塵埃発生装置
【課題】 本発明は塵埃発生装置に関し、より詳細には繊維塵埃の素材となる塵埃母材を回転させながら塵埃の発生を行う塵埃発生装置に関するものである。
【解決手段】 本発明の塵埃発生装置は、塵埃母材を保持する母材ホルダと、母材ホルダを支持するホルダ支持部材と、塵埃母材の端面を擦り切ることにより塵埃を発生させる塵埃発生部と、母材ホルダに保持された塵埃母材を塵埃発生部に擦り合わせて往復運動する往復運動機構とを備え、母材ホルダは円筒形の外壁の所定位置に突起部を形成し、ホルダ支持部材は母材ホルダの外壁と内接する内壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、その螺旋溝に突起部を係合させる、よう構成する。
【解決手段】 本発明の塵埃発生装置は、塵埃母材を保持する母材ホルダと、母材ホルダを支持するホルダ支持部材と、塵埃母材の端面を擦り切ることにより塵埃を発生させる塵埃発生部と、母材ホルダに保持された塵埃母材を塵埃発生部に擦り合わせて往復運動する往復運動機構とを備え、母材ホルダは円筒形の外壁の所定位置に突起部を形成し、ホルダ支持部材は母材ホルダの外壁と内接する内壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、その螺旋溝に突起部を係合させる、よう構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塵埃発生装置に関し、より詳細には繊維塵埃の素材となる塵埃母材を回転させながら塵埃の発生を行う塵埃発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクトップコンピュータやノートブックコンピュータ等の電子機器には空冷用の冷却ファンを内蔵し、電子機器内の温度上昇を抑制することが行われている。即ち、冷却ファンにより電子機器の外部から空気を吸引し、電子機器内部の電子部品や電子ユニットの発熱により温められた空気を排出することで、電子機器内を冷却するものである。しかしながら、このとき冷却ファンの空気の吸引に伴って空気中に浮遊する埃も電子機器内に取り込まれ、この埃が電子機器内の電子部品等に付着・堆積して断熱材となって温度上昇をもたらし、故障を引き起こすことになる。このような埃は居住空間における繊維製品(例えば衣類やカーテン、絨毯など)から発塵する場合が多く、いわゆる綿埃である。
【0003】
電子機器に対する埃の影響を調べるため埃の雰囲気の中で電子機器を作動させて放熱の状態を観察したり、埃による故障の発生のメカニズムを検証することが行われている。埃の雰囲気を人為的に作り出すためには繊維質の塵埃を発生させる必要がある。図7は塵埃発生させる装置(塵埃発生装置100)の従来例を示すもので、塵埃発生の原理は繊維素材を束ねた塵埃母材を網板に押しつけておろし金のように擦ることにより塵埃を発生させている。より詳細には、塵埃発生装置100のベース10上におろし金に相当する塵埃発生部30を配置し、その上に繊維素材を束ねた塵埃母材を供給する塵埃母材供給ユニット20を配置して、塵埃母材供給ユニット20に連結した往復運動機構40により塵埃母材を塵埃発生部30に往復させて(図中の双方向の矢印は往復運動の方向を表す)塵埃母材を削ることを行う。
【0004】
塵埃母材供給ユニット20の構造は図8(図7の塵埃母材供給ユニット20の部分を拡大し、外側のホルダ支持部材22を透明化して点線で示している)に示すように母材ホルダ21が塵埃母材60を挟んで保持し、ホルダ支持部材22に支持されて自重で塵埃母材60の下部端面を塵埃発生部30に押しつけるようしている。
【0005】
塵埃母材60の削りが平均に行われるように、図9に示すように、ホルダ支持部材22の内側に2つの突起部22−1、22−2を設け、塵埃母材供給ユニット20が往復運動の左端または右端に突き当たり続いて反対方向の運動を始めるとき、母材ホルダ21がこの突起部22−1、22−2当たって回転させることも行われている。
【0006】
繊維素材である絹繊維の微粒子を発生する方法として特許文献1が、電子機器等に対する粉塵試験装置として特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−182992号公報
【特許文献2】特開平07−120377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塵埃発生装置100は、繊維素材を束ねた塵埃母材60を塵埃発生部30の金網上に押しつけて往復運動させ、おろし金の原理で金網により塵埃母材60を擦り切り塵埃を発生されるものである。このとき、塵埃母材60の金網に接する面の往復運動の中心部分に対して外側の部分(左右に塵埃母材が運動しているとき、塵埃母材の上下の部分)の擦り切れる効率は劣り、図10に示すように塵埃母材60の運動方向に対する両側に捲れ61が生じる(塵埃母材60の塵埃発生部30の金網に接する端面が捲れる)。塵埃母材60を回転せずに往復させ擦り切りを続けるとこの捲くれは帯状になって運動方向に対して直角方向に拡がる。塵埃母材60の捲くれ61は塵埃の発生に寄与しないことから塵埃発生効率を低下させる。なお図10は、図7に示すAとBのそれぞれの方向から見た母材ホルダ21と母材ホルダ21に保持された塵埃母材60に対する側面図と下から見た図とを示したものである。矢印は塵埃母材60の往復運動の方向を示している。
【0009】
塵埃母材を図9に示す回転を与えると、捲くれの形状は帯状にはならないが、鍔のように各方向一様に捲くれが生じ、図10に示す状態より捲くれの状態は改善されるものの未だ捲くれが残る。この鍔状の捲くれは塵埃母材の回転が不充分によるものと考えられる。
【0010】
塵埃母材の回転のみを考えるのであれば、例えば専用のモータと減速させるためのギヤとを用いて回転機構を設けることは可能であるが、コストを要することになる。本発明の目的は、低コストで塵埃母材をより回転させ捲くれを生じさせない塵埃発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の塵埃発生装置は、母材ホルダ、ホルダ支持部材、塵埃発生部および往復運動機構を備える。
【0012】
母材ホルダは、繊維素材を束ねた塵埃母材を保持し、ホルダ支持部材は母材ホルダを垂直方向に摺動可能に支持する。塵埃発生部は塵埃母材の端面を擦り切ることにより塵埃を発生させ、往復運動機構は母材ホルダに保持された塵埃母材を塵埃発生部に擦り合わせ、往復運動するものである。そして、母材ホルダは円筒形の外壁の所定位置に突起部を形成し、ホルダ支持部材は母材ホルダの外壁と内接する内壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、その螺旋溝に突起部を係合させた、ことを特徴とするものである。
【0013】
母材ホルダの下降は、塵埃母材の擦り切りにより塵埃母材が消耗され母材ホルダの自重により突起部が螺旋溝を伝って下降する。この母材ホルダの下降により塵埃母材が回転する。
【発明の効果】
【0014】
開示の塵埃発生装置は、ホルダ支持部材の内壁に螺旋溝を形成し、この螺旋溝に母材ホルダの外壁の突起部を係合させるようにしたので、塵埃母材の擦り切りにより塵埃母材が消耗され母材ホルダの自重により突起部が螺旋溝を伝って下降するに伴って塵埃母材が回転し、捲くれを生じることなく均一に塵埃母材を消耗できる。本発明の塵埃発生装置は母材ホルダおよびホルダ支持部材に突起部と螺旋溝を形成するだけでよく、低コストで従来に較べてより回転が行える塵埃発生装置の実現を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】塵埃発生装置の構成例(実施形態その1)である。
【図2】塵埃母材供給ユニットの例(実施例その1)である。
【図3】母材ホルダとホルダ支持部材の例(実施例その1)である。
【図4】ホルダ支持部材の螺旋溝の形成例である。
【図5】塵埃母材の供給例である。
【図6】母材ホルダとホルダ支持部材の例(実施例その2)である。
【図7】従来の塵埃発生装置の例である。
【図8】従来の母材ホルダとホルダ支持部材の例である。
【図9】従来の母材ホルダの回転例である。
【図10】塵埃母材先端の捲くれの例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例)
【0017】
本発明の実施例を図1〜図6を用いて説明する。
(実施例その1)
図1は、本発明の塵埃発生装置200の構成例を示すもので、塵埃発生装置200はベース10上に塵埃母材を供給する塵埃母材供給ユニット70、塵埃を発生する塵埃発生部30、塵埃母材供給ユニット70を往復運動させる往復運動機構40及び往復運動機構40と塵埃母材供給ユニット70とを連結する連結部材50とで構成する(図7で従来例として示した塵埃発生装置100と同一のものは同じ符号を付けている)。
【0018】
これらの各構成要素について詳細に説明する。まず、塵埃発生部30は、ここではステンレスの線材を平織に織った網板である。線材が交差する山の部分と塵埃母材とが擦り合わされて塵埃母材が擦り切られ、塵埃を発生する。発生された塵埃は網目から下に落ちることになる。
【0019】
往復運動機構40は、図示されるカバーの中に左右の回転を行う駆動モータとこの駆動モータと結合するボールスクリュー、及びボールスクリューに係合するスリーブから成る(いずれも図示せず)。駆動モータの回転に伴ってボールスクリューが回転し、スリーブはボールスクリュー上を直線運動する。後述する塵埃母材供給ユニット70は連結部材50を介してこのスリーブに連結しており駆動モータの左右の回転により矢印に示す直線の往復運動を行う。より詳細には、図1に示した往復運動機構40のカバーの上面42は開口部41を形成しており、この開口部41で連結部材50とスリーブとが連結している。また、連結部材50はカバーの上面42上を摺動し、開口部の長さは約500mmである。
【0020】
次に塵埃母材供給ユニット70について図2〜図4を用いて説明する。図2は図1から塵埃母材供給ユニット70の部分を連結部材50を含めて抜き出し、母材ホルダ71とホルダ支持部材72との関係が判るようにホルダ支持部材72を透けて見えるように描いた図である。母材ホルダ71の外観は図に示すように円筒形状をなし、塵埃母材60を保持してホルダ支持部材72の中に配置される。
【0021】
図3は、母材ホルダ71とホルダ支持部材72とをより詳細に説明する図で、図3(a)は母材ホルダ71を、図3(b)はホルダ支持部材72を示している。図3(a)に示すように、母材ホルダ71は円筒を縦に割った2つのピース71−1、71−2から構成する。母材ホルダ71の素材はステンレスで、2つのピース71−1、71−2を合わせたときの外形寸法は、外径40mmφ、高さが70mmである。2つのピース71−1、71−2のいずれかのピースの外壁の所定高さの位置に突起部71−3を形成する。突起部71−3は後述するホルダ支持部材72の螺旋溝72−1に係合されるもので、高さ1.4mmで先端形状は半径1.3mmの半円球である。塵埃母材60は、この2つのピース71−1、71−2の中に挟まれ、図示しないネジで2つのピース71−1、71−2をネジ止めし保持される。塵埃母材60は、例えば工業用のウエスを束ねたもので、ホルダ内で固定され棒状となっている。
【0022】
ホルダ支持部材72は、図3(b)に示すように円筒形をなし、その内側に垂直方向の螺旋溝72−1を形成している。螺旋溝72−1の上端はホルダ支持部材72の上面に垂直に立ち上がって突き当たり、下端は所定の高さとなるように形成してある。ホルダ支持部材72はアルミニュウム素材を用い、円筒の肉厚は約3mmである。螺旋溝72−1はこの肉厚の半分の1.5mmの深さに断面を半円(半径1.5mm)の形に形成している。前述のように母材ホルダ71の突起部71−3が螺旋溝72−1に係合され、この母材ホルダ71は塵埃母材60の消耗により自重で螺旋溝72−1を伝って下降する。このため、母材ホルダ71の外壁とホルダ支持部材72の内壁との間隙を0.1〜0.2mmとしている。
【0023】
螺旋溝72−1の角度は、塵埃母材60の消耗に対して塵埃母材60をどの程度回転させる、ということで決められる。図4における螺旋溝72−1の高さY、角度αと回転角βに対する円周方向の移動距離Lの関係は
tanα=Y/L
L=2・R・π・β/360°
が成り立つ。
【0024】
ここで、ホルダ71の外径40mm、塵埃母材60の削り量を上記の高さY、ホルダ71の円周方向の移動距離Lとすると、10mmの削り量に対して1/4回転させるためには螺旋溝72−1の角度αを18°とすればよいことになる。
【0025】
次に、本発明の母材ホルダ71とホルダ支持部材72を用いて塵埃を発生する例を図5を用いて説明する。図5(a)は、塵埃母材60を保持した母材ホルダ71をホルダ支持部材72にセットした状態を示している。母材ホルダ71のホルダ支持部材72へのセットは、塵埃母材60を保持した状態で母材ホルダ71をホルダ支持部材72の上部から挿入することになる。即ち、母材ホルダ71の突起部71−3をホルダ支持部材72の上部の螺旋溝72−1に合わせ、螺旋溝72−1の上部の垂直部分に沿って母材ホルダ71を下方に落とし込む。塵埃母材60の下端が塵埃発生部30の網板に当たったところで母材ホルダ71の下方への落とし込みは停止する。
【0026】
図5(a)の状態から往復運動機構40によってホルダ支持部材72に支持された母材ホルダ71は往復運動を行う。塵埃母材60は母材ホルダ71の重量で塵埃発生部30の網板を押圧しているので、この押圧と往復運動で塵埃母材60は網板の線材で擦り切られ(削られ)、図5(b)に示すように網板の開口部から塵埃62が生成される。塵埃母材60が削られることにより、母材ホルダ71の突起部71−3が螺旋溝72−1を伝い回転しながら下降する。図5(b)の水平の矢印は往復運動機構40の往復運動の方向を、回転の矢印は母材ホルダ71の回転方向を示している。
【0027】
塵埃母材60の削りの進行が進み、母材ホルダ71の突起部71−3が螺旋溝72−1の下端に達すると、塵埃母材60はそれ以上の下降を停止する。即ち、塵埃母材60の供給が停止される。従って、螺旋溝72−1の下端の高さ位置は、塵埃母材60の供給停止を行う位置ということになり、下端はストッパーとしての役割を果たしている。このストッパーがないと、母材ホルダ71は更に下降して塵埃発生部30の網板に当たり、母材ホルダ71または網板を損傷する。図5(c)は、突起部71−3が螺旋溝72−1の下端に達した状態を示している。
(実施例その2)
実施例その1では、母材ホルダ71に突起部71−3を、ホルダ支持部材72に螺旋溝72−1を形成し、塵埃母材60を回転させるものであった。実施例その2は、母材ホルダに螺旋溝を、ホルダ支持部材に突起部を形成し、塵埃母材60を回転させるものである。
【0028】
図6(a)は実施例その2の母材ホルダ73を示す。母材ホルダ73は2つのピース73−1、73−2で構成し、その2つのピース73−1、73−2を組み合わせた外壁に螺旋溝73−3を形成する。螺旋溝73−3の下端はいずれかのピースの下面に垂直の部分を有して突き当たり、上端は所定の高さになるように形成してある。螺旋溝73−3の深さや断面形状は実施例その1と同一である。
【0029】
図6(b)は、実施例その2のホルダ支持部材74を示す。ホルダ支持部材74の内壁の所定位置に突起部74−1を形成する。この形状および寸法も実施例その1と同一である。
【0030】
母材ホルダ73のホルダ支持部材74へのセットは、塵埃母材60を保持した母材ホルダ73をホルダ支持部材74の上部から挿入し、螺旋溝73−3の下端に突起部74−1を合わせ、下方に押し込む。母材ホルダ73をホルダ支持部材74に挿入するとき、突起部74−1の位置が見えないがホルダ支持部材74の上部に印を付けてそれを目安に挿入すればよい。
【符号の説明】
【0031】
10 ベース
20 塵埃母材供給ユニット
21 母材ホルダ
22 ホルダ支持部材
22−1 (ホルダ支持部材)突起部
22−2 (ホルダ支持部材)突起部
30 塵埃発生部
40 往復運動機構
50 連結部材
60 塵埃母材
61 塵埃母材の捲くれ
62 塵埃
70 塵埃母材供給ユニット
71 母材ホルダ
71−1 (母材ホルダの)ピース
71−2 (母材ホルダの)ピース
71−3 螺旋溝
72 ホルダ支持部材
72−1 突起部
73 母材ホルダ
73−1 (母材ホルダの)ピース
73−2 (母材ホルダの)ピース
73−3 螺旋溝
74 ホルダ支持部材
74−1 突起部
100 (従来の)塵埃発生装置
200 (本発明の)塵埃発生装置
【技術分野】
【0001】
本発明は塵埃発生装置に関し、より詳細には繊維塵埃の素材となる塵埃母材を回転させながら塵埃の発生を行う塵埃発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスクトップコンピュータやノートブックコンピュータ等の電子機器には空冷用の冷却ファンを内蔵し、電子機器内の温度上昇を抑制することが行われている。即ち、冷却ファンにより電子機器の外部から空気を吸引し、電子機器内部の電子部品や電子ユニットの発熱により温められた空気を排出することで、電子機器内を冷却するものである。しかしながら、このとき冷却ファンの空気の吸引に伴って空気中に浮遊する埃も電子機器内に取り込まれ、この埃が電子機器内の電子部品等に付着・堆積して断熱材となって温度上昇をもたらし、故障を引き起こすことになる。このような埃は居住空間における繊維製品(例えば衣類やカーテン、絨毯など)から発塵する場合が多く、いわゆる綿埃である。
【0003】
電子機器に対する埃の影響を調べるため埃の雰囲気の中で電子機器を作動させて放熱の状態を観察したり、埃による故障の発生のメカニズムを検証することが行われている。埃の雰囲気を人為的に作り出すためには繊維質の塵埃を発生させる必要がある。図7は塵埃発生させる装置(塵埃発生装置100)の従来例を示すもので、塵埃発生の原理は繊維素材を束ねた塵埃母材を網板に押しつけておろし金のように擦ることにより塵埃を発生させている。より詳細には、塵埃発生装置100のベース10上におろし金に相当する塵埃発生部30を配置し、その上に繊維素材を束ねた塵埃母材を供給する塵埃母材供給ユニット20を配置して、塵埃母材供給ユニット20に連結した往復運動機構40により塵埃母材を塵埃発生部30に往復させて(図中の双方向の矢印は往復運動の方向を表す)塵埃母材を削ることを行う。
【0004】
塵埃母材供給ユニット20の構造は図8(図7の塵埃母材供給ユニット20の部分を拡大し、外側のホルダ支持部材22を透明化して点線で示している)に示すように母材ホルダ21が塵埃母材60を挟んで保持し、ホルダ支持部材22に支持されて自重で塵埃母材60の下部端面を塵埃発生部30に押しつけるようしている。
【0005】
塵埃母材60の削りが平均に行われるように、図9に示すように、ホルダ支持部材22の内側に2つの突起部22−1、22−2を設け、塵埃母材供給ユニット20が往復運動の左端または右端に突き当たり続いて反対方向の運動を始めるとき、母材ホルダ21がこの突起部22−1、22−2当たって回転させることも行われている。
【0006】
繊維素材である絹繊維の微粒子を発生する方法として特許文献1が、電子機器等に対する粉塵試験装置として特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−182992号公報
【特許文献2】特開平07−120377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塵埃発生装置100は、繊維素材を束ねた塵埃母材60を塵埃発生部30の金網上に押しつけて往復運動させ、おろし金の原理で金網により塵埃母材60を擦り切り塵埃を発生されるものである。このとき、塵埃母材60の金網に接する面の往復運動の中心部分に対して外側の部分(左右に塵埃母材が運動しているとき、塵埃母材の上下の部分)の擦り切れる効率は劣り、図10に示すように塵埃母材60の運動方向に対する両側に捲れ61が生じる(塵埃母材60の塵埃発生部30の金網に接する端面が捲れる)。塵埃母材60を回転せずに往復させ擦り切りを続けるとこの捲くれは帯状になって運動方向に対して直角方向に拡がる。塵埃母材60の捲くれ61は塵埃の発生に寄与しないことから塵埃発生効率を低下させる。なお図10は、図7に示すAとBのそれぞれの方向から見た母材ホルダ21と母材ホルダ21に保持された塵埃母材60に対する側面図と下から見た図とを示したものである。矢印は塵埃母材60の往復運動の方向を示している。
【0009】
塵埃母材を図9に示す回転を与えると、捲くれの形状は帯状にはならないが、鍔のように各方向一様に捲くれが生じ、図10に示す状態より捲くれの状態は改善されるものの未だ捲くれが残る。この鍔状の捲くれは塵埃母材の回転が不充分によるものと考えられる。
【0010】
塵埃母材の回転のみを考えるのであれば、例えば専用のモータと減速させるためのギヤとを用いて回転機構を設けることは可能であるが、コストを要することになる。本発明の目的は、低コストで塵埃母材をより回転させ捲くれを生じさせない塵埃発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の塵埃発生装置は、母材ホルダ、ホルダ支持部材、塵埃発生部および往復運動機構を備える。
【0012】
母材ホルダは、繊維素材を束ねた塵埃母材を保持し、ホルダ支持部材は母材ホルダを垂直方向に摺動可能に支持する。塵埃発生部は塵埃母材の端面を擦り切ることにより塵埃を発生させ、往復運動機構は母材ホルダに保持された塵埃母材を塵埃発生部に擦り合わせ、往復運動するものである。そして、母材ホルダは円筒形の外壁の所定位置に突起部を形成し、ホルダ支持部材は母材ホルダの外壁と内接する内壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、その螺旋溝に突起部を係合させた、ことを特徴とするものである。
【0013】
母材ホルダの下降は、塵埃母材の擦り切りにより塵埃母材が消耗され母材ホルダの自重により突起部が螺旋溝を伝って下降する。この母材ホルダの下降により塵埃母材が回転する。
【発明の効果】
【0014】
開示の塵埃発生装置は、ホルダ支持部材の内壁に螺旋溝を形成し、この螺旋溝に母材ホルダの外壁の突起部を係合させるようにしたので、塵埃母材の擦り切りにより塵埃母材が消耗され母材ホルダの自重により突起部が螺旋溝を伝って下降するに伴って塵埃母材が回転し、捲くれを生じることなく均一に塵埃母材を消耗できる。本発明の塵埃発生装置は母材ホルダおよびホルダ支持部材に突起部と螺旋溝を形成するだけでよく、低コストで従来に較べてより回転が行える塵埃発生装置の実現を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】塵埃発生装置の構成例(実施形態その1)である。
【図2】塵埃母材供給ユニットの例(実施例その1)である。
【図3】母材ホルダとホルダ支持部材の例(実施例その1)である。
【図4】ホルダ支持部材の螺旋溝の形成例である。
【図5】塵埃母材の供給例である。
【図6】母材ホルダとホルダ支持部材の例(実施例その2)である。
【図7】従来の塵埃発生装置の例である。
【図8】従来の母材ホルダとホルダ支持部材の例である。
【図9】従来の母材ホルダの回転例である。
【図10】塵埃母材先端の捲くれの例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例)
【0017】
本発明の実施例を図1〜図6を用いて説明する。
(実施例その1)
図1は、本発明の塵埃発生装置200の構成例を示すもので、塵埃発生装置200はベース10上に塵埃母材を供給する塵埃母材供給ユニット70、塵埃を発生する塵埃発生部30、塵埃母材供給ユニット70を往復運動させる往復運動機構40及び往復運動機構40と塵埃母材供給ユニット70とを連結する連結部材50とで構成する(図7で従来例として示した塵埃発生装置100と同一のものは同じ符号を付けている)。
【0018】
これらの各構成要素について詳細に説明する。まず、塵埃発生部30は、ここではステンレスの線材を平織に織った網板である。線材が交差する山の部分と塵埃母材とが擦り合わされて塵埃母材が擦り切られ、塵埃を発生する。発生された塵埃は網目から下に落ちることになる。
【0019】
往復運動機構40は、図示されるカバーの中に左右の回転を行う駆動モータとこの駆動モータと結合するボールスクリュー、及びボールスクリューに係合するスリーブから成る(いずれも図示せず)。駆動モータの回転に伴ってボールスクリューが回転し、スリーブはボールスクリュー上を直線運動する。後述する塵埃母材供給ユニット70は連結部材50を介してこのスリーブに連結しており駆動モータの左右の回転により矢印に示す直線の往復運動を行う。より詳細には、図1に示した往復運動機構40のカバーの上面42は開口部41を形成しており、この開口部41で連結部材50とスリーブとが連結している。また、連結部材50はカバーの上面42上を摺動し、開口部の長さは約500mmである。
【0020】
次に塵埃母材供給ユニット70について図2〜図4を用いて説明する。図2は図1から塵埃母材供給ユニット70の部分を連結部材50を含めて抜き出し、母材ホルダ71とホルダ支持部材72との関係が判るようにホルダ支持部材72を透けて見えるように描いた図である。母材ホルダ71の外観は図に示すように円筒形状をなし、塵埃母材60を保持してホルダ支持部材72の中に配置される。
【0021】
図3は、母材ホルダ71とホルダ支持部材72とをより詳細に説明する図で、図3(a)は母材ホルダ71を、図3(b)はホルダ支持部材72を示している。図3(a)に示すように、母材ホルダ71は円筒を縦に割った2つのピース71−1、71−2から構成する。母材ホルダ71の素材はステンレスで、2つのピース71−1、71−2を合わせたときの外形寸法は、外径40mmφ、高さが70mmである。2つのピース71−1、71−2のいずれかのピースの外壁の所定高さの位置に突起部71−3を形成する。突起部71−3は後述するホルダ支持部材72の螺旋溝72−1に係合されるもので、高さ1.4mmで先端形状は半径1.3mmの半円球である。塵埃母材60は、この2つのピース71−1、71−2の中に挟まれ、図示しないネジで2つのピース71−1、71−2をネジ止めし保持される。塵埃母材60は、例えば工業用のウエスを束ねたもので、ホルダ内で固定され棒状となっている。
【0022】
ホルダ支持部材72は、図3(b)に示すように円筒形をなし、その内側に垂直方向の螺旋溝72−1を形成している。螺旋溝72−1の上端はホルダ支持部材72の上面に垂直に立ち上がって突き当たり、下端は所定の高さとなるように形成してある。ホルダ支持部材72はアルミニュウム素材を用い、円筒の肉厚は約3mmである。螺旋溝72−1はこの肉厚の半分の1.5mmの深さに断面を半円(半径1.5mm)の形に形成している。前述のように母材ホルダ71の突起部71−3が螺旋溝72−1に係合され、この母材ホルダ71は塵埃母材60の消耗により自重で螺旋溝72−1を伝って下降する。このため、母材ホルダ71の外壁とホルダ支持部材72の内壁との間隙を0.1〜0.2mmとしている。
【0023】
螺旋溝72−1の角度は、塵埃母材60の消耗に対して塵埃母材60をどの程度回転させる、ということで決められる。図4における螺旋溝72−1の高さY、角度αと回転角βに対する円周方向の移動距離Lの関係は
tanα=Y/L
L=2・R・π・β/360°
が成り立つ。
【0024】
ここで、ホルダ71の外径40mm、塵埃母材60の削り量を上記の高さY、ホルダ71の円周方向の移動距離Lとすると、10mmの削り量に対して1/4回転させるためには螺旋溝72−1の角度αを18°とすればよいことになる。
【0025】
次に、本発明の母材ホルダ71とホルダ支持部材72を用いて塵埃を発生する例を図5を用いて説明する。図5(a)は、塵埃母材60を保持した母材ホルダ71をホルダ支持部材72にセットした状態を示している。母材ホルダ71のホルダ支持部材72へのセットは、塵埃母材60を保持した状態で母材ホルダ71をホルダ支持部材72の上部から挿入することになる。即ち、母材ホルダ71の突起部71−3をホルダ支持部材72の上部の螺旋溝72−1に合わせ、螺旋溝72−1の上部の垂直部分に沿って母材ホルダ71を下方に落とし込む。塵埃母材60の下端が塵埃発生部30の網板に当たったところで母材ホルダ71の下方への落とし込みは停止する。
【0026】
図5(a)の状態から往復運動機構40によってホルダ支持部材72に支持された母材ホルダ71は往復運動を行う。塵埃母材60は母材ホルダ71の重量で塵埃発生部30の網板を押圧しているので、この押圧と往復運動で塵埃母材60は網板の線材で擦り切られ(削られ)、図5(b)に示すように網板の開口部から塵埃62が生成される。塵埃母材60が削られることにより、母材ホルダ71の突起部71−3が螺旋溝72−1を伝い回転しながら下降する。図5(b)の水平の矢印は往復運動機構40の往復運動の方向を、回転の矢印は母材ホルダ71の回転方向を示している。
【0027】
塵埃母材60の削りの進行が進み、母材ホルダ71の突起部71−3が螺旋溝72−1の下端に達すると、塵埃母材60はそれ以上の下降を停止する。即ち、塵埃母材60の供給が停止される。従って、螺旋溝72−1の下端の高さ位置は、塵埃母材60の供給停止を行う位置ということになり、下端はストッパーとしての役割を果たしている。このストッパーがないと、母材ホルダ71は更に下降して塵埃発生部30の網板に当たり、母材ホルダ71または網板を損傷する。図5(c)は、突起部71−3が螺旋溝72−1の下端に達した状態を示している。
(実施例その2)
実施例その1では、母材ホルダ71に突起部71−3を、ホルダ支持部材72に螺旋溝72−1を形成し、塵埃母材60を回転させるものであった。実施例その2は、母材ホルダに螺旋溝を、ホルダ支持部材に突起部を形成し、塵埃母材60を回転させるものである。
【0028】
図6(a)は実施例その2の母材ホルダ73を示す。母材ホルダ73は2つのピース73−1、73−2で構成し、その2つのピース73−1、73−2を組み合わせた外壁に螺旋溝73−3を形成する。螺旋溝73−3の下端はいずれかのピースの下面に垂直の部分を有して突き当たり、上端は所定の高さになるように形成してある。螺旋溝73−3の深さや断面形状は実施例その1と同一である。
【0029】
図6(b)は、実施例その2のホルダ支持部材74を示す。ホルダ支持部材74の内壁の所定位置に突起部74−1を形成する。この形状および寸法も実施例その1と同一である。
【0030】
母材ホルダ73のホルダ支持部材74へのセットは、塵埃母材60を保持した母材ホルダ73をホルダ支持部材74の上部から挿入し、螺旋溝73−3の下端に突起部74−1を合わせ、下方に押し込む。母材ホルダ73をホルダ支持部材74に挿入するとき、突起部74−1の位置が見えないがホルダ支持部材74の上部に印を付けてそれを目安に挿入すればよい。
【符号の説明】
【0031】
10 ベース
20 塵埃母材供給ユニット
21 母材ホルダ
22 ホルダ支持部材
22−1 (ホルダ支持部材)突起部
22−2 (ホルダ支持部材)突起部
30 塵埃発生部
40 往復運動機構
50 連結部材
60 塵埃母材
61 塵埃母材の捲くれ
62 塵埃
70 塵埃母材供給ユニット
71 母材ホルダ
71−1 (母材ホルダの)ピース
71−2 (母材ホルダの)ピース
71−3 螺旋溝
72 ホルダ支持部材
72−1 突起部
73 母材ホルダ
73−1 (母材ホルダの)ピース
73−2 (母材ホルダの)ピース
73−3 螺旋溝
74 ホルダ支持部材
74−1 突起部
100 (従来の)塵埃発生装置
200 (本発明の)塵埃発生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維素材を束ねた塵埃母材を保持する母材ホルダと、
前記母材ホルダを垂直方向に摺動可能に支持するホルダ支持部材と、
前記塵埃母材の端面を擦り切ることにより、塵埃を発生させるための塵埃発生部と、
前記母材ホルダに保持された前記塵埃母材を前記塵埃発生部に擦り合わせ、往復運動する往復運動機構とを備え、
前記母材ホルダは円筒形の外壁の所定位置に突起部を形成し、前記ホルダ支持部材は該母材ホルダの外壁と内接する内壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、該螺旋溝に該突起部を係合させた
ことを特徴とする塵埃発生装置。
【請求項2】
前記螺旋溝の最下端は、前記突起部が該最下端に接触した際に、前記母材ホルダが前記塵埃発生部と接触しない高さである
ことを特徴とする請求項1に記載の塵埃発生装置。
【請求項3】
繊維素材を束ねた塵埃母材を保持する母材ホルダと、
前記母材ホルダを垂直方向に摺動可能に支持するホルダ支持部材と、
前記塵埃母材の端面を擦り切ることにより、塵埃を発生させるための塵埃発生部と、
前記母材ホルダに保持された前記塵埃母材を前記塵埃発生部に擦り合わせ、往復運動する往復運動機構とを備え、
前記母材ホルダは円筒形の外壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、前ホルダ記支持部材は該母材ホルダの外壁と内接する内壁の所定位置に突起部を形成し、該螺旋溝に該突起部を係合させた
ことを特徴とする塵埃発生装置。
【請求項4】
前記螺旋溝の最上端は、前記突起部が該最上端に接触した際に、前記母材ホルダが前記塵埃発生部と接触しない高さである
ことを特徴とする請求項3に記載の塵埃発生装置。
【請求項1】
繊維素材を束ねた塵埃母材を保持する母材ホルダと、
前記母材ホルダを垂直方向に摺動可能に支持するホルダ支持部材と、
前記塵埃母材の端面を擦り切ることにより、塵埃を発生させるための塵埃発生部と、
前記母材ホルダに保持された前記塵埃母材を前記塵埃発生部に擦り合わせ、往復運動する往復運動機構とを備え、
前記母材ホルダは円筒形の外壁の所定位置に突起部を形成し、前記ホルダ支持部材は該母材ホルダの外壁と内接する内壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、該螺旋溝に該突起部を係合させた
ことを特徴とする塵埃発生装置。
【請求項2】
前記螺旋溝の最下端は、前記突起部が該最下端に接触した際に、前記母材ホルダが前記塵埃発生部と接触しない高さである
ことを特徴とする請求項1に記載の塵埃発生装置。
【請求項3】
繊維素材を束ねた塵埃母材を保持する母材ホルダと、
前記母材ホルダを垂直方向に摺動可能に支持するホルダ支持部材と、
前記塵埃母材の端面を擦り切ることにより、塵埃を発生させるための塵埃発生部と、
前記母材ホルダに保持された前記塵埃母材を前記塵埃発生部に擦り合わせ、往復運動する往復運動機構とを備え、
前記母材ホルダは円筒形の外壁に垂直方向に螺旋する螺旋溝を形成し、前ホルダ記支持部材は該母材ホルダの外壁と内接する内壁の所定位置に突起部を形成し、該螺旋溝に該突起部を係合させた
ことを特徴とする塵埃発生装置。
【請求項4】
前記螺旋溝の最上端は、前記突起部が該最上端に接触した際に、前記母材ホルダが前記塵埃発生部と接触しない高さである
ことを特徴とする請求項3に記載の塵埃発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−249679(P2010−249679A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99765(P2009−99765)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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