説明

増殖性障害を処置するための組成物および方法

本発明は、増殖性障害、特に、免疫増殖性および自己免疫障害を処置する方法、ならびにそのような障害を処置するため、特に、免疫増殖性の病理に関与する細胞を涸渇するための治療ストラテジーにおける使用のために、NK細胞受容体に結合する抗体を産生させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性障害、特に、NK型LDGLのような免疫増殖性障害を処置する方法、ならびにそのような障害を処置するための治療ストラテジーにおける使用のための抗体を産生させる方法に関する。一般的に、本方法は、障害の基礎となる増殖細胞の表面上に存在する受容体に特異的に結合する抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球のサブ集団である。NK細胞の特徴および生物学的特性として、CD16、CD56、および/またはCD57のような表面抗原の発現、細胞表面において発現されるα/βまたはγ/δTCR複合体の不在、特定の細胞溶解性酵素の活性化により、「自己の」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合し、死滅させる能力、腫瘍細胞またはNK活性化受容体−リガンドを発現する他の罹患した細胞を死滅させる能力、および免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力が挙げられる。
【0003】
NK細胞活性は、活性化および抑制シグナルの両方に関与する複雑な機構によって調節される。NK細胞仲介認識およびHLAクラスI欠損標的細胞の死滅に重要な役割を果たすいくらかの異なるクラスのNK特異的受容体が同定されている。1つのそのようなクラスの受容体、NCR(自然細胞障害性受容体(Natural Cytotoxicity Receptor))は、NKp30、NKp46およびNKp44、Igスーパーファミリーのすべてのメンバーを含む。特異的なmAbによって誘導されるそれらの架橋は、NK細胞を強度に活性化して、細胞内Ca++レベルの増加、細胞障害性の誘発およびリンフォカイン放出を生じる。
【0004】
2つのNK細胞受容体のさらなるファミリーは、KIR受容体(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)およびCD94/NKG2である。これらのファミリーのそれぞれは、活性化および抑制性受容体の両方を含有する。KIR遺伝子は、NK細胞上において発現されるIgスーパーファミリーメンバーの多様な多型性のグループを現し、2つまたは3つの細胞外Ig様ドメインのいずれかを有する。KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、およびKIR3DL3を含むファミリーの抑制性メンバーの細胞質ドメインは、荷電した残基を含有するKIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR2DS5、およびKIR3DS1のような活性性メンバーの細胞質ドメインとは対照的に、ITIM配列を含有する。KIRファミリーの抑制性メンバーは、抑制性効果HLAクラスI分子を仲介する。KIR受容体ファミリー内に認められる多型は、個体間の遺伝子バリエーションならびにインビボでの特定のNK細胞のクローンの拡大の結果である。レビューについては、例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5を参照のこと。
【0005】
CD94およびNKG2タンパク質は、C−型レクチンスーパーファミリーのメンバーである。CD94は、NK細胞上で好適に発現され、すべてのNK細胞のうち少なくとも50%においてそれ自体が発現されるNKG2AのようなNKG2スーパーファミリーメンバーとヘテロ二量体を形成する。NKG2Aは、2つのITIMドメインを含有し、CD94と共に、非古典的MHCクラスI分子HLA−E(ヒトにおいて、マウスではQa−1b)に結合するヘテロ二量体抑制性受容体を形成する(例えば、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10を参照のこと)。
【0006】
NK−LDGL(NK型顆粒リンパ球増多症、あるいはNK−LGLと呼ばれる)は、NK細胞またはNK様細胞、即ち、表面抗原発現(例えば、CD3−、CD56+、CD16+など、例えば、非特許文献11を参照のこと)の特徴的組み合わせを示す大顆粒リンパ球のクローン発現によって引き起こされる増殖性障害のクラスを指す。これらの障害の基礎となる細胞増殖は、いくつかの患者において見られる軽度の症状からNK−LDGL白血病と呼ばれる急速進行性の、しばしば致死性の形態の疾患までの範囲に及ぶ多様な影響を及ぼし得る。このクラスの障害の症状として、発熱、軽度の好中球減少、血小板減少、貧血、リンパ球増加、脾腫、肝腫、リンパ節症、骨髄浸潤などを挙げることができる(例えば、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14を参照のこと)。NK−LDGL白血病の処置は、しばしば、集中的であって、化学療法に関与し、疾患は、しばしば、致死的であって、凝固障害および多臓器不全に関連し、多数の臓器のLGL浸潤に関与する。自己免疫障害はまた、LDGLにおいて顕著であり、何よりもまず関節リウマチを含む多数の障害が観察され、関節リウマチ患者の血液または関節液においてLDGL白血病表現型を伴う細胞の数の増加が見出されている。これらの拡大された細胞のいくつかは、LGLの機能的および表現型特徴を有するCD28陰性T細胞である。また、LDGL患者では、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)および再生不良性貧血が観察される。従って、NK−LDGLおよびLDGLの処置に有用な療法は、一般的に、免疫増殖性および自己免疫病態、特に、NK細胞が関与する障害の処置においても用途を有することが予想される。
【0007】
一般的に、確立された免疫障害の処置に有効である有効な療法はほとんど認められていない。例えば、関節リウマチの場合、一旦誘発されると、免疫応答は滑膜の炎症を引き起こす。炎症の早期および中期分子メディエーターとして、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキンIL−1、IL−6、IL−8およびIL−15、トランスフォーミング増殖因子β、線維芽細胞増殖因子および血小板由来増殖因子が挙げられる。RAの現代の薬理学的処置は、これらのメディエーターを標的化するが、しかし、関与する細胞がNK細胞である場合、基礎をなす細胞を取り出さない。一旦、炎症反応が確立されると、滑膜は肥厚し、軟骨および基礎をなす骨は、崩壊し始め、関節破壊の徴候が生じる。免疫増殖性障害の有効な処置が相対的に欠乏していることから考えると、これらの障害の基礎をなす免疫細胞活性化および/または増殖を制限ならびに反転するための新規かつ革新的なストラテジーが、当該技術分野において大いに必要とされることは明らかである。本発明は、これらのおよび他の必要性に取り組む。
【非特許文献1】トラウスダレ(Trowsdale)およびパーハム(Parham)(2004年)Eur J Immunol 34(1):7−17
【非特許文献2】ヤワタ(Yawata)ら(2002年)Crit Rev Immunol22(5−6):463−82
【非特許文献3】シュー(Hsu)ら(2002年)Immunol Rev 190:40−52
【非特許文献4】ミドルトン(Middleton)ら(2002年)Transpl Immunol10(2−3):147−64
【非特許文献5】ビルチェス(Vilches)ら(2002年)Annu Rev Immunol20:217−51
【非特許文献6】OMIM602894
【非特許文献7】ブラウド(Braud)ら(1998年)Nature391:795−799
【非特許文献8】チャン(Chang)ら(1995年)Europ.J.Immun25:2433−2437
【非特許文献9】ラゼティック(Lazetic)ら(1996年)Immun157:4741−4745
【非特許文献10】ロドリゲス(Rodriguez)ら(1998年)Immunogenetics 47:305−309
【非特許文献11】ラフラン(Loughran)(1993年)Blood 82:1
【非特許文献12】ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood102:1797
【非特許文献13】ラフラン(Loughran)(1993年)Blood82:1
【非特許文献14】エプリング−バーネッテ(Epling−Burnette)ら(2004年)Blood−2003−02−400
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在までのところ、NK細胞上で発現され、NK細胞活性をダウンレギュレートすることが意図される受容体に特異的な抗体は、一般的に、受容体機能または受容体発現をモジュレートしている。即ち、抗体は、活性受容体の機能化を阻止するか、またはNK細胞上の抑制性受容体を活性化している。他の抗体は、活性受容体をダウンレギュレートするように指向された。NK細胞上で発現される受容体に指向された抗体を使用して、目的の受容体受容体を発現するNK細胞を涸渇(死滅)させることができることを実証した。さらに、このNK細胞涸渇は、毒性部分で機能化されていない「裸の」抗体によって仲介され得る。Fc受容体、特に、CD16に結合するエフェクター領域を有する抗体が、特に好適である。
【0009】
本発明者らはまた、これらの涸渇抗体が、試験したすべての器官および骨髄において、インビボで細胞を排除することができることを実証した。それは、抗体を使用して、器官内に局在するNK細胞(循環NK細胞だけではない)に関与する免疫増殖性障害を処置することができることを示すため、およびそれは、涸渇抗体を使用して、例えば、自己反応性NK細胞が既に出現し、病理に関与している確立された免疫増殖条件を処置することができることを示すため、これは、重要な特徴である。一旦それらが良好に確立されると、免疫増殖性障害がしばしば診断されるため、NK細胞を涸渇することは、それらの活性を阻害することまたはさらなる増殖を防止することよりも重要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、増殖性障害、特に、NK型LDGLおよびNK細胞に関与すると考えられる他の障害のような免疫増殖性障害の処置に有用な抗体ならびにこの抗体を産生させるための方法を提供する。NK細胞は、例えば、関節リウマチおよび糖尿病のような免疫増殖性障害に関与することが報告されている。それゆえ、本発明の抗体は、例えば、喘息、骨関節炎、関節リウマチ、および脊椎関節症を含む関節炎、胃腸炎、クローン病および大腸炎、神経炎症性障害、ならびにI型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、乾癬、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、脱髄性症状、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、グレーブス病、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、ウェゲナー肉芽腫症(granulomatosus)、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、ベーチェット(Bechet’s)病、チャーグ・ストラウス症候群、高安動脈炎などのような自己免疫障害の処置において有用であることが予想される。1つの実施態様においては、免疫増殖性障害は、特に、NK型LDGLおよびT−LDGLを含まない。本方法を使用して産生される抗体は、NK型LDGLにおいて拡大されるNK細胞または免疫増殖性障害ならびに特に、関節リウマチおよびI型糖尿病のような自己免疫障害において拡大されるTもしくはNK細胞のような障害を基礎とする拡大される細胞を特異的に標的化することを可能にする。抗体は、例えば、免疫系による破壊のためにそれらを標的化することによって、またはそれらを、放射性同位元素、毒素、もしくは薬物のような細胞障害性薬剤と直接接触させることにより細胞を死滅させることによって、細胞増殖の病理学的影響を制限することができる。本明細書に記載の抗体ならびにそれらの使用のための指示書を含むキットのような、多くの増殖性障害のいずれかの処置のために抗体を使用する方法もまた提供される。
【0011】
従って、本発明は、NK細胞に関与する免疫増殖性障害を伴う患者を処置する方法を提供し、本方法は、NK受容体に特異的に結合する抗体を患者に投与する工程を含む。また、個体において炎症を減少する方法、あるいは個体においてNKもしくはT細胞を排除、死滅または涸渇する方法も包含される。
【0012】
別の実施態様では、本発明は、NK受容体に特異的に結合し、ヒトNK細胞上の前記NK受容体に結合する場合、前記NK細胞を涸渇させる抗体を含む組成物の、免疫増殖性障害の処置のための医薬品の製造のための使用を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、NK細胞を排除する方法、活性化されたNK細胞を排除するための方法、炎症を減少するための方法、または個体もしくは生物学的サンプルにおいて前炎症性サイトカインを減少するための方法を提供し、本方法は、前記NK細胞と、NK受容体に特異的に結合する抗体を含む組成物とを接触させる工程を含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、哺乳動物においてNKおよび/またはT細胞を涸渇するための方法を提供し、本方法は、NK受容体に特異的に結合する抗体を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、炎症を減少するか、活性化されたNK細胞の数を減少するか、または哺乳動物もしくは生物学的サンプルにおける前炎症性サイトカインを減少するための方法を提供し、本方法は、NKG2Aを発現するNK細胞および/またはNKG2Cを発現する細胞を排除する工程を含む方法を含む。好ましくは、NKG2Aを発現するNK細胞およびNKG2Cを発現する細胞が排除される。好ましくは、NKまたはT細胞を排除する工程は、前記NK細胞を、NKG2Aおよび/またはNKG2Cに特異的に結合する抗体を含む組成物に接触させる工程を含む。1つの例では、前記接触工程は、細胞エフェクターを含む細胞培養培地において行われ、場合により、前記培養培地は、PBMCまたは全末梢血リンパ球を含む。別の態様では、前記接触工程は、哺乳動物においてインビボで行われる。
【0016】
別の態様では、本発明は、以下の工程:a)免疫増殖性障害の存在(例えば、症状ならびに/あるいはNK細胞および/またはNK細胞受容体を発現する細胞の存在)を診断する工程と、b)本発明の抗体で処置する工程とを含む個体を処置するための方法を提供する。1つの態様では、診断工程は、確立された炎症性または自己免疫障害を含み、場合により、ここで、確立された障害は、組織傷害もしくは損傷またはその症状および/または3、6、9、12、24もしくは36箇月間を超えて持続する障害によって特徴付けられる。
【0017】
本発明はまた、免疫増殖性障害を伴う患者を処置する方法を提供し、本方法は、a)患者内のNK細胞のNK受容体状態を決定する工程と、b)NK細胞において顕著に発現されるNK受容体に特異的に結合する抗体を患者に投与する工程とを含む。
【0018】
本発明の方法の1つの実施態様では、NK受容体は活性化受容体である。別の実施態様では、受容体は、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、CD94、およびNKG2Aからなる群から選択される。別の実施態様では、受容体は、NKp30、NKp44、またはNKp46のようなNCRである。別の実施態様では、抗体は、単一のNK受容体に特異的に結合する。別の実施態様では、NK受容体状態は、免疫学的アッセイを使用して決定される。別の実施態様では、NK受容体状態は、NK細胞上に存在するNK受容体の活性を決定するための機能アッセイを使用して、決定される。別の実施態様では、NK受容体状態は、遺伝子型判定アッセイを使用して決定される。別の実施態様では、NK受容体状態は、細胞においてNK受容体をコードするmRNAを検出するためのアッセイを使用して決定される。別の実施態様では、受容体は、NK細胞の少なくとも50%に検出可能に存在する。
【0019】
別の実施態様では、抗体は細胞障害性抗体である。別の態様では、抗体は、例えば、細胞に対してADCC(抗体依存性細胞障害)あるいはCDC(補体依存性細胞障害)を仲介することによって、受容体を発現する細胞を死滅させる(例えば、ヒトIgG1またはIgG3型の抗体)。
【0020】
好適な実施態様では、抗体は、細胞エフェクターをリクルートすることが可能な「裸の」抗体である。本発明のモノクローナルの裸の抗体およびそのフラグメントの機能は、一般的に、Fc受容体に結合するそれらの能力に依存する。Fcγ受容体のようなFc受容体は、白血球の表面上において発現される。これらの受容体は、免疫グロブリン(Ig)のFc部分に結合し、例えば、Fcγ受容体はIgGのFc部分に結合する。この結合は、抗体による抗原の認識と細胞に基づくエフェクター機構とを結び付けることによって免疫機能に寄与することに役立つ。異なる免疫グロブリンクラスは、免疫グロブリンFc領域と免疫細胞上の特異的Fc受容体(FcR)との特異な相互作用を介して、異なるエフェクター機構を誘発する。活性化Fcγ受容体には、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、およびFcγRIIIAが含まれる。FcγRIIBは、抑制性Fcγ受容体と考えられる。(レビューのために、例えば、ウフ(Woof)ら(2004年)Nat Rev Immunol.4(2):89−99、バウマン(Baumann)ら(2003年)Arch Immunol Ther Exp (Warsz)51(6):399−406、パン(Pan)ら(2003年)Chin Med J(Engl)116(4):487−94、タカイ(Takai)ら(1994年)Cell76:519−529、ラヴェチ(Ravetch)ら(2001年)Annu Rev Immunol19:275−290(そのそれぞれの開示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。理論にとらわれずに述べれば、本発明者らは、本発明の抗体におけるFc受容体結合領域の存在は、本発明の抗体が結合する細胞の涸渇をもたらすと考えている。好適な態様では、抗体は、IgG1またはIgG3型のヒトFc領域を含み、毒性または放射性部分を含有しない。別の実施態様では、Fc領域は、ヒトFc受容体に結合するヒトIgG2またはIgG4であり、場合により、ヒトFc受容体への結合を付与または増加するように改変される。
【0021】
別の実施態様では、細胞障害性抗体は、放射性同位元素、毒性ペプチド、および毒性小分子からなる群から選択されるエレメントを含む。別の実施態様では、抗体は抗体フラグメントである。別の実施態様では、抗体はヒト化またはキメラ抗体である。別の実施態様では、放射性同位元素、毒性ペプチド、または毒性小分子は、抗体に直接付着される。別の実施態様では、抗体は、前記NK受容体のマウスまたは霊長類ホモログに結合する。別の実施態様では、抗体は、複数のKIR受容体に結合する。別の実施態様では、細胞障害性抗体は、免疫学的アッセイにおいて前記NK受容体状態を決定するために使用されるのと同じ抗体から誘導される。
【0022】
別の態様では、本発明は、免疫増殖性障害の処置における使用に適切な抗体を産生する方法を提供し、前記方法は次の工程:i)1つ以上のNK細胞受容体に特異的に結合する複数の抗体を提供する工程、ii)免疫増殖性障害を伴う1人以上の患者から採取されるNK細胞に結合するそれぞれの抗体の能力を試験する工程、iii)複数の抗体から1人以上の患者から採取されるNK細胞の少なくとも50%に結合する抗体を選択する工程、iv)抗体をヒトへの投与に適切ならしめる工程を含む。
【0023】
1つの実施態様では、抗体は、活性化NK細胞受容体に特異的に結合する。別の実施態様では、抗体は、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKG2CおよびNKG2Aからなる群から選択される受容体に結合する。別の実施態様では、抗体は、NKp30、NKp44、またはNKp46のようなNCRに特異的に結合する。別の実施態様では、抗体は、それをヒト化またはキメラ化することによってヒトへの投与に適切にされる。
【0024】
別の実施態様では、方法は、細胞障害性薬剤を抗体に連結する工程をさらに含む。別の実施態様では、細胞障害性薬剤は、放射性同位元素、毒性ポリペプチド、または毒性小分子である。別の実施態様では、細胞障害性薬剤は、抗体に直接連結される。別の実施態様では、抗体は抗体フラグメントである。別の実施態様では、抗体は、1人以上の患者から採取されるNK細胞の少なくとも60%に結合する。別の実施態様では、抗体は、1人以上の患者から採取されるNK細胞の少なくとも70%に結合する。別の実施態様では、抗体は、1人以上の患者から採取されるNK細胞の少なくとも80%に結合する。
【0025】
別の態様では、本発明は、免疫増殖性障害を伴う患者を処置する方法を提供し、方法は、a)前記患者内のT細胞またはNK細胞のNK細胞受容体状態を決定する工程と、b)前記T細胞またはNK細胞によって顕著に発現されるNK細胞受容体に特異的に結合する抗体を前記患者に投与する工程とを含み、ここで、前記受容体は、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択される。本発明はまた、免疫増殖性障害を伴う患者を処置する方法を提供し、本方法は、a)前記患者内のT細胞またはNK細胞のNK受容体を決定する工程と、b)患者由来のNKまたはT細胞を、前記T細胞またはNK細胞によって顕著に発現されるNK受容体に特異的に結合する前記患者への抗体を含む組成物に接触させることによって、患者からNKまたはT細胞を排除する工程とを含み、ここで、抗体は、それが結合する前記TまたはNK細胞を涸渇させる。
【0026】
別の態様では、本発明は、免疫増殖性障害を有する患者を処置する方法、または個体において炎症を減少する方法、あるいは個体においてNKもしくはT細胞を排除、死滅または涸渇する方法を提供し、本方法は、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択されるNK細胞受容体に特異的に結合する抗体を患者に投与することを含む。
【0027】
本発明の方法の1つの実施態様では、NK受容体は活性化受容体である。別の実施態様では、受容体は、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、およびCD94からなる群から選択される。別の実施態様では、受容体は、NKp30、NKp44、またはNKp46のようなNCRである。別の実施態様では、受容体は、抑制性受容体、好ましくは、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKG2CおよびNKG2AのようなNKG2タンパク質である。別の実施態様では、抗体は、単一のNK細胞受容体に特異的に結合する。別の実施態様では、NK受容体状態は、免疫学的アッセイを使用して決定される。別の実施態様では、NK受容体状態は、TまたはNK(もしくは他の)細胞上に存在するNK受容体の活性を決定するための機能アッセイを使用して、決定される。別の実施態様では、NK受容体状態は、遺伝子型判定アッセイを使用して決定される。別の実施態様では、NK受容体状態は、細胞においてNK受容体をコードするmRNAを検出するためのアッセイを使用して決定される。別の実施態様では、受容体は、T細胞またはNK(もしくは他の)細胞の特定の組の少なくとも50%に検出可能に存在する。
【0028】
別の実施態様では、抗体は抗体フラグメントである。好ましくは、抗体は細胞障害性抗体であり、抗体は、例えば、細胞に対してADCCを仲介することによって、受容体を発現する細胞の死滅をもたらす(例えば、IgG1またはIgG3型の抗体)。別の実施態様では、細胞障害性抗体は、放射性同位元素、毒性ペプチド、および毒性小分子からなる群から選択されるエレメントを含む。1つの態様では、抗体は、さらに、リガンド結合もしくはシグナル伝達のような受容体機能を阻止し、および/または受容体内在化を引き起こす。別の実施態様では、抗体はヒト化またはキメラ抗体である。別の実施態様では、放射性同位元素、毒性ペプチド、または毒性小分子は、抗体に直接付着される。別の実施態様では、抗体は、前記TまたはNK受容体のマウスもしくは霊長類ホモログに結合する。別の実施態様では、抗体は、複数のKIR受容体に結合する。別の実施態様では、細胞障害性抗体は、免疫学的アッセイにおいて前記TまたはNK受容体状態を決定するために使用されるのと同じ抗体から誘導される。
【0029】
別の態様では、本発明は、免疫増殖性障害の処置における使用に適切な抗体を産生する方法を提供し、前記方法は次の工程:i)1つ以上のNK受容体に特異的に結合する複数の抗体を提供する工程、ii)免疫増殖性障害を伴う1人以上の患者から採取されるNKまたはT細胞に結合するそれぞれの抗体の能力を試験する工程、iii)複数の抗体から1人以上の患者から採取されるNKまたはT細胞の少なくとも50%に結合する抗体を選択する工程、iv)抗体をヒトへの投与に適切ならしめる工程を含む。
【0030】
1つの実施態様では、抗体は、活性化受容体に特異的に結合する。別の実施態様では、抗体は、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKG2CおよびNKG2Aからなる群から選択される受容体に結合する。別の実施態様では、抗体は、NKp30、NKp44、もしくはNKp46のようなNCR、NKG2CまたはNKG2Dに特異的に結合する。別の実施態様では、抗体は、それをヒト化またはキメラ化することによってヒトへの投与に適切にされる。別の実施態様では、方法は、細胞障害性薬剤を抗体に連結する工程をさらに含む。別の実施態様では、細胞障害性薬剤は、放射性同位元素、毒性ポリペプチド、または毒性小分子である。別の実施態様では、細胞障害性薬剤は、抗体に直接連結される。別の実施態様では、抗体は抗体フラグメントである。別の実施態様では、抗体は、1人以上の患者から採取されるNKまたはT細胞の少なくとも60%に結合する。別の実施態様では、抗体は、1人以上の患者から採取されるNKまたはT細胞の少なくとも70%に結合する。別の実施態様では、抗体は、1人以上の患者から採取されるNKまたはT細胞の少なくとも80%に結合する。
【0031】
別の態様では、本発明のモノクローナル抗体は、以下のこと:
ヒトKIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択されるNK細胞受容体に特異的に結合すること、
Fc受容体に結合すること、
ヒトNK細胞上の前記NK細胞受容体に結合する場合、前記NK細胞を涸渇させること
によって特徴付けられる。好ましくは、前記抗体はヒト化またはキメラ抗体である。
【0032】
好ましくは、前記抗体は、NKp46、NKG2AまたはNKG2Cに特異的に結合する。場合により、前記抗体は、NKG2AおよびNKG2Cに特異的に結合するか、または場合により、前記抗体は、NKG2A、NKGCおよびNKG2Eに特異的に結合する。1つの例では、前記抗体は、NKG2Aへの結合についてZ199またはZ270と競合し、および/またはNKG2A由来の相補性決定領域を含む。好ましくは、前記抗体は、G1またはG3アイソタイプのFc領域を含む。
【0033】
本明細書に記載の実施態様のいずれかの所定の態様では、免疫増殖性障害は、アレルギー、喘息、骨関節炎、関節リウマチ、および脊椎関節症を含む関節炎、胃腸炎、クローン病および大腸炎、神経炎症性障害、橋本病、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、乾癬、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、脱髄性症状、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、グレーブス病、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、ウェゲナー肉芽腫症(granulomatosus)、セリアック病、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、ベーチェット(Bechet’s)病、チャーグ・ストラウス症候群ならびに高安動脈炎からなる群から選択される自己免疫障害である。好ましくは、免疫増殖性障害は、NK−LDGLもしくはT−LDGL、関節リウマチ、I型糖尿病または:ITP、多発性硬化症、ウェゲナー肉芽腫症、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される障害である。免疫増殖性障害を処置するための方法の所定の態様では、前記細胞はT細胞である。1つの実施態様では、T細胞は、CD3、場合により、CD4CD28またはCD8であり、これらの細胞はまた、NK細胞受容体を発現することが報告されている。例示的態様では、抗体は、NKG2Aに結合し、実質的に、Z199およびZ270からなる群から選択される抗体と同じエピトープに結合する。別の例示的態様では、抗体は、NKp46に結合し、実質的に、BAT281からなる群から選択される抗体と同じエピトープに結合する。別の例示的態様では、抗体は、KIR2DL1、KIR2DL2および/またはKIR2DL3に結合し、実質的に、PCT特許国際公開第2005/003172号パンフレットおよび国際公開第06/003179号パンフレット(それらの開示内容は本明細書において参照により援用される)に記載の抗体DF200、NKVSFまたは1−7F9と同じエピトープに結合し、実質的に、Z199およびZ270からなる群から選択される抗体と同じエピトープに結合する。例示的態様では、抗体は、NKG2Dに結合し、実質的に、BAT221、ECM217、およびON72からなる群から選択される抗体と同じエピトープに結合する。
【0034】
本明細書に記載の実施態様のいずれかの別の態様では、炎症性または自己免疫障害を含む免疫増殖性疾患が、確立された疾患である。好ましくは、疾患は、医学的基準(例えば、ACR)に従い、免疫細胞によって仲介される物理的症状(例えば、組織損傷、破壊、浮腫など)によって特徴付けられ、および/または規定された期間(例えば、3、6、9、12、24、もしくは36箇月)の間、軽減しない。
【0035】
本明細書に記載の実施態様のいずれかの他の態様では、本発明は、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して産生される抗体を提供する。本発明はまた、実質的に同じ抗原特異性および活性を有する(例えば、親抗体と同じ抗原に結合することができる)抗体のフラグメントおよび誘導体を包含する。そのようなフラグメントとして、制限はないが、Fabフラグメント、Fab’2フラグメント、CDRおよびScFvが挙げられる。
【0036】
他の態様では、本発明は、本明細書に記載の抗体のいずれか1つ以上を含むキットを提供する。1つの実施態様においては、キットは、少なくとも1つの診断用抗体および少なくとも1つの治療用(例えば、細胞障害性)抗体を含む。別の実施態様では、診断用抗体および治療用抗体は、同じNK細胞受容体に特異的に結合する。別の実施態様では、キットはまた、本発明の方法に従う抗体を使用するための指示書を含む。
【0037】
本発明はまた、1つ以上の本発明の抗体、またはそのフラグメントもしくは誘導体、および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含む薬学的組成物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
緒論
本発明は、増殖性障害、特に、NK型顆粒リンパ球増多症(NK−LDGL)のような免疫増殖性障害の処置に適切な抗体を産生および使用するための新規の方法を提供する。抗体を使用して患者を処置する方法である本発明に記載の方法を使用して産生される抗体、抗体誘導体、または抗体フラグメントも包含される。特に、本方法は、1つ以上のどのNK細胞受容体が増殖細胞上に顕著に提示されるかを決定するために、これらの疾患の基礎をなす増殖しているNKまたはNK様細胞をタイプ分類すること、および次いで、同じ受容体に特異的に結合する抗体を使用して、患者を処置することに関与する。
【0039】
NK−LDGLおよび他の免疫増殖性障害は、しばしば、1つもしくは少数のNKまたはNK様細胞のクローン拡大によって特徴付けられる。従って、個々のNK細胞は、一般的に、NK細胞受容体のサブセットのみを発現するため、これらの障害の基礎をなす過剰増殖細胞の実質的な部分は、しばしば、少数のNK細胞受容体を発現する。従って、本発明は、所定の患者の増殖細胞において発現される特定の受容体を同定することによって、これらの障害を処置し、次いで、細胞障害性抗体を使用して、受容体を発現するこの細胞を特異的に標的かする方法を提供する。この方法では、過剰増殖細胞の数が特異的に減少する一方、他の免疫および非免疫細胞は温存される。
【0040】
一般的に、本方法は、KIR受容体のような1つもしくは少数のNK細胞受容体、CD94、NKG2受容体の1つ、またはNKp30、NKp44、NKp46のようなNCRにそれぞれ特異的であるモノクローナル抗体のパネルの使用に関与する。しばしば、2つの組の抗体が使用される。直接的または間接的に標識された抗体を含む1つの組は、本質的に診断用であり、所定の患者由来のNK細胞において、特定のどのNK細胞受容体が発現されるかを決定するために使用される。処置のために使用される第2の組は、非ヒト動物(但し、ヒトにおける使用に適切であるようになされており、例えば、ヒト化またはキメラ化される)において一般に惹起されるモノクローナル抗体に対応する。1つの態様では、抗体は、リガンド結合もしくはシグナル伝達のような受容体機能を阻止し、および/または受容体内在化を引き起こす。別の態様では、抗体は、例えば、細胞に対してADCCを仲介することによって、受容体を発現する細胞を死滅させる(例えば、ヒトIgG1またはIgG3型の抗体)。所定の実施態様では、抗体は、それらが受容体を発現する細胞を死滅させるように、細胞障害性薬剤で、直接的または間接的にさらに誘導される。例えば、抗体は、放射性同位元素、細胞障害性ポリペプチド、または細胞障害性小分子に連結することができる。
【0041】
定義
本明細書において使用される以下の用語は、他で指定しない限り、それらに帰属する意味を有する。
【0042】
明細書において使用する「NK」細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球のサブ集団を指す。NK細胞は、CD16、CD56、および/またはCD57を含む特異的表面抗原の発現、細胞表面におけるα/βまたはγ/δTCR複合体の不在、特定の細胞溶解性酵素の活性化により、「自己の」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合して死滅させる能力、腫瘍細胞またはNK活性化受容体に対するリガンドを発現する他の罹患した細胞を死滅させる能力、ならびに免疫応答を刺激または阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力のような所定の特徴ならびに生物学的特性によって同定することができる。当該技術分野において周知の方法を使用してNK細胞を同定するために、これらの特徴および活性のいずれかを使用することができる。
【0043】
用語「NK細胞受容体」は、NK細胞のすべてまたは画分において一貫して見出される任意の細胞表面分子を指す。好ましくは、NK細胞受容体は、NK細胞(休止または活性型)において排他的に発現されるが、この用語はまた、他の細胞型においても発現される受容体を包含する。NK細胞受容体の例として、KIR受容体ファミリーのメンバー、CD94、NKG2受容体、NKp30、NKp44、およびNKp46のようなNCR受容体、LIR−1などが挙げられる(例えば、トラウスダレ(Trowsdale)およびパーハム(Parham)(2004年)Eur J Immunol34(1):7−17、ヤワタ(Yawata)ら(2002年)Crit Rev Immunol22(5−6):463−82、シュー(Hsu)ら(2002年)Immunol Rev190:40−52、ミドルトン(Middleton)ら(2002年)Transpl Immunol10(2−3):147−64、ビルチェス(Vilches)ら(2002年)Annu Rev Immunol20:217−51、OMIM602894、ブラウド(Braud)ら(1998年)Nature391:795−799、チャン(Chang)ら(1995年)Europ.J.Immun25:2433−2437、ラゼティック(Lazetic)ら(1996年)Immun157:4741−4745、ロドリゲス(Rodriguez)ら(1998年)Immunogenetics47:305−309、OMIM161555、ホーチンス(Houchins)ら(1991年)J.Exp.Med.173:1017−1020、アダムキーウィクス(Adamkiewicz)ら(1994年)Immunogenetics39:218、レネド(Renedo)ら(1997年)Immunogenetics46:307−311、ラヴェティヒ(Ravetch)ら(2000年)Science290:84−89、国際公開第01/36630号パンフレット、バイタレ(Vitale)ら(1998年)J.Exp.Med.187:2065−2072、シボリ(Sivori)ら(1997年)J.Exp.Med.186:1129−1136、ペッシノ(Pessino)ら(1998年)J.Exp.Med.188:953−960を参照のこと、そのそれぞれの開示内容は参照により本明細書に援用される)。
【0044】
本明細書において使用する「NK受容体状態」は、個体、例えば、免疫増殖性障害を有する患者から採取されるNKまたは他の細胞において発現される多様なNK細胞受容体の同一性および重要性を指す。例えば、患者から採取されるNK細胞の試験により、特定のNK細胞受容体、例えば、KIR2DS2が70%の細胞において発現されること、別の受容体、例えば、KIR2DL1が40%の細胞において発現されること、別の受容体、例えば、CD94が80%の細胞において発現されることなどが見出され得る。そのような情報は、本方法において使用するための細胞障害性抗体を決定するのに有用である。複数のNK細胞受容体に関する発現情報を有することが明らかに有用である一方、NK受容体状態はまた、単一の受容体、例えば、KIR2DS2、または少量の受容体、例えば、KIR2DL2/3およびKIR2DS2の発現レベルもしくは重要性を指すことができることが理解されよう。
【0045】
「LGL」、または「大顆粒リンパ球」は、リンパ系細胞の形態学的に異なる集団を指す。末梢血単核細胞の10〜15%を構成するLGL。LGLは、所定のマーカー、例えば、CD3発現(ここで、NK細胞はCD3であり、T細胞はCD3である)によって識別することができるNK細胞およびT細胞の両方(例えば、ラフラン(Loughran)(1993年)Blood82:1−14を参照のこと)を含むことができる。好ましくは、本発明の目的のために、LGL細胞はCD3である。しかし、本発明の所定の実施態様では、PBLは、患者から採取され、任意の細胞タイプ、好ましくは、LGL、最も好ましくは、CD3LGLが拡大されるかどうかを見るために調べられる。一般に、任意の拡大された細胞タイプは、特定のNK細胞受容体がそれらの表面において顕著に発現されるかどうかについて決定するために試験することができる。
【0046】
「顕著に発現される」は、所定の患者から採取される指定されたタイプ(例えば、NK細胞、T細胞)の実質的な数の細胞において発現されるNK細胞受容体を指す。用語「顕著に発現される」の規定は正確な百分率値には結びつかない一方、ほとんどの場合、「顕著に発現される」といわれる受容体は、患者から採取される少なくとも30%、40%、好ましくは、50%、60%、70%、80%もしくはそれ以上のNK細胞、T細胞または他の過剰増殖細胞において存在する。
【0047】
本明細書において使用する用語「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を指す。重鎖の定常ドメインのタイプに依存して、抗体は、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのうちの1つに割り当てられる。これらのうちのいくらかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのようなサブクラスまたはイソタイプに分けられる。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一な対からなり、各対は、1本の「軽」(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100〜110もしくはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)という用語は、それぞれ、これらの軽および重鎖を指す。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」および「μ」と呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造が周知である。IgGおよび/またはIgMは生理学的状況において最も一般的な抗体であるため、およびそれらは実験施設において最も容易に作製されるため、それらは本発明において用いられる好適なクラスの抗体であり、IgGが特に好適である。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。ヒト化、キメラ、ヒト、またはそれ以外のヒトに適切な抗体が特に好適である。「抗体」はまた、本明細書に記載の抗体のいずれかの任意のフラグメントまたは誘導体を含む。
【0048】
用語「特異的に結合する」は、抗体が、好ましくは、競合結合アッセイにおいて、結合パートナー、例えば、活性化KIR受容体のようなNK細胞受容体に結合することができることを意味し、組換え形態のタンパク質、その中のエピトープ、または単離されたNKもしくは関連の標的細胞の表面上に存在する生来のタンパク質のいずれか一方を使用して評価される。競合結合アッセイおよび特異的結合を決定するための他の方法については、以下においてさらに説明するものとし、当該技術分野において周知である。
【0049】
NK細胞受容体(例えば、NKG2A、NKp46)を認識する抗体の効果に関して、用語「涸渇する」または「涸渇すること」は、NK受容体発現細胞(例えば、NKG2AもしくはNKp46を発現する細胞)の減少または排除を指す。
【0050】
「ヒトに適切な」抗体は、例えば、本明細書に記載の治療的方法において、ヒトにおいて安全に使用することができる任意の抗体、誘導体化された抗体、または抗体フラグメントを指す。ヒトに適切な抗体は、ヒト化、キメラ、または完全なヒト抗体、あるいは抗体の少なくとも一部が、ヒトから誘導されるか、もしくはそうでなければ、生来の非ヒト抗体が使用される場合に一般に惹起される免疫応答を回避するように改変される任意の抗体のすべてのタイプを含む。
【0051】
「毒性」もしくは「細胞障害性」ペプチドまたは小分子は、細胞の増殖を遅らせるか、停止するか、または反転するか、任意の検出可能な方法でそれらの活性(例えば、NK細胞の細胞溶解活性)を減少するか、あるいは直接的もしくは間接的にそれらを死滅させることができる任意の化合物を包含する。好ましくは、毒性または細胞障害性化合物は、直接的に細胞を死滅するか、アポトーシスを惹起するかもしくはその他によって作用する。本明細書において使用されるように、毒性「ペプチド」は、任意のペプチド、ポリペプチド、または非天然アミノ酸または改変された連結を伴うペプチドまたはポリペプチド誘導体を含むそれらの誘導体を含むことができる。毒性「小分子」は、好ましくは、10kD、5kD、1kD、750D、600D、500D、400D、300D、もしくはそれ以下より小さいサイズを伴う任意の毒性化合物またはエレメントを含むことができる。
【0052】
「免疫原性フラグメント」とは、本明細書において、(i)前記フラグメントに結合し、ならびに/または膜結合受容体およびそれらから誘導される変異体を含む前記フラグメントを含む任意の形態の分子に結合する抗体の作製、(ii)任意のMHC分子および前記フラグメントから誘導されるペプチドを含む二分子複合体に反応するT細胞に関与するT細胞応答の刺激、(iii)哺乳動物免疫グロブリンをコードする遺伝子を発現するバクテリオファージもしくは細菌のようなトランスフェクトされたビヒクルの結合のような免疫応答を誘発することが可能である任意のポリペプチドまたはペプチドフラグメントを意味する。あるいは、免疫原性フラグメントはまた、共有結合によりキャリアタンパク質にコンジュゲートされたペプチドフラグメント、そのアミノ酸配列において前記ペプチドフラグメントを含むキメラ組換えポリペプチド構築物のような免疫応答を誘発することが可能な任意の構築を指し、特に、配列が前記フラグメントをコードする部分を含むcDNAでトランスフェクトされる細胞を含む。
【0053】
本発明の目的のために、「ヒト化」抗体は、1つ以上のヒト免疫グロブリンの定常および可変フレームワークが、結合領域、例えば、動物免疫グロブリンのCDRと融合される抗体を指す。そのようなヒト化抗体は、結合領域が、非ヒト抗体に対する免疫反応を回避するように誘導される非ヒト抗体の結合特異性を維持するように設計される。
【0054】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が異なるもしくは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域、または新たな特性をキメラ抗体に付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物などに連結されるように、定常領域、またはその部分が改変、置き換え、または交換されるか、あるいは(b)可変領域、またはその部分が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域で改変、置き換え、または交換される抗体分子である。
【0055】
「ヒト」抗体は、抗原チャレンジに応答して特異的ヒト抗体を産生するように「操作」されているトランスジェニックマウスまたは他の動物から得られる抗体である(例えば、グリーン(Green)ら(1994年)Nature Genet7:13、ロンベルグ(Lonberg)ら(1994年)Nature368:856、テイラー(Taylor)ら(1994年)Int Immun6:579(これらの教示内容全体は参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。十分なヒト抗体はまた、遺伝子または染色体トランスフェクション方法、ならびにファージディスプレイ技術(これらのすべては当該技術分野において公知である)によっても構築することができる(例えば、マキャフェルティー(McCafferty)ら(1990年)Nature348:552−553を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞(例えば、米国特許第5,567,610号明細書および同第5,229,275号明細書(それらの全体が参照により援用される)を参照のこと)によって作製することができる。
【0056】
本発明では、「活性な」または「活性化された」NK細胞は、生物学的に活性なNK細胞、より詳細には、標的細胞を溶解する能力を有するNK細胞を表す。例えば、「活性な」NK細胞は、NK活性化受容体−リガンドを発現し、「自己の」MHC/HLA抗原(KIR不適合細胞)を発現することができない細胞を死滅させることが可能である。再指向性(redirected)死滅アッセイにおける使用に適切な標的細胞の例としてP815およびK562細胞が挙げられるが、しかし、任意の多くの細胞型を使用することができ、当該技術分野において周知である(例えば、シボリ(Sivori)ら(1997年)J.Exp.Med.186:1129−1136、バイタレ(Vitale)ら(1998年)J.Exp.Med.187:2065−2072、ペッシノ(Pessino)ら(1998年)J.Exp.Med.188:953−960、ネリ(Neri)ら(2001年)Clin.Diag.Lab.Immun.8:1131−1135を参照のこと)。「活性な」または「活性化された」細胞はまた、遊離の細胞内カルシウムレベルの増加のサイトカイン(例えば、IFN−γおよびTNF−α)産生のようなNK活性に関連する分野において公知の他の任意の特性もしくは活性によっても同定することができる。
【0057】
本明細書において使用する用語NK−LDGLは、NK細胞またはNK様細胞、例えば、表面抗原(例えば、CD3−、CD56+、CD16+)の特徴的組を伴う大顆粒リンパ球のクローン拡大(例えば、ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood102:1797、ラフラン(Loughran)(1993年)Blood82:1、エプリング−バーネッテ(Epling−Burnette)ら(2004年)Blood−2003−02−400を参照のこと)、または本明細書に記載の任意のNK細胞受容体を発現することによって特徴付けられる任意の増殖性障害を指す。NK−LDGLの障害の症状として、特に、発熱、軽度の好中球減少、血小板減少、貧血、リンパ球増加、脾腫、肝腫、リンパ節症、および骨髄浸潤を挙げることができる(例えば、ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood102:1797、ラフラン(Loughran)(1993年)Blood82:1、エプリング−バーネッテ(Epling−Burnette)ら(2004年)Blood−2003−02−400を参照のこと)。
【0058】
用語「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」は、その生来の状態において見出されるように、通常、材料に伴う成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。純度および均質度は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を使用して、典型的に決定される。調製物に存在する優勢な種であるタンパク質が実質的に精製される。
【0059】
本明細書において使用する用語「生物学的サンプル」として、生物学的液体(例えば、血清、リンパ、血液)、細胞サンプルまたは組織サンプル(例えば、骨髄)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は同義的に使用され、アミノ酸残基の高分子を指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学類似物であるアミノ酸高分子、ならびに天然に存在するアミノ酸高分子および天然に存在しないアミノ酸高分子に当てはまる。
【0061】
例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用される場合の用語「組換え」は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入または生来の核酸またはタンパク質の改変によって改変されていること、あるいは、細胞が、そのようにして改変された細胞から誘導されることを示す。従って、例えば、組換え細胞は、この細胞の生来の(非組換え)形態内において見出されない遺伝子を発現するか、または他の点で異常に発現されるか、不十分に発現されるか、もしくは全く発現されない生来の遺伝子を発現する。
【0062】
NK細胞受容体に特異的なモノクローナル抗体の産生
本発明は、ヒトにおける使用に適切であり、かつ1つもしくは少数のNK細胞受容体を標的化する抗体、抗体フラグメント、または抗体誘導体の産生および使用に関与する。本発明の抗体は、様々な当該技術分野において公知の技術のいずれかによって産生させることができる。典型的に、それらは、NK細胞の表面に存在する受容体を含む免疫原による非ヒト動物、好ましくは、マウスの免疫化によって産生される。受容体は、NK細胞全体または細胞膜、NK細胞受容体の全長配列、または任意のNK細胞受容体のフラグメントもしくは誘導体、典型的に免疫原性フラグメント、即ち、受容体を発現する細胞の表面上に暴露されるエピトープを含むポリペプチドの一部を含み得る。そのようなフラグメントは、典型的に、成熟ポリペプチド配列の少なくとも7連続アミノ酸、さらにより好ましくは、その少なくとも10連続アミノ酸を含有する。それらは、本質的に、受容体の細胞外ドメインから誘導される。いくつかあるいはすべての患者におけるNK細胞のすべてまたは画分の表面上に時々もしくは常に存在する任意の受容体任意の他の受容体は、抗体の作製のために使用することができることが理解されよう。好適な実施態様では、抗体を作製するために使用される活性化NK細胞受容体は、ヒト受容体である。
【0063】
最も好適な実施態様では、免疫原は、脂質膜、典型的に細胞表面のヒト野生型NK受容体ポリペプチドを含む。特定の実施態様では、免疫原は、無傷(intact)なNK細胞、特に、無傷なヒトNK細胞、場合により処置または溶解された細胞を含む。抗体は、NK細胞の表面上に存在する任意のタンパク質もしくは分子、好ましくは、NK細胞受容体、より好ましくは、KIR受容体、LIR−1のようなLIR受容体、Ly49、CD94/NKG2A、NKp30、NKp44、およびNKp46のようなNCRからなる群から選択されるNK細胞受容体、ならびに最も好ましくは、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR2DS5、およびKIR3DS1のような活性化NK細胞受容体(例えば、トラウスダレ(Trowsdale)およびパーハム(Parham)(2004年)Eur J Immunol34(1):7−17、ヤワタ(Yawata)ら(2002年)Crit Rev Immunol22(5−6):463−82、シュー(Hsu)ら(2002年)Immunol Rev190:40−52、ミドルトン(Middleton)ら(2002年)Transpl Immunol10(2−3):147−64、ビルチェス(Vilches)ら(2002年)Annu Rev Immunol20:217−51を参照のこと、そのそれぞれの開示内容全体は参照により本明細書に援用される)、またはNKG2D、多数のタイプの免疫細胞、特に、NK細胞、CD8T細胞、いくつかのCD4T細胞、およびγ/δT細胞のすべてもしくは画分に一貫して見出される活性化細胞表面分子に対して調製することができる。NKG2Dはまた、キラー細胞レクチン様受容体、サブファミリーC、メンバー4、またはKLRC4と称される(例えば、OMIM602893(その開示内容全体は、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。本明細書において使用するNKG2Dは、任意のNKG2Dアイソフォーム、例えば、ディーフェンバハ(Diefenbach)ら(2002年)Nat Immunol.3(12):1142−9)に記載のアイソフォームを指す。NKおよびT細胞では、NKG2Dは、DAP10(例えば、OMIM604089を参照のこと)またはDAP12(例えば、OMIM604142を参照のこと)のようなタンパク質とヘテロ二量体を形成することができる。本明細書においてNKG2Dに帰属する任意の活性、例えば、細胞活性化、抗体による認識などはまた、NKG2D−DAP10またはNKG2D−DAP12ヘテロ二量体のようなNKG2Dを含む複合体を指すことができることが理解されよう。
【0064】
1つの実施態様では、抗体は、1つ以上のNK細胞受容体を認識する1つ以上の既存のモノクローナル抗体から誘導される。適切な抗体の例として、以下のものが挙げられる。
【0065】
第1の好適な例は、3S9、20d5、Z270もしくはZ199と称される抗体のようなNKG2Aを認識する抗体、またはその誘導体である。3S9については、米国特許出願公開第2003/0095965号明細書(その開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている。3S9は、NKG2CおよびNKG2E、ならびにNKG2Aに結合する。20d5は市販の抗体(BD Biosciences Pharmingen、カタログ番号550518、米国)である。20d5はマウスNKG2A、NKG2EおよびNKG2Cに結合する。Z199は、市販の抗体(Beckman Coulter,Inc.、製品番号IM2750、米国)である。Z270については、同時係属中のPCT特許国際公開第06/070286号パンフレット(その開示内容は、その全体が本明細書において参照により援用される)に記載されている。Z270は、2005年12月22日付、受託番号I−3549で、Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM),Institute Pasteur,25,Rue du Docteur Roux,F−75725 Paris、仏国に寄託した。Z270はヒトNKG2Aに特異的に結合するが、ヒトNKG2CまたはNKG2Eには結合しない。他の実施態様においては、本発明の抗体は、特に、Z270を含まない。
【0066】
他の好適な例として、EB6b(KIR2DL1、KIR2DS1を認識する)、GL183(KIR2DL2/3、KIR2DS2)、FES172(KIR2DS4)、Z27(KIR3DL1、KIR3DS1)、Q66(KIR3DL2)、XA185(CD94)、Z199(NKG2A)、F278(LIR−1))、BAB281(NKp46)、CNCM登録番号I−2576(NKp30)として寄託されたAZ20、Z231(NKp44)または1D11、BAT221、ECM217、およびON72(NKG2D)が挙げられる。例えば、ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood102:1797−1805、グロウ(Groh)ら(2003年)PNAS100:9452−57、アンドレ(Andre)ら(2004年)Eur.J.Immunol.34:1−11(上記の3つの参考文献の開示内容の全体が参照により援用される)。そのような抗体は、患者のNK受容体状態を決定するための本明細書に記載のタイプ分類工程のための診断用抗体としての使用のために、直接的または間接的に標識する(即ち、標識された第二抗体と共に使用される)ことができる。さらに、抗体は、ヒトへの投与に適切であるようにする、場合により、本治療方法において細胞障害性抗体としての使用ために、本発明に記載のように毒性にすることができる。
【0067】
本診断用または治療用(例えば、細胞障害性)抗体は、完全長の抗体または抗体フラグメントもしくは誘導体であり得る。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)、およびFvフラグメント、二重特異性抗体、一本鎖Fv(scFv)分子、ただ1つの軽鎖可変ドメイン、または関連重鎖部分を伴わずに軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチド、ただ1つの重鎖可変領域、または関連軽鎖部分を伴わずに重鎖可変領域の3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチド、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。そのようなフラグメントおよび誘導体ならびにそれらを調製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、ペプシンを使用して、ヒンジ領域のジスルフィド結合より下流の抗体を消化して、F(ab)’(それ自体がジスルフィド結合によってV−CH1に結合される軽鎖であるFabの二量体である)を生成させることができる。F(ab)’を、穏やかな条件下で還元して、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによって、F(ab)’二量体をFab’単量体に変換してもよい。Fab’単量体は、本質的に、ヒンジ領域の部分を伴うFabである(Fundamental Immunology(ポール(Paul)編、第3版、1993年)を参照のこと)。多様な抗体フラグメントが無傷(intact)な抗体の消化によって規定される一方、当業者は、そのようなフラグメントを、化学的かまたは組換えDNA方法論を使用するかのいずれかによって、デノボで合成することができることを理解している。
【0068】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体の調製については当該技術分野において周知であり、多数の利用可能な技術のいずれかを使用することができる(例えば、ケーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)、Nature256:495−497(1975年)、コズボール(Kozbor)ら、Immunology Today4:72(1983年)、コール(Cole)ら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy(1985)の77−96頁を参照のこと)。一本鎖抗体の産生のための技術(米国特許第4,946,778号明細書)を適応して、所望されるポリペプチド、例えば、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR2DS5、およびKIR3DS1のようなNK細胞受容体に対する抗体を産生させることができる。また、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物のような他の生物体を使用して、ヒト化、キメラ、または同様に修飾された抗体を発現させてもよい。あるいは、ファージディスプレイ技術を使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロメリックなFabフラグメントを同定することができる(例えば、マキャフェルティー(McCafferty)ら、Nature348:552−554(1990年)、マークス(Marks)ら、Biotechnology10:779−783(1992年)を参照のこと)。1つの実施態様では、方法は、ライブラリーまたはレパートリーから、少なくとも1つのNK受容体と交差反応するモノクローナル抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体を洗濯することを含む。例えば、レパートリーは、場合により、任意の適切な構造(例えば、ファージ、細菌、合成複合体など)によってディスプレイされる抗体またはそのフラグメントの任意の(組換え)レパートリーであってもよい。
【0069】
分野において周知の任意の様式で、非ヒト哺乳動物を抗原で免疫する工程を行うことができる(例えば、E.ハーロー(E.Harlow)およびD.レーン(D.Lane)、Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor、ニューヨーク州(1988年)を参照のこと)。一般に、免疫原は、場合により完全フロイントアジュバントのようなアジュバントと共に、緩衝液に懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液のタイプおよびアジュバントの量を決定するための方法は当該技術分野において周知であり、本発明に対する任意の方法において限定されない。
【0070】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫の場所および回数もまた、当該技術分野において周知である。典型的な免疫プロトコルでは、1日目に非ヒト動物に免疫原が腹腔内に注入され、約1週間後に再度注入される。これに続いて、場合により、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントを伴って、約20日目に抗原が再注入される。再注入は静脈内で実施され、数日間連続で反復され得る。これに続いて、静脈内または腹腔内のいずれかで、典型的にアジュバントを伴わずに、40日目に追加注入が行われる。このプロトコルにより、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞が生じる。他のプロトコルもまた、それらが、免疫に使用される抗原に対する抗体を発現するB細胞の産生を生じる限り、利用することができる。
【0071】
別の実施態様では、非免疫非ヒト哺乳動物由来のリンパ球が単離され、インビトロで増殖され、次いで、細胞培養において免疫原に暴露される。次いで、リンパ球を回収し、下記の融合工程を行う。
【0072】
本発明の目的に好適であるモノクローナル抗体では、次の工程は、細胞、例えば、免疫された非ヒト哺乳動物由来のリンパ球、脾細胞、またはB細胞の単離、および抗体産生ハイブリドーマを形成するための脾細胞、またはB細胞、またはリンパ球と不死化細胞との以後の融合である。従って、本明細書において使用される用語「免疫動物から抗体を調製すること」は、免疫動物からB細胞/脾細胞/リンパ球を入手すること、およびそれらの細胞を使用して、抗体を発現するハイブリドーマを産生させること、ならびに免疫動物の血清から直接抗体を入手することを含む。例えば、非ヒト哺乳動物からの脾臓細胞の単離は当該技術分野において周知であり、例えば、麻酔した非ヒト哺乳動物から脾臓を取り出し、それを小片に切断し、単一の細胞懸濁液が生成されるように、セルストレーナーのナイロンメッシュを介して、適切な緩衝液に脾包(splenic capsule)から脾臓細胞を圧搾することに関与する。細胞を洗浄し、遠心分離し、任意の赤血細胞を溶解する緩衝液に再懸濁する。溶液を再度遠心分離し、ペレット内に残留するリンパ球を最終的に新鮮緩衝液に再懸濁する。
【0073】
一旦、単離され、単一細胞懸濁液中に存在すると、抗体産生細胞を不死細胞株に融合させることができる。これは、典型的にはマウス骨髄腫細胞系統であるが、ハイブリドーマを作製するのに有用な他の多くの不死細胞系統が当該技術分野において公知である。好適なマウス骨髄腫系統として、サルク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター(Salk Institute Cell Distribution Center)、San Diego、カリフォルニア州、米国より市販されているMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、Rockville、メリーランド州、米国より市販されているX63 Ag8653およびSP−2細胞が挙げられるが、これらに限定されない。融合は、ポリエチレングリコールなどを使用して行う。次いで、得られるハイブリドーマを、非融合親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する選択培地で増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(HAT培地)(この物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨害する)。
【0074】
ハイブリドーマは、マクロファージのフィーダー層上で増殖され得る。マクロファージは、脾臓細胞を単離するために使用される非ヒト哺乳動物の同腹仔由来であることが好ましく、典型的に、ハイブリドーマプレート化の数日前に、不完全フロイントアジュバントなどで刺激する。融合方法は、例えば、ゴーディング(Goding)「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、59〜103頁(Academic Press、1986年)に記載されており、この開示内容は、本明細書において参照により援用される。
【0075】
コロニー形成および抗体産生に十分な時間、細胞を増殖させる。これは、通常、7〜14日間の間である。次いで、ハイブリドーマコロニーを、所望される基質、例えば、KIR2DS2のようなNK細胞受容体を特異的に認識する抗体の産生についてアッセイする。アッセイは、典型的に発色ELISA型アッセイであるが、ハイブリドーマが増殖するウェルに適応することができるいずれのアッセイを用いてもよい。他のアッセイとしては、免疫沈降およびラジオイムノアッセイが挙げられる。所望の抗体産生に陽性のウェルを試験して、1つ以上の異なるコロニーが存在するかどうかを決定する。1を超えるコロニーが存在する場合、細胞を再クローニングして、増殖させ、ただ単一の細胞が所望の抗体を産生するコロニーを生じていることを確実にする。明らかに単一のコロニーを伴う陽性ウェルを、典型的に再クローニングし、再アッセイし、ただ1つのモノクローナル抗体が検出され、産生されていることを確実にする。
【0076】
次いで、本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されるハイブリドーマを、DMEMまたはRPMI−1640のような適切な培地において、より多量に培養する。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0077】
所望されるモノクローナル抗体を産生させるのに十分な増殖後、モノクローナル抗体(または腹水液)を含有する増殖培地を細胞から分別し、そこに存在するモノクローナル抗体を精製する。精製は、ゲル電気泳動、透析、タンパク質Aもしくはタンパク質G−Sepharose、またはアガロースもしくはSepharoseビーズのような固相支持体に連結された抗マウスIgを使用するクロマトグラフィーによって、典型的に達成される(すべて、例えば、Antibody Purification Handbook,Amersham Biosciences、出版番号18−1037−46、AC版(その開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている)。結合型抗体は、低pH緩衝液(グリシンまたはpH3.0以下の酢酸緩衝液)を使用し、抗体を含有する画分を直ちに中和することによって、タンパク質A/タンパク質Gカラムから典型的に溶出される。これらの画分をプールし、透析し、必要に応じて濃縮する。
【0078】
好適な実施態様では、NK細胞受容体上に存在する決定基に結合する抗体をコードするDNAをハイブリドーマから単離し、適切な宿主へのトランスフェクションのために適切な発現ベクターに配置する。次いで、宿主を、抗体の抗原認識部分を含む抗体、その変異体、その活性なフラグメント、またはヒト化もしくはキメラ抗体の組換え産生のために使用する。好ましくは、この実施態様において使用されるDNAは、1つ以上のヒトNK受容体、特に、NK−LDGLを伴う患者の有意な画分由来のLGL細胞において顕著に提示されるNK受容体上に存在する決定基を認識する抗体をコードする。
【0079】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドを使用することによって)従来の手順を使用して、容易に単離され、配列決定され得る。一旦単離されたら、DNAを発現ベクターに配置することができ、次いで、それは大腸菌(E.coli)細胞、サル(simian)COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現は当該技術分野において周知である(例えば、スケラ(Skerra)ら、(1993年)Curr.Opinion in Immunol.5:256、およびプリュックサン(Pluckthun)、(1992年)Immunol.Revs.、130:151を参照のこと)。抗体はまた、例えば、ウォード(Ward)ら、(1989年)Nature,341:544に開示されているような免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって、産生させてもよい。
【0080】
特定の実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体EB6b、GL183、FES172、Z27、Q66、XA185、Z270(CNCM参照番号3549)、Z199(Beckman Coulter、AZ20(CNCM参照番号I−2576)、Bab281、KL247もしくは製品参照番号195314(R&D Systems,Minneapolis)またはF278(例えば、ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood102:1797を参照のこと)の1つ、あるいはモノクローナル抗体1D11、BAT221、ECM217、およびON72(例えば、グロウ(Groh)ら(2003年)PNAS100:9452−57、アンドレ(Andre)ら(2004年)Eur.J.Immunol.34:1−11(上記3つの参考文献の開示内容全体が本明細書に援用される)を参照のこと)の1つと同じエピトープまたは抗原決定基に本質的に結合する。モノクローナル抗体と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体がx(ここで、xはEB6bなどである)と「競合する」ことを意味する。問題のモノクローナル抗体と実質的に同じエピトープに結合する1つ以上の抗体の同定は、抗体の競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイを使用して、容易に決定することができる。そのようなアッセイは当該技術分野において日常的である(例えば、米国特許第5,660,827号明細書(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。抗体が結合するエピトープを実際に決定するのに、いずれの方法においても、問題のモノクローナル抗体と同じかまたは実質的に同じエピトープに結合する抗体を同定する必要はないことが理解されよう。
【0081】
例えば、調べようとする試験抗体が異なる供給源動物から得られるか、または異なるIgアイソタイプである場合、コントロール(例えば、GL183)および試験抗体とを混合(または予め吸着)し、エピトープ含有タンパク質、例えば、GL183の場合、KIR2DS2を含有するサンプルに適用する単一の競合アッセイを用いることができる。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロッティングに基づくプロトコルおよび(例えば、実施例のセクションに記載のような)BIACOREの使用は、そのような簡単な競合研究における使用に適切であり、当該技術分野において周知である。
【0082】
所定の実施態様では、抗原(例えば、KIR2DS2エピトープ)を含有するサンプルに適用する前のある期間にコントロール抗体(例えば、GL183)と様々な量の試験抗体(例えば、1:10または1:100)とを予め混合し得る。他の実施態様では、コントロールおよび様々な量の試験抗体を、抗原サンプルへの暴露中に簡単に混合することができる。(例えば、非結合型抗体を排除するための分離または洗浄技術を使用することによって)結合型と遊離型の抗体および(例えば、種特異的もしくはアイソタイプ特異的第二抗体を使用することによって、または検出可能な標識でコントロール抗体を特異的に標識することによって)コントロール抗体と試験抗体とを識別することができる限り、試験抗体がコントロール抗体の抗原への結合を減少するかどうかを決定し、試験抗体がコントロールと実質的に同じエピトープを認識することを示すことが可能である。完全に関連のない抗体の非存在下での(標識された)コントロール抗体の結合は、コントロールの高値である。コントロール低値は、標識されたコントロール抗体(例えば、GL183)を正確に同じタイプ(例えば、GL183)の非標識抗体と共にインキュベートすることによって得られ、ここで、競合が生じ、標識された抗体の結合を減少する。試験アッセイでは、試験抗体の存在下における標識された抗体反応性の有意な抑制は、同じエピトープ(即ち、標識されたコントロール抗体と「交差反応する」もの)を認識する試験抗体を示す。約1:10〜約1:100の間のコントロール:試験抗体の任意の割合で、標識されたコントロールのそれぞれの抗原への結合を、少なくとも50%またはより好ましくは70%だけ減少する任意の試験抗体は、コントロールと実質的に同じエピトープまたは抗原決定基に結合する抗体とみなされる。好ましくは、そのような試験抗体は、コントロールの抗原への結合を少なくとも90%だけ減少する。
【0083】
1つの実施態様では、競合を、フローサイトメトリー試験によって評価することができる。所定の活性化受容体を有する細胞を、まず、受容体(例えば、KIR2DL2、およびGL183抗体を発現するNK細胞)に特異的に結合することが公知であるコントロール抗体と共に、および次いで、例えば、蛍光色素またはビオチンで標識されている試験抗体と共に、インキュベートする。飽和量のコントロール抗体とのプレインキュベーションで得られる結合がコントロールとのプレインキュベーションを伴わない抗体によって得られる結合(蛍光の平均)の80%、好ましくは、50、40もしくはそれ以下である場合、試験抗体はコントロールと競合すると呼ばれる。あるいは、飽和量の試験抗体と共にプレインキュベートした細胞上の(蛍光色素またはビオチンにより)標識されたコントロールにより得られる結合が、抗体とのプレインキュベーションを伴わずに得られる結合の80%、好ましくは50%、40%、もしくはそれ以下である場合、試験抗体はコントロールと競合すると言う。
【0084】
1つの好適な例では、試験抗体が予め吸着され、抗体結合のための基質、例えば、KIR2DS2タンパク質、またはGL183によって結合されることが公知であるそのエピトープ含有部分が固定化される表面に、飽和濃度で、適用される簡単な競合アッセイを用いることができる。表面は、好ましくは、BIACOREチップである。次いで、コントロール抗体(例えば、GL183)を、基質飽和濃度で表面と接触させ、コントロール抗体の基質表面結合を測定する。コントロール抗体のこの結合を、試験抗体非存在下でのコントロール抗体の基質含有表面への結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体の存在下における基質含有表面の結合の有意な減少は、試験抗体が同じエピトープ(即ち、コントロール抗体と「交差反応する」もの)を認識することを示す。コントロール抗体の抗原含有基質への結合を、少なくとも30%またはより好ましくは40%だけ減少する任意の試験抗体は、コントロール抗体と実質的に同じエピトープまたは抗原決定基に結合する抗体とみなされる。好ましくは、そのような試験抗体は、コントロール抗体の基質への結合を少なくとも50%だけ減少する。コントロールおよび試験抗体の順序は、反転させることができ、即ち、コントロール抗体をまず表面に結合させ、その後に、試験抗体を表面に接触させることが理解されよう。予想されるとおり、第二抗体について認められる結合の減少(抗体が交差反応しているものとみなす)は、より大きな大きさになるため、好ましくは、まず、基質抗原に対してより高い親和性を有する抗体を、基質含有表面に結合させる。そのようなアッセイのさらなる例は、実施例およびサウナル(Saunal)ら、(1995年)J.Immunol.Meth183:33−41(その開示内容は本明細書において参照により援用される)において提供される。
【0085】
1つの実施態様では、特に、抗体が他の関連しないタンパク質との過剰な交差反応性を示さないことが確実である場合、NK細胞表面上の複数の受容体、例えば、KIR受容体(KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS2、KIR2DS4、KIR3DL1、KIR3DS1、もしくはKIR3DL2、またはこれらの受容体の1つ以上に関与する任意の組み合わせ)あるいはNKG2受容体(NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、またはこれらの受容体の1つ以上に関与する任意の組み合わせ)およびさらなる任意のNK細胞受容体のような2つ以上のNK細胞受容体の任意の組み合わせと相互作用することが可能な抗体を得ることができる。好ましくは、NK細胞受容体由来のエピトープ、例えば、KIR2DL2エピトープを認識するモノクローナル抗体は、特に、患者由来の実質的な百分率のNK細胞上に存在するエピトープと相互作用するが、しかし、CD3T細胞、CD20B細胞、または他の免疫もしくは非免疫細胞とは有意には反応しない。好適な実施態様では、抗体はまた、単球、顆粒球、血小板、および赤血球細胞と非反応性である。好適な実施態様では、抗体は、単一のNK細胞受容体のみを認識し、従って、そのような疾患の根底にある過剰増殖性細胞に対する治療用(例えば、細胞障害性)抗体の効果をできるだけ多く制限する。
【0086】
一旦、NK細胞、好ましくは、ヒトNK細胞上の1つ、またはおそらく少数の受容体を特異的に認識する抗体が同定されると、それは、免疫増殖性障害を伴う患者から採取される免疫細胞(好ましくは、NK)細胞に結合するその能力について試験することができる。
【0087】
典型的に、抗体は、免疫増殖性障害を伴う患者から採取されるNK細胞に結合するその能力を試験するためのイムノアッセイにおいてバリデートされる。例えば、末梢血リンパ球(PBL)が複数の患者から採取され、NK細胞は、CD56のようなNK細胞上に存在する受容体に対する抗体を使用して、PBLから富化される(例えば、ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood102:1797を参照のこと)。次いで、当業者に周知の標準的な方法を使用して、NK細胞に結合する所定の抗体の能力を評価する。1つの実施態様では、細胞のそれぞれのサンプルを、特定のNK細胞受容体にそれぞれに特異的である多様な抗体と共に、個々にインキュベートする。有意な百分率の患者(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%もしくはそれ以上)由来の実質的な割合のNK細胞(例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくはそれ以上)に結合することが見出される抗体は、本発明における使用に、本明細書に記載のNK受容体状態タイプ分類工程中の診断目的に、または本明細書に記載の治療方法における使用に、例えば、ヒトに適切な細胞障害性抗体からの誘導体化に適切である。抗体の細胞への結合を評価するために、抗体は、直接的または間接的のいずれかで標識することができる。間接的に標識する場合、第二の標識抗体が、典型的に添加される。次いで、例えば、細胞蛍光分析(例えば、FACScan)を使用して、抗体の細胞への結合を検出することができる。例えば、ザンベロ(Zambello)ら(2003年)Blood102:1797または他の任意の標準的方法を参照のこと。手順は、T細胞およびT細胞受容体に類似して行うことができることが理解されよう、これは、免疫増殖性障害を伴う患者由来のT細胞(例えば、T細胞LDGL、関節リウマチなど)を使用して行うことができ、T細胞は、CD3、場合により、CD4CD28またはCD8であってもよい。
【0088】
少数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20)の抗体は、NK−LDGL、自己免疫または炎症性障害のような障害を伴うほとんどの患者において、過剰増殖(例えば、NK)細胞のほとんどを検出および標的化するのに十分であることが予想される。従って、本方法を使用して、(単一または小さな組み合わせのいずれかの抗体を使用して)事実上すべての患者をタイプ分類および処置するのに一般的に十分である診断用(直接的もしくは間接的に標識された)および治療用(ヒトに適切な、場合により、毒性の)抗体の小さなパネルを評価することが可能である。そのようなパネルは、究極的に、キットとして利用可能にすることができ、好ましくは、抗体を使用するための指示書を伴って完成する。
【0089】
従って、本発明に従って産生される抗体のパネルは、1つまたは少数のNK受容体タイプに特異的であるそれらを含む。さらに、いくつかの実施態様では、複数の抗体は、すべての患者におけるインビボでの受容体発現細胞の最大限の標的化を確実にするために、およびまた、多型性受容体が最大数の患者において効果的に標的化されることを確実にするために、所定の受容体に対して調製される。
【0090】
他の実施態様では、本発明の診断用(直接的または間接的に標識された)および治療用(ヒトに適切な、場合により、毒性の)実施態様における使用のための抗体は、複数のNK受容体(例えば、2、3、4もしくはそれ以上のNK受容体を認識し得ることが理解されよう。例えば、抗体は、複数のNCR、もしくはKIR(例えば、KIR2DL1、KIR2DL2/3など)、または複数もしくはKIR活性受容体もしくはKIR抑制性受容体を認識することができる。さらに加えて、複数の抗体(例えば、少なくとも2、3、4など)を使用することが可能であり、少なくとも1つは複数のNK受容体を認識する。複数のNK受容体を認識する抗体の例は、PCT国際公開第2005/0031172号パンフレット(Innate Pharma)(その開示内容は、その全体が本明細書において参照により援用される)において提供される。
【0091】
ヒトにおける使用に適切な抗体の産生
一般に、非ヒト動物において、NK−LDGL患者のLGL(例えば、NK)細胞上に一般に存在する1つ以上のNK受容体に特異的に結合することができるモノクローナル抗体が産生される場合、抗体は、一般に、それらをヒトにおける治療用途に適切ならしめるように修飾される。例えば、それらを、ヒト化するか、キメラ化するか、または当該技術分野において周知の方法を使用して、ヒト抗体のライブラリーから選択してもよい。そのようなヒトに適切な抗体は、本治療方法において直接使用することができるか、または方法における使用のために、下記のような細胞障害性抗体にさらに誘導体化することができる。
【0092】
1つの好適な実施態様では、本発明の抗体、例えば、GL183様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、発現ベクターへの挿入前に、例えば、相同非ヒト配列の代わりにヒト重および軽鎖定常ドメインのコーディング配列を置換することによって(例えば、モリソン(Morrison)ら、(1984年)PNAS81:6851)、または免疫グロブリンコーディング配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列のすべてもしくは一部を共有結合させることによって、修飾することができる。この様式では、本来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドが、本発明の抗体の定常ドメインに対して置換される。
【0093】
1つの特に好適な実施態様では、本発明の抗体はヒト化される。本発明の抗体の「ヒト化」形態は、マウスあるいは他の非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小配列を含有する特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖または(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、もしくは抗体の他の抗原結合配列のような)それらのフラグメントである。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、本来の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換される一方、本来の抗体の所望される特異性、親和性、および能力は維持される。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基によって置換してもよい。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはインポートされたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改質し、最適化するために作製される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが本来の抗体の領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域である。より詳細については、ジョーンズ(Jones)ら、Nature,321、522(1986年)、ライヒマン(Reichmann)ら、(1988年)Nature、332、323、フェルホエン(Verhoeyen)ら(1988年)Science239:1534(1988年)、プレスタ(Presta)(1992年)Curr.Op.Struct.Biol.,2、593(それぞれはその全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0094】
ヒト化抗体を作製するのに使用すべきヒト可変ドメイン(軽鎖および重鎖の両方)の選択は、抗原性を減少させるのに極めて重要である。いわゆる「ベストフィット」方法に従えば、本発明の抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として許容される(シムズ(Sims)ら、(1993年)J.Immun.,151:2296、チョチア(Chothia)およびレスク(Lesk)(1987年)J.Mol.Biol.196:901))。別の方法は、軽または重鎖の特定の亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくらかの異なるヒト化抗体に使用することができる(カーター(Carter)ら、(1992年)PNAS89:4285、プレスタ(Presta)ら、(1993年)J.Immunol.51:1993))。
【0095】
1つ以上のNK細胞受容体、好ましくは、ヒト受容体、および他の好適な生物学的特性に対するそれらの高い親和性を保持しながら、抗体をヒト化することはさらに重要である。この目的を達成するために、好適な方法に従い、親配列の解析のプロセスならびに親およびヒト化配列の3次元モデルを使用する多様な概念上のヒト化産物によって、ヒト化抗体が調製される。3次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者に熟知されている。選択された候補免疫グロブリン配列の見込まれる3次元コンフォメーション構造を例示および示すコンピュータプログラムが利用可能である。これらの標示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能性における残基の可能な役割の解析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の解析を可能にする。この方法では、FR残基が選択され、標的抗原の増加した親和性などの所望される抗体の特徴が達成されるように、コンセンサスおよびインポート配列から合わせられる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に、直接的および最も実質的に関与する。
【0096】
ヒト抗体はまた、免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されている他のトランスジェニック動物を使用することのような他の多様な技術に従って、産生させてもよい。この技術では、ヒト重および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内因性重および軽鎖遺伝子座の標的化された崩壊を伴うマウスまたは他の動物に導入される(例えば、ジャコボビッツ(Jakobovitz)ら(1993年)Nature362:255、グリーン(Green)ら(1994年)Nature Genet.7:13、ロンベルク(Lonberg)ら(1994年)Nature368:856、テイラー(Taylor)ら(1994年)Int.Immun.6:579(それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。あるいは、遺伝子または染色体トランスフェクション方法によって、またはファージディスプレイ方法を使用する抗体レパートリーの選択を介して、ヒト抗体を構築することができる。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージの大または小コートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上の機能的抗体フラグメントとしてディスプレイされる。糸状粒子は、一本鎖DNAコピーのファージゲノムを含有するため、抗体の機能的特性に基づく選択はまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択を生じる。この方法では、ファージは、B細胞のいくつかの特性を模倣する(例えば、ジョンソン(Johnson)ら(1993年)Curr Op Struct Biol3:5564−571、マキャフェルティー(McCafferty)ら(1990年)Nature348:552−553(開示内容の全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞(例えば、米国特許第5,567,610号明細書および同第5,229,275号明細書(それらの開示内容は、それらの全体が参照により援用される)を参照のこと)によって作製することができる。
【0097】
1つの実施態様では、免疫化のために、XenoMouse(登録商標)(Abgenix,Fremont、カリフォルニア州)のような動物を使用して、「ヒト化」モノクローナル抗体が作製される。XenoMouseは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられるその免疫グロブリン遺伝子を有したマウス宿主である。従って、このマウスによりまたはこのマウスのB細胞から作製されたハイブリドーマにおいて産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号明細書において説明されており、この文献は本明細書においてその全体が参照により援用される。HuMAb−MouseTM(Medarex)を使用して、類似の方法を達成することができる。
【0098】
本発明の抗体はまた、それらが所望される生物学的活性を示す限り、重および/または軽鎖の部分が本来の抗体における対応する配列と同一かあるいは相同である一方、鎖の残りの部分は別の種から誘導されるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一かあるいは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体のフラグメントに誘導体化され得る(例えば、モリソン(Morrison)ら、(1984年)PNAS81:6851、米国特許第4,816,567号明細書を参照のこと)。
【0099】
特にIgG1またはIgG3タイプの誘導体化されていない(例えば、「裸の」抗体)または改変されていない形態の抗体は、過剰増殖NK細胞の増殖を阻害するか、あるいはNK−LDGLもしくは関節リウマチ患者由来の細胞のような過剰増殖または所望されないNK細胞に対して細胞障害性であることが予想される一方、それらを細胞障害性にするように誘導体化された抗体を調製することもまた可能である。1つの実施態様では、一旦、NK細胞受容体特異的抗体が単離され、ヒトにおける使用に適するようにされると、それらは、細胞に対して毒性となるように誘導体化される。この方法では、抗体の患者への投与は、抗体の過剰増殖NK細胞への比較的特異的な結合をもたらし、従って、疾患の根底にある細胞を直接死滅させるかまたは阻害する。処置の特異性のため、他のほとんどのNK細胞を含む身体の他の非過剰増殖細胞、ならびに免疫系の他の細胞は、処置によって最小限の影響しか受けない。
【0100】
多数の毒性部分またはストラテジーのうちのいずれかを使用して、そのような抗体を産生させることができる。所定の好適な実施態様では、抗体は、放射性同位元素または他の毒性化合物で直接誘導体化される。そのような場合、標識された単一特異性抗体を、患者に注入することができ、ここで、ついで、それは、標的抗原を発現する細胞に結合し、死滅させることができ、非結合型抗体は、簡単に身体から浄化される。「Affinity Enhancement System」(AES)のような間接的ストラテジーを使用することもできる(例えば、米国特許第5,256,395号明細書、バーベット(Barbet)ら(1999年)Cancer Biother Radiopharm14:153−166を参照のこと、それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)。この特定のアプローチは、放射性標識ハプテンならびにNK細胞受容体および放射性ハプテンの両方を認識する抗体の使用に関与する。この場合、抗体は、まず、患者に注入され、標的細胞に結合され、次いで、一旦、非結合型抗体が血流から浄化され、放射性標識ハプテンが投与される。ハプテンは過剰増殖または所望されない細胞(例えば、NKもしくはT)細胞上の抗体−抗原複合体に結合し、それによって、それらを死滅させ、非結合型ハプテンは、身体から浄化される。
【0101】
細胞障害性または細胞抑制効果を伴う部分の任意のタイプは、特異的NK受容体発現細胞を阻害または死滅させるために本抗体と共同で使用することができ、放射性同位元素、毒性タンパク質、毒性小分子、例えば、薬物、毒素、免疫調節物質、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、酵素、オリゴヌクレオチド、酵素インヒビター、治療用放射性核種、血管新生インヒビター、化学療法薬、ビンカアルカロイド類、アントラサイクリン系薬剤、エピドフィルロトキシン類(epidophyllotoxins)、タキサン系薬剤、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、COX−2インヒビター、SN−38、有糸分裂阻害剤、抗血管新生およびアポトーシス薬剤、特に、ドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテシン類(camptothecans)、ナイトロジェンマスタード、ゲムシタビン、アルキルスルホン酸、ニトロソ尿素類、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、リシン、アブリン、5−フルオロウリジン、リボヌクレアーゼ(RNase)、DNaseI、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシン−A、ヨウシュヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア(diphtherin)毒素、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、およびシュードモナス(Pseudomonas)内毒素などを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、(Mack Publishing Co.1995年)、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics (McGraw Hill,2001年)、パスタン(Pastan)ら(1986年)Cell47:641、ゴールデンベルグ(Goldenberg)(1994年)Cancer Journal for Clinicians 44:43、米国特許第6,077,499号明細書を参照のこと、それらの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)。毒素は、動物、植物、真菌、または微生物由来であり得るか、または化学合成によりデノボで作製され得ることが理解されよう。
【0102】
毒素または他の化合物は、任意の多くの利用可能な方法を使用して、直接的もしくは間接的に抗体に連結することができる。例えば、薬剤を、N−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のような架橋剤を使用するジスルフィド結合形成を介するか、または抗体のFc領域における炭水化物部分を介して、還元型抗体成分のヒンジ領域に付着させることができる(例えば、ウー(Yu)ら(1994年)Int.J.Cancer56:244、ウォン(Wong)、Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking(CRC Press1991年)、ウペスラシス(Upeslacis)ら、「Modification of Antibodies by Chemical Methods」、Monoclonal antibodies:principles and applications、バーチ(Birch)ら(編)、187−230頁(Wiley−Liss,Inc.1995年)、プライス(Price)、「Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies」、Monoclonal antibodies:Production,engineering and clinical application、リッター(Ritter)ら(編)、60−84頁(Cambridge University Press1995年)、カテル(Cattel)ら(1989年)Chemistry today7:51−58、デルプリノ(Delprino)ら(1993年)J.Pharm.Sci82:699−704、アルピッコ(Arpicco)ら(1997年)Bioconjugate Chernistry8:3、ライスフィールド(Reisfeld)ら(1989年)Antihody,Immunicon.Radiopharrn.2:217を参照のこと、それらのそれぞれの開示内容全体が参照により本明細書に援用される)。
【0103】
1つの好適な実施態様では、抗体は、I−131のような放射性同位元素で誘導体化される。多くの適切な放射性同位元素のいずれかを使用することができ、インジウム−111、ルテチウム−171、ビスマス−212、ビスマス−213、アスタチン−211、銅−62、銅−64、銅−67、イットリウム−90、ヨウ素−125、ヨウ素−131、リン−32、リン−33、スカンジウム−47、銀−111、ガリウム−67、プラセオジム−142、サマリウム−153、テルビウム−161、ジスプロシウム−166、ホルミウム−166、レニウム−186、レニウム−188、レニウム−189、鉛−212、ラジウム−223、アクチニウム−225、鉄−59、セレン−75、ヒ素−77、ストロンチウム−89、モリブデン−99、ロジウム−105、パラジウム−109、プラセオジム−143、プロメチウム−149、エルビウム−169、イリジウム−194、金−198、金−199、および鉛−211を含むがこれらに限定されない。一般に、放射性核種は、好ましくは、オージェ放射体については、20〜6,000keVの範囲、好ましくは、60〜200keVの範囲で、β放射体については100〜2,500keV、およびα放射体については4,000〜6,000keVの崩壊エネルギーを有する。α粒子の発生に伴って実質的に崩壊する放射性核種もまた好適である。
【0104】
本方法に含まれる細胞障害性部分を選択する際に、この部分は、ヒト身体における心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、直腸、乳、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚、あるいは他の生命を維持する器官または組織から選択される1つ以上の組織のような生命を維持する正常な組織に対して有意なインビボでの副作用を発揮しないことを確実にすることが所望される。本明細書で使用する用語「有意な副作用」は、インビボで投与する場合、化学療法中に通常遭遇するような極僅かなもしくは臨床的に管理可能な副作用しか生じない抗体、リガンドまたは抗体コンジュゲートを指す。
【0105】
結合および細胞障害性活性に対する細胞障害性抗体の試験
一旦、免疫増殖性障害を伴う患者由来の細胞上のNK細胞受容体に特異的に結合することが公知であり、ヒトにおける使用に適切にされ、場合により、毒性部分を含むように誘導体化されている抗体が得られると、それらは、一般に、標的細胞の活性を妨害する、影響を及ぼす、および/またはこの細胞を死滅させるそれらの能力について評価される。一般に、競合に基づくアッセイ、ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロッティング、BIACOREに基づくアッセイ、およびフローサイトメトリーアッセイを含むNK細胞またはNK細胞受容体に結合する抗体を検出するための上記のアッセイは、ヒト化、キメラ、または細胞障害性抗体のような他のヒトに適切なNK細胞抗体とそれらの標的細胞との相互作用を検出するために、同等に適用することができる。典型的に、標的細胞は、免疫増殖性障害を伴う患者から採取されるNK細胞である。
【0106】
本アッセイでは、ヒト化またはヒトに適切な治療用(例えば、細胞障害性)抗体が標的細胞またはヒトNK細胞受容体に結合する能力が、コントロールタンパク質、例えば、構造的に関連しない抗原に対して惹起された抗体、または非Igペプチドもしくはタンパク質が同じ標的に結合する能力と比較される。任意の適切なアッセイを使用して、コントロールタンパク質に対して25%、50%、100%、200%、1000%もしくはそれ以上増加した親和性を伴って標的細胞またはNK細胞受容体に結合する抗体あるいはフラグメントは、標的を「特異的に結合する」または「特異的に相互作用する」と言い、下記の治療方法における使用に好適である。
【0107】
結合に加えて、抗体が増殖を阻害する、または好ましくは、標的細胞を死滅させる能力を評価することができる。1つの実施態様では、1つ以上の関連受容体を発現するヒトNK細胞、例えば、NK−LDGL患者から採取されるLGLまたはNK細胞を、プレート、例えば、96ウェルプレートに導入し、多様な量の関連抗体に暴露させる。バイタル染料、即ち、AlamarBlue(BioSource International,Camarillo、カリフォルニア州)のような無傷(intact)な細胞によって取り込まれる色素を添加し、洗浄して、過剰な染料を除去することにより、光学密度(抗体によって死滅した細胞が多いほど、光学密度が低い)によって、生存可能な細胞の数を測定することができる。(例えば、コノリー(Connolly)ら(2001年)J Pharm Exp Ther298:25−33(その開示内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。他の任意の適切なインビトロ細胞障害性アッセイ、細胞増殖もしくは生存を測定するためのアッセイ、またはNK細胞活性を検出するためのアッセイを、同等に使用することができ、同じく、例えば、抗体を動物モデル、例えば、関連受容体を発現するヒトNK細胞を含有するマウスに投与し、ヒトNK細胞の生存または活性に対する抗体投与の影響を経時的に検出するインビボアッセイも使用することができる。また、抗体が非ヒト受容体、例えば、霊長類NK細胞受容体と交差反応する場合、治療用抗体を、インビトロまたはインビボで使用して、関連受容体を発現する動物由来のNK細胞に結合するおよび/または死滅させる抗体の能力を評価することができる。
【0108】
過剰増殖NK細胞の増殖をインビトロもしくはインビボで、検出可能な程度で遅らせるか、停止するか、または反転させることができる任意の抗体、好ましくは、ヒトに適切な抗体、例えば、細胞障害性抗体を、本方法において使用することができる。好ましくは、抗体は、増殖を停止する(例えば、標的化されたNK細胞受容体を発現するNK細胞の数の増加をインビトロもしくはインビボで防止する)ことが可能であり、最も好ましくは、抗体は、増殖を反転させることができ、そのような細胞の総数の減少をもたらす。所定の実施態様では、抗体は、標的化された受容体を発現するNK細胞の数の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の減少を生じることが可能である。
【0109】
従って、1つの好適な実施態様では、本発明は、免疫増殖性障害の処置における使用に適切な抗体を産生させるための方法を提供し、本方法は、次の工程:a)NK細胞の表面上に存在する受容体に特異的に結合する複数の抗体を提供する工程と、b)免疫増殖性障害を伴う1人以上の患者から採取されるNK細胞に結合する抗体の能力を試験する工程と、c)前記複数の抗体から、1人以上の前記患者から採取される実質的な数のNK細胞に結合する抗体を選択する工程と、d)前記抗体をヒトへの投与に適切ならしめる工程とを含む。1つの実施態様では、方法は、細胞障害性薬剤が前記抗体に連結される工程をさらに含む。そのような方法では、「実質的な数」は、例えば、30%、40%、50%、好ましくは、60%、70%、80%、90%もしくはそれ以上の百分率の細胞を意味し得る。
【0110】
本発明はまた、以下の工程:a)NK−LDGLを伴う1人以上の患者から採取されるNK細胞に特異的に結合する抗体を提供する工程と、b)NK−LDGLを伴う1人以上の患者から採取されるNK細胞に結合する抗体の能力を試験する工程と、c)抗体が、1人以上の患者から採取される実質的な数のNK細胞に結合する場合、抗体をヒトへの投与に適切ならしめる工程とを含む関連する方法を提供する。1つの実施態様では、方法は、細胞障害性薬剤が抗体に連結される工程をさらに含む。そのような方法、ならびに先の段落を含む本明細書の他の箇所に記載の方法は、NK細胞以外の細胞、例えば、T細胞、LGL細胞を使用して、NK−LDGL以外の障害、例えば、T細胞LDGLまたは他の免疫増殖性障害の処置のために同等に実施することができることが理解されよう。
【0111】
等価な方法を使用して、動物を処置するか、または動物モデルにおいて試験するのに適切な抗体を産生させることができることが理解されよう。その場合、抗体は、関連動物由来であり、およびNKまたは他の細胞のクローン拡大に関与する動物疾患において優勢であるNK細胞受容体を特異的に認識することが可能であることが確実にされる。同様に、抗体は、特定の動物への投与に適切であるように改変される。
【0112】
炎症をインビボで試験するためのモデル
インビボで炎症に対してCD94/NKG2Aおよび/またはC発現細胞を涸渇することの抗炎症効果を、マウスモデルで評価することができる。マウスCD94/NKG2A、−Cおよび−E標的化ラットmAb20D5のようなCD94/NKG2Aおよび/または−Cに対する涸渇抗体は、マウス、例えば、慢性炎症のためのマウスモデルにおいて特定のリンパ球集団を涸渇するために使用される。そのようなモデルの例として、関節リウマチ、またはヒト多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を研究するためのインビボモデルであるコラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデルが挙げられる。そのようなモデルでは、CD94/NKG2Aおよび−C細胞を涸渇するmAbは、炎症の発症前、中または後のいずれかに注入され得、炎症の減少は、これらのモデルにおける炎症の強度を測定するための当該技術分野における公知の技術によって、(例えば、生理学的または免疫組織化学によって)評価され得る。
【0113】
処置方法のための抗体の投与
本方法を使用して産生される抗体は、増殖性障害、特に、免疫増殖性障害を処置するのに特に有効である。一般に、本方法を使用して、1つもしくは少数のNK細胞受容体を発現する任意の細胞の存在または過剰によって生じる任意の障害を処置することができ、この障害は、従って、特定のNK細胞受容体を発現する細胞を選択的に死滅または阻害することによって有効に処置され得る。他の適切な疾患として、T細胞型LDGL、自己免疫障害、およびCD3および場合により、CD4CD28もしくはCD8であるT細胞を含むNKまたは関連する細胞に関与する他の任意の免疫増殖性あるいは悪性の障害が挙げられる。「免疫増殖性疾患」は、過剰または制御されていない炎症、もしくは発赤、浮腫、発熱などの炎症の任意の態様によって特徴付けられるかまたは発症する任意の障害、病体、あるいは疾患を指し、具体的には、炎症性疾患および自己免疫障害を含む。炎症性疾患には、アレルギー性鼻炎/副鼻腔炎、蕁麻疹/発疹のような皮膚アレルギー、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、薬物アレルギー、昆虫アレルギー、および肥満細胞症喘息(mastocytosisasthma)のようなアレルギー障害を含むアレルギー、喘息、骨関節炎、関節リウマチ、および脊椎関節症を含む関節炎、胃腸炎、クローン病および大腸炎、神経炎症性障害、ならびに自己免疫障害が含まれる。
【0114】
「自己免疫」障害は、自己と非自己もしくは他のものとを識別する能力の破壊のため、免疫系が自己の細胞または組織に対する反応を展開する任意の障害、病態、あるいは疾患を含む。自己免疫障害の例として、橋本病、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、乾癬、シェーグレン症候群、エリテマトーデス、脱髄性症状、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、グレーブス病、多発性筋炎、ギラン・バレー、ウェゲナー肉芽腫症(Wegener’s granulomatosus)、セリアック病、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、ベーチェット病(Bechet’s disease)、チャーグ・ストラウス症候群、高安動脈炎などが挙げられる。自己免疫障害は、免疫系の任意の成分に関与し得、身体の任意の細胞または組織型を標的化し得る。
【0115】
本明細書において使用する関節リウマチという用語は、関節の炎症に関与し、関節びらん、リンパ球浸潤、滑膜過形成(synovial hyperplasia)、線維芽細胞様滑膜細胞およびマクロファージの進行性の増殖ならびに/あるいはTもしくはNK細胞(例えば、CD56であるNK細胞、CD3、および場合により、CD4CD28もしくはCD8であるT細胞)、およびまた、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR2DS5、KIR3DS1、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKG2G、NKp30、NKp44、NKp46のいずれか1つ以上であるこの細胞の存在のような特徴を含む任意の障害を指す。特に、存在する細胞タイプがT細胞である場合、本発明の抗体によって標的化されるTまたはNK細胞受容体は、NKG2タンパク質、好ましくは、NKG2Dである。一般的に、確立された関節リウマチにおいて、滑膜は肥厚し、軟骨および基礎をなす骨は、崩壊し始め、関節破壊の徴候が生じる。
【0116】
1つの実施態様では、本発明に従って処置される疾患は、確立された免疫増殖性障害であって、一般的に、組織損傷または傷害および/あるいは少なくとも3、6、9、12、24もしくは36箇月継続する疾患(例えば、炎症、症状または組織損傷)によって特徴付けられる。
【0117】
1つの実施態様では、本治療方法の成分は、患者において拡大されたNKまたは他の細胞上の優勢な受容体が同定されるタイプ分類工程である。一般的に、この工程では、NK細胞または他の(例えば、T細胞、LGL細胞)のサンプルが患者から採取され、例えば、イムノアッセイを使用して、細胞上の多様なNK細胞受容体の相対的重要性を決定するために試験される。NK細胞がこの方法に好適である場合、NK細胞受容体を発現する任意の細胞タイプ(例えば、CD3、場合により、CD4CD28またはCD8であるT細胞)を使用することができることが理解されよう。理想的には、この工程は、免疫増殖性障害の増殖NK細胞において最も一般に見出される多様なNK細胞受容体を共に認識する抗体(直接的または間接的のいずれかで標識された)のパネルを含有するキットを使用して実施される。しばしば、1つもしくは少量の受容体が、細胞の実質的な数、例えば、30%、40%、50%、好ましくは、60%、70%、80%、90%もしくはそれ以上に存在することが見出される。その場合、次いで、単一もしくは少数の治療用(例えば、細胞障害性)抗体、検出される受容体に対して特異的に指向されたこの抗体を投与することができる。本方法で、過剰増殖または所望されない細胞が特異的に標的化される。
【0118】
上記の免疫学的アッセイに加えて、患者から採取される多様なNK細胞受容体またはNK細胞の同一性および相対的発現レベルを決定するための他の方法を使用することもできる。例えば、RNAに基づく方法、例えば、RT−PCRまたはノーザンブロッティングを使用して、患者から採取される細胞における多様なNK細胞受容体の相対的転写レベルを調べることができる。多くの場合、単一または少数の受容体特異的転写物が優位であり、転写物によってコードされる特定の受容体に特異的な細胞障害性抗体を使用する患者の処置を可能にする。
【0119】
別の実施態様では、遺伝子型判定によって、患者の増殖免疫細胞(例えば、NK)細胞上において発現されるNK細胞受容体の同一性について洞察することができる。例えば、20以上の異なるKIRハプロタイプおよび、少なくとも40の異なる遺伝子型が同定されている(例えば、シュー(Hsu)ら(2002年)Immunol Rev.190:40−52(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照のこと)。これらのハプロタイプおよび遺伝子型のいくつかは、活性化または抑制性KIR受容体発現と関連する。従って、患者が特定のハプロタイプまたは特定の遺伝子型を所有しているという決定は、しばしば、どの受容体が患者のNK細胞において最も発現される可能性が高いかを示すことができる。場合によって、患者における所定のハプロタイプまたは遺伝子型は、特定の発現パターンまたはNK受容体状態と高い信頼度で関連し得、従って、本治療方法における使用のための特定の治療用(例えば、細胞障害性)抗体の選択を可能にする。
【0120】
別の実施態様では、患者における免疫増殖性(好ましくは、NK)細胞の活性を評価するための機能アッセイは、単独で、または他の方法、例えば、免疫学的か、RNAに基づくか、もしくは遺伝子型判定の方法と共同で使用される。1つ以上の活性化NK細胞受容体が多くの患者において優位であり得るため、特定の患者から採取される細胞が特に活性である(任意の標準的なアッセイ、例えば、細胞溶解アッセイ、サイトカイン産生、細胞内の遊離のカルシウムなどを使用して決定される)という所見は、どの受容体が増殖細胞において発現され得るかについての重要な情報を提供する。そのような情報は、特に、他の結果と組み合わされる場合、最も特異的な治療ストラテジーを達成するために、どの細胞障害性抗体または抗体を使用すべきかを決定するために使用することができる。例えば、特定のNK−LDGL患者由来のNK細胞の大部分がGL183抗体(抑制性KIR2DL2およびKIR2DL3受容体ならびに活性化KIR2DS2受容体の両方を認識する)によって特異的に認識されるという所見は、ほとんどのNK細胞もまた活性であるという所見と組み合わせて、理想的な処置がNKR2DS2には特異的であるが、KIR2DL2またはKIR2DL3にはそうではない単一の細胞障害性抗体に関与すると結論するために使用し得る。理想的には、本処置方法は、最大数の治療用抗体を使用して、過剰増殖NKまたはNK様細胞の最大集団を標的化する。
【0121】
理想的には、本抗体、それらを使用するための方法、およびキットを開発する際に、異なるNK細胞受容体に対して指向された多くの異なる抗体で、多くの患者がスクリーニングされる。本方法では、ほとんどの患者において拡大されるNK細胞の大部分を網羅する診断用および治療用(例えば、細胞障害性)抗体のパネルを集成することができる。例えば、KIR受容体の1つ(例えば、KIR2DS2)が、NK−LDGLを伴う患者の実質的な百分率(例えば、25%、50%、もしくはそれ以上)で拡大された細胞の少なくとも50%において発現されることが決定される場合、本発明に従って作製されるキットは、一般的に、受容体に対する少なくとも1つの診断用抗体、ならびに受容体に対する1つ以上の治療用抗体を含む。他の細胞タイプにおいても発現される受容体もまた含まれ得るが、受容体がNK細胞に特異的である、即ち、他の任意の細胞タイプでは発現されない場合、このことは特に当てはまる。特に、それが、患者におけるNK細胞の実質的な画分を標的化するための唯一の方法である場合、非NK細胞特異的である受容体に特異的に結合する治療用抗体を使用してもよい。関与する非NK細胞タイプのタイプに依存して、NK細胞とのその相互作用を最大にし、非NK細胞タイプとのその相互作用を最小にするために、治療用抗体の投与の形態またはタイミングを特異的に調整し得る(例えば、受容体が未熟BもしくはT細胞においても発現される場合、骨髄または胸腺とのその接触を最小にする方法で抗体を投与する)。
【0122】
本発明のキットは、任意の数の診断用および/または治療用抗体、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、もしくは他の任意の数の診断用および/または治療用抗体を含有し得る。そのようなキットでは、診断用抗体は、しばしば、直接的または間接的のいずれか(例えば、第二抗体を使用して)標識される。治療用抗体は、改変されていない形であり得、即ち、例えば、単純に標的細胞に結合し、それによって、それらを不活化するか、細胞死を誘発するかもしくは免疫系による破壊のためにそれらを区分することによって作用する任意の連結された細胞障害性または他の部分を伴う。他の実施態様では、治療用抗体は、1つ以上の細胞障害性部分に連結される。キットの内容物のこのような説明は、いかなる方法においても制限されないことが理解されよう。例えば、治療用抗体では、キットは、改変されていないかまたは細胞障害性抗体の任意の組み合わせを含有することができる。さらに、キットは、化学療法または抗増殖剤のような他のタイプの治療化合物も含有し得る。好ましくは、キットはまた、例えば、患者におけるNK受容体状態をタイプ分類し、従って治療用抗体を投与するための本明細書に記載の方法を詳述する抗体を使用するための指示書を含む。
【0123】
治療用抗体の投与は、特に、上掲のタイプ分類工程において決定されるNK受容体状態から考えて適切であるような単一または複数のNK細胞受容体に対して指向される1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは任意の数の異なる抗体の投与に関与し得ることもまた、理解されよう。抗体のそのような組み合わせは、共に、または個別に、例えば、それぞれの抗体の相対的毒性、患者のNK受容体状態、もしくは他の要因に依存して、投与することができる。
【0124】
さらに、処置は、複数回の治療用(例えば、細胞障害性)抗体の投与に関与し得る。例えば、最初のラウンドの抗体投与後、患者におけるNKまたはLGL細胞の全体数が再測定され、なお上昇しているのであれば、さらなるラウンドのNK受容体状態タイプ分類を実施することができ、続いて、さらなるラウンドの治療用抗体投与が行われる。このさらなるラウンドの投与において投与された細胞障害性抗体は、初期のラウンドにおいて使用されたものと同一である必要はないが、しかし、主に、タイプ分類工程の結果に依存することが理解されよう。この方法では、複数ラウンドのNK受容体状態タイプ分類および治療用抗体投与を、例えば、LGLまたはNK細胞増殖が抑制されるまで実施することができる。
【0125】
本発明はまた、組成物、例えば、任意の適切なビヒクルにおいて、患者において標的化されたNK細胞受容体を発現する細胞の増殖もしくは活性を阻害するか、またはこの細胞を死滅させるのに有効な量で、そのフラグメントおよび誘導体を含む本抗体のいずれかを含む薬学的組成物を提供する。組成物は、一般に、薬学的に許容可能なキャリアをさらに含む。抗体および組成物を患者に投与する本方法はまた、動物を試験するか、またはヒト疾患の動物モデルにおける本明細書に記載の方法または組成物のいずれかの有効性を試験するために使用することができることが理解されよう。
【0126】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容可能なキャリアとして、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、直腸内、経鼻的、頬側的、膣内にまたはインプラントされたリザーバを介して投与することができる。本明細書で使用する「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注入または輸注技術を含む。好ましくは、組成物は、経口的、腹腔内または静脈内に投与される。
【0128】
本発明の無菌注入可能な形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該技術分野において公知の技術に従って処方することができる。無菌注入可能な調製物はまた、非毒性の非経口的な許容可能な希釈剤もしくは溶媒における無菌注入可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中溶液として)であってもよい。なかでも、用いられ得る許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来的に用いられる。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の低刺激不揮発性油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注入可能物の調製に有用であり、それらは、特に、ポリオキシエチレンバージョン(polyoxyethylated version)のオリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学的に許容可能な油である。これらの油溶液または懸濁液はまた、エマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的許容可能な剤形の処方において一般に使用される長鎖アルコール希釈液または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な固体、液体、または他の剤形の製造に一般に使用される他の一般に使用される界面活性剤、例えば、Tween、Spanおよび他の乳化剤またはバイオアベイラビリティの増強剤もまた、処方の目的のために使用することができる。
【0129】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的な許容可能な剤形で経口的に投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用されるキャリアとして、乳糖およびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態の経口投与のための有用な希釈剤として、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。経口用途に水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化および懸濁剤と組み合わせられる。所望であれば、所定の甘味、風味付け、または着色剤もまた添加することができる。
【0130】
あるいは、本発明の組成物は、直腸内投与のための坐剤の形態で投与することもできる。これらは、薬剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って、直腸内では融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。そのような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。本発明の処方物はまた、局所に、眼に、経鼻エアゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、薬学的処方の分野において周知の技術に従って調製される。
【0131】
1つの実施態様では、本発明の抗体は、単独かまたは患者または動物に対して標的化された送達のための別の物質と共に、リポソーム(「免疫リポソーム」)に組み入れられ得る。そのような他の物質は、遺伝子治療のための遺伝子の送達またはNK細胞における遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸、あるいは他の手段を介するNK細胞の活性化のための毒素または薬物、あるいはNK細胞の活性化または腫瘍もしくは感染細胞の標的化に有用であり得る本明細書に記載の他の任意の薬剤を含む。
【0132】
別の実施態様では、本発明の抗体は、バイオアベイラビリティ、インビボでの半減期などを改善するために改変することができる。例えば、任意の数の形態のポリエチレングリコールおよび当該技術分野において公知の付着の方法(例えば、リー(Lee)ら(2003年)Bioconjug Chem.14(3):546−53、ハリス(Harris)ら(2003年)Nat Rev Drug Discov.2(3):214−21、デケルト(Deckert)ら(2000年)Int J Cancer.87(3):382−90を参照のこと)を使用して、抗体をペグ化することができる。
【0133】
いくらかのモノクローナル抗体は、Rituxan(リツキシマブ(Rituximab))、Herceptin(トラツズマブ(Trastuzumab))またはXolair(オマリズマブ(Omalizumab))、Bexxar(トシツモマブ),Campath(アレムツズマブ)、Zevalin、Oncolymならびに類似の投与レジメン(即ち、処方および/または用量および/または投与プロトコル)が本発明の抗体と共に使用され得るような臨床的状況において効率的であることが示されている。糖のためのスケジュールおよび用量は、例えば、製造者の指示書を使用して、これらの製品のための既知の方法に従って決定することができる。例えば、モノクローナル抗体は、100mg(10mL)または500mg(50mL)の単回使用のバイアルのいずれかにおいて10mg/mLの濃度で供給することができる。生成物は、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベイト(polysorbate80)、および注射用滅菌水において、靜注投与のために処方される。pHを6.5に調整する。本発明の抗体のための例示的に適切な用量範囲は、約10mg/m〜500mg/mであり得る。しかし、これらのスケジュールは例示的であること、至適スケジュールおよびレジメンは、臨床治験において決定されなければならない抗体の親和性および忍容性を考慮して適応することができることが理解されよう。24時間、48時間、72時間または1週間もしくは1箇月間、NK細胞を飽和するNK細胞受容体に対する抗体の注入の量およびスケジュールは、抗体の親和性およびその薬物動態パラメータを考慮して決定される。
【0134】
別の実施態様に従えば、本発明の抗体組成物は、抗体が投与されている特定の治療目的に通常利用される薬剤を含む1つ以上のさらなる治療剤をさらに含むことができる。さらなる治療剤は、通常、処置されている特定の疾患または状態のための単剤治療におけるこの薬剤に典型的に使用される量で存在する。そのような治療剤として、癌の処置に使用される治療剤、炎症性または自己免疫障害、感染性疾患を処置するために使用される治療剤、他の免疫療法において使用される治療剤、(IL−2もしくはIL−15のような)サイトカイン、他の抗体のおよび他の抗体のフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。特定の治療アプローチが、患者の状態自体に有害であることが知られておらず、NK細胞受容体抗体に基づく処置を顕著に和らげない限り、その本発明との併用が考慮される。
【0135】
化学療法は、しばしば、特定のNK−LDGL白血病におけるNK−LDGLのような増殖性障害を処置するために使用されるため、本発明のNK細胞受容体抗体治療用組成物を、他の化学療法またはホルモン療法剤と併用して投与してもよい。様々なホルモン治療および化学療法剤は、本明細書において開示される併用処置方法において使用することができる。例示的に考えられる化学療法剤として、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、ビンカアルカロイド、例えば、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、ならびにそれらの誘導体およびプロドラックが挙げられる。ホルモン剤としては、例えば、LHRHアゴニスト、例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、およびブセレリン、抗エストロゲン、例えば、タモキシフェンおよびトレミフェン、抗アンドロゲン例えば、フルタミド、ニルタミド、シプロテロンおよびビカルタミド、アロマターゼ阻害剤例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールおよびファドロゾール、ならびにプロゲスターゲン例えば、メドロキシ、クロルマジノンおよびメゲストロールが挙げられる。さらに有用な化学療法剤として、DNA複製、有糸分裂および染色体分離を妨害する化合物が挙げられ、また、ポリヌクレオチド前駆体の合成および忠実度を破壊する薬剤を使用してもよい。併用治療のための化学療法剤が米国特許第6,524,583号明細書の表Cに列挙されており、薬剤および適応に関する開示内容は、具体的に、本明細書において参照により援用される。列挙されたそれぞれの薬剤は例示的であり、限定的ではない。別の有用な供給源は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、第33章、特に624〜652頁である。用量の変動は、治療中の状態に依存して生じる可能性がある。処置を施行する医師は、個々の対象に対する適切な用量を決定することが可能である。
【0136】
本発明の別の重要な実施態様に従えば、NK細胞受容体抗体治療用組成物は、抗体または化合物が投与される特定の治療的炎症もしくは自己免疫適応症に通常利用される1つ以上のさらなる治療用薬剤、例えば、関節リウマチの処置に使用される治療用薬剤、ウェゲナー肉芽腫症の処置に使用される治療用薬剤、シェーグレン症候群の処置に使用される治療用薬剤、インスリン依存性糖尿病の処置に使用される治療用薬剤、IL−10のようなサイトカイン、ならびにサイトカインならびに免疫細胞活性化および増殖を駆動する他の分子を中和する化合物、例えば、抗TNF−α抗体および他の化合物、ならびに抗IL−15抗体および他の化合物との共同で投与してもよい。
【0137】
本発明は、手術などの古典的アプローチと組み合わせて使用してもよい。1つ以上の薬剤またはアプローチを本治療と組み合わせて使用する場合、組み合わされた結果が、各処置を個別に行う場合に観察される効果の相加である必要はない。少なくとも相加的効果は一般に所望されるが、NK細胞数の任意の減少、サイトカイン産生または単回治療の1つを超える他の有益な効果は、有益であり得る。また、組み合わされた処置が相乗効果を示すことを求める特定の要件は存在しないが、このことは間違いなく可能であり、有利である。NK細胞受容体抗体治療用組成物の処置は、例えば、数分〜数週間および数箇月の範囲の間隔だけ他の処置より先行するか、または後に続き得る。また、NK細胞受容体抗体治療用組成物または他の薬剤のいずれかの1回を超える投与が利用されることも想定される。薬剤は、数日もしくは数週間おきに交換可能に投与してもよく、またはNK細胞受容体抗体治療用組成物の処置のサイクルを行い、続いて、他の薬剤療法のサイクルを行ってもよい。いずれにせよ、必要なのは、投与回数に関係なく、治療上有益な効果を及ぼすのに有効な組み合わされた量で、両方の薬剤を送達することだけである。
【0138】
他の態様では、免疫調節化合物またはレジメンは、本発明との併用で実践され得る。好適な例として、サイトカインによる処置が挙げられる。そのような併用アプローチでは、多様なサイトカインを用いることができる。サイトカインの例として、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、もしくはIFN−γ、またはこれらのサイトカインのいずれかを阻害する化合物(例えば、サイトカインに結合する抗体もしくは可溶性受容体)が挙げられる。サイトカインまたはそれらの阻害剤は、標準的なレジメンに従い、患者の病態およびサイトカインの相対的毒性のような臨床的適応と一致させて、投与される。
【0139】
本方法はまた、補助化合物と組み合わせて使用することができる。補助化合物はとしては、その例として、制吐剤、例えば、セロトニン拮抗薬および治療薬、例えば、フェノチアジン系薬剤、置換ベンズアミド系薬剤、抗ヒスタミン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、副腎皮質ステロイド、ベンゾジアゼピン系薬剤およびカンナビノイド系薬剤、ビスホスホネート系薬剤、例えば、ゾレドロン酸およびパミドロン酸、ならびに造血成長因子、例えば、エリスロポエチンおよびG−CSF、例えば、フィルグラスチム、レノグラスチムおよびダルベポエチンを挙げることができる。
【0140】
本発明のさらなる態様および利点を、以下の実施例のセクションで開示するが、これは例示的であり、本出願の範囲を限定するものではないとみなすべきである。
【実施例】
【0141】
実施例1−NK細胞受容体に特異的なmAbの作製
新規モノクローナル抗体を、例えば、モレッタ(Moretta)ら(1990年)J Exp Med.172(6):1589−98に記載のように、5週齢のBalbCマウスを活性型ポリクローンまたはモノクローンNK細胞系統で免疫することによって、作製する。異なる細胞融合後、mAbを、KIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR2DS5、KIR3DS1、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKp30、NKp44、NKp46などのような1つ以上のNK細胞受容体を特異的に認識するそれらの能力について、最初に選択する。ポジティブなモノクローナル抗体を、免疫増殖性障害(例えば、NK−LDGL、関節リウマチなど)を伴う患者から採取されるNK細胞に特異的に結合するそれらの能力について、さらにスクリーニングする。
【0142】
実施例2−末梢血リンパ球(PBL)の精製およびポリクローンまたはクローンNK細胞集団の作製
末梢血リンパ球(PBL)を、Ficoll−Hipaque勾配およびプラスチック付着細胞の涸渇により、NK−LDGL患者もしくは別の免疫増殖性障害を伴う患者、または健康なドナーから誘導する。富化されたNK細胞を得るために、PBLを抗CD3(JT3A)、抗CD4(HP2.6)および抗HLA−DR(D1.12)mAbと共にインキュベート(4℃で30分間)し、続いて、ヤギ抗体マウス被覆Dynabeads(Dynal,Oslo、諾国)と共にインキュベート(4℃で30分間)し、免疫磁気涸渇する(ペンデ(Pende)ら(1998年)Eur.J.Immunol.28:2384−2394、シボリ(Sivor)ら(1997年)J.Exp.Med.186:1129−1136、バイタレ(Vitale)ら(1998年)J.Exp.Med.187:2065−2072)。CD3DR細胞は、細胞溶解アッセイにおいて使用するか、またはポリクローンNK細胞集団、または限界希釈後)、NK細胞クローン(モレッタ(Moretta)(1985年)Eur.J.Immunol.151:148−155)を入手するために、100U/ml rIL−2(Proleukin,Chiron Corp.,Emeryville、米国)および1.5ng/ml PHA(Gibco Ltd,Paisley,Scotland)の存在下、照射処理されたフィーダー細胞上で培養する。
【0143】
実施例3−フロー細胞蛍光(Flow Cytofluorimetric)分析
PE−もしくはFITC−コンジュゲートアイソタイプ特異的ヤギ抗マウス第2試薬(Southern Biotechnology Associated,Birmingham、アラバマ州)で直接標識されるかまたは第2試薬が後で追加されるかのいずれかである多様なNK細胞受容体に特異的なmAbで、患者およびコントロール細胞を染色する。サンプルを、1もしくは2色細胞蛍光分析によって分析する(FACScan Becton Dickinson&Co,Mountain View、カリフォルニア州)(例えば、モレッタ(Moretta)ら(1990年)J.Exp.Med.171:695−714を参照のこと)。
【0144】
実施例4−抗体−基質相互作用のBiacore分析
組換えタンパク質の産生および精製
組換えタンパク質を、大腸菌(E.coli)において産生させる。NK細胞受容体の細胞外ドメイン全体をコードするcDNAを、標準的な方法を使用するPCRによって増幅する。核酸配列を、ビオチン化シグナルをコードする配列を伴うフレームにおいて、pML1発現ベクターにクローニングする(ソウルクイン(Saulquin)ら、2003年)。タンパク質発現を、BL21(DE3)細菌株(Invitrogen)において実施する。トランスフェクト細菌を、OD600=0.6まで、37℃、アンピシリン(100μg/ml)を補充した培地中で増殖させ、発現を1mM IPTGで誘導する。タンパク質を、変性条件(8M尿素)下の封入体から回収する。組換えタンパク質のリホールディングを、L−アルギニン(400mM、シグマ(Sigma))およびβ−メルカプトエタノール(1mM)を含有する20mM Tris、pH7.8、NaCl150mM緩衝液において、室温で、尿素濃度を6段階の透析(それぞれ、4、3、2、1 0.5および0M尿素)で減少することによって、実施する。還元型および酸化型グルタチオン(それぞれ5mMおよび0.5mM、シグマ(Sigma))を、0.5および0M尿素の透析工程中に添加する。最後に、タンパク質を、10mM Tris、pH7.5、NaCl 150mM緩衝液に対して、広範に透析する。可溶性のリホールドしたタンパク質を濃縮し、次いで、Superdex200サイズ排除カラム(Pharmacia、AKTA system)上で精製する。表面プラズモン共鳴測定を、Biacore装置(Biacore)上で実施する。すべてのBiacore実験において、HBS緩衝液にランニング緩衝液としての役割を果たす0.05%界面活性剤P20を補充する。
【0145】
タンパク質の固定
上記のように産生される組換え基質タンパク質をSensorChipCM5(Biacore)上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合で固定化する。センサーチップ表面を、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスクシンイミド、Biacore)で活性化する。カップリング緩衝液(10mM酢酸、pH4.5)中タンパク質を注入した。残留する活性型基の失活を、100mMエタノールアミンpH8(バイアコア(Biacore))を使用して実施した。
【0146】
親和性測定
動態測定のため、多様な濃度の可溶性抗体(1×10―7〜4×10―10M)を固定化された基質サンプル上に適用する。測定は、20μl/分連続流速で実施する。各サイクルについて、センサーチップの表面を、10mM NaOH pH11の5μl注入によって、再生する。BIAlogue Kinetics Evaluationプログラム(BIAevaluation3.1,Biacore)を、データ解析のために使用する。可溶性分析物(多様な濃度での40μl)を、20μl/分の流速、HBS緩衝液において、例えば、500反射率単位(RU)、および1000RUの基質を含有するデキストラン層上で、注入する。
【0147】
実施例5−ヒトNK細胞受容体を発現するマウスNK細胞の涸渇のためのインビボモデル
NK細胞生物学的機能の解剖は、選択的欠損症モデルがないため、困難になっている。抗体、特に、裸の抗体を使用して、NK細胞をインビボで涸渇し得るかどうかを調べるために、選択的欠損症のモデルを使用して、抗体がマウスにおいてNK細胞を排除し得る程度について評価した。NKp46は、特異的なNK細胞マーカーであることが示され、この理由のため、NKp46調節配列を使用して、そのようなモデルを作製した。このストラテジーの可能性をバリデートするため、NKP46隣接遺伝子FCARおよびNALP7間に局在する24kbヒトゲノム領域からなるトランスジェニックベクターを作製した(図1a)。トランスジェニック創始動物(huNKp46Tgと称する)から、子孫をメンデル頻度で得、正常に発達させたところ、繁殖性が認められた。マウスNKp46と交差反応しないBAB281(抗ヒトNKp46)抗体を使用して、これらのマウスにおけるヒトNKp46の細胞表面発現を評価した。ヒトNKp46は、顆粒球、樹状細胞、B細胞、T細胞およびCD1d−α−gal−cer四量体+NKT細胞上では発現されなかったが、しかし、高いおよび均質なレベルですべてのNK細胞において発現された(図1b)。さらに、ヒトNKp46は、骨髄におけるNK細胞発達の未熟段階で発現を開始し(図1c)、試験したすべての器官から単離されたすべてのNK細胞でも同じレベルで実質的に発現を保持する(図1d)。特に、それ故、huNKp46TgマウスにおけるヒトNKp46発現のパターンは、親マウスにおける内因性マウスNKp46分子のそれに類似した。従って、ヒトNKp46の細胞表面発現は、huNKp46TgマウスにおけるNK細胞を規定したが、これは、ヒトNKp46調節配列を使用して、NK特異的遺伝子発現を駆動することができることを実証する。huNKp46TgマウスにおけるNK細胞は、正常な計数、表現型およびエフェクター機能を示した。重要なことに、再指向性(redirected)溶解がヒトNKp46を介して誘導された(図1e)が、これは、ヒトNKp46分子がマウスNK細胞において機能的であることを示す。
【0148】
実施例6−抗ヒトNKp46を使用するマウスNK細胞のインビボでの涸渇
HuNKp46Tgマウス:マウスに、PBSまたはNKp46に対する異なる3つの抗体:BAB281(IgG1、100μg)、KL247(IgM、100μg)、および195314(IgG2b、R&D systems、50μg)の混合物を、眼窩後より注入した。抗ヒトNKp46抗体の静脈投与は、注入2日後に、血液および試験したすべての器官からのNK細胞のほぼ完全な消失をもたらした(図2)。対照的に、NKT細胞およびTCRγδ+T細胞の計数は、有意な影響を受けなかった(図2)ことから、huNKp46を示す。Tgマウスは、NK細胞選択的涸渇のマウスモデルとして使用することができ、Fcγ受容体(例えば、CD16)結合能を伴うその抗体(例えば、マウスIgG1およびIgG2b)は、NK細胞の涸渇を仲介することができる。従って、CD16に結合する対応するヒトエフェクター領域(例えば、IgG1、IgG3、またはCD16に結合するように改変されたIgG2もしくはIgG4のような他のFc領域)を使用することは、特にまた、骨髄および器官(所望されないNK細胞が所定の器官または組織に局在し得る免疫増殖性障害の重要な特徴)におけるNK細胞の涸渇に使用することができる。
【0149】
実施例7−NKG2Aおよび−C発現リンパ球のZ270涸渇は、前炎症性サイトカインの分泌を減少する
緒論
IL−15は、炎症部位においてアップレギュレートされることが公知であり、TおよびNK細胞のようなリンパ球、および単球由来の細胞系統に対して免疫刺激効果を有することが公知である。CD94/NKG2Aおよび−Cは、慢性炎症、例えば、関節リウマチ(rheumathoid arthritis)における炎症部位のTおよびNK細胞上に高い頻度で存在するHLA−E特異的受容体である。これらの適応症では、前炎症性サイトカインTNF−αは、炎症の重要な駆動体であり、TNF−α標的化療法(例えば、インフリキシマブまたはフミラ(Humira))は炎症を減少することができる。TNF−αは、マクロファージ、NK細胞、TおよびB細胞によって産生される。いくらかの実験では、一方のNKまたはT細胞と他方のマクロファージのような単球由来細胞との間の細胞対細胞接触依存性機構が、TNF−αの強力な産生を誘導することが示されている。本発明者らは、本明細書において、モノクローナル抗体でCD94/NKG2Aおよび−CポジティブNKおよびT細胞を涸渇することは、抗炎症効果を有し得ることを実証する。これは、インビトロアッセイにおいて例示されており、ここで、本発明者らは、CD94/NKG2Aおよび−C発現細胞について涸渇されたリンパ球は、CD94/NKG2Aおよび−C発現細胞が涸渇されていないリンパ球よりも、単球細胞系統によるTNF−α産生を誘導しないことを示している。
【0150】
CD94/NKG2Aおよび−C発現リンパ球の涸渇は、単球を活性化するリンパ球の能力を減少する
血液からCD94/NKG2Aおよび−Cポジティブ細胞を涸渇することの抗炎症効果を、インビトロで実証した。このため、ヘパリン含有CPTバキュテイナー(vacutainer)チューブ(BD Sciences)を使用し、本質的に製造者のプロトコルに従って、末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なドナー由来の新鮮血液から単離した。リンパ球を、ペトリ皿において、10%FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補充した10mlのGlutamax含有RPMI1640培地(以下培地という)中で1時間、PBMCを培養することによって、単球から分離し、単球を皿に付着させた。リンパ球を1回洗浄した。続いて、上清中のリンパ球を、37℃、5%COで、約24時間、培地中、6ウェルプレート中ヒトIL−15(BD Sciences,50ng/ml)の存在下、5mlの全容積を使用して、インキュベートした。CD94/NKG2Aおよび−Cポジティブ細胞を、MACS(Miltenyi Biotech)により、本質的に製造者のプロトコルに従って、取り出した。要約すると、0.5%BSAを含有する滅菌PBS中で、細胞を1回洗浄した。細胞の半分を、抗NKG2A(Z199)(BD Bioscienses)(2μg/ml)および抗NKG2C(クローン134522)(R&D systems)(2.5μg/ml)の組み合わせと共に、氷上で30分間、インキュベートした。続いて、細胞を、滅菌PBS/0.5%PBS中で2回洗浄し、80μlの細胞に対して20μlのヤギ抗マウスIgG MicroBeadsと共に、氷上で30分間、インキュベートした。次いで、細胞をPBS/0.5%BSAで洗浄した。CD94/NKG2Aおよび−Cポジティブ細胞を、LD MACSカラムを使用して取り出した。CD94/NKG2Aおよび−Cポジティブ細胞の取り出しは、典型的に、>95%であり、フローサイトメトリー(FACSarray)において抗CD94(HP−3D9)(Pharmingen)染色細胞を分析することによって評価される(図3を参照のこと)。フロースルーセルを、10%FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシンRPMI1640(Gibco)を補充したGlutamax含有RPMI1640培地中で1回洗浄し、24ウェルプレート中、THP−1細胞と共に、24時間、10:1のリンパ球対THP−1比で、1ml培地/ウェルの容積を使用して、培養した。CD94/NKG2A−および−C涸渇リンパ球によるTHP−1細胞の活性化を、CBA Th1/Th2サイトカインキットIIキットを使用し、本質的に製造者のプロトコルに従って、組織培養培地におけるTNF−α、IFN−γ、IL−2、−4、−6、および−10の分泌をFACSarray(BD Biosciences)上で測定することによって、分析した。非涸渇細胞と比較して、NKG2Aおよび−C涸渇リンパ球を使用した培養では、TNF−α産生の顕著な減少が観察された。それ故に、CD94/NKG2Aおよび−C発現リンパ球を涸渇することは、リンパ球の前炎症能を減少する。
【0151】
本明細書において引用されたすべての刊行物および特許出願は、それぞれ個々の刊行物または特許出願が、あたかも具体的かつ個別に参照により組み入れられて示されているが如く、それらの全体が、参照により、本明細書に援用される。
【0152】
上述の発明は、例えば、理解を明確にする目的で、例示および例の方法でいくらか詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明の教示内容に照らし合わせて、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、それに所定の変化および改変を加えられ得ることが、容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】ヒトNKP46ゲノム配列を使用して、マウスNK細胞に遺伝子タグを付与することができる:(a)遺伝子導入に使用されるヒト遺伝子フラグメントの略図。NKP46エキソンを黒棒として示す。(b)huNKp46トランスジェニックマウスから得られる脾臓細胞懸濁液を、NK1.1、ヒトNKp46および他の細胞表面分子発現について染色した。示される細胞タイプを、実験手順に記載のように同定した。(c)huNKp46トランスジェニックマウス由来の骨髄細胞を、CD3、CD122、DX5、NK1.1およびヒトNKp46発現について染色した。NK前駆体(NKp)、未熟および成熟NK細胞を同定した。(d)huNKp46トランスジェニックマウスから得られるリンパ節(鼠蹊部)、肝臓、肺および末梢血細胞懸濁液を、CD3、NK1.1およびヒトNKp46発現について染色した。(b〜d)の結果は、示されたサブセットまたはゲートされたCD3−NK1.1+細胞(c)におけるヒトNKp46(白色のヒストグラム、太線)またはアイソタイプコントロール(灰色ヒストグラム、細線)の発現を示す。(e)示された抗体と共にインキュベートされたDaudi細胞に対するB6(C57BL/6)から誘導されるLAK細胞またはhuNKp46Tg(Tg)脾臓細胞の再指向性(redirected)溶解アッセイ。B6およびhuNKp46Tgマウスから調製されるLAK細胞の細胞溶解機能は同等であった。図1の結果は3つの実験を表している。
【図2】抗ヒトNKp46抗体の注入によって、huNKp46−トランスジェニックマウス由来のNK細胞を特異的に涸渇させることができる。方法において記載のように、hu−NKp46トランスジェニックマウスのグループに、PBS(コントロール)またはヒトNKp46に対する3つのmAbの組み合わせを静脈注入した。(a)血液中のNK1.1+CD3−細胞の百分率を、注入後に経時的に測定した。(b)注入の48時間後、マウスを屠殺し、脾臓、末梢血液、肝臓ならびに肺におけるNK細胞、TCRγδ+T細胞およびCD1d−制限NKT細胞の百分率を測定した。結果を、コントロールマウスと比較した注入時の示された細胞サブセットの百分率として表す。
【図3】CD94/NKG2Aおよび−C発現細胞について涸渇されたリンパ球(白色棒)は、CD94/NKG2Aおよび−C発現細胞を含有するリンパ球(黒色棒)ほど、THP−1細胞と共にインキュベートされる場合にTNF−α産生を誘導しない。リンパ球またはTHP−1細胞を単独で培養した場合、TNF−α産生は観察されなかった(説明文を参照のこと)。対照的に、IFN−α産生が影響を受けなかったことは、THP−1細胞と同時培養した場合、リンパ球が活性化されたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択されるNK受容体に特異的に結合し、ヒトNK細胞上の前記NK受容体に結合する場合、前記NK細胞を涸渇させる抗体を含む組成物の、免疫増殖性障害の処置のための医薬品の製造のための使用。
【請求項2】
免疫増殖性障害を伴う患者を処置する方法であって、a)前記患者内のT細胞またはNK細胞のNK受容体状態を決定する工程、b)前記T細胞またはNK細胞によって顕著に発現されるNK受容体に特異的に結合する抗体を含む組成物を前記患者に投与する工程であって、抗体が、それが結合する前記TまたはNK細胞を涸渇させる工程、を含む方法。
【請求項3】
前記受容体が、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKG2E、NKG2F、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記NK受容体状態が、免疫学的アッセイを使用して決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記NK受容体状態が、前記NK細胞上に存在する前記NK受容体の活性を決定するための機能アッセイを使用して決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記NK受容体状態が、遺伝子型判定アッセイを使用して決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記NK受容体状態が、細胞においてNK受容体をコードするmRNAを検出するためのアッセイを使用して決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記受容体が、前記NK細胞の少なくとも50%に検出可能に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫増殖性障害が自己免疫障害である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項10】
前記免疫増殖性障害が、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、ウェゲナー肉芽腫症、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、クローン病、原発性胆汁性肝硬変、強皮症、大腸炎、シェーグレン症候群、1型糖尿病、ぶどう膜炎、グレーブス病、甲状腺炎、1型糖尿病、心筋炎、リウマチ熱、強皮症、強直性脊椎炎、関節リウマチ、糸球体腎炎、サルコイドーシス、皮膚筋炎、重症筋無力症、多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、円形脱毛症、天疱瘡/類天疱瘡、乾癬、および白斑からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項11】
前記免疫増殖性障害がNK型LDGLである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項12】
前記NK受容体が活性化受容体である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項13】
前記抗体が単一のNK受容体を特異的に認識する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項14】
前記抗体が複数のNK受容体を特異的に認識する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項15】
前記組成物が抗体の組み合わせを含み、各抗体は単一のNK受容体を特異的に認識する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項16】
前記組成物が抗体の組み合わせを含み、少なくとも1つの抗体は複数のNK受容体を特異的に認識する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項17】
前記抗体がF受容体に結合する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項18】
前記抗体が、G1またはG3アイソタイプのFc領域を含む、請求項17に記載の使用または方法。
【請求項19】
前記抗体が、放射性同位元素、毒性ペプチド、および毒性小分子からなる群から選択されるエレメントを含まない、請求項18に記載の使用または方法。
【請求項20】
前記抗体が抗体フラグメントである、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項21】
前記抗体が、放射性同位元素、毒性ペプチド、および毒性小分子からなる群から選択されるエレメントを含む、請求項1〜18および20のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項22】
前記抗体がヒト化またはキメラ抗体である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項23】
前記抗体が、前記NK受容体のマウスまたは霊長類ホモログに結合する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項24】
前記抗体が複数のKIR受容体に結合する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項25】
前記抗体が複数のNKG2受容体に結合する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項26】
前記抗体がNKp46に特異的に結合する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項27】
前記抗体がNKG2Aに特異的に結合する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項28】
前記抗体がNKG2Cに特異的に結合する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項29】
前記抗体がNKG2AおよびNKG2Cに特異的に結合する、請求項27に記載の使用または方法。
【請求項30】
前記抗体がNKG2A、NKGCおよびNKG2Eに特異的に結合する、請求項27に記載の使用または方法。
【請求項31】
前記抗体が、NKG2Aへの結合について、Z199またはZ270と競合する、請求項27〜30のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項32】
前記抗体が、抗NKG2A抗体由来の少なくとも1つの相補性決定領域を含む、請求項31に記載の使用または方法。
【請求項33】
a.ヒトKIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択されるNK細胞受容体に特異的に結合すること、
b.F受容体に結合すること、
c.ヒトNK細胞上の前記NK細胞受容体に結合する場合、前記NK細胞を涸渇させること
によって特徴付けられる、モノクローナル抗体。
【請求項34】
前記抗体がヒト化またはキメラ抗体である、請求項33に記載のモノクローナル抗体。
【請求項35】
前記抗体がNKp46に特異的に結合する、請求項33に記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
前記抗体がNKG2Aに特異的に結合する、請求項33に記載のモノクローナル抗体。
【請求項37】
前記抗体がNKG2Cに特異的に結合する、請求項33に記載のモノクローナル抗体。
【請求項38】
前記抗体がNKG2AおよびNKG2Cに特異的に結合する、請求項33に記載のモノクローナル抗体。
【請求項39】
前記抗体がNKG2A、NKGCおよびNKG2Eに特異的に結合する、請求項33に記載のモノクローナル抗体。
【請求項40】
前記抗体が、NKG2Aへの結合について、Z199またはZ270と競合する、請求項36〜39のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項41】
前記抗体が、NKG2A由来の相補性決定領域を含む、請求項40に記載のモノクローナル抗体。
【請求項42】
前記抗体が、G1またはG3アイソタイプのFc領域を含む、請求項33〜41のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項43】
免疫増殖性障害の処置における使用に適切な抗体を産生させる方法であって、
i.NK細胞の表面上に存在する1つ以上の受容体に特異的に結合する複数の抗体を提供する工程、
ii.免疫増殖性障害を伴う1人以上の患者から採取されるNK細胞に結合する前記抗体の能力を試験する工程、
iii.前記複数の抗体から、1人以上の前記患者から採取されるNK細胞の少なくとも50%に結合する抗体を選択する工程、
iv.前記抗体をヒトへの投与に適切ならしめる工程
を含む方法。
【請求項44】
前記抗体が、それが結合する前記NK細胞を涸渇させる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体が、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択される単一の受容体に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、それをヒト化またはキメラ化することによってヒトへの投与に適切にされる、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
細胞障害性薬剤が前記抗体に連結される工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞障害性薬剤が、放射性同位元素、毒性ポリペプチド、または毒性小分子である、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、1人以上の前記患者から採取されるNK細胞の少なくとも60%に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、1人以上の前記患者から採取されるNK細胞の少なくとも70%に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、1人以上の前記患者から採取されるNK細胞の少なくとも80%に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
細胞障害性薬剤が前記抗体に連結される工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞障害性薬剤が、放射性同位元素、毒性ポリペプチド、または毒性小分子である、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
前記抗体が、1人以上の前記患者から採取されるNK細胞の少なくとも60%に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体が、1人以上の前記患者から採取されるNK細胞の少なくとも70%に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体が、1人以上の前記患者から採取されるNK細胞の少なくとも80%に結合する、請求項43に記載の方法。
【請求項57】
請求項43〜56のいずれか一項に記載の方法を使用して産生される抗体を含む組成物。
【請求項58】
前記組成物が、少なくとも1つの抗体が複数のNK受容体を特異的に認識する抗体の組み合わせを含む、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
請求項57または58に記載の組成物または請求項33〜42のいずれか一項に記載の抗体、および薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物。
【請求項60】
請求項41または44に記載の方法によって産生される抗体、および免疫増殖性障害の処置において前記抗体を使用するための指示書を含むキット。
【請求項61】
哺乳動物においてNK細胞を涸渇するための方法であって、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択されるNK受容体に特異的に結合する抗体を含む組成物を哺乳動物に投与する工程を含む方法。
【請求項62】
哺乳動物において炎症を減少するための方法であって、NKG2Aを発現するNK細胞および/またはNKG2Cを発現する細胞を排除する工程を含む方法を含む方法。
【請求項63】
NKG2Aを発現するNK細胞およびNKG2Cを発現する細胞が排除される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
NKまたはT細胞を排除する工程は、前記NK細胞を、KIR2DL1、KIR2DS1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS4、CD94、NKG2A、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、およびNKp46からなる群から選択されるNK受容体に特異的に結合する抗体を含む組成物に接触させる工程を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記組成物が、請求項57または58に記載の組成物または請求項33〜42のいずれか一項に記載の抗体を含む、請求項61または62に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−511550(P2009−511550A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535041(P2008−535041)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067399
【国際公開番号】WO2007/042573
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506000184)イナート・ファルマ (15)
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA
【出願人】(502174302)ウニヴェルシタ ディ ジェノヴァ (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA DI GENOVA
【出願人】(395018066)ノヴォ ノルディスク アクティーゼルスカブ (7)
【Fターム(参考)】