壁パネルの取付構造および取付金具
【課題】本発明は、建築現場での取付部位置変更に対応することができながら、パネル内において係止杆を取付金具基端部の係合孔に容易に挿通でき、かつ、建物躯体の層間変形への追従性を向上させることのできる取付構造および取付金具を提供することを目的としている。
【解決手段】壁パネルの小口面にパネル表面に略平行な長穴を設け、壁パネル室内側表面から前記長穴に連通する座掘穴を設け、この座掘穴に、基端部には係合孔が設けられるとともに先端部には直接又は別体の固定部材を介して壁パネル支持部材に固定される係止部を有する取付金具の基端部を挿入し、長穴に差込んだ係止杆を前記取付金具基端部の係合孔に挿通して取付金具を壁パネル内に係止する一方、取付金具先端部の係止部をパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネルを取付ける構造であって、取付金具の少なくとも基端部を板状とした。
【解決手段】壁パネルの小口面にパネル表面に略平行な長穴を設け、壁パネル室内側表面から前記長穴に連通する座掘穴を設け、この座掘穴に、基端部には係合孔が設けられるとともに先端部には直接又は別体の固定部材を介して壁パネル支持部材に固定される係止部を有する取付金具の基端部を挿入し、長穴に差込んだ係止杆を前記取付金具基端部の係合孔に挿通して取付金具を壁パネル内に係止する一方、取付金具先端部の係止部をパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネルを取付ける構造であって、取付金具の少なくとも基端部を板状とした。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に建築分野において壁パネルを建物躯体に取付ける取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、建築分野で壁パネルを建物躯体に取付ける構造のうち、特に地震動などによる建物躯体の層間変形に追従して壁パネルに損傷のないように取付ける構造として、壁パネルの内部に長ナット等の埋設アンカーを壁パネル製造時に予め埋設しておき、工場又は建築現場等でパネル室内側表面から該埋設アンカーを掘出し、パネル支持部材と連結するためのボルト等で螺合するものがあった。しかし、予めパネル内に該埋設アンカーが埋設されているため、建築現場での取付部位置変更に対応することが出来なかった。
【0003】
第2の従来技術として、図10に示す、特公平7−65361(壁パネルの取付構造)に記載されている、壁パネル1の小口面1dにパネル表面に略平行な長穴1fを設け、壁パネル室内側表面から前記長穴1fに連通する座掘穴1eを設け、この座掘穴1eに、基端部3cには係合孔3fが設けられるとともに先端部3dには壁パネル支持部材に連結される係止用ネジを有する取付金具3の基端部3cを挿入し、長穴1fに差込んだ係止杆2を前記取付金具基端部3cの係合孔3fに挿通して取付金具3を壁パネル1内に係止する一方、取付金具先端部3dの係止部3gをパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネル1を取付ける構造があった。しかし、この特公に示される取付金具3は、図9(a)に示すような高ナットに係合孔3fを設けたタイプのものにあっては係合孔3fの存在する方向にしかパネル表面に平行な面内での示方性がなく、また図9(b)に示すようなアイボルトタイプのものにあっては係合孔3fの存在する方向および基端部3cの軸部3eの径より大きい外径にしかパネル表面に平行な面内での示方性がなかった。そのため、座掘穴1eに該取付金具3を挿入した後は、外部からは奥深く挿入された基端部3cが見えにくく、示方性のない軸部3e及び先端部3dしか見えないため、目視しながら該取付金具3の係合孔3fを該係止杆2側に向けて挿通させるのが困難であった。また、基端部3cの厚みが軸部3eの径と同程度であったため、図8(a)に示すように座掘穴1e内での可動量bが少なく、建物躯体の層間変形に追従しうる変形量に制約があった。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−65361号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、建築現場での取付部位置変更に対応することができながら、パネル内において係止杆2を取付金具基端部3cの係合孔3fに容易に挿通でき、かつ建物躯体の層間変形に追従できる変形量を大きくできる、とりわけ追従機構がスライド機構(スウェイ機構)の場合にあってはその効果が顕著である取付構造およびそれに用いる取付金具を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の壁パネルの取付構造は、壁パネル1の小口面1dにその面に略垂直方向に長穴1fを設け、壁パネル室内側表面1cから前記長穴1fに連通する座掘穴1eを設け、この座掘穴1eに基端部3cに係合孔3fを有しかつ先端部3dに係止部3gを有する取付金具3の基端部3cを差込み、長穴1fに差込んだ係止杆2を該取付金具3の係合孔3fに差し通して該取付金具3を係止し、該取付金具3の係止部3gをパネル支持部材11に連結し構成してなり、壁パネル1を所定の個所に取付ける場合であって、該取付金具3の基端部3cを板状としたことを特徴とするものである。
【0007】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1.壁パネルの小口面にパネル表面に略平行な長穴を設け、壁パネル室内側表面から前記長穴に連通する座掘穴を設け、この座掘穴に、基端部には係合孔が設けられるとともに先端部には直接又は別体の固定部材を介して壁パネル支持部材に固定される係止部を有する取付金具の基端部を挿入し、長穴に差込んだ係止杆を前記取付金具基端部の係合孔に挿通して取付金具を壁パネル内に係止する一方、取付金具先端部の係止部をパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネルを取付ける構造であって、取付金具の少なくとも基端部が板状であることを特徴とする壁パネルの取付構造。
2.少なくとも前記長穴と前記座掘穴とが連通する部分の座掘穴の形状が、前記長穴の方向に対し略垂直なスリット状であることを特徴とする1.記載の取付構造。
3.棒状若しくは管状の部材の一端を板状に成形して基端部とし、他端に雄ネジ若しくは雌ネジを設けて先端係止部としたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
4.平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端部とし、先端部に雌ネジ部分を設けたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
5.平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端係止部とした取付金具の該先端係止部をパネル支持部材に嵌合して連結したことを特徴とする請求項1または2記載の壁パネルの取付構造。
【0008】
【発明の実施の形態】
取付金具3の基端部3cを薄くするためには、大きく分けて3つの手段がある。
即ち、
第1の手段は、該取付金具3が棒状又は管状又はそれらに類似する形状の鋼材から製造される場合にあっては、基端部3cとなる範囲を軸に直交する方向に加力することにより板状に成形する手段、
第2の手段は、該取付金具3を、平鋼から成形する手段、
第3の手段は、該取付金具3を、鋳造などにより成型する手段である。
【0009】
第1の手段の実施例を図3に示す。この第1の手段にあっては、先端部3dの係止部3gは図示しているような雄ネジであっても雌ネジであっても良い。
また、基端部3cとなる範囲を薄く変形させる手段はプレスに限定されない。図2に図示するように取付金具3を座掘穴1eへ挿入した後も、少なくとも基端部3cを板状に成形したことにより板状になった基端部3cの向きを外部から確認しやすくなるので係合孔3fの向きを容易に把握することができるようになり、係止杆2の挿通作業が容易になる。
【0010】
また、図示はしないが軸部3eも基端部3c同様に板状に成形しても良く、これにより板状になった軸部3eの向きを見ることで係合孔3fの向きを更に容易に把握することができるようになる。特に、先端部3dの雄ネジ部分全体がパネル室内側表面1cよりも突出する場合、即ち、パネル内に挿入される部分が軸部3eおよび基端部3cのみとなる場合は、軸部3eも基端部3c同様に板状に成形することが望ましく、これにより座掘穴1e全体をスリット状にすることが可能になる。
また、基端部3cとなる範囲は図3(b)に示すように断面が凹レンズ状に中央が周辺より薄く凹んでいると更に望ましく、これにより基端部3c断面の係合孔3fによる断面欠損が薄い部分だけに留まり、引張耐力のロスを削減することができる。
また、基端部3cが、図8(a)に示すような板状でない場合に比べ、同(b)に示すように板状になっていることにより、建物躯体の層間変形に追従する可動量bを大きくすることができる。
また、ステンレス鋼などの耐食鋼を使用すると、成形後の防錆処理を省略できる。
【0011】
第2の手段の実施例を図4に示す。第2の手段にあっては、平鋼から取付金具3を形成するので、先端部3d近傍にも明瞭な示方性があり、取付金具3を座掘穴1eへ挿入した後も、係合孔3fの向きを容易に把握することができるようになり、係止杆2の挿通作業が容易になる。
その形状には図4(a)〜(c)および(h)〜(i)に例示するような略L形および図4R>4(d)〜(g)に例示するような略T形がある。
図4(a)に例示するように短冊状の平鋼を略L形に曲げ、その一方のフランジ部分を軸部3eおよび基端部3cとし、他方のフランジ部分を先端部3dとして成形しても良い。もちろん、図示はしないが一方のフランジ部分を基端部3cとし他方のフランジ部分を軸部3eおよび先端部3dとして成形しても良い。
【0012】
短冊状の平鋼を略L形でなく、図4(d)に例示するように略T形に一筆書きで下端から始まり下端で終わるような形状に曲げ、下端を基端3aとするように成形しても良い。基端部3cとなる2枚で成形されるT形の垂直部分が、図4(d)に例示するように互いに重ね合わされていても、接近しているだけでも良いが、重ね合わされている方が座掘穴1eの少なくとも長穴1fと連通する部分の形状をより間隔の狭いスリット状にすることが可能になるので望ましい。先端部3cとなるT形の水平部分は図4(d)に例示するように相対する2枚を重ね合わせ又は接近させても良いし、図4(e)に例示するように互いに離しても良い。重ね合わせ又は接近させた場合においては、軸部3eおよび基端部3cが平鋼2枚分の厚さとなるため、座掘穴1e全体をスリット状にすることが可能になるので、座掘穴1eを設ける作業および工具が単純になる。また、互いに離した場合においては、この間隙にナットなどを設置する、あるいはバーリング加工することが可能になり、これら雌ネジと螺合するボルトのネジ山の突出量の変動を吸収することも可能になる。先端部3dの係止部3gを雌ネジとする場合にあっては、図4(d)に例示するように該雌ネジの延長線上に位置する部分がパネル支持部材11と連結するためのボルトが挿入できるように切欠かれていると望ましく、これにより該ボルトのネジ山の突出量の変動を更に吸収することが可能になる。図示はしないが該切欠き部分の側面にタップ加工が施され該ボルトと螺合できるようにしても良く、これによりボルトの引抜き耐力を向上させることができる。また、図示はしないが略T形の垂直部分の2枚の平鋼が互いに離れないように基端3a以外の少なくとも1個所以上で緊結されている方が望ましく、これにより、先端部である両フランジに取付金具を引抜く方向の力が載荷された場合に生じる略T形から略Y形への変形を拘束して生じにくくすることができる。
【0013】
また、図4(f)〜(g)に例示するように、短冊状の平鋼を一筆書きで略T形若しくは略Y形に上部の一方の端点から始まり上部の他方の端点で終わるような形状に曲げ、下端を基端とするように成形しても良い。基端部となる2枚で成形される略T形の垂直部分が、図4(f)に例示するように互いに重ね合わされていても、接近しているだけでも良いが、重ね合わされている方が望ましく、これにより、座掘穴1e全体の形状をより間隔の狭いスリット状にすることが可能になるうえ、基端3aの底面に使用する鋼材量を低減できる。また、略T形の垂直部分の2枚の平鋼が互いに離れないように基端3a以外の少なくとも1個所以上で緊結されている方が望ましく、これにより、先端部3cである両フランジに取付金具3を引抜く方向の力が載荷された場合に生じる略T形から略Y形への変形を拘束して生じにくくすることができる。
【0014】
略L形、略T形、略Y形のいづれの場合においても、先端部3dに設ける係止部3gは、雌ネジをタップ加工により設けても良いし、バーリング加工をした上でタップ加工を施して設けても良い。
また、かしめ用ナットあるいはかしめ用ボルトをかしめることで設けても良いし、ナットあるいはボルトを溶接することで設けても良いし、接着材でナットを接着させることにより設けても良いし、ナットを該取付金具本体の平鋼で挟み込むあるいは包み込むことにより設けても良い。なお、列記したいづれの場合にあっても、先端部3dの基端3a側の面にナットを設けるのが望ましく、これにより取付金具3に加わる引抜き力への抵抗力が確保しやすくなる。
【0015】
また、係止部3gを、ナットを該取付金具本体平鋼で挟み込むあるいは包み込むことにより設ける場合にあっては、ナットの締付トルク方向に、機械的に引っかかる個所を設けるのが望ましく、これによりナットが共回りするのを防止できる。
また、図4(f)に例示するように取付金具3の係止部3gを壁面方向に折り曲げた平鋼そのものとしても良い。この係止部3gとパネル支持部材11との間隙に楔を挿入してパネル支持部材11と連結させても良く、これにより、ネジ螺合の手間を軽減でき作業性が向上する。
【0016】
また、この係止部3gと軸部3eがなす角が大きくなる方向に予め変形しておき、該取付金具3を係止杆2と係合させ、しかるのちに該角がもとの角度に戻ろうとする該取付金具3の変形復元力を利用してパネル支持部材11と連結させても良く、これによりネジ螺合や楔挿入の手間を軽減でき作業性が向上するうえ、パネル取付に要する金具の部材点数を1個少なくすることができる。なお、この変形復元性は、使用する鋼材の弾性変形範囲を利用したものでも良く、形状記憶合金の特性を利用したものでも良い。
【0017】
使用する平鋼は、めっき鋼板もしくは耐食鋼板とするのが望ましく、これにより成形後の防錆処理工程を省略することができる。
また、基端部3cとなる範囲の断面を図3(b)に示すように凹レンズ状に中央が周辺より薄く凹ませると更に望ましく、これにより基端部断面の係合孔3fによる断面欠損が薄い部分だけに留まり、引張耐力のロスを削減することができる。
【0018】
また、図4(i)に例示するように取付金具3にリブを設けても良いし、図示はしないが端に折り返しを設けても良く、これにより引抜き力による各所の曲げ変形を抑制できるとともにより大きな引抜き耐力を得られ、また、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
また、図4(h)に例示するように少なくとも軸部3eをねじり加工しても良く、これにより軸部鋼材の降伏点がねじり加工に伴い加工硬化で上昇し、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
第3の手段にあっては、鋳鋼で成型しても良いし、要求される引抜き耐力やねじり耐力を満足する他の素材、例えば繊維補強プラスチックや繊維補強ガラスなどで成型しても良い。
【0019】
また、座掘穴1eの形状を図7に示すように、少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状とすることによって、板状の基端部3cをスリットの形状に合わせて挿入することが同時に係合孔3fの向きを係止杆2に向けることになるので、該係止杆2の挿通作業が更に容易になる。更に、係止杆2の取付金具3による引抜き力に対する支点すなわちパネルとの接触点1gの間隔aを狭めることができ、これにより、該係止杆2に作用する曲げ応力度を低減できるので係止杆2の断面をより小さく細いものにすることが可能になる。
【0020】
【実施例】
以下、その詳細を図示した実施例によって説明する。
図1は本発明の実施例による壁パネルの斜視図、図2はその要部の破断斜視図である。
壁パネル取付現場において、壁パネル1の長辺小口面1dの所定の位置にその面と垂直方向に長穴1fをあけ、パネル室内側表面1cからこの面と垂直方向に長穴1fに達する座掘穴1eをあける。
また、長穴1fおよび座掘穴1eの位置がパネル製造時に決定しており現場変更等のない場合には、工場においてパネルを製造する時に予めあけておいた穴を利用することもできる。
次に座掘穴1eに取付金具3を挿入する。
この取付金具3は、基端部3cに係合孔3f、先端部3dに係止部3gを有しており、座掘穴1eに基端3aを先にして長穴1fまで挿入し、一方係止杆2は長穴1fに挿入し、係合孔3fを挿通して取付金具3と係合する。
このように、取付金具3は係止杆2と係合されているので、座掘穴1eの位置は長穴1f内の係止杆2と組合わせて任意の位置に調整することができる。
【0021】
図3は本発明による取付金具3の例である。
本例に示す取付金具3の形状は、板状の基端部3cに略円形の係合孔3f、先端部3dに係止部3gである雄ネジを有している。なおパネル係止部3gは雄ネジであっても雌ネジであってもネジ以外の構造でも良い。また、係合孔3fは環状であっても、環状の一部が欠如していても、多角形であっても、係止杆2を係合保持できる形状であれば良い。基端部3cが板状になっていることにより図8(b)に示すように、図8(a)に示すような板状になっていない場合に比べ、建物躯体に層間変形が生じた際の追従可能な可動量baを大きくすることができる。
【0022】
また、係止杆2は外形が略円状で取付金具3の係合孔に差し通せる太さのものであれば棒状のものでも管状のものでも良い。
また、基端部3cとなる範囲は図3(b)に示すように断面が凹レンズ状に中央が周辺より薄く凹んでいると望ましく、これにより基端部断面の係合孔3fによる断面欠損が薄い部分だけに留まり、引張耐力のロスを削減することができる。
【0023】
図4は、本発明による取付金具3の他の実施例である。
取付金具3の各機構を満たすものであれば、図4のように短冊状の平鋼を加工して取付金具3を成形しても良い。
図4(a)は略L形に成形して、バーリング加工したうえでタップ加工して係止部3gとした一例である。
図4(b)は図4(a)において、基端部3c側からかしめ用ナットをかしめて係止部3gとした一例である。
図4(c)は略L形に成形して、先端部において取付金具本体でナットを包み込んで係止部3gとした一例である。
図4(d)は一筆書きで下端から始まり下端で終わるように略T形に成形して、タップ加工により係止部3gとし、雌ネジの延長上の軸部をボルト山の突出量の変動を吸収できるように切欠いた一例である。切欠きを設けることによって切欠きがない場合に比べ、ボルト山の突出量の変動を吸収できる量が格段に向上する。また、図示はしないがこの切欠きの側面にタップ加工を施すこともでき、この場合前記した利点に加え更に、ボルトの引抜き耐力を向上させることができる。
【0024】
図4(e)は一筆書きで下端から始まり下端で終わるように略T形に、かつ、T形の水平部分の相対する2枚の平鋼の間隔を離すように成形した一例である。この2枚の平鋼の間隔を離したことにより、この2枚の平鋼で挟まれる空間ができ、この空間内に係止部3gとなるナットを設置することもできるし、また、該ナットなどの雌ネジである係止部3gと螺合するボルトの山の突出量を吸収できるようになる。
図4(f)は一筆書きに上部の一方の端点から始まり上部の他方の端点で終わるように略T形に成形した一例である。図示していないが、先端部3dすなわちこのT形の水平部分に雌ネジあるいは雄ネジの係止部3gを設けても良い。
図4(g)は図4(f)の先端部3dと軸部3eがなす角を鋭角にした一例である。図示はしないが逆に鈍角にしても良い。
図4(h)は図4(a)の軸部をねじった一例である。ねじったことにより、軸部鋼材の降伏点がねじり加工に伴い加工硬化で上昇し、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
【0025】
図4(i)は図4(a)の曲がり部にリブを設けた一例である。リブを設けたことにより、係止部3gと係合孔3fとが同一軸線上にない事に起因して生じる取付金具3に生じる曲げ応力に対する強度および剛性が向上するため、より大きな引抜き耐力を得られる。また図示しないが、リブではなく端に折り返しを設けても良い。とくに軸部3eおよび基端部3cの端を折り返した場合にあってはネジ螺合に伴う締付トルクに対するねじり耐力を向上させることができる。また図示しないが、これらを組合わせても良い。
【0026】
図5は、取付金具3を用いて壁パネル1を長辺が鉛直になる方向に構造躯体10に取付けた例を示すものである。
パネル支持部材11は、取付金具3と直接係止されるパネル支持金具11aと構造躯体10に固着されるアングル材11bによってなり、パネル支持金具11aがアングル材11bに固着されて構成される。
壁パネル1は取付金具3が貫通する透孔を有するパネル支持金具11aに取付金具3の先端部3dを貫通させてナット12で取付けられている。
【0027】
図6は、図5における取付部の水平断面図を示すものである。
図7は、図6において座掘穴1eの長穴と連通する部分をスリット状にした一例を示したものである。このようにスリット状に座掘る手段としては、図示はしないがチェーンソーの先端をパネル室内側表面1cに対して略垂直に押し当てて座掘る方法などがある。
図8は、座掘穴1eをパネル室内側から見た立面図であり、図8(a)は図9(b)に示す従来技術の取付金具3を用いた場合の立面図、図8(b)は図3に示す取付金具を用いた場合の立面図である。
図9は、従来技術における取付金具3の例であり、図9(a)は高ナットタイプの例、図9R>9(b)はアイボルトタイプの例である。いづれも、基端部3cの厚みは先端部3dや軸部3eと同程度ある。
【0028】
図10は、図2に相当する要部の従来技術の破断斜視図である。取付金具3の基端部3cが座掘穴1eの奥に挿入されるため、外部からは奥深く挿入された該取付金具の基端部が見えにくいため係合孔3fの向きを係止杆2に合わせるのが困難である。
図11は、図6に相当する従来技術の水平断面図である。
本構造は、長穴1f、座掘穴1eを現場で穴あけするとすれば、母材強度の低いALC(軽量気泡コンクリートパネル)などに最適である。長穴1fは長辺小口から設けた実施例により説明したが短辺小口から設けても良く、また小口に略垂直にあける例により説明したが略垂直でなくとも良い。
【0029】
取付金具3は、「金具」と呼称しているが、所定の機能および性能さえ満たせば鋼材でなくとも良く、もちろん繊維補強プラスチックなどの非金属材料で成形されても良い。
取付金具3の係止部3gは、実施例においてはネジの例で示したが、係止機能さえ有していれば、くさび機構などでも良い。
また、座掘穴1eの形状を図7に示すように、少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状とすることによって、板状の基端部3cをスリットの形状に合わせて挿入することが同時に係合孔3fの向きを係止杆2に向けることになるので、該係止杆2の挿通作業が更に容易になる。更に、係止杆2の取付金具3による引抜き力に対する支点すなわちパネルとの接触点1gの間隔aを狭めることができ、これにより、該係止杆2に作用する曲げ応力度を低減できるので係止杆2の断面をより小さく細いものにすることが可能になる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は以上の通りであり、実施上次のような効果をもたらすものである。
(1)取付金具3の少なくとも基端部3cを板状にしたことにより、取付金具3を座掘穴1eに挿入した後も外部から基端部3cの向きを見やすくなるので係合孔3fの向きを容易に把握することができるようになり、係止杆2の挿通作業が容易になる。
(2)取付金具3の基端部3cを板状にしたことにより、座掘穴1e内における取付金具3の長穴1f方向の可動量bが大きくなり、その結果建物躯体の層間変形への追従性能が向上する。
(3)座掘穴1eの形状を少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状にした場合において、板状の基端部3cをスリットの形状に合わせて挿入することが同時に係合孔3fの向きを係止杆2に向けることになるので、係止杆2の挿通作業が容易になる。
【0031】
(4)座掘穴1eの形状を少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状にした場合において、係止杆2の取付金具3による引抜き力に対する支点すなわちパネルとの接触点1gの間隔aを狭めることができ、これにより、該係止杆2に作用する曲げ応力度を該間隔aに比例して低減できるので、該係止杆2に要求される断面性能は低減され、該係止杆断面を従来より小さく細いものにすることが可能になる。
(5)取付金具3の基端部3cの中央部を周辺部より薄く凹ませた場合にあっては、係合孔3fによる該基端部3cの断面欠損量を最小限に留める、即ち、係合孔3f周辺の該基端部欠損後断面をより大きくすることができ、その結果、該基端部欠損後断面の大きさに比例する破断荷重を大きくでき、それ故、該取付金具3の引抜き耐力をより強くすることが可能になる。
(6)特に平鋼から取付金具3を成形した場合にあっては、該取付金具3の先端部3dにおいても示方性を有するため、パネル内部で係止杆2を該取付金具3の基端部係合孔3fに差し通す際に該係合孔3fの向きを該係止杆2側に更に容易にあわせられ、挿通作業を簡便化できる。
【0032】
(7)平鋼から取付金具3を成形し、先端部3dおよび/又は曲がり部にリブおよび/又は端折り返しを設けた場合にあっては、引抜き力による先端部3dや曲がり部の変形量を低減することができ、より大きな引抜き力に対して該引抜き力除荷後の変形復元性を発揮できる。
(8)平鋼から取付金具3を成形し、軸部3eおよび/又は/基端部3cおよび/又は曲がり部にリブおよび/又は端折り返しを設けた場合にあっては、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
【0033】
(9)平鋼から取付金具3を成形し、軸部3eをねじった場合にあっては、ねじり加工に伴い軸部3eが加工硬化しており、それ故、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
【0034】
(10)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成した場合にあっては、パネル支持部材11から作用する引抜き力載荷点と、基端部係合孔3fで係止杆2に伝達する作用点が一直線上にあるため、該取付金具3全体には曲げ応力が発生せず、それ故、金具断面設計を容易にし、かつ、断面を小さくすることができる。
(11)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成し、かつ、先端部係止部3gが雌ネジであり、かつ、軸部3eのうち雌ネジの延長線上に位置する部分がパネル支持部材11と連結するためのボルトが挿入できるよう切欠かれている場合にあっては、壁パネル小口面1dに設けられる係止杆挿入用長穴1fの壁パネル厚み方向の精度誤差や、該ボルト長の変動等による該ボルトネジ山の突出量の変動を吸収することが可能になる。
【0035】
(12)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成し、かつ、先端部係止部3gが雌ネジであり、軸部3eのうち雌ネジの延長線上に位置する部分がパネル支持部材11と連結するためのボルトが挿入できるよう切欠かれており、かつ、該切欠き部の側面にタップ加工が施されている場合にあっては、該側面部とも該ボルトを螺合させることにより、引抜き耐力を向上させることができる。
(13)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成した場合にあっては、倍の厚みを持つ平鋼をL形に曲げて基端部3cを1枚で構成した場合に比べて、引抜き耐力は同等以上であるうえ、引抜き力により該取付金具全体に曲げモーメントが加わらないので変形量も小さく押えることができ、かつ、引抜き力除荷後に復元し得る最大の引抜き力も大きくすることができる。
【0036】
(14)平鋼から取付金具3を成形し、該取付金具3とパネル支持部材11との間にくさびを挿入して連結させた場合および該取付金具3の先端部3dと軸部3eのなす角の変形復元力を用いてパネル支持部材11と連結した場合にあっては、ネジ螺合の手間を軽減でき、作業性が向上する。とりわけボルト貫入長が長い場合に作業性向上が顕著である。
(15)平鋼から取付金具3を成形し、該取付金具3の先端部3dと軸部3eのなす角の変形復元力を用いてパネル支持部材11と連結した場合にあっては、ネジ螺合若しくは楔挿入の手間を軽減でき、作業性が向上する。
(16)平鋼から取付金具3を成形し、該取付金具3の先端部3dと軸部3eのなす角の変形復元力を用いてパネル支持部材11と連結した場合にあっては、壁パネルの取付に要する金具の部材点数を1個少なくすることができる。
【0037】
(17)使用する平鋼をめっき鋼板、あるいは、耐食鋼板にした場合にあっては、成形後のめっき工程を省略することができるため、製造工程を短縮することができる。
(18)平鋼から取付金具3を成形した場合にあっては、使用する鋼材量を軽減することができるので、軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における壁パネルの斜視図である。
【図2】図1の要部の破断斜視図である。
【図3】本発明の取付金具の実施例であり、(a)は正面および側面図、(b)は(a)の矢印における断面図である。
【図4】(a)〜(i)は、本発明取付金具の他の実施例を示す斜視図である。
【図5】本実施例により壁パネルをパネル長辺が鉛直方向になるように構造躯体に取付けた状態を示す鉛直断面図である。
【図6】図5における取付部の水平断面図である。
【図7】座掘穴のうち、取付金具基端部と係止杆が連通する部分をスリット状にした場合の例を示す図5の取付部の水平断面図である。
【図8】パネル室内側から見た座掘穴部の立面図であり、(a)は従来技術の取付金具を用いた立面図、(b)は本発明取付金具を用いた立面図である。
【図9】従来技術の、取付金具の例を示し、(a)は高ナットタイプの例を示す斜視図、(b)はアイボルトタイプの例を示す立面および側面図である。
【図10】図2に相当する要部の、従来技術の破断斜視図である。
【図11】図6に相当する、従来技術の水平断面図である。
【符号の説明】
1 壁パネル
1c 壁パネル1の室内側表面
1d 壁パネル1の長辺小口面
1e 座掘穴
1f 長穴
1g 係止杆を支持する支点
2 係止杆
3 取付金具
3a 基端
3b 先端
3c 基端部
3d 先端部
3e 軸部
3f 係合孔
3g 係止部
10 構造躯体
11 パネル支持部材
11a パネル支持金具
11b アングル材
12 ナット
a 係止杆の取付金具による引抜き力に対する支点作用点間隔
b 座掘穴内での取付金具の可動量
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に建築分野において壁パネルを建物躯体に取付ける取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、建築分野で壁パネルを建物躯体に取付ける構造のうち、特に地震動などによる建物躯体の層間変形に追従して壁パネルに損傷のないように取付ける構造として、壁パネルの内部に長ナット等の埋設アンカーを壁パネル製造時に予め埋設しておき、工場又は建築現場等でパネル室内側表面から該埋設アンカーを掘出し、パネル支持部材と連結するためのボルト等で螺合するものがあった。しかし、予めパネル内に該埋設アンカーが埋設されているため、建築現場での取付部位置変更に対応することが出来なかった。
【0003】
第2の従来技術として、図10に示す、特公平7−65361(壁パネルの取付構造)に記載されている、壁パネル1の小口面1dにパネル表面に略平行な長穴1fを設け、壁パネル室内側表面から前記長穴1fに連通する座掘穴1eを設け、この座掘穴1eに、基端部3cには係合孔3fが設けられるとともに先端部3dには壁パネル支持部材に連結される係止用ネジを有する取付金具3の基端部3cを挿入し、長穴1fに差込んだ係止杆2を前記取付金具基端部3cの係合孔3fに挿通して取付金具3を壁パネル1内に係止する一方、取付金具先端部3dの係止部3gをパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネル1を取付ける構造があった。しかし、この特公に示される取付金具3は、図9(a)に示すような高ナットに係合孔3fを設けたタイプのものにあっては係合孔3fの存在する方向にしかパネル表面に平行な面内での示方性がなく、また図9(b)に示すようなアイボルトタイプのものにあっては係合孔3fの存在する方向および基端部3cの軸部3eの径より大きい外径にしかパネル表面に平行な面内での示方性がなかった。そのため、座掘穴1eに該取付金具3を挿入した後は、外部からは奥深く挿入された基端部3cが見えにくく、示方性のない軸部3e及び先端部3dしか見えないため、目視しながら該取付金具3の係合孔3fを該係止杆2側に向けて挿通させるのが困難であった。また、基端部3cの厚みが軸部3eの径と同程度であったため、図8(a)に示すように座掘穴1e内での可動量bが少なく、建物躯体の層間変形に追従しうる変形量に制約があった。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−65361号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、建築現場での取付部位置変更に対応することができながら、パネル内において係止杆2を取付金具基端部3cの係合孔3fに容易に挿通でき、かつ建物躯体の層間変形に追従できる変形量を大きくできる、とりわけ追従機構がスライド機構(スウェイ機構)の場合にあってはその効果が顕著である取付構造およびそれに用いる取付金具を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の壁パネルの取付構造は、壁パネル1の小口面1dにその面に略垂直方向に長穴1fを設け、壁パネル室内側表面1cから前記長穴1fに連通する座掘穴1eを設け、この座掘穴1eに基端部3cに係合孔3fを有しかつ先端部3dに係止部3gを有する取付金具3の基端部3cを差込み、長穴1fに差込んだ係止杆2を該取付金具3の係合孔3fに差し通して該取付金具3を係止し、該取付金具3の係止部3gをパネル支持部材11に連結し構成してなり、壁パネル1を所定の個所に取付ける場合であって、該取付金具3の基端部3cを板状としたことを特徴とするものである。
【0007】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
1.壁パネルの小口面にパネル表面に略平行な長穴を設け、壁パネル室内側表面から前記長穴に連通する座掘穴を設け、この座掘穴に、基端部には係合孔が設けられるとともに先端部には直接又は別体の固定部材を介して壁パネル支持部材に固定される係止部を有する取付金具の基端部を挿入し、長穴に差込んだ係止杆を前記取付金具基端部の係合孔に挿通して取付金具を壁パネル内に係止する一方、取付金具先端部の係止部をパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネルを取付ける構造であって、取付金具の少なくとも基端部が板状であることを特徴とする壁パネルの取付構造。
2.少なくとも前記長穴と前記座掘穴とが連通する部分の座掘穴の形状が、前記長穴の方向に対し略垂直なスリット状であることを特徴とする1.記載の取付構造。
3.棒状若しくは管状の部材の一端を板状に成形して基端部とし、他端に雄ネジ若しくは雌ネジを設けて先端係止部としたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
4.平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端部とし、先端部に雌ネジ部分を設けたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
5.平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端係止部とした取付金具の該先端係止部をパネル支持部材に嵌合して連結したことを特徴とする請求項1または2記載の壁パネルの取付構造。
【0008】
【発明の実施の形態】
取付金具3の基端部3cを薄くするためには、大きく分けて3つの手段がある。
即ち、
第1の手段は、該取付金具3が棒状又は管状又はそれらに類似する形状の鋼材から製造される場合にあっては、基端部3cとなる範囲を軸に直交する方向に加力することにより板状に成形する手段、
第2の手段は、該取付金具3を、平鋼から成形する手段、
第3の手段は、該取付金具3を、鋳造などにより成型する手段である。
【0009】
第1の手段の実施例を図3に示す。この第1の手段にあっては、先端部3dの係止部3gは図示しているような雄ネジであっても雌ネジであっても良い。
また、基端部3cとなる範囲を薄く変形させる手段はプレスに限定されない。図2に図示するように取付金具3を座掘穴1eへ挿入した後も、少なくとも基端部3cを板状に成形したことにより板状になった基端部3cの向きを外部から確認しやすくなるので係合孔3fの向きを容易に把握することができるようになり、係止杆2の挿通作業が容易になる。
【0010】
また、図示はしないが軸部3eも基端部3c同様に板状に成形しても良く、これにより板状になった軸部3eの向きを見ることで係合孔3fの向きを更に容易に把握することができるようになる。特に、先端部3dの雄ネジ部分全体がパネル室内側表面1cよりも突出する場合、即ち、パネル内に挿入される部分が軸部3eおよび基端部3cのみとなる場合は、軸部3eも基端部3c同様に板状に成形することが望ましく、これにより座掘穴1e全体をスリット状にすることが可能になる。
また、基端部3cとなる範囲は図3(b)に示すように断面が凹レンズ状に中央が周辺より薄く凹んでいると更に望ましく、これにより基端部3c断面の係合孔3fによる断面欠損が薄い部分だけに留まり、引張耐力のロスを削減することができる。
また、基端部3cが、図8(a)に示すような板状でない場合に比べ、同(b)に示すように板状になっていることにより、建物躯体の層間変形に追従する可動量bを大きくすることができる。
また、ステンレス鋼などの耐食鋼を使用すると、成形後の防錆処理を省略できる。
【0011】
第2の手段の実施例を図4に示す。第2の手段にあっては、平鋼から取付金具3を形成するので、先端部3d近傍にも明瞭な示方性があり、取付金具3を座掘穴1eへ挿入した後も、係合孔3fの向きを容易に把握することができるようになり、係止杆2の挿通作業が容易になる。
その形状には図4(a)〜(c)および(h)〜(i)に例示するような略L形および図4R>4(d)〜(g)に例示するような略T形がある。
図4(a)に例示するように短冊状の平鋼を略L形に曲げ、その一方のフランジ部分を軸部3eおよび基端部3cとし、他方のフランジ部分を先端部3dとして成形しても良い。もちろん、図示はしないが一方のフランジ部分を基端部3cとし他方のフランジ部分を軸部3eおよび先端部3dとして成形しても良い。
【0012】
短冊状の平鋼を略L形でなく、図4(d)に例示するように略T形に一筆書きで下端から始まり下端で終わるような形状に曲げ、下端を基端3aとするように成形しても良い。基端部3cとなる2枚で成形されるT形の垂直部分が、図4(d)に例示するように互いに重ね合わされていても、接近しているだけでも良いが、重ね合わされている方が座掘穴1eの少なくとも長穴1fと連通する部分の形状をより間隔の狭いスリット状にすることが可能になるので望ましい。先端部3cとなるT形の水平部分は図4(d)に例示するように相対する2枚を重ね合わせ又は接近させても良いし、図4(e)に例示するように互いに離しても良い。重ね合わせ又は接近させた場合においては、軸部3eおよび基端部3cが平鋼2枚分の厚さとなるため、座掘穴1e全体をスリット状にすることが可能になるので、座掘穴1eを設ける作業および工具が単純になる。また、互いに離した場合においては、この間隙にナットなどを設置する、あるいはバーリング加工することが可能になり、これら雌ネジと螺合するボルトのネジ山の突出量の変動を吸収することも可能になる。先端部3dの係止部3gを雌ネジとする場合にあっては、図4(d)に例示するように該雌ネジの延長線上に位置する部分がパネル支持部材11と連結するためのボルトが挿入できるように切欠かれていると望ましく、これにより該ボルトのネジ山の突出量の変動を更に吸収することが可能になる。図示はしないが該切欠き部分の側面にタップ加工が施され該ボルトと螺合できるようにしても良く、これによりボルトの引抜き耐力を向上させることができる。また、図示はしないが略T形の垂直部分の2枚の平鋼が互いに離れないように基端3a以外の少なくとも1個所以上で緊結されている方が望ましく、これにより、先端部である両フランジに取付金具を引抜く方向の力が載荷された場合に生じる略T形から略Y形への変形を拘束して生じにくくすることができる。
【0013】
また、図4(f)〜(g)に例示するように、短冊状の平鋼を一筆書きで略T形若しくは略Y形に上部の一方の端点から始まり上部の他方の端点で終わるような形状に曲げ、下端を基端とするように成形しても良い。基端部となる2枚で成形される略T形の垂直部分が、図4(f)に例示するように互いに重ね合わされていても、接近しているだけでも良いが、重ね合わされている方が望ましく、これにより、座掘穴1e全体の形状をより間隔の狭いスリット状にすることが可能になるうえ、基端3aの底面に使用する鋼材量を低減できる。また、略T形の垂直部分の2枚の平鋼が互いに離れないように基端3a以外の少なくとも1個所以上で緊結されている方が望ましく、これにより、先端部3cである両フランジに取付金具3を引抜く方向の力が載荷された場合に生じる略T形から略Y形への変形を拘束して生じにくくすることができる。
【0014】
略L形、略T形、略Y形のいづれの場合においても、先端部3dに設ける係止部3gは、雌ネジをタップ加工により設けても良いし、バーリング加工をした上でタップ加工を施して設けても良い。
また、かしめ用ナットあるいはかしめ用ボルトをかしめることで設けても良いし、ナットあるいはボルトを溶接することで設けても良いし、接着材でナットを接着させることにより設けても良いし、ナットを該取付金具本体の平鋼で挟み込むあるいは包み込むことにより設けても良い。なお、列記したいづれの場合にあっても、先端部3dの基端3a側の面にナットを設けるのが望ましく、これにより取付金具3に加わる引抜き力への抵抗力が確保しやすくなる。
【0015】
また、係止部3gを、ナットを該取付金具本体平鋼で挟み込むあるいは包み込むことにより設ける場合にあっては、ナットの締付トルク方向に、機械的に引っかかる個所を設けるのが望ましく、これによりナットが共回りするのを防止できる。
また、図4(f)に例示するように取付金具3の係止部3gを壁面方向に折り曲げた平鋼そのものとしても良い。この係止部3gとパネル支持部材11との間隙に楔を挿入してパネル支持部材11と連結させても良く、これにより、ネジ螺合の手間を軽減でき作業性が向上する。
【0016】
また、この係止部3gと軸部3eがなす角が大きくなる方向に予め変形しておき、該取付金具3を係止杆2と係合させ、しかるのちに該角がもとの角度に戻ろうとする該取付金具3の変形復元力を利用してパネル支持部材11と連結させても良く、これによりネジ螺合や楔挿入の手間を軽減でき作業性が向上するうえ、パネル取付に要する金具の部材点数を1個少なくすることができる。なお、この変形復元性は、使用する鋼材の弾性変形範囲を利用したものでも良く、形状記憶合金の特性を利用したものでも良い。
【0017】
使用する平鋼は、めっき鋼板もしくは耐食鋼板とするのが望ましく、これにより成形後の防錆処理工程を省略することができる。
また、基端部3cとなる範囲の断面を図3(b)に示すように凹レンズ状に中央が周辺より薄く凹ませると更に望ましく、これにより基端部断面の係合孔3fによる断面欠損が薄い部分だけに留まり、引張耐力のロスを削減することができる。
【0018】
また、図4(i)に例示するように取付金具3にリブを設けても良いし、図示はしないが端に折り返しを設けても良く、これにより引抜き力による各所の曲げ変形を抑制できるとともにより大きな引抜き耐力を得られ、また、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
また、図4(h)に例示するように少なくとも軸部3eをねじり加工しても良く、これにより軸部鋼材の降伏点がねじり加工に伴い加工硬化で上昇し、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
第3の手段にあっては、鋳鋼で成型しても良いし、要求される引抜き耐力やねじり耐力を満足する他の素材、例えば繊維補強プラスチックや繊維補強ガラスなどで成型しても良い。
【0019】
また、座掘穴1eの形状を図7に示すように、少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状とすることによって、板状の基端部3cをスリットの形状に合わせて挿入することが同時に係合孔3fの向きを係止杆2に向けることになるので、該係止杆2の挿通作業が更に容易になる。更に、係止杆2の取付金具3による引抜き力に対する支点すなわちパネルとの接触点1gの間隔aを狭めることができ、これにより、該係止杆2に作用する曲げ応力度を低減できるので係止杆2の断面をより小さく細いものにすることが可能になる。
【0020】
【実施例】
以下、その詳細を図示した実施例によって説明する。
図1は本発明の実施例による壁パネルの斜視図、図2はその要部の破断斜視図である。
壁パネル取付現場において、壁パネル1の長辺小口面1dの所定の位置にその面と垂直方向に長穴1fをあけ、パネル室内側表面1cからこの面と垂直方向に長穴1fに達する座掘穴1eをあける。
また、長穴1fおよび座掘穴1eの位置がパネル製造時に決定しており現場変更等のない場合には、工場においてパネルを製造する時に予めあけておいた穴を利用することもできる。
次に座掘穴1eに取付金具3を挿入する。
この取付金具3は、基端部3cに係合孔3f、先端部3dに係止部3gを有しており、座掘穴1eに基端3aを先にして長穴1fまで挿入し、一方係止杆2は長穴1fに挿入し、係合孔3fを挿通して取付金具3と係合する。
このように、取付金具3は係止杆2と係合されているので、座掘穴1eの位置は長穴1f内の係止杆2と組合わせて任意の位置に調整することができる。
【0021】
図3は本発明による取付金具3の例である。
本例に示す取付金具3の形状は、板状の基端部3cに略円形の係合孔3f、先端部3dに係止部3gである雄ネジを有している。なおパネル係止部3gは雄ネジであっても雌ネジであってもネジ以外の構造でも良い。また、係合孔3fは環状であっても、環状の一部が欠如していても、多角形であっても、係止杆2を係合保持できる形状であれば良い。基端部3cが板状になっていることにより図8(b)に示すように、図8(a)に示すような板状になっていない場合に比べ、建物躯体に層間変形が生じた際の追従可能な可動量baを大きくすることができる。
【0022】
また、係止杆2は外形が略円状で取付金具3の係合孔に差し通せる太さのものであれば棒状のものでも管状のものでも良い。
また、基端部3cとなる範囲は図3(b)に示すように断面が凹レンズ状に中央が周辺より薄く凹んでいると望ましく、これにより基端部断面の係合孔3fによる断面欠損が薄い部分だけに留まり、引張耐力のロスを削減することができる。
【0023】
図4は、本発明による取付金具3の他の実施例である。
取付金具3の各機構を満たすものであれば、図4のように短冊状の平鋼を加工して取付金具3を成形しても良い。
図4(a)は略L形に成形して、バーリング加工したうえでタップ加工して係止部3gとした一例である。
図4(b)は図4(a)において、基端部3c側からかしめ用ナットをかしめて係止部3gとした一例である。
図4(c)は略L形に成形して、先端部において取付金具本体でナットを包み込んで係止部3gとした一例である。
図4(d)は一筆書きで下端から始まり下端で終わるように略T形に成形して、タップ加工により係止部3gとし、雌ネジの延長上の軸部をボルト山の突出量の変動を吸収できるように切欠いた一例である。切欠きを設けることによって切欠きがない場合に比べ、ボルト山の突出量の変動を吸収できる量が格段に向上する。また、図示はしないがこの切欠きの側面にタップ加工を施すこともでき、この場合前記した利点に加え更に、ボルトの引抜き耐力を向上させることができる。
【0024】
図4(e)は一筆書きで下端から始まり下端で終わるように略T形に、かつ、T形の水平部分の相対する2枚の平鋼の間隔を離すように成形した一例である。この2枚の平鋼の間隔を離したことにより、この2枚の平鋼で挟まれる空間ができ、この空間内に係止部3gとなるナットを設置することもできるし、また、該ナットなどの雌ネジである係止部3gと螺合するボルトの山の突出量を吸収できるようになる。
図4(f)は一筆書きに上部の一方の端点から始まり上部の他方の端点で終わるように略T形に成形した一例である。図示していないが、先端部3dすなわちこのT形の水平部分に雌ネジあるいは雄ネジの係止部3gを設けても良い。
図4(g)は図4(f)の先端部3dと軸部3eがなす角を鋭角にした一例である。図示はしないが逆に鈍角にしても良い。
図4(h)は図4(a)の軸部をねじった一例である。ねじったことにより、軸部鋼材の降伏点がねじり加工に伴い加工硬化で上昇し、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
【0025】
図4(i)は図4(a)の曲がり部にリブを設けた一例である。リブを設けたことにより、係止部3gと係合孔3fとが同一軸線上にない事に起因して生じる取付金具3に生じる曲げ応力に対する強度および剛性が向上するため、より大きな引抜き耐力を得られる。また図示しないが、リブではなく端に折り返しを設けても良い。とくに軸部3eおよび基端部3cの端を折り返した場合にあってはネジ螺合に伴う締付トルクに対するねじり耐力を向上させることができる。また図示しないが、これらを組合わせても良い。
【0026】
図5は、取付金具3を用いて壁パネル1を長辺が鉛直になる方向に構造躯体10に取付けた例を示すものである。
パネル支持部材11は、取付金具3と直接係止されるパネル支持金具11aと構造躯体10に固着されるアングル材11bによってなり、パネル支持金具11aがアングル材11bに固着されて構成される。
壁パネル1は取付金具3が貫通する透孔を有するパネル支持金具11aに取付金具3の先端部3dを貫通させてナット12で取付けられている。
【0027】
図6は、図5における取付部の水平断面図を示すものである。
図7は、図6において座掘穴1eの長穴と連通する部分をスリット状にした一例を示したものである。このようにスリット状に座掘る手段としては、図示はしないがチェーンソーの先端をパネル室内側表面1cに対して略垂直に押し当てて座掘る方法などがある。
図8は、座掘穴1eをパネル室内側から見た立面図であり、図8(a)は図9(b)に示す従来技術の取付金具3を用いた場合の立面図、図8(b)は図3に示す取付金具を用いた場合の立面図である。
図9は、従来技術における取付金具3の例であり、図9(a)は高ナットタイプの例、図9R>9(b)はアイボルトタイプの例である。いづれも、基端部3cの厚みは先端部3dや軸部3eと同程度ある。
【0028】
図10は、図2に相当する要部の従来技術の破断斜視図である。取付金具3の基端部3cが座掘穴1eの奥に挿入されるため、外部からは奥深く挿入された該取付金具の基端部が見えにくいため係合孔3fの向きを係止杆2に合わせるのが困難である。
図11は、図6に相当する従来技術の水平断面図である。
本構造は、長穴1f、座掘穴1eを現場で穴あけするとすれば、母材強度の低いALC(軽量気泡コンクリートパネル)などに最適である。長穴1fは長辺小口から設けた実施例により説明したが短辺小口から設けても良く、また小口に略垂直にあける例により説明したが略垂直でなくとも良い。
【0029】
取付金具3は、「金具」と呼称しているが、所定の機能および性能さえ満たせば鋼材でなくとも良く、もちろん繊維補強プラスチックなどの非金属材料で成形されても良い。
取付金具3の係止部3gは、実施例においてはネジの例で示したが、係止機能さえ有していれば、くさび機構などでも良い。
また、座掘穴1eの形状を図7に示すように、少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状とすることによって、板状の基端部3cをスリットの形状に合わせて挿入することが同時に係合孔3fの向きを係止杆2に向けることになるので、該係止杆2の挿通作業が更に容易になる。更に、係止杆2の取付金具3による引抜き力に対する支点すなわちパネルとの接触点1gの間隔aを狭めることができ、これにより、該係止杆2に作用する曲げ応力度を低減できるので係止杆2の断面をより小さく細いものにすることが可能になる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は以上の通りであり、実施上次のような効果をもたらすものである。
(1)取付金具3の少なくとも基端部3cを板状にしたことにより、取付金具3を座掘穴1eに挿入した後も外部から基端部3cの向きを見やすくなるので係合孔3fの向きを容易に把握することができるようになり、係止杆2の挿通作業が容易になる。
(2)取付金具3の基端部3cを板状にしたことにより、座掘穴1e内における取付金具3の長穴1f方向の可動量bが大きくなり、その結果建物躯体の層間変形への追従性能が向上する。
(3)座掘穴1eの形状を少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状にした場合において、板状の基端部3cをスリットの形状に合わせて挿入することが同時に係合孔3fの向きを係止杆2に向けることになるので、係止杆2の挿通作業が容易になる。
【0031】
(4)座掘穴1eの形状を少なくとも長穴1fと連通する部分において該長穴1fに略垂直なスリット状にした場合において、係止杆2の取付金具3による引抜き力に対する支点すなわちパネルとの接触点1gの間隔aを狭めることができ、これにより、該係止杆2に作用する曲げ応力度を該間隔aに比例して低減できるので、該係止杆2に要求される断面性能は低減され、該係止杆断面を従来より小さく細いものにすることが可能になる。
(5)取付金具3の基端部3cの中央部を周辺部より薄く凹ませた場合にあっては、係合孔3fによる該基端部3cの断面欠損量を最小限に留める、即ち、係合孔3f周辺の該基端部欠損後断面をより大きくすることができ、その結果、該基端部欠損後断面の大きさに比例する破断荷重を大きくでき、それ故、該取付金具3の引抜き耐力をより強くすることが可能になる。
(6)特に平鋼から取付金具3を成形した場合にあっては、該取付金具3の先端部3dにおいても示方性を有するため、パネル内部で係止杆2を該取付金具3の基端部係合孔3fに差し通す際に該係合孔3fの向きを該係止杆2側に更に容易にあわせられ、挿通作業を簡便化できる。
【0032】
(7)平鋼から取付金具3を成形し、先端部3dおよび/又は曲がり部にリブおよび/又は端折り返しを設けた場合にあっては、引抜き力による先端部3dや曲がり部の変形量を低減することができ、より大きな引抜き力に対して該引抜き力除荷後の変形復元性を発揮できる。
(8)平鋼から取付金具3を成形し、軸部3eおよび/又は/基端部3cおよび/又は曲がり部にリブおよび/又は端折り返しを設けた場合にあっては、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
【0033】
(9)平鋼から取付金具3を成形し、軸部3eをねじった場合にあっては、ねじり加工に伴い軸部3eが加工硬化しており、それ故、ネジ螺合に伴う締付トルクへのねじり耐力を向上させることができる。
【0034】
(10)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成した場合にあっては、パネル支持部材11から作用する引抜き力載荷点と、基端部係合孔3fで係止杆2に伝達する作用点が一直線上にあるため、該取付金具3全体には曲げ応力が発生せず、それ故、金具断面設計を容易にし、かつ、断面を小さくすることができる。
(11)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成し、かつ、先端部係止部3gが雌ネジであり、かつ、軸部3eのうち雌ネジの延長線上に位置する部分がパネル支持部材11と連結するためのボルトが挿入できるよう切欠かれている場合にあっては、壁パネル小口面1dに設けられる係止杆挿入用長穴1fの壁パネル厚み方向の精度誤差や、該ボルト長の変動等による該ボルトネジ山の突出量の変動を吸収することが可能になる。
【0035】
(12)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成し、かつ、先端部係止部3gが雌ネジであり、軸部3eのうち雌ネジの延長線上に位置する部分がパネル支持部材11と連結するためのボルトが挿入できるよう切欠かれており、かつ、該切欠き部の側面にタップ加工が施されている場合にあっては、該側面部とも該ボルトを螺合させることにより、引抜き耐力を向上させることができる。
(13)平鋼から取付金具3を成形し、略T形のように基端部3cを2枚の平鋼で構成した場合にあっては、倍の厚みを持つ平鋼をL形に曲げて基端部3cを1枚で構成した場合に比べて、引抜き耐力は同等以上であるうえ、引抜き力により該取付金具全体に曲げモーメントが加わらないので変形量も小さく押えることができ、かつ、引抜き力除荷後に復元し得る最大の引抜き力も大きくすることができる。
【0036】
(14)平鋼から取付金具3を成形し、該取付金具3とパネル支持部材11との間にくさびを挿入して連結させた場合および該取付金具3の先端部3dと軸部3eのなす角の変形復元力を用いてパネル支持部材11と連結した場合にあっては、ネジ螺合の手間を軽減でき、作業性が向上する。とりわけボルト貫入長が長い場合に作業性向上が顕著である。
(15)平鋼から取付金具3を成形し、該取付金具3の先端部3dと軸部3eのなす角の変形復元力を用いてパネル支持部材11と連結した場合にあっては、ネジ螺合若しくは楔挿入の手間を軽減でき、作業性が向上する。
(16)平鋼から取付金具3を成形し、該取付金具3の先端部3dと軸部3eのなす角の変形復元力を用いてパネル支持部材11と連結した場合にあっては、壁パネルの取付に要する金具の部材点数を1個少なくすることができる。
【0037】
(17)使用する平鋼をめっき鋼板、あるいは、耐食鋼板にした場合にあっては、成形後のめっき工程を省略することができるため、製造工程を短縮することができる。
(18)平鋼から取付金具3を成形した場合にあっては、使用する鋼材量を軽減することができるので、軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における壁パネルの斜視図である。
【図2】図1の要部の破断斜視図である。
【図3】本発明の取付金具の実施例であり、(a)は正面および側面図、(b)は(a)の矢印における断面図である。
【図4】(a)〜(i)は、本発明取付金具の他の実施例を示す斜視図である。
【図5】本実施例により壁パネルをパネル長辺が鉛直方向になるように構造躯体に取付けた状態を示す鉛直断面図である。
【図6】図5における取付部の水平断面図である。
【図7】座掘穴のうち、取付金具基端部と係止杆が連通する部分をスリット状にした場合の例を示す図5の取付部の水平断面図である。
【図8】パネル室内側から見た座掘穴部の立面図であり、(a)は従来技術の取付金具を用いた立面図、(b)は本発明取付金具を用いた立面図である。
【図9】従来技術の、取付金具の例を示し、(a)は高ナットタイプの例を示す斜視図、(b)はアイボルトタイプの例を示す立面および側面図である。
【図10】図2に相当する要部の、従来技術の破断斜視図である。
【図11】図6に相当する、従来技術の水平断面図である。
【符号の説明】
1 壁パネル
1c 壁パネル1の室内側表面
1d 壁パネル1の長辺小口面
1e 座掘穴
1f 長穴
1g 係止杆を支持する支点
2 係止杆
3 取付金具
3a 基端
3b 先端
3c 基端部
3d 先端部
3e 軸部
3f 係合孔
3g 係止部
10 構造躯体
11 パネル支持部材
11a パネル支持金具
11b アングル材
12 ナット
a 係止杆の取付金具による引抜き力に対する支点作用点間隔
b 座掘穴内での取付金具の可動量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁パネルの小口面にパネル表面に略平行な長穴を設け、壁パネル室内側表面から前記長穴に連通する座掘穴を設け、この座掘穴に、基端部には係合孔が設けられるとともに先端部には直接又は別体の固定部材を介して壁パネル支持部材に固定される係止部を有する取付金具の基端部を挿入し、長穴に差込んだ係止杆を前記取付金具基端部の係合孔に挿通して取付金具を壁パネル内に係止する一方、取付金具先端部の係止部をパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネルを取付ける構造であって、取付金具の少なくとも基端部が板状であることを特徴とする壁パネルの取付構造。
【請求項2】
少なくとも前記長穴と前記座掘穴とが連通する部分の座掘穴の形状が、前記長穴の方向に対し略垂直なスリット状であることを特徴とする請求項1記載の取付構造。
【請求項3】
棒状若しくは管状の部材の一端を板状に成形して基端部とし、他端に雄ネジ若しくは雌ネジを設けて先端係止部としたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
【請求項4】
平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端部とし、先端部に雌ネジ部分を設けたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
【請求項5】
平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端係止部とした取付金具の該先端係止部をパネル支持部材に嵌合して連結したことを特徴とする請求項1または2記載の壁パネルの取付構造。
【請求項1】
壁パネルの小口面にパネル表面に略平行な長穴を設け、壁パネル室内側表面から前記長穴に連通する座掘穴を設け、この座掘穴に、基端部には係合孔が設けられるとともに先端部には直接又は別体の固定部材を介して壁パネル支持部材に固定される係止部を有する取付金具の基端部を挿入し、長穴に差込んだ係止杆を前記取付金具基端部の係合孔に挿通して取付金具を壁パネル内に係止する一方、取付金具先端部の係止部をパネル支持部材に連結することで所定の取付個所に壁パネルを取付ける構造であって、取付金具の少なくとも基端部が板状であることを特徴とする壁パネルの取付構造。
【請求項2】
少なくとも前記長穴と前記座掘穴とが連通する部分の座掘穴の形状が、前記長穴の方向に対し略垂直なスリット状であることを特徴とする請求項1記載の取付構造。
【請求項3】
棒状若しくは管状の部材の一端を板状に成形して基端部とし、他端に雄ネジ若しくは雌ネジを設けて先端係止部としたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
【請求項4】
平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端部とし、先端部に雌ネジ部分を設けたことを特徴とする壁パネルの取付金具。
【請求項5】
平鋼から成形し、一端に係合孔を設けて基端部とし、他端側は壁面方向に折り曲げ部を設けて先端係止部とした取付金具の該先端係止部をパネル支持部材に嵌合して連結したことを特徴とする請求項1または2記載の壁パネルの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2004−190308(P2004−190308A)
【公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−358659(P2002−358659)
【出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】
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