説明

増加したアミノ糖含量を有する植物

本発明は、増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する植物、細胞および植物に関する。さらにまた、本発明は、グルコサミノグリカンを合成する植物細胞および植物に関する。本発明はまた、該植物を生産するための方法および該植物細胞を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する植物細胞および植物に関する。さらにまた、本発明は、グルコサミノグリカンを合成する植物細胞および植物に関する。本発明はまた、該植物を生産するための方法および該植物細胞を含む組成物を提供する。
【0002】
アミノ糖グルコサミン、グルコサミン誘導体およびグルコサミン誘導体を含むポリマーは、とりわけ、動物およびヒトの関節障害を予防するための食品サプリメントとして使用される。医学分野でも、やはり、何らかのグルコサミン誘導体含有ポリマーが障害の処置に使用される。
【0003】
WO 06 032538では、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子で形質転換されているトランスジェニック植物が記載されている。目的の植物におけるヒアルロナンの合成が明らかに実証された。
【0004】
WO 98 35047(US 6,444,878)では、植物細胞中でGlcNAcを合成するための代謝経路が記載されている。該経路では、複数の連続する、酵素によって触媒される反応工程によってグルコサミンが変換され、代謝産物GlcNAc、N−アセチルグルコサミン6−リン酸、N−アセチルグルコサミン1−リン酸でUDP−GlcNAcが形成される。植物に関する代替の経路として報告された代謝経路は、フルクトース6−リン酸およびグルタミンからグルコサミン6−リン酸への変換を含み、そして、該グルコサミン6−リン酸は、複数の連続する、酵素によって触媒される反応工程によって変換され、代謝産物グルコサミン1−リン酸およびN−アセチルグルコサミン1−リン酸でUDP−GlcNAcが形成される。フルクトース6−リン酸およびグルタミンからグルコサミン6−リン酸への変換は、グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)の活性を有するタンパク質によって触媒される(Mayerら、1968, Plant Physiol. 43, 1097-1107)。比較的高濃度のグルコサミン6−リン酸は植物細胞にとって有毒である(WO 98 35047)。
【0005】
WO 00 11192では、植物中で2−アミドアンヒドログルコース分子を有するカチオン性デンプンを合成するために、トランスジェニックトウモロコシ植物中で植物GFATの酵素活性を有するタンパク質をコードするトウモロコシ由来の核酸分子を胚乳特異的に過剰発現させることが記載されている。WO 00 11192の説明では、デンプンへの2−アミノアンヒドログルコースの取り込みを導くはずの上記代謝経路は、とりわけ、デンプンおよび/またはグリコーゲンシンターゼによるUDP−グルコサミンのデンプンへの取り込みを含む。色素体シグナルペプチドと翻訳融合されている植物GFATの酵素活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を過剰発現する目的のトランスジェニックトウモロコシ植物の胚乳の穀粉中でUDP−グルコサミンの量が増加していることを実証することが可能であった。GFATの酵素活性を有するタンパク質がシグナルペプチドを伴わずに発現された場合、トウモロコシ胚乳組織由来の対応する穀粉中でグルコサミン1−リン酸の量が増加することを実証することが可能であった。トランスジェニック植物中でカチオン性デンプンまたは増加量のN−アセチル化グルコサミン誘導体、例えば、UDP−GlcNAcまたはN−アセチルグルコサミン6−リン酸を検出することは可能でなかった。
【0006】
アミノ糖ベータ−D−グルコサミン(グルコサミン)および/またはグルコサミン誘導体は種々のポリマー(グルコサミノグリカン)の成分であり、該ポリマーは、とりわけ、節足動物の外骨格、哺乳類の細胞外基質またはいくつかの細菌微生物のエキソポリサッカライドの必須の成分である。ゆえに、例えば、N−アセチル−D−グルコサ−2−アミン(N−アセチルグルコサミン、GlcNAc)は、窒素原子の位置でアセチル化されたグルコサミン誘導体である。GlcNAcは、例えば、ヒアルロナン(ベータ−1,4−[グルクロン酸ベータ−1,3−GlcNAc])の分子的構築用ブロックであり、該ヒアルロナンは滑液の必須の成分である。
【0007】
医学分野では、ヒアルロナン含有製品は、現在、関節症の関節内処置に使用され、眼科剤として眼の外科手術に使用される。誘導体化された架橋ヒアルロナンは関節障害の処置に使用される(Fong Chongら、2005, Appl Microbiol Biotechnol 66, 341-351)。さらに、ヒアルロナンは、いくつかの鼻科剤の成分であり、例えば点眼およびナザリア(nasalia)の形式で、乾いた粘膜を湿らせるために役立つ。ヒアルロナン含有注射用溶液は鎮痛剤および抗リウマチ剤として使用される。ヒアルロナンまたはヒアルロナン誘導体を含むパッチは創傷治癒に使用される。皮膚科剤としては、ヒアルロナン含有ゲルインプラントが、形成外科における皮膚変形の矯正に使用される。美容外科手術では、ヒアルロナン調製物は好適な皮膚充填材料に含まれる。ヒアルロナンを注射することによって、限られた期間、しわを滑らかにするか、あるいは口唇のボリュームを増加させることが可能である。
【0008】
化粧用製品、特にスキンクリームおよびローションでは、ヒアルロナン(hyalauronan)は、水と結合する、その高い能力に基づいて保湿剤として頻繁に使用されることが多い。さらにまた、ヒアルロナン含有調製物は、いわゆる栄養補給食品(食品サプリメント)として販売されており、動物(例えばイヌ、ウマ)の関節症を予防および軽減するために使用することもできる。
【0009】
ヒアルロナン合成の触媒作用は単一の膜内(membrane-integrated)または膜結合(membrane-associated)酵素、すなわちヒアルロナンシンターゼによって実行される(DeAngelis, 1999, CMLS, Cellular and Molecular Life Sciences 56, 670-682)。ヒアルロナンシンターゼは、基質UDP−グルクロン酸(UDP−GlcA)およびUDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc)からのヒアルロナンの合成を触媒する。
【0010】
市販目的で使用されるヒアルロナンは、現在、動物組織(オンドリのトサカ(roostercombs))から単離されるか、あるいは細菌培養を使用して発酵によって調製される。
【0011】
糖タンパク質の1クラスであるプロテオグリカンは、とりわけ、軟骨の必須の成分であり、コアタンパク質に結合している、反復する二糖単位から構成されるグルコサミノグリカンを有する。反復する二糖単位は、それらとしては、特徴的な炭水化物結合性配列を介して共有結合によってコアタンパク質に結合している。二糖単位の組成に応じて、とりわけ、グルコサミノグリカンヘパラン/ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸およびコンドロイチン/デルマタン硫酸の区別が施され、それらの二糖単位は、それぞれ、グルコサミンまたはグルコサミン誘導体である分子を含有する。これらの物質では、二糖単位の種々の原子または置換基で硫酸基が導入されて、それぞれの上記物質は均一のポリマーではないが、それぞれの一般用語の下に括られるポリマー群になる。ここに、目的のポリマー群の個々の分子は、硫酸化の程度および硫酸基を含有するモノマーの位置の両方が異なってよい。
【0012】
コンドロイチン/デルマタン([ベータ−1,4]−[グルクロン酸ベータ−1,4−N−アセチルガラクトサミン])の二糖鎖の合成は、UDP−GlcAおよびUDP−N−アセチルガラクトサミン、UDP−GlcNAcのエピマーから出発し、コンドロイチンシンターゼによって触媒される(Kitagawaら、2001 , J Biol Chem 276(42), 38721-38726)。コンドロイチンのグルクロン酸分子はエピメラーゼによってイズロン酸に変換されうる。10%を超えるグルクロン酸分子がイズロン酸として存在すれば、ポリマーはデルマタンと称される。そして、コンドロイチンまたはデルマタンの二糖鎖の種々の位置での硫酸基の導入は別の酵素によって触媒され、コンドロイチン/デルマタン硫酸が生じる。ここに、硫酸化の程度は分子ごとに異なってよい。かねて、コンドロイチン硫酸は骨関節炎を処置するための潜在的な活性化合物と考えられている(Cleggら、2006, The New England Journal of Medicine 354(8), 795-808)。
【0013】
ヘパリン/ヘパラン(ヘパロサン(heparosan))([アルファ−1,4]−[グルクロン酸ベータ−1,4−グルコサミン]または[アルファ−1,4]−[イズロン酸アルファ−1,4−グルコサミン])の二糖鎖の合成は、UDP−GlcAおよびUDP−GlcNAcからヘパリン/ヘパロサンシンターゼによって触媒される(DeAngelis und White, 2004, J. Bacteriology 186(24), 8529-8532)。ヘパリン/ヘパロサンのグルクロン酸分子はエピメラーゼによってイズロン酸に変換されうる。そして、ヘパロサンの二糖鎖の種々の位置での硫酸基の導入は別の酵素によって触媒され、ヘパリン硫酸またはヘパラン硫酸が生じる。ヘパリン硫酸は、ヘパラン硫酸よりかなり高度な硫酸基による置換を有する。ヘパリン硫酸は約90%のイズロン酸分子を有するのに対して、ヘパラン硫酸の場合、グルクロン酸分子の割合が優勢である(Gallagherら、1992, Int. J. Biochem 24, 553-560)。コンドロイチン/デルマタン硫酸の場合のように、ヘパリン/ヘパラン硫酸の場合も、硫酸化の程度は分子ごとに異なってよい。
【0014】
ヘパリン硫酸は、とりわけ抗凝血剤として、例えば血栓症(thromboses)の予防および処置に使用される。
【0015】
コンドロイチン/デルマタン硫酸およびヘパリン/ヘパラン硫酸は、現在、動物組織からの単離によって製造される。コンドロイチン硫酸は、主に、ウシまたはサメ軟骨から単離され、ヘパリン/ヘパラン硫酸はブタ腸またはウシ肺から単離される。コンドロイチン/デルマタン硫酸またはヘパリン/ヘパラン硫酸の二糖鎖は均一の硫酸化パターンを有さないので、均一な特定の製品を得ることは困難である。したがって、該製品は、常に、種々の硫酸化の程度を有する分子の混合物である。
【0016】
グルコサミノグリカンキチン([ベータ−1,4−GlcNAc])は、真菌の細胞壁および昆虫、ヤスデ、クモ形動物および甲殻類の外骨格の主成分の1つであり、水に不溶性のポリマーである。酵素キチンシンターゼはUDP−GlcNAcを連結することによってキチンの合成を触媒する(MerzendorferおよびZimoch, 2003, J. Experimental Biology 206, 4393-4412)。
【0017】
キチンを単離するための原材料供給源として、今日まで、主に、甲殻類(エビ、カニ)および真菌、例えば、アスペルギルス種(Aspergillus spec.)、ペニシリウム種(Penicillium spec.)、ケカビ種(Mucor spec.)から使用が構成される。WO 03 031435では、例えば、酵母の発酵によってGlcNAcを製造するための方法が記載されている。目的の原材料供給源からキチンが単離される方法に応じて、キチンは、GlcNAcに加えて、さらにその脱アセチル化型グルコサミンを構築用ブロックとして含有する。50%を超える構築用ブロックがGlcNAcであれば、ポリマーはキチンと称されるのに対して、50%を超えるグルコサミンを含むポリマーはキトサンと称される。
【0018】
最近、グルコサミンまたはその誘導体、例えばGlcNAcは、キチンの分解によって製造される。キチンを、まず脱アセチル化して、キトサンを形成させてよく、あるいは直接分解して、GlcNAcを形成させてよい。
【0019】
キチンは、キチンデアセチラーゼの支援を受けて酵素によって脱アセチル化するか(Kafetzopoulosら、1993, Pro. Natl. Acad. Sci. 90, 2564-2568)、あるいは化学的脱アセチル化によって脱アセチル化することができる。
【0020】
キチンの分解またはキトサンの分解は、酵素的(例えばキチナーゼ、グルカナーゼ、ベータ−N−アセチルグルコサミニダーゼを使用して)、および化学的加水分解のいずれによっても生じうる。
【0021】
キトサンの分解またはGlcNAcの脱アセチル化によってグルコサミンの形成が生じる。
【0022】
キチンの分解によってアミノ糖を製造するためのすべての方法の実質的不都合は、不完全な加水分解および/または不完全な脱アセチル化のせいで、得られる製品が均一ではなく、種々のモノマーおよびオリゴマーの混合物であるという事実にある。
【0023】
組換え微生物、特に大腸菌(Escherichia coli)(キチンの分解には必要とされない)の支援を受けてグルコサミンを製造するための代替の方法はUS 2002/0160459に記載されている。
【0024】
かねて、グルコサミンおよびグルコサミン含有物質も、やはり、骨関節炎を処置するための潜在的な活性化合物であると考えられている(Cleggら、2006, The New England Journal of Medicine 354(8), 795-808)。グルコサミンまたはグルコサミン含有物質はまた、多数の食品サプリメント中に存在する。GlcNAcに富む食品は、例えば、US 2006/0003965に記載されている。
【0025】
上記のように、グルコサミノグリカン、例えばコンドロイチン硫酸、ヘパリン/ヘパラン硫酸またはキチンは、現在、動物組織から単離される。各事例で所望の物質に加えて、これらの組織はまた、他のグルコサミノグリカンを含有する。個々のグルコサミノグリカンの分離は、仮に完全分離が可能であったとしても、困難かつ複雑である。さらにまた、動物組織中の、ヒトの疾患を引き起こしうる、病原微生物および/または他の物質、例えばBSE病原体またはトリインフルエンザ病原体の潜在的な存在は、動物組織から単離されたグルコサミノグリカンを使用する場合に問題である。動物タンパク質で汚染されている医薬製剤の使用は、患者において、特に患者が動物タンパク質に対してアレルギー体質である場合に、望ましくない身体の免疫学的反応を引き起こす可能性がある(ヒアルロナン調製物に関しては、例えばUS 4,141,973を参照されたい)。
【0026】
動物組織からグルコサミノグリカンを単離する際の別の問題は、精製中にグルコサミノグリカンの分子量が減少することが多いという事実にある。その理由は、動物組織がまた、グルコサミノグリカンを分解する酵素を含有するからである。
【0027】
甲殻類から単離されたグルコサミンまたはその誘導体は、ヒトにおけるアレルギー反応を引き起こす可能性がある物質(タンパク質)を含有することが多い。真菌から取得されたグルコサミンまたは誘導体はマイコトキシンを含有する可能性がある。
【0028】
動物組織から満足な品質および純度で取得できるグルコサミノグリカンの量(収率)は少ない(例えばオンドリのトサカから得られるヒアルロナン:0.079%w/w、EP 0144019、US 4,782,046)。このことは、大量の動物組織を処理する必要があることを意味する。
【0029】
細菌の発酵を活用したグルコサミノグリカンの生産には高いコストが伴う。その理由は、複雑な制御培養条件下の密封滅菌容器中で細菌を発酵する必要があるからである(ヒアルロナンに関しては、例えばUS 4,897,349を参照されたい)。さらにまた、細菌株の発酵によって製造できるグルコサミノグリカンの量は、既存の製造設備によって制限される。ここで、物理的制限のせいで、比較的大きい培養量のための発酵槽を構築することは不可能であることも配慮されている。この関連で、特に、送り込まれる物質(例えば細菌の必須の栄養供給源、pHを調節するための試薬、酸素)と培養培地の均一混合(効率的生産に必要とされる)に言及する。それは、仮にそうであるとしても、大きい発酵槽中で、高い技術的出費を伴ってしか確保できない。
【0030】
さらにまた、動物原材料から調製された物質は、特定の生活方法、例えば厳格な菜食主義では、あるいは清浄な食品製造では許容されない。
【0031】
植物は、天然には、グルコサミノグリカン、例えば、ヒアルロナン、キチン、ヘパラン/ヘパリン硫酸、ケラタン硫酸またはコンドロイチン/デルマタン硫酸を生産しない。
【0032】
グルコサミノグリカンの合成では、とりわけ、十分な量のアセチル化グルコサミン誘導体(特にUDP−GlcNAc)および/またはUDP−GlcAが、合成に関与するそれぞれの酵素の基質として利用可能であることが必要である。植物細胞中に存在するN−アセチル化グルコサミンの量に関する情報はない。WO 2005 035710では、植物材料のグルコサミン含量を乾燥によって増加させる方法が記載されている。チコリーに関して、新鮮な、湿った植物材料中の最高のグルコサミン含量が決定され、新鮮重量1kgあたりグルコサミン10mgであった。それは、グルコサミンの分子量が178であれば、植物材料の新鮮重量1グラムあたりグルコサミン約56nmolに相当する。WO 2005 035710には、植物のN−アセチル化グルコサミン誘導体の含量に関する情報は含まれない。
【0033】
さらにまた、上記先行技術から、植物中のグルコサミン代謝の経路が、まだ完全には解明されていないことが明らかである。WO 00 11192では、植物GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を用いる形質転換によって、高含量のグルコサミン誘導体(UDP−グルコサミンまたはグルコサミン1−リン酸)を有する植物を作製することが可能であった;しかし、増加量のN−アセチル化グルコサミン誘導体は発見されなかった。
【0034】
したがって、本発明の目的は、N−アセチル化グルコサミン誘導体の代替の供給源およびN−アセチル化グルコサミン誘導体の該代替の供給源を製造するための方法を提供することである。
【0035】
本発明の第一の態様は、新鮮重量1グラムあたり少なくとも2.50μmol、好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも5.00μmol、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも10.00μmol、非常に特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも15.00μmol、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも20.00μmolのN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する植物細胞または植物に関する。
【0036】
好ましくは、本発明の植物細胞または本発明の植物は、新鮮重量1グラムあたり多くとも250μmol、好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも200μmol、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも150μmol、非常に特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも100μmol、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも50μmolのN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する。
【0037】
先行技術と比較して、本発明の植物細胞または本発明の植物は、より多量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を含有する利点を提供する。微生物の発酵によるN−アセチル化グルコサミン誘導体の生産または動物原材料供給源または真菌からのN−アセチル化グルコサミンの単離と比較して、本発明の植物細胞または本発明の植物は、本発明の植物細胞および本発明の植物は無性または有性様式で無限に繁殖でき、かつN−アセチル化グルコサミン誘導体を継続的に生産するという利点を提供する。さらにまた、公知の植物と比較して、本発明の植物は、グルコサミノグリカン、例えば、コンドロイチン、ヒアルロナン、キチン、ヘパロサンの製造に、より良好に適している利点を提供する。その理由は、それらが、上記グルコサミノグリカンの触媒作用に関与する酵素(グルコサミノグリカンシンターゼ)の基質を、より多量に含有するからである。
【0038】
N−アセチル化グルコサミン誘導体は、当業者に公知の方法を使用して検出することができる(MorganおよびElson(1934, Biochem J. 28(3), 988-995))。本発明の関連では、N−アセチル化グルコサミン誘導体含量を決定するために、好ましくは、一般的方法項目4の下に記載される方法が使用される。
【0039】
本発明の関連では、用語「N−アセチル化グルコサミン誘導体」は、グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシグルコース)のすべての誘導体を意味すると理解されるものとし、それにはさらに、エピマー、例えば、ガラクトサミン(2−アミノ−2−デオキシガラクトース)またはマンノサミン(2−アミノ−2−デオキシマンノース)が含まれ、それは一般的方法項目4の下に記載される方法を使用して評価される。N−アセチル化グルコサミン誘導体は、好ましくは、N−アセチルグルコサミンリン酸(N−アセチルグルコサミン1−リン酸および/またはN−アセチルグルコサミン6−リン酸)、N−アセチルグルコサミンおよび/またはUDP−N−アセチルグルコサミンである。
【0040】
好ましくは、本発明の植物細胞または本発明の植物は、増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量に加えて、増加したグルコサミンリン酸(グルコサミン1−リン酸および/またはグルコサミン6−リン酸)含量を有する。
【0041】
本発明の植物細胞または本発明の植物は、例えば、グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)のアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を導入することによって調製することができる。
【0042】
本発明の好ましい実施態様では、ゆえに、本発明の植物細胞または本発明の植物は、それぞれ遺伝子改変植物細胞および遺伝子改変植物である。
【0043】
驚くべきことに、GFAT−2の活性を有するタンパク質または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含有する植物細胞または植物が、グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームI(GFAT−1)の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含有する植物細胞または植物よりかなり多量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を含有することが見出されている。上記のように、植物GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含有する植物において増加量のアセチル化グルコサミン誘導体を検出することは不可能であった(WO 00 11192)。
【0044】
したがって、本発明はまた、グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含有する遺伝子改変植物細胞または遺伝子改変植物であって、該外来性核酸分子がグルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質または細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する遺伝子改変植物細胞または遺伝子改変植物を提供する。
【0045】
本発明の植物細胞または本発明の植物の遺伝子改変は、外来性核酸分子を植物細胞または植物に組み込むために好適な任意の遺伝子改変であってよい。
【0046】
好ましくは、外来性核酸分子をゲノムに組み込む; 特に好ましくは、外来性核酸分子を本発明の植物細胞または本発明の植物のゲノムに安定に組み込む。
【0047】
本発明の植物細胞または本発明の植物を製造するために、核酸分子を植物宿主細胞に(安定に)組み込むための多数の技術が利用可能である。これらの技術には、形質転換の手段としてアグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を使用するT−DNAでの植物細胞の形質転換、プロトプラスト融合、インジェクション、DNAのエレクトロポレーション、微粒子銃アプローチによるDNAの導入および、さらに、別の選択肢が含まれる(「Transgenic Plants」, Leandro ed., Humana Press 2004, ISBN 1-59259-827-7でレビューされている)。
【0048】
植物細胞のアグロバクテリウム媒介形質転換の使用は詳細な研究の対象となっていて、EP 120516およびHoekema, IN: The Binary Plant Vector System Offsetdrukkerij Kanters B.V. Alblasserdam (1985), Chapter V; Fraley et al., Crit. Rev. Plant Sci. 4, 1-46およびAnら EMBO J. 4, (1985), 277-287に余すところなく記載されている。ジャガイモの形質転換に関しては、例えばRocha-Sosaら、EMBO J. 8, (1989), 29-33を参照されたい。トマト植物の形質転換に関しては、例えばUS 5,565,347を参照されたい。
【0049】
さらに、アグロバクテリウム形質転換に基づくベクターを使用する単子葉植物の形質転換が報告されている(Chanら、Plant Mol. Biol. 22, (1993), 491-506; Hieiら、Plant J. 6, (1994) 271-282; Dengら、Science in China 33, (1990), 28-34; Wilminkら、Plant Cell Reports 11, (1992), 76-80; Mayら、Bio/Technology 13, (1995), 486-492; ConnerおよびDomisse, Int. J. Plant Sci. 153 (1992), 550-555; Ritchieら、Transgenic Res. 2, (1993), 252-265)。単子葉植物を形質転換するための代替系は、微粒子銃アプローチを使用する形質転換(WanおよびLemaux, Plant Physiol. 104, (1994), 37-48; Vasilら、Bio/Technology 11 (1993), 1553-1558; Ritalaら、Plant Mol. Biol. 24, (1994), 317-325; Spencerら、Theor. Appl. Genet. 79, (1990), 625-631)、プロトプラスト形質転換、部分的に透過処理された細胞のエレクトロポレーションまたはガラス繊維を使用するDNAの導入である。特に、トウモロコシの形質転換は文献で複数回報告されている(例えばWO95/06128, EP0513849, EP0465875, EP0292435; Frommら、Biotechnology 8, (1990), 833-844; Gordon-Kammら、Plant Cell 2, (1990), 603-618; Kozielら、Biotechnology 11 (1993), 194-200; Morocら、Theor. Appl. Genet. 80, (1990), 721-726を参照されたい)。また、他のクサ、例えばスイッチグラス(Panicum virgatum)の形質転換が報告されている(Richardsら、2001, Plant Cell Reporters 20, 48-54)。
【0050】
同様に、他の穀類種の好結果の形質転換が、例えばオオムギ(WanおよびLemaux, loc. cit.; Ritalaら、loc. cit.; Krensら、Nature 296, (1982), 72-74)およびコムギ(Nehraら、Plant J. 5, (1994), 285-297; Beckerら、1994, Plant Journal 5, 299-307)に関して、すでに報告されている。上記すべての方法は本発明の関連で好適である。
【0051】
外来性核酸分子を有する遺伝子改変植物細胞および遺伝子改変植物は、該外来性核酸分子を有さないそれぞれ野生型植物細胞および野生型植物と識別することができ、とりわけ、それらが、それぞれ野生型植物細胞および野生型植物中に天然には存在しない外来性核酸分子を含有する事実によって識別することができる。そのような外来性核酸分子の植物細胞または植物への組み込みは、当業者に公知の方法、例えばサザンブロット解析を使用して、またはPCRによって検出することができる。
【0052】
本発明の関連では、用語「安定に組み込まれた核酸分子」とは、植物のゲノム内への核酸分子の組み込みを意味すると理解されるものとする。安定に組み込まれた核酸分子は、対応する組み込み部位の複製中に、それが、該組み込み部位に接している宿主の核酸配列と一緒に複製されて、複製された娘DNA鎖中の該組み込み部位が、複製のマトリックスとして働く読み取り母鎖上と同一の核酸配列によって取り囲まれる点を特徴とする。
【0053】
植物細胞または植物のゲノム内への核酸分子の組み込みは遺伝的方法および/または分子生物学的方法によって実証することができる。植物細胞のゲノム内への、または植物のゲノム内への核酸分子の安定な組み込みは、該核酸分子を受け継いでいる子孫において、安定に組み込まれた核酸分子が親世代と同一のゲノム環境に存在する点を特徴とする。植物細胞のゲノムまたは植物のゲノム中に核酸配列の安定な組み込みが存在することは、当業者に公知の方法を使用して実証することができ、とりわけ、サザンブロット解析またはRFLP解析(制限断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism))(Namら、1989, The Plant Cell 1, 699-705; LeisterおよびDean, 1993, The Plant Journal 4 (4), 745-750)を活用し、PCRに基づく方法、例えば増幅断片の長さの差異の解析(増幅断片長多型(Amplified Fragment Length Polymorphism),AFLP)(Castiglioniら、1998, Genetics 149, 2039-2056; Meksemら、2001 , Molecular Genetics and Genomics 265, 207-214; Meyerら、1998, Molecular and General Genetics 259, 150-160)を用いて、または制限酵素を使用して切断された増幅断片(切断増幅多型配列(Cleaved Amplified Polymorphic Sequences),CAPS)(KoniecznyおよびAusubel, 1993, The Plant Journal 4, 403-410; Jarvisら、1994, Plant Molecular Biology 24, 685-687; Bachemら、1996, The Plant Journal 9 (5), 745-753)を使用して実証することができる。
【0054】
本発明の関連で、用語「ゲノム」とは、植物細胞中に存在する遺伝物質全体を意味すると理解されるものとする。核に加えて、他の区画(例えば色素体、ミトコンドリア)もまた遺伝物質を含有することが当業者に公知である。
【0055】
別の好ましい本発明の対象は、グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を発現する本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物に関する。
【0056】
本発明の関連で、用語「発現するための」または「発現」とは、外来性核酸分子によってコードされる転写物(mRNA)の存在および/またはGFAT−2または細菌GFATの活性を有するタンパク質の存在を意味すると理解されるものとする。
【0057】
発現は、例えば、ノーザンブロット解析またはRT−PCRによる外来性核酸分子の特定の転写物(mRNA)の検出によって実証することができる。
【0058】
植物細胞または植物が、GFAT−2の活性を有するタンパク質または細菌GFATの活性を有するタンパク質を含有するかどうかは、例えばウエスタンブロット解析、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay))またはRIA(ラジオイムノアッセイ(Radio Immune Assay))等の免疫学的方法によって決定することができる。当業者は、特定のタンパク質と特異的に反応する抗体、すなわち特定のタンパク質に特異的に結合する抗体を調製するための方法を熟知している(例えばLottspeichおよびZorbas (eds.), 1998, Bioanalytik, Spektrum akad, Verlag, Heidelberg, Berlin, ISBN 3-8274-0041-4を参照されたい)。いくつかの企業(例えばEurogentec, Belgium)は、注文サービスとして、そのような抗体の調製を提供している。
【0059】
別の好ましい本発明の実施態様では、本発明の植物細胞または本発明の植物は、グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質の活性または、細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする活性を有する。
【0060】
本発明の植物細胞または本発明の植物の抽出物中のGFAT−2の活性を有するタンパク質または細菌GFATの活性を有するタンパク質の活性は、例えばSamacら(2004, Applied Biochemistry and Biotechnology 113-116, Humana Press, Editor Ashok Mulehandani, 1167-1182, ISSN 0273-2289)に記載の方法等の当業者に公知の方法を使用して検出することができる。GFATの活性を有するタンパク質の活性の量を決定するための好ましい方法は、一般的方法、項目8に記載されている。
【0061】
本発明の関連で、用語「グルタミン:フルクトース6-リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)」(E.C. 2.6.1.16)(専門文献中ではグルコサミンシンターゼとも称される)は、出発材料グルタミンおよびフルクトース6−リン酸(Fruc−6−P)から、グルコサミン6−リン酸(GlcN−6−P)を合成するタンパク質を意味すると理解されるものとする。この触媒作用は以下の反応スキームにしたがって進行する:
グルタミン+Fruc−6−P→GlcN−6−P+グルタミン酸。
【0062】
本発明の関連で、用語「グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(GFAT)」は、すべての公知のアイソフォームを含む総称として使用される。
【0063】
Milewski(2002, Biochimica et Biophysica Acta 1597, 173-193)による総論では、GFATの活性を有するタンパク質の構造的特徴を記載している。GFATの活性を有するすべての公知のタンパク質のアミノ酸配列は保存アミノ酸配列を有する領域を含有する。GFATの活性を有するタンパク質のアミノ酸配列はN末端グルタミン結合ドメインおよびC末端フルクトース6−リン酸結合ドメインを有し、該ドメインは40〜90個の非保存アミノ酸からなる配列によって分離されている。両ドメインは、別々のアミノ酸分子上に存在しても活性である。大腸菌由来のGFATの活性を有するタンパク質のN末端グルタミン結合ドメインを含む断片の結晶構造の解析では、このドメインの活性中心がN末端に位置し、アミノ酸Cys1がグルタミンの加水分解に関与することが示された。アミノ酸Arg73およびAsp123はグルタミンのカルボキシルおよびアミノ基と相互作用する。この相互作用はアミノ酸Thr76およびHis77によって支持される。グルタミンのアミド基との水素結合の形成はアミノ酸Gly99およびTrp74に起因する。アミノ酸Asn98およびGly99は活性中心の4面(four-faced)ポケットを安定化する。アミノ酸25〜29および73〜80は可動性ループを形成し、該ループは、基質グルタミンの結合後に、タンパク質のコンフォメーション変化によって、GFATの活性を有するタンパク質によって触媒される反応に寄与する。大腸菌由来のGFATの活性を有するタンパク質のC末端フルクトース6−リン酸結合ドメインの結晶構造の解析では、このドメインが、2個の形態的に同一のドメイン(アミノ酸241〜424および425〜592)、それに続く、不規則なループとしてC末端に存在するドメイン(アミノ酸593〜608)から構築され、ただし唯一の活性中心を有することが示された。アミノ酸Ser303、Ser347、Gln348、Ser349およびThr352は基質結合に関与し、一方、アミノ酸Glu488、His504およびLys603は、GFATの活性を有するタンパク質の反応の触媒作用に直接関与する。
【0064】
特に動物体では、GFATの活性を有するタンパク質の2個の異なるアイソフォーム(文献中ではそれぞれGFAT−1およびGFAT−2と称される)を実証することが可能であった。Huら(2004, J. Biol. Chem. 279(29), 29988-29993)では、GFATの活性を有するタンパク質のそれぞれのアイソフォームの差異が記載されている。GFAT−1およびGFAT−2の活性を有する目的のアイソフォームの組織特異的発現の差異に加えて、cAMP依存性プロテインキナーゼによるリン酸化によって両アイソフォームが調節されることを示すことが可能であった。GFAT−1の酵素活性を有するタンパク質の活性は、目的のアミノ酸配列の保存セリン残基(マウス由来のGFAT−1中のセリン205,GenBank Acc No.: AF334736.1)のリン酸化によって阻害され、一方、GFAT−2の活性を有するタンパク質の活性は目的のアミノ酸配列の保存セリン残基(マウス由来のGFAT−2中のセリン202,GenBank Acc No.: NM_013529)のリン酸化によって増加する。GFAT−1の活性を有するタンパク質およびGFAT−2の活性を有するタンパク質はともに、UDP−GlcNAcによって濃度依存的様式で阻害され;しかし、GFAT−2の活性を有するタンパク質では、UDP−GlcNAcによる阻害は、GFAT−1の活性を有するタンパク質(UDP−GlcNAcによる活性の最大の減少はそれぞれ約51%または80%である)と比較して少ない(UDP−GlcNAcによる活性の最大の減少は約15%である)。動物体におけるGFAT−1の活性を有するタンパク質の阻害は、高いUDP−GlcNAc濃度では、目的のタンパク質のO−グルコース−N−アセチルグルコサミングリコシル化が存在することに基づくことが示されている。O−グリコシル化によるタンパク質の活性の調節が植物細胞にも関与するかどうかは、まだ、完全には理解されていない(HuberおよびHardin, 2004, Current Opinion in Plant Biotechnology 7, 318-322)。
【0065】
細菌GFATの活性を有するタンパク質は、UDP−GlcNAcによって阻害されないことによって識別される(Kornfeld, 1967, J. Biol. Chem. 242(13), 3135-3141)。GFAT−1の活性を有するタンパク質、GFAT−2の活性を有するタンパク質、および細菌GFATの活性を有するタンパク質さえ、それらの反応で形成される生成物グルコサミン6−リン酸によって阻害される(Broschatら、2002, J. Biol. Chem. 277(17), 14764-14770; Dengら、2005, Metabolic Engineering 7, 201-214)。
【0066】
本発明の関連で、用語「グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームI(GFAT−1)の活性を有するタンパク質」とは、GFATの活性を有し、かつ、その活性がcAMP依存性プロテインキナーゼによるリン酸化によって阻害されるタンパク質を意味すると理解されるものとする。
【0067】
本発明の関連で、用語「グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質」とは、GFATの活性を有し、かつ、cAMP依存性プロテインキナーゼによるリン酸化によって活性化されるタンパク質を意味すると理解されるものとする。
【0068】
本発明の関連で、用語「細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質」とは、GFATの活性を有し、かつ、その活性がUDP−GlcNAcによって阻害されないタンパク質を意味すると理解されるものとする。あるいは、「細菌GFATの活性を有するタンパク質」は「非真核生物GFATの活性を有するタンパク質」と称してもよい。
【0069】
本発明の関連で、用語「外来性核酸分子」とは、対応する野生型植物細胞中に天然には存在しないか、あるいは野生型植物細胞の特定の空間的配置に天然には存在しないか、あるいは野生型植物細胞のゲノム中の部位であって、それが天然には存在しない部位に位置するそのような分子を意味すると理解されるものとする。
【0070】
好ましくは、外来性核酸分子は、その組み合わせまたは特定の空間的配置が植物細胞に天然には存在しない種々の要素(核酸分子)からなる組換え分子である。
【0071】
本発明の関連で、用語「組換え核酸分子」とは、組換え核酸分子中に存在するような組合せで天然には存在しない種々の核酸分子を有する核酸分子を意味すると理解されるものとする。ゆえに、組換え核酸分子は、タンパク質をコードする外来性核酸分子に加えて、例えば、該タンパク質をコードする核酸分子との組み合わせで天然には存在しない追加の核酸配列を有してよい。ここで、タンパク質をコードする核酸分子との組み合わせで組換え核酸分子中に存在する上記追加の核酸配列は、任意の配列であってよい。それらは、例えば、ゲノムおよび/または植物の核酸配列であってよい。上記追加の核酸配列は、好ましくは、調節配列(プロモーター、終結シグナル、エンハンサー、イントロン)であり、特に好ましくは植物組織で活性な調節配列、非常に特に好ましくは植物組織で活性な組織特異的調節配列である。
【0072】
組換え核酸分子を作製するための方法は当業者に公知であり、それには、遺伝子工学的方法、例えば、ライゲーションによる核酸分子の連結、遺伝子組換えまたは核酸分子の新規合成(例えばSambrokら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY. ISBN: 0879695773; Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons; 5th edition (2002),ISBN: 0471250929を参照されたい)が含まれる。
【0073】
本発明は、好ましくは、本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物であって、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子が、植物細胞中で転写を開始させる調節要素(プロモーター)に連結されている遺伝子改変植物細胞または遺伝子改変植物を提供する。これらは同種プロモーターまたは異種プロモーターであってよい。該プロモーターは、構成的、組織特異的または発生特異的プロモーターまたは外的要因によって(例えば、化学物質の適用後に、熱および/または低温、乾燥、疾患、等の非生物的要因の作用によって)調節されるプロモーターであってよい。
【0074】
一般に、植物細胞で活性な任意のプロモーターは、外来性核酸分子を発現するために好適である。好適なプロモーターは、例えば、構成的発現のためのカリフラワーモザイクウイルスの35S RNAのプロモーターまたはトウモロコシ由来のユビキチンプロモーターまたはCestrum YLCVプロモーター(Yellow Leaf Curling Virus; WO 01 73087; Stavoloneら、2003, Plant Mol. Biol. 53, 703-713)、ジャガイモにおける塊茎特異的発現のためのパタチンゲン(patatingen)プロモーターB33(Rocha-Sosaら、EMBO J. 8 (1989), 23-29)またはトマトの果実特異的プロモーター、例えば、トマト由来のポリガラクツロナーゼプロモーター(Montgomeryら、1993, Plant Cell 5, 1049-1062)またはトマト由来のE8プロモーター(Methaら、2002, Nature Biotechnol. 20(6), 613-618)またはモモ由来のACCオキシダーゼプロモーター(MoonおよびCallahan, 2004, J. Experimental Botany 55 (402), 1519-1528)または光合成的に活性な組織においてのみ発現を保証するプロモーター、例えばST−LS1プロモーター(Stockhausら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 7943-7947; Stockhausら、EMBO J. 8 (1989), 2445-2451)または胚乳特異的発現のためのコムギ由来のHMWGプロモーター、USPプロモーター、ファゼオリンプロモーター、トウモロコシ由来のゼイン遺伝子のプロモーター(Pedersenら、Cell 29 (1982), 1015-1026; Quatroccioら、Plant Mol. Biol. 15 (1990), 81-93)、グルテリンプロモーター(Leisyら、Plant Mol. Biol. 14 (1990), 41-50; Zhengら、Plant J. 4 (1993), 357-366; Yoshiharaら、FEBS Lett. 383 (1996), 213-218)、グロブリンプロモーター(Nakaseら、1996, Gene 170(2), 223-226)、プロラミンプロモーター(QuおよびTakaiwa, 2004, Plant Biotechnology Journal 2(2), 113-125)またはshrunken-1プロモーター(Werrら、EMBO J. 4 (1985), 1373-1380)である。しかし、外的要因によって決定される時点でのみ活性なプロモーターを使用することも可能である(例えばWO 9307279を参照されたい)。ここで、特に興味深いのは、単純な誘導を可能にする熱ショックタンパク質のプロモーターである。さらにまた、種子特異的プロモーター、例えば、ソラマメ(Vicia faba)由来のUSPプロモーターを使用することが可能であり、該プロモーターはソラマメおよび他の植物での種子特異的発現を保証する(Fiedlerら、Plant Mol. Biol. 22 (1993), 669-679; Baeumleinら、Mol. Gen. Genet. 225 (1991), 459-467)。
【0075】
藻類に感染するウイルスのゲノムに存在するプロモーターの使用もまた、植物での核酸配列の発現に適している(Mitraら、1994, Biochem. Biophys Res Commun 204(1), 187-194; MitraおよびHiggins, 1994, Plant Mol Biol 26(1), 85-93, Van Ettenら、2002, Arch Virol 147, 1479-1516)。
【0076】
本発明の関連で、用語「組織特異的」とは、出現(例えば転写の開始)が、実質的に、特定の組織に限定されることを意味すると理解されるものとする。
【0077】
本発明の関連で、用語「塊茎、果実または胚乳細胞」とは、それぞれ塊茎、果実および種子の胚乳中に存在するすべての細胞を意味すると理解されるものとする。
【0078】
本発明の関連で、用語「同種(homologous)プロモーター」とは、それぞれ本発明の遺伝子改変植物細胞および本発明の遺伝子改変植物の調製に使用される植物細胞または植物に天然に存在するプロモーター(植物細胞または植物に対して同種)を意味するか、あるいは、タンパク質をコードするそれぞれの外来性核酸分子の単離元であった生物において遺伝子の発現の調節を調節するプロモーター(発現対象の核酸分子に対して同種)を意味すると理解されるものとする。
【0079】
本発明の関連で、用語「異種(heterologous)プロモーター」とは、それぞれ本発明の遺伝子改変植物細胞の調製および本発明の遺伝子改変植物において使用される植物細胞または植物に天然には存在しないプロモーター(植物細胞または植物に対して異種)を意味するか、あるいは、タンパク質をコードするそれぞれの外来性核酸分子の単離元であった生物において、天然には、該外来性核酸分子の発現を調節するために存在しないプロモーター(発現対象の核酸分子に対して異種)を意味すると理解されるものとする。
【0080】
また、転写物に対してポリA尾部を付加するために働く終結配列(ポリアデニル化シグナル)を存在させてよい。ポリA尾部は転写物の安定化に作用すると考えられる。そのような要素は文献(Gielenら、EMBO J. 8 (1989), 23-29を参照されたい)に記載されていて、所望のように交換することができる。
【0081】
イントロン配列を外来性核酸分子のプロモーターとコード領域の間に存在させることも可能である。そのようなイントロン配列は植物における発現の安定性および発現の増加を導く(Callisら、1987, Genes Devel. 1 , 1183-1200; Luehrsen, およびWalbot, 1991 , Mol. Gen. Genet. 225, 81-93; Rethmeierら、1997; Plant Journal 12(4), 895-899; RoseおよびBeliakoff, 2000, Plant Physiol. 122 (2), 535-542; Vasilら、1989, Plant Physiol. 91, 1575-1579; XUら、2003, Science in China Series C Vol.46 No.6, 561-569)。好適なイントロン配列は、例えば、トウモロコシ由来のsh1遺伝子の第一イントロン、トウモロコシ由来のポリユビキチン遺伝子1の第一イントロン、コメ由来のEPSPS遺伝子の第一イントロンまたはシロイヌナズナ(Arabidopsis)由来のPAT1遺伝子の第一の2イントロンの1つである。
【0082】
本発明では、GFAT−2の酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子は任意の真核生物由来であってよく;好ましくは、該核酸分子は動物由来であり、特に好ましくは哺乳類由来および非常に特に好ましくはマウス由来である。
【0083】
本発明では、細菌GFATの酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子は任意の非真核生物由来またはウイルスゲノム由来であってよく;好ましくは、該核酸分子は細菌またはウイルス由来であり;特に好ましくは、該核酸分子は大腸菌由来である。GFATの活性を有するウイルスタンパク質をコードするアミノ酸配列は、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列とかなり高い同一性を有し、かつGFAT−1またはGFAT−2の活性を有するタンパク質とかなり低い同一性を有するため、GFATの活性を有するウイルスタンパク質はGFATの活性を有する細菌タンパク質とともに分類される(Landsteinら、1998, Virology 250, 388-396)。ウイルスに関しては、GFATの酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子は、好ましくは、藻類に感染するウイルス、好ましくはクロレラ(Chlorella)属の藻類に感染するウイルス由来であり、特に好ましくはパラメシウム ブルサリアクロレラウイルス(Paramecium bursaria Chlorella virus)由来であり、非常に特に好ましくはH1株のパラメシウム ブルサリアクロレラウイルス由来である。
【0084】
GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする天然に存在する核酸分子の代わりに、本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物に導入される核酸分子は、突然変異誘発によって作製されたものであってもよく、その場合、該突然変異誘発された外来性核酸分子は、それが、代謝産物(例えばグルコサミン代謝の代謝産物)による阻害が低減されているGFAT−2の活性を有するタンパク質または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする点を特徴とする。典型的な様式で、そのような突然変異誘発された核酸分子の調製は、Dengら(2005, Metabolic Engineering 7, 201-214; WO 04 003175)に、大腸菌由来の細菌GFATの活性を有するタンパク質に関して記載されている。マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質の突然変異体は、例えばHuら(2004, J. Biol. Chem. 279 (29), 29988-29993)に記載されている。
【0085】
GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子は当業者に公知であり、文献に報告されている。ゆえに、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子は、例えば大腸菌(Dutka-Malen, 1988, Biochemie 70 (2), 287-290; EMBL acc No: L10328.1)、枯草菌(Bacillus subtilis)(EMBL acc No U21932)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)(EMBL acc Nos AB006424.1, BAA33071)に関して報告されている。細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子は、ウイルス、例えばクロレラウイルスk2(EMBL acc No AB107976.1)に関しても報告されている。
【0086】
GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子は、とりわけ昆虫由来、例えばキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)に関して(NCBI acc No NM_143360.2)、脊椎動物由来、例えばヒト(Homo sapiens)(NCBI acc No BC000012.2, Okiら、1999, Genomics 57 (2),227-34)またはマウス(Mus musculus)(EMBL acc No AB016780.1)に関して報告されている。
【0087】
好ましい実施態様では、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞および本発明の遺伝子改変植物であって、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子が以下からなる群から選択される遺伝子改変植物細胞および遺伝子改変植物に関する:
a)配列番号:7の下に記載のアミノ酸配列(GFAT−2)を有するタンパク質または配列番号:9の下に記載のアミノ酸配列(細菌GFAT)を有するタンパク質をコードする核酸分子;
b)配列が、配列番号:7の下(GFAT−2)または配列番号:9の下(細菌GFAT)に示されるアミノ酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、非常に特に好ましくは少なくとも95%および最も好ましくは少なくとも98%同一であるタンパク質をコードする核酸分子;
c)配列番号:6の下(GFAT−2)または配列番号:8の下(細菌GFAT)または配列番号:10の下(細菌GFAT)に示されるヌクレオチド配列またはそれに相補的な配列を含む核酸分子;
d)上記a)またはc)の下に示される核酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、非常に特に好ましくは少なくとも95%および最も好ましくは少なくとも98%同一である核酸分子;
e)上記a)またはc)の下に記載の核酸配列の少なくとも1鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子;
f)遺伝暗号の縮重に起因して、ヌクレオチド配列が上記a)またはc)の下に記載の核酸分子の配列と異なる核酸分子および
g)上記a)、b)、c)、d)、e)またはf)に記載の核酸分子の断片、対立遺伝子変異体および/または誘導体である核酸分子。
【0088】
本発明の関連で、用語「ハイブリダイゼーション」とは、慣用のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションを意味する。該条件は、例えばSambrookら(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY. ISBN: 0879695773)またはAusubelら(Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons; 5th edition (2002), ISBN: 0471250929)に記載されている。特に好ましくは、「ハイブリダイゼーション」とは、以下の条件下でのハイブリダイゼーションを意味する:
ハイブリダイゼーションバッファー:
2xSSC;10xデンハート液(Fikoll 400+PEG+BSA;比1:1:1);0.1% SDS;5mM EDTA;50mM NaHPO;250μg/mlのニシン精子DNA;50μg/mlのtRNA;
または
25Mリン酸ナトリウムバッファーpH7.2;1mM EDTA;7% SDS
ハイブリダイゼーション温度:
T=65〜68℃
洗浄バッファー:0.1xSSC;0.1% SDS
洗浄温度:T=65〜68℃。
【0089】
GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子とハイブリダイズする核酸分子は任意の生物由来であってよく;したがって、それらは細菌、真菌、動物、植物またはウイルス由来であってよい。
【0090】
GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子とハイブリダイズする核酸分子は、好ましくは、動物由来であり、特に好ましくは哺乳類由来であり、非常に特に好ましくはマウス由来である。
【0091】
細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子とハイブリダイズする核酸分子は、好ましくは、細菌またはウイルス由来であり、特に好ましくは大腸菌由来である。
【0092】
上記分子とハイブリダイズする核酸分子は例えばゲノムまたはcDNAライブラリーから単離してよい。そのような核酸分子は、上記核酸分子またはこれらの分子の部分またはこれらの分子の逆の相補物を使用して、例えば標準的方法にしたがったハイブリダイゼーション(例えばSambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition (2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY. ISBN: 0879695773; Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons; 5th edition (2002),ISBN: 0471250929を参照されたい)によって、またはPCRを使用する増幅によって特定および単離することができる。
【0093】
GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を単離するためのハイブリダイゼーションサンプルとして、例えば、厳密または本質的に、配列番号:6の下に記載の核酸配列またはこれらの核酸配列の断片を有する核酸分子を使用することが可能である。細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を単離するためのハイブリダイゼーションサンプルとして、例えば、厳密または本質的に、配列番号:8の下に記載の核酸配列またはこれらの核酸配列の断片を有する核酸分子を使用することが可能である。
【0094】
ハイブリダイゼーションサンプルとして使用される断片は、通例の合成技術を使用して調製される合成断片またはオリゴヌクレオチドであって、その配列が、本発明の関連で記載される核酸分子と本質的に同一である合成断片またはオリゴヌクレオチドであってもよい。本発明の関連で記載される核酸配列とハイブリダイズする遺伝子を特定および単離した後、配列を決定すべきであり、この配列によってコードされるタンパク質の特性を分析して、それらが、GFAT−2の活性または細菌GFATの活性を有するタンパク質であるかどうかを決定すべきであろう。タンパク質が、GFAT−2の活性を有するか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質の活性を有するかどうかを決定するための方法は当業者に公知であり、とりわけ、文献(細菌GFAT:例えばDengら、2005, Metabolic Engineering 7, 201-214; Kornfeld, 1967, J. Biol. Chem. 242(13), 3135- 3141; GFAT−2:例えばHuら、2004, J. Biol. Chem. 279 (29), 29988-29993)に記載されている。
【0095】
本発明の関連で記載される核酸分子とハイブリダイズする分子には、特に上記核酸分子の断片、誘導体および対立遺伝子変異体が含まれる。本発明の関連で、用語「誘導体」とは、これらの分子の配列が、上記核酸分子の配列と1以上の位置で異なり、かつ、これらの配列に対して高度に同一であることを意味する。上記核酸分子との差異は、例えば、欠失(特にNおよび/またはC末端領域の欠失)、付加、置換、挿入または組換えに起因するものであってよい。
【0096】
本発明の関連で、用語「同一性」とは、核酸分子のコード領域の全長またはタンパク質をコードするアミノ酸配列の全長にわたって、少なくとも60%の配列同一性、特に少なくとも70%の、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、非常に特に好ましくは少なくとも95%および最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を意味する。本発明の関連で、用語「同一性」とは、他のタンパク質/核酸と同一のアミノ酸/ヌクレオチドの数(同一性)(%単位で表される)を意味すると理解されるものとする。
【0097】
好ましくは、GFAT−2の活性を有するタンパク質に関する同一性は、配列番号:7の下に記載のアミノ酸配列との比較によって決定され、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する同一性は、配列番号:6の下に記載の核酸配列の比較によって決定される。該比較は、コンピュータプログラムを活用する、他のタンパク質/核酸との比較である。好ましくは、細菌GFATの活性を有するタンパク質に関する同一性は、配列番号:9の下に記載のアミノ酸配列の比較によって決定され、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する同一性は、配列番号:8または配列番号:10の下に記載の核酸配列の比較によって決定される。該比較は、コンピュータプログラムを活用する、他のタンパク質/核酸との比較である。互いに比較される配列の長さが異なる場合、その同一性は、短い配列が長い配列と共有するアミノ酸/ヌクレオチドの数の%単位で同一性を決定することによって決定されるものとする。好ましくは、公知の公的に利用可能なコンピュータプログラムであるClustalW(Thompsonら、Nucleic Acids Research 22 (1994), 4673-4680)を使用して同一性を決定する。ClustalWは、Julie Thompson(Thompson@EMBL-Heidelberg.DE)およびToby Gibson(Gibson@EMBL-Heidelberg.DE)、European Molecular Biology Laboratory, Meyerhofstrasse 1, D 69117 Heidelberg, Germanyによって公的に利用可能にされている。ClustalWはまた、種々のインターネットページからダウンロードすることができ、とりわけIGBMC(Institut de Genetique et de Biologie Moleculaire et Cellulaire, B.P.163, 67404 lllkirch Cedex, France; ftp://ftp-igbmc.u-strasbg.fr/pub/)およびEBI(ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/software/)およびEBI(European Bioinformatics Institute, Wellcome Trust Genome Campus, Hinxton, Cambridge CB10 1SD, UK)のすべてのインターネットミラーページからダウンロードすることができる。
【0098】
好ましくは、ClustalWコンピュータプログラムのバージョン1.8を使用して、本発明の関連で記載されるタンパク質と他のタンパク質間の同一性を決定する。ここで、以下の通りにパラメータを設定する必要がある:KTUPLE=1, TOPDIAG=5, WINDOW=5, PAIRGAP=3, GAPOPEN=10, GAPEXTEND=0.05, GAPDIST=8, MAXDIV=40, MATRIX=GONNET, ENDGAPS(OFF), NOPGAP, NOHGAP。
【0099】
好ましくは、ClustalWコンピュータプログラムのバージョン1.8を使用して、例えば本発明の関連で記載される核酸分子のヌクレオチド配列と他の核酸分子のヌクレオチド配列間の同一性を決定する。ここで、以下の通りにパラメータを設定する必要がある:KTUPLE=2, TOPDIAGS=4, PAIRGAP=5, DNAMATRIX:IUB, GAPOPEN=10, GAPEXT=5, MAXDIV=40, TRANSITIONS: 重みなし(unweighted)。
【0100】
さらにまた、同一性とは、目的の核酸分子またはそれらによってコードされるタンパク質間に機能的および/または構造的な同等性が存在することを意味する。上記分子に相同であり、これらの分子の誘導体である核酸分子は、概して、同一の生物学的機能を有する、すなわちGFAT−2の活性または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする改変体に相当するこれらの分子の変形例である。それらは天然に存在する変形例、例えば他の種由来の配列、または突然変異であってよく、その場合、これらの突然変異は天然の様式で発生したものであってよく、あるいは系統的な突然変異誘発によって導入されたものである。さらにまた、該変形例は合成によって製造された配列であってよい。対立遺伝子変異体は、天然に存在する変異体または合成によって製造された変異体または組換えDNA技術によって作製された変異体であってよい。特殊な形式の誘導体は、例えば、遺伝暗号の縮重の結果として、本発明の関連で記載される核酸分子と異なる核酸分子である。
【0101】
別の好ましい実施態様では、本発明は、本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物であって、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子が、該核酸分子のコドンが、親生物の、GFAT−2の活性を有する該タンパク質または細菌GFATの活性を有する該タンパク質をコードする核酸分子のコドンと異なる点を特徴とする遺伝子改変植物細胞または遺伝子改変植物に関する。特に好ましくは、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子のコドンを変更して、それらが、そのゲノムに該核酸分子が組み込まれるか、あるいは組み込まれる予定の植物細胞または植物のコドンの使用頻度に適合するようにする。
【0102】
遺伝暗号の縮重の結果、アミノ酸は1以上のコドンによってコードされうる。生物が異なれば、アミノ酸をコードするコドンが異なる頻度で使用される。コード核酸配列のコドンを、発現対象の配列がそのゲノムに組み込まれる予定の植物細胞または植物でのそれらの使用頻度に適合させると、特定の植物細胞または植物中の翻訳タンパク質の量の増加および/または目的のmRNAの安定性に寄与する可能性がある。当業者は、可能な限り多数の、目的の生物のコード核酸配列を、特定のコドンが、特定のアミノ酸をコードするために使用される頻度に関して調査することによって、目的の植物細胞または植物中のコドンの使用頻度を決定することができる。特定の生物のコドンの使用頻度は当業者に公知であり、コンピュータプログラムを使用して単純かつ高速な様式で決定することができる。そのようなコンピュータプログラムは公的に利用可能であり、とりわけインターネット上で無料で提供されている(例えばhttp://gcua.schoedl.de/; http://www.kazusa.or.jp/codon/; http://www.entelechon.com/eng/cutanalysis.html)。
【0103】
コード核酸配列のコドンを、そのゲノム中に、発現対象の配列が組み込まれる予定の植物細胞または植物でのそれらの使用頻度に適合させることは、インビトロ突然変異誘発によって、または好ましくは該遺伝子配列の新規合成よって実行することができる。核酸配列を新規合成するための方法は当業者に公知である。新規合成は、例えば、まず個々の核酸オリゴヌクレオチドを合成し、これらをそれに相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせて、それらにDNA二本鎖を形成させ、そして個々の二本鎖オリゴヌクレオチドをライゲートして、所望の核酸配列を取得することによって実行することができる。コドンが使用される頻度を特定の標的生物に適合させることを含む核酸配列の新規合成は、このサービスを提供する企業(例えばEntelechon GmbH, Regensburg, Germany)に供給されることもできる。
【0104】
すべての上記核酸分子は、本発明の植物細胞または本発明の植物を生産するために適している。
【0105】
本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物は、原理的に、任意の植物種、すなわち単子葉および双子葉の両植物の、それぞれ、植物細胞および植物であってよい。それらは、好ましくは、作物植物であり、すなわちヒトおよび動物に食物を与える目的で、あるいは技術的、工業的目的でバイオマスを生産するため、および/または物質を製造するためにヒトによって栽培される植物である。本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物は、特に好ましくは、トウモロコシ、コメ、コムギ、ライムギ、カラスムギ、オオムギ、マニオック(manioc)、ジャガイモ、トマト、スイッチグラス(Panicum virgatum)、サゴ、リョクトウ、エンドウマメ、モロコシ、ニンジン、ナス、ダイコン、アブラナ、アルファルファ、ダイズ、ピーナッツ、キュウリ、カボチャ、メロン、リーキ、ニンニク、キャベツ、ホウレンソウ、サツマイモ、アスパラガス、ズッキーニ、レタス、アーティチョーク、スイートコーン、パースニップ、バラモンジン、キクイモ(Jerusalem artichoke)、バナナ、サトウダイコン、サトウキビ、ビートの根(beetroot)、ブロッコリー、キャベツ、タマネギ、ビート、タンポポ、イチゴ、リンゴ、アンズ、プラム、モモ、ブドウの木、カリフラワー、セロリ、ピーマン、スイード、ダイオウである。それらは、好ましくは、トウモロコシ、コメ、コムギ、ライムギ、カラスムギまたはオオムギ植物、非常に特に好ましくはコメ、トマトまたはジャガイモ植物である。
【0106】
本発明の関連で、用語「ジャガイモ植物」または「ジャガイモ」とは、ナス(Solanum)属の植物種、特にナス属の塊茎を作る種および特にSolanum tuberosumを意味すると理解されるものとする。
【0107】
本発明の関連で、用語「トマト植物」または「トマト」とは、トマト(Lycopersicon)属の植物種、特にLycopersicon esculentumを意味すると理解されるものとする。
【0108】
本発明の関連で、用語「コメ植物」とは、イネ(Oryza)属の植物種、特に商業的目的で農業によって栽培されるイネ属の植物種、特に好ましくはOryza sativaを意味すると理解されるものとする。
【0109】
上記のように、本発明の植物細胞または本発明の植物は、グルコサミノグリカン、例えばコンドロイチン、ヒアルロナン、キチン、ヘパリン(ヘパロサン)を生産するために適している。その理由は、それらが、上記グルコサミノグリカンの触媒作用に関与する酵素の多量の基質を含有するからである。
【0110】
したがって、本発明は、さらにまた、グルコサミノグリカン、好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも500μgのグルコサミノグリカン、より好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも1500μgのグルコサミノグリカン、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも3500μgのグルコサミノグリカン、非常に特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも4000μgのグルコサミノグリカンおよび特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり少なくとも5500μgのグルコサミノグリカンを合成する植物細胞または植物に関する。この関連で、該グルコサミノグリカンは、好ましくはコンドロイチン、ヒアルロナン、キチンまたはヘパリン(ヘパロサン)であり、特に好ましくはヒアルロナンである。
【0111】
本発明の植物細胞または本発明の植物は、好ましくは、新鮮重量1グラムあたり多くとも25 000μmol、好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも20 000μmol、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも15 000μmol、非常に特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも10 000μmol、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも6500μmolのグルコサミノグリカン含量を有する。
【0112】
グルコサミノグリカンを合成する本発明の植物細胞または本発明の植物は、例えば、GFATの活性を有するタンパク質をコードし、かつ、グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を植物細胞に導入することによって生産することができる。
【0113】
したがって、本発明はまた、GFAT−2または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする第一の外来性核酸分子およびグルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする第二の外来性核酸分子を含有する遺伝子改変植物細胞または遺伝子改変植物に関する。
【0114】
本発明の関連で、用語「グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質」とは、UDP−GlcNAcまたはUDP−N−アセチルガラクトサミン、UDP−GlcNAcのエピマーを、グルコサミノグリカンを合成するための基質として使用するタンパク質を意味すると理解されるものとする。グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質は、好ましくはヒアルロナンシンターゼ、コンドロイチンシンターゼ、ヘパロサン/ヘパリンシンターゼ、ケラタンシンターゼまたはキチンシンターゼである。
【0115】
グルコサミノグリカンシンターゼをコードする核酸分子および対応するタンパク質配列は当業者に公知であり、例えばウイルス(例えばパラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1, EMBL U42580.3, PB42580, US 20030235893)由来のヒアルロナンシンターゼとして、例えば哺乳類(例えばヒト, WO 03 012099, US 2005048604, US 2006052335)、細菌(例えば大腸菌, US2003109693, EP 1283259, パスツレラ・マルチコダ(Pasteurella multicoda)US 2003104601)由来のコンドロイチンシンターゼとして、例えば細菌(例えばアゾリゾビウム・カウリノダンス(Azorhizobium caulinodans)EMBLCDS:AAB51164)、真菌(例えばケトミウム・グロボサム(Chaetomium globosum)EMBLCDS:EAQ92361, アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)EMBL AB000125, アルスロデルマ・ベンハミエ(Arthroderma benhamiae)EMBLCDS:BAB32692 アカパンカビ(Neurospora crassa)EMBL M73437.4)、昆虫(例えばネッタイシマカ(Aedes aegypti)EMBLCDS:EAT46081, トリボリウム・カスタネウム(Tribolium castaneum)EMBLCDS: AAQ55061)、線虫(例えばイヌ糸状虫(Dirofilaria immitis)EMBL AF288618, シノラブディス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)EMBL AY874871)、ウイルス(例えばクロレラウイルスEMBLCDS: BAB83509, パラメシウム・ブルサリア・クロレラウイルスCVK2 EMBLCDS: BAE48153)由来のキチンシンターゼとして、例えば細菌(例えばパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)EMBL AF425591, AF439804, US 20030099967, 大腸菌X77617.1)由来のヘパリン/ヘパロサンシンターゼとして報告されている。
【0116】
グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする第二の外来性核酸分子は、好ましくは、組換え核酸分子である。組換え核酸分子の好ましい実施態様はすでに記載した。ここでは、対応する様式で該実施態様を使用するものとする。
【0117】
別の好ましい実施態様では、グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする第二の外来性核酸分子は、親生物のグルコサミノグリカンシンターゼの活性を有する該タンパク質をコードする核酸分子のコドンと比較してコドンが改変されている点を特徴とする。特に好ましくは、グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子のコドンを、それらが、そのゲノムに該核酸分子が組み込まれるか、あるいは組み込まれる予定の植物細胞または植物のコドンの使用頻度に適合するように改変する。
【0118】
核酸分子のコドンの改変に関して、GFAT−2または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子について記載された内容は、ここで、対応する様式で適用することができる。
【0119】
本発明は、さらにまた、本発明の植物細胞を含有する植物に関する。そのような植物は本発明の植物細胞から再生することによって作製してよい。
【0120】
本発明はまた、本発明の植物細胞を含有する本発明の植物の部分に関する。
【0121】
本発明の関連で、用語「植物部分」または「植物の部分」とは、例えば、食品または飼料の生産に使用されるプロセス可能な植物の部分、工業プロセス(例えばグルコサミン誘導体またはグルコサミノグリカンを単離するための工業プロセス)のための原材料供給源として、医薬品を製造するための原材料供給源として、または化粧品を製造するための原材料供給源として使用されるプロセス可能な植物の部分を意味すると理解されるものとする。
【0122】
本発明の関連で、用語「植物部分」または「植物の部分」とは、さらにまた、例えば、ヒトの食物として役立つか、あるいは動物飼料として使用される消費可能な植物部分を意味すると理解されるものとする。
【0123】
好ましい「植物部分」または「植物の部分」は、果実、貯蔵根および他の根、花、芽、新芽(shoots)、葉または茎であり、好ましくは種子、果実、穀粒または塊茎である。
【0124】
本発明はまた、本発明の植物の繁殖用材料(propagation material)に関する。好ましくは、本発明の繁殖用材料は、本発明の植物細胞、特に好ましくは本発明の遺伝子改変植物細胞を含有する。
【0125】
ここで、用語「繁殖用材料」には、無性または生殖経路で子孫を生むために適している植物の成分が含まれる。栄養繁殖に適しているのは、例えば切り枝、カルス培養物、根茎または塊茎である。他の繁殖用材料には、例えば果実、種子、穀粒、実生、細胞培養物、等が含まれる。該繁殖用材料は、好ましくは、塊茎、果実、穀粒または種子の形式をとる。
【0126】
本発明の別の利点は、本発明の植物の部分が、既知の植物より高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することである。したがって、本発明の植物は、食品/飼料としての直接使用または(例えば骨関節炎予防のための)予防または治療効果を有する食品/飼料の製造に特に適している。本発明の植物は、既知の植物と比較して、より高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有するため、増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する食品/飼料の製造に使用される本発明の植物の回収可能な部分、繁殖用材料、プロセス可能な部分または消費可能な部分の量を減らすことができる。本発明の遺伝子改変植物の消費可能な部分が、例えばいわゆる栄養補給食品として直接消費される場合、少量の物質を消費するだけで、正の効果が達成される可能性がある。このことは、とりわけ動物飼料の生産に、特に重要であるかもしれない。その理由は、あまりに高含量の植物成分を有する動物飼料は種々の動物種の飼料として適さないからである。さらにまた、本発明の植物細胞または本発明の植物は、完全菜食主義者が、あるいは清浄な食物を製造するためにそれらを使用することもできる利点を有する。ゆえに、高含量のN−アセチル化グルコサミンを有する食物は、上記生活様式にしたがっている人々にさえ投与することが可能である。
【0127】
N−アセチルグルコサミンはビフィズス菌の成長に対する促進効果を有することが知られている(Liepkeら、2002, Eur. J. Biochem. 269, 712-718)。さらにまた、N−アセチルグルコサミンが魚のはらわた由来の乳酸桿菌(例えばカゼイ乳酸桿菌亜種パラカゼイ(Lactobacillus casei subspecies paracasei))の基質として働くことが示されている(Adolfo Bucio Galindo, 2004, Proefschrift, Wageningen Universiteit, ISBN 90-5808-943-6)。したがって、N−アセチルグルコサミンはプロバイオティック細菌に対して正の効果を有する。本発明の植物細胞、本発明の植物または本発明の植物の部分は高含量のN−アセチルグルコサミンを有するため、それらは、結果的に、プロバイオティック細菌の成長に対して正の効果を有し、ゆえにヒトおよび動物用のプレバイオティック(prebiotic)食品/飼料としての使用に適しているはずであろう。
【0128】
本発明は、さらにまた、遺伝子改変植物を生産するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
a) グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を植物細胞に導入する工程;
b) 工程a)にしたがって取得された植物細胞から植物を再生する工程;
c) 適切であれば、工程b)に記載の植物を用いて別の植物を作製する工程。
【0129】
本発明は、さらにまた、グルコサミノグリカンを合成する植物を生産するための方法に関し、該方法では:
a) 植物細胞を遺伝子改変し、その場合、該遺伝子改変は以下の工程i〜iiを任意の順序で含むか、あるいは以下の工程i〜iiの任意の組み合わせを、個別に、あるいは同時に実行する:
i) グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を植物細胞に導入する工程;
ii) グルコサミノグリカンシンターゼをコードする外来性核酸分子を植物細胞に導入する工程;
b) 以下の工程に記載の遺伝子改変を含む植物細胞から植物を再生する:
i) a)i;
ii) a)ii;
iii) a)iおよびa)ii;
c) 工程:
i) b)iに記載の植物の植物細胞に工程a)iiに記載の遺伝子改変を導入する工程;
ii) b)iiに記載の植物の植物細胞に工程a)iに記載の遺伝子改変を導入する工程;
そして植物を再生する;
d) 適切であれば、工程b)iiiまたはc)iまたはc)iiのいずれかにしたがって取得された植物を用いて別の植物を作製する。
【0130】
遺伝子改変植物を生産するための方法の工程a)にしたがって、またはグルコサミノグリカンを合成する植物を生産するための方法の工程a)またはc)にしたがって、植物細胞に外来性核酸分子を導入することに関して、この導入は、原理的に、外来性核酸分子を植物細胞または植物に組み込むために適した核酸分子の任意のタイプの導入であってよい。そのような方法はすでに上で記載されている。ここでは、対応する様式で該方法を適用することができる。
【0131】
遺伝子改変植物を生産するための方法の工程a)に記載の、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子に関して、またはグルコサミノグリカンを合成する植物を生産するための方法の工程a)ii)に記載の、グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子に関して、それぞれの核酸分子の種々の可能な実施態様は本発明の植物細胞および本発明の植物の関連ですでに記載されている。既述のすべてのこれらの好ましい実施態様は、上記本発明の方法を実行するために使用することもできる。
【0132】
本発明の方法の工程b)および/またはc)に記載の方法に基づく植物の再生は、当業者に公知の方法(例えば「Plant Cell Culture Protocols」, 1999, edt. by R.D. Hall, Humana Press, ISBN 0-89603-549-2に記載の方法)を使用して実行することができる。
【0133】
本発明の方法の工程c)またはd)に記載の方法に基づく別の植物の作製は、例えば栄養繁殖によって(例えば切り枝、塊茎によって、またはカルス培養および無傷の植物の再生によって)または生殖による繁殖によって実行することができる。この関連で、生殖による繁殖は、好ましくは、制御条件下で生じる。すなわち、特定の特性を有する選択植物を互いにハイブリッド形成させ、繁殖させる。該選択は、好ましくは、工程b)またはd)に記載の方法に基づいて、該植物が、工程a)で導入される改変を有するように行われる。
【0134】
別の好ましい実施態様では、遺伝子改変植物を生産するための本発明の方法を、本発明の植物を生産するために使用する。
【0135】
本発明はまた、遺伝子改変植物を製造するための本発明の方法によって取得可能な植物を提供する。
【0136】
本発明は、さらにまた、グルコサミノグリカンを生産するための方法であって、本発明の遺伝子改変植物細胞から、本発明の遺伝子改変植物から、本発明の繁殖用材料、本発明の植物の部分または、グルコサミノグリカンを合成する遺伝子改変植物を製造するための本発明の方法によって取得可能な植物から、グルコサミノグリカンを抽出する工程を含む方法に関する。本発明の方法は、好ましくは、コンドロイチン、ヒアルロナン、キチンまたはヘパリン(ヘパロサン)を生産するために使用され、特に好ましくはヒアルロナンを生産するために使用される。
【0137】
好ましくは、そのような方法はまた、グルコサミノグリカンの抽出前に、培養された本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖用材料、本発明の植物の部分を回収する工程および特に好ましくは、さらにまた、回収前に、本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物を培養する工程を含む。
【0138】
細菌または動物組織と対照的に、植物組織は、グルコサミノグリカンを分解する酵素を全く含有しない。したがって、比較的単純な方法を使用して、植物組織からグルコサミノグリカンを抽出することが可能である。所望であれば、当業者に公知の方法、例えばエタノールでの繰り返しの沈殿を使用して、グルコサミノグリカンを含有する植物細胞または組織の水性抽出物をさらに精製することができる。例えばヒアルロナンを精製するための好ましい方法は一般的方法項目5の下に記載される。
【0139】
本発明はまた、本発明の遺伝子改変植物細胞、本発明の遺伝子改変植物、本発明の繁殖用材料、本発明の植物の部分またはグルコサミノグリカンを合成する遺伝子改変植物を生産するための本発明の方法によって取得可能な植物の使用であって、グルコサミノグリカンを生産するための使用を提供する。
【0140】
本発明はまた、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の使用であって、遺伝子改変植物を製造するための使用を提供する。
【0141】
本発明は、さらにまた、本発明の遺伝子改変植物細胞を含む組成物に関する。
【0142】
ここで、該植物細胞が無傷であるか、それらが、例えばプロセシングによって破壊されているためにもはや無傷でないかは重要でない。該組成物は、好ましくは、食品、食品サプリメントまたは飼料、医薬品または化粧品である。
【0143】
本発明は、好ましくは、組換え核酸分子を含む本発明の組成物を提供し、該組換え核酸分子は、それらが、GFAT−2の酵素活性を有するタンパク質または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む点を特徴とする。
【0144】
植物細胞または植物のゲノムに外来性核酸分子が安定に組み込まれると、該植物細胞または植物のゲノムへの組み込みの結果、該外来性核酸分子にゲノム植物核酸配列が隣接する。したがって、好ましい実施態様では、本発明の組成物は、本発明の組成物中に存在する組換え核酸分子にゲノム植物核酸配列が隣接している点を特徴とする。
【0145】
ここで、ゲノム植物核酸配列は、組成物の製造に使用される植物細胞または植物のゲノム中に天然に存在する任意の配列であってよい。本発明の組成物中に存在する該組換え核酸分子は、当業者に公知の方法、例えばハイブリダイゼーションベースの方法または、好ましくは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)ベースの方法を使用して実証することができる。
【0146】
好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも0.05%、好ましくは少なくとも0.1%、特に好ましくは少なくとも0.5%、非常に特に好ましくは少なくとも1.0%のN−アセチル化グルコサミン誘導体を含む。
【0147】
好ましくは、本発明の組成物は、多くとも10%、好ましくは多くとも5%、特に好ましくは多くとも3%、非常に特に好ましくは多くとも2%のN−アセチル化グルコサミン誘導体を含む。
【0148】
本発明の組成物は、それらが、遺伝子改変されていない植物細胞を含む組成物と比較して、増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量または増加したグルコサミノグリカン含量を有する利点を提供する。N−アセチルグルコサミンはビフィズス菌の成長に対する促進効果を有する(Liepkeら、2002, Eur. J. Biochem. 269, 712-718)。さらにまた、N−アセチルグルコサミンが魚のはらわた由来の乳酸桿菌(例えばカゼイ乳酸桿菌亜種パラカゼイ)の基質として働くことが示されている(Adolfo Bucio Galindo, 2004, Proefschrift, Wageningen Universiteit, ISBN 90-5808-943-6)。したがって、N−アセチルグルコサミンはプロバイオティック細菌に対して正の効果を有する。本発明の組成物は、増加したN−アセチルグルコサミン含量を有するため、プロバイオティック細菌の成長に対して正の効果を有するはずであろう。
【0149】
本発明は、さらにまた、本発明の植物細胞、本発明の植物、本発明の繁殖用材料、本発明の植物の部分または遺伝子改変植物を生産するための本発明の方法によって取得可能な植物を使用して、本発明の組成物を製造するための方法を提供する。本発明の組成物を製造するための方法は、好ましくは、食品、飼料または食品サプリメントを生産するための方法である。
【0150】
食品、飼料、食品サプリメント、医薬品または化粧品を生産するための方法は当業者に公知であり、とりわけ、それらに排他的に限定されるわけではないが、本発明の植物または本発明の植物部分を細かく砕くか、あるいは粉砕する工程を含む。
【0151】
本発明はまた、本発明の組成物を製造するための方法によって取得可能な組成物を提供する。
【0152】
本発明はまた、本発明の遺伝子改変植物細胞または本発明の遺伝子改変植物の使用であって、本発明の組成物を製造するための使用に関する。
【0153】
本発明の組成物の好ましい実施態様は穀粉である。
【0154】
植物の部分は穀粉に加工されることが多い。穀粉の調製に使用される植物の部分の例は、例えば、ジャガイモ植物の塊茎および穀類植物の穀粒である。穀類植物から穀粉を生産するために、これらの植物の胚乳含有穀粒を砕いて、ふるいにかける。胚乳を全く含有しないが、例えば塊茎または貯蔵根を含有する他の植物の事例では、該植物の関連部分を細かく砕き、乾燥させ、その後に粉砕することによって穀粉を生産することが多い。本発明の植物細胞および本発明の植物は、既知の植物細胞または植物と比較して、増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体またはグルコサミノグリカンの含量を有する。したがって、本発明の植物細胞、本発明の植物、本発明の繁殖用材料または本発明の植物の部分から調製される穀粉は、増加した割合のN−アセチル化グルコサミン誘導体またはグルコサミノグリカンを同様に含有する。
【0155】
したがって、本発明は、さらにまた、本発明の植物細胞、本発明の植物から、あるいは本発明の植物の部分から取得可能な穀粉に関する。穀粉を生産するための本発明の植物の好ましい部分は塊茎および胚乳含有穀粒である。本発明の関連で、(系統的)イネ科(Poaceae)の植物の穀粒、特に好ましくはトウモロコシ、コメまたはコムギ植物に由来する穀粒が特に好ましい。
【0156】
本発明は、さらにまた、少なくとも10μmol/グラム、好ましくは少なくとも20μmol/グラム、より好ましくは少なくとも25μmol/グラム、特に好ましくは少なくとも30μmol/グラム、非常に特に好ましくは少なくとも35μmol/グラムおよび特に好ましくは少なくとも40μmol/グラムのN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する本発明の穀粉に関する。
【0157】
本発明の穀粉は、好ましくは、新鮮重量1グラムあたり多くとも250μmol、好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも200μmol、特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも150μmol、非常に特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも100μmolおよび特に好ましくは新鮮重量1グラムあたり多くとも50μmolのN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する。
【0158】
本発明の関連で、用語「穀粉(flour)」とは、植物または植物部分を粉砕することによって取得される粉体を意味すると理解されるものとする。適切であれば、該植物または植物部分を粉砕前に乾燥させ、粉砕後、さらに細かく砕き、および/またはふるいにかける。
【0159】
慣用の穀粉と比較して、本発明の穀粉は、それらが、動物または真菌の原材料供給源から取得されたN−アセチル化グルコサミン誘導体またはグルコサミノグリカンを該穀粉に加えることを要さずに、増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体またはグルコサミノグリカン含量を有する食品、例えば焼き菓子の生産に使用できる利点を有する。上記原材料供給源から単離されるN−アセチル化グルコサミン誘導体またはグルコサミノグリカンの使用についての不都合、例えば、それらが病原体またはアレルゲン物質を含有するリスクは、さらに上ですでに記載されている。
【0160】
本発明は、さらにまた、穀粉を生産するための方法であって、本発明の植物細胞、本発明の植物または本発明の植物の部分を粉砕する工程を含む方法を提供する。
【0161】
穀粉は植物の部分を粉砕することによって生産することができる。穀粉の生産方法は当業者に公知である。穀粉を生産するための方法は、好ましくは、栽培された本発明の植物または本発明の植物の部分および/または本発明の繁殖用材料を回収する工程および特に好ましくは、さらにまた、回収前に本発明の植物を栽培する工程をさらに含む。
【0162】
本発明の別の実施態様では、穀粉を生産するための方法は、本発明の植物、本発明の植物の部分または本発明の繁殖用材料を処理する工程を含む。
【0163】
ここで、処理は、例えば、加熱処理および/または乾燥であってよい。例えば、貯蔵根、塊茎由来、例えばジャガイモ塊茎由来の穀粉を生産する場合、粉砕前に、加熱処理、その後の熱処理済み材料の乾燥を使用する。また、本発明の植物、本発明の植物の部分または本発明の繁殖用材料を細かく砕くことは、本発明の意味での処理を構成する。粉砕前の植物組織の除去、例えば穀粒からの殻の除去もまた、本発明の意味での粉砕前の処理を構成する。
【0164】
本発明の別の実施態様では、穀粉を生産するための方法は、粉砕後の粉砕済み材料の処理を含む。
【0165】
ここで、該粉砕済み材料を、例えば、粉砕後にふるいにかけて、例えば異なるタイプの穀粉を生産してよい。
【0166】
本発明は、さらにまた、本発明の植物細胞、本発明の植物、本発明の植物の部分または本発明の繁殖用材料の使用であって、穀粉を生産するための使用を提供する。
【0167】
配列の説明
配列番号:1:パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列。
配列番号:2:パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のヒアルロナンシンターゼのアミノ酸配列。上記アミノ酸配列は配列番号:1から導き出すことができる。
配列番号:3:パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のヒアルロナンシンターゼをコードする合成核酸配列。上記配列のコドンは、それらが植物細胞中のコドンの使用に適合するように合成した。上記核酸配列は、配列番号:2の下に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
配列番号:4:マウス由来のGFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号:5:マウス由来のGFAT−1の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。上記アミノ酸配列は配列番号:4から導き出すことができる。
配列番号:6:マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号:7:マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。上記アミノ酸配列は配列番号:6から導き出すことができる。
配列番号:8:大腸菌由来の細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号:9:大腸菌由来のGFATの活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。上記アミノ酸配列は配列番号:8から導き出すことができる。
配列番号:10:大腸菌由来のGFATの活性を有するタンパク質をコードする合成核酸配列。上記配列のコドンは、それらが植物細胞中のコドンの使用に適合するように合成した。上記核酸配列は、配列番号:9の下に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
配列番号:11:パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列。
配列番号:12:パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のアミノ酸配列。上記アミノ酸配列は配列番号:11から導き出すことができる。
配列番号:13:パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする合成核酸配列。上記配列のコドンは、それらが植物細胞中のコドンの使用に適合するように合成した。上記核酸配列は、配列番号:12の下に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。
配列番号:14:実施例6で使用された合成オリゴヌクレオチド。
配列番号:15:実施例6で使用された合成オリゴヌクレオチド。
配列番号:16:実施例15で使用された合成オリゴヌクレオチド。
配列番号:17:実施例15で使用された合成オリゴヌクレオチド。
【0168】
配列データベースに関する上記核酸分子およびアミノ酸配列のアクセッション番号を含むすべての引用刊行物の内容は、参照により、本出願の説明に組み入れられる。
【0169】
本発明と組み合わせて使用できる方法を以下に記載する。これらの方法は具体的な実施態様である;しかし、本発明はこれらの方法に限定されない。本発明は、上記方法を改変することによって、および/または個々の方法または方法の部分を代替法または方法の代替部分で置き換えることによって同一の様式で実行できることが当業者に公知である。
【0170】
一般的方法
1.ジャガイモ植物の形質転換
アグロバクテリウムを活用してジャガイモ植物を形質転換した。該形質転換はRocha-Sosaら(EMBO J. 8, (1989), 23-29)に記載のように行った。
【0171】
2.トマト植物の形質転換
US 5,565,347に記載の方法にしたがって、アグロバクテリウムを活用してトマト植物を形質転換した。
【0172】
3.コメ植物の形質転換
Hieiら(1994, Plant Journal 6(2), 271-282)に記載の方法にしたがって、コメ植物を形質転換した。
【0173】
4.N−アセチル化グルコサミン含量の決定
還元末端を有するN−アセチル化グルコサミン誘導体は、ElsonおよびMorgan(1933, J Biochem. 27, 1824)の方法およびReissigら(1955, Biol. Chem. 217, 959-966)の改良された比色定量法と同様に決定した。該比色定量法は色素原III(Muckenschnabelら、1998, Cancer Letters 131, 13-20)とp−ジメチルアミノベンズアルデヒド(DMAB、エールリッヒ試薬)の反応に基づき、該反応によって赤色生成物が生じ、その濃度を光度測定によって決定することができる。
【0174】
a)植物材料の精密検査
まず、回収された植物材料を細かく砕いた。使用された植物材料の量に基づいて、細かく砕く作業は、実験室の振動ボールミル(MM200(Retsch, Germany製))で30Hzで30秒間、またはWarringブレンダーを最大スピードで約30秒間使用して実行した。一般に、細かく砕かれた植物材料(例えば葉、塊茎またはコメ穀粒)0.5gを、7%過塩素酸、5mM EGTAからなる溶液1mlと混合し、氷上で20分間インキュベートした。次いで該混合物を遠心分離した(16 000xgで5分、4℃)。遠心分離後に得られた上清を取り出し、5M KOH、1M TEAからなる溶液(調節済みpH7.0)を使用して中和し、次いで再び遠心分離した(16 000xgで5分、4℃)。遠心分離の終了後に、上清を取り出し、その容量を決定し、b)の下に記載される方法に使用して、還元末端を有するN−アセチル化グルコサミン誘導体の量を決定した。
【0175】
b)還元末端を有するN−アセチル化グルコサミン誘導体含量の決定
0.8M Kからなる溶液20μl(pH9.6)をa)の下に記載される方法によって得られる植物抽出物100μlに加え、十分に混合した後、95℃で5分間加熱する。混合物を室温に冷却した後、0.7mlのエールリッヒ試薬(濃HCl 12.5 ml中のDMAB 10g、氷酢酸87.5mlからなり、氷酢酸で1:10希釈されている溶液)を混合物に加え、該混合物を再び混合し、37℃でさらに30分間インキュベートする。次いで該混合物を16 000xgで1分間遠心分離し、次いで遠心分離後に得られる上清の光学濃度(OD)を光度計で585nmで決定する。
【0176】
c)N−アセチル化グルコサミン誘導体の濃度の算出
まず、規定量のN−アセチルグルコサミン6−リン酸を使用して検量線を確立した。この目的を達成するために、b)の下に記載される方法にしたがって、0mM、0.1mM、0.5mM、1mM、5mMおよび10mMのN−アセチルグルコサミン6−リン酸を含む溶液のODを決定した。
【0177】
Microsoft Excelで、 式:y=ax+bx+cまたはy=x+px+qの二次多項式の傾向/回帰直線を個々の濃度に関して測定された点に対して近似することによって検量線を確立した。該値を算出するために、取得された等式をxに関して解き、x=−p/2−平方根(p/4−q)(式中、p=b/a、q=(c−y)/aおよびyは未知のサンプルの測定ODである)を得た。使用された新鮮重量、使用された容量を配慮し、使用された任意の希釈因子を配慮することによって、(測定された溶液の)μmolまたは新鮮重量1gあたりのμmol単位で含量を算出した。
【0178】
5.ヒアルロナンを例として使用する植物組織からのグルコサミノグリカンの単離
植物組織中のヒアルロナンの存在を検出し、ヒアルロナン含量を決定するために、植物材料を以下のように精密検査した:200μlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)を約0.3gの葉または塊茎材料に加え、実験室の振動ボールミル(MM200(Retsch, Germany製))(30Hzで30秒)で該混合物を細かく砕いた。次いでさらに800μlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)を加え、該混合物を(例えばボルテックスミキサーを使用して)十分に混合した。16 000xgで5分間遠心分離することによって上清から細胞片および不溶性成分を分離した。得られた上清の一定分量を使用して、ヒアルロナンの量を決定した。
【0179】
トマト果実の事例では、各事例で熟したトマト果実全体を精密検査した。この目的を達成するために、トマト果実の重量を決定し、Warringブレンダーで少量の水を用いてトマトを細かく砕き、細かく砕かれたサンプルを3600xgで30分間の遠心分離によって細胞片から分離し、抽出物の容量を決定した。得られた上清の一定分量を使用して、ヒアルロナンの量を決定した。
【0180】
6.ヒアルロナンを例として使用するグルコサミノグリカンの精製
100mlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)を加えた後、約100グラムの植物材料をWarringブレンダーで最大速度で約30秒間細かく砕いた。植物の比較的大きい部分、例えば塊茎またはトマト果実を単離に使用する場合、それらを前もってカットして約1cmのサイズの小片にした。次いで茶こし(tea sieve)を使用して細胞片を除去した。分離された細胞片を300mlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)にもう一度懸濁し、茶こしを使用して再び除去した。得られた2懸濁液(100ml+300ml)をまとめ、13 000xgで15分間遠心分離した。得られた遠心分離上清にNaClを1%の終濃度に達するまで加えた。NaClが溶解した後、2倍容量のエタノールを加え、次いで十分に混合し、−20℃で一晩インキュベートすることによって沈殿させた。次いで混合物を13 000xgで15分間遠心分離した。この遠心分離後に得られた沈降沈殿物を100mlのバッファー(50mM TrisHCl、pH8、1mM CaCl)に溶解し、次いでプロテイナーゼKを加え、終濃度を100μg/mlにし、該溶液を42℃で2時間インキュベートした。その後、95℃10分間インキュベートした。もう一度、この溶液にNaClを1%の終濃度に達するまで加えた。NaClが溶解した後、2倍容量のエタノールを加え、十分に混合し、−20℃で約96時間インキュベートすることによってさらに沈殿させた。その後、13 000xgで15分間遠心分離した。この遠心分離後に得られた沈降沈殿物を30mlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)に溶解し、もう一度、NaClを加えて終濃度を1%にした。2倍容量のエタノールを加え、十分に混合し、−20℃で一晩インキュベートすることによって、さらに沈殿させた。続く13 000xgで15分間の遠心分離後に得られた沈殿物を20mlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)に溶解した。
【0181】
遠心ろ過によってさらに精製を実行した。この目的を達成するために、各事例で5mlの溶解済み沈殿物をメンブレンフィルター(CentriconAmicon、孔幅(pore width)10 000NMWL、Prod. No. UCF8 010 96)にアプライし、該サンプルを2200xgで遠心分離し、該フィルター上に約3mlの溶液しか残らないようにした。次いでさらに2回、各事例で3mlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)をメンブレン上の溶液に加え、各事例で同一条件下で再遠心分離し、終了時点でフィルター上に約3mlの溶液しか残らないようにした。遠心ろ過後にメンブレン上に依然として存在する溶液を取り出し、約1.5mlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)でメンブレンを繰り返し(3〜5回)すすいだ。メンブレン上に依然として存在していたすべての溶液およびすすぎから得られた溶液をまとめ、NaClを1%の終濃度まで加え、NaClが溶解した後、2倍容量のエタノールを加え、該サンプルを混合し、−20℃で一晩保存することによって沈殿物を得た。続く13 000xgで15分間の遠心分離後に得られた沈殿物を4mlの水(脱塩済み、伝導率=18MΩ)に溶解し、次いで凍結乾燥した(0.37mbarの圧力下で24時間、凍結乾燥装置Christ Alpha 1-4(Christ, Osterode, Germany))。
【0182】
7.ヒアルロナンの検出およびヒアルロナン含量の決定
ヒアルロナンは、市販の検査(ヒアルロン酸(HA)検査キット(Corgenix, Inc., Colorado, USA, Prod. No. 029-001))を製造元の指示書にしたがって使用して検出した。ここに該指示書は参照により本説明に組み入れられる。検査原理は、ヒアルロナンに特異的に結合するタンパク質(HABP)の有効性に基づく。該検査はELISAと同様に実行する。その場合、呈色反応によって試験サンプル中のヒアルロナン含量が示される。したがって、ヒアルロナンの定量では、測定対象のサンプルを、規定の限界内である濃度で使用すべきであろう(例えば:限界を超えているか、あるいは限界に達していないかに応じて、目的のサンプルを希釈するか、あるいは植物組織からヒアルロナンを抽出するために少量の水しか使用しない)。
【0183】
8.GFATの活性の決定
GFATの活性を有するタンパク質の活性はRachelら(1996, J. Bacteriol. 178 (8), 2320-2327)に記載のように決定する。
【0184】
タンパク質がGFAT−1またはGFAT−2の活性を有するかどうかを識別するために、Huら(2004, J. Biol. Chem. 279 (29), 29988-29993)に記載の方法を使用する。
【0185】
9.質量分析によるN−アセチル化グルコサミン誘導体の検出
質量分析によってN−アセチル化グルコサミン誘導体を検出するために、一般的方法項目4a)の下に記載のように植物組織を精密検査した。可能な限り塩を含まない抽出物を取得するために、それぞれのサンプルを、質量分析による検査前に、まず−20℃で凍結し、遠心分離(室温で16 000xg)中に解凍した。測定のために、1:1(容量/容量)の割合のメタノール:水混合物で上清を1:20希釈した。
【0186】
弱いシグナル(ピーク)の検出感度を増加させるために、3種の異なる検出器感度でMSスペクトルを記録した。しかし、この事例では検出器の応答はもはや線形ではない。このことは、異なる代謝産物のシグナル強度(ピーク領域)を比較する場合に留意し、考慮すべきであろう。測定値が互いに比較できるよう保証するために、個々のサンプルが同一の検出器設定で同一のシグナル強度(cps単位、毎秒カウント)をもたらすよう保証した。
【0187】
異なる代謝産物に割り当てられた、得られたシグナルの領域(ピーク領域)は、六炭糖(m/z=179)のピーク領域と比較して%単位で記載される。異なるサンプルのシグナル強度(ピーク領域)の比を使用して、目的のサンプル中の六炭糖の濃度に対する、対応するN−アセチル化グルコサミン誘導体の濃度比を推測することができる。
【0188】
個々のサンプルおよび個々の対応する参照物質(グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン6−リン酸 グルコサミン1−リン酸、N−アセチルグルコサミン6−リン酸、N−アセチルグルコサミン1−リン酸、UDP−N−アセチルグルコサミン)のMS−MS測定を並行して実行した。このように、領域の決定に使用されるシグナル(ピーク)が、特定の代謝産物または同一の質量を有する特定の異性体代謝産物によって排他的に生成されたシグナルであるかどうか、または目的のシグナルが、対応する代謝産物または同一の質量を有する対応する特定の異性体代謝産物に部分的にしか割り当てることができないかどうかを評価することが可能である。
【0189】
ナノエレクトロスプレー源を内蔵したQ-STAR Pulsar iハイブリッド質量分析計(Applied Biosystems)を使用して、ネガティブモードでMSおよびMS−MSスペクトルを記録した。検出されるイオンは、主に、単一電荷を有する脱プロトン化イオンであった。
【0190】
測定は以下の条件下で実行した:
質量範囲50〜700Da。
検出器感度:2000、2050および2100。
【0191】
各3種の検出器設定に関して、サンプルが類似のシグナル強度(cps単位、毎秒カウント)を有することを保証した。
【0192】
実施例
1.マウス由来のGFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の取得
GFAT−1(グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼまたはグルコサミン6−リン酸シンターゼ、EC 2.6.1.16)の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列はBioCat GmbH, Heidelberg, Germanyから購入した(Art. No. MMM1013-65346, cDNAクローン MGC:58262, IMAGE:6742987)。これは、I.M.A.G.E.コンソーシアム(http://image.llnl.gov)が生産し、BioCat GmbHが販売しているクローンである。GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードするcDNAをベクターpCMV Sport 6(Invitrogen)にクローニングした。該プラスミドをIC 365−256と命名した。Mus musculus由来のGFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列は配列番号:4の下に記載されている。
【0193】
以後のクローニング工程を容易にするために、Xho IおよびEco RVを使用してプラスミドIC 365−256からGFAT−1のコード配列を切り取り、プラスミドpME9にクローニングした。該プラスミドは同制限酵素でカットされていた。得られたプラスミドをIC 367−256と命名した。
【0194】
プラスミドpME9はStratagene製のpBlueSkriptベクター(Prod. No. 212207)であり、その場合、上記pBlueSkriptベクターと対照的に、pME9は、改変されたマルチクローニング部位(MCS)を含有し、該部位は、pBlueSkriptベクターに存在するMCSに加えて、MCSの両末端に追加のPac I制限部位を有する。
【0195】
2.マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の取得
GFAT−2(グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼまたはグルコサミン6−リン酸シンターゼ、EC 2.6.1.16)の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列はInvitrogenから購入した(クローンID 4167189, cDNAクローン MGC:18324, IMAGE:4167189)。これは、I.M.A.G.E.コンソーシアム(http://image.llnl.gov)が生産し、Invitrogenが販売しているクローンである。GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするcDNAをベクターpCMV Sport 6(Invitrogen)にクローニングした。該プラスミドをIC 369−256と命名した。Mus musculus 由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列は配列番号:6の下に記載されている。
【0196】
3.大腸菌(Escherichia coli)由来の細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列の合成
Entelechon GmbHが合成した、大腸菌由来の細菌GFAT(グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼまたはグルコサミン6−リン酸シンターゼ、glms、EC 2.6.1.16)の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列をベクターpCR4Topo(Invitrogen)(Prod. No. K4510-20)にクローニングした。得られたプラスミドをIC 373−256と命名した。大腸菌由来の細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする合成核酸配列は配列番号:10の下に記載されている。大腸菌から最初に単離された対応する核酸配列は配列番号:8の下に記載されている。
【0197】
4.パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子の合成
Medigenomix GmbH(Munich, Germany)が合成した、パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のヒアルロナンシンターゼをコードする核酸配列をベクターpCR2.1(Invitrogen)(Prod. No. K2000-01)にクローニングした。得られたプラスミドをIC 323−215と命名した。パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のHASタンパク質をコードする合成核酸配列は配列番号:3の下に記載されている。パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1から最初に単離された対応する核酸配列は配列番号:1の下に記載されている。
【0198】
5.パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の合成
Entelechon GmbHが合成した、パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸配列をベクターpCR4Topo(Invitrogen)(Prod. No. K4510-20)にクローニングした。得られたプラスミドをIC 339−222と命名した。パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする合成核酸配列は配列番号:13の下に記載されている。パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1から最初に単離された対応する核酸配列は配列番号:11の下に記載されている。
【0199】
6.植物発現ベクターIR 47−71の調製
プラスミドpBinARはバイナリーベクタープラスミドpBin19(Bevan, 1984, Nucl Acids Res 12: 8711-8721)の誘導体であり、以下のように構築した:
カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターのヌクレオチド6909〜7437を含む529bp断片をプラスミドpDH51(Pietrzakら、1986 Nucleic Acids Res. 14, 5858)からEcoR I/Kpn I断片として単離し、pUC18のポリリンカーのEcoR IおよびKpn I制限部位間にライゲートした。これによりプラスミドpUC18−35Sが得られた。制限エンドヌクレアーゼHind IIIおよびPvu IIを活用して、TiプラスミドpTiACH5(Gielenら、1984, EMBO Journal 3, 835-846)のT−DNAのオクトピンシンターゼ遺伝子(Gen 3)のポリアデニル化シグナル(3’末端)(ヌクレオチド11749〜11939)を含む192bp断片をプラスミドpAGV40(Herrera-Estrellaら、1983 Nature, 303, 209-213)から単離した。Pvu II制限部位にSph Iリンカーを付加した後、pUC18−35SのSph IおよびHind III制限部位間に該断片をライゲートした。これによりプラスミドpA7が得られた。このプラスミドから、35SプロモーターおよびOCSターミネーターを含むポリリンカー全体をEcoR IおよびHind IIIで切り出し、適切にカットされたベクターpBin19にライゲートした。これにより植物発現ベクターpBinARが得られた(HoefgenおよびWillmitzer, 1990, Plant Science 66, 221-230)。
【0200】
ジャガイモ(Solanum tuberosum)由来のパタチン遺伝子B33のプロモーター(Rocha-Sosaら、1989, EMBO J. 8, 23-29)をDra I断片(ヌクレオチド−1512〜+14)としてベクターpUC19にライゲートした。該ベクターはSst Iでカットされ、その末端は、T4−DNAポリメラーゼを活用して平滑末端化されていた。これによりプラスミドpUC19−B33が得られた。EcoR IおよびSma Iを使用して、B33プロモーターをこのプラスミドから切り出し、適切にカットされたベクターpBinARにライゲートした。これにより植物発現ベクターpBinB33が得られた。
【0201】
追加のクローニング工程を容易にするために、MCS(マルチクローニング部位)を広くした。この目的を達成するために、2種の相補的オリゴヌクレオチドを合成し、95℃で5分間加熱し、室温にゆっくり冷却し、得られた二本鎖断片をpBinB33のSal IおよびKpn I制限部位にクローニングした。その目的のために使用されるオリゴヌクレオチドは以下の配列を有していた:
【0202】
【表1】

【0203】
得られたプラスミドをIR 47−71と命名した。
【0204】
7.植物発現ベクターpBinARHygの調製
制限エンドヌクレアーゼEcoR IおよびHind IIIを使用して、35Sプロモーター、OCSターミネーターおよびマルチクローニング部位全体を含む断片をプラスミドpA7から切り出し、ベクターpBIBHyg(Becker, 1990, Nucleic Acids Res. 18, 203)にクローニングした。該ベクターは同制限エンドヌクレアーゼでカットされていた。得られたプラスミドをpBinARHygと命名した。
【0205】
8.クローニングベクターIC 317−204の調製
制限エンドヌクレアーゼXho IおよびHind IIIを使用してプラスミドIR 47−71からOCSターミネーターを含む核酸断片を単離し、ベクターpBlueScript KS(Stratagene製、Prod. No. 212207)にクローニングした。該ベクターは同制限エンドヌクレアーゼでカットされていた。得られたプラスミドをIC 306−204と命名した。
【0206】
制限エンドヌクレアーゼBam HIおよびEco RIを使用してプラスミドIR 47−71からB33プロモーターを含む核酸断片を単離し、ベクターpBlueScript KS(Stratagene製、Prod. No. 212207)にクローニングした。該ベクターは同制限エンドヌクレアーゼでカットされていた。得られたプラスミドをIC 314−204と命名した。
【0207】
IC 306−204から、制限エンドヌクレアーゼBam HIを使用してOCSターミネーターを単離し、プラスミドIC 314−204にクローニングした。該プラスミドは同制限エンドヌクレアーゼでカットされていた。得られたプラスミドをIC 317−204と命名した。
【0208】
9.パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1のヒアルロナンシンターゼのコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 341−222の調製
BamH IおよびXho Iでの制限消化によって、ヒアルロナンシンターゼのコード配列を含む核酸分子をプラスミドIC 323−215から単離し、プラスミドIR 47−71のBamH IおよびXho I制限部位にクローニングした。得られた植物発現ベクターをIC 341−222と命名した。
【0209】
10.パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列を含む植物発現ベクター349−222の調製
BamH IおよびKpn Iでの制限消化を使用して、パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード配列を含む核酸分子をプラスミドIC 339−222から単離し、プラスミドpA7にクローニングした。該プラスミドは同制限エンドヌクレアーゼでカットされていた。得られたプラスミドをIC 342−222と命名した。
【0210】
Xba IおよびKpn Iでの制限消化によって、パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード配列を含む核酸分子をプラスミドIC 342−222から単離し、発現ベクターpBinAR Hygにクローニングした。該ベクターはXba IおよびKpn Iでカットされていた。得られたプラスミドをIC 349−222と命名した。
【0211】
11.マウス由来のGFAT−1の活性を有するタンパク質およびパラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 376−271の調製
Eco RIを使用する制限消化によってIC 317−204から単離された、B33プロモーターおよびOCSターミネーターを含む核酸断片をプラスミドIC 349−222のEco RI制限部位にクローニングした。ここに、ヘッドトゥヘッド配向(head-to-head orientation)のプロモーター(25SおよびB33)が確保された。得られたベクターをIC 354−222と命名した。
【0212】
マウス由来のGFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする核酸配列を含む植物発現ベクターを取得するために、マウス由来のGFAT−1の活性を有するタンパク質のコード配列をXho IおよびEco RVでの制限消化によってIC 365−256から単離し、プラスミドIC 354−222にクローニングした。該プラスミドはXho IおよびEcl 136 IIでカットされていた。得られた植物発現ベクターをIC 376−256と命名した。
【0213】
12.マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質およびパラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 372−256の調製
マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質のコード配列を含む核酸断片をIC 369−256からXho IおよびEco RVでの制限消化によって単離し、プラスミドIC 354−222にクローニングした。該プラスミドはXho IおよびEcl 136 IIでカットされていた。得られた植物発現ベクターをIC 372−256と命名した。
【0214】
13.大腸菌由来のGFATの活性を有するタンパク質およびパラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列を含む植物発現ベクター375−271の調製
大腸菌由来のGFATの活性を有するタンパク質のコード配列を含む核酸断片をIC 373−256からXho IおよびEco RVでの制限消化によって単離し、プラスミドIC 354−222にクローニングした。該プラスミドはXho IおよびEcl 136 IIでカットされていた。得られた植物発現ベクターをIC 375−271と命名した。
【0215】
14.大腸菌由来のGFATの活性を有するタンパク質のコード核酸配列を含む植物発現ベクターIC 398−311の調製
Ecl 136 IおよびXho Iでの制限消化によって、大腸菌由来の細菌GFATの活性を有するタンパク質のコード配列をプラスミドIC 373−256から単離し、ベクターpBinAR HygのSma IおよびSal I制限部位にライゲートした。得られた植物発現ベクターをIC 398−311と命名した。
【0216】
15.植物発現ベクターIC 386−299の調製
コメ(Oryza sativa, 品種M202)の葉から単離されたゲノムDNAを使用し、DNAポリメラーゼ(Expand High Fidelity PCR Systems, Roche Prod. No.: 1732641)を使用するPCRによって、コメ由来のプロラミンプロモーターのDNA(EMBL アクセッションNO D63901, Shaら、1996, Biosci. Biotech. Biochem. 60, 335-337, Wuら、1998. Plant Cell Physiol. 39(8), 885-889)を単離した。このPCR反応から得られたアンプリコンを、TAクローニングキット(Invitrogen Prod. No.: KNM2040-01)を使用してベクターpCR2.1にクローニングした。得られたプラスミドをMI 4−154と命名した。
【0217】
プロラミンプロモーターをコードするDNAの増幅に使用された条件:
製造元が指定する条件およびバッファーならびに50ngのトータルDNAを使用した。
0.83μM dNTPミックス
0.25μM プライマーprol−F1
【0218】
【表2】

【0219】
0.25μM プライマーprol−R1
【0220】
【表3】

【0221】
反応条件:
工程1 94℃ 15秒
工程2 60℃ 15秒
工程3 72℃ 45秒
【0222】
まず、35反復(サイクル)を使用して工程1〜3に記載の反応を実行した。反応が終了した後、反応混合物を4℃に冷却した。次いで、TAクローニングキット(Invitrogen Prod. No.: KNM2040-01)を使用した、ベクターpCR2.1へのクローニングを、製造元が指定する条件にしたがって実行した。コメ由来のプロラミンプロモーターを含むプラスミドをMI 4−154と命名した。
【0223】
マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質のコード配列を含む核酸断片を、プラスミドIC 369−256から制限酵素Not IおよびKpn Iを使用する制限消化によって単離し、ベクターpMCS5(MoBiTecから購入)にクローニングした。該ベクターはNot IおよびKpn Iで消化されていた。得られたプラスミドをIC 385−299と命名した。次の工程で、マウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質のコード配列を含む核酸断片を、IC 385−299から制限酵素Xho IおよびHpa Iでの制限消化によって単離し、プラスミドMI 9−154にクローニングした。該プラスミドはXho IおよびEcl 136 IIでカットされていた。得られた植物発現ベクターをIC 386−299と命名した。ベクターMI 9−154を調製するための出発ベクターはプラスミドML 18−56である(WO 05/030941)。2オリゴヌクレオチドによって合成された、適切な粘着末端を有し、制限部位Pst I、Sac I、Bln I、Xho I、Hpa I、Spe IおよびHind IIIを含むMCSをプラスミドML 18−56に導入した。該プラスミドはHind IIIおよびPst Iで消化されていた。得られたベクターをMI 8−154と命名した。
【0224】
Eco RVおよびSpe Iでの消化によって、MI 4−154からプロラミンプロモーターを単離し、ベクターMI 8−154にライゲートした。該ベクターはHpa IおよびSpe Iで消化されていた。得られたベクターをMI 9−154と命名した。
【0225】
16.細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含むジャガイモ植物
a)ジャガイモ植物の形質転換
ジャガイモ植物(品種Desiree)を、一般的方法項目1に記載の方法によって、植物発現ベクターIC 398−311を使用して形質転換した。該ベクターは大腸菌由来の細菌GFATの活性を有するタンパク質のコード核酸配列をジャガイモ(Solanum tuberosum)由来のパタチン遺伝子B33のプロモーター(Rocha-Sosaら、1989, EMBO J. 8, 23-29)のコントロール下に含む。プラスミドIC 398−311で形質転換されて得られたトランスジェニック系統を432 ESと命名した。
【0226】
b)系統432 ESの分析
温室で6cm鉢の土壌中で系統432 ESの植物を栽培した。各事例で、個々の植物から回収された約0.3g〜0.8gの葉材料を一般的方法項目4の下に記載の方法にしたがって精密検査し、N−アセチル化グルコサミン誘導体の含量を決定した。増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する個々の植物に関して、以下の結果が得られた:
【0227】
【表4】

【0228】
表1:系統432 ESの独立したトランスジェニック植物の葉で測定されたN−アセチル化グルコサミン誘導体の量(新鮮重量1グラムあたりのμmol単位)。カラム1は、各事例で、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。
【0229】
これらの結果は、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物が、相応に形質転換されていない野生型植物より、かなり高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することを示す。
【0230】
17.GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含むコメ植物
a)コメ植物の形質転換
一般的方法項目3の下に記載の方法にしたがって、植物発現ベクターIC 386−299でコメ植物(変種M202)を形質転換した。該ベクターはマウス由来のGFAT−2の活性を有するタンパク質のコード核酸配列を13kDaプロラミンポリペプチドのプロモーターのコントロール下に含む。プラスミドIC 386−299で形質転換されて得られたトランスジェニック系統をGAOS0788と命名した。
【0231】
b)系統GAOS0788の分析
プラスミドIC 386−299での形質転換に由来する、系統GAOS0788の独立した植物を温室の土壌中で栽培した。各植物から、約20〜25個の成熟種子(穀粒)を回収し、殻むき器(dehusker)(Laboratory Paddy sheller, Grainman, Miami, Florida, USA)で殻を除去し、各系統の約7個の褐色コメ種子(プール)を実験室の振動ボールミル(MM200(Retsch, Germany)、30Hzで30秒間)で細かく砕き、穀粉を得た。そして、一般的方法項目4の下に記載の方法を使用して、N−アセチル化グルコサミン誘導体の含量を決定した。増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する個々の植物に関して、以下の結果が得られた:
【0232】
【表5】

【0233】
表2:系統GAOS0788の独立したトランスジェニック植物の成熟種子のプールで測定されたN−アセチル化グルコサミン誘導体の量(新鮮重量1グラムあたりのμmol単位)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した。ここに、「コントロール」とは、GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を有さないプラスミドで形質転換された植物を表す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0234】
c)植物GAOS0788−02401およびGAOS0788−00501の個々の種子の分析
実施例b)で回収された種子は、形質転換後に直接得られた植物に由来し、ゆえに該植物は、目的のT−DNAのそれぞれの組み込み部位に関して異型接合性であった。したがって、メンデルの法則の遺伝の結果、分析された種子プールは、種々の量の目的のT−DNAを含む種子を含有した。形質転換によって組み込まれたT−DNAを全く有さない個々の種子がそれぞれのプールに存在する可能性もあった。ゆえに、系統GAOS0788−02401の植物および系統GAOS0788−00501の植物由来の、単一の、個々の褐色種子を、それらのN−アセチル化グルコサミン誘導体の含量に関して、一般的方法項目4の下に記載の方法によってそれぞれ調査した。以下の結果を得た:
【0235】
【表6】

【0236】
表3:系統GAOS0788−02401およびGAOS0788−00501由来の植物の個々の種子のN−アセチル化グルコサミン誘導体の量(新鮮重量1グラムあたりのμmol単位)。各事例で、カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から個々の種子を回収し、分析した(ここに、「コントロール」とは、GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含まない構築物で形質転換された植物の種子を表す)。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0237】
得られた結果は、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を有するコメ植物の種子(穀粒)由来の穀粉が、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を有さない植物から生産された穀粉と比較して、かなり高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することを示す。
【0238】
18.GFATの活性を有するタンパク質の種々のアイソフォームをコードする核酸分子で形質転換されたトマト植物におけるN−アセチル化グルコサミン誘導体の合成
a)GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含むトマト植物の生産
一般的方法項目2の下に記載の方法によって、植物発現ベクターIC 376−271でトマト植物(品種Moneymaker)を形質転換した。該ベクターは、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列およびGFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む。プラスミド376−271で形質転換されて得られたトランスジェニック系統を420 ESと命名した。UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質は、UDP−グルコースからのUDP−GlcAの合成を触媒する。GlcNAcに加えて、いくつかのグルコサミノグリカンシンターゼ、例えばヒアルロナンシンターゼは基質としてUDP−GlcAを必要とする。
【0239】
b)系統420 ESの分析
温室で鉢の水栽培(hydroculture)中で系統420 ESの植物を栽培した。各事例で、個々の植物から回収された約5gの植物材料を一般的方法項目4の下に記載の方法を使用して精密検査し、N−アセチル化グルコサミン誘導体の含量を決定した。ここに、植物ごとに、各精密検査サンプルに関して複数の独立した測定を実行した。個々の植物に関して以下の結果を得た:
【0240】
【表7】



【0241】
表4:系統420 ESの独立したトランスジェニック植物の葉で測定されたN−アセチル化グルコサミン誘導体の量(新鮮重量1グラムあたりのμmol単位)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。a、bまたはcによる植物の名称の拡張部分は、目的の精密検査サンプルに関して実行された独立した測定を示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0242】
これらの結果は、GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物が、対応する形質転換されていない野生型植物より、わずかに高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することを示す。
【0243】
c)GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含むトマト植物の生産
一般的方法項目2の下に記載の方法によって、植物発現ベクターIC 372−256でトマト植物(品種Moneymaker)を形質転換した。該ベクターは、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列およびGFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む。プラスミドIC 372−256で形質転換されて得られたトランスジェニック系統を421 ESと命名した。
【0244】
d)系統421 ESの分析
温室で鉢の水栽培中で系統421 ESの植物を栽培した。各事例で、個々の植物から回収された約5gの植物材料を一般的方法項目4の下に記載の方法を使用して精密検査し、N−アセチル化グルコサミン誘導体の含量を決定した。ここに、植物ごとに、各精密検査サンプルに関して複数の独立した測定を実行した。個々の植物に関して以下の結果を得た:
【0245】
【表8】



【0246】
表5:系統421 ESの独立したトランスジェニック植物の葉で測定されたN−アセチル化グルコサミン誘導体の量(新鮮重量1グラムあたりのμmol単位)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。a、bまたはcによる植物の名称の拡張部分は、目的の精密検査サンプルに関して実行された独立した測定を示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0247】
これらの結果は、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物が、対応して形質転換されていない野生型植物より、かなり高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することを示す。
【0248】
e)細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含むトマト植物の生産
一般的方法項目2の下に記載の方法によって、植物発現ベクターIC 375−271でトマト植物(品種Moneymaker)を形質転換した。該ベクターは、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列および細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む。プラスミドIC 375−271で形質転換されて得られたトランスジェニック系統を422 ESと命名した。
【0249】
f)系統422 ESの分析
温室で鉢の水栽培中で系統422 ESの植物を栽培した。各事例で、個々の植物から回収された約5gの植物材料を一般的方法項目4の下に記載の方法を使用して精密検査し、N−アセチル化グルコサミン誘導体の含量を決定した。ここに、植物ごとに、各精密検査サンプルに関して複数の独立した測定を実行した。個々の植物に関して以下の結果を得た:
【0250】
【表9】



【0251】
表6:系統422 ESの独立したトランスジェニック植物の葉で測定されたN−アセチル化グルコサミン誘導体の量(新鮮重量1グラムあたりのμmol単位)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。a、bまたはcによる植物の名称の拡張部分は、目的の精密検査サンプルに関して実行された独立した測定を示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0252】
g)系統420 ES、421 ESおよび422 ESの果実の分析
系統420 ES、421 ESおよび422 ESの選択植物から成熟果実を回収した。個々の植物の種々のホールトマト果実を回収し、一般的方法項目4の下に記載の方法を使用して精密検査し、N−アセチル化グルコサミン誘導体の含量を決定した。ここで、植物の異なる果実に関して独立した測定を実行した。個々の植物に関して以下の結果を得た:
【0253】
【表10】





【0254】
表7:系統420 ES、421 ESおよび422 ESの独立したトランスジェニック植物の果実で測定されたN−アセチル化グルコサミン誘導体の量(新鮮重量1グラムあたりのμmol単位)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。ラテン数字による植物の名称の拡張部分は目的の植物の異なる果実を示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0255】
これらの結果は、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物が、対応して形質転換されていない野生型植物より、かなり高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することを示す。GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物と比較して、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物はさらに高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有する。このことは、目的の植物の葉材料および果実の両者にあてはまる。
【0256】
h)質量分析による系統422 ESのN−アセチル化グルコサミン誘導体の分析
名称422 ES 13を有する植物の個々の異なる果実の抽出物を、一般的方法項目9の下に記載の方法にしたがって質量分析によって、N−アセチル化グルコサミン誘導体の存在に関して調査した。以下の結果を得た:
【0257】
【表11】

【0258】
表8:植物422 ES 13の果実中の代謝産物グルコサミン(GlcN)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、グルコサミンリン酸(GlcN−P)、N−アセチルグルコサミンリン酸(GlcNAc−P)およびUDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc)の質量分析による検出。質量スペクトル中の指定代謝産物に関して得られたシグナル強度(ピーク領域)の割合が示されている。該割合は、同一の測定で得られた六炭糖(m/z=179)のシグナル強度(パーセント単位)に基づく。感度(「d.v.」)およびシグナル強度(「cps」)に関する指定の検出器設定(カラム1)で異なる測定を実行した。カラム2は、形質転換から独立して得られた植物を示し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。ラテン数字による植物の名称の拡張部分は目的の植物の異なる果実を示す。
【0259】
並行して、参照物質(グルコサミン、N−アセチルグルコサミン(N-acetylgucosamine)、グルコサミン6−リン酸、グルコサミン1−リン酸、N−アセチルグルコサミン6−リン酸(N-acetylgucosamine 6-phosphate)、N−アセチルグルコサミン1−リン酸、UDP−N−アセチルグルコサミン)を使用するサンプル422 ES 13 Iおよび野生型植物(wt)の果実のMS−MS測定によって、MSスペクトルの目的の検出シグナル強度(ピーク領域)が、対応する代謝産物または同質量の対応する異性体代謝産物の存在に現実に起因するかどうか、またはMSスペクトルの目的のシグナル強度が他の物質のシグナルによる干渉に起因する可能性があるかどうかを分析した。以下の観察を行った:
【0260】
グルコサミン(GlcN,m/z=178):サンプル422 ES 13 IおよびwtのMSスペクトル中で検出されたGlcNの最高量は検出下限の範囲内であった。該MSスペクトルでは、サンプル422 ES 13 Iおよびwtサンプル間の有意差は認められなかった。したがって、いかなる確信の程度においても、サンプルがGlcNを含有するかどうかを決定することはできなかった。
【0261】
N−アセチルグルコサミン(GlcNAc,m/z=220):サンプル422 ES 13およびwtサンプルのMSスペクトルにおいて最高の有意差がこの代謝産物に関して見出された。サンプル422 ES 13 I、422 ES 13 IIおよび422 ES 13 IIIのMSスペクトルでは、かなりの量のGlcNAcが検出された。サンプル422 ES 13 Iの対応するMS−MSスペクトルは、参照物質(N−アセチルグルコサミン)のスペクトルと一致し、MSスペクトル中の関連シグナルを妨げる物質を、たとえ有するとしても、非常に少量しか有さない。対照的に、wtサンプルのMSスペクトルでは、m/z=220に関するシグナル強度は非常に低かった。wtサンプルのMS−MSスペクトルは、GlcNAcが、仮にあったとしても、微量しか存在しないことを示した。該MS−MSスペクトルは、MSスペクトル中のm/z=220のwtサンプルに関して決定されたシグナル強度が、主に、該シグナルを妨げる他の物質の影響であることを非常に明瞭に示した。
【0262】
グルコサミンリン酸(GlcN−P,m/z=258):wtサンプルに関するMSスペクトルのシグナル強度は、サンプル422 ES 13 I、422 ES 13 IIおよび422 ES 13 IIIよりかなり低い。MS−MSによって測定されたすべてのサンプルは、m/z=258に関するシグナルがGlcN−Pの存在に起因するだけでなく、他の物質によるシグナルの干渉にも起因することを示す。wtサンプルのMS−MSスペクトルは、たとえ存在したとしても、微量のGlcN−Pしか存在しないことを示した。対照的に、MS−MSスペクトル中のサンプル422 ES 13 Iの対応するシグナルは、MSスペクトルの関連シグナル中にかなりの量のGlcN−Pが存在することを示した。
【0263】
N−アセチルグルコサミンリン酸(GlcNAc−P,m/z=300):wtサンプルに関して、MSスペクトル中のm/z=300に関するシグナル強度は、サンプル422 ES 13 I、422 ES 13 IIおよび422 ES 13 IIIより実質的に低い。wtサンプルに関するMS−MSによって決定された値は、たとえ存在したとしても、微量のGlcNAc−Pしか存在しないことを示す。対照的に、サンプル422 ES 13 Iに関して、このサンプルのMSスペクトル中のm/z=300に関して決定されたシグナル強度の主要部分がGlcNAc−Pに起因することを、MS−MS測定によって実証することが可能であった。
【0264】
UDP−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc,m/z=302.5):野生型では、MSスペクトルのシグナル強度はサンプル422 ES 13 I、422 ES IIおよび422 ES IIIよりかなり低い。対応するMS−MSスペクトルは、すべてのサンプル中で、MSスペクトルのシグナル強度の特定部分がUDP−GlcNAcの存在に起因するだけでなく、他の物質によるシグナル干渉にも起因することを示す。しかし、MS−MS測定は、シグナル干渉物質と比較して、サンプル422 ES 13 IのMSスペクトル中のUDP−GlcNAcの割合がwtサンプルより実質的に高いことを示した。
【0265】
19.グルコサミノグリカンを合成する植物の生産
増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する植物が、増加したグルコサミノグリカン含量を有する植物を生産するために好適であるかどうかを決定するために、まず、グルコサミノグリカンシンターゼ(ヒアルロナンシンターゼ)を発現する植物を作製した。
【0266】
a)ヒアルロナンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む植物
それぞれ一般的方法項目1(ジャガイモ植物)および一般的方法項目2(トマト植物)の下に記載の方法を使用し、植物発現ベクターIC 341−222で、ジャガイモ植物(品種Desiree)およびトマト植物(品種Moneymaker)を形質転換した。該ベクターは、パラメシウム ブルサリアクロレラウイルス1由来のヒアルロナンシンターゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列を、Solanum tuberosum由来のパタチン遺伝子B33のプロモーター(Rocha-Sosaら、1989, EMBO J. 8, 23-29)のコントロール下に含む。プラスミドIC 341−222で形質転換されて得られたトランスジェニック系統をそれぞれ365 ES(ジャガイモ植物)および367 ES(トマト植物)と命名した。
【0267】
b)系統365 ESの分析
温室で6cm鉢の土壌中で系統365 ESの個々の植物を栽培した。各事例で、一般的方法項目5の下に記載の方法を使用して個々の植物のジャガイモ塊茎の約0.3gの材料を精密検査した。一般的方法項目7の下に記載の方法を使用して、それぞれの植物抽出物中に存在するヒアルロナンの量を決定した。ここで、遠心分離後に得られた上清を1:10希釈して、ヒアルロナン含量を決定した。選択植物に関して以下の結果を得た:
【0268】
【表12】

【0269】
表9:系統365 ESの独立した選択トランスジェニック植物によって生産されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位)。カラム1は、塊茎材料の回収元である植物を表す(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。カラム2は、目的の植物の葉で測定されたヒアルロナンの量に関する値を示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0270】
c)系統367 ESの植物の分析
温室で土壌中で栽培された系統367 ESの異なる選択トマト植物から、各事例で1葉を回収し、液体窒素中で凍結した。さらなる精密検査およびヒアルロナン含量の決定は、ジャガイモ植物の塊茎に関して実施例19b)に記載のように実行した。以下の結果を得た:
【0271】
【表13】

【0272】
表10:系統367 ESの独立した選択トランスジェニック植物の葉で生産されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位)。カラム1は、葉材料の回収元である植物を表す(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。カラム2は、目的の植物の葉で測定されたヒアルロナンの量についての値を示す。
【0273】
20.UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子およびグルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む植物
いくつかのグルコサミノグリカンシンターゼ(例えばヒアルロナンシンターゼ)は基質としてN−アセチル化グルコサミン誘導体およびUDP−GlcAを必要とする。したがって、発明者らは、まず、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質の増加した活性およびヒアルロナンシンターゼの活性を有するタンパク質の増加した活性を有する植物を作製した。
【0274】
a)ジャガイモ植物の生産
一般的方法項目1の下に記載の方法を使用して、植物発現ベクターIC 349−222で、系統365 ES 74のジャガイモ植物(実施例19b)を参照されたい)を形質転換した。該ベクターは、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質のコード核酸配列を35Sプロモーターのコントロール下に含む。プラスミドIC 349−222で形質転換されて得られたトランスジェニック系統を423 ESと命名した。
【0275】
b)系統423 ESの植物の分析
温室で6cm鉢の土壌中で系統423 ESの植物を栽培した。各事例で、個々の植物から回収された約0.3g〜0.8gの葉材料を一般的方法項目5の下に記載の方法を使用して精密検査し、一般的方法項目7の下に記載の方法を使用してヒアルロナンの含量を決定した。増加したN−アセチルグルコサミン誘導体含量を有する個々の植物に関して、以下の結果を得た:
【0276】
【表14】

【0277】
表11:系統423 ESの独立したトランスジェニック植物の葉で測定されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位)。カラム1は、各事例で、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt 1」〜「wt 10」とは、独立した形質転換されていない植物を表す)。比較のために、形質転換の出発系統として使用された系統365 ESの植物の10種の異なる子孫(365 ES−1〜365 ES−10)に関する値を示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0278】
該結果から、UDP−グルコース−デヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子およびヒアルロナンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む植物が、ヒアルロナンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子しか有さない植物と比較して、静的に有意な増加量のヒアルロナンを全く合成しないことがわかる。
【0279】
21.増加量のグルコサミノグリカンを合成する植物
a)増加量のグルコサミノグリカンを合成するトマト植物の生産
一般的方法項目2の下に記載の方法を使用して、植物発現ベクターIC 372−256またはIC 375−271で、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を有する系統367 ES 25のトマト植物(実施例19c)を参照されたい)を再び形質転換した。該ベクターは、GFATの活性を有するタンパク質の異なるアイソフォームをコードする核酸分子を含む。
【0280】
系統367 ES 25をプラスミドIC 372−256(GFAT−2)で形質転換した後に得られたトランスジェニックトマト植物を399 ESと命名した。
【0281】
系統367 ES 25をプラスミドIC 375−271(細菌GFAT)で形質転換した後に得られたトランスジェニックトマト植物を405 ESと命名した。
【0282】
b)系統399 ESおよび405 ESの分析
温室で土壌中で栽培された系統399 ESおよび405 ESの異なるトマト植物から成熟果実を回収し、一般的方法項目7の下に記載のようにヒアルロナン含量を決定した。以下の結果を得た:
【0283】
【表15】

【0284】
表12:系統399 ESおよび405 ESの独立したトランスジェニック植物の果実で測定されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位の「HA」)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。比較のために、形質転換の出発系統として使用された系統367 ESの植物の異なる子孫についての値を示す。ラテン数字による植物の名称の拡張部分は目的の植物の異なる果実を示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0285】
これらの結果は、グルコサミノグリカンシンターゼをコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードし、かつGFAT−2または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物が、グルコサミノグリカンシンターゼをコードする外来性核酸分子のみを有する植物より、かなり多量のグルコサミノグリカンを合成することを示す。
【0286】
c)増加量のグルコサミノグリカンを合成するジャガイモ植物の生産
一般的方法項目1の下に記載の方法を使用して、植物発現ベクターIC 376−271、IC 372−256またはIC 375−271で、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含む系統365 ES 74のジャガイモ植物(実施例19b)を参照されたい)を再び形質転換した。該ベクターは、GFATの活性を有するタンパク質の異なるアイソフォームをコードする核酸分子を含む。
【0287】
系統365 ES 74をプラスミドIC 376−271(GFAT−1)で形質転換した後に得られたトランスジェニックジャガイモ植物を409 ESと命名した。
【0288】
系統365 ES 74をプラスミドIC 372−256(GFAT−2)で形質転換した後に得られたトランスジェニックジャガイモ植物を396 ESと命名した。
【0289】
系統365 ES 74をプラスミドIC 375−271(細菌GFAT)で形質転換した後に得られたトランスジェニックジャガイモ植物を404 ESと命名した。
【0290】
d)系統396 ES、404 ESおよび409 ESの分析
温室で土壌中で栽培された系統396 ES(GFAT−2)、404 ES(細菌GFAT)および409 ES(GFAT−1)の異なるジャガイモ植物から葉および/または塊茎材料を回収し、一般的方法項目7の下に記載のようにヒアルロナン含量を決定した。系統409 ESの植物に関して以下の結果を得た:
【0291】
【表16】

【0292】
表13:系統409 ESの独立したトランスジェニック植物の葉および塊茎で測定されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位の「HA」)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。形質転換の出発系統として使用された系統365 ES 74の植物の異なる子孫に関する値を比較のために示す。検出不可能な量は「n.d.」と示される。
【0293】
系統396 ESの植物に関して以下の結果を得た:
【0294】
【表17】

【0295】
表14:系統396 ESの独立したトランスジェニック植物の葉および塊茎で測定されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位の「HA」)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。形質転換の出発系統として使用された系統365 ES 74の植物の異なる子孫に関する値を比較のために示す。
【0296】
404 ESの植物に関して以下の結果を得た:
【0297】
【表18】

【0298】
表15:系統404 ESの独立したトランスジェニック植物の葉で測定されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。形質転換の出発系統として使用された系統365 ES 74の植物の異なる子孫に関する値を比較のために示す。
【0299】
これらの結果は、グルコサミノグリカンシンターゼをコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードし、かつGFAT−2または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物が、グルコサミノグリカンシンターゼをコードし、かつUDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードし、かつGFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物より、かなり多量のグルコサミノグリカンを合成することを示す。
【0300】
e)ヒアルロナンシンターゼおよび細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物の生産
一般的方法項目1の下に記載の方法を使用して、植物発現ベクターIC 398−311で、ヒアルロナンシンターゼをコードする核酸分子を含む系統365 ES 74のジャガイモ植物(実施例19b)を参照されたい)を再び形質転換した。該ベクターは、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む。この形質転換から得られた系統を433 ESと命名した。
【0301】
f)系統433 ESの分析
温室で土壌中で栽培された系統433 ESの異なるジャガイモ植物から葉および/または塊茎材料を回収し、一般的方法項目7の下に記載のようにヒアルロナン含量を決定した。系統433 ESの植物に関して以下の結果を得た:
【0302】
【表19】

【0303】
表16:系統433 ESの独立したトランスジェニック植物の葉および塊茎で測定されたヒアルロナンの量(新鮮重量1グラムあたりのμg単位の「HA」)。カラム1は、形質転換から独立して得られた植物を表し、該植物から材料を回収した(ここに、「wt」とは、形質転換されていない植物を表す)。形質転換の出発系統として使用された系統365 ES 74の植物の異なる子孫に関する値を比較のために示す。系統365 ES 74に関する値は表14の値と一致する。その理由は、すべての植物を温室で同時に栽培したからである。
【0304】
これらの結果は、グルコサミノグリカンシンターゼをコードし、かつ細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物が、グルコサミノグリカンシンターゼをコードする外来性核酸分子のみを有する植物より、かなり多量のグルコサミノグリカンを合成することを示す。
【0305】
22.結果の概要
実施例16の結果は、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む植物が、形質転換されていない野生型植物と比較して、かなり増加したN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有することを示す。
【0306】
実施例17の結果は、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む植物が、形質転換されていない野生型植物より、かなり高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することを示す。
【0307】
実施例18に記載のすべての形質転換植物は、GFATの活性を有するタンパク質の異なるアイソフォームをコードする核酸分子に加えて、各事例で、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする同一の核酸分子を有する。したがって、実施例18に記載の形質転換植物の本質的な差異は、GFATの活性を有するタンパク質の異なるアイソフォームをコードする異なる外来性核酸分子である。実施例18b)は、GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物中のN−アセチル化グルコサミン誘導体の含量が、形質転換されていない植物と比較して、わずかに増加したことを示す。
【0308】
さらにまた、実施例18d)から、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物が、形質転換されていない野生型植物より、かなり高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することがわかる。GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物中のN−アセチル化グルコサミン誘導体の含量もまた、GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物より、かなり高い。
【0309】
さらにまた、実施例18f)およびg)から、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物が、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物より、さらに高含量のN−アセチル化グルコサミン誘導体を有することがわかる。
【0310】
実施例21f)の結果は、グルコサミノグリカンシンターゼをコードし、かつ細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物が、グルコサミノグリカンシンターゼをコードする外来性核酸分子のみを有する植物より、かなり多量のグルコサミノグリカンを合成することを示す。
【0311】
ゆえに、植物で合成されたグルコサミノグリカンの量が、グルコサミノグリカンシンターゼをコードする外来性核酸分子に加えて、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子をさらに含む植物を作製することによってかなり増加しうることを結論することができる。
【0312】
実施例21b)およびd)に結果が示されるすべての形質転換植物は、GFATの活性を有するタンパク質の異なるアイソフォームをコードする核酸分子に加えて、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子およびグルコサミノグリカンシンターゼをコードする外来性核酸分子をさらに有する。実施例21b)およびd)に結果が示される形質転換植物間の本質的な差異は、したがって、GFATの活性を有するタンパク質の異なるアイソフォームをコードする異なる核酸分子に存する。
【0313】
実施例21b)に示される結果は、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードするか、あるいは細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物中のグルコサミノグリカンの含量が、グルコサミノグリカンシンターゼの活性のみを有する植物と比較して、かなり増加することを示す。
【0314】
実施例21d)に示される結果は、GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物が、グルコサミノグリカンシンターゼの活性のみを有する植物より、わずかに多い量のグルコサミノグリカンを含有することを示す。対照的に、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物中のグルコサミノグリカンの含量は、GFAT−1の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物より、かなり高い。さらにまた、実施例21d)から、細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む個々の植物が、GFAT−2の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を有する植物より、さらに多量のグルコサミノグリカンを含有することがわかる。
【0315】
実施例20b)の結果は、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子およびグルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む植物が、グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子のみを含む植物と比較して、統計学的に有意な増加量のグルコサミノグリカンを有さないことを示す。
【0316】
結論として、記載の結果は、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質をコードし、かつグルコサミノグリカンシンターゼの活性を有し、かつGFAT−2の活性を有するか、または細菌GFATの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を含む植物中のグルコサミノグリカンの量のかなりの増加が、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼの活性を有する外来性核酸分子の存在に起因せず、GFAT−2の活性を有するか、または細菌GFATの活性を有する核酸分子の存在に起因することを示す。
【0317】
典型的な様式で、グルコサミノグリカンシンターゼの活性を有するタンパク質として使用されたヒアルロナンシンターゼは、基質として、UDP−Glc−NAcおよびUDP−GlcAの両者を必要とするため、記載の結果から、増加量のヒアルロナン(グルコサミノグリカン)がこれらの植物中の増加量のN−アセチル化グルコサミン誘導体に起因し、増加量のUDP−GlcAに起因しないことを結論することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮重量1グラムあたり少なくとも2μmolのN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する植物細胞または植物。
【請求項2】
新鮮重量1グラムあたり少なくとも300μgのグルコサミノグリカンからなるグルコサミノグリカン含量を有する植物細胞または植物。
【請求項3】
新鮮重量1グラムあたり少なくとも2μmolのN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する、請求項1で特許請求される植物の部分。
【請求項4】
新鮮重量1グラムあたり少なくとも300μgのグルコサミノグリカンからなるグルコサミノグリカン含量を有する、請求項2で特許請求される植物の部分。
【請求項5】
新鮮重量1グラムあたり少なくとも2μmolのN−アセチル化グルコサミン誘導体含量を有する、請求項1で特許請求される植物の繁殖用材料。
【請求項6】
新鮮重量1グラムあたり少なくとも300μgのグルコサミノグリカンからなるグルコサミノグリカン含量を有する、請求項2で特許請求される植物の繁殖用材料。
【請求項7】
遺伝子改変植物を生産するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a) グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質をコードするか、または細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼの活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を植物細胞に導入する工程;
b) 工程a)にしたがって取得された植物細胞から植物を再生する工程;
c) 適切であれば、工程b)に記載の植物を用いて別の植物を作製する工程。
【請求項8】
グルコサミノグリカンを合成する植物を生産するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a) 植物細胞を遺伝子改変し、その場合、該遺伝子改変は以下の工程i〜iiを任意の順序で含むか、または以下の工程i〜iiの任意の組み合わせを、個別に、または同時に実行する工程:
i) グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質をコードするか、または細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする外来性核酸分子を植物細胞に導入する工程;
ii) グルコサミノグリカンシンターゼをコードする外来性核酸分子を植物細胞に導入する工程;
b) 以下の工程に記載の遺伝子改変を含む植物細胞から植物を再生する工程:
i) a)i;
ii) a)ii;
iii) a)iおよびa)ii;
c) 工程:
i) b)iに記載の植物の植物細胞に工程a)iiに記載の遺伝子改変を導入する工程;
ii) b)iiに記載の植物の植物細胞に工程a)iに記載の遺伝子改変を導入する工程;
そして植物を再生する工程;
d) 適切であれば、工程b)iiiまたはc)iまたはc)iiのいずれかにしたがって取得された植物を用いて別の植物を作製する工程。
【請求項9】
グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼのアイソフォームII(GFAT−2)の活性を有するタンパク質をコードするか、または細菌グルタミン:フルクトース6−リン酸アミドトランスフェラーゼ(細菌GFAT)の活性を有するタンパク質をコードする核酸分子の使用であって、遺伝子改変植物を製造するための使用。
【請求項10】
グルコサミノグリカンを生産するための方法であって、請求項2で特許請求される植物細胞から、請求項4で特許請求される植物の部分から、または請求項6で特許請求される繁殖用材料からグルコサミノグリカンを抽出する工程を含む方法。
【請求項11】
請求項1または2で特許請求される遺伝子改変植物細胞を含む組成物。
【請求項12】
請求項1もしくは2で特許請求される植物から、請求項3もしくは4で特許請求される植物の部分から、または請求項5もしくは6で特許請求される繁殖用材料から取得可能な穀粉。
【請求項13】
穀粉を生産するための方法であって、請求項3もしくは4で特許請求される植物の部分または請求項5もしくは6で特許請求される繁殖用材料を粉砕する工程を含む方法。
【請求項14】
請求項1もしくは2で特許請求される植物、請求項3もしくは4で特許請求される植物の部分または請求項5もしくは6で特許請求される繁殖用材料の使用であって、穀粉を生産するための使用。

【公表番号】特表2009−511004(P2009−511004A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533954(P2008−533954)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009776
【国際公開番号】WO2007/039317
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】