説明

増感色素の製造方法

【課題】不飽和ラクタム化合物の製造方法の提供
【解決手段】アルデヒド化合物とラクタム化合物とを金属アルコキシド等の金属塩の存在下で反応させる不飽和ラクタム化合物の製造方法。例えば、下記化合物Aのアルデヒド化合物と下記化合物Bのラクタム化合物をカリウム−t−ブトキシド存在下に反応させ下記化合物Cの不飽和ラクタム化合物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版用などとして好適な増感色素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ラクタム化合物のうちで特定のものは、平版印刷版の露光現像処理において、感光層の感光性を増感する色素としての機能を有する。この増感色素については、例えば特開2006−171689号公報に記載されている。
この増感色素化合物の製造方法については、非特許文献1に記載されている。しかし、この方法によると目的化合物の収率が低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J. Am. Chem. Soc) 2002年 124, 13692〜13693
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、平版印刷版用として好適な増感色素を、高収率で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は下記の手段により達成された。
<1>一般式(1)で表されるアルデヒド化合物と一般式(2)で表されるラクタム化合物とを金属アルコキシドと、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩の存在下で反応させる、一般式(3)で表される不飽和ラクタム化合物の製造方法。
【化1】

(式中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、Zは
【化2】

結合を含む5員又は6員の複素環を示す。)
<2>前記一般式(1)において、Rが置換もしくは無置換のアリール基であることを特徴とする<1>に記載の製造方法。
<3>前記一般式(2)において、Rが置換もしくは無置換のアルキル基であることを特徴とする<1>または<2>に記載の製造方法。
<4>前記一般式(2)において、Rが炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルキル基であることを特徴とする<3>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明方法によれば不飽和ラクタム化合物を高収率で効率よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の製造方法の反応は次式で表すことができる。
【0008】
【化3】

(上記一般式中の符号は上記と同じ意味をもつ。)
【0009】
Zは
【化4】

結合を含む5員または6員の複素環を示す。Zはヘテロ原子として窒素原子とともに他のヘテロ原子を含んでもよい。他のヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子があげられ、窒素原子とともに酸素原子を含むものが特に好ましい。
【0010】
、Rは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。
好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。
これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
【0011】
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0012】
また、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
【0013】
好ましい置換アリール基の具体例としては、前述のアリール基の環形成炭素原子上に置換基として、(水素原子以外の)1価の非金属原子団の基を有するものが用いられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基、ならびに、先に置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。このような、置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、クロロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシエトキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチルチオフェニル基、トリルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ジエチルアミノフェニル基、モルホリノフェニル基、アセチルオキシフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシフェニル基、N−フェニルカルバモイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、N−メチルベンゾイルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アリルオキシカルボニルフェニル基、クロロフェノキシカルボニルフェニル基、カルバモイルフェニル基、N−メチルカルバモイルフェニル基、N,N−ジプロピルカルバモイルフェニル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルフェニル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、スルファモイルフェニル基、N−エチルスルファモイルフェニル基、N,N−ジプロピルスルファモイルフェニル基、N−トリルスルファモイルフェニル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基、ジエチルホスフォノフェニル基、ジフェニルホスフォノフェニル基、メチルホスフォノフェニル基、メチルホスフォナトフェニル基、トリルホスフォノフェニル基、トリルホスフォナトフェニル基、アリルフェニル基、1−プロペニルメチルフェニル基、2−ブテニルフェニル基、2−メチルアリルフェニル基、2−メチルプロペニルフェニル基、2−プロピニルフェニル基、2−ブチニルフェニル基、3−ブチニルフェニル基、等を挙げることができる。
【0014】
なお、Rはさらに好ましくは置換もしくは無置換のアリール基であり、Rはさらに好ましくは置換もしくは無置換のアルキル基である。
さらにRについては、炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルキル基であることが特に好ましい。
【0015】
本発明の製造方法においては、上記一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の縮合反応を、塩基としての金属アルコキシド、および、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の存在下に行わせることを特徴とする。
金属アルコキシドとしては、縮合反応の塩基(base)として一般的に使用されているものを特に制限なく用いることができ、具体的にはナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシドなどがあげられる。
金属アルコキシドの使用量は、一般式(1)で表される化合物に対し、好ましくは0.1〜2.0モル%であり、さらに好ましくは0.3〜1.0モル%である。
【0016】
さらに本発明の製造方法においては、アルカリ金属塩MX(Mはアルカリ金属原子、Xはハロゲン原子を表す。)及びアルカリ土類金属塩M(Mはアルカリ金属原子、Xはハロゲン原子を表す。)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩を存在させて、縮合反応を行わせる。
としては、リチウム、ナトリウム、カリウムがあげられる。Mとしてはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムがあげられる。Xとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。
これらの金属塩のうち、Mとしては、リチウム、ナトリウム、Mとしてはマグネシウム、Xとしては塩素、臭素が好ましく、臭化マグネシウム、塩化リチウムが特に好ましい。
上記金属塩の使用量は、合計で、一般式(1)で表される化合物に対し、好ましくは0.1〜2.0モル%であり、さらに好ましくは0.2〜1.0モル%である
この金属塩を存在させることにより、一般式(3)で表される化合物の収率を大きく向上させることができる。
【0017】
本発明方法で製造する一般式(3)で表される化合物のうち、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0018】
【化5】

(R11、R12、R13はそれぞれ独立に無置換アルキル基であり、R14は水素もしくは置換アルキル基である。)
【0019】
一般式(3)で表される化合物の好ましいものの具体例としては、以下のものがあげられる。(式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Bnはベンジル基である。)
【0020】
【化6−1】

【0021】
【化6−2】

【0022】
【化6−3】

【0023】
本発明の製造方法で製造される一般式(3)で表される化合物は、平版印刷版原版の感光層に用いるのに好適であり、この用途については、特開2006−171689号公報に記載されているとおりである。
【実施例】
【0024】
以下に本発明を実施例に基づき、更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
冷却菅、攪拌羽根(回転数250rpm)を備え付けた4つ口フラスコにイソプロパノール167.5ml、化合物A 33.5g、化合物B 42.68g、塩化リチウム 1.61gを入れ内温を10.0℃以下とした。カリウム-t-ブトキシド 5.43gを3回に分割添加し、イソプロパノール 26.8mlを加えた後に内温を65.0℃以上とした。65.0℃で3時半攪拌を継続した後、25.0度まで冷却しトルエン 276ml、水 146.5mlを加えセライトろ過を行った。続いてそのろ液を反応容器に移し内温60.0℃以上まで昇温し塩酸5mlを3分間かけて滴下した。その後抽出を3回行い減圧濃縮を行った。得られた油状粘性物にメタノール 75.8ml、イソプロパノール 37.8ml、種結晶を加え3時間かけ内温5.0℃以下まで冷却し1時間攪拌した。その後ろ過を行い化合物Cの結晶を得た。収率71.4%、HPLC純度99.1%であった。
なお、以下の式中のMeはメチル基、Etはエチル基を表す。
【0026】
【化7】

【0027】
(比較例1)
冷却菅、攪拌羽根(回転数250rpm)を備え付けた4つ口フラスコにイソプロパノール167.5ml、化合物A 33.5g、化合物B 42.68gを入れ内温を10.0℃以下とした。カリウム-t-ブトキシド 5.43gを3回に分割添加し、イソプロパノール 26.8mlを加えた後に内温を65.0℃以上とした。65.0℃で3時間半攪拌を継続した後、25.0度まで冷却しトルエン 276ml、水 146.5mlを加えセライトろ過を行った。続いてそのろ液を反応容器に移し内温60.0℃以上まで昇温し塩酸5mlを3分間かけて滴下した。その後抽出を3回行い減圧濃縮を行った。得られた油状粘性物にメタノール 75.8ml、イソプロパノール 37.8ml、種結晶を加え3時間かけ内温5.0℃以下まで冷却1時間攪拌した。その後ろ過を行い化合物Cの結晶を得た。収率42.1%、HPLC純度99.1%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアルデヒド化合物と一般式(2)で表されるラクタム化合物とを金属アルコキシドと、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩の存在下で反応させる、一般式(3)で表される不飽和ラクタム化合物の製造方法。
【化1】

(式中、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、Zは
【化2】

結合を含む5員又は6員の複素環を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、Rが置換もしくは無置換のアリール基であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(2)において、Rが置換もしくは無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(2)において、Rが炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルキル基であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−265383(P2010−265383A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117809(P2009−117809)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】