説明

増幅器安定化方法およびシステム

【課題】MRI配電システムの安定化方法を提供する。
【解決手段】MRI配電システムと電気的に連通する安定化モジュールを提供する。この安定化モジュールは、閉ループ制御システムを含む。この閉ループ制御システムは、入力信号の少なくとも1つの特性を修正するために用いられる。修正された入力信号は、MRI配電システムに供給される。一実施形態では、安定化モジュールは開ループ制御システムおよび閉ループ制御システムの双方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、増幅器安定化方法およびシステムに関する。更に特定すれば、本発明は、増幅器を安定化するために開ループ・システムおよび閉ループ・システムの組み合わせを用いる方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
通例、磁気共鳴撮像(MRI)システムは、無線周波数(RF)増幅器を用いて、MRIシステムの主磁石構造内部に配置されているRFコイルを駆動する。RF増幅器は、入力として、外部RF源によって発生された一連のパルスを受け取り、出力として、電力を増大した一連のパルスを発生する。RF増幅器の出力は、RFコイルを駆動するために用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
画像品質の向上が求められるにつれて、一層テスラ値が大きい磁石が要求されるため、RF増幅器の出力電力を増大する必要がある。しかしながら、供給する出力電力を増大すると、RF増幅器の利得非線形性や位相非線形性がシステムに混入する可能性があり、その結果、MRI画像に歪みが生ずる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、増幅器安定化方法およびシステムを提供する。通例、本方法およびシステムは、MRIシステムにおいて用いられているパルス型RF増幅器を安定化する。しかしながら、本発明の方法およびシステムは、他のシステムに用いられている増幅器を安定化するためにも用いることができる。例えば、これらは、パルス型RFレーダ増幅器を安定化するためにも用いることができる。
【0005】
本発明の一実施形態では、本発明の安定化モジュールは、増幅器を安定化するためにハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせる。この安定化モジュールは、開ループ制御システムおよび閉ループ制御システムを含む。
【0006】
パルスの開始時に閉ループ制御システムを用いると、不安定に陥りがちとなる(例えば、閉ループ制御システムの利得および位相パラメータは、その最大値または最小値まで駆動されがちとなる)。このため、本発明の実施形態では、パルスの開始時に開ループ制御システムを用いて、増幅器を安定化する。開ループ制御システムは、例えば、安定化モジュールが受け取る入力信号の入力電力を用いることによって、増幅器を安定化する。一旦増幅器が静定したなら、閉ループ制御システムを用いて、増幅器を更に安定化する。
【0007】
実施形態の中には、本発明のシステムおよび方法が、開ループ制御システムの性能を向上させるために較正ルーチンを用いる場合がある。この較正ルーチンは、実施形態によっては、閉ループ制御システムが以前に発生した出力に基づいて、開ループ制御システムが用いるための出力を発生する。これによって、較正ルーチンは、開ループ制御システムが閉ループ制御システムから学習することを可能にする。その結果、開ループ制御システムの性能がときと共に向上する。
【0008】
一態様では、本発明は、一般的に、増幅器安定化方法に関する。この方法は4つのステップを含む。1つのステップは、増幅器と電気的に連通し、開ループ制御システムおよび閉ループ制御システムを含む安定化モジュールを設けることである。別のステップは、安定化モジュールが受け取った入力信号の少なくとも1つの特性を修正するため、そして閉ループ制御システムに制御を受け渡すために、開ループ制御システムを用いることである。別のステップは、入力信号の少なくとも1つの特性を修正することである。最後のステップは、修正した入力信号を増幅器に供給することである。
【0009】
本発明のこの態様の種々の実施形態では、入力信号の少なくとも1つの特性は、入力信号の振幅または入力信号の位相である。一実施形態では、開ループ制御システムは、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上であるときに用いられる。別の実施形態では、閉ループ制御システムを用いるのは、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上である所定の時間期間開ループ制御システムを用いた後である。一実施形態の閉ループ制御システムにおけるフィルタは、開ループ制御システムの出力に基づいて、開ループ制御システムによって初期化される。
【0010】
実施形態の中には、入力信号の入力電力を測定する場合がある。このような実施形態の一部では、開ループ制御システムは、入力電力に基づいて入力信号の少なくとも1つの特性を修正するために用いられる。このような実施形態の1つでは、開ループ制御システムは、参照表の中にある入力電力に対応する値に基づいて、入力信号の少なくとも1つの特性を修正する。参照表は、閉ループ制御システムの出力に基づいて更新することができる。このような実施形態の一部では、入力信号と増幅器の出力信号を表すフィードバック信号との間における第1誤差、および入力信号とフィードバック信号との間における第2誤差も測定する。このような実施形態の1つでは、閉ループ制御システムは、入力電力、第1誤差、および第2誤差に基づいて、入力信号の少なくとも1つの特性を修正するために用いられる。このような実施形態の別の1つでは、閉ループ制御システムは第1誤差および第2誤差双方を調節する。
【0011】
実施形態の中には、閉ループ制御システムが、安定化モジュールによって混入する少なくとも1つの非線形性を考慮する場合がある。別の実施形態では、開ループ制御システムが、安定化モジュールによって混入する少なくとも1つの非線形性を考慮する。実施形態の中には、増幅器が、磁気共鳴撮像システムのパルス型無線周波数増幅器である場合がある。
【0012】
別の態様において、本発明は、一般的には、増幅器を安定化させる安定化モジュールにおいて用いるためのシステムに関する。本システムは、第1制御モジュールおよび第2制御モジュールを含む。第1制御モジュールは、3つの機能、即ち、(a)安定化モジュールによって受け取られる入力信号を表す第1信号を受け取る、(b)開ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第1特性を修正するために用いることができる第2信号を発生する、そして(c)制御を第2制御モジュールに受け渡すために用いることができる第3信号を送る、を実行するためにある。第2制御モジュールは、閉ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第1特性を修正するために用いることができる第4信号を発生するためにある。
【0013】
本発明のこの態様の実施形態の中には、第1制御モジュールが、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上か否か判断することができ、更に、入力電力が閾値よりも上であるときに、開ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第1特性を修正するために用いることができる第2信号を発生することができる場合がある。実施形態の中には、第1制御モジュールが、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上にある所定の時間期間、第1制御モジュールが開ループ制御ルーチンを用いていたか否か判断することができる場合がある。このような実施形態の一部では、第1制御モジュールは、前述の判断基準が満たされたときに、第3信号を送る。第2制御モジュールがフィルタを含む実施形態では、本システムは、更に、フィルタを初期化するためのエントリを発生する較正モジュールを含むことができる。このような実施形態の1つでは、第1制御モジュールは、エントリを用いて第2制御モジュールにおけるフィルタを初期化することができる。
【0014】
実施形態の中には、第1制御モジュールが、開ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第2特性を修正するために用いることができる第5信号を発生することができ、第2制御モジュールが、閉ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第2特性を修正するために用いることができる第6信号を発生することができる場合がある。関連する実施形態の中には、本システムが、入力信号の第1特性を修正する量を表す第1の値と、入力信号の第2特性を修正する量を表す第2の量とを発生する較正モジュールを含む場合がある。第1の値および第2の値は、第1制御モジュールが用いることができる。一実施形態では、第1制御モジュールは、第1の値を用いて第2信号を発生することができ、更に第2の値を用いて第5信号を発生することができる。関連する実施形態では、較正モジュールは、第2制御モジュールの出力に基づいて、第1の値および第2の値を更新することができる。更に別の実施形態では、較正モジュールは、安定化モジュールによって混入する少なくとも1つの非線形性を考慮するように第1の値および第2の値を発生することができる。
【0015】
実施形態の中には、入力信号の第1特性が入力信号の振幅であり、入力信号の第2特性が入力信号の位相である場合がある。更に別の実施形態では、第2制御モジュールは、安定化モジュールによって混入する非線形性を考慮するように第4信号を発生することができ、第2制御モジュールは、第1誤差信号および第2誤差信号を受け取り、第1誤差信号および第2誤差信号にある非線形性を補償するために、第1誤差信号および第2誤差信号を調節することができる。更に別の実施形態では、第1制御モジュールは、第2信号を発生する際、安定化モジュールによって混入する非線形性を考慮する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、一般的には、増幅器を安定化する安定化モジュールと共に用いるための製造品目を特徴とする。この品目は、安定化モジュールが受け取った入力信号を表す第1信号を受け取り、開ループ制御ルーチンを用いて入力信号の特性を修正するために用いることができる第2信号を発生し、制御を第2制御モジュールに受け渡すことができる第3信号を送る手段を含む。また、この品目は、閉ループ制御ルーチンを用いて入力信号の特性を修正するために用いることができる第4信号を発生する手段も含む。
【0017】
更に別の態様では、本発明は増幅器安定化方法に関する。この方法は3つのステップを含む。1つのステップは、開ループ制御システムおよび閉ループ制御システムを含む安定化モジュールによって入力信号を受け取ることである。別のステップは、入力信号の位相を修正し、増幅器の位相非線形性を最小限に抑えるため、そして閉ループ制御システムに制御を受け渡すために、開ループ制御システムを用いることである。その他のステップは、入力信号の位相を修正し増幅器の位相非線形性を最小限に抑えるために、開ループ制御システムの使用から閉ループ制御システムの使用に移行することである。
【0018】
本発明のこの態様の一実施形態では、前述の方法は、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上にある所定の時間期間開ループ制御システムを用いた後に移行するステップを含む。別の実施形態では、この方法は、更に、開ループ制御システムの出力に基づいて、閉ループ制御システムの中にあるフィルタを初期化するために、開ループ制御システムを用いるステップも含む。
【0019】
更に別の態様では、本発明は、一般的に、増幅器を安定化する安定化モジュールに関する。この安定化モジュールは、第1制御モジュールおよび第2制御モジュールを含む。第1制御モジュールは、3つの機能、即ち、(a)安定化モジュールによって受け取られる入力信号を表す第1信号を受け取る、(b)開ループ制御ルーチンを用いて入力信号の移送を修正することにより、増幅器の位相非線形性を最小限に抑えるために用いることができる第2信号を発生する、そして(c)制御を第2制御モジュールに受け渡すために用いることができる第3信号を送る、ことを実行するためにある。第2制御モジュールは、閉ループ制御ルーチンを用いて入力信号の位相を修正することによって、増幅器の位相非線形性を最小限に抑えるために用いることができる第4信号を発生するためにある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の以上のそしてその他の目的、態様、特徴、および利点は、以下の説明を添付図面と合わせて参照することによって、一層明白となり、一層よく理解することができるであろう。
【図1】図1は、本発明の例示的実施形態による、増幅器安定化方法の流れ図である。
【図2】図2も、本発明の例示的実施形態による、増幅器安定化方法の流れ図である。
【図3】図3は、本発明の例示的実施形態にしたがって増幅器を安定化する安定化モジュールにおいて用いるためのシステムのブロック図である。
【図4】図4は、本発明の例示的実施形態にしたがって増幅器を安定化する安定化モジュールの回路図である。
【図5】図5は、本発明の例示的実施形態にしたがって増幅器を安定化するために、開ループ制御ルーチンおよび閉ループ制御ルーチンを含む方法の流れ図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態において用いられる較正ルーチンの流れ図である。
【図7A−1】図7A−1及び図7A−2は、閉ループ、高速フィードバック磁気共鳴撮像(MRI)送信安定化モジュールの回路/ブロック図である。
【図7A−2】図7A−1及び図7A−2は、閉ループ、高速フィードバック磁気共鳴撮像(MRI)送信安定化モジュールの回路/ブロック図である。
【図7B−1】図7B−1及び図7B−2は、閉ループ、低速フィードバックMRI送信安定化モジュールの回路/ブロック図である。
【図7B−2】図7B−1及び図7B−2は、閉ループ、低速フィードバックMRI送信安定化モジュールの回路/ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の例示的実施形態による増幅器安定化方法100を示す。方法100は、安定化モジュールによって実行することができる。この安定化モジュールは、増幅器と電気的に連通しており、開ループ制御システムおよび閉ループ制御システムを含む。図1の例示的方法では、入力信号の属性を測定し(ステップ104)、開ループ制御システムを用いて、安定化モジュールが受け取った入力信号の少なくとも1つの特性を修正し(ステップ108)、1つ以上の制御パラメータを満たしたとき(ステップ112)に、閉ループ制御システムに制御を受け渡し(ステップ116)、閉ループ制御システムを用いて、入力信号の前述の少なくとも1つの特性を修正する(ステップ120)。修正した入力信号は、開ループ制御システムの使用中(ステップ108)および閉ループ制御システムの使用中(ステップ120)に増幅器に供給される。方法100は、安定化モジュールがパルス状入力信号を受け取ったときに開始し、パルスの別個のインスタンス毎に繰り返すことができる。この方法は、例えば、MRIシステムの増幅器を安定化するために実施することができる。
【0022】
ステップ104は、入力信号の属性の測定である。一実施形態では、この属性は入力信号の入力電力である。別の実施形態では、この属性は入力信号の電圧レベルである。更に別の実施形態では、この属性は入力信号の電流である。一実施形態では、安定化モジュールにおけるエレメントによってこの属性を測定する。
【0023】
ステップ108において、開ループ制御システムを用いて、入力信号の少なくとも1つの特性を修正する。例えば、図1の方法の一実施形態では、開ループ制御システムは、ステップ108において、入力信号の振幅を修正する。別の実施形態では、開ループ制御システムは、ステップ108において、入力信号の位相を修正する。更に別の実施形態では、開ループ制御システムは、ステップ108において、入力信号の振幅および位相の双方を修正する。
【0024】
開ループ制御システムは、測定した入力信号の属性に基づいて、入力信号の少なくとも1つの特性を修正するために用いられる。一実施形態では、開ループ制御システムは、測定した属性によってインデックスが付けられる参照表を用いて、少なくとも1つの特性を修正する。例えば、一実施形態では、測定した属性は、入力信号の入力電力であり、少なくとも1つの特性は振幅であり、表は、入力電力レベル毎に振幅を変化させる量を特定する。以下で更に詳しく説明するが、修正した入力信号は、次に、開ループ制御システムによって増幅器に供給され、この増幅器を安定化する。
【0025】
ステップ112において、1つ以上の制御パラメータをチェックして、開ループ制御システムが制御を閉ループ制御システムに受け渡すのに適した時点であるか否か判断する。1つ以上の制御パラメータが満たされている場合、ステップ116において、開ループ制御システムは制御を閉ループ制御システムに受け渡す。一方、制御パラメータが満たされていない場合、開ループ制御システムを用いる(ステップ108)。一実施形態では、制御パラメータはカウンタ値である。別の実施形態では、制御パラメータは経過時間期間である。更に別の実施形態では、制御パラメータは入力信号の振幅である。特定的な一実施形態では、開ループ制御システムは制御パラメータ(群)をチェックする。代わりに、閉ループ制御システムまたはその他のエレメントが制御パラメータ(群)をチェックすることもできる。
【0026】
ステップ116において、開ループ制御システムは、制御を閉ループ制御システムに受け渡すことができる。一実施形態では、以下で更に詳しく説明するが、開ループ制御システムは、使用のために閉ループ制御システムを初期化する。
【0027】
閉ループ制御システムに制御が受け渡された後、閉ループ制御システムを用いて、入力信号の少なくとも1つの特性を修正する(ステップ120)。閉ループ制御システムは、増幅器の出力信号を表すフィードバック信号を受け取る。種々の実施形態では、少なくとも1つの修正する特性は、入力信号の振幅および/または位相である。実施形態によっては、閉ループ制御システムが入力信号とフィードバック信号との間における第1誤差を測定する場合もある。このような実施形態の中には、閉ループ制御システムは、入力信号とフィードバック信号との間における第2誤差も測定することもある。これらの実施形態では、閉ループ制御システムは、入力電力、第1誤差、および第2誤差に基づいて、入力信号の少なくとも1つの特性を修正するために用いられる。次に、修正された入力信号は、ステップ120において、増幅器を安定化するために閉ループ制御システムによって増幅器に供給される。
【0028】
種々の実施形態では、閉ループ制御システムは、入力信号の少なくとも1つの特性をどのように修正するか決定する際に用いるために1つ以上のフィルタを含む。一実施形態では、入力信号の振幅を修正するために用いるのに適した出力を決定するためにフィルタが用いられる。別の実施形態では、入力信号の位相を修正する際に用いるのに適した出力を決定するためにフィルタが用いられる。一実施形態では、A.J.ビタビによって文書化されている、二次フィルタを閉ループ制御システムにおいて用いる。代替実施形態では、閉ループ制御システムは、他のいずれの種類のフィルタでも用いる。これらのフィルタには、限定ではなく、比例積分フィルタおよび比例積分微分フィルタが含まれる。一実施形態では、フィルタは1つ以上の積分器を含む。再度ステップ116を参照すると、実施形態によって、閉ループ制御システムを開ループ制御システムによって初期化する際に、フィルタ、または更に特定すれば、積分器を、開ループ制御システムの出力に基づいて初期化する。
【0029】
図2は、本発明による増幅器安定化方法200のフローチャートである。図2に図示した方法100と比較すると、図2に図示する方法200は、3つの追加ステップを含む。即ち、図2の例示的方法は、開ループ制御システムを用いる判断基準が満たされているか否か判断し(ステップ106)、閉ループ制御システムを用い続ける判断基準が満たされているか否か判断し(ステップ124)、開ループ制御パラメータを更新する(ステップ128)。一般的に言えば、図2のステップ104、108、112、116および120は、図1における同じ番号のステップと同様であり、同様に実施される。
【0030】
図2の方法は、安定化モジュールが入力信号を受け取ったときに開始する。入力信号は、例えば、外部パルス型RF源から来ることもできる。ステップ104において、入力信号の属性を測定する。
【0031】
ステップ106において、開ループ制御システムを用いる1つ以上の判断基準が満たされているか否か判断する。一実施形態では、ステップ106は開ループ制御システム自体が実行する。他の実施形態では、安定化モジュールにおける別のエレメントがステップ106を実行する。実施形態によっては、1つの判断基準が入力信号の測定した属性に対応する場合もある。例えば、このような実施形態の1つでは、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上である場合、ステップ108において開ループ制御システムを用いる。一方、その実施形態において入力信号の入力電力が閾値よりも下である場合、開ループ制御システムを用いず、ステップ104において入力信号の入力電力を再度測定する。ステップ104は、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上に上昇するまで、繰り返すことができる。実施形態では、開ループ制御システムを用いるか否か判断する際に用いられる1つの判断基準は、増幅器がアクティブか否かである。開ループ制御システムを用いるか否か判断する際には、1つよりも多い判断基準を考慮することもできる。
【0032】
ステップ108において、開ループ制御システムを用いて、入力信号の特性を修正し、その特性と関連のある増幅器非線形性を最小限に抑える。つまり、特定的な一実施形態では、開ループ制御システムをステップ108において最初に用いて、入力信号の位相を修正し、増幅器の位相非線形性を最小限に抑えることができる。このステップは、図1におけるステップ108の説明と同様な方法で実施することができる。
【0033】
ステップ112において、開ループ制御システムの使用から閉ループ制御システムの使用に移行するか否か判断する。一実施形態では、例えば、この移行が行われるのは、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上にある所定の時間期間開ループ制御システムを用いた後である。ステップ112において判断基準が満たされた場合、ステップ116において、閉ループ制御システムに制御を受け渡す。一実施形態では、開ループ制御システムは、使用のために閉ループ制御システムを初期化する。初期化は、開ループ制御システムの使用から閉ループ制御システムの使用への移行の一部と見なすことができる。
【0034】
ステップ120において、閉ループ制御システムを用いて、入力信号の特性を修正し、この特性と関連のある増幅器の非線形性を最小限に抑える。一実施形態では、例えば、閉ループ制御システムは、入力信号の位相を修正し、増幅器の位相非線形性を最小限に抑える。
【0035】
ステップ124において、閉ループ制御システムを用い続ける判断基準が満たされているか否か判断する。この判断は、ある実施形態では、測定した入力信号の属性を考慮することによって行う。例えば、一実施形態では、入力信号の入力電力が閾値レベルよりも上である場合、ステップ120において閉ループ制御システムを使い続ける。一方、この実施形態において入力信号の入力電力が閾値よりも下である場合、閉ループ制御システムを用いず、ステップ106を実行する。他の実施形態では、閉ループ制御システムを使い続けるべきか否か判断する際に、安定化モジュールは、代わりにまたは加えて、別の判断基準を用いることができる。例えば、特定的な一実施形態では、以下で更に論ずるが、閉ループ制御システムを用いるか否か判断する際に、入力信号の入力電力に加えて、増幅器がアクティブであるか否かを考慮する。
【0036】
ステップ128において、図2で示した本発明の実施形態では、開ループ制御特性を更新する。図6に関して以下で更に詳しく説明する実施形態では、較正ルーチンを実行して、開ループ制御システムが用いる参照表を更新する。このような実施形態の1つでは、較正ルーチンは、閉ループ制御システムの出力に基づいて、参照表を更新する。
【0037】
図3は、本発明の例示的実施形態にしたがって増幅器を安定化する安定化モジュールにおいて用いるためのシステム300を示す。システム300は、第1制御モジュール304および第2制御モジュール308を含む。一実施形態では、第1制御モジュール304および第2制御モジュール308の各々は、ソフトウェア・プログラムとして実施される。あるいは、別の実施形態では、第1制御モジュール304および/または第2制御モジュール308は、1つ以上のハードウェア・デバイスとして実施される。一実施形態では、第1制御モジュール304は開ループ制御ルーチンを用い、第2制御モジュールは閉ループ制御ルーチンを用いる。一実施形態では、ハードウェア・デバイスは特定用途集積回路(ASIC)である。別の実施形態では、ハードウェア・デバイスは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)である。別の実施形態では、他の種類のハードウェア・デバイスが用いられる。
【0038】
システム300の第1制御モジュール308は、次の3つの機能を実行するためにある。
(a)安定化モジュールによって受け取られる入力信号を表す第1信号312を受け取る、(b)開ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第1特性を修正するために用いることができる第2信号316を発生する、そして(c)制御を第2制御モジュール308に受け渡すために用いることができる第3信号320を送る。システム300の第2制御モジュール308は、閉ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第1特性を修正するために用いることができる第4信号324を発生するためにある。
【0039】
実施形態によっては、第1制御モジュールが第2信号316を発生し、以下で更に説明するように、安定化モジュールによって混入される非線形性を考慮することもできる。実施形態によっては、第2制御モジュール308が第4信号324を発生し、以下で更に説明するように、安定化モジュール・ハードウェアによって混入される非線形性を考慮することもできる。
【0040】
実施形態によっては、第1制御モジュール304が、開ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第2特性を修正するために用いることができる第5信号336を発生することができる。関連する実施形態では、第2制御モジュール308が、閉ループ制御ルーチンを用いて入力信号の第2特性を修正するために用いることができる第6信号340を発生することができる。
【0041】
一実施形態では、第1コントローラ376を用いて、入力信号の第1特性を修正する。別の実施形態では、第2コントローラ380を用いて、入力信号の第2特性を修正する。
【0042】
実施形態によっては、入力信号の第1特性が入力信号の振幅であり、入力信号の第2特性が入力信号の位相である場合がある。代替実施形態では、入力信号の第1特性が入力信号の位相であり、入力信号の第2特性が入力信号の振幅である。
【0043】
実施形態によっては、第1制御モジュール304が移行論理モジュール332を含む場合がある。このような実施形態の中には、移行論理モジュール332は1つ以上の判断基準をチェックし、開ループ制御ルーチンを用いるか否か判断することもある。このような実施形態の1つでは、移行論理モジュール332は、増幅器がアクティブであるか否か判断することができる。このような実施形態の別の1つでは、移行論理モジュール332は、入力信号の入力電力328が閾値レベルよりも上であるか否か判断することができる。閾値レベルよりも上である場合、第1制御モジュール304は、開ループ制御ルーチンを用いて、入力信号の第1特性を修正するために用いることができる第2信号316を発生する。このような実施形態の中には、移行論理モジュール332は1つ以上の判断基準をチェックして、制御を第2制御モジュール308に受け渡すか否か判断することもある。このような実施形態の1つでは、移行論理モジュール332は、入力信号の入力電力328が閾値レベルよりも上であった所定の時間期間、第1制御モジュール304が開ループ制御ルーチンを用いていたか否か判断することができる。用いていた場合、第1制御モジュール304は第3信号320を第2制御モジュール308に送る。
【0044】
更に別の実施形態では、第2制御モジュール308は、安定化モジュールが受け取った入力信号を表す信号346、ならびに1つ以上の誤差信号344および348を受け取ることができる。このような実施形態の1つにおける誤差信号は、安定化モジュールが受け取った入力信号と、増幅器の出力信号を表すフィードバック信号との間の振幅誤差を表すことができる。このような実施形態の別の1つでは、誤差信号は入力信号とフィードバック信号との間における位相誤差を表すことができる。第2制御モジュール308は、一実施形態では、1つ以上の誤差信号344および348を調節して、以下で更に説明するように、第1誤差信号および/または第2誤差信号の中にある非線形性を補償する。
【0045】
実施形態によっては、第2制御モジュール308が移行論理モジュール356を含む場合もある。このような実施形態の中には、移行論理モジュール356は1つ以上の判断基準をチェックし、閉ループ制御ルーチンを用いるか否か、または接続352を通じて制御を第1制御モジュール304に受け渡すか否か判断することもある。このような実施形態の1つでは、移行論理モジュール356は増幅器がアクティブであるか否か判断することができる。このような実施形態の別の1つでは、移行論理モジュール332は、入力信号の入力電力328が閾値レベルよりも上であるか否か判断することができる。閾値レベルよりも上でない場合、第2制御モジュール308は、接続352を通じて、制御を第1制御モジュール304に受け渡す。
【0046】
別の実施形態では、システム300は較正モジュール360を含む。較正モジュール360は、ソフトウェア・プログラムとして実施することができ、較正ルーチンを用いることができる。あるいは、他の実施形態では、較正モジュール360をハードウェア・デバイスとして実施する。一実施形態では、ハードウェア・デバイスはASICである。別の実施形態では、ハードウェア・デバイスはFPGAである。別の実施形態では、別の種類のハードウェア・デバイスを用いる。
【0047】
一実施形態では、較正モジュール360は、第2制御モジュール308によって用いられる1つ以上のフィルタを初期化するためのエントリを発生することができる。第1制御モジュール304は、次いで、接続364を通じて、較正モジュール360からこれらのエントリを読み出し、これらのエントリを用いて、移行論理モジュール332を用いることによって、第2制御モジュール308における1つ以上のフィルタを初期化することができる。
【0048】
別の実施形態では、較正モジュール360は、入力信号の第1特性を修正する量を表す第1の値を発生し、入力信号の第2特性を修正する量を表す第2の値を発生することができる。第1制御モジュール304は、接続364を通じて、第1の値および第2の値を較正モジュール360から読み出すことができる。第1制御モジュール304は、第1の値を用いて第2信号316を発生することができ、第2の値を用いて第5信号336を発生することができる。
【0049】
別の実施形態では、較正モジュール360は、接続368を通じて第2制御モジュール308から受け取った出力に基づいて、第1の値および第2の値を更新することができる。更に別の実施形態では、較正モジュール360は、安定化モジュール・ハードウェアによって混入された少なくとも1つの非線形性を考慮するために、以下で更に説明するように、第1の値および第2の値を発生するアルゴリズムを用いる。更に別の実施形態では、較正モジュール360は、接続372を通じて、第1制御モジュール304からデータを受け取ることができる。
【0050】
図4は、本発明の例示的実施形態にしたがって増幅器404を安定化する安定化モジュール400を示す。図示する例示的実施形態では、安定化モジュール400は増幅器404と電気的に連通しており、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを含む。このソフトウェアはプロセッサ408上で実行する。
【0051】
安定化モジュール400は、外部発生源(例えば、電源)から、前置増幅器416において入力信号412を受け取る。一実施形態では、入力信号412はパルス状RF入力信号である。次いで、指向性カプラ418が前置増幅した入力信号412をサンプリングする。第1サンプル420を誤差増幅器424に入力し、一方第2サンプル428を第1コントローラ432および第2コントローラ436に入力する。一実施形態では、第1コントローラ432は利得コントローラであり、入力信号412の振幅を修正するために用いられる。別の実施形態では、第2コントローラは移相器であり、入力信号412の位相を修正するために用いられる。以下で説明するが、修正した入力信号440が第1コントローラ432および第2コントローラ436によって出力され、増幅器404に入力される。
【0052】
一実施形態では、増幅器404はパルス型RF増幅器である。別の実施形態では、増幅器404をMRIシステムにおいて用いる。増幅器404の出力信号448を表すフィードバック信号444も、誤差増幅器424に入力される。一実施形態では、誤差増幅器は、第1サンプル420およびフィードバック信号444を増幅するために対数中間周波数(LOGIF)増幅器426を含む。誤差増幅器424は、第1誤差信号452および第2誤差信号456を発生する。第1誤差信号452/第2誤差信号456は、一実施形態では、入力信号412とフィードバック信号444との間における振幅誤差を表す。別の実施形態では、第1誤差信号452/第2誤差信号456は、入力信号412とフィードバック信号444との間における位相誤差を表す。
【0053】
一実施形態では、安定化モジュール400は3つのアナログ/ディジタル(A/D)変換器460を含む。A/D変換器は、入力信号412を表す第1信号464、第1誤差信号452、および第2誤差信号456のディジタル化した表現をプロセッサ408に入力する。プロセッサ408は、信号処理を実行して制御信号を発生し、これらをディジタル/アナログ(D/A)変換器468に出力する。一実施形態では、プロセッサ408は第1制御モジュール304、第2制御モジュール308、および較正モジュール360を含む。一実施形態では、プロセッサは第1制御モジュール304を実行して開ループ制御ルーチンを実施する。別の実施形態では、プロセッサは第2制御モジュール308を実行して閉ループ制御ルーチンを実施する。更に別の実施形態では、A/D変換器460、プロセッサ408、およびD/A変換器468を含むディジタル制御システムを、全体的にアナログ制御システムと置換する。あるいは、ディジタル制御システムを部分的にのみアナログ制御システムと置換する。
【0054】
一実施形態では、プロセッサ408が開ループ制御ルーチンを実施するとき、第1制御モジュール304は、入力信号412の第1特性を修正するために用いることができる第1信号472と、入力信号412の第2特性を修正するために用いることができる第2信号476とを発生する。別の実施形態では、プロセッサが閉ループ制御ルーチンを実施するとき、第2制御モジュール308は、入力信号412の第1特性を修正するために用いることができる第1信号472と、入力信号412の第2特性を修正するために用いることができる第2信号476とを発生する。一実施形態では、入力信号412の第1特性は入力信号412の振幅であり、入力信号412の第2特性は入力信号412の位相である。
【0055】
一実施形態では、D/A変換器468は信号472および476のアナログ表現をコントローラ432および436にそれぞれ入力する。一実施形態では、第1コントローラ432は、第1信号472のアナログ表現を用いて入力信号の振幅を修正し、これによって増幅器404の振幅非線形性を最小限に抑える。別の実施形態では、第2コントローラ436は第2信号476のアナログ表現を用いて、入力信号の位相を修正し、これによって増幅器404の位相非線形性を最小限に抑える。前述のように、修正した入力信号440は、次に増幅器404に供給される。
【0056】
図5は、ソフトウェア・ルーチン500の一実施形態を示し、開ループ制御ルーチン600および閉ループ制御ルーチン700を含む。一実施形態では、開ループ制御ルーチン600は第1制御モジュール304によって実行する。別の実施形態では、閉ループ制御ルーチン700は第2制御モジュール308によって実行する。一実施形態では、入力信号が最初に安定化モジュールによって受け取られたとき(一例として、例えば、電源のような外部発生源を最初にオンにしたとき)、ソフトウェア・ルーチン500は、開ループ制御ルーチン600を用いるように、デフォルトで決められている。
【0057】
ステップ604において、開ループ制御ルーチン600は、安定化モジュールが受け取った入力信号の入力電力を抽出する。ステップ608において、開ループルーチン600は、次に、増幅器がアクティブであるか(即ち、イネーブルされているか)否か、そして入力信号の入力電力が第1閾値よりも上であるか否か判断することによって、開ループ制御ルーチン600を用いる判断基準が満たされているか否か判断する。増幅器がイネーブルされており、しかも入力信号の入力電力が第1閾値よりも上である場合、ステップ612において開ループ制御ルーチン600は開ループ・カウンタを増分させる。
【0058】
ステップ616において、開ループ制御ルーチン600は、入力信号の少なくとも1つの特性を修正するために用いることができる少なくとも1つの信号を出力する。一実施形態では、開ループ制御ルーチン600は2つの信号を出力する。1つは入力信号の振幅を修正するために用いることができ、1つは入力信号の位相を修正するために用いることができる。別の実施形態では、開ループ制御ルーチン600は、2つの前述した信号の内1つのみを出力する。一実施形態では、開ループ制御ルーチン600は、例えば、図6に関して以下で論ずるように、較正ルーチンによって作成された参照表を用いて、出力すべき少なくとも1つの信号を発生する。このような実施形態における参照表は、入力信号の入力電力によってインデックスを付けることができる。ステップ604において抽出した入力信号の入力電力に基づいて、開ループ制御ルーチン600は対応する表の値を調べる。この値は、例えば、開ループ制御ルーチン600によってステップ616において出力される信号の電流または電圧を示すこともできる。開ループ制御ルーチン600は、ステップ616において、このような信号を出力する。別の実施形態では、開ループ制御ルーチン600は、例えば、図6に関して以下で論ずるように、較正ルーチンによって作成された参照アレイを用いて、出力する少なくとも1つの信号を発生する。このような実施形態における参照アレイには、入力信号の入力電力によってインデックスを付けることができる。ステップ604において抽出した入力信号の入力電力に基づいて、開ループ制御ルーチン600は対応する表のエントリを調べる。このエントリは、例えば、入力信号の振幅または位相を修正する量を示すことができる。このような実施形態では、開ループ制御ルーチン600は、ステップ720において閉ループ制御ルーチン700によって実行するのと同じアルゴリズムを実行して、以下で説明するように、安定化モジュールのハードウェアによって混入する非線形性を考慮して入力を調節する。次いで、開ループ制御ルーチン600は、調節されたエントリを用いて、ステップ616において出力する少なくとも1つの信号を発生する。
【0059】
図5による実施形態では、開ループ制御ルーチン600は、ステップ620において、データを較正アレイに書き込むことによって、このデータを較正ルーチンに出力する。このような実施形態では、少なくとも、開ループ制御ルーチン600は開ループ・モード・フラグを較正ルーチンに出力する。一実施形態では、開ループ制御ルーチン600は入力信号の入力電力も較正ルーチンに出力する。別の実施形態では、開ループ・カウンタの値が、開ループ制御ルーチン600によって較正ルーチンに出力される。
【0060】
ステップ624において、開ループ制御ルーチン600は、開ループ・カウンタが第2閾値よりも大きいか否か判断する。「はい」である場合、開ループ制御ルーチン600はステップ628に進む。それ以外の場合、開ループ制御ルーチン600はステップ632に進み、開ループ制御ルーチン600の実行を一時的に遅らせ、その後に、開ループ制御ルーチン600は再度ステップ604において入力信号の入力電力を抽出する。
【0061】
ステップ624の第2閾値、およびステップ632にある遅れによって、ステップ628において制御が閉ループ制御ルーチン700に受け渡される前に、最小限の時間期間開ループ制御ルーチン600を実行することを確保する。その結果、増幅器には、ソフトウェア・ルーチン500が開ループ・ルーチン600から閉ループ・ルーチン700に移行する前に、静定する時間期間が与えられる。一実施形態では、ステップ624の第2閾値は調整可能である。別の実施形態では、ステップ632にある遅れが調整可能である。
【0062】
再度ステップ608を参照すると、増幅器がインアクティブであるか、または入力信号の電力レベルが第1閾値よりも下である場合、開ループ制御ルーチン600はステップ636に進む。ステップ636において、開ループ制御ルーチン600は、開ループ・カウンタが0よりも大きいか否か判断する。大きくない場合、開ループ制御ルーチン600はステップ632に進む。大きい場合、開ループ制御ルーチン600はステップ640に進む。ステップ640において、開ループ制御ルーチンは、入力信号の少なくとも1つの特性を修正するために用いることができる少なくとも1つの信号を出力する。一実施形態では、これを行うには、ステップ616に関して先に論じたような、参照表を用いる。
【0063】
低入力電力レベルでは、殆どの増幅器が線形に動作する。ステップ608の第1閾値レベルは、一実施形態では、この事実を鑑みて選択されている。即ち、第1閾値レベルの選択は、選択された第1閾値レベルよりも低い入力電力レベルにおいて、増幅器が線形に挙動するように行われる。このようにすると、入力信号の実際の入力電力が第1閾値よりも下である限り、入力電力はステップ640における少なくとも1つの信号の出力には無関係となる。したがって、入力信号の入力電力の実際の値には関係なく、第1閾値よりも下である場合、この同じ少なくとも1つの信号をステップ640において出力することができる。その結果、ステップ640は1回だけ実行するだけで済む。こうなることを確保するために、ステップ644において開ループ・カウンタをクリアする。
【0064】
再度ステップ628を参照すると、開ループ制御ルーチン600が、入力信号の入力電力が第1閾値レベルよりも上である所定の時間期間実行したと判断した場合(即ち、開ループ制御ルーチン600は常にステップ608からステップ612に進んだので、ステップ604、608、612、616、620、624、および632が所定の時間期間連続的に実行した場合。)、開ループ制御ルーチン600は制御を閉ループ制御ルーチン700に受け渡す。一実施形態では、開ループ制御ルーチン600は、ステップ628において、閉ループ制御ルーチン700によってステップ716において用いられるフィルタを、較正ルーチンによって、例えば、図6に関して以下で説明するように発生するエントリを用いて初期化する。これらのエントリは、ステップ616において開ループ・ルーチンが最後に出力した1つ以上の信号に対応することができる。このようにして、閉ループ制御ルーチンは、開ループ制御ルーチンが残した同じ設定値で実行を開始する。一実施形態では、エントリは、入力信号の振幅を増大または減少させる量を表す。別の実施形態では、エントリは、入力信号の位相をずらす量を表す。一実施形態では、例えば、1つ以上の参照アレイの中に較正ルーチンによってエントリを格納する。これらのアレイには、入力信号の入力電力によってインデックスを付けることができる。つまり、ステップ604において抽出した入力信号の入力電力に基づいて、開ループ制御ルーチン600は、較正ルーチンが発生した対応するエントリを調べて、これを使用して閉ループ制御ルーチン700のフィルタを初期化することができる。
【0065】
開ループ制御ルーチン600が制御を閉ループ制御ルーチン700に受け渡した後、ステップ732において遅れがある。一実施形態では、ステップ732における遅れの期間は調節可能である。ステップ732の遅れに続いて、閉ループ制御ルーチン700はステップ704において複数の信号を抽出することができる。一実施形態では、これらの信号は、入力信号の入力電力、入力信号と増幅器の出力信号を表すフィードバック信号との間の第1誤差、そして入力信号とフィードバック信号との間の第2誤差を含む。このような実施形態の1つでは、第1誤差は、入力信号とフィードバック信号との間における振幅誤差であり、第2誤差は入力信号とフィードバック信号との間における位相誤差である。
【0066】
ステップ708において、閉ループ・ルーチン700は、閉ループ制御ルーチン700を用いる1つ以上の判断基準が満たされているか否か判断する。一実施形態では、閉ループ制御ルーチン700は、増幅器がアクティブであるか否か(即ち、イネーブルされているか、または使用中(unblanked)か)判断し、更に入力信号の入力電力が閾値よりも上であるか否か判断する。判断基準が満たされている場合、閉ループ制御ルーチン700はステップ712に進む。満たされていない場合、ソフトウェア・ルーチン500は開ループ制御ルーチン600に戻り、ステップ604において入力信号の入力電力を抽出する。一実施形態では、閉ループ制御ルーチン700において用いられる閾値の値は、開ループ制御ルーチン600において用いられる第1閾値の値よりも小さく、ヒステリシスのレベルを斟酌し、ソフトウェア・ルーチン500が開ループ制御ルーチン600と閉ループ制御ルーチン700との間で繰り返し切り替わるのを防止する。第1閾値と閉ループ制御ルーチン700において用いられる閾値が等しく、入力信号の入力電力がこれらの閾値付近でわずかに変動すると、ソフトウェア・ルーチン500は開ループ制御ルーチン600と閉ループ制御ルーチン700との間で繰り返し切り替わる可能性がある。
【0067】
当業者には容易に理解されようが、安定化モジュールが第1誤差および/または第2誤差を表す信号を発生するために用いるハードウェアは、不完全である。したがって、ハードウェアは第1誤差および/または第2誤差のために真値を行き過ぎるかまたは真値に達しない。実際、このハードウェアは、入力信号の入力電力レベル毎に、第1誤差および/または第2誤差の真の値からのばらつきを招くが、このばらつきは予測可能である。したがって、一実施形態では、閉ループ制御ルーチンは、ステップ712において、安定化モジュール・ハードウェアがステップ704において供給した第1誤差および第2誤差の測定値を調節する。一実施形態では、閉ループ制御ルーチン700は、ステップ712において、入力信号の入力電力レベルによってインデックスを付けた参照チャートを用いる。入力電力レベル毎に、参照チャートは、第1誤差および/または第2誤差について、予期される真値のオーバーシュートまたはアンダーシュートを列挙する。したがって、予期したオーバーシュートまたはアンダーシュートを、ハードウェアによって供給される第1誤差および/または第2誤差測定値に加算することによって、閉ループ制御ルーチン700は、第1誤差および/または第2誤差に対する真値を導き出す。
【0068】
一旦閉ループ制御ルーチン700がステップ712において第1誤差および/または第2誤差をしかるべく調節したなら、閉ループ制御ルーチンは、ステップ716において、入力信号の少なくとも1つの特性を修正する少なくとも1つの量を決定する。例えば、一実施形態では、閉ループ制御ルーチン700は、2つの量、即ち、入力信号の振幅を修正する量、および入力信号の位相を修正する量を決定する。別の実施形態では、閉ループ制御ルーチン700は、前述した2つの量の内1つだけを決定する。一実施形態では、先に論じたように、閉ループ制御ルーチン700は、A.J.ビタビによって文書化されている二次フィルタを用いて、少なくとも1つの量を決定する。あるいは、例えば、比例積分フィルタおよび/または比例積分微分フィルタのような、いずれの様式のフィルタでも、ステップ716において少なくとも1つの量を決定するために、閉ループ制御ルーチン700によって用いることができる。
【0069】
ステップ724の前に、ある実施形態の閉ループ制御ルーチン700は、ステップ720において、安定化モジュールのハードウェアによって混入した非線形性を考慮する。このような実施形態の1つでは、閉ループ制御ルーチン700は、ステップ716において決定した所望の量を調節するアルゴリズムを実行する。次いで、調節した量を用いて、少なくとも1つの信号を発生し、ステップ724において出力する。このアルゴリズムは、前述の調節した量を選択するように実行され、ステップ724において出力する少なくとも1つの信号は、ハードウェアの非線形性によって生ずるあらゆる歪みに追従するが、実際にはステップ716において決定した所望量を表すようにする。このように、このアルゴリズムは安定化モジュール・ハードウェアの非線形性を補償する。
【0070】
ステップ724において少なくとも1つの信号を出力した後、閉ループ制御ルーチンがステップ704に戻る前に、ステップ732において、閉ループ制御ルーチンの実行を再度遅らせる。
【0071】
ステップ728において、閉ループ制御ルーチン700は、データを較正アレイに書き込むことによって、このデータを較正ルーチンに出力する。例えば、閉ループ制御ルーチン700は、入力信号の入力電力、第1誤差、第2誤差、ステップ716において決定した少なくとも1つの量、および閉ループ・モード・フラグを較正ルーチンに出力する。
【0072】
図6は、本発明の例示的実施形態による較正ルーチン800の一実施形態を示す。一実施形態では、較正ルーチン800は、較正モジュール360によって実行するソフトウェア・ルーチンである。一実施形態では、較正ルーチン800は、開ループ制御ルーチン600および閉ループ制御ルーチン700の双方がアイドル状態にあるときに実行する。例えば、較正ルーチン800は、ステップ632および/または732によって導入される遅れの間に実行する。以下で詳しく説明するが、較正ルーチン800は、開ループ制御ルーチン600の性能(performance)がときと共に改善されるように、開ループ制御ルーチン600が閉ループ制御ルーチン700から学習することを可能にする。
【0073】
ステップ804において、較正ルーチン800は、ステップ620において開ループ制御ルーチン600によって、そしてステップ728において閉ループ制御ルーチン700によって較正アレイに既に書き込まれているデータを読み出す。次いで、較正ルーチン800は、ステップ808において、閉ループ制御ルーチン700が実行しているか否か判断する。例えば、一実施形態では、較正ルーチン800は、閉ループ・モード・フラグがあるか否か見るためにチェックする。ない場合(即ち、開ループ・モード・フラグがある)、較正ルーチン800はステップ812において較正カウンタをクリアし、処理を続けてステップ804において較正アレイから更に別のデータを読み出す。閉ループ制御ルーチン700が実行している場合、較正ルーチン800はステップ816において較正カウンタを増分し、データの処理を続行する。このように、較正ルーチン800は、閉ループ制御ルーチン700によって較正アレイに書き込まれたデータのみを処理する。
【0074】
ステップ820において、較正ルーチン800は、較正カウンタが低い方の閾値と高い方の閾値との間にあるか否か判断する。これらの閾値の間にない場合、較正ルーチン800はステップ804に戻り、更に別のデータを較正アレイから読み出す。これらの閾値の間にある場合、較正ルーチン800は、ステップ824において、較正アレイから入力信号の入力電力ならびに第1誤差および/または第2誤差を読み出す。ステップ824に進む前に較正カウンタが低い方の閾値よりも大きいことを確認することによって、較正ルーチン800は、閉ループ制御ルーチン700によって較正アレイに最初に書き込まれたデータを処理しているのではないことの確証を得る。むしろ、較正ルーチン800は、閉ループ制御ルーチン700がある時間期間実行した後(即ち、増幅器が一層安定になったとき)較正アレイに閉ループ制御ルーチン700によって書き込まれたデータを確実に処理する。同様に、ステップ824に進む前に較正カウンタが高い方の閾値よりも小さいことを確認することによって、較正ルーチン800は、閉ループ制御ルーチン800の起動付近(例えば、パルスの開始付近)において閉ループ制御ルーチン700によって較正アレイに書き込まれたデータを処理することの確証を得る。
【0075】
ステップ828において、較正ルーチン800は第1誤差および/または第2誤差が固定量よりも少ないか否か判断する。少ない場合、増幅器は既に安定化しており、較正ルーチンはステップ832に進む。それ以外の場合、較正ルーチン800は処理を進めて、ステップ804において較正アレイから更に別のデータを読み出す。ステップ832において、較正ルーチン800は、較正アレイから、閉ループ制御ルーチン700によって較正アレイに書き込まれた量を抽出する。
【0076】
較正ルーチン800は、ステップ836において、開ループ制御ルーチン600がステップ628において用いたエントリを発生して、閉ループ制御ルーチン700におけるフィルタを初期化する。これらのエントリは、入力信号の入力電力によってインデックスが付けられ、参照アレイに格納することができる。一実施形態では、較正ルーチン800は、加重フィルタを用いてエントリを発生する。例えば、較正ルーチン800は、抽出した量の加重値を、参照アレイの中でその入力電力レベルにおいて現れる以前のエントリの加重値に加算することによって、入力信号の個々の入力電力に対して、現在のエントリを発生する。
【0077】
ステップ840において、較正ルーチン800は、ステップ836において発生したエントリを用いて、開ループ制御ルーチン600がステップ616において用いるための値を決定する。これを行う際、較正ルーチン800は、安定化モジュールのハードウェアによって混入する非線形性を考慮する。例えば、較正ルーチン800は、閉ループ制御ルーチン700がステップ720において実行したのと同じアルゴリズムを実行する。較正ルーチン800が発生した値は、参照表に格納される。
【0078】
ステップ844において、較正ルーチン800は、較正カウンタをステップ820の高い方の閾値に設定する。このようにして、較正ルーチン800は1つのパルス毎に1回だけエントリおよび値を発生することの確証を得る。
【0079】
本発明は、1つ以上の製造品目上またはその内部において具体化される1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体として提供することもできる。製造品目とは、フロッピ・ディスク、ハード・ディスク、CDROM、フラッシュ・メモリ・カード、PROM、RAM、ROM、または磁気テープとすることができる。一般に、コンピュータ読み取り可能プログラムは、いずれのプログラミング言語ででも実現することができる。用いることができる言語の例には、C、C++、またはJAVA(登録商標)が含まれる。ソフトウェア・プログラムは、1つ以上の製造品目に、オブジェクト・コードとして格納することができる。
【0080】
図7Aは、MRI配電システム(RF送信チェーン/経路)910を安定化する安定化モジュール900を示す。一般に、安定化モジュール900はフィードバック・ループを増幅器404(図4)のRF出力カプラ(順方向ポート)から、MRIシステム磁石開口(magnetic bore)920からのRF信号のサンプルに移動させる。MRI配電システム910は、限定ではなく、増幅器404、種々の長さのRFケーブル912、送信/受信(T/R)スイッチ914、監視用カプラ916、およびMRIシステム磁石開口920を含む。磁石開口920は、複数の主要即ち本体RFコイル922を含む。一実施形態では、安定化モジュール900は、限定ではなく、プロセッサ408、カプラ418、誤差増幅器424、第1よび第2コントローラ432、436、A/D変換器460、D/A変換器468、レベルおよび位相設定、ならびにピックアップ・コイルまたはアンテナ932を通じた磁石開口920における電磁場強度を検知するRF混成結合器930を含む。尚、1つから複数のピックアップ・コイルまたはアンテナ932が磁石開口920の内部にまたはこれに近接して配置されていることは言うまでもない。RF混成結合器930、その448に対する接続、および磁石開口920における関連するピックアップ・コイル932を設けることによって、システム900はRF送信経路910にあるコンポーネントの全てにおける利得誤差および位相誤差をリアル・タイムで訂正することが可能となる。これらの誤差は、限定ではないが、温度、電圧定在波比(VSWR)、患者の大きさ、機械的移動、および電気的非線形性が原因で生ずる可能性があり、これらの全てはRF経路をときと共に変化させる可能性がある。
【0081】
図示する例示的実施形態では、安定化モジュール900は、MRI配電システム910と電気的に連通しており、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを含む。ソフトウェアは、プロセッサ408上で実行する。
【0082】
図4の安定化モジュール400と同様に、安定化モジュール900は、外部発生源(例えば、信号発生器)から、前置増幅器416において入力信号412を受け取る。一実施形態では、この入力信号412はパルス状RF入力信号である。次いで、指向性カプラ418が前置増幅した入力信号412をサンプリングする。第1サンプル420が誤差増幅器424に入力され、一方第2サンプル428が第1コントローラ432および第2コントローラ436に入力される。一実施形態では、第1コントローラ432は利得コントローラであり、入力信号412の振幅を修正するために用いられる。別の実施形態では、第2コントローラ436は移相器であり、入力信号412の位相を修正するために用いられる。以下で説明するが、修正した入力信号440が第1コントローラ432および第2コントローラ436によって出力され、増幅器404に入力される。
【0083】
一実施形態では、増幅器404はMRI配電システム910において用いられる。RF懇請カプラ930の出力信号448を表すフィードバック信号444も、誤差増幅器424に入力される。一実施形態では、誤差増幅器424は、第1サンプル420およびフィードバック信号444を増幅するために対数中間周波数(LOGIF)増幅器426を含む。誤差増幅器424は、第1誤差信号452および第2誤差信号456を発生する。第1誤差信号452/第2誤差信号456は、一実施形態では、入力信号412とフィードバック信号444との間における振幅誤差を表す。別の実施形態では、第1誤差信号452/第2誤差信号456は、入力信号412とフィードバック信号444との間における位相誤差を表す。
【0084】
一実施形態では、安定化モジュール900は3つのアナログ/ディジタル(A/D)変換器460を含む。A/D変換器460は、入力信号412を表す第1信号464、第1誤差信号452、および第2誤差信号456のディジタル化した表現をプロセッサ408に入力する。プロセッサ408は、信号処理を実行して制御信号を発生し、これらをディジタル/アナログ(D/A)変換器468に出力する。一実施形態では、プロセッサ408は、図3に示すように、第2制御モジュール308および較正モジュール360を利用する。一実施形態では、プロセッサ408は第2制御モジュール308を実行して閉ループ制御ルーチンを実施する。更に別の実施形態では、A/D変換器460、プロセッサ408、およびD/A変換器468を含むディジタル制御システムを、全体的にアナログ制御システムと置換する。あるいは、ディジタル制御システムを部分的にのみアナログ制御システムと置換する。
【0085】
一実施形態では、プロセッサ408が開ループおよび閉ループ制御ルーチンを実施するとき、第2制御モジュール308は、信号412の第1特性を修正するために用いることができる第1信号472と、入力信号412の第2特性を修正するために用いることができる第2信号476とを発生する。一実施形態では、入力信号412の第1特性は入力信号412の振幅であり、入力信号412の第2特性は入力信号412の位相である。
【0086】
図7Bは、MRI配電システム(RF送信チェーン/経路)910を安定化する安定化モジュール900’の別の実施形態を示す。概略的に、安定化モジュール900’は追加のまたは副フィードバック・ループを付加し、これを主ループの誤差増幅器424(図4)に加入して、主ループにおいて「バイアス」を発生して、MRI配電システムの(RF送信チェーン/経路)910のRF経路における損失/ずれを補償する。MRI配電システム910は、限定ではなく、増幅器404、種々の長さのRFケーブル912、送信/受信(T/R)スイッチ914、監視用カプラ916、およびMRIシステム磁石開口920を含む。磁石開口920は、複数の主要即ち本体RFコイル922を含む。一実施形態では、安定化モジュール900は、限定ではなく、プロセッサ408、カプラ418、第1および第2誤差増幅器424、424’、第1よび第2コントローラ432、436、A/D変換器460、D/A変換器468、レベルおよび位相設定、ならびにピックアップ・コイルまたはアンテナ932を通じた磁石開口920における電磁場強度を検知するRF混成結合器930を含む。尚、1つから複数のピックアップ・コイルまたはアンテナ932が磁石開口920の内部にまたはこれに近接して配置されていることは言うまでもない。磁石開口920の中にRF混成結合器930および関連するピックアップ・コイル932を設けることによって、システム900’はRF送信経路910にあるコンポーネントの全てにおける利得誤差および位相誤差をリアル・タイムで訂正することが可能となる。これらの誤差は、限定ではないが、温度、電圧定在波比(VSWR)、患者の大きさ、機械的移動、および電気的非線形性が原因で生ずる可能性があり、これらの全てはRF経路をときと共に変化させる可能性がある。
【0087】
図示する例示的実施形態では、安定化モジュール900’は、MRI配電システム910と電気的に連通しており、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを含む。ソフトウェアは、プロセッサ408上で実行する。
【0088】
図4の安定化モジュール400と同様に、安定化モジュール900’は、外部発生源(例えば、信号発生器)から、前置増幅器416において入力信号412を受け取る。一実施形態では、この入力信号412はパルス状RF入力信号である。次いで、指向性カプラ418が前置増幅した入力信号412をサンプリングする。第1サンプル420が誤差増幅器424に入力され、一方第2サンプル428が第1コントローラ432および第2コントローラ436に入力される。一実施形態では、第1コントローラ432は利得コントローラであり、入力信号412の振幅を修正するために用いられる。別の実施形態では、第2コントローラ436は移相器であり、入力信号412の位相を修正するために用いられる。以下で説明するが、修正した入力信号440が第1コントローラ432および第2コントローラ436によって出力され、増幅器404に入力される。
【0089】
一実施形態では、増幅器404はMRI配電システム910の中で用いられる。増幅器404の出力信号448を表すフィードバック信号444も、誤差増幅器424に入力される。入力信号420、および936、ならびにRF混成カプラ930を表す出力信号934が、第2誤差増幅器424’に入力される。出力信号452’および456’は、プロセッサ408の中にある主ループの誤差増幅器424(図4)に加入される。一実施形態では、誤差増幅器(424、424’)は、第1サンプル420およびフィードバック信号(444、934)のそれぞれを増幅するために対数中間周波数(LOGIF)増幅器426を含む。誤差増幅器424は、第1誤差信号452および第2誤差信号456を発生する。第1誤差信号452/第2誤差信号456は、一実施形態では、入力信号412と加算フィードバック信号との間における振幅誤差を表す。別の実施形態では、第1誤差信号452/第2誤差信号456は、入力信号412と加算フィードバック信号との間における位相誤差を表す。
【0090】
一実施形態では、安定化モジュール900’は3つのアナログ/ディジタル(A/D)変換器460を含む。A/D変換器460は、入力信号412を表す第1信号464、第1誤差信号452、および第2誤差信号456のディジタル化した表現をプロセッサ408に入力する。プロセッサ408は、信号処理を実行して制御信号を発生し、これらをディジタル/アナログ(D/A)変換器468に出力する。一実施形態では、プロセッサ408は、図3に示すように、第2制御モジュール308および較正モジュール360を利用する。一実施形態では、プロセッサ408は第2制御モジュール308を実行して閉ループ制御ルーチンを実施する。更に別の実施形態では、A/D変換器460、プロセッサ408、およびD/A変換器468を含むディジタル制御システムを、全体的にアナログ制御システムと置換する。あるいは、ディジタル制御システムを部分的にのみアナログ制御システムと置換する。
【0091】
一実施形態では、プロセッサ408が閉ループ制御ルーチンを実施するとき、第2制御モジュール308は、入力信号412の第1特性を修正するために用いることができる第1信号472と、入力信号412の第2特性を修正するために用いることができる第2信号476とを発生する。一実施形態では、入力信号412の第1特性は入力信号412の振幅であり、入力信号412の第2特性は入力信号412の位相である。
【0092】
以上、本発明のある種の実施形態について説明した。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されるのではなく、逆に本明細書において明示的に記載したものに対する追加や修正も本発明の範囲に含まれることを明示的に注記しておく。更に、本明細書において記載した種々の実施形態の特徴は、相互に排他的ではなく、本発明の主旨や範囲から逸脱することなく、種々の組み合わせおよび置換においても、かかる組み合わせや置換が本明細書において明示されていなくても、存在できることは言うまでもない。実際に、本明細書に記載したことの変形、修正、およびその他の実施態様は、本発明の主旨や範囲から逸脱することなく、当業者には想起されよう。したがって、本発明は、先の例示的な説明のみによって定義されるのではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI配電システムの安定化方法であって、
(a)前記MRI配電システムの少なくとも1つのフィードバック信号を分析する閉ループ制御ルーチンを備えている安定化モジュールを設けるステップと、
(b)入力信号の少なくとも1つの特性を、前記閉ループ制御ルーチンによって修正するステップと、
(c)前記修正した入力信号を前記MRI配電システムに供給するステップと、
を備えている、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記MRI配電システムは、少なくとも、増幅器と、ある長さのRFケーブルと、送信/受信(T/R)スイッチと、監視用カプラと、MRIシステム磁石開口とを含む、方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記MRIシステム磁石開口は、少なくとも1つのRFコイルを含む、方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、前記増幅器は、パルス型無線周波数増幅器を備えている、方法。
【請求項5】
請求項2記載の方法であって、更に、前記制御ループ・ルーチンを用いる判断基準を修正するステップを備えている、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、前記MRIシステム磁石開口に供給される修正信号に少なくとも部分的に基づいて、前記判断基準を修正する、方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記閉ループ制御ルーチンの一部をソフトウェアによって実現する、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記閉ループ制御ルーチンは2つのフィードバック信号を含む、方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、1つのフィードバック信号は前記増幅器において発生し、1つのフィードバック信号は前記MRIシステム磁石開口において発生する、方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記特性は、温度、電圧定在波比(VSWR)、患者の大きさ、機械的移動、および電気的非線形性によって少なくとも生ずる誤差を含む、方法。
【請求項11】
MRI配電システムを安定化する安定化モジュールであって、
前記MRI配電システムの少なくとも1つのフィードバック信号を分析する閉ループ制御ルーチンを備えている安定化モジュールを備えており、
前記安定化モジュールは、入力信号の少なくとも1つの特性を、前記閉ループ制御ルーチンによって修正し、当該修正した入力信号を前記MRI配電システムに供給する、安定化モジュール。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、前記MRI配電システムは、少なくとも、増幅器と、ある長さのRFケーブルと、送信/受信(T/R)スイッチと、監視用カプラと、MRIシステム磁石開口とを含む、システム。
【請求項13】
請求項12記載のシステムにおいて、前記MRIシステム磁石開口は、少なくとも1つのRFコイルを含む、システム。
【請求項14】
請求項12記載のシステムにおいて、前記増幅器は、パルス型無線周波数増幅器を備えている、システム。
【請求項15】
請求項12記載のシステムであって、更に、前記制御ループ・ルーチンを用いる判断基準を修正するステップを備えている、システム。
【請求項16】
請求項15記載のシステムにおいて、前記MRIシステム磁石開口に供給される修正信号に少なくとも部分的に基づいて、前記判断基準を修正する、システム。
【請求項17】
請求項11記載のシステムにおいて、前記閉ループ制御ルーチンの一部をソフトウェアによって実現する、システム。
【請求項18】
請求項11記載のシステムにおいて、前記閉ループ制御ルーチンは2つのフィードバック信号を含む、システム。
【請求項19】
請求項18記載のシステムにおいて、1つのフィードバック信号は前記増幅器において発生し、1つのフィードバック信号は前記MRIシステム磁石開口において発生する、システム。
【請求項20】
請求項11記載のシステムにおいて、前記特性は、温度、電圧定在波比(VSWR)、患者の大きさ、機械的移動、および電気的非線形性によって少なくとも生ずる誤差を含む、システム。
【請求項21】
情報担体上に有体的に具体化したコンピュータ・プログラム生産物であって、データ処理システムに、
少なくとも1つのフィードバック信号を分析する閉ループ制御ルーチンを備えている安定化モジュールによって、入力信号を受け取らせ、
前記入力信号の特性を修正するために、前記閉ループ制御ルーチンを使用させ、
前記修正した入力信号をMRI配電システムに供給させる、
ように動作可能な命令を含む、コンピュータ・プログラム生産物。
【請求項22】
MRIデバイス用配電システムであって、
MRI配電システムと、
前記MRI配電システムの少なくとも1つのフィードバック信号を分析する閉ループ制御ルーチンを備えている安定化モジュールを備えており、
前記安定化モジュールは、入力信号の少なくとも1つの特性を、前記閉ループ制御ルーチンによって修正し、当該修正した入力信号を前記MRI配電システムに供給する、安定化モジュールと、
を備えている、MRIデバイス用配電システム。
【請求項23】
請求項22記載のシステムにおいて、前記MRI配電システムは、少なくとも、増幅器と、ある長さのRFケーブルと、送信/受信(T/R)スイッチと、監視用カプラと、MRIシステム磁石開口とを含む、システム。
【請求項24】
請求項22記載のシステムにおいて、前記安定化モジュールは、少なくとも1つのプロセッサと、カプラと、少なくとも1つの誤差増幅器と、複数のコントローラと、複数のA/D変換器と、複数のD/A変換器と、レベル設定器(level set)と、位相設定器(phase set)と、RF混成結合器とを含む、システム。
【請求項25】
請求項24記載のシステムにおいて、前記RF結合器は、前記磁石開口内における電磁場強度を、ピックアップ・コイルまたはアンテナを通じて検知する、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A−1】
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【図7A−2】
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【図7B−1】
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【図7B−2】
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【公開番号】特開2013−81212(P2013−81212A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262723(P2012−262723)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2010−514939(P2010−514939)の分割
【原出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】