説明

壁パネル取付具

【課題】本発明は、下地金物に対する取付金具の追従性を高めて、締結部材に加わる剪断力を低減させるようにした壁パネル取付具を提供する。
【解決手段】本発明は、構造躯体3に固定された下地金物7Aに壁パネル1を取り付けるための壁パネル取付具10において、壁パネル1にボルト止めされるパネル取付部23と、壁パネル1とで下地金物7A,7Bを挟持する挟持部19cとを有する取付金物19Aと、挟持部19cに設けられた挿通孔19e内に挿入されて、下地金物7Aを貫通するビス25とを備え、取付金物19Aの挟持部19cの前端Tのみが下地金物7Aに圧着される。稲妻プレート19Aの挟持部19cの前端Tのみを下地金物7Aに圧着させることで、下地金物7Aに対する挟持部19cの摩擦抵抗を増大させ、稲妻プレート19Aと下地金物7Aとの協働によってビス25に作用する剪断力を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量気泡コンクリートパネル等の壁パネルを、略L字形鋼材等からなる下地金物に取り付けるための壁パネル取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)の建物における壁パネルの取付け構造としては、壁パネル取付け位置の上下で構造躯体に固定された下地金物間に壁パネルが取り付けられる場合がある。この種の壁パネルの取付け構造では、稲妻プレートなどの取付金物を壁パネルの所定位置に取り付け、取付金物が取り付けられた壁パネルを下地金物間に建て込んで取り付けていく。このような壁パネルの取付け構造に利用される壁パネル取付具としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
平板をプレス成形してなるこの取付金具は、壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、壁パネルとで下地金物を挟持する挟持部とを有している。この取付金具の挟持部の裏面は、ボルトを締め込むことで下地金物に押し当てられ、パネル取付部の裏面もボルトを締め込むことで壁パネルに押し当てられる。ボルト締め完了後、取付金物の挟持部を貫通するようにアンカーピン(締結部材)を下地金物に打ち込んで、取付金具と下地金物との一体化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−96955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、取付金具のパネル取付部の裏面と挟持部の裏面とは、下地金物の厚みと略同一の段差をもって互いに略平行に延在しているので、下地金物の表面と挟持部の裏面とは面接触状態になっており、強風や地震などが起こり、複数階の建物で層間変位が生じると、面内方向において、下地金物は構造躯体に追従して変位するが、壁パネルはその場所に留まろうとするので、下地金物と壁パネルとの変位量の差によって、取付金具を止めるために利用されるボルトやアンカーピン(締結部材)に対して大きな剪断力が発生する。このとき、取付金具はボルトによって壁パネルにしっかりと固定されているので、アンカーピン(締結部材)の方に非常に大きな剪断力が作用して、アンカーピンを破損させてしまう虞があるといった問題点があった。
アンカーピンに大きな剪断力が連続的又は断続的に作用し続けると、アンカーピンの破断、曲がり、抜けが発生し易く、この対策として、アンカーピンの本数を増やすか、剪断強度の高い材質のアンカーピンを利用する必要があり、このことは、コストアップや作業性の低下を招来するものである。
【0005】
本発明は、下地金物に対する取付金具の追従性を高めて、締結部材に加わる剪断力を低減させるようにした壁パネル取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、構造躯体に固定された下地金物に壁パネルを取り付けるための壁パネル取付具において、
壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、壁パネルとで下地金物を挟持する挟持部とを有する取付金物と、
挟持部及び下地金物を貫通する締結部材とを備え、
取付金物の挟持部の前端のみが下地金物に圧着されることを特徴とする。
【0007】
この壁パネル取付具においては、取付金物の挟持部の前端のみを下地金物に圧着させることで、下地金物に対する挟持部の摩擦抵抗を安定的に得て、これによって、強風や地震などで、下地金物や壁パネルが揺れた場合でも、下地金物に対する取付金具の追従性を高めることができる。その結果として、取付金具と下地金物との協働によって締結部材に作用する剪断力を低減させることができ、締結部材の本数を増やしたり、剪断強度の高い材質を使用したり、挟持部を下地金物に溶接するといった対策が不要になるため、コストアップや作業性の低下をもたらすことがない。
【0008】
また、締結部材は、ビスであると好適である。
このような構成を採用すると、ビスが下地金物に螺合される際、下地金物から発生する切粉が、挟持部と下地金物との隙間に入り込むことになるので、隙間の部分で切粉がビスに付着し、これによって、ビスの緩み防止が達成される。さらに、隙間に入った切粉は、取付金具の摩擦抵抗の増大にも寄与する。
【0009】
また、挟持部は、下地金物の取付金具装着面に対し所定の角度をもって延在していると好適である。
このような構成を採用すると、挟持部に弾発力を発生させ易く、これによって、取付金物の挟持部の前端を下地金物に、しっかりと且つ確実に圧着させた状態で維持させておくことができる。
【0010】
また、角度は、約0.3度〜約1.5度であると好適である。
このような構成は、挟持部が下地金物からあまり離れ過ぎず、しかも、挟持部と下地金物との隙間に入り込んだ切粉を滞留させ易い。
【0011】
また、パネル取付部は、壁パネルの取付金具装着面に対して所定の角度をもって延在していると好適である。
このような構成を採用すると、パネル取付部に弾性力を発生させ易く、これによって、ナットを緩み難くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下地金物に対する取付金具の追従性を高めて、締結部材に加わる剪断力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ALCパネルが下地金物に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図2】ALCパネルの下部における取付け構造を示す断面図である。
【図3】ALCパネルの上部における取付け構造を示す断面図である。
【図4】本発明に係る壁パネル取付具に適用されるビスの正面図である。
【図5】本発明に係る壁パネル取付具に適用される稲妻プレートを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線に沿った断面図である。
【図6】ALCパネルに取付金物を組み付ける際の状態を示す分解斜視図である。
【図7】ALCパネルを下地金物に取り付ける際の状態を示す斜視図である。
【図8】稲妻プレートと下地金物との関係を示す要部拡大断面図である。
【図9】稲妻プレートの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る壁パネル取付具の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、壁パネルに相当する軽量気泡コンクリート(Autoclaved Light-weight Concrete)パネル(以下、「ALCパネル」という)1は、鉄筋コンクリート(Reinforced-Concrete)造の構造躯体3の所定位置に順次建て込まれ、専用の稲妻プレート19A,19B及びビス25を介して上下に配置された下地金物7A,7Bに取り付けられている。
【0016】
稲妻プレート19A,19Bは取付金物に相当し、ビス25は締結部材に相当し、壁パネル取付具10は、稲妻プレート19A,19Bとビス25とによって構成されている。そして、取付け構造9A,9Bにあっては、構造躯体3に固定された下地金物7A,7Bに壁パネル取付具10を介してALCパネル1が取り付けられている構造をいう。
【0017】
下地金物7A,7Bは、構造躯体3に形成された開口の床側の下部及び天井側の上部に沿って配置されており、構造躯体3に埋め込まれた鋼材に溶接されるなどして固定されている。下地金物7A,7B(図2及び図3参照)は略L字形鋼材からなり、構造躯体3に当接する水平辺7aと、水平辺7aから立設された垂直辺7bとを有する。
【0018】
まず、下側の下地金物7AへのALCパネル1の取付け構造9Aについて説明する。図2に示されるように、下地金物7Aの水平辺7a上には、ロッキングスペーサ11を介してALCパネル1が載置されており、垂直辺7bはALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面P2に当接している。
【0019】
ALCパネル1には、リング状の頭部13aを有するボルト13が固定されており、ボルト13の軸部13bがALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面P2から突き出している。なお、ボルト13は、ALCパネル1に形成された穴6内に頭部13a側が挿入され(図6参照)、差込み穴8内に頭部13aを交差するように挿入された鋼棒15によって抜けないように固定されている。
【0020】
ボルト13の軸部13bには、稲妻プレート19Aが組み付けられている。稲妻プレート19Aは、軸部13bが通されてALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面P2に当接する。なお、本実施形態では、稲妻プレート19AがALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面P2に当接するが、稲妻プレートとALCパネル1との間で別体のプレートを挟むような態様であってもよい。
【0021】
図5に示すように、稲妻プレート19Aは、略矩形で平板状の鋼材のプレス加工により成形され、中央部分に段差19aが形成されるような加工が施されている。段差19aを挟んで一方側がALCパネル1にボルト止めされるパネル取付部19bであり、他方側がALCパネル1とで下地金物7Aを挟持する挟持部19cである。
【0022】
パネル取付部19bには、ボルト13の軸部13bが挿通する孔19dが形成されている。パネル取付部19bから突き出た軸部13bにはナット21が螺合し、ナット21の締め付けによって、稲妻プレート19AがALCパネル1側に押圧されて固定される。挟持部19cには、ビス25が貫通する挿通孔19eが形成されている。さらに、挟持部19cの端部には、作業性を高めるために角が落とされた隅切り部19fが形成されている。
【0023】
さらに、図5及び図8に示すように、挟持部19cは、下地金物7Aの取付金具装着面P1に対して、いわゆる「先すぼみ」のような状態で、角度α1で直線的に延在し、この角度α1は、約0.3度〜約1.5度である。そして、挟持部19cの裏面側の先端Tの高低差Lは、下地金物7Aの厚みよりも僅かに小さい。また挟持部19cの裏面側の付根T’の高低差L’は、下地金物7Aの厚みと等しいか僅かに大きい。挟持部19cをこのように構成することで、挟持部19cにおいて前端Tのみを下地金物7Aの取付金具装着面P1に圧着させることができる。
【0024】
図4に示されるように、ビス25は、下地金物7Aにタップ加工を施す雄ねじが形成されたねじ部27と、ねじ部27の基端側で挟持部19cに当接する頭部29と、を備えており、さらに、ねじ部27よりも先端側には、下孔を形成するための切刃部31が設けられている。ねじ部27は、ねじ山が不完全な不完全ねじ部27bと、ねじ山が完全な完全ねじ部27aとを有する。なお、ねじ部27と頭部29との間に、ねじ山の無い部分があっても差し支えない。
【0025】
切刃部31は、先端で孔を穿つ尖形部31aと、リーマ部31bとを有する。リーマ部31bは、尖形部31aからねじ部27側に向かって直線状に形成された複数本の刃を有し、尖形部31aで形成された下孔を拡大してねじ部27が進入する下孔を形成する。
【0026】
切刃部31の有効長さ、すなわち、リーマ部31bの始端からねじ部27の始端までの長さD1は稲妻プレート19Aの挟持部19cの板厚d1及び下地金物7Aの垂直辺7bの板厚d2の合計板厚D2よりも長い。また、ビス25の働き長さ、すなわち、完全ねじ部27aの始端から頭部29までの長さD3は、合計板厚D2よりも長い。
【0027】
ビス25のねじ部27は、挟持部19c及び下地金物7Aの垂直辺7bを貫通し、下地金物7Aに螺合している。ビス25の締め付けによって、稲妻プレート19Aと下地金物7Aとが強固に取付けられて、その結果として、ALCパネル1は稲妻プレート19Aを介して下地金物7Aに取り付けられている。
【0028】
ビス25の切刃部31の有効長さD1は、稲妻プレート19Aの稲妻プレート19Aの板厚d1及び下地金物7Aの板厚d2の合計板厚D2よりも長くなっている。切刃部31の有効長さD1が合計板厚D2よりも長いことで奏される効果について説明する。
【0029】
ビス25の切刃部31が下地金物7AおよびALCパネル1に当接して下孔を形成する際には、ビス25が空回りしたり、また、空回りしないまでもリード分の進行距離が得られなかったりする。この状態で、稲妻プレート19Aとねじ部27とが螺合していると、ビス25の空回り等によって稲妻プレート19Aにはビス25の後退方向に力が作用し、下地金物7A,7Bに対して浮き上がる虞がある。
【0030】
しかしながら、本実施形態では、切刃部31の有効長さD1が稲妻プレート19Aの板厚d1及び下地金物7Aの板厚d2との合計板厚D2よりも長いため、ビス25が空回り等しても、その位置では、ねじ部27が稲妻プレート19Aと螺合しておらず、結果として、稲妻プレート19Aの浮き上がりを抑止して稲妻プレート19Aを下地金物7Aに強固に、且つ安定した状態に取り付けることが可能になる。
【0031】
さらに、稲妻プレート19Aの挟持部19cには、ビス25が挿通される挿通孔19eが予め形成されている。従って、稲妻プレート19Aへの孔あけ加工やタップ加工を軽減でき、これらの加工に要する余計な捻りトルクが不要になるため、作業性を向上させることができる。
【0032】
切刃部31で下孔を形成した後、ビス25の進行に伴ってねじ部27が下孔の周囲に雌ねじを切りながら螺合し、ビス25の頭部29は、稲妻プレート19Aに当接して稲妻プレート19Aを下地金物7A側に押圧する。その結果、下地金物7Aに稲妻プレート19Aが強固に取り付けられた状態になり、ALCパネル1の下地金物7Aへの取り付けが完了する。
【0033】
なお、稲妻プレート19Aの板厚d1と下地金物7Aの板厚d2との合計板厚D2は、ビス25の働き長さD3よりも薄いため、ビス25をねじ込んだ際に、ねじ部27が下地金物7Aまで確実に到達して螺合することになり、ビス25の抜けが防止される。
【0034】
図3に示されるように、ALCパネル1の上部も、下側の取付け構造9Aと同様の取付け構造9Bによって上側の下地金物7Bに取り付けられ、この取付け構造9Bに利用される稲妻プレート19Bは、前述した稲妻プレート19Aと同じ部品である。
【0035】
次に、ALCパネル1を構造躯体3に建て込む際の手順について説明する。
【0036】
なお、ALCパネル1の上部及び下部を取り付ける手順は共通する手順も多いため、下部の取付け手順を中心に説明を行ない、上部の取付け手順については簡単に説明する。
【0037】
図6に示されるように、ALCパネル1の裏面1aの取付金具装着面P2に、リング状の頭部13aを有するボルト13を差し込むための穴6を空け、その穴6にボルト13を頭部13a側から差し入れる。次に、ボルト13に直交する方向に沿ってALCパネル1で延在する差込み穴8内に鋼棒15を差し込み、鋼棒15を頭部13aに挿入してボルト13を所定位置に固定する。
【0038】
次に、稲妻プレート19Aの孔19dに軸部13bを挿通させ、ナット21を仮締めする。なお、稲妻プレート19Aの挟持部19cは、ALCパネル1を建て込む際の邪魔にならないようにALCパネル1の構造躯体3から遠ざかる側に退避させておく。この状態で、ALCパネル1の下部への稲妻プレート19Aの仮止めが完了する。その後、ALCパネル1の上部にも同様の手順に従って稲妻プレート19Bの仮止めを行う。
【0039】
稲妻プレート19A,19Bの仮止めが完了すると、ALCパネル1を構造躯体3の所定位置まで搬送し、建て込み作業を行う。建て込みに際して、既に構造躯体3に取り付けられている他のALCパネル1に並ぶようにALCパネル1を仮置きし、下側の下地金物7Aと上側の下地金物7Bとの間で位置合わせを行う。
【0040】
その後、下地金物7Aを引っ掛けるように、下側の稲妻プレート19Aの挟持部19cをボルト13を中心に回転させ、所定の方向に向けて、ナット21を本締めする(図7参照)。ナット21の本締めにより、稲妻プレート19Aのパネル取付部19bをパネル1側に押圧し、挟持部19cを下地金物7A側に押圧する。ここで、挟持部19cには隅切り部19fが設けられているので、挟持部19cの角が構造躯体3にぶつかることなく稲妻プレート19Aを所定の方向に回転させることができる。
【0041】
挟持部19cを下地金物7Aに結合するための位置が決まれば、ビス25を挟持部19cの挿通孔19eに差し込み、所定の押圧をかけながらスクリュードライバーでねじ込んでいく。ビス25は回転しながら進行し、切刃部31が下地金物7Aに下孔を形成する。
【0042】
切刃部31で下孔を形成した後、ビス25の進行に伴ってねじ部27が下孔の周囲に雌ねじを切りながら螺合し、ビス25の頭部29は、稲妻プレート19Aに当接して稲妻プレート19Aを下地金物7A側に更に押圧する。その結果、下地金物7Aに稲妻プレート19Aが強固に取り付けられた状態になり、ALCパネル1の下地金物7Aへの取り付けが完了する。
【0043】
なお、稲妻プレート19Aの板厚d1と下地金物7Aの板厚d2との合計板厚D2は、ビス25の働き長さD3よりも薄いため、ビス25をねじ込んだ際に、ねじ部27が下地金物7Aまで確実に到達して螺合することになり、ビス25の抜けが防止される。
【0044】
以上、ALCパネル1と下側の下地金物7Aとの取り付けを説明したが、上側の下地金物7Bも同様である。すなわち、上側の下地金物7Bを引っ掛けるように、上側の稲妻プレート19Bの挟持部19cを回転させ、ALCパネル1との間で下地金物7Bを挟み付けるようにして挟持部19cを下地金物7Bにビス止めする。その結果、上側の下地金物7BへのALCパネル1の取り付けが完了する。
【0045】
このようなALCパネル1の建て込みに利用される壁パネル取付具10において、稲妻プレート19A,19Bの挟持部19cの前端Tのみを下地金物7A,7Bに圧着させることで、下地金物7A,7Bに対する挟持部19cの摩擦抵抗を増大させ、これによって、強風や地震などで、下地金物7A,7BやALCパネル1が揺れた場合でも、下地金物7A,7Bに対する稲妻プレート19A,19Bの追従性を高めることができる。その結果として、稲妻プレート19A,19Bと下地金物7A,7Bとの協働によってビス25に作用する剪断力を低減させることができ、ビス25の本数を増やしたり、剪断強度の高い材質を使用したり、挟持部19cを下地金物7A,7Bに溶接するといった対策が不要になるため、コストアップや作業性の低下をもたらすことがない。
【0046】
特に、稲妻プレート19A,19Bは、1本のボルト13によってALCパネル1に取付けられているので、強風や地震によって、このボルト13を中心に回って位置ズレを起こすことがあるが、挟持部19cの先端Tで強い摩擦力を発生させることは、稲妻プレート19A,19Bの回り止めに大きく寄与している。
【0047】
また、図8に示すように、ビス25が下地金物7Aに螺合される際、下地金物7Aから発生する切粉Gが、挟持部19cと下地金物7Aとの隙間Sに入り込むことになるので、隙間Sの部分で切粉Gがビス25に付着し、これによって、ビス25の緩み防止が達成される。さらに、隙間Sに入った切粉Gは、隙間Sを埋めることになるので、稲妻プレート19Aの摩擦抵抗の増大にも寄与する。
【0048】
また、挟持部19cは、下地金物7A,7Bの取付金具装着面P1に対して角度α1で延在するので、挟持部19cに弾発力を発生させ易く、これによって、稲妻プレート19A,19Bの挟持部19cの前端Tを下地金物7A,7Bに、しっかりと且つ確実に圧着させた状態で維持させておくことができる。
【0049】
また、この角度α1は、約0.3度〜約1.5度であるので、挟持部19cが下地金物7A,7Bから余り離れ過ぎず、しかも、挟持部19cと下地金物7A,7Bとの隙間Sに入り込んだ切粉Gを滞留させ易い。
【0050】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、図9に示すように、他の稲妻プレート19Cとして、パネル取付部19gは、ALCパネル1の取付金具装着面P2に対して所定の角度α2をもって延在している。この角度α2は、2度〜15度が好適である。このような構成を採用すると、パネル取付部19gに弾性力を発生させ易く、これによって、ナット21を緩み難くすることができる。
【0051】
角度α1は、1.5度以上5度以下であってもよい。また、締結部材は、ビス25に代えて鉄砲ピンを利用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…ALCパネル(壁パネル)、3…構造躯体、7A,7B…下地金物、9A,9B…壁パネルの取付け構造、10…壁パネル取付具、19A,19B,19C…稲妻プレート(取付金物)、19b…パネル取付部、19c…挟持部、19e…ビスの挿通孔、23…パネル取付部、25…ビス(締結部材)、P1,P2…取付金具装着面、T…挟持部の先端、α1,α2…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体に固定された下地金物に壁パネルを取り付けるための壁パネル取付具において、
前記壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、前記壁パネルとで前記下地金物を挟持する挟持部とを有する取付金物と、
前記挟持部及び前記下地金物を貫通する締結部材とを備え、
前記取付金物の前記挟持部の前端のみが前記下地金物に圧着されることを特徴とする壁パネル取付具。
【請求項2】
前記締結部材は、ビスであることを特徴とする請求項2記載の壁パネル取付具。
【請求項3】
前記挟持部は、前記下地金物の取付金具装着面に対し所定の角度をもって延在していることを特徴とする請求項1又は2記載の壁パネル取付具。
【請求項4】
前記角度は、約0.3度〜約1.5度であることを特徴とする請求項3記載の壁パネル取付具。
【請求項5】
前記パネル取付部は、前記壁パネルの取付金具装着面に対して所定の角度をもって延在していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の壁パネル取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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