壁パネル取付具
【課題】本発明は、壁パネルの取付け時にビスを破損させることなく、取付金物の挟持部の挿通孔に対するビスの切刃部の確実な位置合わせを達成するようにした壁パネル取付具を提供する。
【解決手段】本発明は、構造躯体３に固定された下地金物７Ａ，７ＢにＡＬＣパネル１を取り付けるための壁パネル取付具において、
ＡＬＣパネル１にボルト止めされるパネル取付部１９ｂと、ＡＬＣパネル１とで下地金物７Ａ，７Ｂを挟持する挟持部１９ｃとを有する稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂと、挟持部１９ｃに設けられた挿通孔１９ｅ内に挿入されて、下地金物７Ａ，７Ｂに下孔を形成する切刃部４１と、下地金物７Ａ，７Ｂに螺合するねじ部２７と、を有するビス４０とを備え、ビス４０のねじ部２７の直径Ａと挿通孔１９ｅの直径Ｂとを略等しくした構成である。
【解決手段】本発明は、構造躯体３に固定された下地金物７Ａ，７ＢにＡＬＣパネル１を取り付けるための壁パネル取付具において、
ＡＬＣパネル１にボルト止めされるパネル取付部１９ｂと、ＡＬＣパネル１とで下地金物７Ａ，７Ｂを挟持する挟持部１９ｃとを有する稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂと、挟持部１９ｃに設けられた挿通孔１９ｅ内に挿入されて、下地金物７Ａ，７Ｂに下孔を形成する切刃部４１と、下地金物７Ａ，７Ｂに螺合するねじ部２７と、を有するビス４０とを備え、ビス４０のねじ部２７の直径Ａと挿通孔１９ｅの直径Ｂとを略等しくした構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、軽量気泡コンクリートパネル等の壁パネルを、略Ｌ字形鋼材等からなる下地金物に取り付けるための壁パネル取付具に関する。
【背景技術】
【０００２】
鉄骨造（Ｓ造）や鉄筋コンクリート造（ＲＣ造）の建物における壁パネルの取付け構造としては、壁パネル取付け位置の上下で構造躯体に固定された下地金物間に壁パネルが取り付けられる場合がある。この種の壁パネルの取付け構造では、稲妻プレートなどの取付金物を壁パネルの所定位置に取り付け、取付金物が取り付けられた壁パネルを下地金物間に建て込んで取り付けていく。このような壁パネルの取付け構造に利用される壁パネル取付具としては、例えば、特許文献１に記載の技術が知られている。
平板をプレス成形してなるこの取付金具は、壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、壁パネルとで下地金物を挟持する挟持部とを有している。この取付金具の挟持部の裏面は、ボルトを締め込むことで下地金物に押し当てられ、パネル取付部の裏面もボルトを締め込むことで壁パネルに押し当てられる。ボルト締め後、取付金物の挟持部の挿通孔を貫通するようにアンカーピンを下地金物に打ち込んで、取付金具と下地金物との一体化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００３−９６９５５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、取付金物の挟持部には、アンカーピンの先端を挿入させるための挿通孔が形成されているので、挿通孔の径がアンカーピンの径より大きいと、挿通孔の中心に対してアンカーピンがズレて打ち込まれる虞があり、挿通孔に対するアンカーピンの位置ズレが起こる虞がある。挿通孔の径がアンカーピンの径より小さいと、挿通孔を広げるようにアンカーピンが打ち込まれるので、発射エネルギーの一部が挿通孔拡大に消費されて、下地金物への貫入エネルギーが不足する虞がある。
【０００５】
本発明は、壁パネルの取付け時にビスを破損させることなく、取付金物の挟持部の挿通孔に対するビスの切刃部の確実な位置合わせを達成するようにした壁パネル取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、構造躯体に固定された下地金物に壁パネルを取り付けるための壁パネル取付具において、
壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、壁パネルとで下地金物を挟持する挟持部とを有する取付金物と、
挟持部に設けられた挿通孔内に挿入されて、下地金物に下孔を形成する切刃部と、下地金物に螺合するねじ部と、を有するビスとを備え、
ビスのねじ部の直径と挿通孔の直径とを略等しくしたことを特徴とする。
【０００７】
この壁パネル取付具においては、ビスのねじ部の直径と取付金物の挿通孔の直径とを略等しくすることで、ビスの打つ位置が一意に決まるので、ビスが取付金具の縁に近づき過ぎることがなく、ビスの予定された固定力を発揮させ易い。しかも、挿通孔によるビスの切刃部の確実な位置合わせがなされるので、ビスのねじ部によって挿通孔の壁面に浅いねじ痕が残る場合もあるが、タップ切りのように深い雌ねじ部が形成されることがないので、取付金物を後退させるような螺合が生じないと言え、これによって、下地金物から稲妻プレートが浮き上がることがない。つまり、挿通孔の壁面とビスとが螺合すると、ビスの一回転によって切刃部が下地金物を切り進む距離がリード分よりも小さい場合、取付金物を後退させて下地金物から浮き上がらせる虞があるが、本発明では、ビスにより挿通孔の壁面に、取付金物を後退させるような雌ねじ部が形成されることがないので、このような問題も発生しない。また、ビスの切刃部で挿通孔の壁面を削ることが無いので、ビスを回すのに無駄なトルクを必要とせず、施工性が高められる。
【０００８】
また、挟持部には、挿通孔のビス挿入口に連通してビスの頭部が入り込む凹部が形成されていると好適である。
このような構成を採用すると、凹部内にビスの頭部が収まるので、ビスの頭部が取付金具から必要以上に突出することがなく、外観品質を向上させることができる。さらに、ビスのねじ部の有効長さが短い場合でも、ねじ部を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、壁パネルの取付け時にビスを破損させることなく、取付金物の挟持部の挿通孔に対するビスの切刃部の確実な位置合わせを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】ＡＬＣパネルが下地金物に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図２】ＡＬＣパネルの下部における取付け構造を示す断面図である。
【図３】ＡＬＣパネルの上部における取付け構造を示す断面図である。
【図４】本発明に係る壁パネル取付具に適用されるビスの正面図である。
【図５】本発明に係る壁パネル取付具に適用される稲妻プレートを示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は（ａ）のｂ−ｂ線に沿った断面図である。
【図６】ＡＬＣパネルに取付金物を組み付ける際の状態を示す分解斜視図である。
【図７】ＡＬＣパネルを下地金物に取り付ける際の状態を示す斜視図である。
【図８】ビスの他の例を示す断面図である。
【図９】稲妻プレートの他の例を示す要部拡大断面図である。
【図１０】稲妻プレートの更に他の例を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る壁パネル取付具の好適な実施形態について詳細に説明する。
【００１２】
図１に示すように、壁パネルに相当する軽量気泡コンクリート（Autoclaved Light-weight Concrete）パネル（以下、「ＡＬＣパネル」という）１は、鉄筋コンクリート（Ｒeinforced-Concrete）造の構造躯体３の所定位置に順次建て込まれ、専用の稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂ及びビス２５を介して上下に配置された下地金物７Ａ，７Ｂに取り付けられている。
【００１３】
稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂは取付金物に相当し、ビス２５は締結部材に相当し、壁パネル取付具１０は、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂとビス２５とによって構成されている。そして、取付け構造９Ａ，９Ｂにあっては、構造躯体３に固定された下地金物７Ａ，７Ｂに壁パネル取付具１０を介してＡＬＣパネル１が取り付けられている構造をいう。
【００１４】
下地金物７Ａ，７Ｂは、構造躯体３に形成された開口の床側の下部及び天井側の上部に沿って配置されており、構造躯体３に埋め込まれた鋼材に溶接されるなどして固定されている。下地金物７Ａ，７Ｂ（図２及び図３参照）は略L字形鋼材からなり、構造躯体３に当接する水平辺７ａと、水平辺７ａから立設された垂直辺７ｂとを有する。
【００１５】
まず、下側の下地金物７ＡへのＡＬＣパネル１の取付け構造９Ａについて説明する。図２に示されるように、下地金物７Ａの水平辺７ａ上には、ロッキングスペーサ１１を介してＡＬＣパネル１が載置されており、垂直辺７ｂはＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２に当接している。
【００１６】
ＡＬＣパネル１には、リング状の頭部１３ａを有するボルト１３が固定されており、ボルト１３の軸部１３ｂがＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２から突き出している。なお、ボルト１３は、ＡＬＣパネル１に形成された穴６内に頭部１３ａ側が挿入され（図６参照）、差込み穴８内に頭部１３ａを交差するように挿入された鋼棒１５によって抜けないように固定されている。
【００１７】
ボルト１３の軸部１３ｂには、稲妻プレート１９Ａが組み付けられている。稲妻プレート１９Ａは、軸部１３ｂが通されてＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２に当接する。なお、本実施形態では、稲妻プレート１９ＡがＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２に当接するが、稲妻プレートとＡＬＣパネル１との間で別体のプレートを挟むような態様であってもよい。
【００１８】
図５に示すように、稲妻プレート１９Ａは、略矩形で平板状の鋼材のプレス加工により成形され、中央部分に段差１９ａが形成されるような加工が施されている。段差１９ａを挟んで一方側がＡＬＣパネル１にボルト止めされるパネル取付部１９ｂであり、他方側がＡＬＣパネル１とで下地金物７Ａを挟持する挟持部１９ｃである。
【００１９】
パネル取付部１９ｂには、ボルト１３の軸部１３ｂが挿通する孔１９ｄが形成されている。パネル取付部１９ｂから突き出た軸部１３ｂにはナット２１が螺合し、ナット２１の締め付けによって、稲妻プレート１９ＡがＡＬＣパネル１側に押圧されて固定される。挟持部１９ｃには、ビス２５が貫通する挿通孔１９ｅが形成されている。さらに、挟持部１９ｃの端部には、作業性を高めるために角が落とされた隅切り部１９ｆが形成されている。
【００２０】
図４に示されるように、ビス２５は、下地金物７Ａにタップ加工を施す雄ねじが形成されたねじ部２７と、ねじ部２７の基端側で挟持部１９ｃに当接する頭部２９と、を備えており、さらに、ねじ部２７よりも先端側には、下孔を形成するための切刃部３１が設けられている。ねじ部２７は、ねじ山が不完全な不完全ねじ部２７ｂと、ねじ山が完全な完全ねじ部２７ａとを有する。なお、ねじ部２７と頭部２９との間に、ねじ山の無い部分があっても差し支えない。
【００２１】
切刃部３１は、先端で孔を穿つ尖形部３１ａと、リーマ部３１ｂとを有する。リーマ部３１ｂは、尖形部３１ａからねじ部２７側に向かって直線状に形成された複数本の刃を有し、尖形部３１ａで形成された下孔を拡大しながら、ねじ部２７が進入する下孔を形成する。
【００２２】
切刃部３１の有効長さ、すなわち、リーマ部３１ｂの始端からねじ部２７の始端までの長さＤ１は稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの垂直辺７ｂの板厚ｄ２の合計板厚Ｄ２よりも長い。また、ビス２５の働き長さ、すなわち、完全ねじ部２７ａの始端から頭部２９までの長さＤ３は、合計板厚Ｄ２よりも長い。
【００２３】
ビス２５のねじ部２７は、挟持部１９ｃ及び下地金物７Ａの垂直辺７ｂを貫通し、下地金物７Ａに螺合している。ビス２５の締め付けによって、稲妻プレート１９Ａと下地金物７Ａとが強固に取付けられて、その結果として、ＡＬＣパネル１は稲妻プレート１９Ａを介して下地金物７Ａに取り付けられている。
【００２４】
ビス２５の切刃部３１の有効長さＤ１は、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの板厚ｄ２の合計板厚Ｄ２よりも長くなっている。切刃部３１の有効長さＤ１が合計板厚Ｄ２よりも長いことで奏される効果について説明する。
【００２５】
ビス２５の切刃部３１が下地金物７ＡおよびＡＬＣパネル１に当接して下孔を形成する際には、ビス２５が空回りしたり、また、空回りしないまでもリード分の進行距離が得られなかったりする。この状態で、稲妻プレート１９Ａとねじ部２７とが螺合していると、ビス２５の空回り等によって稲妻プレート１９Ａにはビス２５の後退方向に力が作用し、下地金物７Ａに対して浮き上がる虞がある。
【００２６】
しかしながら、本実施形態で適用されているビス２５の切刃部３１の有効長さＤ１は、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２よりも長いため、ビス２５が空回り等しても、その位置では、ねじ部２７が稲妻プレート１９Ａと螺合しておらず、結果として、稲妻プレート１９Ａの浮き上がりを抑止して稲妻プレート１９Ａを下地金物７Ａに強固に、且つ安定した状態に取り付けることが可能になる。
【００２７】
さらに、稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃには、ビス２５が挿通される挿通孔１９ｅが予め形成されている。従って、稲妻プレート１９Ａへの孔あけ加工やタップ加工を軽減でき、これらの加工に要する余計な捻りトルクが不要になるため、作業性を向上させることができる。
【００２８】
切刃部３１で下孔を形成した後、ビス２５の進行に伴ってねじ部２７が下孔の周囲に雌ねじを切りながら螺合し、ビス２５の頭部２９は、稲妻プレート１９Ａに当接して稲妻プレート１９Ａを下地金物７Ａ側に押圧する。その結果、下地金物７Ａに稲妻プレート１９Ａが強固に取り付けられた状態になり、ＡＬＣパネル１の下地金物７Ａへの取り付けが完了する。
【００２９】
なお、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１と下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２は、ビス２５の働き長さＤ３よりも薄いため、ビス２５をねじ込んだ際に、ねじ部２７が下地金物７Ａまで確実に到達して螺合することになり、ビス２５の抜けが防止される。
【００３０】
前述したようなビス２５を利用した場合には、下地金物７Ａの浮き上がりが適切に防止されるが、図８に示されるビス４０のように、切刃部４１の有効長さＤ１が、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２よりも短い場合で、ビス４０の切刃部４１が下地金物７ＡおよびＡＬＣパネル１に当接して下孔を形成する際には、ビス４０が空回りしたり、また、空回りしないまでもリード分の進行距離が得られなかったりする。この状態で、稲妻プレート１９Ａとねじ部２７とが螺合していると、ビス４０の空回り等によって稲妻プレート１９Ａにはビス４０の後退方向に力が作用し、下地金物７Ａに対して浮き上がる虞がある。
【００３１】
そこで、ビス４０のねじ部２７の直径Ａと挿通孔１９ｅの直径Ｂとを略等しくする。これによって、ビス４０のねじ部２７によって挿通孔１９ｅの壁面に浅いねじ痕が残る場合もあるが、タップ切りのように深い雌ねじ部が形成されることがないので、稲妻プレート１９Ａを後退させるような螺合が生じないと言え、これによって、下地金物７Ａから稲妻プレート１９Ａが浮き上がることがない。
【００３２】
さらに、ビス２５，４０のねじ部２７の直径Ａと稲妻プレート１９Ａの挿通孔１９ｅの直径Ｂとを略等しくすることで、ビス２５，４０の打つ位置が一意に決まるので、ビス２５，４０が稲妻プレート１９Ａの縁に近づき過ぎることがなく、ビス２５，４０の予定された固定力を発揮させ易い。しかも、挿通孔１９ｅによるビス２５，４０の切刃部３１，４１の確実な位置合わせがなされるので、ビス２５，４０により挿通孔１９ｅの壁面に、浅いねじ痕が残る場合もあるが、タップ切りのように深い雌ねじ部が形成されることがない。また、ビス２５，４０の切刃部３１，４１で挿通孔１９ｅの壁面を削ることが無いので、ビス２５，４０を回すのに無駄なトルクを必要とせず、施工性が高められる。
【００３３】
ビス２５，４０のねじ部２７の直径Ａと稲妻プレート１９Ａの挿通孔１９ｅの直径Ｂとの関係は、略等しくなっているが、この場合、寸法公差をも考慮されている。
【００３４】
図３に示されるように、ＡＬＣパネル１の上部も、下側の取付け構造９Ａと同様の取付け構造９Ｂによって上側の下地金物７Ｂに取り付けられ、この取付け構造９Ｂに利用される稲妻プレート１９Ｂは、前述した稲妻プレート１９Ａと同じ部品である。
【００３５】
次に、ＡＬＣパネル１を構造躯体３に建て込む際の手順について説明する。
【００３６】
なお、ＡＬＣパネル１の上部及び下部を取り付ける手順は共通する手順も多いため、下部の取付け手順を中心に説明を行ない、上部の取付け手順については簡単に説明する。
【００３７】
図６に示されるように、ＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２の下部に、リング状の頭部１３ａを有するボルト１３を差し込むための穴６を空け、その穴６にボルト１３を頭部１３ａ側から差し入れる。次に、ボルト１３に直交する方向に沿ってＡＬＣパネル１で延在する差込み穴８内に鋼棒１５を差し込み、鋼棒１５を頭部１３ａに挿入してボルト１３を所定位置に固定する。
【００３８】
次に、稲妻プレート１９Ａの孔１９ｄに軸部１３ｂを挿通させ、ナット２１で仮締めする。なお、稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃは、ＡＬＣパネル１を建て込む際の邪魔にならないようにＡＬＣパネル１の構造躯体３から遠ざかる側に退避させておく。この状態で、ＡＬＣパネル１の下部への稲妻プレート１９Ａの仮止めが完了する。その後、ＡＬＣパネル１の上部にも同様の手順に従って稲妻プレート１９Ｂの仮止めを行う。
【００３９】
稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの仮止めが完了すると、ＡＬＣパネル１を構造躯体３の所定位置まで搬送し、建て込み作業を行う。建て込みに際して、既に構造躯体３に取り付けられている他のＡＬＣパネル１に並ぶようにＡＬＣパネル１を仮置きし、下側の下地金物７Ａと上側の下地金物７Ｂとの間で位置合わせを行う。
【００４０】
その後、下地金物７Ａを引っ掛けるように、下側の稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃをボルト１３を中心に回転させ、所定の方向に向けて、ナット２１を本締めする（図７参照）。ここで、挟持部１９ｃには隅切り部１９ｆが設けられているので、挟持部１９ｃの角が構造躯体３にぶつかることなく稲妻プレート１９Ａを所定の方向に回転させることができる。
【００４１】
挟持部１９ｃを下地金物７Ａに結合するための位置が決まれば、ビス２５を挟持部１９ｃの挿通孔１９ｅに差し込み、所定の押圧をかけながらスクリュードライバーでねじ込んでいく。ビス２５は回転しながら進行し、切刃部３１が下地金物７Ａに下孔を形成する。
【００４２】
切刃部３１で下孔を形成した後、ビス２５の進行に伴ってねじ部２７が下孔の周囲に雌ねじを切りながら螺合し、ビス２５の頭部２９は、稲妻プレート１９Ａに当接して稲妻プレート１９Ａを下地金物７Ａ側に押圧する。その結果、下地金物７Ａに稲妻プレート１９Ａが強固に取り付けられた状態になり、ＡＬＣパネル１の下地金物７Ａへの取り付けが完了する。
【００４３】
なお、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１と下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２は、ビス２５の働き長さＤ３よりも薄いため、ビス２５をねじ込んだ際に、ねじ部２７が下地金物７Ａまで確実に到達して螺合することになり、ビス２５の抜けが防止される。
【００４４】
以上、ＡＬＣパネル１と下側の下地金物７Ａとの取り付けを説明したが、上側も同様である。すなわち、上側の下地金物７Ｂを引っ掛けるように、上側の稲妻プレート１９Ｂの挟持部１９ｃを回転させ、ＡＬＣパネル１との間で下地金物７Ｂを挟み付けるようにして挟持部１９ｃを下地金物７Ｂにビス止めする。その結果、上側の下地金物７ＢへのＡＬＣパネル１の取り付けが完了する。
【００４５】
このようなＡＬＣパネル１の建て込みに利用される壁パネル取付具１０において、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの挟持部１９ｃの前端Ｔのみを下地金物７Ａ，７Ｂに圧着させることで、下地金物７Ａ，７Ｂに対する挟持部１９ｃの摩擦抵抗を増大させ、これによって、強風や地震などで、下地金物７Ａ，７ＢやＡＬＣパネル１が揺れた場合でも、下地金物７Ａ，７Ｂに対する稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの追従性を高めることができる。その結果として、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂと下地金物７Ａ，７Ｂとの協働によってビス２５に作用する剪断力を低減させることができ、ビス２５の本数を増やしたり、剪断強度の高い材質を使用したり、挟持部１９ｃを下地金物７Ａ，７Ｂに溶接するといった対策が不要になるため、コストアップや作業性の低下をもたらすことがない。
【００４６】
特に、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂは、１本のボルト１３によってＡＬＣパネル１に取付けられているので、強風や地震によって、このボルト１３を中心に回って位置ズレを起こすことがあるが、挟持部１９ｃの先端Ｔで強い摩擦力を発生させることは、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの回り止めに大きく寄与している。
【００４７】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、図９に示すように、稲妻プレート５０の挟持部５１には、挿通孔５２のビス挿入口５２ａに連通してビス５３の頭部５３ａの座部５３ｂが入り込む凹部５４が形成されている。このような構成を採用すると、凹部５４内にビス５３の頭部５３ａの座部５３ｂが収まるので、ビス５３の頭部５３ａが稲妻プレート５０から必要以上に突出することがなく、外観品質を向上させることができる。さらに、ビス５３のねじ部５３ｃの有効長さが短い場合でも、ねじ部５３ｃを有効に活用することができる。
【００４８】
そして、凹部５４の壁面５４ａと座部５３ｂとの間の隙間Ｋは、ねじ部５３ｃの直径Ａと、切刃部５３ｄの直径Ｃとの差分以上であれば、座部５３ｂが凹部５４からはみ出すことなく、凹部５４内に確実に収まる。
【００４９】
また、図１０に示すように、他の稲妻プレート６０にあっては、挟持部６１には３個の挿通孔６２ａ，６２ｂ，６２ｃが並設され、これら挿通孔６２ａ，６２ｂ，６２ｃを包囲するように凹部６４が形成されていてもよい。通常の場合、中央の挿通孔６２ｂにビス５３が挿入されるが、作業中にビス折れやビス曲がりが発生した場合、挿通孔６２ａ６２ｃの何れかが利用される。
【符号の説明】
【００５０】
１…ＡＬＣパネル（壁パネル）、３…構造躯体、７Ａ，７Ｂ…下地金物、９Ａ，９Ｂ…壁パネルの取付け構造、１０…壁パネル取付具、１９Ａ，１９Ｂ，５０，６０…稲妻プレート（取付金物）、１９ｂ…パネル取付部、１９ｃ，５１，６１…挟持部、１９ｅ，５２，６２ａ，６２ｂ，６２ｃ…ビスの挿通孔、２５，４０，５３…ビス、５４，６４…凹部、２７，５３ｃ…ねじ部、３１，４１，５３ｄ…切刃部、Ａ…ねじ部の直径、Ｂ…挿通孔の直径。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、軽量気泡コンクリートパネル等の壁パネルを、略Ｌ字形鋼材等からなる下地金物に取り付けるための壁パネル取付具に関する。
【背景技術】
【０００２】
鉄骨造（Ｓ造）や鉄筋コンクリート造（ＲＣ造）の建物における壁パネルの取付け構造としては、壁パネル取付け位置の上下で構造躯体に固定された下地金物間に壁パネルが取り付けられる場合がある。この種の壁パネルの取付け構造では、稲妻プレートなどの取付金物を壁パネルの所定位置に取り付け、取付金物が取り付けられた壁パネルを下地金物間に建て込んで取り付けていく。このような壁パネルの取付け構造に利用される壁パネル取付具としては、例えば、特許文献１に記載の技術が知られている。
平板をプレス成形してなるこの取付金具は、壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、壁パネルとで下地金物を挟持する挟持部とを有している。この取付金具の挟持部の裏面は、ボルトを締め込むことで下地金物に押し当てられ、パネル取付部の裏面もボルトを締め込むことで壁パネルに押し当てられる。ボルト締め後、取付金物の挟持部の挿通孔を貫通するようにアンカーピンを下地金物に打ち込んで、取付金具と下地金物との一体化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００３−９６９５５号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、取付金物の挟持部には、アンカーピンの先端を挿入させるための挿通孔が形成されているので、挿通孔の径がアンカーピンの径より大きいと、挿通孔の中心に対してアンカーピンがズレて打ち込まれる虞があり、挿通孔に対するアンカーピンの位置ズレが起こる虞がある。挿通孔の径がアンカーピンの径より小さいと、挿通孔を広げるようにアンカーピンが打ち込まれるので、発射エネルギーの一部が挿通孔拡大に消費されて、下地金物への貫入エネルギーが不足する虞がある。
【０００５】
本発明は、壁パネルの取付け時にビスを破損させることなく、取付金物の挟持部の挿通孔に対するビスの切刃部の確実な位置合わせを達成するようにした壁パネル取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明は、構造躯体に固定された下地金物に壁パネルを取り付けるための壁パネル取付具において、
壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、壁パネルとで下地金物を挟持する挟持部とを有する取付金物と、
挟持部に設けられた挿通孔内に挿入されて、下地金物に下孔を形成する切刃部と、下地金物に螺合するねじ部と、を有するビスとを備え、
ビスのねじ部の直径と挿通孔の直径とを略等しくしたことを特徴とする。
【０００７】
この壁パネル取付具においては、ビスのねじ部の直径と取付金物の挿通孔の直径とを略等しくすることで、ビスの打つ位置が一意に決まるので、ビスが取付金具の縁に近づき過ぎることがなく、ビスの予定された固定力を発揮させ易い。しかも、挿通孔によるビスの切刃部の確実な位置合わせがなされるので、ビスのねじ部によって挿通孔の壁面に浅いねじ痕が残る場合もあるが、タップ切りのように深い雌ねじ部が形成されることがないので、取付金物を後退させるような螺合が生じないと言え、これによって、下地金物から稲妻プレートが浮き上がることがない。つまり、挿通孔の壁面とビスとが螺合すると、ビスの一回転によって切刃部が下地金物を切り進む距離がリード分よりも小さい場合、取付金物を後退させて下地金物から浮き上がらせる虞があるが、本発明では、ビスにより挿通孔の壁面に、取付金物を後退させるような雌ねじ部が形成されることがないので、このような問題も発生しない。また、ビスの切刃部で挿通孔の壁面を削ることが無いので、ビスを回すのに無駄なトルクを必要とせず、施工性が高められる。
【０００８】
また、挟持部には、挿通孔のビス挿入口に連通してビスの頭部が入り込む凹部が形成されていると好適である。
このような構成を採用すると、凹部内にビスの頭部が収まるので、ビスの頭部が取付金具から必要以上に突出することがなく、外観品質を向上させることができる。さらに、ビスのねじ部の有効長さが短い場合でも、ねじ部を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【０００９】
本発明によれば、壁パネルの取付け時にビスを破損させることなく、取付金物の挟持部の挿通孔に対するビスの切刃部の確実な位置合わせを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１０】
【図１】ＡＬＣパネルが下地金物に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図２】ＡＬＣパネルの下部における取付け構造を示す断面図である。
【図３】ＡＬＣパネルの上部における取付け構造を示す断面図である。
【図４】本発明に係る壁パネル取付具に適用されるビスの正面図である。
【図５】本発明に係る壁パネル取付具に適用される稲妻プレートを示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は（ａ）のｂ−ｂ線に沿った断面図である。
【図６】ＡＬＣパネルに取付金物を組み付ける際の状態を示す分解斜視図である。
【図７】ＡＬＣパネルを下地金物に取り付ける際の状態を示す斜視図である。
【図８】ビスの他の例を示す断面図である。
【図９】稲妻プレートの他の例を示す要部拡大断面図である。
【図１０】稲妻プレートの更に他の例を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１１】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る壁パネル取付具の好適な実施形態について詳細に説明する。
【００１２】
図１に示すように、壁パネルに相当する軽量気泡コンクリート（Autoclaved Light-weight Concrete）パネル（以下、「ＡＬＣパネル」という）１は、鉄筋コンクリート（Ｒeinforced-Concrete）造の構造躯体３の所定位置に順次建て込まれ、専用の稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂ及びビス２５を介して上下に配置された下地金物７Ａ，７Ｂに取り付けられている。
【００１３】
稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂは取付金物に相当し、ビス２５は締結部材に相当し、壁パネル取付具１０は、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂとビス２５とによって構成されている。そして、取付け構造９Ａ，９Ｂにあっては、構造躯体３に固定された下地金物７Ａ，７Ｂに壁パネル取付具１０を介してＡＬＣパネル１が取り付けられている構造をいう。
【００１４】
下地金物７Ａ，７Ｂは、構造躯体３に形成された開口の床側の下部及び天井側の上部に沿って配置されており、構造躯体３に埋め込まれた鋼材に溶接されるなどして固定されている。下地金物７Ａ，７Ｂ（図２及び図３参照）は略L字形鋼材からなり、構造躯体３に当接する水平辺７ａと、水平辺７ａから立設された垂直辺７ｂとを有する。
【００１５】
まず、下側の下地金物７ＡへのＡＬＣパネル１の取付け構造９Ａについて説明する。図２に示されるように、下地金物７Ａの水平辺７ａ上には、ロッキングスペーサ１１を介してＡＬＣパネル１が載置されており、垂直辺７ｂはＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２に当接している。
【００１６】
ＡＬＣパネル１には、リング状の頭部１３ａを有するボルト１３が固定されており、ボルト１３の軸部１３ｂがＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２から突き出している。なお、ボルト１３は、ＡＬＣパネル１に形成された穴６内に頭部１３ａ側が挿入され（図６参照）、差込み穴８内に頭部１３ａを交差するように挿入された鋼棒１５によって抜けないように固定されている。
【００１７】
ボルト１３の軸部１３ｂには、稲妻プレート１９Ａが組み付けられている。稲妻プレート１９Ａは、軸部１３ｂが通されてＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２に当接する。なお、本実施形態では、稲妻プレート１９ＡがＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２に当接するが、稲妻プレートとＡＬＣパネル１との間で別体のプレートを挟むような態様であってもよい。
【００１８】
図５に示すように、稲妻プレート１９Ａは、略矩形で平板状の鋼材のプレス加工により成形され、中央部分に段差１９ａが形成されるような加工が施されている。段差１９ａを挟んで一方側がＡＬＣパネル１にボルト止めされるパネル取付部１９ｂであり、他方側がＡＬＣパネル１とで下地金物７Ａを挟持する挟持部１９ｃである。
【００１９】
パネル取付部１９ｂには、ボルト１３の軸部１３ｂが挿通する孔１９ｄが形成されている。パネル取付部１９ｂから突き出た軸部１３ｂにはナット２１が螺合し、ナット２１の締め付けによって、稲妻プレート１９ＡがＡＬＣパネル１側に押圧されて固定される。挟持部１９ｃには、ビス２５が貫通する挿通孔１９ｅが形成されている。さらに、挟持部１９ｃの端部には、作業性を高めるために角が落とされた隅切り部１９ｆが形成されている。
【００２０】
図４に示されるように、ビス２５は、下地金物７Ａにタップ加工を施す雄ねじが形成されたねじ部２７と、ねじ部２７の基端側で挟持部１９ｃに当接する頭部２９と、を備えており、さらに、ねじ部２７よりも先端側には、下孔を形成するための切刃部３１が設けられている。ねじ部２７は、ねじ山が不完全な不完全ねじ部２７ｂと、ねじ山が完全な完全ねじ部２７ａとを有する。なお、ねじ部２７と頭部２９との間に、ねじ山の無い部分があっても差し支えない。
【００２１】
切刃部３１は、先端で孔を穿つ尖形部３１ａと、リーマ部３１ｂとを有する。リーマ部３１ｂは、尖形部３１ａからねじ部２７側に向かって直線状に形成された複数本の刃を有し、尖形部３１ａで形成された下孔を拡大しながら、ねじ部２７が進入する下孔を形成する。
【００２２】
切刃部３１の有効長さ、すなわち、リーマ部３１ｂの始端からねじ部２７の始端までの長さＤ１は稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの垂直辺７ｂの板厚ｄ２の合計板厚Ｄ２よりも長い。また、ビス２５の働き長さ、すなわち、完全ねじ部２７ａの始端から頭部２９までの長さＤ３は、合計板厚Ｄ２よりも長い。
【００２３】
ビス２５のねじ部２７は、挟持部１９ｃ及び下地金物７Ａの垂直辺７ｂを貫通し、下地金物７Ａに螺合している。ビス２５の締め付けによって、稲妻プレート１９Ａと下地金物７Ａとが強固に取付けられて、その結果として、ＡＬＣパネル１は稲妻プレート１９Ａを介して下地金物７Ａに取り付けられている。
【００２４】
ビス２５の切刃部３１の有効長さＤ１は、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの板厚ｄ２の合計板厚Ｄ２よりも長くなっている。切刃部３１の有効長さＤ１が合計板厚Ｄ２よりも長いことで奏される効果について説明する。
【００２５】
ビス２５の切刃部３１が下地金物７ＡおよびＡＬＣパネル１に当接して下孔を形成する際には、ビス２５が空回りしたり、また、空回りしないまでもリード分の進行距離が得られなかったりする。この状態で、稲妻プレート１９Ａとねじ部２７とが螺合していると、ビス２５の空回り等によって稲妻プレート１９Ａにはビス２５の後退方向に力が作用し、下地金物７Ａに対して浮き上がる虞がある。
【００２６】
しかしながら、本実施形態で適用されているビス２５の切刃部３１の有効長さＤ１は、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２よりも長いため、ビス２５が空回り等しても、その位置では、ねじ部２７が稲妻プレート１９Ａと螺合しておらず、結果として、稲妻プレート１９Ａの浮き上がりを抑止して稲妻プレート１９Ａを下地金物７Ａに強固に、且つ安定した状態に取り付けることが可能になる。
【００２７】
さらに、稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃには、ビス２５が挿通される挿通孔１９ｅが予め形成されている。従って、稲妻プレート１９Ａへの孔あけ加工やタップ加工を軽減でき、これらの加工に要する余計な捻りトルクが不要になるため、作業性を向上させることができる。
【００２８】
切刃部３１で下孔を形成した後、ビス２５の進行に伴ってねじ部２７が下孔の周囲に雌ねじを切りながら螺合し、ビス２５の頭部２９は、稲妻プレート１９Ａに当接して稲妻プレート１９Ａを下地金物７Ａ側に押圧する。その結果、下地金物７Ａに稲妻プレート１９Ａが強固に取り付けられた状態になり、ＡＬＣパネル１の下地金物７Ａへの取り付けが完了する。
【００２９】
なお、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１と下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２は、ビス２５の働き長さＤ３よりも薄いため、ビス２５をねじ込んだ際に、ねじ部２７が下地金物７Ａまで確実に到達して螺合することになり、ビス２５の抜けが防止される。
【００３０】
前述したようなビス２５を利用した場合には、下地金物７Ａの浮き上がりが適切に防止されるが、図８に示されるビス４０のように、切刃部４１の有効長さＤ１が、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１及び下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２よりも短い場合で、ビス４０の切刃部４１が下地金物７ＡおよびＡＬＣパネル１に当接して下孔を形成する際には、ビス４０が空回りしたり、また、空回りしないまでもリード分の進行距離が得られなかったりする。この状態で、稲妻プレート１９Ａとねじ部２７とが螺合していると、ビス４０の空回り等によって稲妻プレート１９Ａにはビス４０の後退方向に力が作用し、下地金物７Ａに対して浮き上がる虞がある。
【００３１】
そこで、ビス４０のねじ部２７の直径Ａと挿通孔１９ｅの直径Ｂとを略等しくする。これによって、ビス４０のねじ部２７によって挿通孔１９ｅの壁面に浅いねじ痕が残る場合もあるが、タップ切りのように深い雌ねじ部が形成されることがないので、稲妻プレート１９Ａを後退させるような螺合が生じないと言え、これによって、下地金物７Ａから稲妻プレート１９Ａが浮き上がることがない。
【００３２】
さらに、ビス２５，４０のねじ部２７の直径Ａと稲妻プレート１９Ａの挿通孔１９ｅの直径Ｂとを略等しくすることで、ビス２５，４０の打つ位置が一意に決まるので、ビス２５，４０が稲妻プレート１９Ａの縁に近づき過ぎることがなく、ビス２５，４０の予定された固定力を発揮させ易い。しかも、挿通孔１９ｅによるビス２５，４０の切刃部３１，４１の確実な位置合わせがなされるので、ビス２５，４０により挿通孔１９ｅの壁面に、浅いねじ痕が残る場合もあるが、タップ切りのように深い雌ねじ部が形成されることがない。また、ビス２５，４０の切刃部３１，４１で挿通孔１９ｅの壁面を削ることが無いので、ビス２５，４０を回すのに無駄なトルクを必要とせず、施工性が高められる。
【００３３】
ビス２５，４０のねじ部２７の直径Ａと稲妻プレート１９Ａの挿通孔１９ｅの直径Ｂとの関係は、略等しくなっているが、この場合、寸法公差をも考慮されている。
【００３４】
図３に示されるように、ＡＬＣパネル１の上部も、下側の取付け構造９Ａと同様の取付け構造９Ｂによって上側の下地金物７Ｂに取り付けられ、この取付け構造９Ｂに利用される稲妻プレート１９Ｂは、前述した稲妻プレート１９Ａと同じ部品である。
【００３５】
次に、ＡＬＣパネル１を構造躯体３に建て込む際の手順について説明する。
【００３６】
なお、ＡＬＣパネル１の上部及び下部を取り付ける手順は共通する手順も多いため、下部の取付け手順を中心に説明を行ない、上部の取付け手順については簡単に説明する。
【００３７】
図６に示されるように、ＡＬＣパネル１の裏面１ａの取付金具装着面Ｐ２の下部に、リング状の頭部１３ａを有するボルト１３を差し込むための穴６を空け、その穴６にボルト１３を頭部１３ａ側から差し入れる。次に、ボルト１３に直交する方向に沿ってＡＬＣパネル１で延在する差込み穴８内に鋼棒１５を差し込み、鋼棒１５を頭部１３ａに挿入してボルト１３を所定位置に固定する。
【００３８】
次に、稲妻プレート１９Ａの孔１９ｄに軸部１３ｂを挿通させ、ナット２１で仮締めする。なお、稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃは、ＡＬＣパネル１を建て込む際の邪魔にならないようにＡＬＣパネル１の構造躯体３から遠ざかる側に退避させておく。この状態で、ＡＬＣパネル１の下部への稲妻プレート１９Ａの仮止めが完了する。その後、ＡＬＣパネル１の上部にも同様の手順に従って稲妻プレート１９Ｂの仮止めを行う。
【００３９】
稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの仮止めが完了すると、ＡＬＣパネル１を構造躯体３の所定位置まで搬送し、建て込み作業を行う。建て込みに際して、既に構造躯体３に取り付けられている他のＡＬＣパネル１に並ぶようにＡＬＣパネル１を仮置きし、下側の下地金物７Ａと上側の下地金物７Ｂとの間で位置合わせを行う。
【００４０】
その後、下地金物７Ａを引っ掛けるように、下側の稲妻プレート１９Ａの挟持部１９ｃをボルト１３を中心に回転させ、所定の方向に向けて、ナット２１を本締めする（図７参照）。ここで、挟持部１９ｃには隅切り部１９ｆが設けられているので、挟持部１９ｃの角が構造躯体３にぶつかることなく稲妻プレート１９Ａを所定の方向に回転させることができる。
【００４１】
挟持部１９ｃを下地金物７Ａに結合するための位置が決まれば、ビス２５を挟持部１９ｃの挿通孔１９ｅに差し込み、所定の押圧をかけながらスクリュードライバーでねじ込んでいく。ビス２５は回転しながら進行し、切刃部３１が下地金物７Ａに下孔を形成する。
【００４２】
切刃部３１で下孔を形成した後、ビス２５の進行に伴ってねじ部２７が下孔の周囲に雌ねじを切りながら螺合し、ビス２５の頭部２９は、稲妻プレート１９Ａに当接して稲妻プレート１９Ａを下地金物７Ａ側に押圧する。その結果、下地金物７Ａに稲妻プレート１９Ａが強固に取り付けられた状態になり、ＡＬＣパネル１の下地金物７Ａへの取り付けが完了する。
【００４３】
なお、稲妻プレート１９Ａの板厚ｄ１と下地金物７Ａの板厚ｄ２との合計板厚Ｄ２は、ビス２５の働き長さＤ３よりも薄いため、ビス２５をねじ込んだ際に、ねじ部２７が下地金物７Ａまで確実に到達して螺合することになり、ビス２５の抜けが防止される。
【００４４】
以上、ＡＬＣパネル１と下側の下地金物７Ａとの取り付けを説明したが、上側も同様である。すなわち、上側の下地金物７Ｂを引っ掛けるように、上側の稲妻プレート１９Ｂの挟持部１９ｃを回転させ、ＡＬＣパネル１との間で下地金物７Ｂを挟み付けるようにして挟持部１９ｃを下地金物７Ｂにビス止めする。その結果、上側の下地金物７ＢへのＡＬＣパネル１の取り付けが完了する。
【００４５】
このようなＡＬＣパネル１の建て込みに利用される壁パネル取付具１０において、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの挟持部１９ｃの前端Ｔのみを下地金物７Ａ，７Ｂに圧着させることで、下地金物７Ａ，７Ｂに対する挟持部１９ｃの摩擦抵抗を増大させ、これによって、強風や地震などで、下地金物７Ａ，７ＢやＡＬＣパネル１が揺れた場合でも、下地金物７Ａ，７Ｂに対する稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの追従性を高めることができる。その結果として、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂと下地金物７Ａ，７Ｂとの協働によってビス２５に作用する剪断力を低減させることができ、ビス２５の本数を増やしたり、剪断強度の高い材質を使用したり、挟持部１９ｃを下地金物７Ａ，７Ｂに溶接するといった対策が不要になるため、コストアップや作業性の低下をもたらすことがない。
【００４６】
特に、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂは、１本のボルト１３によってＡＬＣパネル１に取付けられているので、強風や地震によって、このボルト１３を中心に回って位置ズレを起こすことがあるが、挟持部１９ｃの先端Ｔで強い摩擦力を発生させることは、稲妻プレート１９Ａ，１９Ｂの回り止めに大きく寄与している。
【００４７】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、図９に示すように、稲妻プレート５０の挟持部５１には、挿通孔５２のビス挿入口５２ａに連通してビス５３の頭部５３ａの座部５３ｂが入り込む凹部５４が形成されている。このような構成を採用すると、凹部５４内にビス５３の頭部５３ａの座部５３ｂが収まるので、ビス５３の頭部５３ａが稲妻プレート５０から必要以上に突出することがなく、外観品質を向上させることができる。さらに、ビス５３のねじ部５３ｃの有効長さが短い場合でも、ねじ部５３ｃを有効に活用することができる。
【００４８】
そして、凹部５４の壁面５４ａと座部５３ｂとの間の隙間Ｋは、ねじ部５３ｃの直径Ａと、切刃部５３ｄの直径Ｃとの差分以上であれば、座部５３ｂが凹部５４からはみ出すことなく、凹部５４内に確実に収まる。
【００４９】
また、図１０に示すように、他の稲妻プレート６０にあっては、挟持部６１には３個の挿通孔６２ａ，６２ｂ，６２ｃが並設され、これら挿通孔６２ａ，６２ｂ，６２ｃを包囲するように凹部６４が形成されていてもよい。通常の場合、中央の挿通孔６２ｂにビス５３が挿入されるが、作業中にビス折れやビス曲がりが発生した場合、挿通孔６２ａ６２ｃの何れかが利用される。
【符号の説明】
【００５０】
１…ＡＬＣパネル（壁パネル）、３…構造躯体、７Ａ，７Ｂ…下地金物、９Ａ，９Ｂ…壁パネルの取付け構造、１０…壁パネル取付具、１９Ａ，１９Ｂ，５０，６０…稲妻プレート（取付金物）、１９ｂ…パネル取付部、１９ｃ，５１，６１…挟持部、１９ｅ，５２，６２ａ，６２ｂ，６２ｃ…ビスの挿通孔、２５，４０，５３…ビス、５４，６４…凹部、２７，５３ｃ…ねじ部、３１，４１，５３ｄ…切刃部、Ａ…ねじ部の直径、Ｂ…挿通孔の直径。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
構造躯体に固定された下地金物に壁パネルを取り付けるための壁パネル取付具において、
前記壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、前記壁パネルとで前記下地金物を挟持する挟持部とを有する取付金物と、
前記挟持部に設けられた挿通孔内に挿入されて、前記下地金物に下孔を形成する切刃部と、前記下地金物に螺合するねじ部と、を有するビスとを備え、
前記ビスのねじ部の直径と前記挿通孔の直径とを略等しくしたことを特徴とする壁パネル取付具。
【請求項２】
前記挟持部には、前記挿通孔のビス挿入口に連通して前記ビスの頭部が入り込む凹部が形成されていることを特徴とする請求項１記載の壁パネル取付具。
【請求項１】
構造躯体に固定された下地金物に壁パネルを取り付けるための壁パネル取付具において、
前記壁パネルにボルト止めされるパネル取付部と、前記壁パネルとで前記下地金物を挟持する挟持部とを有する取付金物と、
前記挟持部に設けられた挿通孔内に挿入されて、前記下地金物に下孔を形成する切刃部と、前記下地金物に螺合するねじ部と、を有するビスとを備え、
前記ビスのねじ部の直径と前記挿通孔の直径とを略等しくしたことを特徴とする壁パネル取付具。
【請求項２】
前記挟持部には、前記挿通孔のビス挿入口に連通して前記ビスの頭部が入り込む凹部が形成されていることを特徴とする請求項１記載の壁パネル取付具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【公開番号】特開２０１０−２６５６３３（Ｐ２０１０−２６５６３３Ａ）
【公開日】平成２２年１１月２５日（２０１０．１１．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１１６５５５（Ｐ２００９−１１６５５５）
【出願日】平成２１年５月１３日（２００９．５．１３）
【出願人】（３９００１８７１７）旭化成建材株式会社 (249)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年１１月２５日（２０１０．１１．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年５月１３日（２００９．５．１３）
【出願人】（３９００１８７１７）旭化成建材株式会社 (249)
【Ｆターム（参考）】
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