説明

壁の下端部構造

【目的】本発明は建築、構築物に使用する乾式壁材の下端部に形成する、流水機能を付加した壁の下端部構造に関するものである。
【構成】垂直平面状の固定部17と、固定部17の下端を屋外側に突出した下端面21と、下端面21の先端を上方に突出したカバー面22とから形成し、下端面22に流水兼通気口24を一定ピッチで複数個形成した長尺状のスターターFと、垂直平面状の化粧片25と、化粧片25の上端を屋内側に折り返した係止片29とから形成した長尺状の化粧カバーGを使用し、スターターFの空間に乾式壁材Eを挿入して壁を形成する共に、スターターFのカバー面22に化粧カバーGを装着した壁の下端部構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築、構築物に使用する乾式壁材の下端部に形成する、流水機能を付加した壁の下端部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている乾式壁材の下端部をカバーする構造としては、乾式壁材と水切りとの間に空間を形成し、水切りに貫通孔を形成して、雨水を外部に排出するものであった。(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録3012289号
【特許文献2】特許登録3358474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、芯材として合成樹脂発泡体を使用した乾式壁材を用いた場合には、水切り内部に浸入した雨水が跳ね上がり、乾式壁材端部木口の合成樹脂発泡体に接触し、水分が合成樹脂発泡体内に浸透してしまい、表面材の鉄板の錆発生、合成樹脂発泡体の腐食、濡れ雑巾化による断熱性の低下防止、等の悪影響を与える危険性があった。また、乾式壁材をカバーする面と乾式壁材間に隙間が生じる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような欠点を解決するために、垂直平面状の固定部と、固定部の下端を屋外側に突出した下端面と、下端面の先端を上方に突出したカバー面とから形成し、下端面に流水兼通気口を一定ピッチで複数個形成した長尺状のスターターと、垂直平面状の化粧片と、化粧片の上端を屋内側に折り返した係止片とから形成した長尺状の化粧カバーを使用し、スターターの空間に乾式壁材を挿入して壁を形成する共に、スターターのカバー面に化粧カバーを装着した壁の下端部構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る壁の下端部構造によれば、(1)乾式壁材の下端部の変形を外部に露出させることが無い。(2)乾式壁材の下端部が露出しないために、乾式壁材を縦張りとして施工した際に、木口に雨水が直接かかることが無い。(3)壁の耐風圧性能を向上する。(4)土台部分に排水と防虫機能と吸気・排気機能を有する。(5)内部に浸入した雨水の屋外への流下が可能である。(6)スターターの破損、あるいは乾式壁材下端部の破損・変形に対し、化粧カバーを施工することにより、改修構造としても使用出来る。等の特徴、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る壁の下端部構造の代表的一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る壁の下端部構造に使用する捨て水切りの一例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る壁の下端部構造に使用する水切りの一例を示す説明図である。
【図4】本発明に係る壁の下端部構造に使用する乾式壁材の一例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る壁の下端部構造に使用するスターターの一例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る壁の下端部構造に使用する化粧カバーの一例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る壁の下端部構造の施工順序を示す断面図である。
【図8】本発明に係る壁の下端部構造の施工順序を示す断面図である。
【図9】本発明に係る壁の下端部構造の施工順序を示す断面図である。
【図10】本発明に係る壁の下端部構造の施工順序を示す断面図である。
【図11】本発明に係る壁の下端部構造の施工順序を示す断面図である。
【図12】本発明に係る壁の下端部構造の施工順序を示す断面図である。
【図13】本発明に係る壁の下端部構造に使用する乾式壁材のその他の実施例を示す断面図である。
【図14】本発明に係る壁の下端部構造に使用する化粧カバーのその他の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
以下に図面を用いて本発明に係る壁の下端部構造の一実施例について詳細に説明する。すなわち、図1は本発明に係る壁の下端部構造の施工状態を示す断面図、図2は本発明に係る壁の下端部構造に使用する捨て水切りAの一例を示す断面図、図3は本発明に係る壁の下端部構造に使用する水切りDの一例を示す説明図、図4は本発明に係る壁の下端部構造に使用する乾式壁材Eの一例を示す断面図、図5は本発明に係る壁の下端部構造に使用するスターターFの一例を示す断面図と斜視図、図6は本発明に係る壁の下端部構造に使用する化粧カバーGの一例を示す断面図である。また、Bは透湿防水シート、Cは胴縁、Sは通気層、Tは胴縁Cの下端に形成された通気口、αは躯体、βは固定具、γは基礎である。
【0009】
捨て水切りAは図2に示すように、基礎γに直接雨水等が降りかからないようにすると共に、意匠性を向上するものであり、垂直平面状の垂直面1と、垂直面1の下端を屋外側へ突出した水平面2と、水平面2の先端を下方に垂下した垂下面3とから形成した長尺状部材である。
【0010】
水切りDは図3に示すように、垂直平面状の垂直片4と、垂直片4の下端を屋外側へ傾斜して突出した傾斜片5と、傾斜片5の先端を下方に垂下した化粧片6とから形成した長尺状部材である。
【0011】
乾式壁材Eは図4に示すように表面材8と裏面材10間に芯材9を形成し、表面材8の化粧面11に、凸部12、凹部13を形成し、上下端に雌型連結部14と雄型連結部15を形成し、雄型連結部15内にパッキン16を形成したものであり、固定具βの打設と、雌型連結部14と雄型連結部15を嵌合することにより乾式壁材Eを連結するものである。
【0012】
表面材8、裏面材10は金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種をロール成形、プレス成形、押出成形等によって各種形状に成形したものである。
【0013】
芯材9は例えばポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム、等の合成樹脂発泡体からなるものであり、例えばレゾール型フェノールの原液と、硬化剤、発泡剤を混合し、表面材8、もしくは裏面材10の裏面側に吐出させ、加熱して反応・発泡・硬化させて形成したものである。また、芯材10中には各種難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、水酸化アルミニウム等)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイト等)を混在させ、防火性を向上させることも出来る。
【0014】
さらに詳説すると、芯材9は主に断熱材、防火材、接着剤、補強材、緩衝材、吸音材、嵩上材、軽量化材、等として機能するものである。勿論、芯材9としてロックウール、グラスウール、セラミックウール等の無機材を使用しても良いものである。
【0015】
スターターFは図5(a)、(b)に示すように、垂直平面状の固定部17と、固定部17の上端を屋外側に屈曲し先端を下方に垂下した舌片18と、固定部17の下端を屋外側に突出した底面19と、底面19の先端を下方に垂下した内面20と、内面20の下端を屋外側でかつ上方に傾斜して突出した下端面21と、下端面21の先端を上方に突出したカバー面22と、カバー面22先端を屋内側に折り返した舌片23とから形成し、内面20、下端面21に流水兼通気口24を一定ピッチで形成したものである。
【0016】
スターターFは、乾式壁材Eの張り始め部材、乾式壁材Eの下端部納め部材、乾式壁材Eの下端部木口カバー化粧材、乾式壁材Eが耐風圧の負圧等に弱い弱点を、スターターFを形成することにより、耐風圧での負圧に対しての強度を向上するために形成したものである。
【0017】
固定部11はスターターFを壁下地αに固定具βにより固定する部分である。
【0018】
下端面21は、屋外側でかつ上方に傾斜して突出することにより、内部に浸入した雨水を流水兼通気口24に速やかに流れ込むようにしたものである。
【0019】
カバー面22は、乾式壁材Eの化粧面11を乾式壁材Eの下端部で固定することにより、乾式壁材Eの下端部が凹凸に変形するのを防止すると共に、固定具βの打設下地として機能するものである。このように、カバー面22を固定具βで固定するために、乾式壁材Eの下端部分が強固に固定され、壁の耐風圧強度が大幅に向上出来るものである。
【0020】
化粧カバーGは図6に示すように、垂直平面状の化粧片25と、化粧片25の下端を屋内側へ折り返した水切り片27と、水切り片27の先端を屋内側で下方に傾斜して突出したカバー片26と、カバー片26の先端を折り返した舌片28と、化粧片25の上端を屋内側に折り返した係止片29とから形成したものである。
【0021】
化粧片25は図1に示すように、スターターFのカバー面22を躯体αに打設した固定具βの頭部を被覆して、固定具βが露出するのを防止するためのものであると共に、固定具β打設によるカバー面22の変形を被覆するものでもある。また、接着材Hを介して化粧カバーGを固定する固定下地としても機能するものである。
【0022】
水切り片26は図1に示すように、下方に突出するように形成し、化粧片25上を垂下した雨水のきれを良くし、カバー片26方向に雨水が流れ込むのを防止したものである。
【0023】
カバー片26は図1に示すように、スターターFの下端部を被覆し、外部から見えないようにしたものである。
【0024】
舌片28は補強と鋭利な端部の露出を防止し、怪我の防止に役立つものである。
【0025】
係止片29は図1に示すように、スターターFの舌片23に係止され、乾式壁材Eと化粧カバーG間に隙間が生じるのを防止するものである。
【0026】
捨て水切りA、水切りD、スターターF、化粧カバーGの素材の一例としては金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー板を含む)の一種をロール成形、プレス成形、押出成形、等によって各種形状に成形したものである。
【0027】
そこで、図1、図7〜図12を用いて本発明に係る壁の下端部構造の施工方法の一実施例について説明する。
【0028】
まず、図7に示すように図2に示す捨て水切りAを施工し、その後胴縁Cを、胴縁Cと基礎γ間に通気口Tを確保しつつ施工する。
【0029】
その後、図8〜図10に示すように図3〜図5(a)、(b)に示す水切りD、スターターF、乾式壁材Eを施工する。
【0030】
水切りD、スターターF、乾式壁材Eの施工が完了したら、図11に示すようにスターターFのカバー面22を躯体αに固定し、図12に示すようにカバー面22上に接着材Hを連続状に塗布する。
【0031】
接着材の塗布が完了したら、図1に示すように化粧カバーGをスターターFの舌片23に引っ掛けるようにして係止し、化粧面25の裏面を接着材Hを介してカバー面22に接着し、施工を完了するものである。
【0032】
以上説明したのは本発明に係る壁の下端部構造の一実施例にすぎず、図13(a)〜(h)に示すような乾式壁財Eを用いることが出来る。
【0033】
また、図14(a)〜(f)は化粧カバーGのその他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
A 捨て水切り
B 透湿防水シート
C 胴縁
D 水切り
E 乾式壁材
F スターター
G 化粧カバー
H 接着材
S 通気層
T 通気口
α 躯体
β 固定具
γ 基礎
1 垂直面
2 水平面
3 垂下面
4 垂直片
5 傾斜片
6 化粧片
7 補強片
8 表面材
9 芯材
10 裏面材
11 化粧面
12 凸部
13 凹部
14 雌型連結部
15 雄型連結部
16 パッキン
17 固定部
18 舌片
19 底面
20 内面
21 下端面
22 カバー面
23 舌片
24 流水兼通気口
25 化粧片
26 係合片
27 係合爪
28 係止片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直平面状の固定部と、該固定部の下端を屋外側に突出した下端面と、該下端面の先端を上方に突出したカバー面とから形成し、下端面に流水兼通気口を一定ピッチで複数個形成した長尺状のスターターと、垂直平面状の化粧片と、該化粧片の上端を屋内側に折り返した係止片から形成した長尺状の化粧カバーを使用し、スターターの空間に乾式壁材を挿入して壁を形成する共に、スターターのカバー面に化粧カバーを装着したことを特徴とする壁の下端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−112992(P2013−112992A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259869(P2011−259869)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(390018463)アイジー工業株式会社 (100)
【Fターム(参考)】