説明

填料処理剤およびそれにより処理した填料を含有する紙

【課題】
不透明度や白色度向上のためには、填料の配合を高める方法が有効であるが、同時に紙力が低下してしまう問題がある。填料を前処理することにより紙力低下を解決する方法が提案されているが、まだ十分な効果が発現していない。本発明は、マイクロゲルを填料の前処理に応用し、不透明度や白色度向上とともに紙力の低下を防止する処方を提案する。
【解決手段】
水中に分散剤として水溶性高分子を存在させ、特定の非イオン性単量体を全単量体に対し30モル%以上含有する単量体(混合物)を、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度にて、(共)重合および架橋剤による架橋反応により得られる感温性微粒子ゲルを含有する填料処理剤を、填料あるいは無機物微粒子水性分散液に添加し、製紙原料スラリーに混合した後抄紙することにより課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は填料処理剤に関し、詳しくは水中に分散剤として水溶性高分子を存在させ、特定の非イオン性単量体を30モル%以上含有する単量体(混合物)を、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度にて、(共)重合および架橋剤による架橋反応により得られる感温性微粒子ゲルを、填料あるいは無機物微粒子水性分散液に添加し、その填料あるいは無機物微粒子水性分散液を製紙原料スラリーに混合した後抄紙することにより、高白色度を維持しつつ、不透明度、紙力の向上した紙を製造することが可能な填料処理剤、及びこの填料処理剤により処理した填料を含む紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年製紙現場には、環境保全やコスト削減の観点から、軽坪量化、低パルプ量の紙の製造が求められている。しかし、坪量やパルプ量を減らすことで紙が薄くなると、不透明度が低減する問題が発生し、特に印刷時に印刷が反対面に透けて見える裏抜けが発生する。さらに製紙原料中の歩留率も低下し、白色度も低下する傾向にある。そのため、坪量やパルプ量を減らしても高不透明度、高白色度を維持する要求が高まっている。
【0003】
不透明度や白色度向上のためには、填料の配合を高める方法が有効であるが、同時に紙力が低下してしまう問題がある。また、紙を嵩高にすることにより、不透明度を向上させ、裏抜けを防止させる方法も提案されているが、嵩高の紙は繊維間の距離が離れているため、やはり紙力が低下してしまうという問題があった。これらの問題を解決するため、填料に添加剤を加えた填料水性分散液を作成し、その填料水性分散液をパルプに添加し抄紙することで、填料のパルプ定着を改善し、強度低下を抑制する方法が検討されている。この添加剤として、カチオン化澱粉やカチオン化グアーガムのようなカチオン性半天然高分子や、ジアリルアミン塩やジアリルジメチルアンモニウムクロリドの重合体のようなカチオン性合成高分子、アニオン性填料処理剤としてスチレン−アクリルポリマー、両性ポリマー等が用いられてきた。(特許文献1−3など)
【0004】
しかしながら既存の填料処理剤においては、白色度、不透明度、紙力に対していずれかは改善されるものの、すべての効果を同時に満足させるには不十分であった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−60794号公報
【特許文献2】特公平6−104790号公報
【特許文献3】特開2009−242980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知の填料処理剤のこれら欠点を鑑み、本発明者らは白色度を維持しつつ不透明度と紙力を向上させることができる填料処理剤を得ることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水中に分散剤として水溶性高分子を存在させ、下記一般式[1]で表される非イオン性単量体を全単量体に対し30モル%以上含有する単量体(混合物)を、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度にて、攪拌しつつ(共)重合および架橋剤による架橋反応により得られる感温性微粒子ゲルを含有する填料処理剤を、填料あるいは無機物微粒子水性分散液に添加し、その填料あるいは無機物微粒子水性分散液を製紙原料スラリーに混合した後抄紙する。その結果、高白色度を維持しつつ、不透明度、紙力の向上した紙を製造することが可能であり本発明の課題を解決することができる。
【化1】

一般式[1]
式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは水素原子またはC2m+1を、RはC2m+1をそれぞれ表す。なお、mは、1〜3の自然数を表す。もしくは、R−R間で(CH)nの環状構造を形成してもよい。なお、nは1〜3の自然数である。
【発明の効果】
【0008】
本発明で開発された填料処理剤は、様々な填料に対して効果を発現する。抄紙した紙は高白色度を維持しつつ、不透明度と紙力を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をさらに記述する。
【0010】
本発明に係る填料処理剤は、水中に分散剤として水溶性高分子を存在させ、下記一般式[1]で表される非イオン性単量体を全単量体に対し30モル%以上含有する単量体(混合物)を、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度にて、(共)重合および架橋剤による架橋反応により得ることができる感温性微粒子ゲルを含有する。
【0011】
前記填料処理剤に用いる一般式[1]で表される非イオン性単量体の量は、30〜100モル%の範囲であり、共重合性不飽和単量体として、一般式[1]以外の非イオン性単量体、カチオン性単量体、及びアニオン性単量体を0〜70モル%含んでも良い。またそれぞれの単量体は、上記の範囲にて一種類、もしくは数種類を用いることができる。
【0012】
一般式[1]で表される非イオン性単量体の例として、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−Nエチルアクリルアミド、N,N’−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン等が挙げられる。親水性−疎水性の転移が鋭敏であることから、N−イソプロピルアクリルアミドがより好ましい。これらの非イオン性単量体を複数組み合わせて使用することも可能である。
【0013】
一般式[1]以外の非イオン性水溶性単量体の例としては(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド等が挙げられる。これらの非イオン性水溶性単量体を複数組み合わせて使用することも可能である。
【0014】
カチオン性水溶性単量体の例として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレ−ト、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびこれらの塩などの三級アミノ基含有カチオン性単量体、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの四級アンモニウム塩基含有カチオン性単量体、また、アリルアミン、ジアリルメチルアミンおよびこれらの塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、その他カチオン基を有する単量体などが挙げられる。
【0015】
アニオン性水溶性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。これらのアニオン性単量体のうち、一種、もしくは複数種用いてもよい。これらは、未中和、部分中和、全中和のいずれの中和状態を用いることもできる。
【0016】
前記填料処理剤製造時に分散剤として用いられる水溶性高分子は、一般式[1]で表される非イオン性単量体とその他の共重合性不飽和単量体から形成される水不溶性微粒子ゲルを分散させる効果を持つ。水溶性高分子の例としては、上記の非イオン性単量体、カチオン性単量体、及びアニオン性単量体の重合体、及び共重合体が挙げられる。得られる水不溶性微粒子ゲルの分散安定性に寄与すること、及び水溶性高分子の分解安定性が高いことから、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド又は(メタ)アクリロイロオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドの重合体を用いることがより好ましい。
【0017】
分散剤として使用する水溶性高分子の添加量は、全単量体の質量に対して1〜50質量%が好ましく、より好ましくは5〜30質量%の範囲である。
【0018】
前記填料処理剤に用いる水溶性高分子の分子量としては、1,000〜5000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜500,000の範囲である。
【0019】
本発明の感温性微粒子ゲル分散液の製造には架橋剤を使用する。用いる架橋剤の例として、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタアクリルアミド、ジビニルベンゼン、N、N−ジアリルアミン、N、N−ジアリルアミンヒドロクロリド、N、N、N−トリアリルアミン、N、N、N−トリアリルアミンヒドロハライド、N−メチル−N、N、N−トリアンモニウムハライド、N−メチル−N、N、N−トリアリルアンモニウムハライド、N、N、N、N−テトラアリルアンモニウムハライド、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート等の複数のビニル基を有する多官能性単量体、N−ジメチルアクリルアミド等の熱架橋性単量体、ホルムアルデヒド等の後架橋促進剤等が挙げられる。このうち複数のビニル基を有する単量体を架橋剤として使用する場合は、重合時添加し重合と並行して架橋反応を行うことができる。またホルムアルデヒド等を架橋剤として使用する場合は、重合後、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度にてホルムアルデヒド等を添加し架橋反応を行う。従ってこれらの架橋剤うち、重合と並行して架橋反応を行うことができ、入手も容易であるメチレンビスアクリルアミドが最も好ましい架橋剤である。添加量は、
全単量体の質量に対して質量換算で50〜50,000ppmの範囲が好ましく、特に好ましくは1,000〜20,000ppmである。
【0020】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決めていき、温度としては、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度において行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ
−ト)、4、4−アゾビス(4−メトキシ−2、4ジメチル)バレロニトリルなどがあげられる。
【0021】
水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン-2−イル)プロパン]二塩酸塩 、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせがあげられる。さらに過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウムあるいはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t-ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエ−トなどをあげることができる。
【0022】
単量体の重合濃度は5〜50質量%の範囲であり、好ましくは8〜25質量%の範囲である。単量体の組成、重合法、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。
【0023】
主成分は一般式[1]で表される非イオン性単量体であり、水溶性高分子を存在させ、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度にて重合および架橋反応を行う。このような条件により得られる水不溶性微粒子ゲルの20℃における水中での膨潤後の粒径は、0.005〜100μmが望ましい。これ以上大きくなると、填料処理能力が低下する。最も好ましい大きさは、0.05〜20μmである。
【0024】
本発明における填料処理剤と填料の接触は、製紙原料スラリー内では行わず、製紙原料スラリーに添加する前に填料水性分散液の調製を行う。
【0025】
前記填料水性分散液の調製は、最初に水中に粉末状の填料を投入し、攪拌機等を用いて均一に分散させることにより、水性スラリーを調整する。分散させる方法は、公知のいずれの方法を用いても良い。その後填料処理剤を填料分散液に添加し、一定時間攪拌することで填料水性分散液が調製できる。
【0026】
前記填料としては、一般的に使用されているものであれば良い。例えば、粉砕した天然の石灰石、沈降性炭酸カルシウム(PCC)、ホワイトカーボン、クレー、焼成クレー、カオリン、タルク、シリカ、沈降性シリカ、アルミノ珪酸塩、二酸化チタン等が挙げられるが、特に制限はない。
【0027】
本発明に係る填料水性分散液に於ける填料処理剤の填料に対する混合比率は、特に制限は無いが、好ましくは填料に対して、填料処理剤を固形分換算で0.01〜5質量%であり、更に好ましくは0.02〜3質量%である。填料処理剤の量が0.01質量%未満の場合、効果が充分に発揮されない可能性がある。また、5質量%以上の場合には、使用する填料によっては過度の凝集を引き起こし、紙の地合いが悪化することがあり、填料処理剤を増量したことに見合う不透明度向上効果を期待することができない場合がある。このように処理して得られた填料水性分散液の製紙原料に対する添加量は、填料水性分散液の濃度により異なるが、製紙原料100質量%に対して5〜60質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。
【0028】
本発明の填料処理剤によって処理された填料を含有する紙は、填料水性分散液が混合されて成る製紙原料スラリーを抄紙することによって製造できる。填料水性分散液の添加場所は、ミキシングチェスト、種箱、マシンチェスト、ヘッドボックス、白水タンクなどのタンク、またこれらの設備と接続した配管中(ファンポンプ前後)等である。
【0029】
本発明では、必要に応じて紙力剤、濾水剤、歩留り剤、サイズ剤等、一般的に用いられるパルプ以外の製紙用薬剤と併用しても良い。
【0030】
また、本発明の紙の製造方法は、新聞用紙、書籍用紙、印刷・情報用紙等の紙の製造に適応できる。
【0031】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明する。但し本発明は、以下の実施例に制約されない。
【実施例1】
【0032】
攪拌機、窒素ガス導入管、及び温度制御装置を備えた反応槽にN−イソプロピルアクリルアミド(以下NIPAMと略記)30g、メチレンビスアクリルアミド0.3g(対単量体1.0質量%)、分散剤として水溶性高分子、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド6g(対単量体20質量%)、イオン交換水262.2gを仕込み溶解させた。得られた混合溶液を70℃の恒温槽中で攪拌下、窒素置換を20分行なった後、重合開始剤として、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.15gをイオン交換水1.5gに溶解した溶液を添加し重合反応を開始させた。反応温度を70℃±2℃で5時間重合させ反応を完結させ、白色の分散液を得た。得られた県濁溶液10質量部にイオン交換水90質量部を加え、1質量%に希釈した。この溶液を20℃に調整し、20℃における水中での膨潤後の水不溶性微粒子ゲルの粒径を、動的光散乱法(大塚電子株式会社、ELSZ−2)により測定し、Cumulant法にて解析したところ、平均粒径1.7μmを示した。この水不溶性微粒子ゲルを化合物1とする。
【実施例2】
【0033】
攪拌機、窒素ガス導入管、及び温度制御装置を備えた反応槽にNIPAM20g、50%アクリルアミド(以下AAMと略記)溶液20g、メチレンビスアクリルアミド0.2g(対単量体0.67ppm)、分散剤として水溶性高分子、ポリアクリロイロオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド3g(対単量体10質量%)、イオン交換水255.3gを仕込み溶解させた。得られた混合溶液を70℃の恒温槽中で攪拌下、窒素置換を20分行なった後、重合開始剤として、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン-2−イル)プロパン]二塩酸塩0.15gをイオン交換水1.5gに溶解した溶液を添加し重合反応を開始させた。反応温度を70℃±2℃で5時間重合させ反応を完結させ、白色の分散液を得た。得られた県濁溶液10質量部にイオン交換水90質量部を加え、1質量%に希釈した。この溶液を20℃に調整し、20℃における水中での膨潤後の水不溶性微粒子ゲルの粒径を、動的光散乱法(大塚電子株式会社、ELSZ−2)により測定し、Cumulant法にて解析したところ、平均粒径1.9μmを示した。この水不溶性微粒子ゲルを化合物2とする。
【実施例3】
【0034】
攪拌機、窒素ガス導入管、及び温度制御装置を備えた反応槽にNIPAM25g、80%メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(以下MMCQと略記)溶液6.25g、メチレンビスアクリルアミド0.25g(対単量体8300ppm)、分散剤として水溶性高分子、ポリメタアクリロイロオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド4.5g(対単量体15質量%)、イオン交換水262.5gを仕込み溶解させた。得られた混合溶液を70℃の恒温槽中で攪拌下、窒素置換を20分行なった後、重合開始剤として、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.15gをイオン交換水1.5gに溶解した溶液を添加し重合反応を開始させた。反応温度を70℃±2℃で5時間重合させ反応を完結させ、白色の分散液を得た。得られた県濁溶液10質量部にイオン交換水90質量部を加え、1質量%に希釈した。この溶液を20℃に調整し、20℃における水中での膨潤後の水不溶性微粒子ゲルの粒径を、動的光散乱法(大塚電子株式会社、ELSZ−2)により測定し、Cumulant法にて解析したところ、平均粒径2.0μmを示した。この水不溶性微粒子ゲルを化合物3とする。
【実施例4】
【0035】
攪拌機、窒素ガス導入管、及び温度制御装置を備えた反応槽にNIPAM23g、60%アクリル酸(以下AACと略記)溶液11.67g、メチレンビスアクリルアミド0.20g(対単量体6700ppm)、分散剤として水溶性高分子、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド5g(対単量体16.7質量%)、イオン交換水258.6gを仕込み溶解させた。得られた混合溶液を70℃の恒温槽中で攪拌下、窒素置換を20分行なった後、重合開始剤として、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン-2−イル)プロパン]二塩酸塩0.15gをイオン交換水1.5gに溶解した溶液を添加し重合反応を開始させた。反応温度を70℃±2℃で5時間重合させ反応を完結させ、白色の分散液を得た。得られた県濁溶液10質量部にイオン交換水90質量部を加え、1質量%に希釈した。この溶液を20℃に調整し、20℃における水中での膨潤後の水不溶性微粒子ゲルの粒径を、動的光散乱法(大塚電子株式会社、ELSZ−2)により測定し、Cumulant法にて解析したところ、平均粒径2.2μmを示した。この水不溶性微粒子ゲルを化合物4とする。
【実施例5】
【0036】
攪拌機、窒素ガス導入管、及び温度制御装置を備えた反応槽にNIPAM22g、60%AAC溶液3.34g、80%アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド(以下AMCQと略記)溶液7.50g、メチレンビスアクリルアミド0.40g(対単量体1.3質量%)ポリアクリロイロオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド4.0g(対単量体13.3質量%)、イオン交換水258.3gを仕込み溶解させた。得られた混合溶液を70℃の恒温槽中で攪拌下、窒素置換を20分行なった後、重合開始剤として、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.15gをイオン交換水1.5gに溶解した溶液を添加し重合反応を開始させた。反応温度を70℃±2℃で5時間重合させ反応を完結させ、白色の分散液を得た。得られた県濁溶液10質量部にイオン交換水90質量部を加え、1質量%に希釈した。この溶液を20℃に調整し、20℃における水中での膨潤後の水不溶性微粒子ゲルの粒径を、動的光散乱法(大塚電子株式会社、ELSZ−2)により測定し、Cumulant法にて解析したところ、平均粒径2.4μmを示した。この水不溶性微粒子ゲルを化合物5とする。
【実施例6】
【0037】
(ホワイトカーボンスラリーの調整)填料としてホワイトカーボンを10質量%になるよう水に加え、ホワイトカーボンが分散するまで充分に攪拌し、水性スラリーを調整した。これに表1に記載する化合物1〜5を0.15%添加し、マグネティックスターラーにより400回転/分で10分間攪拌し、填料スラリーを調整した。それぞれのスラリーを処方1〜5とする。
【0038】
(表1)

【0039】
(比較例1)ホワイトカーボンを10質量%になるよう水に加え、ホワイトカーボンが分散するまで充分に攪拌し、水性スラリーを調整した。これに、表1に記載する比較試料(市販のポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、重量平均分子量50万)を0.15%添加し、マグネティックスターラーにより400回転/分で10分間攪拌し、填料スラリーを調整した。このスラリーを比較処方とする。
【0040】
(比較例2)ホワイトカーボンを10質量%になるよう水に加え、ホワイトカーボンが分散するまで充分に攪拌し、水性スラリーを調整した。その後、マグネティックスターラーにより400回転/分で10分間攪拌し、填料スラリーを調整した。このスラリーを無添加処方とする。
【実施例7】
【0041】
(パルプスラリーの調整)0.5質量%のLBKPパルプスラリー(CSF400ml)を、抄紙後のシート坪量が64g/mになるように量りとり、実施例6の方法で処理した填料スラリー(処方1〜5、比較処方、無添加処方)をパルプに対して純分25質量%添加した。
【0042】
これらを1/16mタッピースタンダードシートマシーンにて抄紙し、湿紙を得た。湿紙を3.0kg/mで5分間プレスした後、鏡面ドライヤーを用いて105℃で3分間乾燥した。乾燥した紙を、23℃、50%RHの条件で1日間調湿した後、その坪量(g/m)と厚み(mm)を測定し(熊谷理機工業製JIS紙厚計TM−600)、坪量/厚みにより紙の密度を求めた。紙中灰分は、525℃で灰化することにより測定した。また同じ紙の別の部分を使用し、分光光度計型測色計(テクニダイン社製、カラータッチPC)によりISO白色度(JIS、P8148;2001)、不透明度(JIS、P8149;2000)、内部結合強度(JAPAN−TAPPI−No.18−1:2000)は、オリエンテック社製テンシロン−RTC−1210A、移送速度20mm/min.により測定した。それぞれの結果を表2に示す。
【0043】
表2

【0044】
表2の結果から、処方1〜5の結果は、比較処方や無添加処方に比べて不透明度が向上している。また、不透明度が向上した紙では白色度の低下が見られることが多いが、処方1〜5では無添加処方と比較し白色度の低下は見られなかった。灰分歩留値を比較すると、処方1〜5は比較処方、無添加処方と比較し高い値を示しており、さらに紙力も増大させている。一般的には、灰分歩留が高い場合紙力が低下する傾向にあるが、化合物1〜5で処理した填料を添加した場合には、灰分歩留と紙力両方の向上が可能であることが分かった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に分散剤として水溶性高分子を存在させ、下記一般式[1]で表される非イオン性単量体を全単量体に対し30モル%以上含有する単量体(混合物)を、生成する感温性微粒子ゲルの下限臨界共溶温度より高い温度にて、(共)重合および架橋剤による架橋反応により得られる感温性微粒子ゲルを含有する填料処理剤。
【化1】

一般式[1]
式中、Rは水素原子又はメチル基を、Rは水素原子またはC2m+1を、RはC2m+1をそれぞれ表す。なお、mは、1〜3の自然数を表す。もしくは、R−R間で(CH)nの環状構造を形成してもよい。なお、nは1〜3の自然数である。
【請求項2】
請求項1に記載の架橋反応が、複数のビニル基を有する単量体を存在させ、重合と並行して行われることを特徴とする感温性微粒子ゲルを含有する填料処理剤。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式[1]で表される非イオン性単量体が、N−イソプロピルアクリルアミドであることを特徴とする感温性微粒子ゲルを含有する填料処理剤。
【請求項4】
請求項1に記載の水溶性高分子が、少なくともカチオン性単量体を構成単位として含むことを特徴とする感温性微粒子ゲルを含有する填料処理剤。
【請求項5】
請求項4に記載のカチオン性単量体が、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド又は(メタ)アクリロイロオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドであることを特徴とする感温性微粒子ゲルを含有する填料処理剤。
【請求項6】
前記請求項1〜6に記載の填料処理剤を含有する填料水性分散液。
【請求項7】
前記請求項1〜6に記載の填料処理剤によって処理した填料を含有する紙。

【公開番号】特開2011−246508(P2011−246508A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117924(P2010−117924)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】