説明

増幅ターゲッティングによるモルホリノイメージングおよび治療

本発明は、病的状態にある哺乳動物において診断薬または治療薬を標的部位にターゲッティングするためのキットおよび方法を提供する。該キットは、個別容器に入った、(A)標的部位の主要な標的特異的な結合部位、または標的部位により生成される物質もしくは標的部位と関連する物質と選択的に結合するターゲッティング部分と、モルホリノオリゴマーとを含んでなる第一の複合体、(B)所望により、クリアリング剤、(C)ポリマーと結合した相補的モルホリノオリゴマーの複数のコピーと診断薬または治療薬とを含んでなる第二の複合体、および(D)モルホリノオリゴマーと放射性同位元素とを含んでなる第三の複合体を含んでなる。前記方法は、哺乳動物に(A)、所望により(B)、(C)および(D)を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物において診断薬または治療薬を標的部位にターゲッティングするためのキット、ならびにポリマーと結合した一本鎖モルホリノオリゴマー相補対の複数のコピーを用いて病的状態を診断または治療するための方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
薬物標的研究の目的は、治療薬を標的とされる腫瘍部位に直接送達し、これらの部位においてより効果的な投薬を可能にし、それによって、非腫瘍関連副作用を低減して、それら治療薬の有効性を向上させることである。もう1つの目的は、標的部位での治療薬の完全な集積を実現し、それによって、標的/非標的比を高めることである。
【0003】
選択的に局在させるためにターゲッティング部分と結合した診断薬または治療薬を含んでなる異なるターゲッティングベクターは以前から知られている。ターゲッティングベクターの例としては、抗体または抗体フラグメント、細胞特異的または組織特異的ペプチド、ホルモンおよび他の受容体結合分子のようなターゲッティング部分の診断薬または治療薬との複合体が挙げられる。例えば、罹患細胞および正常細胞と関連し、病原微生物とも関連する異なる決定因子に対する抗体が病態または病変の検出および治療に使用されている。これらの方法では、例えば、それらの全ての開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、Hansen et al., 米国特許第3,927,193号ならびにGoldenberg、米国特許第4,331,647号、同第4,348,376号、同第4,361,544号、同第4,468,457号、同第4,444,744号、同第4,460,459号、同第4,460,561号、同第4,624,846号および同第4,818,709号に記載のように、ターゲッティング抗体を好適な検出薬または治療薬と直接結合する。
【0004】
直接ターゲッティング法において遭遇する問題の1つは、標的部位と実際に結合するのは比較的ごく一部の複合体であって、複合体の大部分が循環に留まり、標的化した複合体の機能を何らかの形で抑制していることである。他の問題としては、診断薬を投与した場合の高バックグラウンドおよび低解像度、ならびに治療薬を長時間循環する標的化部分と結合した場合の骨髄毒性または全身性副作用が挙げられる。
【0005】
プレターゲッティング法は、検出薬または治療薬の標的:バックグラウンド比を高めることを目的に開発された。プレターゲッティングおよびビオチン/アビジンアプローチの例は、例えば、それらの全てが全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、Goodwin et al., 米国特許第4,863,713号;Goodwin et al., J. Nucl. Med. 29: 226 (1988);Hnatowich et al., J. Nucl. Med. 28: 1294 (1987);0ehr et al., J. Nucl. Med. 29: 728 (1988);Klibanov et al., J. Nucl. Med. 29: 1951 (1988);Sinitsyn et al., J. Nucl. Med. 30: 66 (1989);Kalofonos et al., J. Nucl. Med. 31 : 1791 (1990);Schechter et al., Int. J. Cancer. 48: 167 (1991);Paganelli et al., Cancer Res. 51: 5960 (1991);Paganelli et al., Nucl. Med. Commun. 12: 211 (1991);Stickney et al., Cancer Res. 51: 6650 (1991);およびYuan et al., Cancer Res. 51: 3119 (1991)に記載されている。
【0006】
プレターゲッティング法では、標的とする部位と結合する第一のターゲッティング部分と、続いて投与される第二の標的化種の結合に利用可能な結合部位とを含んでなる第一の標的化種(診断薬または治療薬と結合していない)がin vivo標的部位に向けられる。第一の標的化種が一度十分に集積したら、診断薬または治療薬と、第一の標的化種の利用可能な結合部位を認識する第二のターゲッティング部分とを含んでなる第二の標的化種を投与する。
【0007】
プレターゲッティング方法論の実例が細胞傷害性放射性抗体を腫瘍に投与するためのビオチン−(ストレプト)アビジン系の使用である。第一の工程では、腫瘍関連抗原に対して向けられたモノクローナル抗体をアビジン(またはビオチン)と結合し、それを抗体により認識される腫瘍を有する患者に投与する。第二の工程では、その結合されたビオチン(またはアビジン)を介して、治療薬が腫瘍をプレターゲッティングした抗体−アビジン(または−ビオチン)複合体に取り込まれる。
【0008】
しかしながら、プレターゲッティング時のビオチン−アビジンまたは(ストレプト)アビジン系の適用において問題が生じている。まず第一に、適切に構築されない限り、放射性標識ビオチンは血漿ビオチニダーゼ分解に付される。さらに、抗体と結合する場合には、ストレプト/アビジンおよびアビジンにより患者において抗ストレプト/アビジン抗体が生じる可能性がある。最後に、in vivoプレターゲッティング時の内因性ビオチンの潜在的影響によりビオチンの飽和を理由にビオチン結合発現の消失が起こる可能性がある。例えば、ヌードマウス異種移殖片に局在するあるストレプト/アビジン結合抗体がビオチン飽和状態になったときにこれが起こる。Rusckowski et al., Cancer 80: 2699-705 (1997)。ビオチン化モノクローナル抗体、アビジン、続いて、放射性標識ビオチンの投与を行う3段階戦略はこれらの欠点をある程度緩和するものであるが、この手法は画像法としては手間がかかると考えられており、さらに、この手法では免疫原性の問題が解決されない。
【0009】
認識されているプレターゲッティング法のもう1つの例が、(ストレプト)アビジンとビオチンの代わりに放射性標識ハプテンと二重特異性抗体を使用する二重特異性抗体−ハプテン認識系の利用である。Barbet, J. et al. Cancer Biother. Radiopharm. 14: 153-166 (1999);Karacay, H. et al., Bioconj. Chem. 11: 842-854 (2000);Gautherot, E. et al., J Nucl. Med. 41: 480-487 (2000);Lubic, S. P. et al., J. Nucl. Med. 42: 670-678 (2001);Gestin, J. F. et al., J. Nucl. Med. 42: 146-153 (2001)。ハプテンは配位錯体であることが多く、例えば、インジウム−DTPAがある。二重特異性抗体は、2種類の抗体または抗体フラグメントが独立した決定因子、ハプテンと癌胎児性抗原のような腫瘍マーカーと結合する産物である。このアプローチでは、二重特異性抗体を作製する必要性に加え、親和性が低いことが障害となっている。そのハプテン、特に一価のものに対する抗体の親和性は、ビオチンに対する(ストレプト)アビジンの親和性よりも桁違いに低い。数学モデリングでは、抗体とそのハプテンとの高親和性がプレターゲッティングを成功させる重要な決定因子であるということが示されている。Zhu, H. et al., J. Nucl Med. 39: 65-76 (1998)。
【0010】
プレターゲッティング用のビオチン−アビジンおよび二重特異性抗体−ハプテン系に代わるものとして、ペプチド核酸(PNA)のような一本鎖オリゴマーが使用されてきた。一本鎖オリゴマーはin vivoハイブリダイゼーションによりそれらの相補的一本鎖オリゴマーと特異的に結合する。ターゲッティング部分と結合した一本鎖PNAを最初に患者に投与し、続いて、診断薬で放射性標識化した一本鎖相補的PNAを投与する。この方法論の一例が、Rusckowski et al., Cancer 80: 2699-705 (1997)に記載されている。クリアリング剤の投与による2段階法に任意の中間工程を加えることもある。クリアリング剤の目的は、標的部位で結合していない循環する第一の複合体を除去することである。これについては、Griffiths et al.により、引用することにより本明細書の一部とされる米国特許第5,958,408号に開示されている。
【0011】
ヌクレアーゼの安定性を向上させ、タンパク質結合親和性を低下させるには、通常、放射性ヌクレオチドと結合するこれらの一本鎖オリゴマーの主鎖への化学修飾が必要である。99mTcでの標識を可能にする3つの異なる化学修飾がある18マーのホスホロチオエートDNAに及ぼす影響については、マウスにてin vitroおよびin vivoで比較されている。Zhang, Y. M. et al., Eur. J. Nucl. Med. 27: 1700-1707 (2000)。ハイブリダイゼーションでの結合速度定数が標識化法と無関係であることは判明しているが、培養下の細胞内蓄積と正常マウスにおける放射性標識の薬物動態学的挙動はいずれも、標識化法により強く影響を受けた。
【0012】
オリゴマーのこれらのin vivo特性は、それらの鎖長および/または塩基配列の変化により影響を受けるかもしれない。考え得るところでは、鎖長および塩基配列の影響を理解すれば、それによって、オリゴマーの薬物動態を有効に修飾し得ると思われる。この可能性にもかかわらず(化学修飾の場合のように)、これらのさらなるに影響については、これまでほとんど全く未調査の状態であった。この原因は、1つには、適用によりこれらのパラメーターに課された制約にあるかもしれない。例えば、アンチセンス化学療法は、通常、短い単鎖オリゴマーをそのmRNA標的のものと相補的な塩基配列とハイブリダイズすることにより効力を発揮すると思われる。Hnatowich, D. J., J. Nucl. Med. 40: 693-703 (1999)。このように、塩基配列と、ある程度、鎖長も所望のハイブリダイゼーションを提供するものに制限される。それにもかかわらず、注目を集めた塩基の組合せがある。一例がホスホジエステルまたはホスホロチオエートDNAにおいて存在するGカルテット(すなわち、1列に並んだ4つのグアニン塩基)である。Shafter, R. H. et al., Biopoly (Nucleic Acid Sci.) 56: 209-227 (2001)。少なくとも、これらの化学形態のDNAの場合では、グアニン塩基のスタッキングにより特定の三次元4重構造を有するオリゴヌクレオチドが提供される。この構造が種々の生体内プロセスにとって重要な種々の配列特異的効果に関与することは明らかである。同文献。もう1つの例がシトシン塩基の直後にグアニンが続くCpGモチーフであり、これは免疫賦活性を有することが分かっている。Zhao, Q. et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7: 495-502 (1997)。これらの配列が薬物動態に与える影響が少しでもあるとしたら、その影響はまだ確立されていない。
【0013】
種々の他の公開報告では、オリゴマー鎖長および配列のin vitroでの影響に関してまとめられている。グアニン塩基とチミジン塩基で完全に構成されたホスホジエステルDNAの一細胞系統における細胞毒性作用には少なくとも20塩基の鎖長を必要とすることが分かった。また、その細胞毒性作用はアデニンまたはシトシンをいずれかの末端に導入することによって消失した。Morassutti, C. et al., Nucleosides & Nucleotides 18: 1711-1716 (1999)。PNAが細胞において転写および遺伝子発現を開始する効率は、鎖長16〜18塩基の場合に最適であることが分かった。Wang, G. et al., J. Mol. Biol. 313: 933-940 (2001)。ラット肝臓ホモジネートをex vivoにて使用して、鎖長および塩基配列の異なる一連のホスホロチオエートDNAの代謝を調査した。Crooke, R. M. et al., J. Pharm. Exp.Therapeutics 292: 140-149 (2000)。最初に、全てのオリゴマーを3’エキソヌクレアーゼにより分解すると、鎖長が長くなるとともに代謝速度が上昇した。ピリミジンを多く含有するオリゴヌクレオチドがより不安定であるということから、ヌクレアーゼ代謝の速度と程度もまた塩基配列に関係していた。この特定調査は立体異性の影響も研究したという点で異例であった。あるジアステレオ異性体の代謝速度は他のものよりも迅速であり、それらの混合物の場合にはその間の速度で消化されることが判明した。最後に、最近の報告で、RNAにおけるホスホジエステル結合の反応性に及ぼす塩基配列の影響が記載されている。Kaukinen, U. et al., Nucl. Acids Res. 30: 468-474 (2002)。
【0014】
本発明者らは、ホスホロジアミデートモルホリノ(MORF)腫瘍イメージングおよび治療のようなオリゴマーの使用をこれまでに開示してきた。このような使用は、順に、2001年3月30日出願の米国仮出願番号60/279,809および2001年12月21日出願の同60/341,794の優先権を主張する、2002年4月1日出願の係属中の米国特許出願番号10/112,094の係属中の一部継続出願に開示されている。これらの出願の明細書、特許請求の範囲および図面をはじめとする全開示内容は、それらの全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる。
【0015】
天然ホスホジエステルDNAは、非結合性酸素が硫黄原子で置換されているという点でホスホロチオエートとは異なっている。PNAの場合、DNAのリン酸主鎖が、窒素含有塩基がメチレンカルボニル基を介して結合される(2−アミノエチル)グリシンポリペプチド結合に置き換わり、その一方で、MORFのホスホジエステル主鎖がホスホロジアミデート基で置換されており、リボース糖がモルホリノ環に置き換わっている。DNAと同様に、MORFおよびPNAは一般に市販されているが、DNAとは違って、それらはいずれも非荷電性であり、(ホスホジエステルDNAとは違って)ヌクレアーゼに対して安定であり、(ホスホジチオエートとは違って)非キラルである。
【0016】
増幅は、多段階プレターゲッティングプロセスであり、このプロセスはオリゴマーの複数のコピーと結合したポリマーの中間使用を通じて、ターゲッティングを大幅に向上させる可能性を有している。従って、腫瘍における放射活性の蓄積を大幅に増大させ、同時に、腫瘍/正常組織比を高める改善されたキットまたは方法が必要である。これにはまず、最後に抗体と結合させるMORFポリマーを調製する必要がある。このような方法においては、抗体の著しい変性の回避だけはしたい。
【0017】
増幅ターゲッティングに代わる1つの方法が(ストレプ)アビジン/ビオチン、二重特異性抗体またはオリゴマー対のいずれかを用いたプレターゲッティングである。最近、特に、二重特異性抗体(Karacay, H. et al., Bioconjug. Chem. 13: 1054-1070, 2002)およびオリゴマー(Liu, G. et al., J. Nucl. Med. 43: 384-391, 2002)を利用して有望な結果が報告されている。しかしながら、プレターゲッティングには多価ポリマーが関与しないため、増幅は(特定のストレプトアビジン/ビオチンプロトコールの場合最大4倍以外に)起こりえない(Kassis, A. I. et al., J. Nucl. Med. 37: 343-352, 1996)。
【0018】
ホウ素中性子捕捉用のホウ素のような低分子量種(Novick, S. et al.,.Nucl. Met. Biol. 29: 159-67, 2002)または種々の用途に向けた金属キレート剤(Torchilin, V. P. et al, Hybridoma 6: 229-40, 1987)の複数のコピーと直接結合した抗腫瘍抗体についての数多くの報告がなされている。明白な不利益として、特に、比較的高分子量のMORFの複数のコピーを結合することを目的とする場合には、結合した結果として抗体が変性する危険性がある。例えば、1分子あたり50個のMORFを保持するためには、IgG抗体の分子量が約150KDaから最小600KDaに上がるはずである。これらの条件下で免疫活性を保持することは不可能であろう。さらに、増幅ターゲッティングは、低分子量であることから、複数のMORFとの結合を受け入れることができない抗腫瘍および抗組織ペプチドのような抗体以外の組織特異的な薬剤を用いても有効である。
【0019】
ホスホジエステルの使用もホスホロモノチオエートの使用も、増幅ターゲッティングおよび他の放射性医薬品の適用に理想的とはいえない。前者はin vivoにてヌクレアーゼに対してあまりにも不安定であり、後者は血清および組織タンパク質に対してあまりにも高い親和性を示す(Hnatowich, D. J. et al., J. Pharmacol. Exp.Ther. 276: 326-334, 1996)。本発明者らは、その後、PNAが安定であり、最低タンパク質結合親和性を有することを示した(Mardirossian, G.et al., J. Nucl. Med. 38: 907-913, 1997)。それに応じ、本発明者らの第一の増幅ターゲッティング研究ではPNAを使用した(Wang, Y. et al., Bioconjug. Chem. 12: 807-816, 2001)。しかしながら、選択塩基配列を有するPNAの水溶解度が低いことから問題に遭遇した。結合に関する問題から、PNA研究では抗腫瘍抗体を使用しなかった(Wang, Y. et al., 2001、上記)。場合により、水溶性がより高いことから、アミン誘導体化MORFを抗腫瘍抗体MN14およびキレート化剤MAGの両方と結合させ、99mTcでの放射性標識化に成功した。放射性標識およびMORFは、タンパク質に対してほとんど親和性を示さず、in vitroおよびin vivoにて「安定」であることが判明し、それらは標識したPNAと同様に、迅速なハイブリダイゼーションが可能である(Mang'era, K. et al., Eur. J. Nucl. Med. 28: 1682-1689, 2001)。
【0020】
増幅ターゲッティングは、MORF−抗体と放射性標識MORF(プレターゲッティングの場合にはcMORF)の両方を使用するプレターゲッティング(本明細書に記載)といくつかの類似点を共有しているが、ポリマーを中間使用する点で異なっている。増幅ターゲッティングはプレターゲッティングよりも明らかに複雑であるが、シグナル増幅の可能性がある。
【0021】
増幅ターゲッティングの1つの重要な態様がin situ接近可能性である。腫瘍にて高放射能レベルを実現するためには、腫瘍における抗体のMORFを多量体cMORFに接近しやすくし、そして、腫瘍におけるポリマーのcMORFを放射性標識MORFに接近しやすくする必要がある。もう1つの重要な態様は、肝臓、脾臓、腎臓および他の正常な器官内での多量体cMORFの蓄積によって起こる。これらの正常器官におけるバックグラウンド放射線レベルを低減するためには、多量体cMORFの発現を迅速に放射性標識MORFに接近できない状態にすべきである。
【0022】
ストレプト/アビジン−ビオチンおよび二重特異性抗体−ハプテン系に優るいくつかの利点にもかかわらず、プレターゲッティングにおいてこれらのオリゴマーを使用する場合にはいくつかの制限がある。これらの制限としては、特異性が乏しいこと、水溶液に不溶性である可能性があること、およびコストが高いことが挙げられる。
【0023】
哺乳動物において標的部位に治療薬または診断薬を送達するためのin vivo ターゲッティングに用いる、より特異的で、手ごろで安価であり、標的への高い取り込みと正常組織内への低い取り込みを提供する、改善されたキットおよび方法が依然として必要とされている。また、癌細胞とは結合していない過剰の同位体標識オリゴマーが体内、とりわけ、腎臓から迅速に排除されるという改善されたプレターゲッティングキットおよび方法を提供する必要もある。
【発明の概要】
【0024】
従って、本発明の1つの目的は、哺乳動物において診断薬または治療薬を増幅ターゲッティングするのに有用なキットおよび方法であって、比較的安価な出発原料から調製することが可能であり、さらに、従来のキットおよび方法ならびに他の公知のキットおよび方法よりも腎臓での取り込みおよび保持量が少なく、毒性が低く、特異性、安定性、予測可能なターゲッティングに優れ、かつ/または所望の抗原−抗体効果の高いキットおよび方法を提供することである。本発明のもう1つの目的は、MORFの複数のコピーを抗体と直接結合させ、そうすることによって、哺乳動物への第二の投与を回避することである。
【0025】
もう1つの目的は、ストレプト/アビジン−ビオチン、ペプチド核酸および他のオリゴマーの代わりに、多価モルホリノオリゴマー(MORF、下記に定義する)を使用する増幅ターゲッティングによる腫瘍局在/イメージングに有用な方法であって、放射性標識したターゲッティング部分を標的内の主たる標的特異的な結合部位に高度に蓄積させ、そうすることによって、腫瘍における放射活性の蓄積を大幅に増大させ、同時に、腫瘍/正常組織比を高めるという代替法を提供することである。
【0026】
これらおよび他の目的は、本発明の1つの実施態様によれば、哺乳動物において診断薬または治療薬をターゲッティングするためのキットであって、
(A)標的部位の主要な標的特異的な結合部位、または標的部位により生成される物質もしくは標的部位と関連する物質と選択的に結合するターゲッティング部分と、モルホリノオリゴマーとを含んでなる第一の複合体、
(B)所望により、クリアリング剤、
(C)ポリマーと結合した相補的モルホリノオリゴマーの複数のコピーと診断薬または治療薬とを含んでなる第二の複合体、および
(D)モルホリノオリゴマーと放射性標識とを含んでなる第三の複合体
を含んでなるキットの提供により実現する。
【0027】
工程(a)のターゲッティング部分は、好ましくは、抗体、特に、ヒト化抗体またはヒト化抗体の抗原結合フラグメントを含んでなる。このようなヒト化抗体の1つが抗癌胎児性抗原(CEA)抗体である。ターゲッティング部分は、タンパク質、小ペプチド、ポリペプチド、酵素、ホルモン、ステロイド、サイトカイン、神経伝達物質、オリゴマー、ビタミンおよび受容体結合分子からなる群から選択される。
【0028】
工程(c)のポリマーとしては、限定されるものではないが、ポリ−リジン(PL)、ポリエチルビニルエーテルマレイン酸(PA)デキストラン、デンドリマーおよびN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)が挙げられる。
【0029】
本発明のもう1つの態様によれば、モルホリノオリゴマーとその相補的モルホリノオリゴマーの長さが少なくとも約6塩基〜約100塩基である、上記のようなキットが提供される。加えて、モルホリノオリゴマーおよびその相補的モルホリノオリゴマーは15マー、18マーまたは25マーであってもよい。標的部分が15マー、18マーまたは25マーモルホリノオリゴマーと結合する。
【0030】
好ましい実施態様では、クリアリング剤は、抗イディオタイプ抗体または抗原結合抗体フラグメントである。
【0031】
もう1つの好ましい実施態様では、治療薬は、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物質、キレート化剤、ホウ素化合物、光活性物質または色素および放射性核種からなる群から選択される。
【0032】
さらにもう1つの好ましい実施態様では、診断薬は、放射性核種、色素、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴画像法(MRI)に有用な増強剤からなる群から選択される。
【0033】
本発明によれば、哺乳動物において診断薬または治療薬を標的部位に送達するためのターゲッティング方法であって、
(a)前記哺乳動物に、標的部位の主要な標的特異的な結合部位、または標的部位により生成される物質もしくは標的部位と関連する物質と選択的に結合するターゲッティング部分と、モルホリノオリゴマーとを含んでなる第一の複合体を投与すること、
(b)所望により、前記哺乳動物にクリアリング剤を投与し、前記クリアリング剤によって局在していない第一の複合体を循環から排除すること、および
(c)前記哺乳動物に、相補的モルホリノオリゴマーの複数のコピーと結合したポリマーと、診断薬または治療薬とを含んでなる第二の複合体を投与すること(この際、前記相補的モルホリノオリゴマー−ポリマー複合体が第一の複合体のそのモルホリノオリゴマー相補体と結合することによって、診断薬または治療薬を標的部位にターゲッティングする)、および、
(d)前記哺乳動物に、モルホリノオリゴマーと放射性標識とを含んでなる第三の複合体を投与すること
を含んでなる方法が提供される。
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【発明の具体的説明】
【0034】
特に断りのない限り、単数形で示される用語は1以上のものを意味する。
【0035】
本発明は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)において診断薬または治療薬をin vivoターゲッティングするのに有用なキットおよび方法であって、
(A)標的部位の主要な標的特異的な結合部位、または標的部位により生成される物質もしくは標的部位と関連する物質と選択的に結合するターゲッティング部分と、モルホリノオリゴマーとを含んでなる第一の複合体、
(B)所望により、クリアリング剤、
(C)ポリマーと結合した相補的モルホリノオリゴマーの複数のコピーと、診断薬または治療薬とを含んでなる第二の複合体、および
(D)モルホリノオリゴマーと放射性標識とを含んでなる第三の複合体
を含んでなるキットおよび方法を提供する。
【0036】
ターゲッティング部分は、例えば、抗体または抗原結合抗体フラグメントであってよい。特異性が高いことからモノクローナル抗体(Mab)が好ましい。これらは免疫原性抗原調製物での哺乳動物の免疫化、免疫リンパまたは脾臓細胞と不死化骨髄腫細胞系との融合および特定のハイブリドーマクローンの単離からなる従来の手順と考えられている方法により容易に調製される。主として、抗体の抗原特異性が本発明におけるそれらの有用性に影響を及ぼすことから、種間融合および遺伝子工学による超可変領域の操作のようなより斬新なモノクローナル抗体調製方法もまた意図される。当然のことではあるが、モノクローナル、例えば、ヒトモノクローナル、種間モノクローナル、キメラ(例えば、ヒト/マウス)モノクローナル、遺伝子組換え抗体などを製造するための最新の技術を使用することもできる。
【0037】
本発明において有用な抗体フラグメントとしては、ハイブリッドフラグメントを含むF(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fvなどが挙げられる。好ましいフラグメントはFab’、F(ab’)、FabおよびF(ab)である。同様に、免疫グロブリンの、抗原と結合する超可変領域を保有し、かつ、Fab’フラグメント以下の大きさを有するいかなるサブフラグメントも有用である。これには、単鎖または複数鎖を問わず、抗原結合部位を組み入れているか、そうでなければin vivoにて天然免疫グロブリンフラグメントと実質的に同じようにターゲッティングビヒクルとして機能する遺伝子操作した抗体およびタンパク質または組換え型抗体およびタンパク質が含まれる。このような単鎖結合分子については、引用することにより本明細書の一部とされる、米国特許第4,946,778号に開示されている。
【0038】
Fab’フラグメントは、便宜には、還元条件下での無傷免疫グロブリンのペプシン消化によるか、または完全免疫グロブリンの慎重なパパイン消化によって生じるF(ab’)フラグメントの切断によって作製し得るF(ab’)フラグメントの還元切断により作製してもよい。また、遺伝子工学によってそのフラグメントを作製してもよい。
【0039】
さらに、少なくとも60%の癌細胞により生成されるか、またはその癌細胞と関連するマーカー物質に対する特異的な免疫反応性を有する抗体および35%未満の他の抗原または非標的物質に対する交差反応性を有する抗体も好ましい。腫瘍により生成されるか、またはは腫瘍と関連する抗原と結合させることにより腫瘍部位に特異的にターゲッティングモノクローナル抗体が特に好ましい。
【0040】
腫瘍抗原に対する抗体については公知である。例えば、腫瘍により生成されるか、あるいは腫瘍と関連するマーカーと特異的に結合する抗体および抗体フラグメントは、とりわけ、それらの全ての開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、Hansen et al., 米国特許第3,927,193号ならびにGoldenbergの米国特許第4,331,647号、同第4,348,376号、同第4,361,544号、同第4,468,457号、同第4,444,744号、同第4,818,709号および同第4,624,846号に開示されている。特に、抗原、例えば、胃腸腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、脳腫瘍もしくはリンパ腺腫瘍、肉腫または黒色腫に対する抗体を使用することが有利である。
【0041】
本発明のターゲッティング部分の他の標的としては、限定されるものではないが、B細胞抗原、T細胞抗原、形質細胞抗原、HLA−DR系統抗原、CEA、NCA、MUC1、MUC2、MUC3およびMUC4抗原、EGP−1抗原、EGP−2抗原、胎盤アルカリ性ホスファターゼ抗原、IL−6、VEGF、テネイシン、CD33、CD74、PSMA、PSA、PAP、自己免疫疾患、感染/炎症および感染症と関連する抗原が挙げられる。標的がB細胞もしくはT細胞リンパ腫と関連するか、または自己免疫疾患と関連するB細胞もしくはT細胞と関連する標的抗原である場合もある。標的がCD19、CD22、CD40、CD74、CEA、NCA、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、HLA−DR、EGP−1、EGP−2、IL−15および悪性疾患によって発現されるHLA−DRからなる群から選択される抗原である場合もある。標的は、例えば、特定の悪性疾患に関するEGP−2、EGP−1、CD22、CEAまたはMUC1である。
【0042】
標的は、細菌、ウイルス、真菌、寄生生物または他の微生物によって発現される可能性がある。
【0043】
また、標的は、感染部位にて増大する、活性化された顆粒球のような宿主細胞によって発現される可能性もある(例えば、CD15、CD33、CD66a、CD66b、CD66c(NCA)およびCD66e他)。
【0044】
本発明の方法において有用な抗体および抗原結合抗体フラグメントは、当技術分野で公知の種々の化学的結合方法により結合対のメンバーと結合させてもよい。これらの方法の多くは、それらの全ての開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、上記の米国特許および特許出願に開示されている。Childs et al., J. Nuc. Med. 26: 293 (1985)も参照のこと。
【0045】
本発明において有用な1つのモノクローナル抗体が、CEAに対して第一世代型NP−4よりも10倍高い親和性を有する第二世代CEA−抗体であるMN−14である。Hansen et al., Cancer 71: 3478-85, (1993)。MN−14はゆっくりと取り込まれ、これによりターゲッティングアプローチに好適なものとなる。これはキメラ化され、ヒト化されている。Leung et al., 米国特許第5,874,540号。
【0046】
本発明において好適な他の抗体または抗体フラグメントは、悪性疾患にターゲッティングする場合には、例えば、RS11、17−1A、RS7、LL1、LL2、MN−3、MN−14もしくはPAM4またはそのヒト化型であってもよいし、あるいは、RS11、17−1A、RS7、LL1、LL2、MN−3、MN−14もしくはPAM4またはそのヒト化型から誘導したものであってもよい。好適な顆粒球抗体はLeukoScan(登録商標)で使用されるMN3である。
【0047】
本発明において有用な他のターゲッティング部分が、標的部位により生成されるか、あるいは標的部位と関連するマーカー物質と優先的に結合する、タンパク質、小ペプチド、ポリペプチド、酵素、ホルモン、ステロイド、サイトカイン、神経伝達物質、オリゴマー、ビタミンおよび受容体結合分子からなる群から選択される非抗体種であってもよい。
【0048】
モルホリノオリゴマー(本明細書では「モルホリノ」または「MORF」)は選択されたRNA配列と結合し、不活性化する。これらのオリゴマーは、六員のモルホリン環に連結された、その各々が4種の遺伝子塩基(A、G、C、TまたはU)のうちの1つを含有する4つの異なるモルホリノサブユニットで構成されている。15〜25マーの場合、非イオン性ホスホロジアミデートサブユニット間結合によってこれらのサブユニットが特定の順序で結びつき、モルホリノオリゴマーが生じる。これらはDNA、RNAおよびイオン結合により結びついた五員のリボースまたはデオキシリボース主鎖部分を有するそれらの類似体よりも優れたアンチセンス特性を提供し得る。モルホリノに関するSummertonの研究については、それらの開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、米国特許第5,142,047号および同第5,185,444号に開示されている。モルホリノは、Gene Tools, LLC,. Corvallis, Oregonより市販されている。
【0049】
それらは標的へと容易に送達されるため、モルホリノは遺伝学研究および薬剤標的実証プログラム向けの効果的なツールである。それらはヌクレアーゼに完全に耐性である。よりリジッドなMORF主鎖は、二本鎖形成時に、ペプチド主鎖または一般的な糖骨格に比べて優れた接近性を提供し得る。PNAと比べると、モルホリノはより安価であり、水溶液溶解度はより高く、それによれば予測可能なターゲッティングにより優れ、RNA結合親和性の効果がより高い。
【0050】
本発明においては、ターゲッティング抗体と結合したモルホリノオリゴマー(本明細書ではMORF)は、診断薬または治療薬と結合した相補的MORF(本明細書ではcMORF)とin vivoにてハイブリダイズされる。好ましい実施態様では、MORFおよびその相補的モルホリノ(cMORF)の長さは6塩基〜約100塩基であり、例えば、MORF15およびcMORF15(15マー)、MORF18およびcMORF18(18マー)またはMORF25およびcMORF25(25マー)である。
【0051】
本発明で使用するMORFとしては、15マー(5’相当TGT−ACG−TCA−CAA−CTA−リンカー−アミン(本明細書ではMORF15)とTAG−TTG−TGA−CGT−ACA−リンカー−アミン(本明細書では相補的MORF15またはcMORF15))、18マー(5’相当CGG−TGT−ACG−TCA−CAA−CTA−リンカー−アミン(本明細書ではMORF18)とTAG−TTG−TGA−CGT−ACA−CCC−リンカー−アミン(本明細書では相補的MORF18またはcMORF18))および25マー(5’相当T−GGT−GGT−GGG−TGT−ACG−TCA−CAA−CTA−リンカー−アミン(本明細書ではMORF25)とTAG−TTG−TGA−CGT−ACA−CCC−ACC−ACC−A−リンカー−アミン(本明細書では相補的MORF25またはcMORF25))が挙げられる。
【0052】
本発明で使用するモルホリノオリゴ構造(Summerton and Weller, Antisense Nucl. Acid Drug Dev. 7: 187-95, 1997)を以下に示す:
【化1】

【0053】
本発明に従って、当技術分野で公知のクリアリング剤を使用してもよい。例えば、第一の複合体がアビジンまたはストレプトアビジンを含んでなる場合には、クリアリング剤としてビオチンを使用することができる。また、第一の複合体がビオチンを含んでなる場合には、クリアリング剤としてアビジンまたはストレプトアビジンを使用することができる。
【0054】
好ましい実施態様では、クリアリング剤が、抗体、抗原結合抗体フラグメントまたは非抗体標的化部分であるターゲッティング部分の結合部位と結合する抗体である。より好ましい方法では、米国出願番号08/486,166に記載のように、クリアリング剤は、第一の工程で使用する複合体のモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプであるモノクローナル抗体である。もう1つの好ましい実施態様では、クリアリング剤をガラクトースのような炭水化物の複数の残基で置換し、そうすることによって、クリアリング剤が肝臓にあるアシアロ糖タンパク質受容体により循環から迅速に排除されるようにしている。
【0055】
標的化種の生理溶液は、有利には、定量、例えば、単位用量約1.0〜500mg標的化種/バイアルにて滅菌バイアルに入れられる。このバイアルは栓をし、密閉し、低温保存されるか、または凍結乾燥させ、栓をし、密閉し、保存される。
【0056】
これらの処方物の変形および改変は当業者ならば、哺乳動物または治療計画それぞれの要求、ならびに、放射性同位元素を供給する形態または放射性同位元素の入手可能な形態のバリエーションに応じて容易に理解できる。
【0057】
投与経路としては、静脈内、動脈内、胸膜腔内、腹腔内、くも膜下腔内、皮下投与または灌流による投与が挙げられる。
【0058】
腫瘍または心血管病変(血塊、塞栓、梗塞など)、感染症、炎症性疾患および自己免疫疾患のような他の病変の体内検出または治療に有用な方法については、それらの開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる、米国特許第4,782,840号、第4,932,412号および第5,716,595号に開示されている。これらの参考文献に開示されている方法を補強するために本発明の方法を使用してもよい。また、本発明は術中探針、内視鏡および腹腔鏡を併用して実施してもよいし、正常な器官をイメージングするための方法により実施してもよい。本発明の方法を当業者には明らかな他の方法で使用することもできる。
【0059】
治療薬の例としては、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物質、キレート化剤、ホウ素化合物、光活性物質または色素および放射性核種が挙げられる。
【0060】
さらに好ましい実施態様では、cMORFを二官能性キレート化剤と結合させ、その後、そのキレート化剤を同位元素で放射性標識する。厳しい状況に耐えることのできないタンパク質、ポリペプチドまたはオリゴヌクレオチドでは、それらとの結合の前に、まず、キレート化剤を放射性標識化する(結合前標識)。キレート化剤の例としては、ヒドラジノニコチンアミド(HYNIC)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカンN,N’,N’’,N’’’−四酢酸(DOTA)およびメルカプトアセチルグリシルグリ−シルグリシン(MAG)が挙げられる。本発明で使用する好ましい二官能性キレート化剤は、アセチル−S−保護メルカプトアセチルトリグリシン(NHS−MAG)のN−ヒドロキシスクシンイミジル誘導体である。NHS−MAGは、Winnard, P. et al., Nucl. Med. Biol. 24: 425-32 (1997)の方法に従って合成される。一本鎖モルホリノオリゴマーのNHS−MAGとの結合は、Mardirossian, G. et al., J. Nucl. Med. 38: 907-13 (1997)に記載のように実施した。
【0061】
増幅ターゲッティングの1つの重要な態様がin situ接近可能性である。腫瘍にて高放射能レベルを実現するためには、腫瘍における抗体のMORFを多量体cMORFに接近しやすくし、そして、腫瘍におけるポリマーのcMORFを放射性標識MORFに接近しやすくする必要がある。もう1つの重要な態様は、肝臓、脾臓、腎臓および他の正常な器官内での多量体cMORFの蓄積によって起こる。これらの正常器官におけるバックグラウンド放射線レベルを低減するためには、多量体cMORFの発現を迅速に放射性標識MORFに接近できない状態にすべきである。
【0062】
本発明のポリマーは、以下の特性を有するべきものである:(1)無毒であること;(2)適当な分子量を有し、市販されていること;(3)cMORFとの結合が実現可能であること;(4)必要数のcMORFが結合しているポリマーを通じて接近可能であること;(5)結合したポリマーが十分な水溶性を有し、血中濃度が適度に持続するその薬物動態が有利であること;(6)ポリマーの抗体とのハイブリダイゼーションによって腫瘍への取込みを促進しないこと;および(7)正常組織においてcMORF発現が消失するように、ポリマーがこれらの正常組織で代謝し、腫瘍においてポリマーが効果的に拡散すること。好ましくは、ポリマーは、上記特性全てを有するポリ−リジン(PL)およびポリエチルビニルエーテルマレイン酸(PA)である。他の好ましいポリマーとしては、限定されるものではないが、デキストラン、デンドリマーおよびN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)が挙げられる。これらのポリマー各々が以下に示した有用な分子量を有する種類のものとして商業的に入手可能であり、各々水溶性を有し、各々cMORFと容易に結合することからそれらを選択した。さらに、PLおよびPAの両方を使用することに成功した。デンドリマーは非線形ポリマーを評価する機会を提供する。デキストランは50年以上にわたって、血漿量の増加に、末梢血流の促進に、そして、抗血栓薬として実際の臨床に用いられてきた(Thoren, 1981; Mehvar, 2000)。また、特に、増幅に関連して投与される低用量でのPLおよびデンドリマーの安全性は証明されている(Malik, 2000)。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明者らがこれまでのPNA研究で使用したポリマーは、最初の分子量が80KDaであり、1分子当たり約900個のカルボキシル基を有するポリメチルビニルエーテルマレイン酸(PA)であった(Wang, Y. et al., Bioconjug. Chem. 12: 807-816, 2001)。各分子を平均80個のPNA(各々が19メンバーポリエーテルポリアミドリンカーを有する)で修飾した。PNAの水溶解度に制限があるため、ポリマーが平均200個のポリエチレングリコール(PEG)基とも結合される場合を除き、PAポリマーは好ましくない薬物動態(すなわち、肝臓濃度が高く、血中濃度が低い)を示した。結果として、PEGにより、70%を上回るものに関して最終的なポリマーの分子量が1.4MDaまで増加した。分子量がこの程度まで増加することにより、腫瘍への拡散および浸透が制限されることが予想される。そうとはいえ、PNA研究の最も有望な態様は接近可能性であった。溶液中の放射性標識cPNAにはPAにおけるPNAの75%が接近可能であり、(ビーズに)固定化されている場合でさえ、PAにおけるPNAの35〜58%がなお接近可能であった(Wang et al., 2001、上記)。
【0065】
PNAに対し、MORFを使用するとポリマーの合成が簡易化され、より広範な種類のポリマーの選択が提供された。並行した調査では、必要なカルボキシル基を提供するために完全にスクシニル化した、最初の分子量の異なる3種類のポリリジン(PL)を合成し、試験した(非公開の所見)。さらに、これまでにPNAとともに使用したものと類似したPAの最終分子量が、1分子当たりの接近可能なオリゴマーの数がほんの少し少ない場合の1.4MDaに対し、約0.4MDaであるようにPEGを含まないPAも調べた。正常マウスの生体内分布では、PNAに対し、ほとんど同じ条件下でMORFと結合させた場合、PAの肝臓濃度は約半分であり、血中濃度は4倍であることから、PNAより優れたMORFの利点が示された。これらの結果は、さらに、試験した他の3種類のポリマーよりも血中濃度が高く、肝臓濃度か低い30KDaのPLがin vivo研究に適していることも示唆した。こういうわけで、本明細書にて記載するin vivo研究では30KDaのPLポリマーを使用した。しかしながら、このポリマーは1分子当たり12〜15個のcMORFしか有していなかった。これに対し、in vitro研究用に選択したより大きな100KDaのPLポリマーは1分子当たり35〜40個のcMORFを有していた。
【0066】
組織培養による腫瘍細胞蓄積試験は、動物試験を実施するよりもずっと簡単であり、クリアランスによる濃度の低減を受けない。そのため、このような試験が増幅戦略の有用な予備試験となり得る。それでもなお、組織培養試験は表1にて示されるように、腫瘍動物試験と同様に非特異的蓄積が伴うため、対照を使用する必要がある。組織培養での非特異的細胞蓄積をなくすことにより、プレターゲッティングに比べて6倍の特異的蓄積の増大が実現した。
【0067】
動物試験は、明らかに、組織培養試験に比べて、より現実的でより厳しい増幅ターゲッティング試験を提供する。最初の2つの動物試験は、腫瘍内の抗体およびポリマーを定量する目的で設計した。二重放射能標識を使用することにより、この調査条件下では、約2日間で腫瘍内の抗体MORFの約25%が多量体cMORFにより標的化され、3時間後に腫瘍内のこれらの多量体cMORFの12%が放射性標識MORFにより標的化されることが予測できた。この研究室によるPNAに関するこれまでの研究では抗腫瘍抗体を使用しなかったため、25%の値とは比べものにならない。しかしながら、腫瘍における多量体オリゴマーの12%の接近可能性は、これまでに判明した35〜60%の接近可能性よりも低い(Wang, Y. et al., 2001、上記)。この違いに関しては考えられる理由が多くあり、それらの理由としては、異なるポリマー主鎖の使用(すなわち、PA対PL)、大きさの異なるポリマーの使用(最初のM 80KDa対30KDa)、異なるオリゴマーの使用(すなわち、PNA対MORF)、異なるリンカーの使用(すなわち、19メンバーポリエーテルポリアミド対9メンバースクシニル化ピペリジン)、異なる腫瘍モデルの使用(すなわち、ACHN対LS174T)およびポリマーの投与と放射性標識の投与間に要する時間を変えたこと(すなわち、3時間対18時間)が挙げられる。最も有力な理由は異なる局在化機構を利用したことであろう。PNAポリマーは非特異的拡散により腫瘍に局在化し、そのため、間質液中におそらく遊離していたであろうが、MORFポリマーはおそらく腫瘍細胞表面にあるその抗体標的に固定されていたであろう。溶液中の両ポリマーの接近可能性がcMORFポリマーでは50%に対し、cPNAポリマーでは70%である(Wang, Y. et al., 2001、上記)ということでほぼ一致していることからもこの可能性は支持される。
【0068】
全ての動物試験で、試験動物と対照動物間で統計的に有意に高い値を一貫して示す唯一の組織が腫瘍であった。血液は試験動物で有意に高い場合が多いが、これはMORF−99mTc投与時に循環中(および組織中)に残留している抗体およびポリマーがハイブリダイズし、放射性標識MORFを保持しているものと考えられる。クリアリング剤の使用が有用であろう(Lubic, S. P. et al., J. Nucl. Med. 42: 670-678, 2001)。
【0069】
最後に、増幅ターゲッティング概念実証は、in vivoにて存在する蓄積に対する障害やクリアランスとターゲッティングとの競合にもかかわらず、腫瘍内のMN14におけるMORFをcMORFポリマーにより、そして、腫瘍内のポリマーにおけるcMORFを放射性標識MORFにより効果的にターゲッティングすることが可能であるということにより明示された。腫瘍における放射能蓄積はプレターゲッティングに比べて倍以上(すなわち、増幅倍率2.1)であった。さらに、(抗体における)MORF発現および(ポリマーにおける)cMORF発現は肝臓、脾臓および腎臓のような正常な器官では急速に消失したが、腫瘍では消失せず、標的/非標的比が高まった。抗体を、平均してたった0.2個のMORFと、1分子当たり15個のcMORFしか有していない、おそらくあまり理想的ではないポリマーであるものと結合したにもかかわらず、これらの結果が得られた。さらに、クリアリング剤は使用しなかった。
【0070】
治療薬として有用な、β線放射により実質的に崩壊する放射性核種としては、限定されるものではないが、P−32、P−33、Sc−47、Fe−59、Cu−64、Cu−67、Se−75、As−77、Sr−89、Y−90、Mo−99、Rh−105、Pd−109,Ag−111、I−125、I−131、Pr−142、Pr−143、Pm−149、Sm−153,Tb−161、Ho−166、Er−169、Lu−177、Re−186、Re−188、Re−189、Ir−194、Au−198、Au−199、Pb−211、Pb−212およびBi−213が挙げられる。有用なβ線放射核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは、20〜5,000keVであり、より好ましくは、100〜4,000keVであり、最も好ましくは、500〜2,500keVである。
【0071】
治療薬として有用な、オージェ放射粒子により実質的に崩壊する放射性核種としては、限定されるものではないが、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、I−125、Ho−161、Os−189mおよびIr−192が挙げられる。これらの放射性核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは、1,000keV未満であり、より好ましくは、100keV未満であり、最も好ましくは、70keV未満である。
【0072】
治療薬として有用な、α粒子を生じることにより実質的に崩壊する放射性核種としては、限定されるものではないが、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213およびFm−255が挙げられる。有用なα線放射核種の崩壊エネルギーは、好ましくは、2,000〜9,000keVであり、より好ましくは、3,000〜8,000keVであり、最も好ましくは、4,000〜7,000keVである。
【0073】
光線力学療法の一部として有用な、錯体としての金属としては、限定されるものではないが、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、ルテチウムおよびパラジウムが挙げられる。
【0074】
中性子捕捉法に基づく治療法に有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、B−10、Gd−1557およびU−235が挙げられる。
【0075】
有用な診断薬としては、限定されるものではないが、放射性核種、色素(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン複合体の使用)、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴画像法(MRI)に用いる増強剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられる。米国特許第6,331,175号では、MRI法およびMRI増強剤と結合した抗体の調製について記載されており、これはその全開示内容が引用することにより本明細書の一部とされる。好ましくは、診断薬が放射性核種、磁気共鳴画像法で用いる増強剤および蛍光化合物からなる群から選択される。
【0076】
陽電子放射型断層撮影法で用いる診断薬として有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、F−18、Mn−51、Mn−52m、Fe−52、Co−55、Cu−62、Cu−64、Ga−68、As−72、Br−75、Br−76、Rb−82m、Sr−83、Y−86、Zr−89、Tc−94m、In−110、I−120およびI−124が挙げられる。有用な陽電子放出核種の全崩壊エネルギーは、好ましくは、2,000keV未満であり、より好ましくは、1,000keV未満であり、最も好ましくは、700keV未満である。
【0077】
磁気共鳴画像法を利用する場合の診断薬に有用な金属としては、限定されるものではないが、カドリニウム、マンガン、鉄、クロム、銅、コバルト、ニッケル、ジスプロシウム、レニウム、ユーロピウム、テルビウム、ホルミウムおよびネオジムが挙げられる。
【0078】
γ線検出を利用する場合の診断薬として有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、Cr−51、Co−57、Co−58、Fe−59、Cu−67、Ga−67、Se−75、Ru−97、Tc−99m、In−111、In−114m、I−123、I−125、I−131、Yb−169、Hg−197およびTI−201が挙げられる。有用なγ線放射核種の崩壊エネルギーは、好ましくは、20〜2000keVであり、より好ましくは、60〜600keVであり、最も好ましくは、100〜300keVである。
【0079】
以下、本発明の実施態様を、本発明の態様を詳細に示す実施例により説明する。これらの実施例は、本発明の特定の要素を例示するものであり、その範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0080】
材料および方法
9メンバースクシニル化ピペリジンリンカーを介して3’−アミンを有する25マーMORFおよびcMORFを購入した(Gene Tools, Corvallis, OR)。これらはこれまでに本発明者らが使用したものと同じものであった(Liu, G. et al., Quart. J. Nucl. Med. 46: 233-43, 2002)。高親和性ネズミ抗CEA抗体(MN14,IgGサブタイプ、M 160KDa)は、Immunomedics(Morris Plains, NJ)から入手した。平均M約30KDaおよび100KDaを有する、均一にスクシニル化されたポリ−リジンをSigma-Aldrich, St Louis, MOから購入した。塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、Pierce Company, Rockford, IL製のものであった。
【0081】
Winnard, P. et al., Nucl. Med. Biol. 24: 425-32 (1997)の方法に従って二官能性キレート化剤、アセチル−S−保護メルカプトアセチル−トリグリシン(NHS−MAG)のN−ヒドロキシスクシンイミジル誘導体を合成した。元素分析、陽子NMRおよび質量分析によりこの構造を確認した。0.225M水酸化ナトリウム0.97mlに、トリグリシン50mg(264μmol)および新たに調製した50mMエチレントリアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム10μlを添加した。この溶液を0.2μmフィルターに通してアミン含有粒子を除去した。ジメチルホルムアミド(DMF;モレキュラーシーブスで乾燥させた)340μl中S−アセチルチオグリコール酸N−ヒドロスクシンイミドエステル(SATA)90mg(390μmol)の溶液を調製し、その溶液をトリグリシン攪拌溶液に滴下した。室温にて15分間攪拌した後、6M塩酸37.6μlを添加して、非水溶液の見かけのpH8.9から見かけのpH約2.7(ガラス電極−pHメーターで測定)に調整した。最初のpH約8.9は、トリグリシンのアミンを脱プロトン化するがSATAのアセチル基が加水分解する強塩基性pH値には達しないように選択した(pK7.9; Fasman, G. D. [ed.] 1976, CRC Handbook of Biochemistry and Molecular Biology, Third Edition, Vol. I, p 321, CRC Press, Boca Raton, FL)。アセチル基の加水分解を最小限に抑えるためにできるだけ早くpHを下げた。
【0082】
乾燥DMF3.6ml中ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)60mg(290μmol)の溶液をトリグリシン/SATA攪拌溶液に迅速に添加した(見かけのpH約5.0)。ジシクロヘキシル尿素が沈殿し始めたため、この溶液は2分で混濁状態となった。この反応物を暗室で室温にて2〜4時間攪拌した後、さらに1時間−20℃に冷却し、完全沈降を促した。4℃、2500gにて15分間遠心分離した後、清澄な上清を除去した。
【0083】
DMF溶液中には水が存在するため、この形態のNHS−MAG調製物の使用は調製の24時間以内とした。長期保存する場合には、NHS−MAG水/DMF溶液をロータリーフラッシュエバポレーター(Rotavapur-R, Buchi, Switzerland)により15〜30分でほとんど蒸発乾固させた後、凍結乾燥機(Virtis, Gardenier, NY)により1時間内に凍結乾燥させた。NHS−MAGは、このように乾燥させた後、デシケーターに入れて室温にて無期限に保存することができる。複合体形成用に乾燥粉末にしたNHS−MAGを使用する場合、任意値50重量%をその純度と見なした。
【0084】
サイズ排除(SE)HPLC分析をSuperdex ペプチドカラム(最適分離範囲1×10〜7×10Da、Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)により、溶離剤として0.10mol/Lリン酸バッファー、pH 7.0を流速0.6mL/分にて用いて実施した。260nmでのインラインUV吸光度および放射能検出器を利用して、ピーク画分を特定し、定量した。放射能の回収率を通常通り測定した。
【0085】
試薬用DTPA環状無水物およびカルボニルジイミダゾールは、Sigma-Aldrich(St Louis, MO)製のものであり、そのまま使用した。P4樹脂(バイオゲル P4ゲル、培地)は、Bio-Rad Laboratories, Hercules, CAから購入した。セファデックスG100樹脂は、Pharmacia Biotech Uppsala, Swedenから入手した。99mTc−過テクネチウム酸塩は、99Mo−99mTcジェネレーター(Bristol-Myers Squibb Medical Imaging, Billerica, MA)から溶出した。111Inは、塩化物として購入した(PerkinElmer Life Science Inc., Boston, MA)。他の全ての化学薬品は試薬用のものであり、さらなる精製は行わずに使用した。
【0086】
MN14−MORF、MN14−DTPA、MORF−MAG、MORF−DTPAの調製と放射性標識化
MN14のMORFとの複合体形成は、Liu et al.によってこれまでに記載されている(J. Nucl. Med. 43: 384-391, 2002)ように、EDCを用いてアミン誘導体化MORFを天然抗体と反応させ、その後、セファデックスG−100により、0.05Mリン酸バッファー、pH7.2を用いて精製を行うことにより実施した。MORF結合抗体は、HPLCにより、265nmおよび280nmでの示差的UV法を利用して、濃度と1抗体分子当たりの平均MORF数(1分子当たりの基)について特徴づけた(Liu et al., Quart. J. Nucl. Med. 46: 233-43, 2002)。MN14−DTPAおよびMORF−DTPAは、記載されている(Liu et al., Nucl. Med. Comm., in press, 2003)ように、DTPA環状無水物を用いて調製した。複合体化したDTPAと遊離DTPAの両方に対し、111Inの接近可能性が同じであるとし、精製前に混合物を111Inで標識することにより1MN14当たりの平均DTPA基数を測定した。MORF−MAG99mTcは、これまでに記載されている(Liu et al., Quart. J. Nucl. Med. 46: 233-43, 2002)ように、調製し、分析した。放射性標識化は、まず、99mTc過テクネチウム酸塩ジェネレーター溶出物を、MORF−MAGまたはcMORF−MAG(0.1μg/μlを上回る濃度)(5〜10μl)、0.25M酢酸アンモニウムバッファー、pH5.2(25μL)、pH 9.2酒石酸塩溶液(50μg酒石酸ナトリウム二水和物/μl)(10μl)、および塩化スズ溶液(10mM HCl 1μl中塩化スズ二水和物1μgおよびアスコルビン酸ナトリウム1μg)(4μl)の溶液に添加し、その後、その溶液を沸騰水中で約20分間加熱することにより実施した。生成物をP4カラムにより、溶離剤として0.05Mリン酸バッファー、pH7.2を用いて精製した。MORF−111Inは、MORF−DTPAを111Inとともに室温にて1時間インキュベートすることにより調製し、その後、MORF−99mTcに関して以上で記載しているように精製を行った。標識MORFおよび標識cMORFの両方をサイズ排除HPLCにより通常通り分析したところ、UVおよび放射能検出の両方により本質的に同じクロマトグラフが得られることが分かった。
【0087】
PL−cMORFの調製と放射性標識化
最初のM30KDa(動物試験)または100KDa(組織培養試験)を有する、均一にスクシニル化されたポリリジンポリマー(PL)10ミリグラムを非プロトン性溶媒N−メチルピロリジノン(NMP)1.0mlに溶解し、これに1,1’−カルボニルジイミダゾール20.4mgおよびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)3.0μlを添加した。この混合物を室温にて2時間インキュベートした。NMP中2.0mg/ml cMORF溶液500μlに、計画した量の活性化PL混合物と等モルのDIEAを添加すると、cMORF対PLのモル比100:1に達した。この溶液を室温にて一晩インキュベートした。
【0088】
精製に先立ち、1アリコートの溶液をサイズ排除HPLCにより、265nmでのUV検出を利用して分析し、各PL分子と結合した平均cMORF基数を推測した。265nmではPLは感知できるほど吸収しないため、遊離状態にある結合していないcMORFとPLと結合したcMORFのピーク面積を比較した。1分子当たりの平均基数を推測する別法として、トレーサー濃度の放射性標識MORFを別の1アリコートのPL−cMORF溶液にも添加し、遊離状態にある結合していないcMORFとハイブリダイズされたMORF−99mTcの放射能をPLと結合したcMORFとハイブリダイズされたものの放射能と比較した。次いで、PL−cMORF複合体を、1cm×30cmセファデックスG100カラムでのオープンカラムゲル濾過クロマトグラフィーにより、溶離剤として水を用いて精製した。回収した画分中のcMORFに関するPL−cMORFの濃度は、製造業者により提供されるcMORFのモル吸光度を利用して、UV吸光度により推測した。
【0089】
PL−cMORFは、各ポリマーにおける平均してわずか約1個のcMORFがMORFとハイブリダイズされるように、微量のMORF−99mTcまたはMORF−111Inとともに室温にて30分間インキュベートすることにより放射性標識化した。品質保証は、放射能回収率が通常通りモニタリングされるサイズ排除HPLCクロマトグラフィーに基づき、通常通り実施した。
【0090】
UV HPLCクロマトグラムと標準曲線の傾き(8)を利用して、この調査で使用した2つのMN14−MORF調製物に関する1MN14分子あたりの平均MORFを、0.09(組織培養試験)および0.20(動物試験)と算出した。MN14−MORFのHPLCラジオクロマトグラムは、新たに調製し、精製した際には突出した1つのピークを示したが、保存した際には遊離型MORFピークの形跡を示した。この調査では新たに調製した合成抗体だけを使用した。精製前にMN14−DTPAに付けた111In標識のHPLCラジオクロマトグラフを利用して、平均0.7個のDTPA基が各MN14抗体と結合したと算定した。
【0091】
この調査で使用した99mTc標識化手法は、通常のHPLC分析では全ての分析において回収率が90%を上回ることから示されるように、常に、精製後の放射化学的純度が90%を上回る標識MORFを提供する手法であった。放射性標識cMORFが、抗体もしくはポリマーと結合しているか、または磁性ビーズ上に固定化されているMORFとハイブリダイズ可能であることが通常通り示された(Liu, G. et al., J. Nucl. Med. 43: 384-391, 2002; Mang'era, K. et al., Eur. J. Nucl. Med., 28: 1682-1689, 2001)。
【0092】
UV吸光度を利用したサイズ排除HPLC分析により、および微量MORF−99mTcの添加前後の、結合したが未精製のPL−cMORFポリマーのサイズ排除HPLC分析により、30KDa PLポリマーは1分子当たり平均12〜15個のcMORF基と結合しており、一方、100KDa PLポリマーは1分子当たり平均35〜40個の基と結合していると推測した。1分子当たりの基を測定する2通りの方法では、80〜90%の一致を示した。最終的な分子量を、各々、130〜160KDaおよび400〜440KDaと推測した。精製した両ポリマーのHPLC分析では、単一ピークを示し、その回収率は90%を上回った。
【0093】
組織培養試験
LS174T細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)および100mg/mlのペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco BRL Products, Gaithersburg, MD)を添加した、2mM L−グルタミン、1.5mg/L重炭酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸および1.0mMピルビン酸ナトリウムを含有する最少必須培地(MEM、Gibco BRL Products, Gaithersburg, MD)で増殖させた。細胞を通常、T75フラスコ(Falcon, Becton Dickinson, Lincoln Park, NJ)内にて加湿5%二酸化炭素雰囲気中、単層として維持した。取り込み試験では、細胞を80〜90%集密状態で、T75フラスコ内にて0.05%トリプシン/0.02%EDTAを用いてトリプシン化した後、10%FBSを含有するMEMで所望の密度、通常、0.1ml中1〜2×10細胞まで懸濁した。抗体に暴露した細胞を0.2mlダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco BRL Products, Gaithersburg, MD)中MN14−cMORF 20μgとともに培養し、4℃にて1時間後、細胞懸濁液を2000rpmにて4分間遠心分離し、細胞を各回PBS 0.5mlで3回洗浄した(抗体内在化の可能性を最小限に抑えるために培養は4℃にて行った)。ポリマーを与えた細胞を100KDa PL−cMORF 10μgとともに4℃にて1時間培養し、上記のように遠心分離し、3回洗浄した。全ての細胞にMORF−99mTc 0.60μgまたはcMORF−99mTc 0.27μgを与えた。室温にて30分間培養した後、細胞を上記のように遠心分離し、3回洗浄し、細胞ペレットを放射性標識培養液標準に対し、NaI(Tl)ウェルカウンターで計数した。
【0094】
表1では、組織培養試験に関する5群を記載している。増幅群に属する細胞には抗体、100KDa PLポリマーおよび放射性標識MORFを与えた。残る4群は対照とした。プレターゲッティング対照群に属する細胞には抗体および放射性標識cMORFだけを与え、ポリマー単独の対照群に属する細胞にはポリマーおよび放射性標識MORFだけを与え、99mTc単独の対照群IおよびIIに属する細胞には各々、標識cMORFおよびMORFだけを与えた。表内の最後の2列は細胞内に蓄積した(c)MORFの平均添加放射能率およびモルを示している。
【0095】
【表2】

【0096】
99mTc単独の対照群IおよびIIの結果では、標識(c)MORFが細胞内に非特異的に蓄積することが示されているため、プレターゲッティング群の値から0.030ピコモルを差し引き、ポリマー単独群および増幅群の値からは0.052ピコモルを差し引いた。さらに、ポリマー単独群の結果では、ポリマーも細胞内に非特異的に蓄積することが示されているため、増幅群における蓄積は、さらに1.18ピコモル低いものであった。その結果、0.41ピコモルというこの値をプレターゲッティングの0.067ピコモルと比較して増幅倍率6を得た。
【0097】
動物試験
マサチューセッツ医科大学(University of Massachusetts Medical School)(UMMS)動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得て、全ての動物試験を実施した。ヌードマウス(NIH Swiss、Taconic Farms, Germantown, NY, 30〜40g)各々に10LS174T結腸腫瘍細胞を含有する懸濁液0.1mlを左大腿部に皮下注射した。腫瘍の大きさが1.5cm以下である14日後に動物を使用した。
【0098】
MN14−MORF抗体および30KDa PLポリマーの最適用量を推算するため、腫瘍動物に1分子当たり平均0.2個のMORFと結合したMN14(最初の推定として)60μgおよび約2.0μCiの111Inで放射性標識したMN14−DTPA3μgを投与し、2日後、24〜76μg/動物の3用量にて99mTc標識ポリマーを投与した。これらの結果に基づいて、その後の動物試験には25μg用量のMN14−MORFおよび15μg用量のポリマーを選択した。
【0099】
増幅に関する動物試験に先立ち、抗体およびポリマー用量が腫瘍蓄積に及ぼす影響を確立した。腫瘍動物に111In標識MORF抗体(最初の推定として)60μgを投与し、2日後、、24〜76μg/動物の3用量にて99mTc標識30KDa PLポリマーを投与した。各対照動物には、ポリマー24μgを与えたが抗体は与えなかった。99mTc生体内分布結果を表2に示しているが、その結果は用量が低下するとポリマーの腫瘍蓄積が増加することを示している。111In結果(示していない)から、抗体60μgの腫瘍内蓄積が、MN14−MORF 24μgに関して以下に示したもの(表2)と統計的に同じであることがわかる。よって、増幅に関する全ての動物試験では、ポリマー15μgをMN14−MORF25μgとともに使用した。この表およびその後の表における統計的有意性は、マイクロソフト社製エクセルによる両側分布および対応のある場合のスチューデントのt検定により決定したものである。統計的に有意な値(すなわち、p<0.05)には下線を施している。
【0100】
【表3】

【0101】
最初の研究では、MN14−MORF 25μgをMN14−111In 3μg(2.0μCi)と混合し、ヌードマウスにそれらを同時に与えた。約30時間後、それらの動物には、ポリマーの12〜15個のcMORFのうち平均約1個だけ占有するMORF−99mTcとのハイブリダイゼーションにより標識した30KDa PL−cMORFポリマー15μg(250μCi)を与えた。対照動物には抗体および/またはポリマーを与えなかった。ポリマーの投与後18時間の時点に麻酔下、心臓穿刺により動物を犠牲にした。自動ガンマカウンター(Cobra II, Packard Instrument Company, Downers Grove, IL)により111Inおよび99mTcを同時計数するため、器官および血液を採取した。全てのカウントを物理的崩壊および99mTcウィンドウにおける111In活性のわずかな寄与に対して補正した。結果を1グラムあたりの注入量に対する割合として示している。
【0102】
増幅に関する第一の動物試験は、腫瘍内の抗体MORFが多量体cMORFによって標的化される程度を評価する目的で計画されたものである。従って、LS174T腫瘍を移植したヌードマウスには放射性標識抗体(すなわち、MN14−MORF、MN14−111Inと一緒に)を与えた。2日後、それらの動物にはMORF−99mTcとのハイブリダイゼーションにより標識したPL−cMORFポリマーを与えた。ポリマーの投与後18時間の時点に動物を犠牲にした。対照動物には抗体を与えなかったが、18時間前に標識ポリマーのみを与えた。
【0103】
【表4】

【0104】
表3の生体内分布結果より、111In値を用いて腫瘍1g当たりの抗体MORF数を算出し、一方、対照動物の値を引いた試験動物の腫瘍の99mTc値を用いて抗体により特異的に局在化した腫瘍1g当たりの多量体cMORF数を算出することができる。これらの計算から、この試験の条件下では、多量体cMORFにより腫瘍内の抗体MORFの25%が標的化されたということが分かる。この計算は、1つのポリマー分子が1つ以下の抗体分子と結合するということを前提としたものである。この仮定が間違っており、ポリマーが腫瘍にある抗体と架橋しているとすれば、上記の値は25%よりも大きくなるであろう。ポリマーは腫瘍の複数の抗体分子と架橋することが可能である一方で、別の研究により、遊離状態にある(すなわち、ポリマーと結合していないために一価の)標識cMORFによる腫瘍の抗体MORFとのハイブリダイゼーションが50%にすぎないことが判明した(10)。多量体cMORFは遊離状態にあるcMORFよりも効果的に抗体MORFをターゲッティングするとは考えにくいため、架橋については、可能性は少ないが、仮にそれが起こったら、おそらく2つ以下の抗体分子と架橋することになると判断される。
【0105】
これまでのプレターゲッティング調査に関連して、この研究室は、LS174T腫瘍動物での同様の99mTcおよび111In二重標識研究について報告しており、放射性標識cMORF(10)に対する接近可能性を、腫瘍、肝臓および脾臓内にMN14−MORFが存在する時間の関数として推定した。これらの結果は、抗体投与の24時間後に放射性標識cMORFによる肝臓および脾臓内MORFへの接近が約6%未満に制限されることを示した。明らかに、抗体がこれらの器官に局在化すると、MN14のMORFは急速に大部分が「姿を消す」。幸いにも、これは接近可能性がずっと50%を超えている腫瘍には当てはまらなかった。
【0106】
第二の研究では、ターゲッティングを同様に実施し、MN14−MORF(ここでは非標識のもの)25μgをLS174T腫瘍マウスに投与し、その30時間後にPL−cMORFポリマー(ここで、微量[3μCi]MORF−111Inにより放射性標識した)15μgを投与した。動物には、ポリマーの投与後41時間の時点にMORF−99mTc 1.5μg(約300μCi)を与え、3時間後にその動物を犠牲にした。標識MORF用量は、適度に低いが十分な放射能を有し得るように選択した。対照に関しては、一動物セットにおいて抗体を排除し、別の動物セットでは抗体とポリマーの両方を排除した。
【0107】
増幅に関する第二の動物試験は、腫瘍内の多量体cMORFが放射性標識MORFよって標的化される程度を評価する目的で設計した。従って、LS174T腫瘍を移植したヌードマウスに、まず、非標識抗体25μgを与え、30時間後に、微量111In−MORFとのハイブリダイゼーションにより標識した30KDa PL−cMORFポリマー15μgを与えた。41時間後、動物にMORF−99mTc 1.5μgを与え、3時間後(すなわち、抗体投与の74時間後、111In−ポリマー投与の44時間後)にその動物を犠牲にした。標識MORF用量は、適度に低いがイメージングに十分な放射能を有し得るように選択した。対照に関しては、一動物セット(対照I)において抗体を排除し、別の動物セット(対照II)では抗体とポリマーの両方を排除した。動物を犠牲にする前にイメージングした。生体内分布結果を表4に示している。
【0108】
【表5】

【0109】
腫瘍の99mTc値が抗体を含まない投与(群[1]対群[2])に対して有意に高いことから、増幅ターゲッティングの特異性が示される。111In値より腫瘍1g当たりの多量体cMORF数を算出し、一方、抗体を与えていない動物(群[2])の値を引いた抗体を与えた試験動物(群[1])の腫瘍の99mTc値を用いてMORF−99mTcにより腫瘍内の多量体cMORFの12%が標的化されたと推算することができる。
【0110】
111Inおよび99mTcの結果を用いて、PL−cMORFポリマー投与の44時間後に放射性標識MORFにより標的化された肝臓、脾臓および腎臓内の多量体cMORFが1%未満であったと推算することもできる。肝臓および脾臓に運ばれた抗体のMORFが急速に放射性標識cMORF(10)から「姿を消す」ことが分かったと同時に、これらの最新の研究結果から多量体cMORFも急速に放射性標識MORFから「姿を消す」ことが示される。幸いにも、この発現の消失現象も腫瘍においてはそれほど明らかではない。腫瘍においては、40時間を越えても多量体cMORFの12%が標的化された。血液の値についても上記の計算を利用することができ、標識MORFにより循環中多量体cMORFの約30%が標的化されたことが示される。
【0111】
正常組織のポリマーが急速に失われることは、ポリマーを与えた場合と与えていない場合のMORF−99mTc値の表において比較することによっても分かる(群[2]対群[3])。脾臓および血液を除き、それらの差に有意性はない。よって、またもや、ポリマーによってこれらの組織に運ばれたcMORF発現が41時間内に消失し、放射性標識MORFから効果的に姿を消すことがその証拠となる。抗体でのMORF発現およびポリマーでのcMORF発現については、その結果として正常組織における放射能レベルが低下する。幸いにも、いずれの場合においても、この期間、腫瘍における接近可能性が顕著に維持された。
【0112】
第三の動物試験は、増幅を評価する目的で特別設計された。ヌードマウスに、まず、非標識抗体25μgを与え、30時間後に、非標識の30KDa PL−cMORFポリマー15μgをマウスに投与した。ポリマーの投与後21時間または43時間の時点でのMORF−99mTc 1.5μgの投与の3時間後、動物を犠牲にした。対照動物には抗体を与えなかったか、または抗体もポリマーも与えなかった。さらなる対照(プレターゲッティング)として、動物にはポリマーを与えなかったが、MN14−MORF抗体、続いて、51時間後にcMORF−99mTcを与えた。シリンジで慎重に膀胱から尿を吸引した後、動物をElscint APEX 409 M ラージビューガンマカメラ(Hackensack, NJ)でイメージングした。イメージング後、上記のように、動物を犠牲にし、解剖した。統計的有意性は、マイクロソフト社製エクセルによる両側分布および対応のある場合のスチューデントのt検定より決定した。
【0113】
第三の動物試験は、増幅を評価する目的で特別に計画したものである。従って、LS174T腫瘍を移植したヌードマウスに、まず、非標識抗体25μgを与え、30時間後に、非標識の30KDa PL−cMORFポリマー15μgを与えた。次いで、動物に、ポリマー投与後21時間(表5)または43時間(表6)の時点にMORF−99mTc 15μgを与え、3時間後、その動物を犠牲にした。対照動物には抗体を与えなかった(群[2])か、または抗体もポリマーも与えなかった(群[3])。さらなる対照(プレターゲッティング)として、動物にはポリマーを与えなかったが、MN14−MORF抗体、続いて、51時間後にcMORF−99mTcを与えた(表5)。動物を犠牲にする前にイメージングした。
【0114】
【表6】

【0115】
【表7】

【0116】
MORF−99mTcとcMORF−99mTcのin vivo挙動が十分に類似しているとすれば、上記研究におけるプレターゲッティングに関するin vivo増幅倍率を推測することができる。従って、増幅研究群におけるMORF−99mTcの腫瘍内絶対蓄積(0.65%〜0.24%)×1.5μgは6.15ngであり、これに対し、プレターゲッティングによるcMORF−99mTcの蓄積(2.03%〜0.18%)×0.15μgは2.78ngである。この割合からプレターゲッティングに対する増幅倍率2.1が提供される。
【0117】
要するに、これらの結果は、in vivo 増幅ターゲッティングは実現可能であり、そしてそれが実現したということを証明するものである。これらの研究の条件下では、MN14抗体を介して腫瘍に局在化したMORFの約25%が接近可能であり、それがPL cMORFポリマーにより標的化される。さらに、このように腫瘍に局在化したcMORFの約12%が首尾よく、放射性標識MORFにより標的化される。各研究における腫瘍蓄積が対照より一貫して統計的に高いという点から増幅の概念実証は明らかである。標的における絶対蓄積に関し、同じく重要となるのが標的/正常組織比である。3種類の増幅研究各々に関する、各組織についてのこれらの比を算出することで、増幅ターゲッティングが、35の評価のうち33の評価にて、ポリマー単独の対照や放射性標識cMORF単独の対照よりも高い腫瘍/非標的比を提供することが示される。
【0118】
動物イメージング
図1は、各々が右大腿部にLS174T腫瘍を有する2匹のヌードマウスの同時に得た全身画像である。両方の動物にMORF−99mTcを与え(イメージングの3時間前)、その両方の動物にcMORF−ポリマーを与えた(イメージングの43時間前)。左の試験(増幅)動物のみMN14−MORF抗体を与えた(イメージングの73時間前)。
【0119】
図2は、各々が右大腿部にLS174T腫瘍を有する3匹のヌードマウスの、図1と同じ条件下で同時に得た全身画像である。従って、左の動物にMORF−99mTcのみを与え(イメージングの3時間前)、中央の動物にMORF−99mTcとcMORF−ポリマーを与え(イメージングの21時間前)、また、右の試験動物(増幅)にMORF−99mTc、cMORF−ポリマーおよびMN14−MORFを与えた(イメージングの51時間前)。抗体とポリマーの両方を与えた試験動物でのみ画像に腫瘍が示されている。
【0120】
本発明の産物、組成物、方法および工程に対して種々の修飾および変形を施し得ることは、当業者には明らかである。従って、このような修飾および変形が添付の請求項およびそれらの等価物の範囲にあるならば、本発明はそれらを包含するものとする。以上で引用した全ての公開物の開示内容は、各々が個々に引用することにより本明細書の一部とされるのと同じ程度で、それらの全開示内容が引用することにより明らかに本明細書の一部とされる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】73時間前にMORF−MN14を与えたLS174T腫瘍マウスへの99mTc−MORF投与の3時間後およびPA30KDa−cMORF投与の43時間後のそれらの動物の全身画像を同時に得た。左が試験動物、右がポリマーを与えたが抗体を与えなかった動物である。
【図2】51時間前にMORF−MN14を与えたLS174T腫瘍マウスへの99mTc−MORF投与の3時間後およびPA30KDa−cMORF投与の21時間後のそれらの動物の全身画像を同時に得た。右が試験動物、中央がポリマーを与えたが抗体を与えなかった動物、そして左がポリマーも抗体も与えていない動物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において診断薬または治療薬を標的部位に送達する方法であって、
(a)前記被験体に、標的部位の主要な標的特異的な結合部位、または標的部位により生成される物質、もしくは標的部位と関連する物質と選択的に結合するターゲッティング部分と、第一のモルホリノオリゴマーとを含んでなる第一の複合体を投与すること、
(b)前記被験体に、前記第一のモルホリノオリゴマーに相補的な第二のモルホリノオリゴマーの複数のコピーと結合したポリマーを含んでなる第二の複合体を投与すること、および
(c)前記哺乳動物に、前記第二のモルホリノオリゴマーと相補的な第三のモルホリノオリゴマーと、診断薬または治療薬とを含んでなる第三の複合体を投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記第一のモルホリノオリゴマーと前記第三のモルホリノオリゴマーとが同じものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の後の時点で、前記哺乳動物にクリアリング剤を投与し、前記クリアリング剤により、局在していない第一の複合体を循環から排除することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲッティング部分が抗体または抗体フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体または抗体フラグメントがヒト抗体もしくは抗体フラグメントまたはヒト化抗体もしくは抗体フラグメントである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ターゲッティング部分がタンパク質、小ペプチド、ポリペプチド、酵素、ホルモン、ステロイド、サイトカイン、神経伝達物質、オリゴマー、ビタミンおよび受容体結合分子からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体または抗体フラグメントがCEA、B細胞抗原、T細胞抗原、形質細胞抗原、HLA−DR系統抗原、NCA、MUC1、MUC2、MUC3およびMUC4抗原、EGP−1抗原、EGP−2抗原、胎盤アルカリ性ホスファターゼ抗原、IL−6、VEGF、テネイシン、CD33、CD74、PSMA、PSA、PAP、自己免疫疾患、感染/炎症および感染症と関連する抗原、B細胞もしくはT細胞リンパ腫と関連するか、または自己免疫疾患と関連するB細胞もしくはT細胞と関連する抗原、悪性疾患によって発現されるCD19、CD22、CD40、CD74、HLA−DR、IL−15およびHLA−DR、CD15、CD33、CD66a、CD66bならびにCD66eからなる群から選択される標的と結合する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーがポリ−リジン(PL)、ポリエチルビニルエーテルマレイン酸(PA)デキストラン、デンドリマーおよびN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記モルホリノオリゴマーが各々、少なくとも約6塩基〜約100塩基の長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一のオリゴマーが約15〜約25塩基の長さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第二のオリゴマーが約15〜約25塩基の長さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第三のオリゴマーが約15〜約25塩基の長さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記クリアリング剤が抗イディオタイプ抗体または抗原と結合する抗体フラグメントを含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記第三の複合体が抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物質、キレート化剤、ホウ素化合物、光活性物質または色素および放射性核種からなる群から選択される治療薬を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第三の複合体が放射性核種、色素、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴画像法(MRI)に有用な増強剤からなる群から選択される診断薬を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第二の複合体が前記第二のモルホリノオリゴマーの少なくとも5コピー、少なくとも10コピー、少なくとも25コピーまたは少なくとも50コピーを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第二の複合体が前記第二のモルホリノオリゴマーの約25〜50コピーを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
被験体において診断薬または治療薬のターゲッティングのためのキットであって、
(a)標的部位の主要な標的特異的な結合部位、または標的部位により生成される物質もしくは標的部位と関連する物質と選択的に結合するターゲッティング部分と、第一のモルホリノオリゴマーとを含んでなる第一の複合体、
(b)前記第一のモルホリノオリゴマーに相補的な第二のモルホリノオリゴマーの複数のコピーと結合したポリマーを含んでなる第二の複合体、および
(c)前記第二のモルホリノオリゴマーと相補的な第三のモルホリノオリゴマーと、放射性標識とを含んでなる第三の複合体
を含んでなる、キット。
【請求項19】
前記第一のモルホリノオリゴマーと前記第三のモルホリノオリゴマーとが同じものである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
クリアリング剤をさらに含んでなる、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
前記ターゲッティング部分が抗体または抗体フラグメントである請求項18に記載のキット。
【請求項22】
前記抗体または抗体フラグメントがヒト抗体もしくは抗体フラグメントまたはヒト化抗体もしくは抗体フラグメントである、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記ターゲッティング部分がタンパク質、小ペプチド、ポリペプチド、酵素、ホルモン、ステロイド、サイトカイン、神経伝達物質、オリゴマー、ビタミンおよび受容体結合分子からなる群から選択される、請求項18に記載のキット。
【請求項24】
前記抗体または抗体フラグメントがヒト癌胎児性抗原と結合する、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
前記ポリマーがポリ−リジン(PL)、ポリエチルビニルエーテルマレイン酸(PA)デキストラン、デンドリマーおよびN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)からなる群から選択される、請求項18に記載のキット。
【請求項26】
前記モルホリノオリゴマーが各々、少なくとも約6塩基〜約100塩基の長さを有する、請求項18に記載のキット。
【請求項27】
前記第一のオリゴマーが約15〜約25塩基の長さを有する、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記第二のオリゴマーが約15〜約25塩基の長さを有する、請求項26に記載のキット。
【請求項29】
前記第三のオリゴマーが約15〜約25塩基の長さを有する、請求項26に記載のキット。
【請求項30】
前記クリアリング剤が抗イディオタイプ抗体または抗原と結合する抗体フラグメントを含んでなる、請求項20に記載のキット。
【請求項31】
前記第三の複合体が抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節物質、キレート化剤、ホウ素化合物、光活性物質または色素および放射性核種からなる群から選択される治療薬を含んでなる、請求項18に記載のキット。
【請求項32】
前記第三の複合体が放射性核種、色素、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴画像法(MRI)に有用な増強剤からなる群から選択される診断薬を含んでなる、請求項18に記載のキット。
【請求項33】
前記第二の複合体が前記第二のモルホリノオリゴマーの少なくとも5コピー、少なくとも10コピー、少なくとも25コピーまたは少なくとも50コピーを含んでなる、請求項18に記載のキット。
【請求項34】
前記第二の複合体が前記第二のモルホリノオリゴマーの約25〜50コピーを含んでなる、請求項18に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−523706(P2006−523706A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510037(P2006−510037)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/011517
【国際公開番号】WO2004/091525
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】