説明

填料用軽質炭酸カルシウムおよびその内填紙

【課題】 填料の歩留まりがよく、かつ引張強さ、引裂強さ、耐折強さ、層間強度などの強度特性に優れた紙内填用軽質炭酸カルシウムおよびそれを含有した内填紙を提供する。
【解決手段】 内填用軽質炭酸カルシウムであって、軽質炭酸カルシウムの粒子は、針状及び/または柱状の形状を有した一次粒子及び/またはそれらの凝集体であり、レーザー回折法による粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が4.0〜15.0μmであり、かつBET比表面積が3〜20m/gである。前記軽質炭酸カルシウムは、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水を混合することにより消石灰スラリーを得る工程(B)、および該消石灰スラリーに二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用填料である軽質炭酸カルシウムおよびそれを内填した紙に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙はセルロース系繊維物質に無機物質が填料として内填されており、填料はセルロース系繊維物質だけでは不足しがちな光学特性、主に白色度、不透明度を向上させるために添加される。しかしながら、填料の増添によりそれら光学特性をより得ようとした場合、光学特性は向上する一方で、引張強さや引裂強さなどの強度特性が低下する。一般に、低下する強度特性を補うには、紙力増強剤などの薬品を添加するが、多量の使用は系内汚れの問題が生じる。
【0003】
近年、中性抄紙化が進み、現在使用される填料としては、軽質炭酸カルシウムが最も多く使用されている。その理由として、タルク、クレーなどに比べて白色度が高く、合成方法によっては粒子形状や粒子径、凝集状態なども調整でき、紙に付与する物性をコントロールし易いからである。そのため、填料用軽質炭酸カルシウムの粒子形状や粒子径など、これまで多くの研究がなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、填料として平均粒径1.3μmのウィスカー状軽質炭酸カルシウムや平均粒径0.5μmの針状軽質炭酸カルシウム、平均粒径1.0μmの紡錘状軽質炭酸カルシウムおよび平均粒径1.5μmの柱状軽質炭酸カルシウム用いることが提案されており、特許文献2、3、4には、粒子径1.72μm、比表面積11m/gの紡錘凝集型軽質炭酸カルシウムを用いることが提案されている。
また、特許文献5には、平均粒子径57.9μmの凝集することの無い針状炭酸カルシウムを填料として用いることが提案されており、特許文献6には、二次粒子径4.5μm、BET比表面積12.1m/gの紡錘状炭酸カルシウムの一次粒子をフロック凝集させたものが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2、3、4記載の軽質炭酸カルシウムは、平均粒径が小さいため、紙中における填料の分布が均一であるが、填料歩留が悪化するため、歩留剤などの薬品を多く添加する必要があり、生産コストへの負荷が大きくなるだけでなく、系内汚れの問題も生じる。
特許文献5記載の軽質炭酸カルシウムは、一次粒子が凝集することなく単離された粒子ではあるが、平均粒子径が大きいため、抄紙時における填料の分布が小粒径の填料に比べて局在化しやすく、層間強度などの紙力低下が懸念される。
また、特許文献6記載の軽質炭酸カルシウムは、紡錘状炭酸カルシウムの一次粒子をフロック凝集させたもので、紙に内添した場合は嵩高い内填紙となるため、引張強さなどの紙力全般が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−120510号公報
【特許文献2】特開2008−274517号公報
【特許文献3】特開2008−274518号公報
【特許文献4】特開2008−274523号公報
【特許文献5】特開2003−063820号公報
【特許文献6】特許第4571583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の状況に鑑み、本発明は、填料の歩留まりがよく、表面平滑性が良好で、かつ引張強さ、引裂強さ、耐折強さ、層間強度などの強度特性に優れた紙内填用軽質炭酸カルシウムおよびそれを含有した内填紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、填料に対する紙の光学特性、強度特性および操業性を鋭意検討した結果、所望の粒子形態を有した軽質炭酸カルシウムを用いることで上記課題を解決可能であることを見出した。
【0009】
本発明は以下の発明を包含する。
(1) 内填用軽質炭酸カルシウムであって、前記軽質炭酸カルシウムの粒子は、針状及び/または柱状の形状を有した一次粒子及び/またはそれらの凝集体であり、レーザー回折法による前記軽質炭酸カルシウム粒子の粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が4.0〜15.0μmであり、かつBET比表面積が3〜20m/gであることを特徴とする内填用軽質炭酸カルシウム。
【0010】
(2) 前記粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が、5.0〜10.0μmであることを特徴とする(1)記載の内填用軽質炭酸カルシウム。
(3) 前記BET比表面積が、5〜15m/gであることを特徴とする(1)または(2)のいずれか1項に記載の内填用軽質炭酸カルシウム。
【0011】
(4) 軽質炭酸カルシウムは、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水を混合することにより消石灰スラリーを得る工程(B)、および該消石灰スラリーに二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の内填用軽質炭酸カルシウム。
【0012】
(1)〜(4)のいずれか1項に記載の軽質炭酸カルシウムを内填した紙。
【0013】
(5)記載の紙の少なくとも片面に澱粉を含む塗被液を塗布した印刷用紙。
【0014】
(7) (5)、(6)のいずれか1項に記載の紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を少なくとも1層有することを印刷用塗被紙。
【発明の効果】
【0015】
本発明の軽質炭酸カルシウムを填料として用いることにより、填料の歩留まりや抄紙の操業性がよく、紙の光学特性、特に白色度および不透明度を損なうことなく、表面平滑性が良好で、引張強さ、引裂強さ、耐折強さ、層間強度などの強度特性に優れた紙を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、填料としての軽質炭酸カルシウムと、それを内添した内填紙に関するものである。
【0017】
(軽質炭酸カルシウム)
軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、例えば消石灰スラリーに炭酸ガスを吹き込んで反応させる「液−ガス」法および炭酸ナトリウムなどを用いる「液−液」法などが挙げられる。得られた軽質炭酸カルシウムはカルサイト型、アラゴナイト型などの結晶系を有し、柱状、針状、紡錘状、立方体状など各種形状を有する。
【0018】
本発明者らは、様々な合成法で得た各種形状の軽質炭酸カルシウムを填料として、カチオン化澱粉、硫酸アルミニウムなどと共にパルプスラリーと混合した後、手抄きシートを作成し、填料の歩留性および粒子形状と紙の光学特性、強度特性の比較検討を重ねた。その結果、軽質炭酸カルシウム粒子が針状及び/または柱状の形状を有した一次粒子及び/またはそれらの凝集体であり、レーザー回折法による前記軽質炭酸カルシウム粒子の粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50、以下はD50と表現する)が4.0〜15.0μmであり、かつBET比表面積が3〜20m/gの軽質炭酸カルシウムを填料として用いると、填料歩留が良好で、白色度および不透明度を損なうことなく、強度特性に優れた填料内填紙を得ることができることを見出した。特に軽質炭酸カルシウム粒子のD50が5.0〜10.0μmであり、かつBET比表面積が5〜15m/gであるのが好ましい。
【0019】
本発明の軽質炭酸カルシウムは針状及び/または柱状の一次粒子及び/またはそれらの凝集体である必要がある。その他の形状はたとえ粒子径とBET比表面積が本発明の範囲でも本発明の効果である引張強さ、引裂強さなどの強度特性に優れた紙とはならない。
本発明の軽質炭酸カルシウムの粒度分布は、レーザー回折法により測定される。D50が15.0μmを超えると填料歩留は向上するが、紙中での填料が局在化するため、引張強さ、引裂強さが低下する。また、D50が4.0μm未満だと、紙中での填料分布は均一になるが、一方で填料歩留が悪化するため、歩留向上剤などの薬品を増添する必要があり、生産コストへの負荷が増大する。さらには、白水中における灰分と薬品の量が増えるため、スケール堆積などの系内汚れの問題も発生する。D50が5〜10μmでは、填料としての歩留りが高く、かつ紙の強度物性にも優れるため、最も好ましい範囲である。上記レーザー回折法の粒度分布を有し、X線透過法により測定した粒度分布曲線の50体積%の粒子径(d50)が4.0〜8.0μmのものは、紙の強度物性にさらに優れるので、特に好ましい。
【0020】
本発明の軽質炭酸カルシウムのBET比表面積は3〜20m/gである必要がある。3m/g未満では、印刷時のインキおよび水の吸収性が悪く、乾燥性が低下する。また、20m/gを超えると、インキおよび水の吸収性は良好であるが、抄紙薬品の吸収性も良くなり、歩留剤など添加薬品の効果が低下する。これら吸収性と薬品効果を考慮するとBET比表面積は5〜15m/gが特に好ましい。
【0021】
本発明は特に軽質炭酸カルシウムの製造方法を限定しないが、前記「液−ガス」法によって、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水とを混合することにより消石灰スラリーを得る工程(B)、および該消石灰スラリーに二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造した軽質炭酸カルシウムであれば、所望の粒子形状、粒子径、BET比表面積が得られやすく、最も良好である。
【0022】
前記(A)、(B)、(C)の各工程について詳述する。
生石灰は、石灰石を焼成したものであればよく、焼成装置に関しては、ベッケンバッハ炉、メルツ炉、ロータリーキルン、カーハーディー炉、コマ式炉、カルマチック炉、流動焼成炉、混合焼き立炉など、石灰石を転化する装置であれば特に限定はない。焼成温度および焼成時間は適宜調整可能であるが、石灰石を低温かつ長時間で生石灰を生成させた方が、高温かつ短時間で生成させた生石灰よりも針状形状の軽質炭酸カルシウムが得られやすい。また、生石灰中の二酸化炭素含有率が低い方が、針状形状の軽質炭酸カルシウムが得られやすく、石灰石の未焼成分としてJIS R 9011:2006に規定されている炭酸バリウム逆滴定法による二酸化炭素含有率が1.5%以下であることが好ましい。より好ましいのは二酸化炭素含有率が1.0%以下である。
当該軽質炭酸カルシウムは内填用填料として利用するため、原料としてなるべく白色度の高い石灰石を用いるのがよい。特に、Fe、Mnなどの着色成分が問題となる場合があるので、なるべく着色成分含有量が少ない石灰石を用いることに留意する必要がある。
【0023】
消石灰の製造方法としては、生石灰すなわち酸化カルシウムに理論水和量の2倍前後の水を加えて消和を行う乾式消和法を用いる方が好ましい。乾式消和において、添加する消和水量は、生石灰に対するモル比で2.5以下であるのが好ましい。消和水量が、生石灰モル比で2.5を超えると、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化するため、微細な消石灰が多く生成し、得られる軽質炭酸カルシウムの形状が紡錘状になり、針状または柱状粒子が得られない。
【0024】
上述のように、原料となる消石灰粒子が微細な粒子を多く含むと、生産される軽質炭酸カルシウムの形状が紡錘状となりやすくなる。このため本発明者らは、レーザー回折法により消石灰粒子の体積粒度分布を測定することとした。体積粒度分布における粒子径が1.0μm以下の微細な消石灰粒子の累積体積が20%を超えると、それを原料として用いた時に紡錘状の軽質炭酸カルシウムが生成されやすい。この生成物である軽質炭酸カルシウムには、粗大な粒子が混在し、粒子径も不均一であるため、内添用填料に用いた場合には、紙中での填料分布が局在化する。粒径が1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は20%以下の場合は柱状や針状の軽質炭酸カルシウムが生成されやすく、この生成物の粒子径が比較的均一である。1.0μm以下の消石灰粒子の累積体積は、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。また、消石灰粒子の粒度分布をシャープにすることで、炭酸化反応が均一になり、軽質炭酸カルシウムの粒子径をより均一にすることができる。
【0025】
また、原料に粗大な消石灰粒子が含まれた場合、炭酸化反応終了時に消石灰粒子の中心部が未反応となりやすく、その軽質炭酸カルシウムを填料として使用すると、抄紙系内でpHがアルカリとなり、他の抄紙薬品効果が低下する可能性がある。
【0026】
微細な粒子の混入の少ない粒径の均一な消石灰を生成するためには、生石灰と消和水とを混合する混合機が、混合物あるいは反応物を浮遊拡散効果で3次元的に流動・攪拌できる構造を有していることが好ましい。具体的には、混合容器自体が回転するミキサおよび容器と攪拌羽根との隙間が少ないミキサが挙げられる。これらのミキサを用いることで、攪拌時にデッドスペースが生じず、常に混合物が流動するため、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化せず、生成した消石灰の凝集を防止することができ、微細粒子および粗大粒子の少ない均一な消石灰粒子を得ることができる。混合機内の浮遊拡散効果が低いと、生石灰に消和水を添加した際に水が局在化するおそれがあるため、微細な消石灰が多く生成し、得られる軽質炭酸カルシウムの形状が紡錘状になる。
【0027】
浮遊拡散効果を高めるためには、混合機での混合が攪拌羽根回転によって行なわれる場合は、該攪拌羽根回転の周速を0.5m/s以上とする必要がある。該攪拌羽根回転の周速は0.8m/s以上であることが好ましく、1.5m/s以上にすることがさらに好ましい。また、混合機での混合が容器回転によって行なわれる場合は、該容器回転の周速が0.2m/s以上である必要がある。該容器回転の周速は0.4m/s以上であることが好ましい。さらに、分散混合用のせん断用攪拌羽根を設けることで、せん断効果を向上させ、微細粒子および粗大粒子の少ないより均一な消石灰粒子を得ることができる。
【0028】
連続方式に好適な混合機としては、混合機内の反応物を循環させるために送り機構と戻り機構を有した拡散用攪拌羽根を用い、さらにスキ型ショベル羽根、鋸歯状ショベル羽根などの特殊攪拌羽根を用いることで、より浮遊拡散効果が得られるので好ましい。攪拌羽根周速を2.0m/s以上とすることで、生石灰と水とを均一に混合でき、消石灰粒子の凝集を防止することができる。また、混合機を1機だけではなく、2機以上用いてもよい。混合機を2機以上用いることで、個々の混合機の攪拌周速、滞留時間を変えることができ、粗大粒子が少なく、より好適な消石灰を得ることができる。
【0029】
生石灰の平均の大きさが5mm以下の場合、生石灰に添加する消和水温度は、低温であると消化反応が急激に進行し、得られる消石灰粒子の粒度分布の幅が広くなる。そのため、分級、粉砕工程を設ける場合に、作業に対する負荷が大きくなり、分級、粉砕設備にかかるコストが増大する。従って、消和水温度は40℃以上とするのが好ましく、60℃以上とするのがさらに好ましい。
生石灰の平均の大きさが5mmを超える場合は、生石灰に添加する消和水温度は、特に限定はなく、20℃前後の常温のものを用いても構わない。
【0030】
生石灰と消和水とを均一に混合するため、消和水の添加口は、1箇所ではなく、2箇所以上設けることが好ましい。また、消和水の添加方法としては、ノズル方式だけでなく、消和水を広範囲に噴霧できるスプレー方式を用いることも可能である。特に、粉末状生石灰や消和反応途中のものは、スプレー方式を用いることで、消和水の局在化を防止できるので好ましい。
バッチ方式の好適な消和水の添加方法としては、消和水の添加は一括で行うのではなく、分割添加または連続的に5〜30分程度の時間をかけて添加する方が好ましい。連続方式の好適な消和水の添加方法としては、生石灰をミキサの一方の端に供給し、これを混合・攪拌しつつ他方の端に移動させるまでの間にミキサ上に複数の消和水供給口を設け、さらにミキサ出口に近い供給口は、スプレー方式とするのがよい。
【0031】
生石灰と消和水を混合する時間としては、特に制限はないが、規定量の消和水を添加した後、1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、混合機内で攪拌するのがよい。生産性を考慮すると混合時間は8〜15分程度が好ましい。
【0032】
得られた消石灰はそのまま炭酸化に供することもできるが、粗大な消石灰粒子を除去して使用することが好ましく、具体的にはD50が1mm以下にするのが好ましい。
【0033】
粗大な消石灰粒子を除去する方法としては、遠心分離式の分級機、振動スクリーン、スクリーン分級機などが挙げられる。分級機などで篩い分けされた粗大消石灰粒子は、粉砕機で粉砕して使用することもできるが、分級・粉砕閉回路として粉砕後に分級工程へ戻すことも可能である。分級・粉砕工程は、乾式または湿式のどちらの方式を用いてもよい。粉砕機での消石灰粒子の過粉砕は、得られる軽質炭酸カルシウムが紡錘状になり、品質低下の要因となるため、防止する必要がある。
【0034】
炭酸化に供する消石灰スラリーの固形分濃度は、5質量%未満とすると、生産効率が低下し、40質量%を超えると微細な軽質炭酸カルシウムが生成されて、粘度も上昇して、操業性が劣る。従って、消石灰スラリーの固形分濃度は5〜40質量%であることが好ましい。消石灰スラリーの固形分濃度のより好ましい下限は8質量%であり、より好ましい上限は20質量%である。
【0035】
また、炭酸化開始時の消石灰スラリー温度は、生成物である軽質炭酸カルシウムの結晶形状に影響を及ぼすため、調整する必要がある。炭酸化開始温度が20℃未満であると、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込んだ際、微細な不定形の結晶が凝集したものになり、一方、50℃を超えると 巨大な針状粒子や 紡錘状粒子が混在して、均一な粒径の軽質炭酸カルシウム粒子が形成されず、良好な強度特性が得られない恐れがある。従って、微細で均一な柱状や針状粒子を得るためには、炭酸化開始温度は20〜50℃であることが望ましい。
【0036】
炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの吹き込み量は、特に制限はないが、結晶形状の点から、反応開始前の消石灰1kg当たり100%炭酸ガス(1気圧、20℃換算)を10L/分以下とするのが好ましく、5L/分以下とすることがより好ましい。10L/分を超えると不定形あるいは紡錘状炭酸カルシウムの凝集体が形成され、良好な強度特性が得られない可能性がある。生産性の点からは、1.5L/分以上とするのが好ましい。
【0037】
炭酸化反応はバッチ式でも連続式でもどちらでもよく、炭酸化反応槽も炭酸ガスを吹き込むことができればよい。バッチ式の反応槽として、円筒型または円筒で下部のみ円錐になっている円筒コーン型などの反応槽を用いて、炭酸ガスを反応槽下部から吹き込むのが効率の点から好ましい。さらに、半回分式反応槽の下部の円錐に多数の穴をあけることで、炭酸ガスが微細な気泡となり、これらの微細な泡が消石灰スラリーと接触するので、効率的かつ均一に反応させることができる。
【0038】
また、反応槽に攪拌機を備え、攪拌しながら炭酸化を行うことにより、炭酸ガスが微細になり、消石灰との接触が良くなり、反応が均一かつ効率的に行われる。攪拌機の攪拌周速としては、2.0m/s以上であるのが好ましく、さらに好ましいのは2.5m/s以上である。攪拌機としては、一軸または二軸型のタンク用攪拌機、コーレスミキサ、高速攪拌式ディスパーザーなどを用いることができる。さらに反応槽中に邪魔板を設置することで、消石灰スラリーのせん断力を高めることができる。
【0039】
炭酸化反応前の消石灰スラリーに種晶を添加してもよい。例えば、種晶としてアラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウムを予め添加しておくことで、類似の針状結晶が効率よく生成される。種晶の添加率は、水酸化カルシウム:アラゴナイト系針状軽質炭酸カルシウム=99.7:0.3〜95:5となるようにするのが好ましい。
【0040】
炭酸化反応の炭酸ガス含有ガスの好適なものとしては、二酸化炭素を含有する混合ガス、例えば、石灰石焼成排ガス、パルプ製造プラントの石灰焼成排ガス、セメント製造キルン排ガス、発電ボイラー排ガス、ゴミ焼却排ガスなどが挙げられる。炭酸ガス含有ガスとして上記排ガスを用いる場合、排ガス中の石灰石、石灰、硫黄酸化物、未燃カーボン等のダストをバグフィルター、電気集塵機、乾式スクラバー、湿式スクラバーもしくはこれらの組合せを用いることによって排ガスを浄化することが好ましい。
【0041】
消石灰の製造方法としては、乾式消和法の他に、理論水和量を大きく超える量の水の存在下で消和を行い、消石灰スラリーの状態で得られる湿式消和法を用いることもできる。湿式消和法で製造された消石灰粒子の粒子径は1μm以下の微細な粒子が多く、粗大な粒子も混在するため、本発明の軽質炭酸カルシウム粒子を得るためには、粗大消石灰粒子および微細消石灰粒子を除去した方が好ましい。
【0042】
粗大消石灰粒子を除去する方法としては、振動スクリーン、スクリーン分級機などが挙げられる。振動スクリーンなどを通過した微細消石灰粒子を含む消石灰スラリーは、遠心分離機、サイクロン型分級機など用いて、微細消石灰粒子を除去することができる。
【0043】
(内填紙)
本発明の軽質炭酸カルシウムを填料として使用した紙は、紙の光学特性を損なうことなく、表面平滑性が良好で、引張強さなどの強度特性が優れており、従来の填料と同様に本発明の軽質炭酸カルシウムを利用可能で、特に限定はない。また、紙の種類としては、各種塗工用原紙、新聞用紙、上質や中質などの書籍用紙、電子写真用紙、インクジェット用紙、クラフト用紙、圧着記録紙、PPC用紙、包装用紙、紙容器、板紙、壁紙、繊維板、写真用原紙、含浸用原紙、難燃紙などが挙げられる。
【0044】
本発明の軽質炭酸カルシウムを填料として内填した紙の坪量については、特に限定は無いが、所望する効果が発揮されるのは、30〜650g/m程度の範囲である。なお、本発明の軽質炭酸カルシウムはこの範囲を超えた多層抄きの板紙、カード等の厚紙にも添加できる。
【0045】
抄紙原料のパルプとしては、例えば、一般に使用されているLBKPやNBKP等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等の1種又は2種以上を原紙に配合することもできる。機械パルプやDIPは、必要に応じて漂白して使用することもでき、漂白の程度も任意に行うことができる。なお、パルプの漂白には、塩素ガスのような分子状塩素や二酸化塩素のような塩素化合物を使用しない漂白工程を採用することが、環境保全の観点から好ましく、このような漂白工程を経たパルプとしては、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプやTCF(Totally Chlorine Free)パルプを挙げることができる。
【0046】
本発明の軽質炭酸カルシウムは、一般的に使用されている填料、例えば、重質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネートカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、製紙スラッジ、脱墨フロスからの再生無機粒子等の無機系填料や尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機系填料等と混合して使用することもできる。混合比率は紙の品質に応じて調整することが可能であり、特に限定しないが、填料としての歩留りがよく、表面平滑性が良好で、かつ紙の強度特性を得るためには、本発明の軽質炭酸カルシウムを填料100部中に15部以上を含有することが好ましい。さらに好ましくは30部以上を含有する。50部以上を含有するのが特に好ましい。填料の配合量は、一般に、紙(原紙)灰分は、1〜30重量%の範囲となるように添加することが好ましく、5〜20重量%の範囲となるように添加することが特に好ましい。填料の配合量が1重量%未満では紙の光学特性、主に白色度、不透明度が不足し、填料の配合量が30重量%超えるとワイヤーの磨耗や抄紙機系内の汚れなどの問題が生じやすい。
【0047】
また、紙料としてパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を、必要に応じて使用することができる。内添サイズ剤の具体例としては、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
【0048】
本発明の軽質炭酸カルシウムを含む填料をパルプ原料に添加する際には、パルプ原料を十分に攪拌しながら填料を添加することが好ましく、添加場所としてはマシンチェスト流入口、ファンポンプ吸込口が好ましく、その際の攪拌速度としては100〜5000rpm程度とすることが好ましい。また、パルプ原料に対して添加する製紙用填料の濃度としては、パルプ原料を混合してから抄紙するため、抄紙機のインレット濃度の範囲内となるような濃度で添加されれば問題ない。
【0049】
紙の抄造条件は特に限定はなく、抄紙機としては、例えば、長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できるが、本発明の軽質炭酸カルシウムは歩留性に優れ、抄紙系内の汚れを防止することができるため、特に、ギャップフォーマー型、およびオントップ型のツインワイヤー式抄紙機の高速抄紙機において、安定した操業ができる。
抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ性抄紙等のいずれの方式も使用することができるが、炭酸カルシウムは酸性領域で溶解してしまうため、中性〜弱アルカリ性の範囲で抄紙することが望ましい。実際にはpH5.5以上であれば炭酸カルシウムを有効に用いることができるため、pH6以上で抄紙することがさらに望ましい。紙上に各種サイズプレス機およびロールコーターなどで澱粉等の天然接着剤やポリビニルアルコール等の合成接着剤を用いてサイズ処理を行なうことも可能である。
【0050】
本発明の軽質炭酸カルシウムを含む内填紙は、書籍・教科書などの書籍用紙、本文チラシや取扱説明書などに使用される本文用紙、コピー用紙とすることができる。本発明の軽質炭酸カルシウムを内添することで、手触り感、強度および表面平滑性に優れる書籍用紙、印刷用紙、PPC用紙が得られる。
【0051】
表面強度向上や耐水性付与、インキ着肉性改良などを付与するために、前記で得られた内填紙に表面処理剤を塗布してもよい。表面処理剤の種類は特に限定はないが、生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、アセチル化したタピオカ澱粉を原料として製紙工場内で熱化学変性あるいは酵素変性によって生成される自家変性澱粉などの澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などの編成澱粉を含むのが好ましい。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコールなどの変性アルコール、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステルなどを併用することも可能である。また、スチレン系サイズ剤、オレフィン系サイズ剤、アクリレート系サイズ剤、スチレン−アクリル系サイズ剤、カチオン性サイズ剤などの表面サイズ剤を併用することも可能である。
【0052】
表面処理塗布液を塗布する装置としては、公知のサイズプレス装置、例えば、2ロールタイプ、3ロールタイプ、ゲートロールタイプ、フィルム転写タイプなどを使用することができるが、ギャップフォーマータイプの高速抄紙機に付設されて使用されるサイズプレス装置としては、高速運転時の操業性から転写タイプのものが好ましい。フィルム転写タイプは、アプリケーターロール上に、湿潤状態にある塗布膜を形成し、塗布膜を基紙表面に転写する方式で、例えば、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーターなどが挙げられる。
これら塗布装置で表面処理塗布液を内填紙の両面で1.0〜4.0g/m(片面あたりの塗布量は0.5〜2.0g/m)塗布した後に、ドライヤーで乾燥し、仕上げることもできるが、印刷適性向上のため、マシンカレンダ、ソフトカレンダ、シューカレンダ等のカレンダ装置で処理するのが好ましい。
【0053】
本発明の軽質炭酸カルシウムを含む内填紙を塗工原紙とし、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を少なくとも1層有する印刷用塗被紙とすることもできる。本発明の軽質炭酸カルシウムを内添することで、層間強度が向上するため、ブリスター適性に優れ、かつ、表面平滑性に優れる印刷用塗被紙が得られる。
【0054】
通常、前記で得られた内填紙上に澱粉を含む塗布液を塗布させる表面処理を行い、塗工原紙とする。この表面処理を施すことで、塗工原紙の表面強度を向上させる、あるいは塗工原紙表面の異物をクリーニングする効果があり、ストリークなどの発生を抑制させることができる。しかしながら、塗工原紙を抄紙し、顔料と接着剤を主成分とする塗被層を塗工、乾燥させるオンマシンコーターの場合、乾燥能力の制限や断紙の危険性を回避するため、表面処理が省略されることもある。
【0055】
表面処理塗布液は、澱粉の他に、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの表面処理剤、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム、カオリンなどの顔料を併用してもよい。塗布量としては、特に限定はないが、通常は両面で1.0〜4.0g/m程度である。表面処理塗布液を塗布する装置としては、サイズプレス、バーコーター、2ロールコーター、ゲートロールコーター、トランスファーロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、スプレーコーターなどの各種塗布装置が挙げられる。
【0056】
塗工原紙は、マシンカレンダ、ソフトカレンダなどによる平滑化仕上げ処理をすることもできる。
【0057】
本発明の塗被層に使用される顔料としては特に限定するものではなく、通常の塗被紙分野で使用される顔料、例えば、カオリン、タルク、クレー、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、カイソウ土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト、製紙スラッジから調製された再生顔料の無機顔料等の無機顔料の他、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等の有機顔料を必要に応じて1種あるいは2種以上を適宜選択して併用する。
【0058】
軽質炭酸カルシウムとしては、針状及び/または柱状の形状を有し、D50が0.2〜0.7μmであり、かつ90体積%の粒子径(D90)と10体積%の粒子径(D10)の比(D90/D10)が8以下のものは、白紙光沢発現性、平滑性、不透明度、透気性、インキセット性、印刷表面強度、インキ受理性、印刷光沢に優れた性質を有しているため、塗被層中に配合するのが好ましい。D50が0.3〜0.6μmであり、かつD90とD10の比(D90/D10)が6以下の軽質炭酸カルシウムを用いることで、さらに白紙光沢発現性、平滑性が向上するので好ましい。前記軽質炭酸カルシウムの配合量については特に限定されるものではいが、塗被層中の全顔料に対して5質量%以上含有させるのが好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が最も好ましい。上記軽質炭酸カルシウムは光沢発現性に優れ、最外塗工層中に配合すると、光沢発現のために塗被紙の最外塗工層によく用いられるカオリンの配合量の削減が可能となる。
【0059】
上記軽質炭酸カルシウムは、本発明の填料用軽質炭酸カルシウムと同様な方法で製造することができるが、軽質炭酸カルシウムの粒径をより均一にするためには、消石灰粒子のD50は、150μm以下とするのが好ましく、75μm以下とするのがより好ましく、50μm以下とするのがさらに好ましい。
所望の形状の軽質炭酸カルシウムを得るために、必要に応じて、炭酸化した後に、脱水、分散、粉砕工程を付与することも可能である。
【0060】
本発明の塗被層に使用される接着剤については特に限定するものではなく、通常の塗被紙分野で使用される接着剤、例えば分散型接着剤を使用する。分散型接着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックスなどが例示できる。
上記の分散型接着剤と共に少量の水溶性接着剤を併用することができる。水溶性接着剤としては、酸化澱粉、エステル化澱粉、冷水可溶性澱粉、カチオン化澱粉などの各種澱粉類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコールやその変性品などが例示できる。
接着剤の配合量については、特に限定されるものではないが、顔料100質量部あたり1〜50質量部、好ましくは5〜30質量部を配合する。
【0061】
本発明の塗被紙の塗被層には、必要に応じて、青系統あるいは紫系統の染料や有色顔料、蛍光増白染料、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電誘導剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0062】
本発明の塗被層用塗料の固形分濃度としては、25〜72質量%の範囲で選択できる。塗工量の調整や操業性を考慮すると、50〜71質量%の範囲が望ましい。
【0063】
原紙上に設ける塗被層は、1層または2層以上の多層にするかは特に限定はない。多層の場合、全てが同一である必要はなく、要求される品質レベルに応じて適宜調整することが可能である。また、塗被層の塗工量も、特に限定されるものではなく、塗被紙の白紙品質、印刷品質などに応じて調整することが可能であるが、一般的には、片面あたり3〜40g/m程度である。
【0064】
本発明における塗被層を設ける際の塗工方式については、通常の塗被紙製造分野で使用されている各種の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、各種のブレードコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等を適宜使用することができる。
【0065】
上記塗被層用塗料を原紙に塗工した後は、塗被層を乾燥させ、塗被紙を得る。この乾燥方法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法を任意に選択して使用することができる。
【0066】
このようにして得られた塗被紙は、各種公知公用の仕上げ装置、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、マットカレンダ等に通紙して製品仕上げを施してもよい。
【0067】
本発明の軽質炭酸カルシウムを含む内填紙に、表面処理剤を塗布して新聞用紙とすることもできる。本発明の軽質炭酸カルシウムを内添することで、層間強度などの強度特性が向上するため、コールドオフセット型オフセット輪転機による高速印刷にも十分耐え得る強度を持ち、表面平滑性に優れるオフセット印刷用新聞用紙が得られる。
【0068】
通常、新聞用紙の抄紙原料であるパルプとしては、脱墨古紙パルプ(以下DIPと記す)、化学パルプ(NBKP、LBKP等)、機械パルプ(GP、CGP、RGP、PGW、TMP等)などが任意の比率で混合して使用できる。資源有効利用の観点からDIPを40%以上配合することが望ましく、60%以上がさらに望ましい。上記パルプの他に、本発明の内填用軽質炭酸カルシウム以外の填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を適宜添加し、例えば、pH値などの条件を調整して長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の通常の抄紙機にて新聞用紙を得ることができる。坪量としては、特に限定はないが、30〜60g/m程度の範囲である。
【0069】
填料の添加量としては、原紙重量当たりの灰分が2〜15重量%となるように添加するのが好ましく、2〜10重量%となるのがさらに好ましい。2重量%未満では所望の効果が発現されず、15重量%を超えると紙腰の低下や紙粉が生じやすい。
【0070】
新聞用紙の表面強度を向上させるための表面処理剤を塗布することも可能である。表面処理剤については特に制限は無く、接着剤として澱粉、澱粉誘導体、水溶性樹脂、水分散性樹脂などが使用可能であり、例えばトウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米などの澱粉や上記澱粉の酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉、リン酸変性澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉誘導体、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂やポリビニルアルコールなどの合成水溶性バインダー、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共重合体ラテックスなどが挙げられる。特に、ネッパリ性が良好であり、安価であることから澱粉または澱粉誘導体や、表面強度が良好であることから、ポリアクリルアミド系樹脂が好ましく使用される。また、サイズ性向上のため、スチレン−アクリル酸共重合体やスチレン−マレイン酸共重合体などの表面サイズ剤を上記接着剤に対し1〜50重量%添加することもできる。
【0071】
表面処理剤として顔料と接着剤を含む塗被液を塗布することも可能である。本発明で使用される顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、立方状、針状、紡錘状などの軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、苛性化工程で製造される苛性化軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、製紙スラッジから調製された再生顔料の無機顔料等の無機顔料の他、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等の有機顔料を必要に応じて1種あるいは2種以上を適宜選択して併用する。塗被層中の顔料は、印刷後の不透明度を高めるが、印刷時におけるパイリング、粉落ちによるトラブルを防止する観点から、顔料と接着剤の比率を0.8〜2.5に調整することが好ましい。顔料比率が0.8未満だと印刷後不透明度の向上効果が十分得られず、2.5を超えるとパイリングや粉落ちが発生しやすくなる。
【0072】
本発明の表面処理剤には、顔料や接着剤の他に、消泡剤、スライムコントロール剤、染料などを適宜配合しても差し支えない。
【0073】
本発明の表面処理剤は、固形分濃度が2〜15%の範囲で新聞用紙原紙上に塗布され、塗布量は、一般に片面当たり、0.05〜2g/m、好ましくは0.1〜1g/mの範囲で塗布される。塗布量が0.05g/m未満の場合は、十分な表面強度が得られ難く、2g/mをこえるとネッパリ強度が増加し、印刷時にブランケットへの貼り付きトラブルを引き起こすため好ましくない。
【0074】
表面処理剤組成物を新聞用紙へ塗布するための塗工装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、インクラインまたはバーティカルツーロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールコーター、トレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンロールアプリケーション、ショートドゥエルなどのベベルタイプやベントタイプのブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、グラビアコーターなどの公知公用の装置が適宜使用される。なお、表面処理剤組成物を塗布後の湿潤塗被層を乾燥する方法としては、例えば蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥などの各種方式が採用できる。
【0075】
本発明のオフセット印刷用新聞用紙の製造に際しては、表面処理剤組成物の塗被層の形成後に、各種公知公用の仕上げ装置、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトカレンダ、マットカレンダ等にて平滑化処理を施してもよい。カレンダによる仕上げ後の新聞用紙の調湿、加湿のための水塗り装置、静電加湿装置、蒸気加湿装置などを適宜組み合わせて使用することも勿論可能である。
【0076】
本発明の軽質炭酸カルシウムを含む内填紙を包装用、重袋用などのクラフト紙、段ボール用ライナとして用いることもできる。本発明の軽質炭酸カルシウムを用いることで、強度および加工適性に優れる包装用、重袋用クラフト紙、段ボール用ライナが得られる。
【0077】
包装用クラフト紙で使用されるパルプとしては、針葉樹クラフトパルプを用いることができ、その他に、広葉樹クラフトパルプやストーングランドパルプ、加圧ストーングランドパルプ、リファイナーグランドパルプ、サーモグランドパルプ、ケミカルグランドパルプ、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプを用いることができる。上記パルプの他に、填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を適宜添加し、例えば、pH値などの条件を調整して長網型抄紙機、ツインワイヤー型抄紙機等の通常の抄紙機にて包装用クラフト紙を得ることができる。坪量としては、特に限定はないが、50〜120g/m程度の範囲である。
【0078】
紙層が3層以上で構成される段ボール用ライナは、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプの他に、ケミカルパルプ、上質紙の白損などから成る上白古紙、塗被紙の白損などからなるケント古紙、新聞古紙、雑誌古紙などの古紙パルプを配合することができる。上記パルプの他に、填料、内添サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を適宜添加し、例えば、pH値などの条件を調整して長網型抄紙機、円網型抄紙機等のより紙層を順次抄き合わせることによって抄造される。坪量としては、特に限定はないが、120〜400g/m程度の範囲である。
【0079】
填料の添加量については、強度が低下しない程度に添加することができ、本発明の軽質炭酸カルシウムは、基紙中の灰分は、0.5〜10重量%の範囲になるように添加するのが好ましく、より好ましくは0.5〜5.0重量%である。0.5重量%以下では、平滑性が低下し、印刷適性が低下する傾向があり、10重量%を超えると、強度が低下する可能性がある。
【0080】
必要に応じて、基紙の片面や両面に水溶性樹脂や顔料などの表面処理剤を塗布することもできる。水溶性樹脂としては、例えば、酸化澱粉、カチオン化澱粉、リン酸変性澱粉、リン酸エステル化澱粉、エステル変性澱粉、酵素変性澱粉などの澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂やポリビニルアルコールなどの合成水溶性バインダー、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共重合体ラテックスなどが挙げられる。顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、立方状、針状、紡錘状などの軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、苛性化工程で製造される苛性化軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、サチンホワイト、製紙スラッジから調製された再生顔料の無機顔料等の無機顔料の他、密実型、中空型、貫通孔型のプラスチックピグメント、バインダーピグメント等の有機顔料等の有機顔料を必要に応じて1種あるいは2種以上を適宜選択して併用することができる。上記表面処理剤は、通常使用されている各種の塗工装置、例えばエアーナイフコーター、各種のブレードコーター、ゲートロールコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等を用いて、片面当たりの塗布量が0.5〜10g/mになるように塗布される。
【0081】
(実施例)
以下に、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。尚、実施例および比較例において、特に断らない限り、「%」はすべて「重量%」を示す。
【0082】
<軽質炭酸カルシウムの調製>
(実施例1)
混合機としてチョッパー羽根を取外し、全てをショベル羽根にした連続式プロシェアミキサWA150型(大平洋機工社製)を用いて、混合機の一端から工業用生石灰(CO含有率0.3%)を4kg/min投入し、他端から消石灰が排出されるまでの滞留時間を8分とし、ショベル羽根周速3.5m/s、25℃の消和水を2.6kg/minを添加して消石灰を得た。
得られた消石灰を篩で700μm以下とし、35℃の水と混合して8%消石灰スラリー18kgを調製した。次に種結晶としてアラゴナイト柱状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−123CS、奥多摩工業社製)を消石灰重量当たり1.0%添加し、攪拌周速2.5m/s、CO/空気混合ガス(COガス濃度20Vol%)を26L/minの流量で吹き込む条件で、pH=7〜8になるまで炭酸化し、針状の凝集体軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0083】
(実施例2)
実施例1で得た消石灰を粉砕機にて粉砕したこと以外は、実施例1と同様に操作して軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0084】
(実施例3)
炭酸化時の攪拌周速を1.2m/s、CO/空気混合ガス(COガス濃度20Vol%)を13L/minの流量で吹き込んだ以外は、実施例1と同様に操作して軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0085】
(実施例4)
実施例1で得た消石灰を30℃の水と混合した以外は、実施例1と同様に操作して軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0086】
(実施例5)
60℃の温水20Lに工業用生石灰(CO含有率0.3%)2kgを投入してスレーキングを行った後、35℃まで冷却して11%消石灰スラリー18kgを調製し、遠心分離機を用いて消石灰の微粒分を除去したこと以外は、実施例1と同様に操作して軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
得られた軽質炭酸カルシウムスラリーを濃縮した後、ビーズミルにて粉砕し、軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0087】
(比較例1)
実施例1で得た軽質炭酸カルシウムスラリーを25%濃縮した後、ビーズミルにて粉砕し、軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0088】
(比較例2)
実施例1において、8%消石灰スラリー温度を70℃とし、COガス濃度15Vol%にしたこと以外は、実施例1と同様に操作して軽質炭酸カルシウムを得た。
【0089】
(比較例3)
70℃の温水に工業用生石灰(CO含有率0.3%)を投入してスレーキングを行い、11%消石灰スラリー18kgを調製した。攪拌周速1.8m/s、CO/空気混合ガス(COガス濃度20Vol%)を30L/minの流量で吹き込む条件で、pH=7〜8になるまで炭酸化し、紡錘状粒子の凝集体軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
得られた軽質炭酸カルシウムスラリーを濃縮した後、ビーズミルにて粉砕し、軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0090】
(比較例4)
比較例3で得た消石灰スラリーを用いて、CO/空気混合ガス(COガス濃度20Vol%)を30L/minの流量で吹き込む条件で、pH=7〜8になるまで炭酸化し、紡錘状粒子の凝集体軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0091】
(参考例)
紡錘状軽質炭酸カルシウムとして、TP−121SA(奥多摩工業社製)を用意した。
【0092】
<手抄紙の作成>
実施例1〜5、比較例1〜4、および参考例の軽質炭酸カルシウムを填料として用いて、以下のようにして抄紙試験を行い、得られた紙試料の紙質物性および填料歩留について評価した。
【0093】
カナディアンスタンダードフリーネスを450mLに調製した広葉樹晒クラフトパルプ100%のスラリー(パルプ濃度2.5%)を攪拌しながら、パルプ絶乾重量当たり、カチオン化澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.8%、硫酸アルミニウム0.5%、アルキルケテンダイマー(商品名:SKS−298、荒川化学工業社製)0.1%を順次添加し、紙中灰分が12%(JIS P8251に準ずる。以下同様)になるように填料を加えた。パルプスラリーを0.5%に希釈した後、歩留向上剤(商品名:R−300、ソマール社製)をパルプ絶乾重量当たり、0.1%加えて紙料とし、角型シートマシンで手抄きを行い米坪60g/mのシートを得た。
【0094】
実施例1〜5、比較例1〜4、および参考例の軽質炭酸カルシウムと抄紙時の填料歩留、およびそれを用いて得られたシートについて、下記の評価を行い、結果を表1に示した。
【0095】
(粒径測定)
レーザー回折法(日機装社製マイクロトラックHRAX−100)により、粒度分布を測定した。累積体積が50%に相当する粒径を平均粒径D50として求めた。
X線透過式粒度分布測定装置(マイクロメトリック社製セディグラフ5100)により、粒度分布を測定した。累積質量が50%に相当する粒径を平均粒径d50として求めた。
【0096】
(BET比表面積)
JIS Z 8830−2001に準じて測定を行った。
【0097】
(填料歩留)
次式により求めた。
シート中の灰分(wt%)/紙料中への填料添加率(wt%)×100=填料歩留(%)
【0098】
強度特性は次の試験方法により、評価した。
(1)引裂強さ・・・ JIS P8116−2000
(2)引張強さ・・・ JIS P8113−1998 (試料幅15mm)
(3)耐折強さ・・・ JIS P8115−2001
(4)層間強度・・・ TAPPI T833
【0099】
【表1】

【0100】
表1より、実施例1〜5は填料の歩留りがよく、得られた紙の強度特性も優れている。
【0101】
(実施例6)
<書籍用紙の作成>
針葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)からなるパルプスラリー100%に、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が15%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学工業社製)0.1%、カチオン性ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソマール社製)0.1%を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を運転抄速1200m/分でギャップフォーマーにより紙層を形成し、2基のシュープレスで搾水後、多筒式ドライヤーで乾燥した後、原紙片面当たり固形量として1.0g/mとなるように澱粉(商品名:エースA、王子コンスターチ社製)2%、ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、クラレ社製)0.5%、表面サイズ剤(商品名:ポリマロン1387S、荒川化学工業社製)0.03%よりなる表面処理剤をロッドメタリングサイズプレスコーターで塗布し、1ニップのマシンカレンダで平滑化処理して80g/mの書籍用紙を得た。
【0102】
(実施例7)
実施例6において、填料を実施例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例6と同様にして書籍用紙を得た。
【0103】
(比較例5)
実施例6において、填料を比較例1で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例6と同様にして書籍用紙を得た。
【0104】
(比較例6)
実施例6において、填料を比較例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例6と同様にして書籍用紙を得た。
【0105】
実施例6、7、比較例5、6の書籍用紙について、評価を行い、結果を表2に示した。
【0106】
(平滑度)
JAPAN TAPPI No.5−2に準じて、王研式平滑度試験機により測定した。
【0107】
(剛度)
JIS−P−8143−1996によりクラーク剛度を測定した。
【0108】
(印刷平滑性)
RI印刷機(明製作所製)で、印刷インキ(FUSION−G EZ 墨、DICグラフィックス社製)0.2cc使用して印刷を行い、インキの転写均一性を評価した。
○:印刷平滑性に優れる。
△:印刷平滑性がやや劣る。
×:印刷平滑性が劣る。
【0109】
(印刷表面強度)
RI印刷試験機(明製作所製)で、印刷インキ(商品名:紙試験用SD50紅、東洋インキ社製)を、0.6ml使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。
○:ピッキングが殆ど発生せず、良好。
△:ピッキングが少し発生し、やや劣る。実用許容レベル。
×:ピッキングが多く発生し、劣る。
【0110】
(填料歩留)は前記と同様の方法で求めた。
【0111】
【表2】

【0112】
表2より、実施例6、7の書籍用紙は、填料歩留りがよく、平滑性、印刷適性に優れている。
【0113】
(実施例8)
<PPC用紙の作成>
LBKPからなるパルプスラリー100%に、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が10%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学工業社製)0.1%、カチオン性ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソマール社製)0.1%を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を運転抄速1200m/分でギャップフォーマーにより紙層を形成し、2基のシュープレスで搾水後、多筒式ドライヤーで乾燥した後、原紙片面当たり固形量として1.0g/mとなるように澱粉(商品名:エースA、王子コンスターチ社製)2%、表面サイズ剤(商品名:ポリマロンNP−25、荒川化学工業社製)0.1%、ボウ硝0.3%よりなる表面処理剤をロッドメタリングサイズプレスコーターで塗布し、1ニップのマシンカレンダで平滑化処理して64g/mのPPC用紙を得た。
【0114】
(実施例9)
実施例8において、填料を実施例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例8と同様にしてPPC用紙を得た。
【0115】
(比較例7)
実施例8において、填料を比較例1で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例8と同様にしてPPC用紙を得た。
【0116】
(比較例8)
実施例8において、填料を比較例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例8と同様にしてPPC用紙を得た。
【0117】
実施例8、9、比較例7、8のPPC用紙について、評価を行い、結果を表3に示した。
【0118】
(走行性)
A4サイズのしを評価機(富士ゼロックス社製、複写機DC750I)に紙送り方向をY目として、50枚連続でモノクロ印字を行い、走行性を評価した。
○:紙詰りもなく、走行性に問題がない。
△:紙詰りが1回発生し、走行性が少し悪い。
×:紙詰りが複数回発生し、走行性が悪い。
【0119】
(紙粉)
A4サイズの紙を前記評価機に紙送り方向をY目として、1000枚連続でモノクロ印字を行い、紙粉の発生量を評価した。
○:紙粉は殆どなく、良好。
△:紙粉が発生し、やや不良。
×:紙粉が多く発生し、不良。
【0120】
(填料歩留)、(平滑度)、(剛度)、(印刷平滑性)は前記と同様の方法で評価した。
【0121】
【表3】

【0122】
表3より、実施例8、9のPPC用紙は、填料歩留りがよく、平滑性に優れ、複写機での走行性がよく、紙粉発生量も少ない。
【0123】
(実施例10)
実施例10では、以下に示す通りに原紙、塗料を調製し、塗被紙を作製した。
<塗被紙用原紙の作成>
LBKPからなるパルプスラリー100%に、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が10%になるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(商品名:エースK100、王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学工業社製)0.1%、カチオン性ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソマール社製)0.1%を順次添加し、紙料を調製した。この紙料を運転抄速1200m/分でギャップフォーマーにより紙層を形成し、2基のシュープレスで搾水後、多筒式ドライヤーで乾燥した後、原紙片面当たり固形量として0.5g/mとなるように澱粉をロッドメタリングサイズプレスコーターで塗布し、1ニップのマシンカレンダで平滑化処理して53g/mの原紙を得た。
【0124】
<塗工用軽質炭酸カルシウムの調製>
実施例1の消石灰を篩で50μm以下とした以外は、実施例1と同様にして針状軽質炭酸カルシウムスラリーを得た。前記軽質炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス・ドライヤーロールフィット(株式会社宇野澤組鐵工所製)により脱水・操作を行い、固形分濃度73%のケーキを得た。次いで、インテンシブミキサを用いて軽質炭酸カルシウムに対し1.0%ポリアクリル酸ソーダ分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成社製)を加えて分散し、軽質炭酸カルシウムスラリーを調製した。さらに、上記軽質炭酸カルシウムスラリーを、解砕メディアとして直径1.0〜1.4mmのガラスビーズを用いてサンドグラインダーで湿式粉砕処理を60分間行い、固形分濃度71%の顔料用軽質炭酸カルシウムスラリー(D50=0.42μm、D90/D10=4.12)を調製した。
【0125】
<塗工用塗被液の調製>
上記で得た塗工用軽質炭酸カルシウムスラリー80部、D50が1.3μmの重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブK−9、前出)20部からなる顔料スラリーに、顔料100部に対して酸化澱粉(商品名:エースB、前出)4部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:T2628G、前出)7部(いずれも固形分換算)、さらに、助剤として消泡剤及び染料を添加し、最終的に固形分濃度62%の塗料を調製した。
【0126】
<印刷用塗被紙の作成>
上記で得た原紙に、上記で得た塗工用塗被液を、ジェットファウンテン方式で塗被液を供給するブレードコーターを使用し、片面あたりの乾燥塗布量が11g/mとなるように塗布、乾燥して両面に塗被層を形成した。このようにして得られた塗被紙を、100℃に加熱した金属ロールと樹脂ロール(硬度:シェアD92°)が傾斜配置されているマルチニップカレンダーに、線圧200kN/mの条件下で、片面が金属ロールと樹脂ロールにそれぞれ4回ずつ接触するように合計8ニップの通紙を行い、坪量75g/mの印刷用塗被紙を得た。
【0127】
(実施例11)
実施例10において、填料を実施例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例10と同様にして印刷用塗被紙を得た。
【0128】
(比較例9)
実施例10において、填料を比較例1で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例10と同様にして印刷用塗被紙を得た。
【0129】
(比較例10)
実施例10において、填料を比較例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例10と同様にして印刷用塗被紙を得た。
【0130】
(白紙光沢度)
JIS P8142−1993に準拠して、75度における白紙面の光沢度を測定した。
【0131】
(PPS平滑度)
パーカープリントサーフ(PPS)表面平滑度試験機(機種名:MODEL M−569型、MESSMER BUCHEL社製、英国)を用い、バッキングディスク:ソフトラバー、クランプ圧力:0.98MPaで5回平滑度測定を行ない、その平均を求めた。
【0132】
(耐ブリスター性評価)
RI印刷機で、オフセット輪転印刷用インキ1.0ccを展開し、塗被紙サンプルの両面に印刷する。印刷したサンプルを加温したシリコーンオイルに漬け、発生するブリスターの様子を目視で観察し、ブリスター発生温度を評価した。
【0133】
(填料歩留)、(平滑度)、(層間強度)、(印刷平滑性)は前記と同様の方法で評価した。
【0134】
【表4】

【0135】
表4より、実施例10、11を原紙として用いた印刷用塗被紙は、白紙光沢、平滑性がよく、層間強度が強く、ブリスター適性に優れる。
【0136】
(実施例12)
<コールドオフセット型オフセット印刷用新聞用紙の作成>
針葉樹未晒クラフトパルプ30部、サーモメカニカルパルプ30部、脱墨古紙パルプ40部の割合で混合して離解し、レファイナーでフリーネス120mLC.S.F.(カナダ標準フリーネス)に調製したパルプスラリーに、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを3.0%添加し、その他に歩留向上剤(商品名:R−300、ソマール社製)0.03%、硫酸バンドを1.5%添加して紙料としてツインワイヤー式抄紙機で抄紙し、坪量40g/mの新聞用紙原紙を得た。
続いて、上記新聞用紙原紙の両面に、表面処理剤組成物の塗液として、酸化澱粉(商品面:王子エースA、王子コーンスターチ社製)100部、オレフィン系サイズ剤(商品名:OT−25、荒川化学工業社製)10部からなる固形分濃度8.8%の混合水溶液をゲートロールコーターにて、乾燥後の片面当りの塗布量が0.39g/mとなるように塗布、乾燥後、樹脂ロール/金属ロールよりなるソフトカレンダ仕上げを行い、実量40.7g/mのオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0137】
(実施例13)
填料として実施例2の軽質炭酸カルシウムを使用したこと以外は、実施例12と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0138】
(実施例14)
填料として実施例1の軽質炭酸カルシウム2.0%、ホワイトカーボン(自製)2.0%を合計4.0%添加したこと以外は、実施例12と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0139】
(比較例11)
実施例12において、填料を比較例1で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例12と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0140】
(比較例12)
実施例12において、填料を比較例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例12と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
【0141】
実施例12〜14、比較例11、12の新聞用紙について、紙物性を評価した。
【0142】
(印刷後不透明度)
RI印刷機(明製作所製)で、新聞用オフセットインキ(NEWS WEBMASTER/プロセス黒G2、サタカインクス社製)1.0cc使用して印刷を行い、印刷不透明度(Y)を次式から求めた。
Y={(印刷後の裏面反射面率)/(未印刷の裏面反射率)}×100
【0143】
(紙中灰分)
紙中灰分はJIS P8251−2003に準じて求めた。
【0144】
(層間強度)、(引裂強さ)、(平滑度)は前記と同様の方法で求めた。
【0145】
【表5】

【0146】
表5より、実施例12〜14で得た紙は、平滑性が良く、層間強度、引裂強さに優れる。
【0147】
(実施例15)
<包装用クラフト紙の作成>
フリーネス580mLC.S.Fの針葉樹未晒クラフトパルプからなるパルプスラリー100%に、パルプスラリーの全固形分に対して、合成サイズ剤0.2%、硫酸アルミニウム1.0%、アクリルアミド0.2%、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウム2.0%を添加して紙料をとして、オントップ多筒式抄紙機で抄紙し、坪量84g/mの包装用未晒クラフト紙用原紙を得た。
得られた原紙の両面に、酸化澱粉(商品名:王子エースA、前出)100部、サイズ剤(商品名:SE2064、星光PMC社製)10部からなる表面処理塗被液をゲートロールコーターにて、乾燥後の塗布量が2.0g/mになるように塗布し、包装用クラフト紙を得た。
【0148】
(実施例16)
填料として実施例2の軽質炭酸カルシウムを使用したこと以外は、実施例15と同様にして包装用クラフト紙を得た。
【0149】
(比較例13)
填料として比較例1で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例15と同様にして包装用クラフト紙を得た。
【0150】
(比較例14)
填料として比較例2で得た軽質炭酸カルシウムとした以外は、実施例15と同様にして包装用クラフト紙を得た。
【0151】
実施例15、16、比較例13、14の包装用クラフト紙について、紙物性を評価した。
【0152】
(引張強さ)、(引裂強さ)、(剛度)、(印刷平滑性)は前記と同様の方法で評価した。
【0153】
【表6】

【0154】
表6より、実施例15、16で得た紙は、紙腰が強く、引張強さ、引裂強さに優れる。
【0155】
(実施例17)
<段ボール用ライナの作成>
針葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス450mLC.S.F)/広葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス400mLC.S.F)=70/30からなるパルプスラリー100%に、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が6%なるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム2.5%、表面サイズ剤0.6%を添加し、表層用紙料を調成した。
針葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス450ml C.S.F)/広葉樹未晒クラフトパルプ(フリーネス400ml C.S.F)=40/60からなるパルプスラリー100%に、填料として実施例1の軽質炭酸カルシウムを紙中灰分が10%なるように添加した後、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム2.5%、表面サイズ剤0.6%を添加し、表下層用紙料を調成した。
雑誌古紙パルプ(フリーネス350mLC.S.F)/雑誌古紙パルプ(フリーネス350mLC.S.F)=50/50からなるパルプスラリー100%に、パルプスラリーの全固形分に対して硫酸アルミニウム1.2%、表面サイズ剤0.2%を添加し、中層、裏層用紙料を調成した。
上記紙料を運転抄速650m/minで長網式多層抄紙機により、各層の坪量が、表層40g/m、表下層40g/m、中層50g/m、裏層50g/mとなるように抄き合わせ、プレス、乾燥、カレンダーで平滑処理を行った後、再表層上に澱粉を1.0g/mとなるように塗布し、乾燥させた後に、さらにカレンダで平滑処理を行い、坪量180g/mの段ボール用ライナを得た。
【0156】
(実施例18)
填料として実施例2の軽質炭酸カルシウムを使用したこと以外は、実施例16と同様にして段ボール用ライナを得た。
【0157】
(比較例15)
填料として比較例1の軽質炭酸カルシウムを使用したこと以外は、実施例16と同様にして段ボール用ライナを得た。
【0158】
(比較例16)
填料として比較例2の軽質炭酸カルシウムを使用したこと以外は、実施例16と同様にして段ボール用ライナを得た。
【0159】
実施例17、18、比較例15、16の段ボール用ライナについて、紙物性を評価した。
【0160】
(比破裂強さ)
JIS P8131−1995に準拠して、比破裂強さを測定した。
【0161】
(比引張強さ)
JIS P 8113−1998に準拠して、比引張強さ測定した。
【0162】
(平滑度)、(層間強度)、(印刷平滑性)は前記と同様の方法で評価した。
【0163】
【表7】

【0164】
表7より、実施例17、18で得た紙は、平滑性がよく、層間強度、引張強さ、破裂強さに優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内填用軽質炭酸カルシウムであって、前記軽質炭酸カルシウムの粒子は、針状及び/または柱状の形状を有した一次粒子及び/またはそれらの凝集体であり、レーザー回折法による前記軽質炭酸カルシウム粒子の粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が4.0〜15.0μmであり、かつBET比表面積が3〜20m/gであることを特徴とする内填用軽質炭酸カルシウム。
【請求項2】
前記粒度分布曲線の50体積%の粒子径(D50)が、5.0〜10.0μmであることを特徴とする請求項1記載の内填用軽質炭酸カルシウム。
【請求項3】
前記BET比表面積が、5〜15m/gであることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の内填用軽質炭酸カルシウム。
【請求項4】
軽質炭酸カルシウムは、生石灰に対するモル比が2.5以下の範囲で消和水を添加し混合することにより消石灰を得る工程(A)、該消石灰と水を混合することにより消石灰スラリーを得る工程(B)、および該消石灰スラリーに二酸化炭素含有ガスを吹き込み炭酸化する工程(C)を経て製造されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内填用軽質炭酸カルシウム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の軽質炭酸カルシウムを内填した紙。
【請求項6】
請求項5記載の紙の少なくとも片面に澱粉を含む塗布液を塗布した印刷用紙。
【請求項7】
請求項5、6のいずれか1項に記載の紙の少なくとも片面に顔料と接着剤を主成分とする塗被層を少なくとも1層有することを特徴とする印刷用塗被紙。

【公開番号】特開2013−60692(P2013−60692A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266169(P2011−266169)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】