説明

塵集積容量が向上しかつ高湿度環境に対する抵抗性が向上した空気濾過媒体

水ミストをかなり含む空気から粒子を濾過除去する方法は、疎水性不織ウェブと流体接触するナノウェブ層を有する媒体にその空気を通すことを含む。疎水性ウェブは、本質的に疎水性の物質から作ることができるか、あるいは疎水性コーティングで被覆できる。その媒体では、通常なら水ミストの濾過に関連して起こる大きな圧力低下は起こらず、その効率は十分に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子物質をガス流(特にミストをかなり含むガス流)から濾過除去するための空気濾過媒体に関する。
【0002】
気相濾過は、従来、でたらめに配向された繊維の低効率、中効率または高効率の繊維性濾過層を含む、プリーツ加工が可能な低効率、中効率または高効率の複合濾過媒体と;複合濾過媒体のプリーツ付けを可能にし、かつその形状を維持できるようにする1つまたは複数の透過性剛化層とによって、成し遂げられてきた。そのような濾過装置は、乗り物の客室のエアフィルター、高性能エンジンのエアフィルターおよびエンジンオイルのフィルターとして働く。ASHRAE(American Society of Heating Refrigeration and Air Conditioning Engineers)のプリーツ加工が可能なフィルターなどでは、典型的には、濾過要素用のプリーツ付き高効率濾過媒体を使用する。
【0003】
高効率のナノ繊維層ともっと透過性のあるスパンバウンド(spunbound)繊維剛化層とから作られたプリーツ加工が可能な複合濾過媒体(「SN」媒体とも呼ばれる)は、良好な流動性/バリヤー性(すなわち、効率が高く圧力低下が小さい)を示すことが明らかになってきた。しかし、塵集積容量(dust−loading capacity)は、フィルターで非常に小さい塵粒子を取り除くという課題が課せられた特定の産業用HVAC用途では、目標値よりも低い。これは、HVACシステムが、高効率の最終フィルターの前側に低効率の予備フィルターを有するよう設計および構成されている場合に、起こりうる。SN構造では、スクリムは典型的には、径(size)が約5ミクロンより大きい粒子を事前濾過除去できる、繊維の直径が14〜30ミクロンの不織ウェブで作られる。残りの粒子は、薄いナノ繊維層に到達し、急速に孔を満たして、フィルターが詰まることになる。その結果、フィルター抵抗が急激に増大し、それゆえにフィルター寿命が縮まる。スクリム層の坪量および厚さを増やすことによって塵集積容量を増大させることが試みられてきたが、要求がいっそう厳しい状況においては、結果はいまだに十分ではない。
【0004】
問題をさらに複雑にすることであるが、入ってくる空気の湿度が高い、または入ってくる空気が水ミストを含んでいると、濾過媒体のナノ繊維層上に集積した塵は、湿気を吸い取って膨潤しうる。大気中の高い割合のエアロゾルが事実上、吸湿性であることが広く知られている。このため、残りの孔径がいっそう小さくなり、流量がさらに制限され、フィルターでの圧力低下が増大する。圧力低下のこうしたスパイクは、重大な問題をHVACシステムにもたらしうる。
【0005】
湿気のある状態においてほこり捕捉容量及び/または大気汚染物質容量(air contaminant capacity)が比較的大きく、しかも圧力低下が比較的小さい、こうした濾過用途用の比較的低コストで高効率の濾過媒体を提供する必要が依然としてある。本発明の1つの目的は、そのような濾過媒体およびその使用法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
流れる空気から粒状物を濾過除去する方法であって、前記方法が、水ミストをかなり含みかつ濾過除去する粒子を含んでいる空気流を供給するステップと、その空気流を濾過媒体に通すステップとを含む、方法が提供される。媒体は、空気流に対して上流側と下流側とを有し、また疎水性不織ウェブの下流において疎水性不織ウェブと流体接触するナノウェブ層を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
定義
本明細書で使用される「不織布」という用語は、多数の繊維を含むウェブを意味する。繊維は互いに結合されていても、結合されていなくてもよい。繊維は、単一の材料を含むことができるか、あるいは多種類の材料を(種々の繊維の組合せとして、またはそれぞれが種々の材料からなる類似の繊維の組合せとして)含むことができる。それぞれが複数の材料からなる類似の繊維は、「2成分(bicomponent)」(2種類の材料を含む)であっても、多成分(multicomponent)であってもよい。
【0008】
本明細書で使用される「不織繊維ウェブ」またはただの「不織ウェブ」は、一般的な意味で用いられ、比較的平たくて柔軟かつ多孔質でありかつステープルファイバーまたは連続フィラメントで構成される、全般的に平面の構造を表す。不織布の詳しい説明については、E.A.Vaughn著「Nonwoven Fabric Primer and Reference Sampler」(ASSOCIATION OF THE NONWOVEN FABRICS INDUSTRY,3d Edition(1992))を参照されたい。不織布は、カーディングされていても、スパンボンデッド(spun bonded)、湿式、エアレイド(air laid)およびメルトブローンであってもよい。そうした製品は業界においてよく知られているからである。
【0009】
本明細書で使用される「不織布」はさらに、個々の繊維または糸が間に挿入された構造(ただし、編地の場合のように識別可能な仕方で間に挿入されていない)を有するウェブを指す。不織の布帛またはウェブは、多くの方法、例えば、メルトブローイング(meltblowing)法、スパンボンディング法、および接着カードウェブ法(bonded carded web processes)などによって作られてきた。不織布帛の坪量は普通、1平方ヤード当たりの材料のオンス数(osy)または1平方メートル当たりのグラム数(gsm)で表わされ、実用的な繊維直径は普通、ミクロンで表わされる。(osyをgsmに変換するには、osyに33.91を乗ずることに留意されたい)。
【0010】
「メルトブローン繊維」とは、溶融した熱可塑性材料を、複数の細い(普通は円形の)ダイキャピラリー(die capillaries)の中に通して溶融した糸またはフィラメントとして押し出して、収束する高速加熱ガス(例えば、空気)流に入れる(これにより、溶融した熱可塑性材料のフィラメントは細くなってその直径が減少する)ことによって形成される繊維を意味する。その後、メルトブローン繊維を高速のガス流で運び、回収面に沈積させてランダムに分散したメルトブローン繊維のウェブを生じさせる。そのような方法は、例えば、Butinらに付与された米国特許第3,849,241号明細書に開示されている。メルトブローン繊維は、連続していても不連続であってもよいマイクロファイバーであり、一般に約0.6デニールより小さく、回収面に沈積させた時に一般には粘着性のあるものである。「メルトブローンウェブ」は、メルトブローン繊維を含む不織ウェブである。
【0011】
「スパンボンデッド繊維」とは、溶融した熱可塑性材料を、円形または他の形状を有する紡糸口金の複数の細いキャピラリーからフィラメントとして押し出し、次いで押し出されたフィラメントの直径を、例えば、Appelらに付与された米国特許第4,340,563号明細書、Dorschnerらに付与された米国特許第3,692,618号明細書、Matsukiらに付与された米国特許第3,802,817号明細書、Kinneyに付与された米国特許第3,338,992号明細書および米国特許第3,341,394号明細書、Hartmannに付与された米国特許第3,502,763号明細書、Petersenに付与された米国特許第3,502,538号明細書、およびDoboらに付与された米国特許第3,542,615号明細書(それぞれの全体を本明細書に引用により組み込む)のようにして急速に減少させることによって形成される繊維のことを指す。スパンボンド繊維は一般に連続しており、平均デニールが約0.3より大きく、特に約0.6から10の間であることが多い。「スパンボンドウェブ」は、スパンボンド繊維を含むウェブである。
【0012】
「SMN」という用語は、スパンボンドウェブとメルトブローンウェブとナノウェブとをこの順序で含む多層構造を指す。
【0013】
「MSN」という用語は、メルトブローンウェブとスパンボンドウェブとナノウェブとがこの順序になっているものを指す。
【0014】
「疎水性」という用語は、「撥水する」というその従来の意味で用いられる。「疎水性不織ウェブ」は、疎水性表面を有する繊維を含むウェブである。表面は繊維の材料のせいで疎水性であってもよい。たとえば繊維は全体がポリオレフィンで構成されていてよい(ポリオレフィンは本質的に疎水性であると見なされるであろう)。繊維は親水性材料(ポリアミドまたはポリエステルなど)から紡糸し、疎水性コーティングを有していてもよい。たとえば、繊維はポリアミドまたはポリエステルから紡糸し、界面活性剤(特にフルオロ界面活性剤)のコーティングをその上に有していてよい。したがって「撥水」可能な材料とは、水媒体によるぬれに抵抗性のある疎水性材料を意味し、フッ素原子と炭素原子を含む試剤が好ましい。たとえば、親水性材料は、少なくとも部分的にフッ素化材料でコーティングできる。あるいは、フッ素化材料は、フッ素化メタクリレートコポリマーで構成されるZonyl(登録商標)D布帛フッ素処理剤またはフッ素化アクリレートコポリマー構成されるZonyl(登録商標)8300布帛防護剤からなる群から選択される。そのようなフッ素化ポリマーおよびオリゴマーによる布帛の処理は、同業界では一般的なものであり、こうした薬品に限定されない。当業者であれば、好適な処理を選ぶことができるであろう。
【0015】
したがって本発明で用いる撥水性コーティングは、撥水しかつ親水性ウェブに施すことができる任意の試剤であってよく、フッ素および炭素原子を含む試剤が好ましい。本発明の好ましい撥水性コーティングは、フルオロポリマー、特にフルオロアクリレートポリマーの混合物、例えば、Ciba Spezialitatenchemie Pfersee GmbH(Langweid,Germany)のOLEOPHOBOL SM(登録商標)を含むものである。コーティングは様々な仕方で繊維に施すことができる。1つの方法として、コーティング材料の純樹脂を、液体(懸濁液中の粘着固体または粒子)かまたは流動床のいずれかとして、高モジュラスの延伸繊維に施すというものがある。あるいは、コーティングは、施すときの温度において繊維の性質に悪影響を及ぼさない好適な溶剤を用いた溶液またはエマルジョンとして施すことができる。コーティングポリマーを溶解または分散させることのできる任意の液体を使用してよいが、好ましい溶剤の群には、水、パラフィン油、芳香族溶剤または炭化水素溶剤が含まれ、例示的な特定の溶剤としてはパラフィン油、キシレン、トルエンおよびオクタンがある。コーティングポリマーを溶剤に溶解または分散させるのに用いられる技法は、様々な基材上に似たようなエラストマー材料をコーティングするのに従来から使用されているものであろう。
【0016】
撥水性試剤を親水性繊維に施す場合、原則として、選択した配合物中の撥水剤が繊維の表面に均一に分散されるようにする任意の方法が適している。例えば、撥水性試剤配合物は、ローラー上に薄膜として塗布し、親水性繊維をそのフィルムに通すことができる。あるいはまた、撥水性試剤配合物は親水性繊維に噴霧することができる。撥水性試剤配合物はまた、ポンプおよびピンアプリケーター(pin applicator)、スリットアプリケーター(slit applicator)またはブロックアプリケーター(block applicator)を用いて繊維に施すこともできる。
【0017】
コーティングを施すことは、撥水性試剤の水性エマルジョンを含んだ槽に浸したローラー上を、親水性ウェブが通過するようにさせて実施できる。
【0018】
コーティングしたウェブの乾燥は、適当な温度範囲内で実施する。温度および乾燥時間のパラメーター範囲は、選択した塗布方法の要件によっても決まる。撥水性試剤をウェブ紡糸工程(web spinning process)で、例えば、繊維を水洗液から取り出した後にウェブに施す場合、温度および乾燥時間の範囲は、紡糸速度および紡糸設備の構造的な特徴によって決まるであろう。
【0019】
繊維はさらに、外面が疎水性材料(ポリオレフィンなど)から紡糸される2成分構造であってよい。
【0020】
疎水性と見なされるであろうポリマーの例には、炭素および水素のみ、あるいは炭素、水素およびフッ素のみを含むポリマー(たとえば、ポリオレフィン、フルオロポリマーおよびポリフッ化ビニリデン)がある。疎水性ではないと見なされるであろうポリマーの例には、ポリアミドおよびポリエステルがある。
【0021】
本発明の実施形態に役立つメルトブローンまたはスパンボンドの不織繊維ウェブは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エラストマー、ポリエステル、レーヨン、セルロース、ポリアミドといった繊維、およびそうした繊維のブレンドを含むことができる。不織繊維ウェブに関しては、いくつもの定義が提案されている。繊維は普通、ステープルファイバーまたは連続フィラメントを含む。
【0022】
本明細書で使用される「ナノ繊維」という用語は、数平均直径が約1000nm未満、さらには約800nm未満、さらには約50nmから500nmの間、さらには約100から400nmの間である繊維のことである。断面が丸くないナノ繊維の場合、本明細書で使用される「直径」という用語は、最も大きい断面の寸法を指す。
【0023】
「スクリム」は支持層であり、濾過媒体を接着、付着、または積層することができる任意の構造であってよい。有利には、本発明に有用なスクリム層は、スパンボンド不織布層であるが、不織繊維のカーディングされたウェブ、メルトブローン不織布層、織られた布帛、網などから作ることができる。一部のフィルター用途に有用なスクリム層では、プリーツの形を保持するのに十分な剛性が必要である。本発明に用いるスクリムは、媒体の塵補足構造を妨げないよう十分な開口構造を有しているべきである。
【0024】
2つ以上のウェブが「向かい合わせの関係にある」とは、いずれか1つのウェブの表面が1つまたは複数の他のウェブの表面と基本的に平行に、かつそれらのウェブの表面が少なくとも部分的に重なるように配置されていることを意味する。ウェブは互いに結合されている必要はないが、表面または端部の少なくとも一部で互いに部分的または全体的に結合されていてもよい。
【0025】
2つ以上のウェブは、通常の最終使用時に互いに「流体接触」し、そのいずれかに接する流体はすべて第2ウェブに接すると期待される。2つ以上のウェブの表面積すべてが物理的に流体と接触する必要はないが、流体のすべてが両方のウェブを通過することが期待される。
【0026】
本明細書における「水ミスト」は、が空気流またはガス流中に分散した微細な水滴を含む気体−液体2相系を意味する。このミストは、ガスまたは空気および水を、水ノズル(water nozzles)を通して放出することで作り出すことができる。水ノズルにより微細滴が作られ、その滴は空気またはガス流によって運ばれるほど十分に小さく、空気流で運ばれる間に合体して連続相になることはない。滴は典型的には、直径が18〜50ミクロン程度である。
【0027】
本明細書で使用される「ナノ繊維ウェブ」および「ナノウェブ」という用語は同義であり、ナノウェブを含みかつすべてがナノ繊維から構成されうる不織ウェブを指す。
【0028】
説明
本発明は、空気が水で飽和してミストが形成される間に作業圧力の実質的な増大が回避される、流れる空気から粒状物を濾過除去するための方法に関する。
【0029】
この方法は、水ミストをかなり含みかつ濾過除去する粒子を含んでいる空気流を供給するステップと、その空気流を濾過媒体に通すステップとを含む。この状況の一例となるのは、雨の日または霧がかかった日であろう。媒体は、空気流に対して上流側と下流側とを有し、また疎水性不織ウェブの下流においてナノウェブ層を含みかつ疎水性不織ウェブと流体接触している。疎水性不織ウェブは、当業者に知られている任意の不織構造であってよく、特にメルトブローンウェブであってもスパンボンドウェブであってもよい。本発明の好ましい実施形態では、ナノウェブの主な目的は粒子の濾過除去である。この実施形態では、ナノウェブの機能は水ミストを合体させることではなく、ミストをかなり含む空気に媒体を30分間さらした後でも、ナノウェブは少なくとも部分的に乾燥したままである。
【0030】
この方法の更なる実施形態では、空気流中の水ミストにさらされた状態での媒体での圧力低下は、水ミストに3分間さらした後にせいぜい10倍しか増大しない。
【0031】
疎水性ウェブはナノウェブと実際に接触していてよいか、あるいは疎水性または親水性のいずれかである第2ウェブが、疎水性ウェブとナノウェブとの間に位置していてよい。疎水性ウェブまたは第2ウェブは、ナノウェブと接触している場合、その表面の少なくとも一部でナノウェブと結合していてよい。疎水性ウェブまたは第2ウェブはさらに、ナノウェブと点結合していてもよい。これは、ナノウェブと疎水性ウェブまたは第2ウェブとの間の結合がウェブの面上の不連続の点で行われていてもよいという意味である。
【0032】
濾過媒体の濾過特性を測定する実験条件は、実施例からもっともよく理解される。しかし、特に明記されていない限り、本明細書では、濾過データは、直径11.3cmの円形開口部を有するフラットシート媒体を、質量平均直径が0.26ミクロンである塩化ナトリウムエアロゾルの0.5時間の連続集積、6.67cm/sの面速度に対応する40リットル/分の空気流量、および16mg/m3のエアロゾル濃度にさらす試験から得られる。濾過効率および初期圧力低下を試験の初めに測定し、最終圧力低下を試験の最後に測定した。圧力低下の増加量は、最終圧力低下から初期圧力低下を引いて計算する。
【0033】
したがって、本発明の方法に用いる濾過媒体は、少なくとも2つの不織層を含み、その1つはナノ繊維ウェブであり、第2のものはナノ繊維ウェブと流体接触する上流の疎水性不織層である。本発明の1つの実施形態では、疎水性ウェブ層の平均流入孔径とナノ繊維ウェブの平均流入孔径との比率は、約1から約10の間、好ましくは約1〜約8の間、より好ましくは約1から約6の間である。
【0034】
疎水性ウェブ(メルトブローン、スパンボンド、または他の任意のウェブのいずれかにかかわりなく)と本発明のナノウェブは互いに流体接触し、また互いに物理的に接触していてもよい。それらは、ある種の結合手段によって互いに結合されていてもよい。本発明との関連での「結合手段」は、2つのウェブが積層して複合構造になる方法を指す。本発明との関連で好適な方法は、例として超音波接着、点結合、減圧積層法、および接着積層があるが、それらに限定されない。当業者は、様々なタイプの結合についてよく知っており、任意の好適な結合手段を本発明の使用に合わせることができる。
【0035】
超音波接着は、典型的には、例えば、米国特許第4,374,888号明細書および米国特許第5,591,278号明細書(これらの全体を本明細書に援用する)に例示されているものなど、音波ホーン(sonic horn)とアンビルロール(anvil roll)との間に材料を通過させることで実施される工程を伴う。超音波接着の例示的方法では、貼り合わせる様々な層は、超音波装置の結合ニップに同時に供給する。様々なこうした装置は市販されている。一般に、こうした装置は、層内の結合部位で熱可塑性成分を溶融してそれらを結合する、高周波振動エネルギーを生み出す。したがって、引き起こされるエネルギーの量、一緒にされた成分がニップを通過するときの速度、ニップの隙間、ならびに結合部位の数によって、様々な層の間の接着の程度が決まる。非常な高周波が得られ、18,000Hzを超える周波数は普通、超音波と呼ばれる。様々な層の間の所望の接着および材料の選択に応じて、わずか5,000Hzという周波数またはさらに低い周波数でもまずまずの製品が製造されうる。
【0036】
点結合は、典型的には複数の不連続の点で1種または複数種の材料を結合することを指す。例えば、熱点結合(thermal point bonding)は一般に、結合させる1つまたは複数の層を熱ロール間(例えば、彫刻プリントロールおよび平滑カレンダーロール(smooth calender roll))に通すことを伴う。彫刻ロールは、布帛全体がその全表面では結合しないように何らかの仕方でパターン化されており、カレンダーロールは、普通は平滑である。結果的に、彫刻ロール用の様々なパターンが、機能的理由のため、また美的理由のために作り出されてきた。
【0037】
接着積層は普通、ウェブに塗布して2つのウェブ間を結合する1種または複数種の接着剤を用いる任意の方法を指す。接着剤は、ロールによる塗布、噴霧、または布による塗布などの手段でウェブに塗布できる。好適な接着剤の例は、米国特許第6,491,776号明細書に示されており、その開示全体を本明細書に引用により組み込む。
【0038】
更なる実施態様では、疎水性層の平均流動孔径とナノウェブ層との比は、好ましくは、ナノウェブの孔径で制御することができる媒体の、所期の粒経における、所望の総効率と関連している。例えば、媒体の更なる実施態様では、疎水性層の平均流動孔径とナノ繊維ウェブの平均流動孔径との比は、総媒体の効率が約60%より大きいとき、約1から約3の間にある。媒体の効率が約70%より大きいとき、疎水性ウェブ層の平均流動孔径とナノ繊維ウェブの平均流動孔径との比は、約2から約4の間にある。媒体の効率が約80%より大きいとき、疎水性ウェブ層の平均流動孔径とナノ繊維ウェブの平均流動孔径との比は、約4から約6の間にある。
【0039】
本発明の方法に用いられる媒体は、疎水性ウェブ層の孔径によって定義することもできる。例えば、一実施形態においては、濾過媒体は、数平均繊維直径が1ミクロン未満であるナノ繊維ウェブと、ナノ繊維ウェブと向かい合わせの関係にある上流メルトブローンウェブ層であって、メルトブローンウェブ層の平均流動孔径が約12から約40ミクロンの間、好ましくは約15から約25ミクロンの間、より好ましくは約18から約22ミクロンの間にある、上流マイクロファイバーウェブ層とを含むことができる。
【0040】
本発明の方法で使用される媒体は、数平均繊維直径が1ミクロン未満であるナノ繊維ウェブと、ナノ繊維ウェブと向かい合わせの関係にある上流メルトブローンウェブ層であって、メルトブローンウェブ層の平均流動孔径と所期の粒径との比が、その所期の粒径の粒子が衝突する場合に媒体の効率が50%から99.97%の間にあるとき約50から約154の間にある、メルトブローンウェブ層とを含むこともできる。更なる実施態様では、メルトブローンウェブ層の平均流動孔径と所期の粒径との比は、その所期の粒径の粒子が衝突する場合に媒体の効率が50%から99.97%の間にあるとき、約57から約96の間にある。
【0041】
さらに別の実施態様では、メルトブローンウェブ層の平均流動孔径と粒径との比は、その所期の粒径の粒子が衝突する場合に媒体の効率が50%から99.97%の間にあるとき、約69から約85の間にある。
【0042】
上述のいずれの実施態様でも、または本明細書に添付の請求項においても、本発明の方法で使用される媒体は、空気流中の粒子にさらされた時の効率の変化が小さいことも示しうる。例えば、濾過媒体は、直径11.3cmの円形開口部を有するフラットシート媒体を、質量平均直径が0.26ミクロンの塩化ナトリウムエアロゾル、6.67cm/sの面速度に相当する40リットル/分の空気流量、および16mg/m3のエアロゾル濃度にさらす試験において、0.26ミクロンの径の粒子を濾過除去する場合に効率低下が0.5時間にわたって5%未満でありうる。
【0043】
本発明の方法で使用される媒体は、どの実施態様においても、空気流中の粒子にさらされた時の圧力低下が小さいということも示しうる。例えば、濾過媒体は、直径11.3cmの円形開口部を有するフラットシート媒体を、質量平均直径が0.26ミクロンの塩化ナトリウムエアロゾル、6.67cm/sの面速度に相当する40リットル/分の空気流量、および16mg/m3のエアロゾル濃度にさらす試験において、0.26ミクロンの径の粒子を0.5時間にわたって濾過除去する場合に圧力低下の増大が200Pa未満でありうる。
【0044】
本発明の1つの実施態様では、疎水性層の坪量は、約10gsmより大きくてよく、好ましくは15gsmより大きくてよく、より好ましくは20gsmまたは30gsmより大きくてよい。
【0045】
疎水層の効率は、約50%より大きくてよく、好ましくは約55%より大きくてよく、より好ましくは約60%より大きくてよい。疎水層は、メルトブローンポリマーウェブを含むことができる。
【0046】
ナノ繊維ウェブは、電気ブロー加工、電気紡糸、遠心紡糸およびメルトブローイングからなる群から選択される方法で作られた不織ウェブを含むことができる。ナノウェブの坪量は、約2グラム/平方メートル(gsm)より大きくてよく、好ましくは約3gsmより大きく、より好ましくは約5gsmより大きくてもよい。媒体はさらに、ナノ繊維ウェブまたは上流層のいずれかと接触したスクリム支持層を含むことができる。
【0047】
本発明の方法で使用される媒体は、媒体に塵が集積し媒体が湿度の形態の湿気にさらされた時に起こりうる、通気度の減少に対する抵抗性も有しうる。例えば、150から300Paの間の最終抵抗になるまで質量平均直径が0.26ミクロンの塩化ナトリウムエアロゾルが集積した場合、本媒体は、25℃で相対湿度が98%の空気に8時間さらされた場合の通気度低下(permeability loss)が約25%未満でありうる。
【0048】
本発明はさらに、空気を含めガスを濾過する方法であって、上に開示されている説明のいずれかに当てはまる媒体に空気を通すステップを含む、ガスを濾過する方法に関する。
【0049】
紡糸されたままの状態のナノウェブは、伝統的な電気紡糸(electrospinning)または電気ブロー加工(electroblowing)などの電気紡糸法で、またある特定の状況ではメルトブローイング法または他のこのような好適な方法で製造されるのが有利であるナノ繊維を主に含むか、またはそのナノ繊維のみを含みうる。伝統的な電気紡糸は、高電圧を溶液中のポリマーに加えてナノ繊維と不織マットを作り出す、米国特許第4,127,706号明細書(その全体を本明細書に援用する)に示されている技術である。しかし、電気紡糸法における全押出量は、もっと重い坪量のウェブを形成する際に商業的に実現可能であるためには、あまりに少なすぎる。
【0050】
「電気ブロー加工」法は、国際公開第03/080905号パンフレット(その全体を本明細書に援用する)に開示されている。ポリマーと溶剤とを含むポリマー溶液の流れを、貯蔵タンクから紡糸口金内の一連の紡糸ノズルに供給し、そこに高電圧を加え、そこを通じてポリマー溶液が放出される。その間に、加熱されていてもよい圧縮空気が、紡糸ノズルの各側または周囲に配置された空気ノズルから出される。空気は、新たに出されるポリマー溶液を包み込んで送り出しかつ繊維性ウェブの形成を助長する吹き出しガス流として、一般には下方に向けられる。繊維性ウェブは、真空室の上にある接地された多孔質回収ベルト(porous collection belt)上に回収される。電気ブロー加工法では、比較的短時間の間に、約1gsmを超える、さらには約40gsm以上もの坪量の、商業用サイズおよび量のナノウェブを形成できる。
【0051】
本発明のナノウェブは、遠心紡糸法でも製造できる。遠心紡糸は、繊維形成方法であって、少なくとも1種の溶剤中に溶かされた少なくとも一種のポリマーを有する紡糸溶液を、回転円錐形ノズルを有する回転式噴霧器へ供給するステップであって、ノズルが凹形の内部表面と前方表面放出エッジとを有する供給ステップと;ノズルの放出エッジの前方表面に向かって前記紡糸溶液を送るために、凹形の内部表面に沿って回転式噴霧器から紡糸溶液を噴出させるステップと;溶剤を蒸発させながら紡糸溶液から別々の繊維の流れを生じさせて、電場の存在下または不存在下で高分子繊維を製造するステップとを含む、繊維形成方法である。形成流体(shaping fluid)はノズルの周囲を流れて、紡糸溶液を回転式噴霧器から遠のかせることができる。繊維を収集器上に回収して繊維ウェブを形成できる。
【0052】
本発明の方法で使用される媒体のナノウェブはさらに、メルトブローイングなどの溶融法によって製造することができる。例えば、ナノ繊維は、ポリマーメルトから作られる繊維を含むことができる。ポリマーメルトからナノ繊維を製造する方法は、例えば、University of Akronの米国特許第6,520,425号明細書、米国特許第6,695,992号明細書、および米国特許第6,382,526号明細書;Torobinらの米国特許第6,183,670号明細書、米国特許第6,315,806号明細書、および米国特許第4,536,361号明細書、ならびに米国特許出願公開第2006/0084340号明細書に記載されている。
【0053】
支持体またはスクリムは、コレクター上に配置して、支持体上に紡糸されるナノ繊維ウェブを回収しかつ一緒にすることができ、一緒にされた繊維ウェブは高性能のフィルター、ふき取り布(wiper)などに使用される。支持体の例としては、さまざまな不織布(メルトブローン不織布、ニードルパンチまたは紡糸編上げ(spunlaced)不織布など)、織布、メリヤス生地、紙などを挙げることができ、またそれらはナノ繊維層を支持体上に設けることができる限り、限定されずに使用できる。不織布は、スパンボンド繊維、乾式(dry−laid)または湿式繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維、またはそれらのブレンドを含むことができる。
【0054】
本発明のナノウェブを形成するのに使用できるポリマー材料は、特に限定されず、付加重合体材料および縮合重合体材料の両方が含まれ、それには、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロースエーテル、セルロースエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマー、およびそれらの混合物がある。こうした一般的種類に含まれる好ましい材料として、ポリ(塩化ビニル)、ポリメタクリル酸メチル(および他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABA型ブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリビニルアルコール(さまざまな加水分解度(87%〜99.5%)のもの)で架橋形態および非架橋形態のものがある。好ましい付加重合体はガラス質(室温より高いTg)である傾向がある。ポリ塩化ビニルおよびポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンポリマーの組成物または合金の場合にそうであり、あるいはポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料の場合には結晶性が低い。ポリアミド縮合重合体の1つの好ましい種類は、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10などのナイロン材料である。本発明のポリマーナノウェブをメルトブローイングで形成する場合、メルトブローしてナノ繊維にすることが可能な任意の熱可塑性ポリマーを使用でき、それには、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンなど)、ポリエステル(ポリ(エチレンテレフタレート)など)およびポリアミド(上に挙げたナイロンポリマーなど)が含まれる。
【0055】
繊維ポリマーのTgを下げるために、上述のさまざまなポリマーに当該技術分野において周知の可塑剤を添加するのが有利でありうる。好適な可塑剤は、電気紡糸または電気ブローされるポリマー、ならびにナノウェブを採用する特定の最終用途によって異なるであろう。例えば、ナイロンポリマーは、水で可塑化するか、または電気紡糸または電気ブロー加工の工程で残る残留溶剤で可塑化することさえもできる。ポリマーのTgを下げるのに有用でありうる当該技術分野において周知の他の可塑剤として、脂肪族グリコール類、芳香族のスルファノミド(sulphanomides)、フタル酸エステル(限定されないが、フタル酸ジブチル、ジヘキシル(dihexl)フタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジドデカニルフタレート(didodecanyl phthalate)、およびジフェニルフタレートからなる群から選択されるものを含む)などが含まれるが、これらに限定されない。Handbook of Plasticizers,edited by George Wypych,2004 Chemtec Publishing(本明細書に援用する)は、本発明に使用できる他のポリマー/可塑剤の組合せを開示している。
【0056】
試験方法
フラットシートの微粒子集積試験
ASHRAEの塵およびISOの細塵は、典型的には、フィルターならびに濾過媒体用の塵補足容量試験で試験用エアロゾルとして使用される。しかし、これら2種類の塵の径(質量平均粒径が15ミクロンより大きい)は、実地の用途で、特に予備フィルターを用いて大きな粒子を除去する場合に、高効率のエアフィルターで課題とされている塵の径を反映していない。予備フィルターを備えた空気処理システムでの実地の測定によれば、3ミクロンより大きい粒子はまれであり、粒子は0.3から10ミクロンの間の径範囲にあり、約60質量%の粒子が0.3から0.5ミクロンの径範囲に入る。それゆえに、ASHRAEおよびISOの微細な試験用エアロゾルを用いた既存の塵補足試験では、実生活の状況での濾過媒体の塵補足容量が正確に予測されない。この問題を克服するため、質量平均直径が0.26ミクロンである試験用エアロゾルを用いる微粒子塵の集積試験が開発された。
【0057】
微粒子塵の集積試験は、本明細書においては、直径11.3cmの円形開口部(面積=100cm2)を有する自動フィルター試験機(TSI Model No.8130)を用いて、フラットシート媒体で実施した。2重量%塩化ナトリウム水溶液を用いて、質量平均直径が0.26ミクロンの微細なエアロゾルを生じさせ、これを集積試験で使用した。空気流量は、6.67cm/sの面速度に相当する40リットル/分であった。機器製造業者によれば、エアロゾル濃度は約16mg/m3であった。濾過効率および初期圧力低下を試験の初めに測定し、最終圧力低下を試験の最後に測定する。圧力低下の増大は、最終圧力低下から初期圧力低下を引いて計算する。
【0058】
繊維の径の測定
それぞれのナノ繊維層試料について、10枚の走査型電子顕微鏡(SEM)画像(倍率:5,000倍)を撮影した。11本の明確に区別できるナノ繊維の直径を写真から測定し、記録した。欠陥(すなわち、ナノ繊維の塊、ポリマー滴、ナノ繊維の交差部分)は含めなかった。各試料の平均繊維直径を計算した。
【0059】
メルトブローン層の試料について、5枚のSEM画像を撮影した。少なくとも10本のメルトブローンファイバーの直径を各写真から測定し、記録した。各試料の平均繊維直径を計算した。
【0060】
空気通気度(Air Permeability)
濾過媒体の空気流通気度(air flow permeability)は一般に、Frazier測定(ASTM D737)で測定する。この測定では、124.5N/m2(0.5インチ(水柱))の圧力差を、適切に固定された媒体試料にかけて、結果として生じる空気流量をFrazier通気度(またはもっと簡単に「Frazier」)として測定する。本明細書では、Frazier通気度は、ft3/分/ft2の単位で記録してある。大きいFrazierは空気流通気度が大きいことに対応し、小さいFrazierは空気流通気度が小さいことに対応する。
【0061】
湿度試験
湿度試験の目的は、塵またはエアロゾルが集積した濾過媒体に対する相対湿度の影響を調査することである。フラットシート媒体の試料にNaClの微細なエアロゾルを(上述のように)集積して、最終抵抗が150から300Paの間になるようにした。25℃において種々の相対湿度で少なくとも8時間、それらの試料の状態を整えた。状態調節室(conditioning chamber)から試料を取り出した直後に、試料の空気通気度を測定し、記録した。
【0062】
濾過効率の測定
濾過効率の測定は、直径11.3cmの円形開口部(面積=100cm2)を有する自動フィルター試験機(TSI Model No.3160)を用いて、フラットシート媒体で実施した。2重量%塩化ナトリウム水溶液を用いて、質量平均直径が0.26ミクロンである微細なエアロゾルを生じさせた。空気流量は、5.53cm/sの面速度に相当する32リットル/分であった。濾過効率および初期圧力低下は試験の初めに測定して記録した。
【0063】
平均流動孔の測定
平均流動孔(MFP)径を、ASTM Designation E 1294−89、「Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter」に従って測定した。この場合、毛管流多孔率計(型番号CFP−34RTF8A−3−6−L4,Porous Materials,Inc.(PMI),Ithaca,NY)を用いて、ASTM Designation F 316の自動バブルポイント法により、0.05μm〜300μmの孔径直径の膜の孔径特性が大まかに測定される。個別の試料(直径が8、20または30mm)を、表面張力の低い液体(表面張力が16dyne/cmである1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロペン(つまり、「Galwick」))で濡らした。各試料を保持器に入れ、空気の圧力差をかけて、液体を試料から除去した。湿った流れが乾燥した流れ(ぬれ溶剤を含まない流れ)の半分と等しくなる圧力差を用いて、用意されたソフトウェアを使用して平均流動孔径を計算する。バブルポイントが最大孔径を指す。
【0064】
湿気の試験手順
湿気試験器(moistures tester)は、雨滴または水ミストをシミュレートする水の、濾過媒体に対する影響を試験するのに用いられる、空気チャンバーを含む装置である。媒体試料を、空気チャンバーの正面の外側平面に固定する。その後、空気流を空気チャンバー内で水ノズルの周囲に発生させて媒体に向ける。空気チャンバーの内側と外側の圧力差を圧力計で測定する。その値を記録し、水ノズルを開く。水を6分間出しっぱなしにし、媒体が乾燥するまで適当な間隔で圧力差を測る。
【0065】
試験を行うために、18cm×18cmの媒体試料を用意する。試料は、クランプを用いて、ノズルの水流に対して垂直に、空気チャンバーの外側に固定し密閉する。空気流量は、6.67cm/秒の面速度(ASHRAE 52.2試験手順で指定されているのと同じ面速度)に相当する63リットル/分であった。また初期圧力測定を行う。
【0066】
水を6分間出し、3個の散水ノズルで細かい水ミストを生じさせる。媒体を水ミストにさらす。水の流量を70ml/分に設定した。媒体が完全に乾燥するか、または圧力が一定になるまで、30秒ごとに圧力の測定値を記録する。
【0067】
ウェブの作製
実施例では、ポリアミド−6,6が24%のギ酸溶液を、国際公開第03/080905号パンフレットに記載されているように電気ブロー加工(electroblowing)で紡糸してナノウェブを形成させる。数平均繊維直径はおよそ350nmであった。
【0068】
実施例1および2ではそれぞれ、ポリプロピレン製のスパンボンド不織ウェブ(68グラム/平方メートル(gsm)の坪量。DuPont製のXavan(登録商標))およびポリエチレンテレフタレート(PET)製のスパンボンド不織ウェブ(70gsmの坪量、KoreaのKolon Co.製のF5070スタイル)を得た。メルトブローンウェブは、(Middletown,Delawareにある)DelStar Co.製の23gsmの繊細な繊維ウェブであった。スパンボンドとメルトブローンとナノ繊維(すなわち、SMN)のラミネートは、30gsmのスパンボンドのポリエチレンテレフタレート(PET)スクリム(KoreaのKolon Co.製のC3030スタイル)に貼り合わせて構成した。
【0069】
実施例3は、実施例2のM(Middletown,DelawareにあるDelStar Co.製の20gsmのメルトブローンウェブ)およびS(70gsmのスパンボンドPETウェブ。KoreaのKolon Co.製のF5070スタイル)が逆になっている、MSN構造であった。表3は、実施例2および3の圧力上昇を比較したものを示す。
【0070】
結果
表1は、実施例1〜3に関してTSI 3160で行った圧力低下および濾過効率の測定値を示す。表2および3は、湿気試験での圧力上昇の挙動を示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
上記の実施例では、番号1および3は、空気流に面する疎水性ウェブ(ある場合はスパンボンド、ある場合はメルトブローンウェブ)を有していた。このデータは、湿気による圧力上昇を防ぐ点での本発明の有効性を示している。実施例2のメルトブローンウェブは疎水性であり、ナノウェブ層の上流にあるが、親水性スパンボンド不織布が空気流に面しているため、圧力増大は著しく大きい。スパンボンド不織布は実施例3では親水性であり、ナノウェブ層のすぐ上流にあり、疎水性メルトブローン不織布が空気流に面しているため増大圧力は著しく低下している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ミストをかなり含みかつ濾過除去する粒子を含んでいる空気流を供給するステップと、
前記空気流を濾過媒体に通すステップと
を含む、空気から粒子を濾過除去する方法であって、
前記媒体が、前記空気流に対して上流側と下流側とを有し、また疎水性不織ウェブの下流において前記疎水性不織ウェブと流体接触するナノウェブ層を含む、方法。
【請求項2】
空気流中の水ミストにさらされた状態での前記媒体での圧力低下が、前記水ミストに3分間さらした後にせいぜい10倍しか増大しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2ウェブが前記ナノウェブと前記疎水性ウェブとの間に配置され、かつその両方と流体接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水性ウェブが前記ナノウェブと実際に接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疎水性ウェブがその表面の少なくとも一部で前記ナノウェブと結合している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記疎水性ウェブが前記ナノウェブと点結合している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記疎水性ウェブが、前記ナノウェブの上流においてスパンボンド不織ウェブを含みかつ前記ナノウェブと流体接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スパンボンド不織ウェブが前記ナノウェブと実際に接触する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スパンボンド不織ウェブが前記ナノウェブと結合している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スパンボンド不織ウェブが前記ナノウェブと点結合している、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記スパンボンドウェブが、1成分がポリオレフィンを含む、単一成分繊維または2成分複合繊維を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記不織ウェブが、前記ナノウェブの上流において前記ナノウェブと流体接触するメルトブローン不織ウェブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記メルトブローン不織ウェブが前記ナノウェブと実際に接触する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記メルトブローン不織ウェブが前記ナノウェブと結合している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記メルトブローン不織ウェブが前記ナノウェブと点結合している、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−505122(P2013−505122A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529805(P2012−529805)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048362
【国際公開番号】WO2011/034782
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】