説明

増粘剤組成物および水性系を増粘する方法

【課題】会合型増粘剤の主鎖に結合しているか、または主鎖内にある同じ基が、事実上親水性と疎水性間で可逆的に切り替えられる組成物および方法を提供する。
【解決手段】主鎖に結合しているか、または主鎖内にある基が親水性にされる場合、水性増粘剤は注ぐことができ、水性ポリマー組成物中に容易に組み入れられる。この基が疎水性にされる場合、増粘剤はその増粘機能を効率よく遂行する。切替は、会合型増粘剤組成物および増粘される水性ポリマー組成物のpHを調節することにより容易に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、水性増粘剤ポリマー組成物、その製造法およびその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリマー系、例えば、エマルジョンポリマーバインダーを含有するコーティングは、典型的には、適切な配合物および水性系の適用に必要な所望の程度の粘度を得るために増粘剤を使用する。水性ポリマー系において使用される1つの一般的な種類の増粘剤は、当該分野において「会合型」という用語で言及される。会合型増粘剤は、これらが増粘するメカニズムが、増粘剤分子中の疎水性部分間および/または増粘剤分子中の疎水性部分と他の疎水性表面間の疎水性会合を含むと考えられるために、このように呼ばれる。通常使用される会合型増粘剤の一種は、重合したオキシアルキレン単位の1以上のブロック、典型的には疎水性基が主鎖に結合しているか、または主鎖内にあるポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドの1以上のブロックから構築されるポリマー主鎖を有する。もう一つ別の種類の通常使用される会合型増粘剤は、疎水性基が主鎖に結合したセルロース主鎖を利用する。これらの種類の両方の会合型増粘剤は、どちらもエーテル結合を含む主鎖を有するので、ポリエーテル増粘剤として特徴づけられうる。公知のポリエーテル会合型増粘剤は、非イオン性増粘剤であり、水性系におけるその増粘効率は、pHと実質的に無関係である。
【0003】
ポリエーテルセグメントに加えて、他の種類のセグメントをポリエーテル会合型増粘剤の主鎖中に組み入れることができる。ポリウレタンポリエーテル主鎖セグメントを有し、第三および第二アミン官能基を含む疎水性基を含有する会合型増粘剤が開示されている。米国特許第6,939,938号は、アミン官能性疎水性基を有する会合型ポリウレタンポリエーテル増粘剤を開示し、ここで、少なくとも85%のアミン官能基は恒久的にカチオン性第四アミン官能基に変換される。第四アミンは恒久的にカチオン性であるので、この基の会合特性は、例えば、pH変化により容易に切り替えることができない。
【0004】
現在市販されているほとんどの会合型増粘剤は、注ぐことができる水性液体として販売されている。使いやすさのために、かかる増粘剤製品の粘度(6rpmでのBrookfield)が15000センチポアズ(cps)未満、さらには5000cpm未満であって、製品が保存容器から容易に排出され、これが添加される水性系中に容易に組み入れることができることが望ましい。水性増粘剤製品の粘度は、活性固体濃度を減少させることにより減少させることができるが、これは製品により増粘される水性系の固体重量に関して配合自由度を限定する欠点を有する。
【0005】
ポリエーテル会合型増粘剤粘度を減少させるための他の技術も満足できるものではない。ポリエーテル会合型増粘剤および水と水混和性有機補助溶剤、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリプロピレングリコールが使用されてきた。しかしながら、これらの揮発性有機溶媒の使用は、例えば、揮発性有機含量(VOC)の減少をはじめとするさらに厳しい環境規制を満たす必要性に反する。したがって、有機補助溶剤はその意図される役割を果たすが、これらは潜在的な環境上、安全上および健康上の欠点を有する。ポリエーテル会合型増粘剤の生成物粘度を抑制するための別の方法は、界面活性剤と水性会合型増粘剤との混合である。しかしながら、必要とされる比較的多量の界面活性剤は、増粘される水性系における増粘剤製品の増粘効果に悪影響を及ぼす場合があり、最終の乾燥コーティング特性を悪化させる場合がある。加えて、界面活性剤は生成物のコストを増大させる。
【0006】
粘度を抑制するためのシクロデキストリン化合物と水性増粘剤製品との混合も開示されている。シクロデキストリンは、シクロデキストリン空孔から増粘剤疎水性部を置換するために十分多量の界面活性剤を含有する水性系に製品が添加されるまで、ポリエーテル増粘剤製品の粘度を抑制する。この方法の第一の欠点は、シクロデキストリン化合物の高いコストである。
【0007】
高い生成物粘度KUビルディングポリエーテル増粘剤を低い生成物粘度、ICIビルディングポリエーテル増粘剤とブレンドして、中間粘度でブレンドを提供することができる。しかしながら、この方法を用いる場合、異なるコーティング配合物において異なるKUおよびICI粘度ターゲットに増粘する柔軟性は損なわれる。
【0008】
水中、高い活性固体濃度で水性増粘剤を提供するための別の方法は、疎水的に修飾されたアルカリ膨潤性または可溶性エマルジョン(HASE)増粘剤の使用である。HASE増粘剤は、低いpHでのポリマー主鎖自体の不溶性に依存して、増粘剤がエマルジョン形態において低粘度かつ比較的高い固形分で提供されることを可能にする。しかしながら、実質的にイオン性の主鎖は施用されたコーティングにおける感水性に関連する他の問題を最終的にもたらす。
【特許文献1】米国特許第6,939,938号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、低粘度および可能な限りの最高の活性増粘剤固形分を有する注ぐことができる会合型増粘剤が当該分野において必要とされている。費用効率の高い、環境に優しい方法であって、実際的な活性固形分濃度を有するポリエーテル会合型増粘剤の水性生成物粘度を抑制する方法が特に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の態様において、(a)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤はポリオキシアルキレン、ポリサッカライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、またはポリビニルピロリドンを含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;(b)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;(c)40重量%〜99重量%の水;並びに(d)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ:を含む、水性会合型増粘剤ポリマー組成物が提供される。
【0011】
本明細書において記載される本発明の各水性会合型増粘剤ポリマー組成物に関して、会合型増粘剤が実質的に非イオン性の水溶性の主鎖を有する好ましい実施形態が存在する。好ましくは、会合型増粘剤は非イオン性の水溶性の主鎖を有する。
【0012】
本発明において、水溶性主鎖は、酸性、中性および塩基性条件下で、好ましくはpH=3からpH=10で水中に可溶性である。酸性条件下または塩基性条件下のいずれかで水中に不溶性である主鎖は、水溶性主鎖でない。主鎖は25℃で少なくとも10重量%の水中溶解度を有する。
【0013】
第二の態様において、(a)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は実質的に非イオン性の水溶性の主鎖、および前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基を含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;(b)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;(c)40重量%〜99重量%の水;並びに(d)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ:を含む、水性会合型増粘剤ポリマー組成物が提供される。
【0014】
さらに別の態様において、(a)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤はポリオキシアルキレン、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリサッカライド、もしくはポリビニルアルコール、または(メタ)アクリル酸のエステルを含むコポリマーを含む、実質的に非イオン性の水溶性の主鎖を含み、当該会合型増粘剤は前記主鎖と結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;(b)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;(c)40重量%〜99重量%の水;並びに(d)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせを含む、水性会合型増粘剤ポリマー組成物が提供される。
【0015】
もう一つ別の態様において、水性ポリマー系の粘度を増大させる方法であって、(a)(i)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤はポリオキシアルキレン、ポリサッカライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、またはポリビニルピロリドンを含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;(ii)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;(iii)40重量%〜99重量%の水;および(iv)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ:を含む、水性増粘剤組成物と水性ポリマー系を組み合わせ;(b)プロトン化第二アミン、またはプロトン化第三アミン、またはプロトン化第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的に脱プロトン化するために十分な量の塩基を添加すること、
を含む方法が提供される。
【0016】
本明細書において記載される水性ポリマー系の粘度を増大させるためのそれぞれの本発明の方法について、会合型増粘剤が実質的に非イオン性の水溶性の主鎖を有する方法の好ましい実施形態が存在する。好ましくは、会合型増粘剤は非イオン性の水溶性の主鎖を有する。
【0017】
別の態様において、(a)水性ポリマー系;および(b)水性増粘剤組成物を混合で含むポリマー組成物であって、前記水性増粘剤組成物は、水性増粘剤組成物の重量を基準にして、(i)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は、ポリサッカライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、またはポリビニルピロリドンを含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は、前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;(ii)40重量%〜99重量%の水;および(iii)0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせを含み;第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせが実質的にプロトン化されていない;ポリマー組成物が提供される。
【0018】
もう一つ別の態様において、(1)水性ポリマー系;および(2)水性増粘剤組成物を混合で含むポリマー組成物であって、前記水性増粘剤組成物は、水性増粘剤組成物の重量を基準にして、(a)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は長さが10オキシアルキレン単位より長いポリオキシアルキレンセグメント、並びに以下の(i)〜(x)〔(i)ウレタンセグメント、(ii)尿素セグメント、(iii)エステルセグメント、(iv)エーテルセグメント、(v)アセタールセグメント、(vi)ケタールセグメント、(vii)アミノプラストセグメント、(viii)エピハロヒドリンとアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(ix)トリハロアルカンとアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(x)前述のものの組み合わせ〕から選択される1以上のセグメントを含む主鎖を有するか、または当該会合型増粘剤は疎水的に修飾されたセルロース系ポリマーであり;当該会合型増粘剤は、前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;(b)40重量%〜99重量%の水;および(c)0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせを含み;第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせが実質的にプロトン化されていない、ポリマー組成物が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、会合型増粘剤の主鎖に結合しているか、または主鎖内の同じ基が、事実上、親水性と疎水性間で可逆的に切り替えられる組成物および方法を記載する。主鎖に結合しているか、または主鎖内の基が親水性にされる場合、水性増粘剤は注ぐことができ(pourable)、水性ポリマー組成物中に容易に組み入れられる。この基が疎水性にされる場合、増粘剤はその増粘機能を効率的に遂行する。切替は、会合型増粘剤組成物および増粘される水性ポリマー組成物のpHを調節することにより容易に達成される。この組成物および方法は、容易に注ぐことができ、高い固形分を有することができ、かつ増粘される水性ポリマー組成物またはこれにより形成される製品の性質に悪影響を及ぼさない水性ポリマー増粘剤組成物に対する当該分野における長年にわたる必要性を解決する。さらに、揮発性有機溶媒または高価な添加剤、例えば、シクロデキストリン化合物の添加は必要とされないので、この組成物および方法は環境に優しく、費用効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
「会合型増粘剤」なる用語は、当該分野において公知であり、会合メカニズムにより作用する増粘剤を意味する。会合メカニズムは、特に会合型増粘剤により示される性質の独自の組み合わせを可能にする。例えば、ラテックスベースのコーティングにおいて、ポリエーテル会合型増粘剤は、高分子量非会合型増粘剤と比較して、改善された流動およびレベリング並びにさらに良好なフィルム構成を提供することが知られている。
【0021】
当該分野において、会合メカニズムは、会合型増粘剤ポリマーであって、独立した親水性基および疎水性基を有するものの構造に起因すると考えられる。親水性基はポリマー分子に全体的な水溶性を付与する。疎水性基は、他の増粘剤分子上またはラテックス粒子表面上の他の疎水性基と会合して、増粘剤疎水性基を含有するミセルの動力学的三次元編目構造を形成する。この網目構造における会合は動的であるが、相互作用寿命は、適用される剪断速度に応じて、系に粘度を提供するために十分長くなりうる。
【0022】
米国特許第4,496,708号において開示されているように、「ミセル架橋(miceller bridging)」理論は、水性相内に水溶性ポリマーに結合した疎水性基間の分子間ミセル様会合が存在することに基づく。最も広義の特性化において、「ミセル様会合」なる用語は、水を排除する働きをする少なくとも2つの疎水性基の近接した凝集を意味することが意図される。ミセル様会合の有効寿命が長いほど、より強力な網目構造が生じ、観察される粘度がより高くなり、すなわち、増粘効果がより大きくなる。個々のミセル様会合が存在する期間は、水性環境および立体因子、例えば、1つの疎水性基の他のものとの近接性(これは、2以上の疎水性基の互いの接近を助ける)と比較した、疎水性基の化学的潜在性に関連する。その水性環境と比較した疎水性基の化学的潜在性は、水中の疎水性基の溶解パラメータに直接関連する。疎水性基が水中にあまり溶解しない場合、ミセル様会合のための駆動力がより大きくなり、従って、網目構造寿命がより長くなり、観察される粘度が高くなる。疎水性基が水中により可溶性である場合、ミセル様会合のための駆動力が減少し、従って、網目構造寿命は短くなり、観察される粘度は低くなる。
【0023】
本明細書において記載されるポリマー組成物において、選択した疎水性基の水溶性パラメータは、増粘剤の水性環境のpHを調節することにより調節される。商業的に重要な多くの水性系は、約8より高いpH値で供給される。本明細書において記載される増粘剤は、約8より高いpH値でより良好な増粘効果をもたらし、すなわち、選択した疎水性基は約8より高いpH値で、その水溶性が最も低い形態において存在する。約6より低く、約2.5より高いpH値で供給される水性生成物において、選択した疎水性基がより水溶性の高い形態において存在するので、増粘剤の効力は抑制される。従って、新規会合型増粘剤組成物は望まれる低い粘度および実際的な活性固体濃度で供給される。しかしながら、水性系のpHが約8より高く調節されるならば、組成物は水性系を非常に効率よく増粘する。
【0024】
ほとんどの第二および第三アミン、ならびにいくつかの第三ホスフィンは、約6より低い水性pH値でプロトン化することができる。疎水性基の成分としての第一アミンは、その酸形態から脱プロトン化するために、約8より十分高いpH値を必要とする傾向にある。従って、第一アミンは一般に、疎水性基の成分として有用であるには塩基性が高すぎると特徴づけることができる。尿素またはウレタンとして特徴づけられる窒素原子は、十分に塩基性でない傾向にある。すなわち、尿素およびウレタン官能基は、プロトン化形態において存在するために、約2.5より低いpH値を必要とする傾向にある。これらの低いpH値で、会合型増粘剤のポリエーテル主鎖は、酸により触媒される分解をより受けやすい。貯蔵中の劣化のために、約2.5より低いpH値を有するポリエーテル会合型増粘剤は望ましくない。2.5〜6.0の範囲内で、2.5〜5.0または3.0〜4.5のpHを使用することができる。
【0025】
pHおよびpKに関する以下の記載は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィンに適用できる。プロトン化第二または第三アミンの濃度、すなわち、アミンの共役酸形態は、[HA+]として定義される。未プロトン化第二または第三アミンの濃度、すなわち、アミンのベース形態は、[A]として定義される。溶液中のプロトンの濃度は、[H+]として定義される。アミンの酸形態の酸性度定数Kは、次のように定義することができる(例えば、Hendrickson,Cram and Hammond、Organic Chemistry、第3版、McGraw−Hill、301〜302ページ(1970)参照)。
【0026】
Ka=[H+][A]/[HA+]
さらに、第二または第三アミンのpKおよび水性会合型増粘剤組成物のpHは次のように定義することができる。
pK=−logK
pH=−log[H+]
【0027】
有用な関係は、[HA+]が[A]に等しい場合、溶液のpHはpKaに等しい値を有する。従って、アミンのpKaより低いpH値で、アミンのプロトン化形態の濃度は、アミンの未プロトン化形態の濃度を超えるであろう。水性会合型増粘剤組成物は、水性会合型増粘剤組成物のpHを、増粘剤の疎水性基を構成する第二または第三アミン官能基のpK値より低くするために十分な有機または無機酸を含有しなければならず、これにより前記第二または第三アミンを実質的にプロトン化する。水性会合型増粘剤組成物が、増粘される水性系に添加される場合、プロトン化された疎水性アミン基を実質的に脱プロトン化するために、増粘された系の最終pH値は、第二または第三アミン基のpK値よりも高いべきである。水性ポリマー組成物の粘度を増大させる方法は、水性ポリマー系を水性会合型増粘剤組成物と組み合わせ(前記会合型増粘剤は、複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンであり、水性会合型増粘剤組成物は第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせのpKよりも低いpH値で提供される);続いて、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせのpKを超えて、水性ポリマー組成物のpHを上昇させるために十分な量の塩基を添加して、プロトン化第二アミン、またはプロトン化第三アミン、またはプロトン化第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的に脱プロトン化することを含む。増粘された水性ポリマー組成物のpHが、会合型増粘剤の第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせのpKを超える場合に、増粘された水性ポリマー組成物を含む会合型増粘剤の疎水性アミンまたはホスフィン基は実質的に脱プロトン化される。選択的な「または、もしくは(or)」という表現は、組み合わせ「および(and)」も包含し、互換的に使用される。
【0028】
疎水性基中のアミンまたはホスフィン官能基のpK値は、次の方法により実験的に決定できる。25グラムの増粘剤固体を約975グラムの水および十分なリン酸中に均一に分散させて、pH=4で2.5重量%増粘剤固形分の水性増粘剤組成物1000グラムを得る。機械的スターラー、pHメータープローブ、およびBrookfield粘度計を容器に同時に取り付けることができ、水性組成物の撹拌、pH測定および粘度測定を行うことができる。温度は25℃であるべきである。pH測定および粘度測定が記録される間はスターラーは止めるべきである。水性組成物のpHを10%水性アンモニアで最大pH約10.5が得られるまで段階的に上方調整する。アンモニアの各アリコートを添加した後、組成物を5分間撹拌し、pHおよび粘度を測定する。粘度(センチポアズ)を60rpm、スピンドル#3で測定するが、より粘度の高い滴定は、粘度計の読み出しを計測可能な状態に維持するために、スピンドル#4を用いて60rpm以下の速度を必要とする場合がある。粘度を均等目盛りで、均等目盛りのpHに対してプロットする。低いpH値および高いpH値で、水性組成物の粘度はpHと比較的無関係である。中間のpH値で、粘度はよりpHに依存する。粘度がpHから比較的無関係になりはじめる滴定曲線の高いpH端での粘度値は、最大の粘度値とされる。最大粘度値の半分に対応する滴定曲線上の点は、滴定の中点として定義される。会合型増粘剤の疎水性基を含むアミンまたはホスフィン官能基についてのpKは、滴定の中点と関連するpH値として定義される。
【0029】
本明細書において記載される組成物および方法において使用するための水性会合型増粘剤は、従って、主鎖に結合したまたは主鎖内の複数の疎水性基を含む親水性主鎖を含み、ここで、疎水性基の少なくとも1つは、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含む。
【0030】
会合型増粘剤の親水性主鎖は、様々な形態をとることができ、例えば、主鎖は線状、分岐、または架橋していてもよい。様々な異なる種類の主鎖、例えば、ポリエーテル、例えば、ポリオキシアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリサッカライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、またはポリビニルピロリドンを使用することができる。ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドはポリ(メタ)アクリルアミドと総称されうる。一つの実施形態において、親水性主鎖は、アクリル酸のエステルまたはメタクリル酸のエステルを含む(コ)ポリマーを含む。ここでも、アクリル酸およびメタクリル酸は(メタ)アクリル酸と総称でき、関連するエステルは(メタ)アクリル酸のエステル、または(メタ)アクリレートと総称されうる。好ましくは、主鎖は非イオン性である。(メタ)アクリル酸の好適なエステルの例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、すなわち、HEAまたはHEMAが挙げられる。
【0031】
一つの実施形態において、主鎖はセルロース系主鎖ベースのポリサッカライド、例えば、ヒドロキシエチルセルロース主鎖である。従って、会合型増粘剤は、長さが10より長いサッカライド単位の1以上のサッカライドセグメントを含む主鎖を有し得る。
【0032】
もう一つ別の実施形態において、ポリエーテル会合型増粘剤はポリオキシアルキレンセグメントのビルディングブロック、例えば、ポリエチレングリコールビルディングブロックベースである。例えば、会合型増粘剤は、長さが10オキシアルキレン単位より長い1以上のポリアルキレンセグメントを含む主鎖を有し得る。本明細書において用いられる場合、「オキシアルキレン」なる用語は、−(O−A)−(式中、O−AはC2−8アルキレンオキシドの重合反応生成物のモノマー残基を表す)を有する単位を意味する。オキシアルキレンの例としては、これに限定されないが:構造−(OCHCH)−を有するオキシエチレン;構造−(OCH(CH)CH)−を有するオキシプロピレン;構造−(OCHCHCH)−を有するオキシトリメチレン;および一般構造−(OC)−を有するオキシブチレンが挙げられる。これらの単位を含有するポリマーは、「ポリオキシアルキレン」と呼ばれる。ポリオキシアルキレン単位は、ホモポリマー系であっても、コポリマー系であってもよい。ポリオキシアルキレンのホモポリマーの例としては、これに限定されないが、ポリオキシエチレン(オキシエチレンの単位を含有する);ポリオキシプロピレン(オキシプロピレンの単位を含有する);ポリオキシトリメチレン(オキシトリメチレンの単位を含有する);およびポリオキシブチレン(オキシブチレンの単位を含有する)が挙げられる。ポリオキシブチレンの例としては、1,2−オキシブチレン、−(OCH(C)CH)−の単位を含有するホモポリマー;およびポリテトラヒドロフラン、1,4−オキシブチレン、−(OCHCHCHCH)−の単位を含有するホモポリマーが挙げられる。
【0033】
あるいは、ポリオキシアルキレンセグメントは、2以上の異なるオキシアルキレン単位を含有するコポリマーであり得る。異なるオキシアルキレン単位はランダムに配列されて、ランダムポリオキシアルキレンを形成できるか;またはブロックで配列されて、ブロックポリオキシアルキレンを形成することができる。ブロックポリオキシアルキレンポリマーは、2以上の隣接するポリマーブロックを有し、隣接するポリマーブロックのそれぞれは異なるオキシアルキレン単位を含有し、各ポリマーブロックは少なくとも2つのオキシアルキレン単位を含有する。オキシエチレンは好ましいオキシアルキレンセグメントである。
【0034】
さらに別の実施形態において、ポリオキシアルキレンセグメントは、非ポリオキシアルキレンセグメントと結合するか、または結合(linkage)である。ポリオキシアルキレン単位が多官能性イソシアネートと結合する場合、疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤は当該分野において公知のようにして生成される。これらの増粘剤は、ポリオキシアルキレン単位を結合する結合以外の尿素結合、エステル結合またはエーテル結合も含有し得る。多官能性イソシアネートは、脂肪族、脂環式、または芳香族であることができ;単独または2以上の混合物、例えば、異性体の混合物で使用できる。好適な有機ポリイソシアネートの例としては、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−デカメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(イソシアナトシクロヘキサン)、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、m−およびp−フェニレンジイソシアネート、2,6−および2,4−トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー、ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット、およびトリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートが挙げられる。
【0035】
ポリオキシアルキレンセグメントがゲム(gem)−ジハライド試薬と結合される場合、疎水的に修飾されたポリアセタールポリエーテルおよびポリケタールポリエーテル会合型増粘剤が生成する。好適なゲム−ジハライド試薬としては、ジハロゲノメタン、例えば、ジブロモメタンおよびジクロロメタン;1,1−ジクロロトルエン、1,1−ジクロロエタン、および1,1−ジブロモメタンが挙げられる。ポリオキシアルキレン単位がアミノプラスト試薬と結合している場合、疎水的に修飾されたポリアミノプラストポリエーテル会合型増粘剤が生成する。ポリオキシアルキレン単位がエピハロヒドリンまたはトリハロアルカン試薬と結合している場合、疎水的に修飾されたポリEPIポリエーテル会合型増粘剤が生成し、ここでEPIは、エピハロヒドリン試薬またはトリハロアルカン試薬のアミン、アルコール、またはメルカプタンとの反応の残基を表す。従って、会合型増粘剤は、長さが10オキシアルキレン単位より長い1以上のポリオキシアルキレンセグメント、並びに(i)ウレタンセグメント、(ii)尿素セグメント、(iii)エステルセグメント、(iv)エーテルセグメント、(v)アセタールセグメント、(vi)ケタールセグメント、(vii)アミノプラストセグメント、(viii)エピハロヒドリンのアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(ix)トリハロアルカンのアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(x)前記の組み合わせから選択される1以上のセグメントを含む主鎖を有しうる。
【0036】
前述のように、増粘剤主鎖と結合しているか、または増粘剤主鎖内の少なくとも1つの疎水性基は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせ、および任意に第四アミンを含有し、これは増粘剤を含有する水性組成物のpHに応じて、疎水性基の水溶性を調節する。
【0037】
本明細書において、第二アミンは、1つの水素および2つの炭素とのみ結合する窒素として定義され、ここで、2つの隣接する炭素のいずれもカルボニルまたはチオニルとして分類されない。カルボニルは、酸素への二重結合を有する炭素である。従って、アミド、ウレタンまたは尿素基の部分として分類できる窒素は第二アミンでない。チオニルは硫黄への二重結合を有する炭素である。窒素ラジカルに隣接する2つの炭素は、それらに結合した水素および炭素をはじめとする他の原子または原子群を有することができる。ただし、原子群の少なくとも1つは増粘剤主鎖との共有結合を含む。窒素ラジカルに隣接する2つの炭素と結合する原子群は、結合して、複素環式窒素部分を形成することができる。任意に、アミン基は、対応するアミンオキシドに酸化されうる。
【0038】
本明細書において、第三アミンは、2または3個の炭素のみと結合した窒素として定義され、ここで、隣接する炭素原子は、カルボニルまたはチオニルとして分類されない。従って、アミド、ウレタンまたは尿素基の一部として分類できる窒素は、第三アミンではない。窒素に隣接する2または3個の炭素は、これらと結合する水素および炭素をはじめとする他の原子または原子群を有し得る。ただし、原子群の少なくとも1つは、増粘剤主鎖との共有結合を含む。窒素と隣接する2または3個の炭素と結合する原子群は、結合して複素環式窒素部分を形成することができる。任意に、アミン基は対応するアミンオキシドに酸化されうる。
【0039】
第四アミンは、4個の炭素と結合する窒素として定義される。
【0040】
本明細書において、第三ホスフィンは、前記の第三アミンの構造を有するが、窒素の代わりにリンを有する、いくつかの有機化合物のいずれかとして定義される。
【0041】
会合メカニズムは、粘性発生の原因となる網目構造に関与する各親水性主鎖上の複数(すなわち、2以上)の疎水性基を必要とする。会合型増粘剤において1つだけの第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィンが存在することは、低pHで増粘剤の増粘効率を減少させるために十分であることが判明している。しかしながら、1つの実施形態において、少なくとも2、別の実施形態においては少なくとも3、さらに別の実施形態においては少なくとも5の疎水性基であって、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィンを含む疎水性基が増粘剤分子ごとに存在する。増粘剤の「主鎖と結合しているか、または主鎖内の」とは、これらの疎水性基が主鎖内、主鎖からの側基として、および/または鎖の末端に位置しうることを意味する。「疎水性基」なる用語は、線状および分岐、飽和および不飽和炭化水素ベースの鎖から選択される少なくとも1つの炭化水素ベースの鎖を含む基およびポリマー基から選択される基であって、任意に1以上のヘテロ原子、例えば、P、O、NおよびS、ならびにペルフルオロおよびシリコーン鎖から選択される少なくとも1つの鎖を含む基を含む基を意味する。「疎水性基」なる用語が炭化水素基から選択される基を意味する場合には、疎水性基は少なくとも6個の炭素原子、好ましくは10〜24個の炭素原子を含む。
【0042】
水性増粘剤組成物において、少なくとも10%、特に少なくとも25%、さらに具体的には少なくとも50%、なおいっそう具体的には少なくとも80%の疎水性基は1以上の第二アミンまたは第三アミン、または第三ホスフィン官能基を有する。
【0043】
少なくとも1つの第二アミン官能基を含む疎水性基を生成するために使用できる試薬の例としては、N−オクチルエチレンジアミン、N−ドデシルエチレンジアミン、N−オクチルアミノエタノール、N−ドデシルアミノエタノール、および2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)エタノールが挙げられる。少なくとも1つの第二アミン官能基を含む疎水性基を生成するための別の経路は、第一アミン、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、およびイソトリデシルアミノと、アルキルハライド、エポキシド、またはアミノプラスト試薬との反応を含む。
【0044】
少なくとも1つの第三アミン官能基を含む疎水性基を生成するために使用できる試薬の例としては、2−(ジブチルアミノ)エタノール、2−(ジオクチルアミノ)エタノール、2−(ジヘプチルアミノ)エタノール、2−(ジヘキシルアミノ)エタノール、2−(ジエチルヘキシルアミノ)エタノール、2−(ジココアミノ)エタノール、3−ジブチルアミノプロピルアミン、N−ベンジル、N−メチルエタノールアミン、1−(ジブチルアミノ)−2−ブタノール、2−アミノ−5−ジエチルアミノペンタン、1−(ビス(3−(ジメチルアミノ)プロピル)アミノ)−2−プロパノール、N−ベンジル3−ヒドロキシピペリジン、ジフェニルメチルピペラジン、1−(1−アルキルピペラジン)、1−(1−アリールピペラジン)、1−(2−アミノエチル)−4−ベンジル−ピペラジン、4−アミノ−1−ベンジル−ピペリジン、6−ジプロピルアミノ−1−ヘキサノール、1−ドデシルイソニペコタミドが挙げられる。ジアルキルアミノエタノール化合物のアルコキシル化類似体も好適な試薬である。例えば、1〜100単位のエチレンオキシドでエトキシル化された2−(ジヘキシルアミノ)エタノールが好適な試薬である。
【0045】
特に好ましい一つの実施形態において、会合型増粘剤は、長さが10オキシアルキレン単位より長い1以上のポリオキシアルキレンセグメントを含む主鎖を有し、ジアルキルアミノアルカノールと多官能性イソシアネート、ポリエーテルジオール、および任意にポリエーテルトリオールとの反応生成物を含む、疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテルである。好ましくは、ポリエーテルジオールは、2000から12000の間、好ましくは6000から10000の間の重量平均分子量を有する。
【0046】
従って、水性ポリマー系の粘度を増大させる好ましい方法は:(a)水性ポリマー系と水性増粘剤組成物を組合わせること、(ここで、当該水性増粘剤組成物は(i)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は長さが10オキシアルキレン単位よりも長い1以上のポリオキシアルキレン含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は、前記主鎖に結合しているか、または前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンであり、ここで当該会合型増粘剤は、ジアルキルアミノアルカノールと、多官能性イソシアネート、2000から12000の間、好ましくは6000から10000の間の重量平均分子量を有するポリエーテルジオール、および任意にポリエーテルトリオールとの反応生成物を含む、疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテルである;(ii)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;(iii)40重量%〜99重量%の水;並びに(iv)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせを含む);並びに(b)プロトン化第二アミン、またはプロトン化第三アミン、またはプロトン化第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的に脱プロトン化するために十分な量の塩基を添加することを含む。
【0047】
少なくとも1つの第三アミン官能基を含む疎水性基を生成するための別の経路は、第二アミン、例えば、ジオクチルアミン、ジヘキシルアミン、およびジエチルヘキシルアミンと、アルキルハライド、エポキシド、またはアミノプラスト試薬との反応を含む。これらの試薬は、ポリマー鎖の末端上に疎水性基を提供するために使用される。少なくとも1つの第三アミン官能基を含む疎水性基を生成するために使用できる試薬のさらなる例としては、前記の対応するアミンオキシド、例えば、2−(ジブチルアミノ)エタノールN−オキシド、2−(ジオクチルアミノ)エタノールN−オキシド、およびN−ベンジル3−ヒドロキシピペリジンN−オキシドが挙げられる。
【0048】
少なくとも1つの第三アミン官能基を含む疎水性基を生成するために使用できる試薬であって、窒素が2つの炭素のみとの結合を有するものの例としては、ピリジン誘導体、例えば、アルキル−またはアリール−置換ヒドロキシピリジン誘導体、アルキル−またはアリール−置換アミノピリジン誘導体、キノリン誘導体、例えば、ヒドロキシキノリン、アミノキノリン、8−エチル−4−キノリノール、および6−アミノ−1,10−フェナンスロリン、ピラゾールおよびピラゾリン誘導体、例えば、3−アミノ−5−フェニルピラゾールおよび5−アミノインダゾール、イミダゾール誘導体、例えば、2−ベンズイミダゾールメタノール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、および2−メルカプト−1−ヘキシルイミダゾール、オキサゾール誘導体、例えば、オキサゾール−2−イル−フェニルメタノール、2−アミノ−5−エチル−4−フェニルオキサゾール、4−(5−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)フェニルアミン、およびイミン誘導体、例えば、アルファ−(2−ブチルイミノ)−p−クレゾール、N−(ベンジリデン)エタノールアミン、および1−((2−ヒドロキシエチル)イミノメチル)ナフタレンが挙げられる。好適な試薬のさらなる例は、前記化合物のいずれかの対応するアミンオキシドである。
【0049】
少なくとも1つの第三アミン官能基を含む疎水性基を生成するために使用できる試薬のさらなる例は、一般式
【0050】
【化1】

【0051】
(式中、Rは、少なくとも10個の炭素原子を含有する疎水性基であり、sおよびtはそれぞれ少なくとも1であり、合計(s+t)は2から約50である)を有するジオール類を包含する。R基は線状または分岐、飽和または不飽和および脂肪族または芳香族のいずれかであり得る。代表的なジオールは、Ethomeen(商標)の商品名で、Akzo Nobel Chemicals B.V.(Amersfoort,Netherlands)から入手可能である。例としては、ビス(2−ヒドロキシエチル)ココアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)セチルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)タローアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ソヤアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソデシルオキシプロピルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソトリデシルオキシプロピルアミン、ビス(2−ヒドロキシエチル)線状アルキルオキシプロピルアミン、およびそのエトキシル化物が挙げられる。さらに、前記物質の対応するアミンオキシドを使用できる。これらの試薬は、ポリマー鎖内およびポリマー鎖からの側基としての位置にある疎水性基を提供するために使用される。
【0052】
少なくとも1つの第二および/または第三アミン官能基を含む疎水性基を生成させるために使用できる試薬のさらなる例としては、第一アミンおよび/または第二アミンとモノもしくはジグリシジルエーテル誘導体または他のモノもしくはジエポキシ誘導体との反応により調製されるジオール類が挙げられる。好適なエポキシ化合物の例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびシクロヘキサンジメタノールなどの様々なジオールのモノ−またはジ−グリシジルエーテルが挙げられる。好適なアミンの例としては、1−ヘキシルアミン、3−オクチルアミン、1−イソトリデシルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジフェニルアミン、およびアルキルアニリンが挙げられる。例えば、2モルのジオクチルアミンと1モルのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルとの反応は、対応するエポキシ−アミン付加物、ポリ(エチレングリコール)のビス[3−(ジオクチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]エーテルを生じさせる。従って、会合型増粘剤は、長さが10オキシアルキレン単位より長い、1以上のポリオキシアルキレンセグメントを含む主鎖を有することができ、エポキシ−アミン付加物と多官能性イソシアネートおよびポリエーテルジオールとの反応生成物を含む疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテルであり、ここで、前記エポキシアミン付加物は、第一または第二アミンとモノもしくはジグリシジルエーテル誘導体または他のモノ−もしくはジ−エポキシ誘導体との反応から誘導される。好ましくは、ポリエーテルジオールは、2000から12000の間、好ましくは6000から10000の間の重量平均分子量を有する。
【0053】
従って、水性ポリマー系の粘度を増大させるための好ましい方法は、(a)水性ポリマー系と水性増粘剤組成物とを組合わせること、〔ここで、前記水性増粘剤組成物は、(i)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は長さが10オキシアルキレン単位より長い1以上のポリオキシアルキレンセグメントを含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は、前記主鎖と結合しているか、または前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、(ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンであり、前記会合型増粘剤は、エポキシ−アミン付加物と、多官能性イソシアネートおよび2000から12000、好ましくは6000〜10000の間の重量平均分子量を有するポリエーテルジオールとの反応生成物を含む疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテルであり、前記エポキシ−アミン付加物は、第一または第二アミンとモノ−もしくはジ−グリシジルエーテル誘導体または他のモノ−もしくはジ−エポキシ誘導体との反応から誘導される);(ii)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;(iii)40重量%〜99重量%の水;並びに(iv)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせを含む〕;並びに(b)プロトン化第二アミン、またはプロトン化第三アミン、またはプロトン化第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的に脱プロトン化するために十分な量の塩基を添加することを含む。
【0054】
少なくとも1つの第三アミン官能基を含む疎水性基を生成するために使用できる試薬のさらなる例としては、N−アルキルトリメチレンジアミンとオキシアルキレン、例えば、エチレンオキシドとの反応生成物(Ethoduomeen(商標)の商品名でAkzo Nobel Chemicals B.V.から入手可能)が挙げられる。
【0055】
少なくとも1つの第三ホスフィン官能基を含む疎水性基を生成するために使用できる試薬の例としては、2−(ジアルキルホスフィノ)エチルアミン、3−(ジアルキルホスフィノ)プロピルアミン、ジアルキルヒドロキシメチルホスフィン、ジアルキルヒドロキシエチルホスフィン、ビス(ヒドロキシメチル)アルキルホスフィン、ビス(ヒドロキシエチル)アルキルホスフィンなどが挙げられる。具体例としては、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン、3−(ジフェニルホスフィノ)プロピルアミン、2−(ジヘキシルホスフィノ)エチルアミン、2−(ジオクチルホスフィノ)エチルアミン、ビス−(ヒドロキシメチル)ヘキシルホスフィン、ビス−(ヒドロキシメチル)オクチルホスフィンが挙げられる。例えば、これらの試薬はポリウレタンベースの会合型増粘剤中に組み入れることができる。
【0056】
少なくとも1つの第三ホスフィン官能基を含む疎水性基を生成させるために使用できる試薬の他の例としては、ジアルキルホスフィン、例えば、ジヘキシルホスフィン、ジオクチルホスフィン、ジベンジルホスフィン、ジフェニルホスフィン、ビス(ドデシル)ホスフィンなどが挙げられる。例えば、これらの試薬は、エポキシまたはアルキルハライド官能基との反応を介してまたは二重結合への付加により、会合型増粘剤組成物中に組み入れることができる。
【0057】
会合型増粘剤中の疎水性基の全てが第二アミンまたは第三アミンまたは第三ホスフィンを含む必要はない。第二アミンまたは第三アミンまたは第三ホスフィンを含まない疎水性基を形成するために使用できる試薬の例としては、分岐または線状脂肪族アルコール、アルキルアリールアルコール、脂肪族アミンおよびp−アルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。試薬は、一官能性または多官能性であってよい。好適な分岐脂肪族アルコールの例としては、2−ブチル1−オクタノール、2−ブチル1−デカノール、2−ヘキシル1−オクタノール、2−ヘキシル1−デカノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、およびイソウンデシルアルコールが挙げられる。好適な線状脂肪族アルコールの例としては、1−ヘキサデカノール、1−テトラデカノール、1−ドデカノール、1−ウンデカノール、1−デカノール、1−ノナノール、1−オクタノール、1−ヘキサノール、1,2−ヘキサデカンジオール、および1,16−ヘキサデカンジオールが挙げられる。好適なアルキルアリールアルコールの例としては、ノニルフェノールおよびトリスチリルフェノールが挙げられる。好適な脂肪族アミンの例としては、1−デシルアミン、1−オクチルアミン、1−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジヘキシルアミンが挙げられる。好適なp−アルキレングリコールモノアルキルエーテルの例としては、アルキルエトキシレートであって、アルキル基が1個の炭素から24個の炭素の範囲であるものが挙げられる。
【0058】
会合型増粘剤中のアミン官能基をプロトン化するために有機または無機酸を使用できる。好適な酸としては、例えば、リン酸、酢酸、塩酸、硫酸、クエン酸、炭酸、アスコルビン酸、グリコール酸、イソスコルビン酸、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、メタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、無水マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、スチレンスルホネートのホモポリマーおよびコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリリン酸、ホスホエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、アルファヒドロキシ酸およびトランス桂皮酸が挙げられる。1000から5000の間の分子量を有するリン酸およびポリアクリル酸が好ましい。
【0059】
増粘剤および酸を組み合わせて、水性増粘剤組成物を提供することができる。本明細書において用いられる場合、「水性増粘剤組成物」(または「水性増粘剤ポリマー組成物」または「水性会合型増粘剤組成物」)なる用語は、有機溶媒よりも主に水中で提供される組成物を意味するが、少量の水混和性有機溶媒が存在し得る。好ましくは、水性増粘剤組成物は、水性増粘剤組成物の重量基準で、5重量%未満の水混和性溶媒、さらに好ましくは2重量%未満の水混和性溶媒、最も好ましくは1重量%未満の水混和性溶媒を含む。一つの実施形態において、水性増粘剤組成物中に有機溶媒は存在しない。
【0060】
水性増粘剤組成物は、組成物の粘度を減少させるために有用な他の任意の添加剤をさらに含むことができる。実施形態は、アミンまたはホスフィン官能基が完全にプロトン化されていない場合、すなわち、組成物のpHを2.5〜6のpH範囲のより高い端限界に調節することが望まれる場合に、特に有用である。好適な粘度抑制添加剤としては、例えば、界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホスクシネート、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルエトキシレートおよびアルキルアリールエトキシレート;シクロデキストリン化合物、例えば、シクロデキストリン(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンを含む)、シクロデキストリン誘導体、シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトース、シクロイヌロオクトース、カリックスアレーン(calyxarene)、およびキャビタンド(cavitand)が挙げられる。「シクロデキストリン誘導体」とは、α-シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリンであって、シクロデキストリン環の縁上に位置する少なくとも1つのヒドロキシル基が、メチル、アセチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル基などの置換基で官能化されているものを意味する。シクロデキストリン誘導体は、1種より多い置換基を有するシクロデキストリン分子をはじめとする複数の置換基を有するシクロデキストリン分子も含む。シクロデキストリン誘導体は1より多い結合したシクロデキストリン環を有するポリマーを含まない。好ましいシクロデキストリン誘導体は、メチル−β−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、特にメチル−β−シクロデキストリンである。界面活性剤は粘度の減少においてシクロデキストリン化合物の有効性を低下させるので、シクロデキストリン化合物が水性増粘剤ポリマー組成物に添加される場合、界面活性剤を使用しないのが好ましい。
【0061】
水性増粘剤組成物の調製のための一つの実施形態において、前記の種類の会合型増粘剤は、まず、酸が添加されていない水中に溶解または分散させ;酸の量が、水性増粘剤組成物のpHをpH2.5〜6に調節するために十分であるような、十分な酸を次に添加する。もう一つ別の実施形態において、酸または全酸の一部をまず水とあらかじめ混合し、次に会合型増粘剤ポリマーを続いて撹拌しながら酸および水の混合物中に溶解または分散させ、必要ならば、追加の酸を添加する。他の添加剤、例えば、水混和性有機溶媒またはシクロデキストリン化合物を組成物中に任意の時点で組み入れることができる。
【0062】
有利な特性において、水性会合型増粘剤組成物は25℃で注ぐことができる。組成物は500cps〜15000cps、特に10000cps未満、さらに詳細には5000cps未満の粘度を有し得る。特定の実施態様において、組成物は有機溶媒および/または他の粘度低下添加剤、例えば、シクロデキストリン化合物を添加しなくても注ぐことができる。
【0063】
さらに別の有利な特性において、水性会合型増粘剤組成物は広範囲の固形分含量を含有するように配合することができる。例えば、水性会合型増粘剤組成物は、水性会合型増粘剤組成物の合計重量基準で、1重量%〜60重量%増粘剤固形分、特に5重量%〜40重量%増粘剤固形分、さらに具体的には15重量%〜25重量%増粘剤固形分を含むことができる。組成物は、水性会合型増粘剤組成物の合計重量基準で、40重量%〜99重量%水性溶液、特に60重量%〜95重量%水性溶液、さらに具体的には、75重量%〜85重量%水性溶液をさらに含む。前述のように、「水性溶液」は5重量%までの水混和性有機溶媒を含むことができる。組成物の粘度をさらに減少させるために使用される任意の添加剤は、水性会合型増粘剤組成物の合計重量基準で、0重量%〜15重量%、特に1重量%〜10重量%、さらに具体的には1重量%〜3重量%の量で存在することができる。
【0064】
増粘される水性組成物中に水性会合型増粘剤を組み入れるための混合技術は、従来の混合装置、例えば、機械的実験室用撹拌機、高速分散機、ボールミル、サンドミル、ペブルミル、およびパドルミキサーを包含する。水性会合型増粘剤組成物は、水性ポリマー組成物中に、水性組成物の重量基準で、0.005重量%〜20重量%、好ましくは0.01重量%〜10重量%、最も好ましくは0.05重量%〜5重量%の量で組み入れることができる。
【0065】
水性会合型増粘剤組成物が添加される典型的な水性ポリマー系は、塗料、例えば、ラテックス塗料;分散された顔料グラインド;コーティング、例えば、装飾用および保護コーティング;木材着色剤;化粧品、パーソナルケア用品、例えば、シャンプー、ヘアコンディショナー、ハンドローション、ハンドクリーム、収斂剤、脱毛剤、および制汗剤;接着剤;シーラント;インク;セメント質コーティング;ジョイントコンパウンドおよび他の建築材料;掘削流体;局所用医薬;クリーナー;織物柔軟剤;殺虫剤および農業用組成物;紙または板紙コーティング配合物;織物配合物;および不織布配合物を包含する。
【0066】
一つの実施形態において、増粘される水性ポリマー系は、ラテックス組成物である。ラテックス組成物は、水性媒体中に分散された独立したポリマー粒子を含有する。かかるラテックス組成物の例としては、ラテックスエマルジョンポリマー、例えば、これに限定されないが、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルアセテートまたは他のエチレン性不飽和モノマーを含むポリマー;ラテックス塗料;塗料またはコーティング用のあらかじめブレンドされた配合物;織物配合物;不織布配合物;皮革コーティング;紙または板紙コーティング配合物;および接着剤が挙げられる。
【0067】
もう一つ別の実施形態において、水性会合型増粘剤ポリマー組成物は、アミンまたはホスフィン基が前述のようにプロトン化されるように、ラテックスエマルジョンポリマーまたは他の水性ポリマー系とともに、低いpHで供給することができる。例えば、水性会合型増粘剤ポリマーのプロトン化アミンまたはホスフィン基を実質的に脱プロトン化するために十分な量の塩基を添加して、粘度を増大させることを含むことができ、さらなる配合段階においてpHを上昇させることができる。従って、有利には、ラテックスエマルジョンポリマーは潜在的増粘剤とともに供給され、これは後に水性塗料組成物中に配合され、塗料の配合中に所望の粘度増加をもたらす。
【0068】
任意に、水性ポリマー組成物は他の成分、例えば、顔料、フィラー、およびエキステンダー、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、クレイ、マイカ、タルク、およびシリカ;界面活性剤;塩;緩衝液;pH調節剤、例えば、塩基および酸;殺生物剤;殺かび剤;湿潤剤;消泡剤;分散剤;顔料;染料;水混和性有機溶媒;凍結防止剤;腐蝕抑制剤;接着促進剤;ワックス;架橋剤;および当該分野において公知の他の配合添加剤を含むことができる。
【実施例】
【0069】
以下の実施例は本発明の方法および組成物を説明するために提示される。これらの実施例は、当業者が本発明を理解を助けることを目的とする。しかしながら、本発明はこれによりなんら限定されない。
【0070】
以下の略号が実施例において使用される:
HMDI 4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
IPDI イソホロンジイソシアネート
HDI ヘキサメチレンジイソシアネート
PEG ポリエチレングリコール
HEUR 疎水的に修飾されたエチレンオキシドウレタンポリマー
SEC サイズ排除液体クロマトグラフィー
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
Mw 重量平均分子量
Mn 数平均分子量
【0071】
会合型増粘剤の重量平均分子量(Mw)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて決定した。分離は、室温で、Agilent 1100型アイソクラチックポンプおよび自動注入装置(Waldbronn、Germany)、およびPolymer Laboratories ELS−1000型蒸発光散乱検出器(Polymer Laboratories,International,Ltd.,Church Stretton、UK)からなる液体クロマトグラフで行った。検出器は140℃ネブライザー、180℃エバポレーター、および1.5リットル/分ガス流速で操作した。システム制御、データ取得、およびデータ処理は、Cirrus(登録商標)ソフトウェアのバージョン3.0(Polymer Laboratories、Church Stretton、UK)を用いて行った。サンプルを2ミリグラム/ミリリットル(mg/ml)の濃度でN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、HPLC等級)中で調製し、6時間、80℃で振盪し、0.45ミクロンのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを用いて濾過した。SEC分離をDMAc(HPLC等級)中、0.5ミリリットル/分(mg/ml)で、Polymer Laboratories(Church Stretton、UK)から購入した、ポリスチレン−ジビニルベンゼンゲル(孔サイズ100Å、10Åおよび10Å、粒子サイズ5ミクロン)で充填された3つのPLgel(商標)カラム(300×7.5mmID)からなるSECカラムセットを用いて行った。注入体積は、2mg/mlの濃度のサンプル溶液100マイクロリットル(ul)であった。分析サンプルのモル質量特性は、ポリエチレングリコール/オキシド(PEG/PEO)標準(これもPolymer Laboratories(Church Stretton、UK)から購入)に基づいて計算した。
【0072】
比較例A
200.0gのPEG(分子量8000)および325.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、8.8gHMDIおよび0.2gジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、3.4gのn−デカノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間維持した。結果として得られた固体ポリマーをトルエン蒸発化後に単離した。Mwは40000と測定された。
【0073】
比較例B
200.0gのPEG(分子量8000)および325.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、8.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、3.1gの1−デシルアミンを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは41000と測定された。
【0074】
比較例C
200.0gのPEG(分子量8000)および325.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、8.8gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、4.7gのジオクチルアミンを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは41000と測定された。
【0075】
増粘剤実施例1
35.0gのPEG(分子量8000)および60.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、1.5gのHMDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、1.0gのジ−n−オクチルアミノエタノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは41000と測定された。
【0076】
増粘剤実施例2
216gのPEG(分子量8000)および22.4gのEthomeen(商標)18/25の混合物を真空下、バッチメルトリアクター中で2時間、115℃に加熱した。Ethomeen(商標)18/25は、合計25単位のエチレンオキシドを有するビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミンである。混合物を105℃に冷却し、9.1gのIPDIおよび0.5gのオクタン酸ビスマス溶液(28%)を添加した。混合物を次に105℃で撹拌しながら20分間保持した。結果として得られた溶融ポリマーをリアクターから取り出し、冷却した。Mwは21000と測定された。
【0077】
増粘剤実施例3
50.0gのPEG(分子量8000)および80.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、2.2gのHMDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、1.4gのジ−2−エチルヘキシルアミノエタノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは47000と測定された。
【0078】
増粘剤実施例4
50.0gのPEG(分子量8000)および100.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、5.0gのHMDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、7.7gのジ−2−エチルヘキシルアミノエタノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは14000と測定された。
【0079】
増粘剤実施例5
50.0gのPEG(分子量8000)および100.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、5.0gのHMDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、3.85gのジ−2−エチルヘキシルアミノエタノールおよび3.1gのジ−ヘキシルアミノエタノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは43000と測定された。
【0080】
増粘剤実施例6
50.0gのPEG(分子量8000)および100.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、5.0gのHMDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、6.7gのジ−2−エチルヘキシルアミノエタノールおよび0.4gのヘキサノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは13000と測定された。
【0081】
増粘剤実施例7
50.0gのPEG(分子量8000)および100.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、5.0gのHMDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、6.2gのジ−ヘキシルアミノエタノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは36000と測定された。
【0082】
増粘剤実施例8
50.0gのPEG(分子量8000)および80.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、1.4gのHDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、1.4gのジ−2−エチルヘキシルアミノエタノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは35000と測定された。
【0083】
増粘剤実施例9
50.0gのPEG(分子量8000)および80.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、1.9gのIPDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、1.4gのジ−2−エチルヘキシルアミノエタノールを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。Mwは48000と測定された。
【0084】
増粘剤実施例10
52.8gのジ−ヘキシルアミンおよび74.9gのPEG−ジグリシジルエーテル(Mn=526)の混合物を窒素雰囲気下、4時間、80℃で撹拌し、続いて2時間100℃で撹拌した。結果として得られたリアクター内容物の核磁気共鳴分析は、約94重量%の純度の所望のエポキシアミン付加物生成物、ポリ(エチレングリコール)のビス[3−(ジヘキシルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル]エーテル(アミンによるオキシランの開環反応から得られる)を示した。150.1gのPEG(分子量8000)、16.1gの前記のエポキシ−アミン付加物、および340.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、7.4gのHMDIおよび0.2gのジブチルスズジラウレートを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに3時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。
【0085】
増粘剤実施例11
50.0gのPEG(分子量8000)および100.0gのトルエンの混合物を共沸蒸留により乾燥した。混合物を90℃に冷却し、5.0gのHMDIおよび0.1gのジブチルスズジラウレートを添加した。90℃で撹拌しながら1時間後、6.2gの2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミンを添加した。混合物を次に90℃で撹拌しながらさらに1時間保持した。結果として得られた固体ポリマーをヘキサンで沈殿させた後に単離した。
【0086】
固体乾燥ポリマーおよび水を50ミリリットル(mL)プラスチック製遠心管中に秤量することにより、増粘剤の水中分散液を製造した。場合によっては、氷酢酸も添加した。管にキャップをし、48時間にわたる連続転動のためにローター上に載せた。各実施例について、水および固体乾燥ポリマーのみを遠心管に添加することにより、最高pHサンプルを得た。酢酸を添加したサンプル中のpH値は、どれだけ酢酸が添加されたかに応じて変化する。一旦均一になったら、サンプルを25℃水浴中で平衡化させ、直後にpHおよび粘度をBrookfield DV−II+LV粘度計で測定した。水性サンプルpH値をCorningのpH計430型(Corning Incorporated,Corning、New York、USA)で測定した。pH計をFisher Scientific(Fair Lawn,New Jersey、USA)から入手したpH=7.0およびpH=4.0緩衝液で補正した。
【0087】
次の実施例および比較例において、目的は、実際の活性固体濃度を維持しつつ、配合者がこれを容易に添加することができるような低い粘度で増粘剤溶液を提供することである。
【0088】
比較例Aの水性組成物
デカノールキャップされたHEUR
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤における疎水性基は第二または第三アミン官能基を含まない。ジイソシアネートリンカーのデカノール上のヒドロキシル官能基との反応の結果、ウレタン残基が得られる。20%増粘剤固形分で、粘度は測定するには高すぎる(いずれのpHでも)。表1に示すように、水性増粘剤溶液粘度は、溶液pHが酸で低下される際に減少しない。
【0089】
【表1】

【0090】
比較例Bの水性組成物
デシルアミンでキャップされたHEUR
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤における疎水性基は第二または第三アミン官能基を含まない。ジイソシアネートリンカーのデシルアミン上のアミン官能基との反応の結果、尿素残基が得られる。20%増粘剤固形分で、粘度は測定するには高すぎる(いずれのpHでも)。表2に示すように、水性増粘剤溶液粘度は、溶液pHが酸で低下する際に減少しない。従って、この場合、pHの低下の結果、大きな粘度変化が得られるが、これは誤った方向への変化である。
【0091】
【表2】

【0092】
比較例Cの水性組成物
ジオクチルアミンでキャップされたHEUR
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤における疎水性基はアミン官能基を含まない。ジイソシアネートリンカーのジオクチルアミン上のアミン官能基との反応の結果、尿素残基が得られる。20%増粘剤固形分で、粘度は測定するには高すぎる(いずれのpHでも)。表3に示すように、水性増粘剤溶液粘度は、溶液pHが酸で低下する際に減少しない。pHの低下の結果、大きな粘度変化が得られるが、この場合も、これは誤った方向への変化である。
【0093】
【表3】

【0094】
水性組成物実施例1
2−(ジオクチルアミノ)−エタノールでキャップされたHEUR
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤中の疎水性基は第三アミン官能基を含む。ジイソシアネートリンカーの2−(ジオクチルアミノ)−エタノール上のヒドロキシル官能基との反応の結果、ウレタン残基が得られる。この増粘剤は、主鎖末端に位置する第三または第二アミン官能基を含む疎水性基の一例である。第三アミン官能基は、添加された酸(この場合は、酢酸)で溶液pHが減少する際にプロトン化される。表4に示すように、水性増粘剤溶液粘度はより低いpH値で抑制される。
【0095】
【表4】

【0096】
水性組成物実施例2
内部C18Ethomeen(商標)HEUR
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤中の疎水性基は第三アミン官能基を含む。ジイソシアネートリンカーのEthomeen(商標)18/25上の2つのヒドロキシル官能基との反応の結果、ウレタン残基が得られる。この増粘剤は、主鎖から分岐した位置にある第三または第二アミン官能基を含む疎水性基の一例である。第三アミン官能基は、添加された酸で溶液pHが減少する際にプロトン化される。表5に示すように、水性増粘剤溶液粘度はより低いpH値で抑制される。
【0097】
【表5】

【0098】
水性組成物実施例3および4
2−(ジエチルヘキシルアミノ)−エタノールでキャップされたHEUR
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤中の疎水性基は第三アミン官能基を含む。ジイソシアネートリンカーの2−(ジエチルヘキシルアミノ)−エタノール上のヒドロキシル官能基との反応の結果、ウレタン残基が得られる。これらの増粘剤は、主鎖の末端に位置する第三または第二アミン官能基を含む疎水性基の例である。サンプルは、20%増粘剤濃度で、酢酸を添加するか、または添加せずに調製した。20%増粘剤実施例3を含有し、酸を添加しないか、または20%増粘剤実施例4を含有し、酸を添加しないサンプルはゲル様固体であった。従って、酸を添加しないサンプル粘度は高すぎて、pHまたは粘度を確実に測定できなかった。酢酸を含有するサンプルは粘度およびpHを確実に測定するために十分粘度が低かった。20%の活性増粘剤濃度は、商業的な注ぐことができる水性増粘剤組成物における典型的な固形分レベルである。データを表6に示す。
【0099】
【表6】

【0100】
水性組成物実施例5
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤中の疎水性基は、2つの異なる第三アミン官能基を含む。ジイソシアネートリンカーの2−(ジエチルヘキシルアミノ)−エタノールおよび2−(ジヘキシルアミノ)−エタノール上のヒドロキシル官能基との反応の結果、ウレタン残基が得られる。
サンプルは、20%増粘剤濃度で、酢酸を添加するか、または添加せずに調製した。20%増粘剤実施例5を含有し、酸を添加しないサンプルはゲル様固体であった。従って、酸を添加しないサンプル粘度は高すぎて、pHまたは粘度を確実に測定できなかった。酢酸を含有するサンプルは粘度およびpHを確実に測定するために十分粘度が低かった。データを表7に示す。
【0101】
【表7】

【0102】
水性組成物実施例6
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤中の疎水性基は、第三アミン官能基および線状アルキル鎖を含む。サンプルは、18%増粘剤濃度で、Acumer(商標)9932を添加するか、または添加せずに調製した。Acumer(商標)9932は、Rohm and Haas Company(Philadelphia、PA、USA)から46%の固形分で供給される、約3000の分子量を有するポリアクリル酸である。水性増粘剤組成物は、9.00gの固体増粘剤実施例6、38.83gの水および2.17gのAcumer(商標)9932を合わせることにより調製した。18%増粘剤実施例6を含有し、酸を添加しないサンプルはゲル様固体であった。従って、酸を添加しないサンプル粘度は高すぎて、pHまたは粘度を確実に測定できなかった。Acumer(商標)9932を含有するサンプルは粘度およびpHを確実に測定するために十分粘度が低かった。データを表8に示す。
【0103】
【表8】

【0104】
水性組成物実施例7
この疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテル会合型増粘剤中のペンダント疎水性基は、第三アミン官能基を含む。18%増粘剤濃度で、Acumer(商標)9932を添加するか、または添加せずに、サンプルを調製した。水性増粘剤組成物は、9.00gの固体増粘剤実施例10、38.83gの水および2.17gのAcumer(商標)9932を組み合わせることにより調製した。18%増粘剤実施例10を含有し、酸を添加しないサンプルはゲル様固体であった。従って、酸を添加しないサンプル粘度は高すぎて、pHまたは粘度を確実に測定できなかった。Acumer(商標)9932を含有するサンプルは粘度およびpHを確実に測定するために十分粘度が低かった。データを表9に示す。
【0105】
【表9】

【0106】
pKaを決定するためのpH滴定に対する粘度の例
25gの増粘剤実施例7を、2.5重量%増粘剤固形分溶液(pH=4)を生成するために十分なリン酸を添加した水中に溶解させた。Brookfield粘度(#3スピンドル、60rpm)は8cps未満であった。濃アンモニアを段階的添加により添加し、pHおよび粘度を5分間撹拌後に測定した。粘度対pH滴定曲線を表10に示されるデータから作成した。最大粘度値は172cpsである。従って、増粘剤実施例7について決定されたpKaは8.7である。
【0107】
【表10】

【0108】
pKa値を表11に示す増粘剤実施例について同様に評価した。
【0109】
【表11】

【0110】
増粘剤性能
部分的または全体的にプロトン化された第二または第三アミン官能基を含む疎水性基を含む会合型増粘剤の使用により得られる性能をラテックス塗料組成物において示す。次の成分を組み合わせることにより、ラテックス塗料組成物、プレペイント#1を調製した:
Kronos4311二酸化チタンスラリー 262.8g
水 150.1g
エチレングリコール 24.3g
Ropaque Ultraプラスチック顔料 49.7g
Rhoplex SG−30バインダー 420.9g
Drewplus L−475消泡剤 4.0g
Texanol造膜助剤 19.2g
Triton X−405界面活性剤 2.5g
Acrysol RM−2020NPR共増粘剤 30.0g
合計 963.5g

Kronos4311は、Kronos Incorporated(Chelmsford、MA、USA)の製品である。Acrysol(商標)RM−2020NPR、Ropaque(商標)UltraおよびRhoplex(商標)SG−30はRohm and Haas Company(Philadelphia,PA,USA)の製品である。Drewplus(商標)L−475はAshland Specialty Chemical Company(Dublin、OH、USA)の製品である。Triton(商標)X−405はDow Chemical Compnay(Midland、MI、USA)の製品である。
【0111】
増粘剤および水を963.5gのプレペイント#1に添加することにより、配合された塗料を得た。完全に配合された塗料の一定固形分を維持するために、添加された増粘剤および水の合計重量は49.5gに等しい。完全に配合された塗料の密度は100ガロンあたり1013ポンド(1.2キログラム/リットル)であった。完全に配合された塗料のpHは8.5〜9.0の範囲であった。
【0112】
配合された塗料は、次の方法により調製した。963.5gのプレペイント#1に、ある量の水性増粘剤分散液およびある量の水をゆっくりと添加し、実験室用ミキサーで10分間撹拌した。水性増粘剤分散液および水の総合計量は49.5グラムである。次のデータ提示において、塗料中の増粘剤濃度は、水性増粘剤組成物が塗料中に混合されていたとしても、添加された増粘剤の乾燥グラムで記載される。例えば、3乾燥グラムの増粘剤の濃度は、20%固形分増粘剤分散液の15グラムを添加することにより塗料において得ることができる。24時間室温で平衡化後、増粘された塗料を1分間、実験室用ミキサーで撹拌した後、粘度値を測定した。
【0113】
「KU粘度」は、Krebs粘度計により測定される中剪断粘度の測定値である。Krebs粘度計はASTM−D562に準拠した回転パドル粘度計である。KU粘度は、Brookfield Engineering Labs(Middleboro、MA、USA)から入手可能なBrookfield Krebs Unit Viscometr KU−1+で測定された。「KU」はKrebs単位を意味する。
【0114】
「ICI粘度」は、ICI粘度計として知られる高剪断速度、円錐および平板粘度計で測定され、ポアズ(poise)の単位で表された粘度である。ICI粘度計は、ASTM−D4287において記載されている。これは、約10000秒−1での塗料の粘度を測定する。塗料のICI粘度は、Research Equipment London,Ltd(London,UK)により製造された粘度計で測定された。等価なICI粘度計は、Elcometer,Incorporated(Rochester Hills、MI、USA)により製造されたElcometer2205である。塗料のICI粘度は、典型的には塗料のブラシ施用の間に経験する牽引力の量に関連する。
【0115】
配合ラテックス塗料における増粘剤性能は、商業的に入手可能な増粘剤の性能に匹敵する(表12)。
【0116】
【表12】

【0117】
Acrysol(商標)SCT−275は、Rohm and Haas Company(Philadelphia、PA、USA)の製品である。
【0118】
前記実施例4を配合した白色塗料は、35gの赤色酸化鉄着色剤を200gのベース塗料に添加し、続いてペイントシェーカーで10分間混合することにより着色した。赤色酸化鉄着色剤は、Sherwin Williams Company(Cleveland、OH、USA)から入手した。KU、ICI、およびBrookfield粘度は、着色後1時間で測定した。粘度測定前に、機械的ミキサーで1分間撹拌した。赤色酸化鉄着色塗料は、それぞれ82、0.6および3800cpsのKU、ICI、およびBrookfield粘度を示し、着色剤が添加された配合物において許容される性能を示した。
【0119】
単数形「a」、「an」、および「the」は、特に明確に記載しない限り、複数の対象を包含する。特に記載しない限り、本明細書において用いられる技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。同じ成分または性質に関する全ての範囲の終点は終点を含み、独立して組み合わせ可能である。本明細書において用いられる場合、「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルおよびメタクリルの両方を包含する。同様に、「ポリ(メタ)アクリルアミド」なる用語は、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドの両方を包含する。
【0120】
本明細書においてすでに記載したように、本発明の会合型増粘剤は、好ましくは非イオン性の水溶性の主鎖を有する。本発明の会合型増粘剤の主鎖中に少量のイオン性基を添加することも想定される。少量のイオン性基は、主鎖モノマー単位の合計重量基準で20重量%未満のイオン性モノマー単位であり、さらに好ましくは5重量%未満である。従って、本発明の会合型増粘剤は、実質的に非イオン性の水溶性の主鎖を有することができ、さらに非イオン性の水溶性の主鎖であると見なされうる。
【0121】
全ての記載された文献は参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤はポリオキシアルキレン、ポリサッカライド、またはポリビニルアルコールを含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;
(b)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;
(c)40重量%〜99重量%の水;並びに
(d)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ:
を含む、水性会合型増粘剤ポリマー組成物。
【請求項2】
会合型増粘剤が、長さが10オキシアルキレン単位より長い1以上のポリオキシアルキレンセグメントを含む主鎖を有する請求項1記載の組成物。
【請求項3】
会合型増粘剤が、長さが10サッカライド単位より長い1以上のサッカライドセグメントを含む主鎖を有する請求項1記載の組成物。
【請求項4】
会合型増粘剤の前記主鎖が、(i)ウレタンセグメント、(ii)尿素セグメント、(iii)エステルセグメント、(iv)エーテルセグメント、(v)アセタールセグメント、(vi)ケタールセグメント、(vii)アミノプラストセグメント、(viii)エピハロヒドリンとアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(ix)トリハロアルカンとアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(x)前記の組み合わせから選択される1以上のセグメントをさらに含む請求項2記載の組成物。
【請求項5】
会合型増粘剤が、ジアルキルアミノアルカノールと、多官能性イソシアネート、2000から12000の間の重量平均分子量を有するポリエーテルジオール、および場合によってポリエーテルトリオールとの反応生成物を含む疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテルである請求項2記載の組成物。
【請求項6】
会合型増粘剤が、エポキシアミン付加物と、多官能性イソシアネートおよび2000から12000の間の重量平均分子量を有するポリエーテルジオールとの反応生成物を含む疎水的に修飾されたポリウレタンポリエーテルであり、前記エポキシアミン付加物が、第一または第二アミンとモノ−もしくはジ−グリシジルエーテル誘導体または他のモノ−もしくはジ−エポキシ誘導体との反応から誘導される、請求項2記載の組成物。
【請求項7】
酸の量が、組成物のpHを2.5〜6.0のpHに調節するために十分である請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
(a)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は実質的に非イオン性の水溶性の主鎖、および前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基を含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;
(b)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;
(c)40重量%〜99重量%の水;並びに
(d)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ:
を含む、水性会合型増粘剤ポリマー組成物。
【請求項9】
実質的に非イオン性の水溶性の主鎖が、ポリオキシアルキレンまたはポリ(メタ)アクリルアミド、またはポリサッカライド、またはポリビニルアルコール、または(メタ)アクリル酸のエステルを含むコポリマーをさらに含む、請求項8記載の水性会合型増粘剤ポリマー組成物。
【請求項10】
水性ポリマー系の粘度を増大させる方法であって、
(a)水性ポリマー系を水性増粘剤組成物と組み合わせること、
ここで、当該水性増粘剤組成物は、
(i)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤はポリオキシアルキレン、ポリサッカライド、またはポリビニルアルコールを含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;
(ii)第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的にプロトン化するために十分な酸;
(iii)40重量%〜99重量%の水;および
(iv)粘度抑制添加剤として、0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ:
を含む;並びに
(b)プロトン化第二アミン、またはプロトン化第三アミン、またはプロトン化第三ホスフィン、またはその組み合わせを実質的に脱プロトン化するために十分な量の塩基を添加すること、
を含む方法。
【請求項11】
(a)水性ポリマー系;および
(b)水性増粘剤組成物
を混合で含むポリマー組成物であって、
前記水性増粘剤組成物は、水性増粘剤組成物の重量を基準にして、
(i)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は、ポリサッカライド、またはポリビニルアルコールを含む主鎖を有し、当該会合型増粘剤は、前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;
(ii)40重量%〜99重量%の水;および
(iii)0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ;を含み、
第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせが実質的にプロトン化されていない;
ポリマー組成物。
【請求項12】
(1)水性ポリマー系;および
(2)水性増粘剤組成物
を混合で含むポリマー組成物であって、
前記水性増粘剤組成物は、水性増粘剤組成物の重量を基準にして、
(a)1重量%〜60重量%の会合型増粘剤、当該会合型増粘剤は長さが10オキシアルキレン単位より長いポリオキシアルキレンセグメント、並びに以下の(i)〜(x)〔(i)ウレタンセグメント、(ii)尿素セグメント、(iii)エステルセグメント、(iv)エーテルセグメント、(v)アセタールセグメント、(vi)ケタールセグメント、(vii)アミノプラストセグメント、(viii)エピハロヒドリンとアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(ix)トリハロアルカンとアルコール、アミン、またはメルカプタンとの反応の残基を含むセグメント、および(x)前述のものの組み合わせ〕から選択される1以上のセグメントを含む主鎖を有するか、または当該会合型増粘剤は疎水的に修飾されたセルロース系ポリマーであり;当該会合型増粘剤は、前記主鎖に結合しているかまたは前記主鎖内の複数の疎水性基をさらに含み、ここで、前記疎水性基の1以上は、第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせを含み、および場合によって第四アミンを含むが、ただし、全アミン官能基の80%未満が第四アミンである;
(b)40重量%〜99重量%の水;および
(c)0重量%〜15重量%の有機補助溶剤、界面活性剤、シクロデキストリン化合物、またはその任意の組み合わせ;を含み、
第二アミン、または第三アミン、または第三ホスフィン、またはその組み合わせが実質的にプロトン化されていない;
ポリマー組成物。

【公開番号】特開2008−231421(P2008−231421A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−53091(P2008−53091)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】