壁パネル構造
【課題】建物の減衰性能を維持しながら建物躯体の外からの火災による室内側への延焼を防止して耐火性能を向上させることができる壁パネル構造を提供することを目的とする。
【解決手段】隣接する壁パネル2の小口面3同士が突き合わせられて目地部5が形成され、壁パネル2同士は、小口面3の長手方向に可動となるように建物躯体Bの外周に取り付けられた壁パネル構造1Aにおいて、目地部5には、壁パネル2の小口面3同士の間に粘弾性体7が挟着され、粘弾性体7は、壁パネル2の厚さ方向Dの中央Cよりも室内A2側に偏って配置されている。その結果、難燃性でない有機成分を含んだ粘弾性体7を挟着した壁パネル2を建物躯体Bの外周に取り付けた場合であっても、建物躯体Bの外からの火災による室内A2側への延焼を防止し易くなり、建物の減衰性能を維持しながら耐火性能を向上させ易くなる
【解決手段】隣接する壁パネル2の小口面3同士が突き合わせられて目地部5が形成され、壁パネル2同士は、小口面3の長手方向に可動となるように建物躯体Bの外周に取り付けられた壁パネル構造1Aにおいて、目地部5には、壁パネル2の小口面3同士の間に粘弾性体7が挟着され、粘弾性体7は、壁パネル2の厚さ方向Dの中央Cよりも室内A2側に偏って配置されている。その結果、難燃性でない有機成分を含んだ粘弾性体7を挟着した壁パネル2を建物躯体Bの外周に取り付けた場合であっても、建物躯体Bの外からの火災による室内A2側への延焼を防止し易くなり、建物の減衰性能を維持しながら耐火性能を向上させ易くなる
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の減衰性能を向上させることが可能な壁パネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物躯体にロッキング(揺れ)するように取り付けられた壁パネル構造において、壁パネル小口面に粘弾性体を狭着させて建物の減衰性能を向上させる技術が特許文献1に記載されている。この種の壁パネル構造では、制振機能を持たせるために、壁パネルの小口面には、壁パネルの厚さ方向の略中央部に粘弾性体が狭着されている。その結果として、この壁パネル構造は、地震や風による建物の揺れによって、壁パネルがロッキングした際には、隣接する壁パネル同士が相対変位して壁パネル小口面に介在する粘弾性体に振動エネルギーが伝達され、熱エネルギーとして消費されることにより、建物の減衰性能を向上させることができる。
【特許文献1】特開平11−62058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の壁パネル構造では、壁パネル小口面の厚さ方向の略中央部に粘弾性体を狭着させており、粘弾性体は難燃性でない有機成分を含んでいる場合も多いために耐火性能を損なう虞があった。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、建物の減衰性能を維持しながら建物躯体の外からの火災による室内側への延焼を防止して耐火性能を向上させることができる壁パネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
壁パネル同士を突き合わせて目地部を形成し、その目地部に粘弾性体を挟着させて制振機能を付与する場合、ロッキングする壁パネルの重心位置を考慮し、壁パネルの厚さ方向の略中央部に粘弾性体を挟着させるのが最適であると考えるのが一般的である。しかしながら、本発明者は、壁パネル構造の耐火性能の向上のために鋭意検討を行った結果、粘弾性体を壁パネルの厚さ方向の略中央部に配置しなくても、粘弾性体の確実な挟着状態を確保できていれば、制振機能に実質的な支障は無いという知見を得た。本発明は、この知見に基づいて導出されたものである。
【0006】
本発明は、隣接する壁パネルの小口面同士が突き合わせられて目地部が形成され、壁パネル同士は小口面の長手方向に可動となるように建物躯体の外周に取り付けられた壁パネル構造において、目地部には、壁パネルの小口面同士の間に粘弾性体が挟着され、粘弾性体は、壁パネルの厚さ方向の中央よりも室内側に偏って配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、目地部にて挟着される粘弾性体が室内側に偏って配置されているが、壁パネルの厚さ方向の略中央に粘弾性体が挟着されている場合に比べて実質的な制振機能の低下は無い。一方で、難燃性でない有機成分を含んだ粘弾性体を挟着した場合であっても、粘弾性体は室内側に偏って配置されているので、建物躯体の外からの火災による室内側への延焼を防止し易くなる。その結果として、粘弾性体の機能、すなわち、建物の減衰性能を維持しながら耐火性能を向上させ易くなる
【0008】
さらに、隣接する壁パネルの小口面同士のうち、少なくとも一方の小口面には、粘弾性体を収容する凹部が形成されていると好適である。目地部の隙間、すなわち小口面同士の間の空き寸法をできるだけ狭くすることにより、目地部の防耐火性能を確保しながら、ほぼ凹部内に収容できる体積分だけ粘弾性体のサイズを大きくできるため、地震時に想定される、壁パネルの目地部の長さ方向、すなわち小口面の長手方向に対してのムーブメントの量に対して、粘弾性体の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。さらに、凹部内に粘弾性体の一部を収容させることで、結果的に建物躯体の外からの火災に対しても強くなり、耐火性能をさらに向上させ易くなる。
【0009】
さらに、凹部は、底面部と、底面部から立ち上がっている側面部とを有し、粘弾性体は、底面部にのみ接着されていると好適である。粘弾性体と側面部とは接着されていないため、粘弾性体全体が自由に変位して振動エネルギーを熱エネルギーとして消費できるため、減衰性能は向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建物の減衰性能を維持しながら建物躯体の外からの火災による室内側への延焼を防止して耐火性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る壁パネル構造の斜視図である。図2は、本実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す斜視図である。図3は、壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【0012】
(第1実施形態)
図1〜図3に示されるように、本実施形態に係る壁パネル構造1Aは、鉄骨構造などの建物躯体B(図5参照)の外周に設けられる外壁構造として用いられており、複数の壁パネル2は、壁パネル取付部4によりロッキング構法によって取り付けられている。隣接する壁パネル2同士は小口面3同士が突き合わせられ、両壁パネル2の境界に目地部5が形成されている。目地部5には、粘弾性体7が挟着されている。地震時には、壁パネル2は上下の壁パネル取付部4を中心にしてロッキング(揺れ)し、隣接する壁パネル2同士は目地部5に沿った小口面3の長手方向に相対変位を発生し、目地部5の粘弾性体7に振動エネルギーが伝達される。粘弾性体7に伝達された振動エネルギーは、熱エネルギーに変えられることで、制振効果が生じ、建物の減衰性能を向上させる。
【0013】
壁パネル2は、100mm程度の厚みを有する軽量気泡コンクリートパネルからなる。壁パネル2の小口面3には、建物躯体Bの外A1側の側縁と室内A2側の側縁とに、欠損を避けるための面取部3aが形成されている。外A1側及び室内A2側の面取部3aの面取り寸法は約9mm程度である。面取部3aを形成する理由は、パネル建て込み時に、欠け(欠損)や傷がつくことを防ぐためである。
【0014】
壁パネル2の小口面3には、隣接する壁パネル2の反り具合の違いを矯正すると共に、壁の面を出し、且つ隣接する壁パネル2の面外方向の一体性を高めるために、本実部(実構造)3b,3cが設けられている。隣接する一対の壁パネル2のうち、一方の壁パネル2には凸状の本実部3bが形成され、他方の壁パネル2には凹状の本実部3cが形成されている。隣接する壁パネル2同士は、互いの本実部3b,3cが凹凸状に嵌り合うように設置される。本実部3b,3cは小口面3の長手方向に沿って直線状に延在しており、本実部3b,3cによって壁パネル2同士は小口面3の長手方向への移動は許容されるが、面外方向への移動は制限されている。
【0015】
本実部3b,3cは、小口面3における壁パネル2の厚さ方向Dの中央Cに設けられている。粘弾性体7は、壁パネル2の厚さ方向Dの中央Cに対して建物躯体Bの室内A2側に偏って配置されている。また、建物躯体Bの外A1側には、目地部5の隙間を埋めるためのシール材が充填されたシーリング部9が設けられている。なお、シーリング部9が設けられる外A1側の目地部5内には、シーリング部9の三面接着を防止するボンドブレーカー(図示せず)が内装されている。シーリング部9の三面接着を防止することで、シーリング部9に過度の負荷がかかり難くなり、シーリング部15の表面亀裂を抑止できる。
【0016】
粘弾性体7は、幅寸法L1が約30mm、厚みが約2mmであり、室内A2側の面取部3aの端に合わせるように狭着されている。なお、粘弾性体7は、粘性と弾性の両性質を合わせ持つ素材からなり、衝撃吸収や振動の低減に有効な物体である。本実施形態では、ブチル系あるいはアクリル系の仕様とした。また、粘弾性体7の厚みは、適宜、定めればよいが、0.5mm〜4mm程度が好ましい。
【0017】
図4に示されるように、隣接する壁パネル2の建て込みを行う際には、作業者Pが、壁パネル2を順次、押しつけて建て込みを行い、その後、壁パネル取付部4により、建物躯体Bに固定する。隣接する壁パネル2を押し付けて建て込みをおこなうので、壁パネル2が取り付けられる躯体精度のバラツキに係わらず、粘弾性体7を壁パネル2の小口面3に確実に狭着させることができる。なお、壁パネル2の小口面3で、粘弾性体7の接着部分には、プライマー処理を行って、押しつけるように壁パネル2の建て込みをおこなった。粘弾性体7としては、ブチル系あるいはアクリル系の仕様としたが、押しつけるように壁パネル2の建て込みをおこなった建て込み後も、粘弾性体7は、さほど圧縮されることなく、初期の厚みに近い寸法で納まった。
【0018】
本実施形態に係る壁パネル構造1Aでは、壁パネル2の小口面3の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏らせて粘弾性体7が配置されている。壁パネル構造1Aは建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体7を利用する場合であっても、その粘弾性体7を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0019】
例えば、軽量気泡コンクリートパネルの場合、耐火性能を60分〜120分程度確保するためには、壁パネル2の厚みを75mm以上の構造とする必要があるとされている。本実施形態に係る壁パネル構造1Aでは、壁パネル2の厚みは90mm程度であり、外A1側からの距離が75mm以上室内A2側に偏った位置、すなわち室内A2側から15mm(=90mm−75mm)以内に粘弾性体7を狭着させれば、外部から75mm部分は、従来の標準的な軽量気泡コンクリートパネルの壁パネル構造1Aと同様となり、60分〜120分程度の耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0020】
また、壁パネル2の厚みが100mmの場合や150mmの場合も同様であり、外A1側からの距離が75mm以上室内A2側に偏った位置、すなわち室内A2側から25mm(=100mm−75mm)または75mm(=150mm−75mm)以内に粘弾性体7を狭着するようにすれば、外A1側からの距離が75mmまでの部分は、従来の標準的な軽量気泡コンクリートパネルの壁パネル構造1Aと同様となり、60分〜120分程度の耐火性能を確保しやすい構造になる。なお、外面からの距離が75mmとなる部分を確保することは必須ではなく、壁パネル2の小口面3で壁パネル2の厚さ方向Dの室内A2側に粘弾性体7を狭着させることが重要であり、さらに言えば、壁パネル2の小口面3で壁パネル2の厚さ方向Dの略中央部より室内A2側に粘弾性体7を狭着させることが、耐火性能を確保しやすい構造とするために重要である。
【0021】
また、ある程度の厚みを有する壁パネル2の方が、薄い壁パネル2に比較して粘弾性体7を室内A2側に偏らせて配置した場合に耐火効果が高くなる。例えば、軽量気泡コンクリートパネルからなる壁パネル2の場合では、JIS(JISA5416−2007)の区分で言えば、厚形ALC、すなわち壁パネル2の厚みが75mm〜180mmの壁パネル2が好ましく、90mm〜180mmがより好ましく、さらには、100〜180mmが最も好ましい。
【0022】
(第2実施形態)
次に、図6を参照し、本発明の第2実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図6は、第2実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第2実施形態に係る壁パネル構造について、第1実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0023】
本実施形態に係る壁パネル構造1Bの壁パネル12は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル12同士は、小口面13の本実部13c,13dによって接合されている。本実部13c,13dは、壁パネル12の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。粘弾性体17の幅寸法L2は、余裕を持たせて22mmとした。本実部13c,13dに対して厚さ方向Dの他方側、すなわち小口面13の外A1側には、目地部5の隙間を埋めるためのシール材が充填されたシーリング部15が設けられている。なお、シーリング部15が設けられた他方側の目地部5内には、シーリング部15の三面接着を防止するためのバックアップ材16が内装されている。
【0024】
また、本実施形態に係る壁パネル構造1Bでは、粘弾性体17を狭着させる室内A2側の面取部13aの面取り寸法を、外A1側の面取部13bの面取り寸法よりも小さくなるようにしている。室内A2側の面取部13aの面取り寸法を小さくすればするほど、粘弾性体17の接着面積を広くとることが可能となる。一方で、面取り寸法が小さくなれば、欠損や傷を防ぐという効果が弱くなる。そこで、本実施形態では、一般の軽量気泡コンクリートパネルで採用されている9mm程度の面取り寸法からなる外A1側の面取部13bに対して、室内A2側の面取部13aの面取り寸法を9mmよりも小さくした。この室内A2側の面取部13aの面取り寸法としては、5mm〜1mmが好ましく、更に、粘弾性体17の接着面積の確保及びパネル建て込み時における欠損や傷の防止の両立という観点からは4mm〜2mmが好ましく、3mmがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係る壁パネル構造1Bも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体17を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0026】
(第3実施形態)
次に、図7を参照し、本発明の第3実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図7は、第3実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第3実施形態に係る壁パネル構造について、第1実施形態または第2実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0027】
本実施形態に係る壁パネル構造1Cの壁パネル22は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル22同士は、小口面23同士を突き合わせて目地部5が形成されている。小口面23の面取部23a,23bの面取り寸法は、室内A2側の面取部23aを3mm、外A1側の面取部23bを9mmとしている。なお、壁パネル22の小口面23は、本実部が形成されないフラット形状になっており、目地部5は実構造を有していない。
【0028】
粘弾性体27は、壁パネル22の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置され、面取部23aの端に合わせるようにして挟着されている。粘弾性体27の幅寸法L3は22mmとし、外A1側からの距離が75mm程度までの部分は、従来の標準的な軽量気泡コンクリートパネルの壁構造と同様にした。
【0029】
本実施形態に係る壁パネル構造1Cも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体27を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0030】
(第4実施形態)
次に、図8を参照し、本発明の第4実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図8は、第4実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第4実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜3実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0031】
本実施形態に係る壁パネル構造1Dの壁パネル32は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、小口面33の面取部33a,33bの面取り寸法は、室内A2側の面取部33aを3mm、外A1側の面取部33bを9mmとしている。壁パネル32の小口面33には、高さ寸法Tが30mmの合じゃくり部(じゃくり構造)33cが形成されており、隣接する壁パネル32同士は、互いの合じゃくり部33cを係り合わせるようにして突き当てられ、目地部5が形成されている。合じゃくり部33cは壁パネル32の厚さ方向Dの中央Cに合わせて形成されている。
【0032】
粘弾性体37は、壁パネル32の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置され、面取部23aの端から10mmの位置に挟着されている。粘弾性体37の幅寸法L4は32mmとした。
【0033】
本実施形態に係る壁パネル構造1Dも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体37を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0034】
(第5実施形態)
次に、図9を参照し、本発明の第5実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図9は、第5実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第5実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜4実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0035】
本実施形態に係る壁パネル構造1Eの壁パネル42は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル42同士は、小口面43同士が突き当てられて目地部5が形成されている。粘弾性体47は、壁パネル42の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。
【0036】
壁パネル42の小口面43には、粘弾性体47を収容可能な彫り込み部(凹部)45が形成されている。本実施形態では、対面する両小口面43に彫り込み部45が形成されており、粘弾性体47は両方の彫り込み部45によって包まれるように収容されている。
【0037】
両方の壁パネル42に形成された彫り込み部45のうち、一方の彫り込み寸法(彫り込み深さ)を“H1”とし、他方の彫り込み寸法を“H2”とする。各彫り込み寸法H1,H2は、同じであっても異なっていても良い。両方の彫り込み寸法の合計を“H”とすると、“H=H1+H2”となる。所定の制振性能を確保するために必要となる粘弾性体47の厚み寸法を“N”とすると、彫り込み寸法の合計“H”は、粘弾性体47の厚み寸法“N”よりも小さくなるように設定する。
【0038】
隣接する壁パネル42を押しつけて建て込みを行う際に、彫り込み部45が形成されていない場合には、粘弾性体47の厚み寸法“N”は、目地部5の空き寸法、すなわち小口面43同士の間の隙間寸法になる。これに対して、本実施形態では、粘弾性体47を収容する彫り込み部45が形成されているので、目地部5の空き寸法Sは、彫り込み部45が形成されていない場合に比較して小さくなる。その結果として、壁パネル構造1Eの耐火性能を損なわないように、壁パネル42の小口面43を突き合わせやすい構造となる。
【0039】
例えば、壁パネル構造1Eの耐火性能を損なわないように、壁パネル42の目地部5の空き寸法Sを、1mm程度確保したいとする。ここで、所定の制振性能を確保するために必要となる粘弾性体47の厚み寸法“N”が2mmの場合には、壁パネル42の彫り込み寸法(H1、H2)を、それぞれ0.5mmとして、隣接する両方の壁パネル42の彫り込み部45の彫り込み寸法の合計“H”を1mmとすることにより、壁パネル42の目地部5の空き寸法Sを、1mm程度に確保することができる。
【0040】
なお、粘弾性体47の必要な厚み寸法“N”は、地震時に想定される、壁パネル42の目地部5の長さ方向、すなわち小口面43の長手方向に対してのムーブメントの量に対して、粘弾性体47の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗力を考慮し、破損が生じないような厚さで定める。ただし、厚み寸法“N”を大きくすると、粘弾性体47にかかるコストが高くなり、不経済となるため、経済性も加味し、総合的に定める必要がある。
【0041】
また、目地部5の空き寸法について、壁パネル42の耐火性能を考慮して予め規定しておき、空き寸法の規定値に合うようにして彫り込み部45を形成するようにしてもよい。例えば、壁パネル構造1Eの耐火性能を損なわないように、壁パネル42の目地部5の空き寸法の規定値“A”が1mmであったとする。そして、所定の制振性能を確保するために必要となる粘弾性体47の厚み寸法“N”が3mmの場合には、彫り込み部45の彫り込み寸法(H1、H2)を、それぞれ1mmとして、隣接する両方の壁パネル42の彫り込み寸法の合計“H”を2mmとすることにより、壁パネル42の小口面43の空き寸法“S”は規定値“A”と略同一寸法の1mm程度にすることができる。
【0042】
なお、目地部5の空き寸法の規定値“A”については、耐火性能の確保と、壁パネル42の製作精度や躯体側の下地の精度を加味すると、2mm〜0.5mmの範囲で設定するのが良く、さらには、1.5mm〜0.75mmが好ましく、1mm程度が最も好ましい。参考に、粘弾性体47を設けることがない従来の壁パネルが軽量気泡コンクリートパネルの場合には、耐火性能の確保と、壁パネルの製作精度や躯体側の下地の精度を加味して、目地部の空きを、1mm程度に設定していることが多い。
【0043】
また、彫り込み部45は、底面部45aと、底面部45aから立ち上がっている側面部45bとを有する。設計上、彫り込み部45の寸法は、粘弾性体47と側面部45bとの間に隙間が空くように形成されており、粘弾性体47は、彫り込み部45の側面部45bには接着されず、彫り込み部45の底面部45aにのみ接着されている。彫り込み部45の全面に渡って粘弾性体47が接着されていると、粘弾性体47の制振機能は、主として彫り込み部45から露出した一部分でしか発揮されない。しかしながら、壁パネル構造1Eでは、粘弾性体47は、彫り込み部45の底面部45aにのみ接着されており、側面部45bには接着されていないので、粘弾性体47は、その全体で自由に変位して振動エネルギーを熱エネルギーとして消費できるため、減衰性能は向上する。
【0044】
本実施形態に係る壁パネル構造1Eも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体47を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0045】
特に、本実施形態は、粘弾性体47を収容する彫り込み部(凹部)45を有するので、目地部5の隙間、すなわち小口面43同士の間の空き寸法をできるだけ狭くすることにより、目地部5の防耐火性能を確保しながら、ほぼ彫り込み部45内に収容できる体積分だけ粘弾性体47のサイズを大きくできるため、地震時に想定される、壁パネル42の目地部5の長さ方向、すなわち小口面43の長手方向に対してのムーブメントの量に対して、粘弾性体47の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。さらに、彫り込み部45内に粘弾性体47の一部を収容させることで、結果的に建物躯体Bの外からの火災に対しても強くなることが期待できる。
【0046】
(第6実施形態)
次に、図10を参照し、本発明の第6実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図10は、第6実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第6実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜5実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0047】
本実施形態に係る壁パネル構造1Fの壁パネル52は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル52同士は、小口面53同士が突き当てられて目地部5が形成されている。粘弾性体57は、壁パネル52の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。
【0048】
隣接する一対の壁パネル52,52のうち、一方の小口面53には、粘弾性体57を収容可能な彫り込み部(凹部)55が形成されている。本実施形態では、第5実施形態とは異なり、片方の小口面53にのみ彫り込み部55が形成されており、粘弾性体57は彫り込み部55に嵌るようにして収容されている。
【0049】
本実施形態に係る壁パネル構造1Fも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体57を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。また、第5実施形態に係る壁パネル構造1Eと同様に、粘弾性体57を収容する彫り込み部55を有するので、粘弾性体57の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。
【0050】
(第7実施形態)
次に、図11を参照し、本発明の第7実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図11は、第7実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第7実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜6実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0051】
本実施形態に係る壁パネル構造1Gの壁パネル62は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、壁パネル62の小口面63には、合じゃくり部(じゃくり構造)63cが形成されており、隣接する壁パネル62同士は、互いの合じゃくり部63cを係り合わせるようにして突き合てられ、目地部5が形成されている。合じゃくり部63cは壁パネル62の厚さ方向Dの中央Cに合わせて形成されている。
【0052】
粘弾性体67は、壁パネル62の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。壁パネル62の小口面63には、粘弾性体67を収容可能な彫り込み部(凹部)65が形成されている。本実施形態では、対面する両小口面63に彫り込み部65が形成されており、粘弾性体67は両方の彫り込み部65によって包まれるように収容されているが、片方の小口面63にのみ彫り込み部65が形成されるようにしてもよい。
【0053】
本実施形態に係る壁パネル構造1Gも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体67を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。また、第5実施形態に係る壁パネル構造1Eと同様に、粘弾性体67を収容する彫り込み部65を有するので、粘弾性体67の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。
【0054】
(第8実施形態)
次に、図12を参照し、本発明の第8実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図12は、第8実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第8実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜7実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0055】
本実施形態に係る壁パネル構造1Hの壁パネル72は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル72同士は、小口面73の本実部73c,73dによって接合されている。本実部73c,73dは、壁パネル72の厚さ方向Dの中央Cに設けられており、粘弾性体77は、本実部23c,23dに対して壁パネル72の厚さ方向Dの室内A2側に偏って配置されている。
【0056】
壁パネル72の小口面73には、粘弾性体77を収容可能な彫り込み部(凹部)75が形成されている。本実施形態では、対面する両小口面73に彫り込み部25が形成されており、粘弾性体77は両方の彫り込み部75によって包まれるように収容されているが、どちらか一方の小口面73にのみ彫り込み部75を形成し、その片方の彫り込み部75にのみ粘弾性体77が収容されるようにしてもよい。
【0057】
また、彫り込み部75は、底面部75aと、底面部75aから立ち上がっている側面部75bとを有する。設計上、彫り込み部75の寸法は、粘弾性体77と側面部75bとの間に隙間が空くように形成されており、粘弾性体77は、彫り込み部75の側面部75bには接着されず、彫り込み部75の底面部75aにのみ接着されている。その結果、粘弾性体77は、その全体で自由に変位して振動エネルギーを熱エネルギーとして消費できるため、減衰性能は向上する。
【0058】
本実施形態に係る壁パネル構造1Hも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、燃焼しやすい有機成分を含む粘弾性体77を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。また、第5実施形態に係る壁パネル構造1Eと同様に、粘弾性体77を収容する彫り込み部75を有するので、粘弾性体77の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。
【0059】
本発明は、以上の実施形態のみに限定されず、建物の減衰性能を向上させることが可能な制振機能を有する壁パネル構造に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る壁パネル構造の斜視図である。
【図2】壁パネル構造の目地部を拡大して示す斜視図である。
【図3】壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図4】隣接する壁パネルを押し付けて建て込みを行っている状態を示す図である。
【図5】建物躯体の外周に本実施形態に係る壁パネル構造を適用した一例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の第7実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H…壁パネル構造、2,12,22,32,42,52,62,72…壁パネル、3,13,23,33,43,53,63,73…小口面、5…目地部、7,17,27,37,47,57,67,77…粘弾性体、45,55,65,75…彫り込み部(凹部)、45a,75a…底面部、45b,75b…側面部、D…壁パネルの厚さ方向、A1…建物躯体の外、A2…建物躯体の室内、B…建物躯体、C…壁パネルの厚さ方向の中央。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の減衰性能を向上させることが可能な壁パネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物躯体にロッキング(揺れ)するように取り付けられた壁パネル構造において、壁パネル小口面に粘弾性体を狭着させて建物の減衰性能を向上させる技術が特許文献1に記載されている。この種の壁パネル構造では、制振機能を持たせるために、壁パネルの小口面には、壁パネルの厚さ方向の略中央部に粘弾性体が狭着されている。その結果として、この壁パネル構造は、地震や風による建物の揺れによって、壁パネルがロッキングした際には、隣接する壁パネル同士が相対変位して壁パネル小口面に介在する粘弾性体に振動エネルギーが伝達され、熱エネルギーとして消費されることにより、建物の減衰性能を向上させることができる。
【特許文献1】特開平11−62058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の壁パネル構造では、壁パネル小口面の厚さ方向の略中央部に粘弾性体を狭着させており、粘弾性体は難燃性でない有機成分を含んでいる場合も多いために耐火性能を損なう虞があった。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、建物の減衰性能を維持しながら建物躯体の外からの火災による室内側への延焼を防止して耐火性能を向上させることができる壁パネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
壁パネル同士を突き合わせて目地部を形成し、その目地部に粘弾性体を挟着させて制振機能を付与する場合、ロッキングする壁パネルの重心位置を考慮し、壁パネルの厚さ方向の略中央部に粘弾性体を挟着させるのが最適であると考えるのが一般的である。しかしながら、本発明者は、壁パネル構造の耐火性能の向上のために鋭意検討を行った結果、粘弾性体を壁パネルの厚さ方向の略中央部に配置しなくても、粘弾性体の確実な挟着状態を確保できていれば、制振機能に実質的な支障は無いという知見を得た。本発明は、この知見に基づいて導出されたものである。
【0006】
本発明は、隣接する壁パネルの小口面同士が突き合わせられて目地部が形成され、壁パネル同士は小口面の長手方向に可動となるように建物躯体の外周に取り付けられた壁パネル構造において、目地部には、壁パネルの小口面同士の間に粘弾性体が挟着され、粘弾性体は、壁パネルの厚さ方向の中央よりも室内側に偏って配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、目地部にて挟着される粘弾性体が室内側に偏って配置されているが、壁パネルの厚さ方向の略中央に粘弾性体が挟着されている場合に比べて実質的な制振機能の低下は無い。一方で、難燃性でない有機成分を含んだ粘弾性体を挟着した場合であっても、粘弾性体は室内側に偏って配置されているので、建物躯体の外からの火災による室内側への延焼を防止し易くなる。その結果として、粘弾性体の機能、すなわち、建物の減衰性能を維持しながら耐火性能を向上させ易くなる
【0008】
さらに、隣接する壁パネルの小口面同士のうち、少なくとも一方の小口面には、粘弾性体を収容する凹部が形成されていると好適である。目地部の隙間、すなわち小口面同士の間の空き寸法をできるだけ狭くすることにより、目地部の防耐火性能を確保しながら、ほぼ凹部内に収容できる体積分だけ粘弾性体のサイズを大きくできるため、地震時に想定される、壁パネルの目地部の長さ方向、すなわち小口面の長手方向に対してのムーブメントの量に対して、粘弾性体の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。さらに、凹部内に粘弾性体の一部を収容させることで、結果的に建物躯体の外からの火災に対しても強くなり、耐火性能をさらに向上させ易くなる。
【0009】
さらに、凹部は、底面部と、底面部から立ち上がっている側面部とを有し、粘弾性体は、底面部にのみ接着されていると好適である。粘弾性体と側面部とは接着されていないため、粘弾性体全体が自由に変位して振動エネルギーを熱エネルギーとして消費できるため、減衰性能は向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建物の減衰性能を維持しながら建物躯体の外からの火災による室内側への延焼を防止して耐火性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る壁パネル構造の斜視図である。図2は、本実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す斜視図である。図3は、壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【0012】
(第1実施形態)
図1〜図3に示されるように、本実施形態に係る壁パネル構造1Aは、鉄骨構造などの建物躯体B(図5参照)の外周に設けられる外壁構造として用いられており、複数の壁パネル2は、壁パネル取付部4によりロッキング構法によって取り付けられている。隣接する壁パネル2同士は小口面3同士が突き合わせられ、両壁パネル2の境界に目地部5が形成されている。目地部5には、粘弾性体7が挟着されている。地震時には、壁パネル2は上下の壁パネル取付部4を中心にしてロッキング(揺れ)し、隣接する壁パネル2同士は目地部5に沿った小口面3の長手方向に相対変位を発生し、目地部5の粘弾性体7に振動エネルギーが伝達される。粘弾性体7に伝達された振動エネルギーは、熱エネルギーに変えられることで、制振効果が生じ、建物の減衰性能を向上させる。
【0013】
壁パネル2は、100mm程度の厚みを有する軽量気泡コンクリートパネルからなる。壁パネル2の小口面3には、建物躯体Bの外A1側の側縁と室内A2側の側縁とに、欠損を避けるための面取部3aが形成されている。外A1側及び室内A2側の面取部3aの面取り寸法は約9mm程度である。面取部3aを形成する理由は、パネル建て込み時に、欠け(欠損)や傷がつくことを防ぐためである。
【0014】
壁パネル2の小口面3には、隣接する壁パネル2の反り具合の違いを矯正すると共に、壁の面を出し、且つ隣接する壁パネル2の面外方向の一体性を高めるために、本実部(実構造)3b,3cが設けられている。隣接する一対の壁パネル2のうち、一方の壁パネル2には凸状の本実部3bが形成され、他方の壁パネル2には凹状の本実部3cが形成されている。隣接する壁パネル2同士は、互いの本実部3b,3cが凹凸状に嵌り合うように設置される。本実部3b,3cは小口面3の長手方向に沿って直線状に延在しており、本実部3b,3cによって壁パネル2同士は小口面3の長手方向への移動は許容されるが、面外方向への移動は制限されている。
【0015】
本実部3b,3cは、小口面3における壁パネル2の厚さ方向Dの中央Cに設けられている。粘弾性体7は、壁パネル2の厚さ方向Dの中央Cに対して建物躯体Bの室内A2側に偏って配置されている。また、建物躯体Bの外A1側には、目地部5の隙間を埋めるためのシール材が充填されたシーリング部9が設けられている。なお、シーリング部9が設けられる外A1側の目地部5内には、シーリング部9の三面接着を防止するボンドブレーカー(図示せず)が内装されている。シーリング部9の三面接着を防止することで、シーリング部9に過度の負荷がかかり難くなり、シーリング部15の表面亀裂を抑止できる。
【0016】
粘弾性体7は、幅寸法L1が約30mm、厚みが約2mmであり、室内A2側の面取部3aの端に合わせるように狭着されている。なお、粘弾性体7は、粘性と弾性の両性質を合わせ持つ素材からなり、衝撃吸収や振動の低減に有効な物体である。本実施形態では、ブチル系あるいはアクリル系の仕様とした。また、粘弾性体7の厚みは、適宜、定めればよいが、0.5mm〜4mm程度が好ましい。
【0017】
図4に示されるように、隣接する壁パネル2の建て込みを行う際には、作業者Pが、壁パネル2を順次、押しつけて建て込みを行い、その後、壁パネル取付部4により、建物躯体Bに固定する。隣接する壁パネル2を押し付けて建て込みをおこなうので、壁パネル2が取り付けられる躯体精度のバラツキに係わらず、粘弾性体7を壁パネル2の小口面3に確実に狭着させることができる。なお、壁パネル2の小口面3で、粘弾性体7の接着部分には、プライマー処理を行って、押しつけるように壁パネル2の建て込みをおこなった。粘弾性体7としては、ブチル系あるいはアクリル系の仕様としたが、押しつけるように壁パネル2の建て込みをおこなった建て込み後も、粘弾性体7は、さほど圧縮されることなく、初期の厚みに近い寸法で納まった。
【0018】
本実施形態に係る壁パネル構造1Aでは、壁パネル2の小口面3の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏らせて粘弾性体7が配置されている。壁パネル構造1Aは建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体7を利用する場合であっても、その粘弾性体7を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0019】
例えば、軽量気泡コンクリートパネルの場合、耐火性能を60分〜120分程度確保するためには、壁パネル2の厚みを75mm以上の構造とする必要があるとされている。本実施形態に係る壁パネル構造1Aでは、壁パネル2の厚みは90mm程度であり、外A1側からの距離が75mm以上室内A2側に偏った位置、すなわち室内A2側から15mm(=90mm−75mm)以内に粘弾性体7を狭着させれば、外部から75mm部分は、従来の標準的な軽量気泡コンクリートパネルの壁パネル構造1Aと同様となり、60分〜120分程度の耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0020】
また、壁パネル2の厚みが100mmの場合や150mmの場合も同様であり、外A1側からの距離が75mm以上室内A2側に偏った位置、すなわち室内A2側から25mm(=100mm−75mm)または75mm(=150mm−75mm)以内に粘弾性体7を狭着するようにすれば、外A1側からの距離が75mmまでの部分は、従来の標準的な軽量気泡コンクリートパネルの壁パネル構造1Aと同様となり、60分〜120分程度の耐火性能を確保しやすい構造になる。なお、外面からの距離が75mmとなる部分を確保することは必須ではなく、壁パネル2の小口面3で壁パネル2の厚さ方向Dの室内A2側に粘弾性体7を狭着させることが重要であり、さらに言えば、壁パネル2の小口面3で壁パネル2の厚さ方向Dの略中央部より室内A2側に粘弾性体7を狭着させることが、耐火性能を確保しやすい構造とするために重要である。
【0021】
また、ある程度の厚みを有する壁パネル2の方が、薄い壁パネル2に比較して粘弾性体7を室内A2側に偏らせて配置した場合に耐火効果が高くなる。例えば、軽量気泡コンクリートパネルからなる壁パネル2の場合では、JIS(JISA5416−2007)の区分で言えば、厚形ALC、すなわち壁パネル2の厚みが75mm〜180mmの壁パネル2が好ましく、90mm〜180mmがより好ましく、さらには、100〜180mmが最も好ましい。
【0022】
(第2実施形態)
次に、図6を参照し、本発明の第2実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図6は、第2実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第2実施形態に係る壁パネル構造について、第1実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0023】
本実施形態に係る壁パネル構造1Bの壁パネル12は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル12同士は、小口面13の本実部13c,13dによって接合されている。本実部13c,13dは、壁パネル12の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。粘弾性体17の幅寸法L2は、余裕を持たせて22mmとした。本実部13c,13dに対して厚さ方向Dの他方側、すなわち小口面13の外A1側には、目地部5の隙間を埋めるためのシール材が充填されたシーリング部15が設けられている。なお、シーリング部15が設けられた他方側の目地部5内には、シーリング部15の三面接着を防止するためのバックアップ材16が内装されている。
【0024】
また、本実施形態に係る壁パネル構造1Bでは、粘弾性体17を狭着させる室内A2側の面取部13aの面取り寸法を、外A1側の面取部13bの面取り寸法よりも小さくなるようにしている。室内A2側の面取部13aの面取り寸法を小さくすればするほど、粘弾性体17の接着面積を広くとることが可能となる。一方で、面取り寸法が小さくなれば、欠損や傷を防ぐという効果が弱くなる。そこで、本実施形態では、一般の軽量気泡コンクリートパネルで採用されている9mm程度の面取り寸法からなる外A1側の面取部13bに対して、室内A2側の面取部13aの面取り寸法を9mmよりも小さくした。この室内A2側の面取部13aの面取り寸法としては、5mm〜1mmが好ましく、更に、粘弾性体17の接着面積の確保及びパネル建て込み時における欠損や傷の防止の両立という観点からは4mm〜2mmが好ましく、3mmがより好ましい。
【0025】
本実施形態に係る壁パネル構造1Bも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体17を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0026】
(第3実施形態)
次に、図7を参照し、本発明の第3実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図7は、第3実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第3実施形態に係る壁パネル構造について、第1実施形態または第2実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0027】
本実施形態に係る壁パネル構造1Cの壁パネル22は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル22同士は、小口面23同士を突き合わせて目地部5が形成されている。小口面23の面取部23a,23bの面取り寸法は、室内A2側の面取部23aを3mm、外A1側の面取部23bを9mmとしている。なお、壁パネル22の小口面23は、本実部が形成されないフラット形状になっており、目地部5は実構造を有していない。
【0028】
粘弾性体27は、壁パネル22の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置され、面取部23aの端に合わせるようにして挟着されている。粘弾性体27の幅寸法L3は22mmとし、外A1側からの距離が75mm程度までの部分は、従来の標準的な軽量気泡コンクリートパネルの壁構造と同様にした。
【0029】
本実施形態に係る壁パネル構造1Cも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体27を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0030】
(第4実施形態)
次に、図8を参照し、本発明の第4実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図8は、第4実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第4実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜3実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0031】
本実施形態に係る壁パネル構造1Dの壁パネル32は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、小口面33の面取部33a,33bの面取り寸法は、室内A2側の面取部33aを3mm、外A1側の面取部33bを9mmとしている。壁パネル32の小口面33には、高さ寸法Tが30mmの合じゃくり部(じゃくり構造)33cが形成されており、隣接する壁パネル32同士は、互いの合じゃくり部33cを係り合わせるようにして突き当てられ、目地部5が形成されている。合じゃくり部33cは壁パネル32の厚さ方向Dの中央Cに合わせて形成されている。
【0032】
粘弾性体37は、壁パネル32の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置され、面取部23aの端から10mmの位置に挟着されている。粘弾性体37の幅寸法L4は32mmとした。
【0033】
本実施形態に係る壁パネル構造1Dも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体37を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0034】
(第5実施形態)
次に、図9を参照し、本発明の第5実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図9は、第5実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第5実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜4実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0035】
本実施形態に係る壁パネル構造1Eの壁パネル42は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル42同士は、小口面43同士が突き当てられて目地部5が形成されている。粘弾性体47は、壁パネル42の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。
【0036】
壁パネル42の小口面43には、粘弾性体47を収容可能な彫り込み部(凹部)45が形成されている。本実施形態では、対面する両小口面43に彫り込み部45が形成されており、粘弾性体47は両方の彫り込み部45によって包まれるように収容されている。
【0037】
両方の壁パネル42に形成された彫り込み部45のうち、一方の彫り込み寸法(彫り込み深さ)を“H1”とし、他方の彫り込み寸法を“H2”とする。各彫り込み寸法H1,H2は、同じであっても異なっていても良い。両方の彫り込み寸法の合計を“H”とすると、“H=H1+H2”となる。所定の制振性能を確保するために必要となる粘弾性体47の厚み寸法を“N”とすると、彫り込み寸法の合計“H”は、粘弾性体47の厚み寸法“N”よりも小さくなるように設定する。
【0038】
隣接する壁パネル42を押しつけて建て込みを行う際に、彫り込み部45が形成されていない場合には、粘弾性体47の厚み寸法“N”は、目地部5の空き寸法、すなわち小口面43同士の間の隙間寸法になる。これに対して、本実施形態では、粘弾性体47を収容する彫り込み部45が形成されているので、目地部5の空き寸法Sは、彫り込み部45が形成されていない場合に比較して小さくなる。その結果として、壁パネル構造1Eの耐火性能を損なわないように、壁パネル42の小口面43を突き合わせやすい構造となる。
【0039】
例えば、壁パネル構造1Eの耐火性能を損なわないように、壁パネル42の目地部5の空き寸法Sを、1mm程度確保したいとする。ここで、所定の制振性能を確保するために必要となる粘弾性体47の厚み寸法“N”が2mmの場合には、壁パネル42の彫り込み寸法(H1、H2)を、それぞれ0.5mmとして、隣接する両方の壁パネル42の彫り込み部45の彫り込み寸法の合計“H”を1mmとすることにより、壁パネル42の目地部5の空き寸法Sを、1mm程度に確保することができる。
【0040】
なお、粘弾性体47の必要な厚み寸法“N”は、地震時に想定される、壁パネル42の目地部5の長さ方向、すなわち小口面43の長手方向に対してのムーブメントの量に対して、粘弾性体47の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗力を考慮し、破損が生じないような厚さで定める。ただし、厚み寸法“N”を大きくすると、粘弾性体47にかかるコストが高くなり、不経済となるため、経済性も加味し、総合的に定める必要がある。
【0041】
また、目地部5の空き寸法について、壁パネル42の耐火性能を考慮して予め規定しておき、空き寸法の規定値に合うようにして彫り込み部45を形成するようにしてもよい。例えば、壁パネル構造1Eの耐火性能を損なわないように、壁パネル42の目地部5の空き寸法の規定値“A”が1mmであったとする。そして、所定の制振性能を確保するために必要となる粘弾性体47の厚み寸法“N”が3mmの場合には、彫り込み部45の彫り込み寸法(H1、H2)を、それぞれ1mmとして、隣接する両方の壁パネル42の彫り込み寸法の合計“H”を2mmとすることにより、壁パネル42の小口面43の空き寸法“S”は規定値“A”と略同一寸法の1mm程度にすることができる。
【0042】
なお、目地部5の空き寸法の規定値“A”については、耐火性能の確保と、壁パネル42の製作精度や躯体側の下地の精度を加味すると、2mm〜0.5mmの範囲で設定するのが良く、さらには、1.5mm〜0.75mmが好ましく、1mm程度が最も好ましい。参考に、粘弾性体47を設けることがない従来の壁パネルが軽量気泡コンクリートパネルの場合には、耐火性能の確保と、壁パネルの製作精度や躯体側の下地の精度を加味して、目地部の空きを、1mm程度に設定していることが多い。
【0043】
また、彫り込み部45は、底面部45aと、底面部45aから立ち上がっている側面部45bとを有する。設計上、彫り込み部45の寸法は、粘弾性体47と側面部45bとの間に隙間が空くように形成されており、粘弾性体47は、彫り込み部45の側面部45bには接着されず、彫り込み部45の底面部45aにのみ接着されている。彫り込み部45の全面に渡って粘弾性体47が接着されていると、粘弾性体47の制振機能は、主として彫り込み部45から露出した一部分でしか発揮されない。しかしながら、壁パネル構造1Eでは、粘弾性体47は、彫り込み部45の底面部45aにのみ接着されており、側面部45bには接着されていないので、粘弾性体47は、その全体で自由に変位して振動エネルギーを熱エネルギーとして消費できるため、減衰性能は向上する。
【0044】
本実施形態に係る壁パネル構造1Eも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体47を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。
【0045】
特に、本実施形態は、粘弾性体47を収容する彫り込み部(凹部)45を有するので、目地部5の隙間、すなわち小口面43同士の間の空き寸法をできるだけ狭くすることにより、目地部5の防耐火性能を確保しながら、ほぼ彫り込み部45内に収容できる体積分だけ粘弾性体47のサイズを大きくできるため、地震時に想定される、壁パネル42の目地部5の長さ方向、すなわち小口面43の長手方向に対してのムーブメントの量に対して、粘弾性体47の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。さらに、彫り込み部45内に粘弾性体47の一部を収容させることで、結果的に建物躯体Bの外からの火災に対しても強くなることが期待できる。
【0046】
(第6実施形態)
次に、図10を参照し、本発明の第6実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図10は、第6実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第6実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜5実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0047】
本実施形態に係る壁パネル構造1Fの壁パネル52は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル52同士は、小口面53同士が突き当てられて目地部5が形成されている。粘弾性体57は、壁パネル52の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。
【0048】
隣接する一対の壁パネル52,52のうち、一方の小口面53には、粘弾性体57を収容可能な彫り込み部(凹部)55が形成されている。本実施形態では、第5実施形態とは異なり、片方の小口面53にのみ彫り込み部55が形成されており、粘弾性体57は彫り込み部55に嵌るようにして収容されている。
【0049】
本実施形態に係る壁パネル構造1Fも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体57を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。また、第5実施形態に係る壁パネル構造1Eと同様に、粘弾性体57を収容する彫り込み部55を有するので、粘弾性体57の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。
【0050】
(第7実施形態)
次に、図11を参照し、本発明の第7実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図11は、第7実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第7実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜6実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0051】
本実施形態に係る壁パネル構造1Gの壁パネル62は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、壁パネル62の小口面63には、合じゃくり部(じゃくり構造)63cが形成されており、隣接する壁パネル62同士は、互いの合じゃくり部63cを係り合わせるようにして突き合てられ、目地部5が形成されている。合じゃくり部63cは壁パネル62の厚さ方向Dの中央Cに合わせて形成されている。
【0052】
粘弾性体67は、壁パネル62の厚さ方向Dの中央Cに対して室内A2側に偏って配置されている。壁パネル62の小口面63には、粘弾性体67を収容可能な彫り込み部(凹部)65が形成されている。本実施形態では、対面する両小口面63に彫り込み部65が形成されており、粘弾性体67は両方の彫り込み部65によって包まれるように収容されているが、片方の小口面63にのみ彫り込み部65が形成されるようにしてもよい。
【0053】
本実施形態に係る壁パネル構造1Gも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、難燃性でない有機成分を含む粘弾性体67を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。また、第5実施形態に係る壁パネル構造1Eと同様に、粘弾性体67を収容する彫り込み部65を有するので、粘弾性体67の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。
【0054】
(第8実施形態)
次に、図12を参照し、本発明の第8実施形態に係る壁パネル構造について説明する。図12は、第8実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。なお、第8実施形態に係る壁パネル構造について、第1〜7実施形態に係る壁パネル構造と同様の要素や部材については、同一の符号を付して詳細説明は省略する。
【0055】
本実施形態に係る壁パネル構造1Hの壁パネル72は、厚み100mm程度の軽量気泡コンクリートパネルからなり、隣接する壁パネル72同士は、小口面73の本実部73c,73dによって接合されている。本実部73c,73dは、壁パネル72の厚さ方向Dの中央Cに設けられており、粘弾性体77は、本実部23c,23dに対して壁パネル72の厚さ方向Dの室内A2側に偏って配置されている。
【0056】
壁パネル72の小口面73には、粘弾性体77を収容可能な彫り込み部(凹部)75が形成されている。本実施形態では、対面する両小口面73に彫り込み部25が形成されており、粘弾性体77は両方の彫り込み部75によって包まれるように収容されているが、どちらか一方の小口面73にのみ彫り込み部75を形成し、その片方の彫り込み部75にのみ粘弾性体77が収容されるようにしてもよい。
【0057】
また、彫り込み部75は、底面部75aと、底面部75aから立ち上がっている側面部75bとを有する。設計上、彫り込み部75の寸法は、粘弾性体77と側面部75bとの間に隙間が空くように形成されており、粘弾性体77は、彫り込み部75の側面部75bには接着されず、彫り込み部75の底面部75aにのみ接着されている。その結果、粘弾性体77は、その全体で自由に変位して振動エネルギーを熱エネルギーとして消費できるため、減衰性能は向上する。
【0058】
本実施形態に係る壁パネル構造1Hも、建物躯体Bの外壁構造として利用されており、燃焼しやすい有機成分を含む粘弾性体77を室内A2側に偏らせて配置することで、建物の外からの火災による室内A2側への延焼の防止を図ることができ、防耐火性能を確保しやすい構造とすることができる。また、第5実施形態に係る壁パネル構造1Eと同様に、粘弾性体77を収容する彫り込み部75を有するので、粘弾性体77の許容できるせん断変形量やせん断接着抵抗を考慮し、破損が生じないような厚さを定めやすくなり、減衰性能を向上させるための総合的な設計を容易にすることが出来る。
【0059】
本発明は、以上の実施形態のみに限定されず、建物の減衰性能を向上させることが可能な制振機能を有する壁パネル構造に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1実施形態に係る壁パネル構造の斜視図である。
【図2】壁パネル構造の目地部を拡大して示す斜視図である。
【図3】壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図4】隣接する壁パネルを押し付けて建て込みを行っている状態を示す図である。
【図5】建物躯体の外周に本実施形態に係る壁パネル構造を適用した一例を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図11】本発明の第7実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態に係る壁パネル構造の目地部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H…壁パネル構造、2,12,22,32,42,52,62,72…壁パネル、3,13,23,33,43,53,63,73…小口面、5…目地部、7,17,27,37,47,57,67,77…粘弾性体、45,55,65,75…彫り込み部(凹部)、45a,75a…底面部、45b,75b…側面部、D…壁パネルの厚さ方向、A1…建物躯体の外、A2…建物躯体の室内、B…建物躯体、C…壁パネルの厚さ方向の中央。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する壁パネルの小口面同士が突き合わせられて目地部が形成され、前記壁パネル同士は前記小口面の長手方向に可動となるように建物躯体の外周に取り付けられた壁パネル構造において、
前記目地部には、前記壁パネルの小口面同士の間に粘弾性体が挟着され、
前記粘弾性体は、前記壁パネルの厚さ方向の中央よりも室内側に偏って配置されていることを特徴とする壁パネル構造。
【請求項2】
隣接する前記壁パネルの小口面同士のうち、少なくとも一方の前記小口面には、前記粘弾性体を収容する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の壁パネル構造。
【請求項3】
前記凹部は、底面部と、前記底面部から立ち上がっている側面部とを有し、
前記粘弾性体は、前記底面部にのみ接着されていることを特徴とする請求項2記載の壁パネル構造。
【請求項1】
隣接する壁パネルの小口面同士が突き合わせられて目地部が形成され、前記壁パネル同士は前記小口面の長手方向に可動となるように建物躯体の外周に取り付けられた壁パネル構造において、
前記目地部には、前記壁パネルの小口面同士の間に粘弾性体が挟着され、
前記粘弾性体は、前記壁パネルの厚さ方向の中央よりも室内側に偏って配置されていることを特徴とする壁パネル構造。
【請求項2】
隣接する前記壁パネルの小口面同士のうち、少なくとも一方の前記小口面には、前記粘弾性体を収容する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の壁パネル構造。
【請求項3】
前記凹部は、底面部と、前記底面部から立ち上がっている側面部とを有し、
前記粘弾性体は、前記底面部にのみ接着されていることを特徴とする請求項2記載の壁パネル構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−221676(P2009−221676A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64573(P2008−64573)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】
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