説明

壁材組成物

【課題】 近年に入ると住宅建築も工業化の中で、伝統的な木造工法から工業化工法へと姿を変えて行き、室内も接着剤や化学繊維などの化学製品が多用されており、この様な化学物質による人体への悪影響が問題になっている。
壁材組成物に加えるだけで、この様な化学物質を吸収除去する混合材を提供する。
【解決手段】 内装用壁材及び壁材に於いて、基本材料を混合した組成物に、乾燥したイグサを繊維状に破砕した、イグサ繊維を添加混合しペースト状に練ったものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にジュラク壁、土壁、漆喰壁及び石膏ボード等の内装用壁材及び壁材の基本素材に添加することにより、強度及び調湿性並びにデザイン性、作業性を向上させる添加物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本の住宅建築は、日本の気候風土に適した、特に高温多湿を防ぐ壁として、土の中に藁や砂を混合し、水を入れて混練した土壁を用いており、此れは、調湿性能が高く、室内の湿度を人間が一番心地好いと感じる40〜60%に保つ機能を有するものである。
【0003】
更に、江戸時代に成ると、土壁の表面に消石灰(水酸化カルシウム)に海草糊や麻、藁、紙などを細かく裁断したものを加え、水で混練したものを塗りつけた、漆喰壁が使われるようになり、この壁はより調湿性能を高め、その上強度、不燃性、防カビ性を有し、デザイン性も高いもので有った。
【0004】
しかしながら、近年に入ると住宅建築も工業化の中で、伝統的な木造工法から工業化工法へと姿を変えて行き、室内も接着剤や化学繊維などの化学製品が多用される様に成った。
この様な壁としては、ジュラク壁(京壁)が有る、此れは、木粉と樹脂(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩)等を混練した物が有る(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、現在でも内装用壁材として、漆喰や土壁を使用する場合が有るが、耐火性と強度を増す為に、グラスウール、合成樹脂、接着剤等の化学物質を使用したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−91903
【特許文献2】特開2003−206170
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在の工業化工法で作られた住宅では、内装材に多くの化学製品が使用され、中でも接着剤が多く使用されており、更に、この接着剤を薄めて使い易くする為に用いられる溶剤等がある。
【0007】
上記接着剤の用途としては、壁や天井のクロスの貼り付け、フローリングの取り付け、家具の組み立てなどで、原料としては、ホルマリンなどの揮発生有機化合物であり、更に、接着剤用の溶剤として酢酸ブチル、トルエン、キシレン、酢酸ビニルなどが使用されている、その外、防虫剤や防腐剤も多く使用されているものである。
【0008】
この様な化学物質が室内に多く充満しており、それを住民が呼吸や皮膚、粘膜から知らない内に吸収している、身体に許容範囲を超えた量の化学物質が侵入すると、その物質に対して非常に微量でも過度に異常な反応を示すようになる、これを化学物質過敏症(シックハウス症候群)と言い、目の痛み、頭痛、手先の痺れ、呼吸困難などの様々な症状をひき起す原因となり、又、この様な化学物質は、火災の際に有毒ガスを発生する物が多く、その為現在の住宅では、焼死よりガスによる中毒死の方が多く出ているものである。
【0009】
又、主に壁面の仕上げとして施工されるジュラク壁や、漆喰壁、土壁等は、湿度や温度によって収縮を起す為、ひび割れや亀裂を起す事が多く、特に最近よく混合材として使用されるようになった珪藻士は、断熱、調湿、消臭、等に大変優れているが、粘土のように自分で固まる性質がないため、ひび割れや亀裂が起きやすい物であった、この様なひび割れや亀裂を防止するために、グラスウール、合成樹脂、接着剤等の化学物質を使用した物が多く、やはり、化学物質による問題が発生しているものである。
本発明は、この様な問題を解決するために成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ジュラク壁の主原料である、木粉、珪藻土、合成樹脂と、漆喰壁の主原料である、消石灰、貝灰、板布糊、砂と、土壁の主原料である、土、砂、もみすさと、石膏ボードの主原料である、石膏、ゼオライト、珪藻土等の基本材料を混練して形成される内装用壁材及び壁材に於いて、基本材料を混合した組成物に、乾燥したイグサを繊維状に破砕した、イグサ繊維を添加混合しペースト状に練ったものである。
【0011】
この場合混合されるイグサとは、イグサは冬苗を水田に植えて、夏に刈取る多年生の草本類である、イグサの中には、「灯芯(とうしん)という、和蝋燭(わろうそく)の灯芯材料ですが」ふんわりした、繊維状の細胞組織が詰まっている、またイグサの表面は丈夫な筋入りの表皮に覆われていて、摩擦にも耐えうる構造になっています、このイグサを刈取り乾燥の後に、破砕機で0.3mm〜5mmの繊維状に破砕した物であり、灯心の部分が破砕された柔らかい綿状の繊維と、表皮の部分が破砕された硬く丈夫な繊維とからなっている物である。
【0012】
又、近年の研究でイグサには、特出すべき性質が有る事が発表された、それはイグサには強い抗菌効果があり、O−157、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌などの代表的な食中毒菌に効果があり、防カビ性なども期待されている、更に、イグサには高い吸着能力が確認されており、室内の様々な有害物質の除去に期待されている物である。
【0013】
ジュラク壁、漆喰壁、土壁は、主に壁面の仕上げとして施工されるもので、建築現場で基本材料を混合し、水を加えペースト状に練ったものを施工者がコテで塗り付けて行くものであり、コテ滑り等の作業性を考えた場合、基本材料を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維を5g〜100gを添加混合するのが好ましい。
【0014】
又、石膏ボードは、主に壁の下地や天井に使用されるもので、工場において基本材料を混合し、ミキサーで混練してボード状に成形した後に、養生し乾燥させたものであり、下地材としての強度を考えた場合、基本材料を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維10g〜100gを添加混合するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記した構成を成すもので、イグサ繊維の持つ特性を建材や内装用壁材等に使用することで、以下に記載されるような効果を奏する。
主に壁面の仕上げとして施工される、ジュラク壁、漆喰壁、土壁の基本材料にイグサ繊維を混合することで、室内の化学物質を積極的に除去する事が出来る。
【0016】
住宅において、最も湿度が高く成り易い所としては、床下、壁の内部などで、壁の下地材として使用される、石膏ボードの基本材料にイグサ繊維を混合することで、壁内の調湿効果を高めると共に、イグサの抗菌効果により、カビやダニの発生も抑える事が出来る。
【0017】
主に壁面の仕上げとして施工されるジュラク壁や漆喰壁、土壁等は、湿度や温度によって収縮を起す為、ひび割れや亀裂を起す事が多く、柔軟性と強度が求められた、イグサの繊維は、畳表で知られている様に、長期間の圧縮にも耐えられる柔軟な灯心の部分が破砕された綿状の繊維と、長期間の摩擦にも耐えられる表皮の部分が破砕された硬く丈夫な繊維とからなっている、壁材として使用した場合でも、圧縮にも引張にも強い耐久性の有る壁を得る事が出来る物である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
まず刈取ったイグサは、多くの水分を保持している為、乾燥機にかけ乾燥させたイグサを0.3mm〜5mmの繊維状に破砕した、イグサ繊維を設ける。
【0019】
次に、ジュラク壁、漆喰壁、土壁の主原料である、木粉、樹脂、消石灰、貝灰、砂、珪藻土、土、もみすさ等を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維5g〜100gを添加混合し、板布糊と水を加えペースト状に練ったものを設ける。
【0020】
ペースト状に練ったものを施工者がコテで、下地となる壁に塗り付けて行くものであり、コテ滑り等の作業性が重要となるその為、基本材料を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維を5g〜100gを添加混合するのが好ましい。
【0021】
次に、石膏ボードに使用する場合、工場において基本材料である石膏、ゼオライト、珪藻土等を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維10g〜100gを添加混合し、ミキサーで混練してボード状に成形した後に、養生し乾燥させるものである。
【0022】
下地材としての強度を考えた場合、結合力を強固にする継ぎ材として、基本材料を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維10g〜100gを添加混合するのが好ましい。
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0023】
最初に、原料と成るイグサは、専用に栽培して刈取った物か、畳用のイグサを取った残り物でもよい、イグサは多くの水分を保持している為、乾燥機にかけ水分10〜12%に乾燥させる、この乾燥イグサをまず2cm位に裁断し、破砕機で0.3mm〜5mmの繊維状に破砕し、イグサ繊維を設ける。
【0024】
漆喰壁は、施工現場で主原料である、消石灰、貝灰、砂等を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維5g〜100gを添加混合し、板布糊5gと標準仕様の水を加えペースト状に練ったものを一晩寝かせるものである。
【0025】
ジュラク壁は、施工現場で主原料である、木粉、珪藻土、樹脂等を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維5g〜100gを添加混合し、0.4リットル水を加えペースト状に練ったものである、この場合イグサ繊維の量によって、樹脂の量を調節するものである。
【0026】
土壁は、施工現場で主原料である、土、砂、もみすさ等を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維5g〜100gを添加混合し、標準仕様の水を加えペースト状に練ったものである。
【0027】
石膏ボードは、工場において主原料である、石膏、ゼオライト、珪藻土等を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維10g〜100gを添加混合し、ミキサーで混練してボード状に成形した後に、養生し乾燥させるものである。
【0028】
又、最近よく混合材として使用されるようになった珪藻土を、主原料とした珪藻土壁は、施工現場で主原料である、珪藻土、樹脂等を混合した組成物1000gに対して、イグサ繊維5g〜100gを添加混合し、標準仕様の水を加えペースト状に練ったものである。
【0029】
更に、本発明のイグサ繊維は、上記した実施例以外にも、壁の表面仕上げ用塗料等にも、混合して使用する事が出来る物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジュラク壁、土壁、漆喰壁及び石膏ボード等の、基本材料を混練して形成される壁材に於いて、基本材料を混合した組成物に、乾燥したイグサを繊維状に破砕した、イグサ繊維を添加混合したことを特徴とする壁材組成物。
【請求項2】
前記ジュラク壁、土壁、漆喰壁の、基本材料を混合した組成物1000gに対して、乾燥したイグサを0.3mm〜5mmの繊維状に破砕した、イグサ繊維5g〜100gを添加混合したことを特徴とする請求項1記載の壁材組成物。
【請求項3】
前記石膏ボードの基本材料を混合した組成物1000gに対して、乾燥したイグサを0.3mm〜5mmの繊維状に破砕した、イグサ繊維10g〜100gを添加混合したことを特徴とする請求項1記載の壁材組成物。

【公開番号】特開2006−46035(P2006−46035A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247589(P2004−247589)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(300071591)株式会社水の子 (1)
【出願人】(504325106)