説明

壁体の診断方法および壁体診断報告書

【課題】壁体に生じている空隙部の状態を、視覚を通じて十分に把握できるようにした、壁体の診断方法および壁体診断報告書を提供する。
【解決手段】躯体2および躯体2の表面に設けた仕上げ材3からなる建築物の壁体1に生じた空隙部6,7の状態を、カメラユニット11を用いて診断する壁体1の診断方法であって、空隙部6,7が生じた壁体1の要診断箇所に、仕上げ材3を貫通し躯体2に達する診断用穴8を穿孔する穿孔工程と、診断用穴8にカメラユニット11の鏡筒15を挿入し、診断用穴8における空隙部6,7を撮像する撮像工程と、撮像工程の撮像結果に基づいて、空隙部6,7の状態を診断する診断工程と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁や内壁等の壁体に生じた空隙部の状態を診断する壁体の診断方法および壁体診断報告書に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の診断方法ではないが、アンカーピンニング工法の施工過程において、穿孔した挿填穴を介して、壁体に生じた浮き部の数や位置を探査する浮き部の探査方法が知られている(特許文献1参照)。
この探査方法は、ハンマー等を用いて壁体を打診し、その打診音に基づいて壁体の要補修箇所を決定し、前記要補修箇所に補修用のアンカーピンを挿填するための挿填穴を形成した後、専用の探査治具を挿填穴に挿入することで行われる。
この探査治具は、挿填穴に挿填される棒状の手持ち部の先端側にフック部を有しており、挿填穴の穴壁をなぞることでフック部が浮き部に引っ掛かることで、浮き部を検出する。このときに、挿填穴の開口部における手持ち部の位置を記録マーキングし、フック部からの距離を測定することで、挿填穴の開口部から浮き部までの距離や浮き部の幅を測定するようにしている。また、挿填穴の深さ方向に複数の浮き部が生じている場合も、同様の方法で探査を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−106639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外壁等の壁体は、通常、コンクリート躯体の表面にモルタルを介してタイルや石材等の装飾材を貼り付けて構成されており、またモルタルは、下地モルタルおよび仕上げモルタル等で構成されている。このため、実際の施工現場では、コンクリート躯体−下地モルタルの間、下地モルタル−仕上げモルタルの間、仕上げモルタル−装飾材の間等において、複数箇所に「浮き部」が生じていることが一般的である。そして、この種の壁体の補修(アンカーピンニング工法)において、全の「浮き部」に接着剤を注入することが重要であり、そのためには、全の「浮き部」を正確に把握しておくことが必要となる。
しかしながら、従来の探査治具を用いた探査方法を浮き部の診断方法として利用しても、空隙部の位置や数は把握できるものの、空隙部が浮き部なのが施工時の気泡の痕なのか、或いは浮き部に穿孔時の粉塵が残っている等の把握まではできず、補修の必要性や的確な補修方法を決定するのに十分ではなかった。
【0005】
本発明は、壁体に生じている空隙部の状態を、視覚を通じて十分に把握できるようにした壁体の診断方法および壁体診断報告書を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁体の診断方法は、躯体および躯体の表面に設けた仕上げ材からなる建築物の壁体に生じた空隙部の状態を、カメラユニットを用いて診断する壁体の診断方法であって、空隙部が生じた壁体の要診断箇所に、仕上げ材を貫通し躯体に達する診断用穴を穿孔する穿孔工程と、診断用穴にカメラユニットの鏡筒を挿入し、診断用穴における空隙部を撮像する撮像工程と、撮像工程の撮像結果に基づいて、空隙部の状態を診断する診断工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、カメラユニットにより、診断用穴を介して空隙部を撮像するようにしているため、その撮像結果から視覚を通じて、空隙部の状態を的確に把握することができる。すなわち、空隙部の数や略の位置は元より、空隙部が本来の浮き部なのが施工時の気泡の痕なのかを把握できると共に、空隙部に穿孔時の粉塵が残っている等を把握することができる。また、診断結果を分かり易く第3者に提示(アピール)することができる。なお、カメラユニットとして、いわゆる内視鏡を用いることが好ましい。また、診断用穴は、補修(アンカーピンニング工法)を行うことが確定している場合には、補修時の挿填穴を兼ねるべく、仕上げ材を構成するタイル等の中心に穿孔し、確定していない場合には、目地に穿孔するようにしてもよい。
【0008】
この場合、穿孔工程と撮像工程との間に、空隙部に引っ掛かるように構成したフック部を有する探査用治具を用い、診断用穴の内面をなぞって、診断用穴内おける空隙部の位置を計測する探査工程を、更に備え、撮像工程では、探査工程で計測した位置を目標に鏡筒を挿入して撮像を実施することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、空隙部の位置に関する計測結果、例えば診断用穴の開口部から空隙部までの距離を、診断資料として残すことができると共に、空隙部の撮像および診断を効率良く行うことができる。
【0010】
また、撮像工程では、空隙部がリング状の暗部として撮像されるように、空隙部を手前位置から撮像することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、1の撮像結果に、診断用穴内における空隙部の全体像を映し出すことができる。
【0012】
同様に、撮像工程では、鏡筒に側視用のアタッチメントを装着して、空隙部を撮像することが好ましい。
その際、アタッチメントを装着した鏡筒を周方向に回転させて、空隙部の複数箇所を撮像することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、空隙部の幅を把握することができると共に、診断用穴内における空隙部の全体像を把握することができる。このため、空隙部が浮き部なのか、単なる気泡の痕なのか、或いは穿孔時の粉塵詰まりなのかといった判別が可能となる。
【0014】
本発明の壁体診断報告書は、上記の壁体の診断方法による診断結果を明記した壁体診断報告書であって、診断を行った壁体を含む建物外観の写真を掲載する調査対象写真欄と、壁体の診断結果を記載した調査結果記載欄と、撮像した空隙部の写真を掲載する空隙部写真欄と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、診断を行った壁体の部位や診断結果等の必要な情報を報告できると同時に、撮像した空隙部の写真を掲載することで、視覚的に診断結果の内容を報告することができる。
【0016】
また、この場合、壁体の診断結果を図解した調査結果図解欄、を更に備えていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、図を用いることで診断を行った壁体の構造と空隙部の状態と、を分かり易く報告することができる。
【0018】
この場合、壁体の診断結果に応じた壁体の補修方法を図解した補修方法図解欄、を更に備えていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、壁体の診断結果に基づいた最適な壁体の補修方法を、分かり易く報告することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】カメラユニットを、外壁の診断用穴に対して使用している状態の断面模式図である。
【図2】本実施形態で用いるカメラユニットのシステム図である。
【図3】本実施形態で用いる探査治具の斜視図である。
【図4】本実施形態に係る壁体の診断方法における(a)穿孔工程を示した図である。
【図5】本実施形態に係る壁体の診断方法における探査工程を示した説明図であり、(b)は探査治具を診断用穴の最深部まで挿入した図であり、(c)はフック部が空隙部に引っ掛かったときの図であり、(d)は仕上げ材表面位置を摘んだ図であり、(e)はスケールで空隙部までの距離を測るときの図である。
【図6】本実施形態に係る壁体の検査方法における撮像工程を示した説明図であり、(f)は側視用鏡筒を空隙部まで挿入した図であり、(g)は側視用鏡筒を回転させたときの図である。
【図7】本実施形態に係る、調査対象写真欄、調査結果記載欄および空隙部写真欄を含む壁体診断報告書の一例を示した図である。
【図8】本実施形態に係る、調査結果図解欄および補修方法図解欄を含む壁体診断報告書の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る壁体の診断方法および壁体診断報告書について説明する。この壁体の診断方法は、建物の外壁等の壁体に生じた空隙部(浮き部)を、壁体に穿孔した診断用穴からカメラを挿入して撮像することにより診断するものである。以下、建物の外壁を診断する場合について説明する。
【0022】
図1に示すように、建物の外壁である壁体1は、下地となるコンクリート躯体(躯体)2と、その表面に塗着させた仕上げ材3と、で構成されており、仕上げ材3は、モルタル4と、これに貼ったタイルや石材などの装飾材5と、で構成されている。この場合、コンクリート躯体2およびモルタル4の間には第1空隙部6が、またモルタル4および装飾材5の間には第2空隙部7が生じているものとする。
なお、この壁体1の診断方法は、装飾材5およびモルタル4を貫通し、且つコンクリート躯体2を所定の深さまで穿孔した診断用穴8に、後述するカメラユニット11および探査治具71を差し込んで行われる。そこで、先ずカメラユニット11および探査治具71から説明する。
【0023】
図2は、カメラユニット11のシステム図であり、同図に示すように、カメラユニット11は、いわゆる工業用の内視鏡であり、内視鏡本体12と、内視鏡本体12に着脱自在に接続したCCDカメラ13と、CCDカメラ13に接続したカメラ用モニター23と、を備えている。内視鏡本体12は、対物レンズを内蔵した鏡筒15と、鏡筒15の基部側に連なる接眼ウインドウ20と、上端に鏡筒15および接眼ウインドウ20を支持すると共に、バッテリーおよび照明用の光源を内蔵したグリップ部17と、を有している。そして、CCDカメラ13は、接眼ウインドウ20に接続されている。
【0024】
作業者は、グリップ部17で内視鏡本体12を把持し、診断用穴8に鏡筒15を差し込んで診断用穴8の内部を撮像する。もっとも、CCDカメラ13を外せば、接眼ウインドウ20から診断用穴8の内部を目視することが可能である。CCDカメラ13は、鏡筒15を介して診断用穴8内の前方(A)を撮像する。この場合、上記の第1空隙部6や第2空隙部7は、リング状の暗部として撮像される。
一方、鏡筒15は、先端側からミラー21を備えた筒状の側視用アタッチメント16を差し込むようにして装着可能に構成されている。側視用アタッチメント16を装着した状態でCCDカメラ13は、鏡筒15を介して診断用穴8内の側方(B)、すなわち診断用穴8の内側面を撮像する。この場合、上記の第1空隙部6や第2空隙部7は、略直線状の暗部として撮像される。また、側視用アタッチメント16を装着した状態で、内視鏡本体12(或いは側視用アタッチメント16)を回転させれば、診断用穴8の内側面を周方向に撮像することができる。
【0025】
CCDカメラ13は、接眼ウインドウ20の部分に着脱自在に装着され、鏡筒15を介して対象物を撮像する。カメラ用モニター23は、CCDカメラ13にケーブル24を介して接続され、CCDカメラ13で撮像された映像が、カメラ用モニター23のディスプレイに映し出される構成となっている。また、カメラ用モニター23は、外部メモリー(記憶媒体)25の挿入口を備えており、CCDカメラ13によって撮像された診断箇所の映像を、外部メモリー25に画像データーとして保存する機能を有している。このため、記録した画像データーを、外部メモリー25を介して容易にコンピューター26(パソコン)に取り込むことができる。
【0026】
診断箇所を撮像した画像データーをコンピューター26に取り込むことで、画像の編集や、画像を添付した診断結果データーの作成が容易に行える。また、作成した診断結果データーを、プリンター27によって印刷(プリントアウト)し、後述する壁体診断報告書40を作成することで、診断結果を第3者に対して報告することもできる。
【0027】
図3は、探査治具71の斜視図であり、同図に示すように、探査治具71は、診断用穴8の深さより十分に長い棒状の手持ち部73と、手持ち部73の先端に略直角に折り曲げるようにして形成されたフック部72と、から成り、ステンレス等の金属で一体に形成されている。手持ち部73で把持した探査治具71を診断用穴8に挿入し、穴壁を深さ方向になぞることで、フック部72が第1・第2空隙部6,7に引っ掛かり、第1・第2空隙部6,7が探査される。
【0028】
フック部72は、正面視略三角形に且つ薄手に形成され、診断用穴8の穴壁をなぞったときに、第1・第2空隙部6,7に落ち込んでこれに引っ掛かるようになっている。このフック部72の厚さは約0.2mmであり、第1・第2空隙部6,7に引っ掛かったときに探査治具71を前後させることで、第1・第2空隙部6,7のそれぞれの奥行き寸法を推定することができるようになっている。そして、探査された第1・第2空隙部6,7の位置を狙って、診断用穴8にカメラユニット11(の鏡筒15)を挿入し、撮像が行われる。
【0029】
次に、図4ないし6を参照して、本実施形態に係る壁体1の診断方法について説明する。
この診断方法は、ハンマー等を用いて壁体1を打診し、その打診音に基づいて壁体1の要補修箇所を探査し、診断用穴8の穿孔位置を決定する。これに続いて、穿孔位置に適宜、マーキングが行われる。本実施形態の診断方法は、補修を行うことを前提とし補修方法の詳細を決定するために行うため、診断用穴8と補修時のアンカーピンの挿填穴を兼ねるべく、装飾材5の中心位置にマーキングが行われる。なお、補修が必要であるか否かの診断では、装飾材5の目地部分にマーキングを行う(診断用穴8を穿孔する)ことも可能である。
【0030】
さらに、壁体1の診断方法は、マーキング部分おいて、壁体1を所定の深さまで穿孔して診断用穴8を形成する穿孔工程と、探査治具71を用い診断用穴8の空隙部6,7を探査する探査工程と、カメラユニット11を用い探査工程にて探査した位置まで鏡筒15を挿入して撮像する撮像工程と、撮像工程の撮像結果に基づいて、空隙部6,7の状態を診断する診断工程と、を備えている。
なお、作業を簡素化するために探査工程を省略してもよい。
【0031】
穿孔工程では、ダイヤモンドコアドリル等の穿孔工具61を使用して、マーキングした壁体1の各穿孔位置に診断用穴8を形成する。すなわち、装飾材5およびモルタル4を貫通するようにしてコンクリート躯体2を所定の深さまで穿孔を行い、診断用穴8を形成する(図4(a)参照)。この際、壁体1に対する穿孔は直角に行い、診断用穴8は、カメラユニット11の鏡筒15より一回り大きな径(1mm〜2mm太径)のストレート穴に形成する。もっとも、本実施形態では、診断用穴8が、補修(アンカーピンニング工法)用の挿填穴を兼ねているため、補修に用いるアンカーピンよりも一回り大きな径の穴を形成する。
その後、コンクリート躯体2の切粉等を診断用穴8内から除去すべくブロア等で噴気、または真空集塵機等で吸引、清掃し除去する(図示省略)。もっとも、冷却水を用いる穿孔であって、冷却水と共に切粉が流出する場合には、この除去工程は省略される。
【0032】
探査工程では、まず、探査治具71を診断用穴8の最深部に挿入して(図5(b)参照)、フック部72で診断用穴8の穴壁をなぞるように手前に引いてくる。これにより、フック部72が第1・第2空隙部6,7にそれぞれ引っ掛かる(図5(c)参照)。フック部72が第1・第2各空隙部6,7に引っ掛かったら、装飾材5の表面まで指を滑らせて、手持ち部73を摘み(図5(d)参照)、別途用意したスケール75によって、摘んだ位置とフック部72との距離を測る(図5(e)参照)。これにより、第1・第2空隙部6,7から開口部10までの距離をそれぞれ測定する。このように、上記の探査工程を繰り返すことで、装飾材5から第1空隙部6および第2空隙部7までの距離を測定する。
【0033】
撮像工程では、探査工程にて確認した第1・第2空隙部6,7の位置まで側視用アタッチメント16を装着した鏡筒15を挿入し、第1・第2空隙部6,7の撮像をそれぞれ行う(図6(f))。このとき、カメラ用モニター23のディスプレイに映し出される映像を確認しながら、第1・第2各空隙部6,7の位置および焦点の微調整を行い、第1・第2空隙部6,7の映像が鮮明に確認できた状態で、これを撮像し画像データーとして保存する。
また、側視用アタッチメント16を周方向に回転させることで、第1・第2各空隙部6,7の複数箇所(診断用穴8の内面に沿って周方向にずれた部位:2から4箇所)の撮像を行う(図6(g)参照)。この工程を、探査工程にて探査した全ての空隙部に対して行う。
なお、診断用穴8内における第1・第2各空隙部6,7の全体像を映し出すことができるように、側視用アタッチメント16を取り外した状態で撮像してもよい。
【0034】
診断工程では、撮像工程の撮像結果に基づいて、第1・第2各空隙部6,7の診断を行う。具体的には、撮像した第1・第2各空隙部6,7の写真(画像)から、第1・第2各空隙部6,7が浮き部なのか、単なる気泡の痕なのか、或いは穿孔時の粉塵詰まりなのかといった判別を行う。また、第1・第2各空隙部6,7の存在する位置(開口部10からの位置)、大きさ(浮き幅)等を数値化する。さらに、診断を行った壁体1の断面図を作成して、第1・第2各空隙部6,7の状況を把握し、補修のための機器・器具の選定や、接着剤の量などを決定することも可能である。
なお、撮像工程にて撮像した診断部の画像データーおよび診断結果を、コンピューターにて編集しまとめておくことが好ましい。これにより、診断した結果を撮像した画像と共にデーターとして残しておくことが可能となり、必要に応じてプリントアウトすることもできる。
また、必要に応じ(顧客への報告)、これら診断結果に基づいて、後述するように壁体診断報告書40を作成する。
【0035】
以上の方法により、第1・第2空隙部6,7が生じた壁体1の状態を、カメラユニット11を用いることで視覚を通じて確認することができると同時に、画像(写真)として保存することができる。なお、実施形態では、第1・第2空隙部6,7の2つの空隙部を仮定して説明したが、空隙部の数に関係なく、上記の診断を実施する。
【0036】
次に、図7および図8を参照して、上記診断方法の診断結果をまとめた壁体診断報告書40について説明する。
特に図示しないが、例えば、表紙には、診断報告書(調査報告書)である旨の表示、診断対象とした建物名、報告書作成年月日、報告者等が記載される。また、フロントページには、診断物件(調査物件)の概要として、物件名称、所在地、建物用途、診断日(調査日)等の他、診断物件(診断壁面)の全景写真が掲載される。さらに、2ページ目には、壁面の位置(東西南北)、階数、装飾材5の種別により特定した診断箇所、装飾材5の詳細、診断目的、診断方法等が簡単に記載される他、矢印で診断箇所を示した全景写真を掲載される。
【0037】
図7および図8に示すように、例えば、壁体診断報告書40の3ページ以降には、主に上記の診断箇所毎であって、且つ第1・第2空隙部6,7毎の診断結果(調査結果)が掲載される。それぞれ項目としては、診断を行った壁体1を含む建物外観の写真を掲載する調査対象写真欄41と、壁体1の診断結果を記載した調査結果記載欄42と、撮像した空隙部の写真を掲載する空隙部写真欄43と、壁体1の診断結果を図解した調査結果図解欄44と、壁体1の診断結果に応じた壁体の補修方法を図解した補修方法図解欄45と、を含んでいる。
【0038】
図7に示すように、調査対象写真欄41には、上記の診断箇所が記載されると共に、建物外観の写真(上記の矢印つきの全景写真)が掲載される。これにより、建物のどの部分を診断したかが特定される。
調査結果記載欄42には、第1・第2各空隙部6,7の位置が記載されると共に、第1・第2各空隙部6,7の位置をマーキングした探査治具71およびスケールの写真が掲載される。すなわち、測定した第1・第2各空隙部6,7の位置等の情報を掲載される。
空隙部写真欄43には、第1空隙部6の位置が記載されると共に、第1空隙部6の写真(上記の撮像結果)が掲載される。同様に、第2空隙部7の位置が記載されると共に、第2空隙部7の写真(上記の撮像結果)が掲載される。
【0039】
図8に示すように、調査結果図解欄44には、診断結果から作成した壁体1の模式的な断面図が掲載される。なお、断面図には、壁体1の構造、第1・第2各空隙部6,7の存在する位置(深さ)、形成した診断用穴8の深さおよび大きさ等の寸法情報を共に記載しておくことが好ましい。
補修方法図解欄45には、調査結果図解欄44と同様に診断結果から作成した壁体1の断面図を用い、壁体の補修方法(補修結果)が掲載される。なお、壁体1の断面図と共に、補修に最適なアンカーピンの形状や、接着剤の種類等も記載しておくことが好ましい。
【0040】
上記の壁体診断報告書40を用いることで、診断手法や診断結果を第3者(顧客)に対して漏れなく報告することができる。また、断面図や撮像した画像(写真)を用いることで、診断結果を一目で簡単に把握することができ、さらに、各部位の詳細な状況を明確に理解することができる。
【0041】
なお、本実施形態において用いた、カメラユニット11を用いた第1・第2各空隙部6,7の撮像工程を、壁体1の補修を行うアンカーピンニング工法の工程の一環として実施してもよい。そして、上記の診断結果に基づくアンカーピンニング工法の実施では、先ず要補修箇所に、上記の診断用穴8に加えてこれと同様の装填穴を穿孔し、特殊な樹脂注入器により装填穴および第1・第2各空隙部6,7に接着剤を注入する。続いて、頭部を装飾材5と同色に着色したアンカーピンを装填穴に装着し、養生する(図8参照)。
【0042】
1:壁体、 2:(コンクリート)躯体、 3:仕上げ材、 6:第1空隙部、 7:第2空隙部、 8:診断用穴、 11:カメラユニット、 15:鏡筒、 16:側視用アタッチメント、 40:壁体診断報告書、 41:調査対象写真欄、 42:調査結果記載欄、 43:空隙部写真欄、 44:調査結果図解欄、 45:補修方法図解欄、 71:探査治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体および前記躯体の表面に設けた仕上げ材からなる建築物の壁体に生じた空隙部の状態を、カメラユニットを用いて診断する壁体の診断方法であって、
前記空隙部が生じた前記壁体の要診断箇所に、前記仕上げ材を貫通し前記躯体に達する診断用穴を穿孔する穿孔工程と、
前記診断用穴に前記カメラユニットの鏡筒を挿入し、前記診断用穴における前記空隙部を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程の撮像結果に基づいて、前記空隙部の状態を診断する診断工程と、を備えたことを特徴とする壁体の診断方法。
【請求項2】
前記穿孔工程と前記撮像工程との間に、
前記空隙部に引っ掛かるように構成したフック部を有する探査用治具を用い、
前記診断用穴の内面をなぞって、前記診断用穴内おける前記空隙部の位置を計測する探査工程を、更に備え、
前記撮像工程では、前記探査工程で計測した位置を目標に前記鏡筒を挿入して撮像を実施することを特徴とする請求項1に記載の壁体の診断方法。
【請求項3】
前記撮像工程では、前記空隙部がリング状の暗部として撮像されるように、前記空隙部を手前位置から撮像することを特徴とする請求項1または2に記載の壁体の診断方法。
【請求項4】
前記撮像工程では、前記鏡筒に側視用のアタッチメントを装着して、前記空隙部を撮像することを特徴とする請求項1または2に記載の壁体の診断方法。
【請求項5】
前記アタッチメントを装着した前記鏡筒を周方向に回転させて、前記空隙部の複数箇所を撮像することを特徴とする請求項4に記載の壁体の診断方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の壁体の診断方法による診断結果を明記した壁体診断報告書であって、
診断を行った前記壁体を含む建物外観の写真を掲載する調査対象写真欄と、
前記壁体の診断結果を記載した調査結果記載欄と、
撮像した前記空隙部の写真を掲載する空隙部写真欄と、
を備えたことを特徴とする壁体診断報告書。
【請求項7】
前記壁体の診断結果を図解した調査結果図解欄、を更に備えたことを特徴とする請求項6に記載の壁体診断報告書。
【請求項8】
前記壁体の診断結果に応じた前記壁体の補修方法を図解した補修方法図解欄、を更に備えたことを特徴とする請求項6または7に記載の壁体診断報告書。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−256641(P2011−256641A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133189(P2010−133189)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(506162828)FSテクニカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】