説明

増粘性組成物

【課題】増粘剤の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で示される化合物である(A)成分と、カチオン系界面活性剤である(B)成分とを含有する組成物


(上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)、−O−、又は−S−を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物とカチオン系界面活性剤とを含有し、優れた増粘効果を示す組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
化粧品、トイレタリー製品、及び医薬品等の分野において、使用性を向上させることを目的として、また、非塗布物に対する効果を保持することを目的として、様々な増粘剤が用いられている。増粘剤としては、高分子や、無機化合物、界面活性剤等を組み合わせたものが挙げられ、これらの増粘剤を使用することで、粘度が高い剤型を達成されてきた。
しかし、近年、化粧品、トイレタリー製品、及び医薬品等に用いる場合は、増粘剤を含む製品が、人間の身体に直接触れることになることから、増粘剤を含む組成物にも高い安全性が求められている。特に、身体に対して低刺激性であり、かつ、優れた増粘効果がある組成物が求められ、様々な検討がなされている。
【0003】
特許文献1、2及び非特許文献1では、N−長鎖アシル酸性アミノ酸もしくはその塩を含む特定の組成物が増粘効果を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2005/078039号パンフレット
【特許文献2】特開2008−88077号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Colloidand Interface Science 311(2007)276−284
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2及び非特許文献1で開示された組成物では、増粘効果が不十分であり、身体に安全で、かつ、優れた増粘効果を示す組成物は、未だ得られていない。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、身体に安全で、かつ、優れた増粘効果を示す、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物と、カチオン系化合物と併用することで優れた増粘効果が得られることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は下記に示す通りである。すなわち、本発明は下記に示す通りである。
[1] 下記一般式(1)で示される化合物である(A)成分と、カチオン系界面活性剤である(B)成分とを含有する組成物であり、
(A)成分と(B)成分の質量比が、1:0.8〜1:30であり、かつ、組成物における(A)成分の含有量が、0.25〜30質量%であることを特徴とする組成物。
【化1】


(上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)、−O−、又は−S−を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)
[2] (B)成分が第4級アンモニウム塩であることを特徴とする上記[1]に記載の組成物。
[3] (A)成分と(B)成分の質量比が、1:1.1〜1:30であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] (B)成分である第4級アンモニウム塩の少なくとも一つのアルキル基の鎖長が、14以上22以下であることを特徴とする上記[2]に記載の組成物。
[5] (A)成分が、下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
【化2】


(上記一般式(2)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)、−O−、又は−S−を示し、X’は、カルボキシル基又はその塩、−NHR’’基(R’’は、水素、または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有し、かつ炭素数が1〜20である炭化水素鎖を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。)
[6] 粘度が、2〜10000Pa・sである上記[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 前記組成物の動的粘弾性測定において、
高周波数側では、動的貯蔵弾性率G’>動的損失弾性率G’ ’であり、
低周波数側では、動的貯蔵弾性率G’<動的損失弾性率G’ ’を満たす上記[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、特定の化合物とカチオン系界面活性剤とを併用することで、身体に対して安全であり、かつ、優れた増粘効果を有する組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例4で得られた組成物の動的貯蔵弾性率G’及び動的損失弾性率G’ ’の角周波数依存性のグラフである。
【図2】実施例4で得られた組成物のCole-Coleプロットのグラフである。
【図3】実施例4で得られた組成物の粘度のずり速度依存性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
<概要>
本発明の組成物は、特定の化合物である(A)成分と、カチオン系界面活性剤である(B)成分とを、特定の質量比及び含有量で含む組成物である。
【0011】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分とは、下記一般式(1)で示される化合物である。
【化3】

【0012】
一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である。好ましくは、炭素数が7から17の炭化水素基である。直鎖、分岐鎖、環状鎖、芳香族炭化水素鎖のいずれでもよく、置換基を有していてもよい。
【0013】
一般式(1)において、Rは水素または、炭素数1〜3の炭化水素基である。Rはカルボキシル基かスルホン酸基を有してもよい。炭素数1〜3の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ(イソ)プロピル基、ジヒドロキシ(イソ)プロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基及びスルホエチル基等を挙げることができる。好ましくは、水素である。一般式(1)において、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩である。
【0014】
Yは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩である。好ましくは、カルボキシル基又はその塩である。Yは、種々の塩基性物質との間に塩を形成し得る。塩を形成しうる金属の具体例を以下で挙げる。
【0015】
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム及びリチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム及びマグネシウム等が挙げられる。上記した以外の金属としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、チタン及びジルコニウム、銀等の塩が挙げられる。また、上記した金属を含む塩基性物質としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。有機アミン塩としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等の塩が挙げられる。塩基性アミノ酸塩としては、アルギニン及びリジンの塩が挙げられる。その他にも、アンモニウム塩や多価金属塩等が挙げられる。また、一般式(1)において、Yは上記した塩から任意に選ばれる1種又は2種以上の塩を含んでいてもよい。
【0016】
一般式(1)において、Zは、−NR’−(R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−である。
【0017】
一般式(1)において、Xは、分子量100万以下の炭化水素鎖である。Xは、直鎖でも分枝鎖でも環状鎖でも芳香族炭化水素鎖でもよい。また、Xは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、及びリン酸エステル基等の置換基を有していてもよく、特にカルボキシル基を有していることが好ましい。Xの炭素数は、好ましくは1〜40であり、分子量は28〜2000が好ましい。
【0018】
また、Xがカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基及びリン酸エステル基等を含む場合は、種々の塩基性物質との間に塩を形成してもよい。塩を形成しうる金属及びその金属を含む塩基性物質としては、上記Yの塩が挙げられる。
【0019】
一般式(1)中の括弧内の部分はn個あり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。nは2〜20の整数である。好ましくは、nは2である。また、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。
【0020】
下記一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で示される化合物における、n=2の場合の一例である。その化合物を本発明の(A)成分として用いた場合、優れた増粘効果が見られるため特に好ましい。
【化4】

【0021】
上記一般式(2)において、X’は、カルボキシル基またはその塩、−NHR’’基(R’’は、水素、または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有し、かつ炭素数が1〜20である炭化水素鎖を示す。R、R、Y、Z、j、kは一般式(1)と同様である。
【0022】
一般式(2)において、X’は、カルボキシル基またはその塩を有することが好ましく、Rは水素であることが好ましく、Yは、カルボキシル基であることが好ましく、Zは、−NH−であることが好ましい。
【0023】
<(B)成分>
本発明において、カチオン系界面活性剤である(B)成分として、以下のものが挙げられる。
【0024】
ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド等の脂肪族アミン塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム等のアルキル4級アンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルピジニウム、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム等の環式4級アンモニウム塩、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミン等が挙げられる。
【0025】
この中でも、より好ましいカチオン系界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、エイコシルトリメチルアンモニウムクロライド、エイコシルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロミド等のモノアルキル第4級アンモニウム塩、あるいは、ジパルミチルジメチルアンモニウムクロライド、ジパルミチルジメチルアンモニウムブロミド等のジアルキル第4級アンモニウム塩等や、ジステアリルポリエテノキシメチルアンモニウムクロライド、トリステアリルポリエテノキシアンモニウムブロミド等のヒドロキシアルキル基を有するカチオン界面活性剤や、や、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミド、ジステアラミドプロピルメチルアミン等のアミドアミン型カチオン界面活性剤、Nα-ココイル-L-アルギニンエチルエステル・DL-ピロリドンカルボン酸塩、Nα-ココイル-L-アルギニンメチルエステル・グルタミン酸塩等カチオン界面活性剤が挙げられる。
【0026】
増粘効果の観点から、成分(B)としては第4級アンモニウム塩がさらに好ましい。第4級アンモニウム塩の中でも、第4級アンモニウム塩の少なくとも一つのアルキル基の鎖長が、14以上22以下であるものが特に好ましい。ここで鎖長とは、アルキル基が有する炭素数のことである。14以上22以下の鎖長は、成分(A)の化合物が有する疎水基の炭素数と同等以上であるため、成分(A)と成分(B)からなる複合体が紐状のミセルを形成し易くなり、粘度がより向上する。少なくとも一つのアルキル基の鎖長が、14以上22以下である第4級アンモニウム塩としては、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0027】
<組成比・含有量>
本発明において、(A)成分と(B)成分の質量比が、1:0.8〜1:30であり、かつ、組成物における(A)成分の含有量が、0.25〜30質量%である。
【0028】
(A)成分と(B)成分の質量比が、1:0.8〜1:30の範囲であることによって、(A)成分と(B)成分が複合体を形成するため、増粘効果が発生する。そして、組成物における(A)成分の含有量が、0.25質量%以上であることにより、より複合化が進み、複合体の形成が活発化するため、増粘効果が極めて高くなる。したがって、(A)成分と(B)成分の質量比が、1:0.8〜1:30であることだけでなく、組成物における(A)成分の含有量が、0.25質量%以上であることによって、極めて高い増粘効果が得られるのである。また、べたつきなどの感触を抑える観点からは、(A)成分の含有量は、30質量%以下であることが望ましい。
【0029】
さらに好ましくは、(A)成分に対する(B)成分のモル比率が、2〜67の範囲である組成物であり、極めて優れた増粘効果を示す。
【0030】
(A)成分と(B)成分のより好ましい質量比としては、1:0.8〜1:10であり、さらに好ましくは、1:0.8〜1:3であり、特に好ましくは、1:1.1〜1:3である。
【0031】
(A)成分の含有量のより好ましい範囲としては、0.25〜10質量%であり、さらに好ましくは、0.25〜3質量%である。
【0032】
<添加剤>
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでもよい。添加剤としては、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、油分、油溶性薬剤等が挙げられる。
【0033】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
レシチン、高分子乳化剤、グリセリン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル等のポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール類、モノステアリン酸エチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド類、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等を挙げる事ができる。
【0034】
この中でも特に好ましいノニオン系界面活性剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノオレイン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル、デカオレイン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が、挙げられる。
【0035】
両性界面活性剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエトキシエチル−N−カルボキシエチルエチレンジアミン2ナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アシル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のラウリルアミノプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0036】
この中でも特に好ましい両性界面活性剤としては、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、塩化アルキルジアミノエチルグリシン、ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエトキシエチル−N−カルボキシエチルエチレンジアミン2ナトリウム等のグリシン型両性界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アシル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のラウリルアミノプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤等を挙げる事ができる。
【0037】
アニオン系界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及びその塩等のアルキルエーテルカルボン酸型アニオン系界面活性剤、N−アシルサルコシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩等のN−アシル有機酸塩型アニオン系界面活性剤、α―オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型アニオン系界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩等の硫酸塩型アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩型アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類等が挙げられる。
この中でも特に好ましいアニオン系界面活性剤はとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及びその塩等のアルキルエーテルカルボン酸型アニオン系界面活性剤、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩等のN−アシル有機酸塩型アニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩類等を挙げる事ができる。
【0038】
油分としては、以下のものが挙げられる。
セタノール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ダイマージオール等の高級アルコール類、ベンジルアルコール等のアラルキルアルコール及び誘導体、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、イソヘキサデカン酸、アンテイソヘンイコサン酸、長鎖分岐脂肪酸、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸等の高級脂肪酸類及びそのアルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、カリウム、ナトリウム塩等の金属石けん類、及びアミド等の含窒素誘導体類、流動パラフィン(ミネラルオイル)、重質流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ポリブテン、スクワラン、オリーブ由来スクワラン、スクワレン、ワセリン、固型パラフィン等の炭化水素類、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、みつろう、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー等のワックス類、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマシ油、アボカド油、ゴマ油、茶油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ククイナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、パーシック油、ティートリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、カカオ脂、シア脂、水素添加ヤシ油、水素添加ヒマシ油、ホホバ油、水素添加ホホバ油等の植物油脂類、牛脂、乳脂、馬脂、卵黄油、ミンク油、タートル油等の動物性油脂類、鯨ロウ、ラノリン、オレンジラッフィー油等の動物性ロウ類、液状ラノリン、還元ラノリン、吸着精製ラノリン、酢酸ラノリン、酢酸液状ラノリン、ヒドロキシラノリン、ポリオキシエチレンラノリン、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、ラノリンアルコール、酢酸ラノリンアルコール、酢酸(セチル・ラノリル)エステル等のラノリン類、レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質、ホスファチジン酸、リゾレシチン等のリン脂質類、水素添加大豆リン脂質、部分水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質、部分水素添加卵黄リン脂質等のリン脂質誘導体類、コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、フィトステロール、コール酸等のステロール類、サポゲニン類、サポニン類、酢酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイルサルコシンイソプロピル等のアシルサルコシンアルキルエステル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、硬質ラノリン脂肪酸コレステリル、長鎖分岐脂肪酸コレステリル、長鎖α−ヒドロキシ脂肪酸コレステリル等のステロールエステル類、リン脂質・コレステロール複合体、リン脂質・フィトステロール複合体等の脂質複合体、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ヘキシルデシル、イソステアリン酸オクチルドデシル、パリミチン酸セチル、パルミチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、オクタン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸オクチル、イソノナン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソデシル、ネオペンタン酸イソトリデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオデカン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ラノリン脂肪酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エルカ酸オクチルドデシル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、オレイン酸エチル、アボカド油脂肪酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル、セバチン酸ジエチル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジブチルオクチル、アジピン酸ジイソブチル、コハク酸ジオクチル、クエン酸トリエチル等のモノアルコールカルボン酸エステル類、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、モノイソステアリン酸水添ヒマシ油等のオキシ酸エステル類、トリオクタン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、水添ロジントリグリセリド(水素添加エステルガム)、ロジントリグリセリド(エステルガム)、ベヘン酸エイコサン二酸グリセリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジオレイン酸プロピレングリコール、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、水素添加ロジンペンタエリスリチル、トリエチルヘキサン酸ジトリメチロールプロパン、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパン、トリエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、ノナイソステアリン酸ポリグリセリル−10、デカ(エルカ酸/イソステアリン酸/リシノレイン酸)ポリグリセリル−8、(ヘキシルデカン酸/セバシン酸)ジグリセリルオリゴエステル、ジステアリン酸グリコール(ジステアリン酸エチレングリコール)、ジネオペンタン酸3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジネオペンタン酸2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール脂肪酸エステル類、ダイマージリノール酸ジイソプロピル、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノレイル水添ロジン縮合物、ダイマージリノール酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテル等のダイマー酸若しくはダイマージオールの誘導体、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(コカミドMEA)、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(コカミドDEA)、ラウリン酸モノエタノールアミド(ラウラミドMEA)、ラウリン酸ジエタノールアミド(ラウラミドDEA)、ラウリン酸モノイソプロパノールアミド(ラウラミドMIPA)、パルミチン酸モノエタノールアミド(パルタミドMEA)、パルミチン酸ジエタノールアミド(パルタミドDEA)、ヤシ油脂肪酸メチルエタノールアミド(コカミドメチルMEA)等の脂肪酸アルカノールアミド類、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、高重合ジメチコン(高重合ジメチルポリシロキサン)、シクロメチコン(環状ジメチルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン)、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー、ジメチコノール、ジメチコノールクロスポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アミノプロピルジメチコン及びアモジメチコン等のアミノ変性シリコーン、カチオン変性シリコーン、ジメチコンコポリオール等のポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、糖変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、リン酸変性シリコーン、硫酸変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルキルエーテル変性シリコーン、アミノ酸変性シリコーン、ペプチド変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、カチオン変性及びポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性及びポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性及びポリエーテル変性シリコーン、ポリシロキサン・オキシアルキレン共重合体等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類等が挙げられる。
【0039】
油溶性薬剤等としては、以下のものが挙げられる。
ビタミンCステアリン酸エステル、ビタミンCパルミチン酸エステル、ビタミンCジパルミチン酸エステル、ビタミンCテトライソパルミチン酸エステル、ビタミンCアルキルエーテル、トラネキサム酸誘導体、油溶性甘草エキスなどの美白剤、ビタミン類およびそれらの誘導体、抗炎症剤、アシル化アミノ酸などのアミノ酸誘導体、レチノール及びその誘導体、レチノイン酸及びその誘導体、アスタキサンチン、トコトリエノール、ユビキノンなどの抗老化剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びそれらの誘導体、スフィンゴ脂質、セラミド、リン脂質などの肌荒れ防止剤、β−カロテン、トコフェロール及びその誘導体などの抗酸化剤、γ−オリザノール、ニコチン酸ベンジル、ビオチン、エストラジオールなどの育毛剤、その他脂溶性植物エキス等が挙げられる。
【0040】
<製造方法>
以下で、本発明の製造方法について説明する。まず、(A)成分である前記一般式(1)で表される化合物の製造方法の一例について述べる。
【0041】
前記一般式(1)で示される化合物の製造方法としては、下記一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物と、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基をm個(mはn以上)有する分子量100万以下の化合物(以下、m価の化合物とする)とを、反応させることにより得ることができる。
【化5】

【0042】
上記一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物とは、酸性アミノ酸がN−アシル化された無水物である。N−アシル酸性アミノ酸無水物は、光学異性体であるD−体、L−体、ラセミ体のいずれであってもよい。特に、L−体であるL−酸性アミノ酸が、生分解性に優れることから好ましい。
【0043】
酸性アミノ酸は、分子中に存在するカルボキシル基の数がアミノ基より多いものである。例えば、カルボキシル基とアミノ基の数がそれぞれ2個と1個であるモノアミノジカルボン酸などが挙げられる。アミノ基の水素は、炭素数1〜3の炭化水素基で置換されていてもよい。酸性アミノ酸の具体例としては、グルタミン酸、アスパラギン酸が挙げられる。
【0044】
m価の化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基をm個(m≧n、かつ、2〜20の整数)有する分子量100万以下の化合物である。ここで、m価の化合物は、m個の官能基に由来する結合を作り得る。つまり、ヒドロキシル基は、エステル結合を作り、アミノ基は酸アミド結合を作り、チオール基はチオエステル結合を作ることができる。また、この化合物は上記した官能基以外の置換基を有していてもよい。
【0045】
このようなm価の化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。分子内にヒドロキシル基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0046】
2価のヒドロキシル化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシケイ皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロけい皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン等が挙げられる。
【0047】
3価のヒドロキシル化合物としては、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0048】
4価のヒドロキシル化合物としては、ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン及びソルビタン等が挙げられる。
【0049】
5価のヒドロキシル化合物としては、アドニトール、アラビトール、キシリトール及びトリグリセリン等が挙げられる。
【0050】
6価のヒドロキシル化合物としては、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース及びアロース等が挙げられる。
【0051】
または、上記した2〜6価のヒドロキシル化合物の脱水縮合物やポリグリセリン等が挙げられる。
【0052】
また、m価のポリヒドロキシル化合物として、糖類も挙げられる。以下でその具体例を挙げる。
テトロースとしては、エリスロース、スレオース及びエリスルロース等が挙げられる。ペントースとしては、リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース及びリブロース等が挙げられる。単糖類としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース及びタガトース等のヘキソース等が挙げられる。
オリゴ糖類としては、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース及びスタキオース等が挙げられる。
【0053】
その他の糖類としては、ヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル及びグリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン及びキトサン等の多糖類又は上記した糖類を加水分解したものでもよい。
【0054】
分子内にアミノ基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
脂肪族ジアミン類としては、N,N’−ジメチルヒドラジン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノアジピン酸、ジアミノプロパン酸、ジアミノブタン酸等が挙げられる。
【0055】
脂肪族トリアミン類としては、ジエチレントリアミン、トリアミノヘキサン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチル−オクタン、2,6−ジアミノカプリン酸−2−アミノエチルエステル、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ジ(アミノエチル)アミン等が挙げられる。
【0056】
脂環族ポリアミン類としては、ジアミノシクロブタン、ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン及びトリアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0057】
芳香族ポリアミン類としては、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノ安息香酸、ジアミノアントラキノン、ジアミノベンゼンスルホン酸、ジアミノ安息香酸等が挙げられる。
【0058】
芳香脂肪族ポリアミン類としては、ジアミノキシレン、ジ(アミノメチル)ベンゼン、ジ(アミノメチル)ピリジン、ジ(アミノメチル)ナフタレン等が挙げられる。ジアミノヒドロキシプロパンのように、上記したアミン類誘導体にヒドロキシル基が置換したポリアミン類等が挙げられる。
【0059】
また、アミノ酸類としては、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、シスチンジスルホキシド、シスタチオニン、メチオニン、アルギニン、リジン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン及びオキシプロリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、タンパク質やペプチド等、又はそれらを加水分解したもの等でもよい。
【0060】
分子内にチオール基を2個以上有する化合物の具体例としては、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトール等のジチオール化合物類等を挙げることができる。ここで、m価の化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基を2種以上有していてもよい。その例を以下で挙げる。
【0061】
分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物としては、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノプロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルアミノエタノール、アミノクレゾール、アミノナフトール、アミノナフトールスルホン酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシブタン酸、アミノフェノール、アミノフェネチルアルコール及びグルコサミン等が挙げられる。分子内にチオール基とヒドロキシル基を有する化合物としては、メルカプトエタノール、メルカプトフェノール、メルカプトプロパンジオール及びグルコチオース等が挙げられる。分子内にチオール基とアミノ基を有する化合物としては、アミノチオフェノール及びアミノトリアゾールチオール等が挙げられる。
m価の化合物は、光学異性体であるD−体、L−体、ラセミ体のいずれであってもよく、各異性体であってもよい。また、m価の化合物の中でも、炭素数1〜40のものが好ましい、さらに好ましくは炭素数1〜20のものである。また、天然に存在する化合物の方が、生分解性に優れているため、アミノ酸類、ペプチド類、糖類等が好ましい。N−アシル酸性アミノ酸無水物とm価の化合物とを反応させる際、溶媒を使用してもよい。反応の際に使用する溶媒としては、水、水と有機溶媒との混合溶媒、またはテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム及びアセトン等の不活性溶媒が挙げられる。反応温度としては、−5℃〜200℃、かつ上記化合物の融点以上の温度で混合し、反応させることが好ましい。
【0062】
前記一般式(1)で示される化合物の別の製造方法としては、N−アシル酸性アミノ酸無水物ではなくN−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)と、上記したm価の化合物とを反応させることによっても得られる。
N−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステルとm価の化合物とを、ジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中に溶解し、炭酸カリウム等の触媒を加え、減圧下において−5℃〜250℃で加熱反応させた後、反応溶媒を除去することで得られる。または、溶媒を用いずに無溶媒で加熱溶融し、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて室温〜250℃でエステル交換反応させることによっても得ることもできる。
【0063】
上記方法により得られた(A)成分と、(B)成分であるカチオン系界面活性剤とを、水中で混合することにより、本発明の組成物が得られる。
【0064】
混合する方法は特に限定されるものではなく、攪拌子による攪拌、ホモミキサーやディスパーを用いた攪拌、超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)を用いた攪拌などが挙げられる。混合において、溶剤を添加してもよく、添加する溶剤の具体例としては、精製水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類等を使用することができる。また、混合する温度は均一に混合される温度ならば、特に限定されないが、使用する原料の凝固点以上から沸点以下であればよい。混合する順番については、特に限定されない。例えば、(A)成分を水に溶解し、その後、(B)成分を添加して混合してもよく、(B)成分を水に溶解し、その後、(A)成分を添加して混合してもよい。
【0065】
本発明の組成物は、身体に対して安全であり、かつ、優れた増粘効果を示し、さらに、調整も容易であることから様々な用途に用いることができる。具体的には、化粧料、皮膚外用剤、毛髪化粧料、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、に好適に用いられる。特に、化粧品、皮膚外用剤が好適である。
【0066】
本発明の組成物の粘度は、2〜10000Pa・sであることが好ましい。より好ましくは、2〜2000Pa・sである。
【0067】
また、本発明の組成物は、動的粘弾性測定において、高周波数側では、動的貯蔵弾性率G’>動的損失弾性率G’’であり、低周波数側では、動的貯蔵弾性率G’<動的損失弾性率G’’であることが好ましい。これは、周波数依存性の測定において、動的貯蔵弾性率G’と動的損失弾性率G’’の測定結果が、動的貯蔵弾性率G’<動的損失弾性率G’’の関係から、高周波数側に向かって、動的貯蔵弾性率G’>動的損失弾性率G’’の関係へと入れ替わる結果が見られることを意味している。このような振る舞いは、マクスウエル型流体に特徴的な挙動であり、大きな粘性と大きな弾性を併せ持つ粘弾性流体であることを表わしている。本発明の組成物は、マクスウエル型流体であることが好ましく、それによって、極めて高い増粘効果が得られる。
【0068】
また、マクスウエル型流体であることについては、G’ ’をG’に対してプロットした、いわゆるCole-Coleプロットを行った場合、上に凸の半円を示すことによっても確認することができる。
【0069】
ここで、動的粘弾性測定とは、上記のようなパラメータが測定可能であり、例えば、TAインスツルメント社製のレオメーターAR−G2を用いて測定することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0071】
前記一般式(1)で示される化合物を以下に記載の方法により製造した。
<製造例1>
L−リジン塩酸塩9.1g(0.05mol)を水57gと混合した。この液を25%水酸化ナトリウム水溶液でpH範囲を10〜11に調整し、反応温度を5℃に維持しながら、攪拌した。攪拌下において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物を31.1g(0.1mol)2時間かけて添加し、反応を実施した。その後、さらに30分攪拌を続け、ターシャリーブタノールを液中濃度20質量%となるように添加した後、75%硫酸を滴下して液のpH値を2に調整し、また液の温度を65℃に調整した。硫酸滴下終了後、攪拌を停止し、20分間65℃で静置して有機層と水層とに分層し、そこから有機層を分離した。分離した有機層にターシャリーブタノール及び水を添加して、温度を65℃にして20分攪拌した。攪拌停止後、静置すると有機層と水層とに分層した。得られた有機層に対して、前記した同じ水洗操作をくり返した後、得られた有機層から溶媒を除去し、水酸化ナトリウムで固形分30質量%、pH6.5(25℃)の水溶液に中和調製した後、これを乾燥して下記式(4)に示す化合物を得た。
【0072】
N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物とL−リジン塩酸塩との反応において、結合の仕方によって、下記式(4)で示すとおり4種類の化合物が製造されることになる。
【化6】

【0073】
(式(4)において、Rは炭素数11の炭化水素基、Mは、各々独立にH、Naのいずれかである。)
【0074】
<製造例2>
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1gをN−パルミトイル−L−グルタミン酸無水物31.1gとした以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施した。
【0075】
<製造例3>
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1gをN−ココイル−L−グルタミン酸無水物31.1gとした以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施した。
製造例1のN−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物を、N−ココイル−L−グルタミン酸無水物としたので、上記式(4)において、Rは炭素数7〜17の炭化水素基である。
【0076】
<製造例4>
製造例2において、中和処理をトリエタノールアミンで実施した以外は、製造例2の方法と同じ条件で実施した。
製造例1の水酸化ナトリウムをトリエタノールアミンで中和処理したため、上記式(4)において、Mは、各々独立にH、トリエタノールアミンのいずれかである。
【0077】
[動的粘弾性測定・粘度測定]
実施例で得られた組成物の動的粘弾性を、AR-G2 (ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社)を用いて測定した。測定に用いるコーンプレートは、40mm(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、品番;511406.905)であり、測定温度は25℃で測定する。
【0078】
組成物の粘度については、動的粘弾性測定において、粘度のずり速度依存性を測定し、ゼロシアー粘度により評価した。ゼロシアー粘度とは、粘度のずり速度依存性の結果において、ずり速度が0のときの極限値である。極限値については、解析ソフトにより、求めることができる。
【0079】
また、組成物の動的粘弾性の測定により、動的貯蔵弾性率G’及び動的損失弾性率G’ ’の角周波数依存性を測定することができる。
【0080】
<実施例1〜9、比較例1〜3>
製造例1〜4で得られた(A)成分と、カチオン系界面活性剤である(B)成分と、水を表1に示す組成で混合し、組成物を作成した。調整後翌日に測定した。なお、表1中の(A)成分、(B)成分、水の組成の数値の単位は、質量%である。
また、各組成物の粘度を測定した結果を表1に示す。
【表1】

【0081】
表1の結果から、(A)成分と(B)成分を特定の質量比及び含有量で含む実施例の組成物では、粘度が極めて高いことがわかる。具体的には、成分(A)の濃度が0.25%以上であり、かつ、(A)成分に対する(B)成分の比が0.8以上である実施例では粘度が高く、どちらか一方が、数値範囲外である比較例は粘度が低いことがわかる。
【0082】
次に、実施例4の組成物において、動的粘弾性測定の結果を図1〜3に示す。
【0083】
図1は、実施例4の組成物における動的貯蔵弾性率G’及び動的損失弾性率G’ ’の角周波数依存性の結果であり、縦軸はG’及びG’ ’であり、横軸は角周波数である。高周波数領域においてG’はG’ ’よりも大きく、低周波数領域では逆にG’はG’’よりも小さいことがわかる。
【0084】
図2は、G’’をG’に対してプロットしたいわゆるCole-Coleプロットの図であり、縦軸はG’ ’であり、横軸はG’である。図2より、上に凸のきれいな半円を示していることがわかる。
【0085】
図1及び2からわかる上記結果は、マクスウエル型流体に特徴的な挙動を示しており、実施例4の組成物は、マクスウエル型流体になっているため、高い粘弾性を示すことがわかる。
【0086】
次に、図3を用いて、ゼロシアー粘度の求め方について説明する。図3は、実施例4の組成物における動的粘弾性測定により得られた粘度のずり速度依存性の結果であり、縦軸は粘度、横軸はずり速度である。図3において、横軸のずり速度が0のときの縦軸の粘度の極限値が、ゼロシアー粘度である。表1に示した粘度の値は、このゼロシアー粘度の値である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の組成物は、身体に対して低刺激性であり、かつ、優れた増粘効果を有する組成物であり、化粧品、トイレタリー製品、医薬品など様々な分野で用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物である(A)成分と、カチオン系界面活性剤である(B)成分とを含有する組成物であり、
(A)成分と(B)成分の質量比が、1:0.8〜1:30であり、かつ、組成物における(A)成分の含有量が、0.25〜30質量%であることを特徴とする組成物。
【化1】


(上記一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素又は炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)、−O−、又は−S−を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)
【請求項2】
(B)成分が第4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の質量比が、1:1.1〜1:30であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)成分である第4級アンモニウム塩の少なくとも一つのアルキル基の鎖長が、14以上22以下であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
(A)成分が、下記一般式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【化2】


(上記一般式(2)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基又はそれらの塩を示し、Zは−NR’−(R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)、−O−、又は−S−を示し、X’は、カルボキシル基又はその塩、−NHR’’基(R’’は、水素、または炭素数1〜10の炭化水素基を示す)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有し、かつ炭素数が1〜20である炭化水素鎖を示し、j、kは0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。)
【請求項6】
粘度が、2〜10000Pa・sである請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の動的粘弾性測定において、
高周波数側では、動的貯蔵弾性率G’>動的損失弾性率G’ ’であり、
低周波数側では、動的貯蔵弾性率G’<動的損失弾性率G’ ’を満たす請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56838(P2013−56838A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195098(P2011−195098)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載日平成23年7月23日、掲載アドレス http://colloid.csj.jp/div_meeting/63th/program_j.htm
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】