投与終了時(または中止時)における心拍数を評価した。投与終了後において、プラセボ投与群よりも塩酸ランジオロール投与の両群が、プラセボ群に対して有意な改善を示した。
【表3】

表3から、ダネット検定により、塩酸ランジオロール投与群はプラセボ投与群に比して、有意差をもって心拍数を低下させることが明らかである。
【0045】
上記に示した投与量以外でも、工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を1回行う場合として、
1)(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、
2)(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、
3)(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/分、
【0046】
工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を2回行う場合として、
1)(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、続いて(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、
2)(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、続いて(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/分、
【0047】
工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を3回行う場合として、
1)(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、続いて(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、続いて(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、
2)(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、続いて(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、続いて(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/分、
【0048】
工程(a)と工程(b)の組み合わせ投与を4回行う場合として、
(a)0.015mg/kg/分、続いて(b)0.005mg/kg/分、続いて(a)0.03mg/kg/分、続いて(b)0.01mg/kg/分、続いて(a)0.06mg/kg/分、続いて(b)0.02mg/kg/分、続いて(a)0.125mg/kg/分、続いて(b)0.04mg/kg/
のいずれの場合でも術後頻脈性不整脈の症状を改善した。
【0049】
製剤例1:塩酸ランジオロール50mg含有製剤の製造
以下の各成分を常法により混合した後、溶液を常法により滅菌し、5mlずつバイアルに充填し、常法により凍結乾燥し、1バイアル中50mgの活性成分を含有するバイアル10000本を得た。
・塩酸ランジオロール ………500g
・D−マンニトール ………500g
・水酸化ナトリウム ………420mg
・蒸留水 ………全量で6000ml
【0050】
製剤例2:偽薬剤の製造
以下の各成分を常法により混合した後、ろ過滅菌法により滅菌し、0.6mlずつバイアルに充填し、常法により凍結乾燥し、偽薬のバイアル10000本を得た。
・D−マンニトール ………969g
・塩化ナトリウム ………25g
・グリチルリチン酸モノアンモニウム ………6.0g
・リン酸水素2ナトリウム・12水塩 ………8.0g
・クエン酸 ………225mg
・注射用水 ………全量で6000ml
【産業上の利用可能性】
【0051】
塩酸ランジオロールは短時間型β1遮断薬として、重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈の治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸ランジオロールを含有する頻脈性不整脈の治療剤。
【請求項2】
頻脈性不整脈が重症患者および/または術後患者における頻脈性不整脈である請求項1記載の治療剤。
【請求項3】
頻脈性不整脈が重症患者における頻脈性不整脈である請求項2記載の治療剤。
【請求項4】
重症患者が集中治療室に入室している患者である請求項3記載の治療剤。
【請求項5】
頻脈性不整脈が、術後患者における頻脈性不整脈である請求項2記載の治療剤。
【請求項6】
高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を1回行うか、または高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)の組み合わせを1〜4回行うことを特徴とする請求項2記載の治療剤。
【請求項7】
高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行う請求項6記載の治療剤。
【請求項8】
塩酸ランジオロールを0.0625mg/kg/分を実質的に1分間投与する請求項7記載の治療剤。
【請求項9】
高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)を行う組み合わせを1〜4回繰り返し行う請求項6記載の治療剤。
【請求項10】
工程(a)が30秒〜3分間であり、工程(b)が5〜30分間である請求項9記載の治療剤。
【請求項11】
工程(a)が実質的に1分間であり、工程(b)が実質的に10分間である請求項9記載の治療剤。
【請求項12】
工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを1回行う請求項9記載の治療剤。
【請求項13】
工程(a)が0.0625mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、工程(b)が0.01〜0.04mg/kg/分を投与する工程である請求項12記載の治療剤。
【請求項14】
工程(a)の投与量が0.015〜0.125mg/kg/分であり、工程(b)の投与量が0.005〜0.04mg/kg/分である請求項12記載の治療剤。
【請求項15】
工程(a)が0.015〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、工程(b)が0.005〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である請求項12記載の治療剤。
【請求項16】
工程(a)が0.03〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、工程(b)が0.01〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である請求項12記載の治療剤。
【請求項17】
工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である請求項12記載の治療剤。
【請求項18】
工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である請求項12記載の治療剤。
【請求項19】
工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを2回行うことを特徴とする請求項9記載の治療剤。
【請求項20】
1回目の工程(a)が0.015〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03〜0.125mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01〜0.04mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である請求項19記載の治療剤。
【請求項21】
1回目の工程(a)が0.03〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.01〜0.02mg/kg/分を5〜30分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.06〜0.125mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.02〜0.04mg/kg/分を5〜30分間投与する工程である請求項19記載の治療剤。
【請求項22】
1回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である請求項19記載の治療剤。
【請求項23】
1回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.125mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.04mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である請求項19記載の治療剤。
【請求項24】
工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを3回行うことを特徴とする請求項9記載の治療剤。
【請求項25】
1回目の工程(a)が0.015〜0.03mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005〜0.01mg/kg/分を5分〜30分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03〜0.06mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01〜0.02mg/kg/分を5分〜30分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.06〜0.125mg/kg/分を30秒〜3分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.02〜0.04mg/kg/分を5分〜30分間投与する工程である請求項24記載の治療剤。
【請求項26】
1回目の工程(a)が0.015mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である請求項24記載の治療剤。
【請求項27】
1回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.125mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.04mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である請求項24記載の治療剤。
【請求項28】
工程(a)を行い、引き続いて工程(b)を行う組み合わせを4回行うことを特徴とする請求項9記載の治療剤。
【請求項29】
1回目の工程(a)が0.015mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、1回目の工程(b)が0.005mg/kg/分から0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、2回目の工程(a)が0.03mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、2回目の工程(b)が0.01mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、3回目の工程(a)が0.06mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、3回目の工程(b)が0.02mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程であり、4回目の工程(a)が0.125mg/kg/分を実質的に1分間投与する工程であり、4回目の工程(b)が0.04mg/kg/分を実質的に10分間投与する工程である請求項28記載の治療剤。
【請求項30】
(i)高含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルおよび(ii)低含量の塩酸ランジオロールを含有するバイアルを組み合わせてなる頻脈性不整脈の治療用キット。
【請求項31】
頻脈性不整脈の治療剤を製造するための塩酸ランジオロールの使用。
【請求項32】
高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)を行う組み合わせを1〜4回行う請求項31記載の使用。
【請求項33】
有効量の塩酸ランジオロールを哺乳動物に投与することを特徴とする頻脈性不整脈の治療方法。
【請求項34】
高用量の塩酸ランジオロールを短時間投与する工程(a)を行い、引き続いて低用量の塩酸ランジオロールを長時間投与する工程(b)を行う組み合わせを1〜4回行う請求項33記載の治療方法。
【請求項35】
静脈注射剤である請求項1乃至5のいずれかに記載の治療剤。
【請求項36】
工程(a)が静脈内急速投与であり、工程(b)が静脈内持続投与である請求項1乃至5のいずれかに記載の治療剤。

【公開番号】特開2010−248263(P2010−248263A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175599(P2010−175599)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【分割の表示】特願2003−302805(P2003−302805)の分割
【原出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成15年5月29日 「社団法人日本麻酔科学会第50回学術集会」において文書をもって発表
【出願人】(510097747)独立行政法人国立がん研究センター (35)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】