説明

壁構造及びその施工方法

【課題】タイルによる壁面補修を効率よく行うことが可能でありながら、下地となっている壁面の崩れを防止することができる壁構造等の提供。
【解決手段】壁構造51は、下地壁面53と、その下地壁面の表側を覆うように設けられたタイルパネル55とを備える。タイルパネル55は、複数のタイル59と、それら複数のタイル59をまとめて表面に支持する基材61とを含む。さらに、基材61の裏面には、樹脂層63が設けられており、樹脂層63と下地壁面53との間には、モルタルが充填されて形成されたモルタル層57が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物や構築物のコンクリート壁は、鉄筋の錆やコンクリート壁にしみ込んだ水分の凍結融解作用等により劣化していく。特に、トンネル壁面の場合、融雪剤として塩化カルシウム等を散布することがあるので、鉄筋の錆の進行を助長し、劣化が進行しやすい対象といえる。劣化が進行すると鉄筋部分からコンクリートが剥がれ落ちてしまう。
【0003】
劣化したコンクリート壁の補修方法としては、まず、壁面の欠損部にモルタルを塗布し硬化させて補修した後、モルタル又は接着材を用いてタイルを壁面に取り付けて仕上げる方法がある。しかしながら、かかる方法では、モルタルで補修し更にタイルを一枚一枚壁面に取り付けていくため、施工に多大な時間を要するという問題があった。
【0004】
そこで、タイルによる壁面補修を効率よく行う技術として、特許文献1に開示されたものもある。この方法では、まず、複数のタイルを目地を設けた状態で基材に貼り付けたタイルパネルを用意し、それらタイルパネルを、不陸調整材を介して、劣化したトンネル等の壁面に取り付けることで壁面の補修を行っている。
【0005】
この方法では、壁面補修を効率よく行うことができるものの、コンクリート壁面とタイルパネルとが直接当接しているわけではないので、タイルパネルの内側において、コンクリート壁面が崩れ、更なる劣化が進行することを防ぎ切れない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−159555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、タイルによる壁面補修を効率よく行うことが可能でありながら、下地となっている壁面の崩れを防止することができる、壁構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明の壁構造は、下地壁面と、その下地壁面の表側を覆うように設けられたタイルパネルとを備えた壁構造であって、前記タイルパネルは、複数のタイルと、該複数のタイルをまとめて表面に支持する基材とを含み、前記基材の裏面には、樹脂層が設けられており、前記樹脂層と前記下地壁面との間には、モルタルが充填されて形成されたモルタル層が設けられている。
さらに、同目的を達成するための本発明の壁構造の施工方法は、下地壁面の表側にタイルパネルが設けられた壁構造の施工方法であって、複数のタイルを、基材の表裏面のうちの一方の面に接着するとともに、前記表裏面の他方の面には樹脂層を接着して、タイルパネルを得る第1工程と、前記タイルパネルを、前記下地壁面との間で所定の間隔を設けて前記樹脂層が前記下地壁面と対向するように配置し、取付具を用いて前記タイルパネルを前記下地壁面に支持させることで、該下地壁面と前記樹脂層との間に空間部を形成しておく第2工程と、その後、前記空間部にモルタルを打設し、硬化させる第3工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の壁構造及びその施工方法によれば、タイルによる壁面補修を効率よく行うことが可能でありながら、下地となっている壁面の崩れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態を適用するトンネルを例示した模式図である。
【図2】図1のトンネル内の監視員通路の側壁部分を示す図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う壁構造の断面図である。
【図4】図3の矢印IVからみた壁構造を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る施工方法を側方から模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る壁構造等の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。なお、添付図面は、図の明瞭性を優先したものとなっており、各図面における各部の相対的な寸法関係は必ずしも実際のものとは一致してなく、特に、板状または層状の部分の厚みは、図中で容易に視認できるように厚く図示している。また、以下に示す実施の形態は、建築物等のコンクリート壁として、トンネル内の監視員通路の側壁部分を対象に適用した例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0012】
図1は、本実施の形態を適用するトンネルを例示した模式図である。図2は、図1のトンネル内の監視員通路の側壁部分を示したものであり、特に(a)は、図1と同方向から見た側壁部分を示し、(b)は、(a)の矢印IIからみた側壁部分を示す。
【0013】
監視員通路1は、図1に示されるように、トンネル3内の車道5の一端側においてトンネル3の上下方向に沿って立設された断面視矩形状の側壁部1aと、側壁部1aの上端からトンネル3の一端側のトンネル覆工7まで横方向に延設された通路部1bとを備えている。
【0014】
側壁部1aの上端には、図2(b)に示されているように、所定間隔で離隔した複数の支柱(鋼管)9aが埋設されている。各支柱9aは、コンクリートで形成された監視員通路1の側壁部1aの上端に設けた穴部に、その下端側が挿入され、その穴部にモルタル等が充填されることにより、監視員通路1の側壁部1aの上端から上方へと立設されている。また、隣接する支柱9aの上端同士は、手すり棒(鋼管)9bで架設されている。かかる支柱9a及び手すり棒9bによって、手すり9が形成されている。
【0015】
次に、本実施の形態に係る壁構造について、さらに図3及び図4をも参照しながら説明する。図3は、図2のIII−III線に沿う壁構造の断面図であり、図4は、図3の矢印IVからみた壁構造を示す図である。本実施の形態の壁構造は、トンネル3の監視員通路1における上述の側壁部1aに適用される。
【0016】
図2から図4に示されるように、壁構造51は、側壁部1aである下地壁面53と、タイルパネル55と、モルタル層57とを備えている。下地壁面53は、コンクリート壁であるが、その表層部は、コンクリートそのものが露出している態様であってもよいし、コンクリート壁面に取り付けられていたタイルの一部又は全部が脱落してコンクリートの少なくとも一部が露出している態様であってもよい。
【0017】
タイルパネル55は、下地壁面53の表側を覆うように設けられている。タイルパネル55は、複数のタイル59と、それら複数のタイル59をまとめて表面に支持する基材61とを含んでいる。また、タイル59が設けられた表面と反対側となる基材61の裏面には、樹脂層63が設けられている。そして、樹脂層63と下地壁面53との間に、前述したモルタル層57が設けられている。
【0018】
また、タイルパネル55は、取付具65により下地壁面53に対して支持されている。一例として、本実施の形態では、取付具65は、固定ロッド67と、裏面当接板69と、座金71と、押さえ体73とを含んで構成されている。固定ロッド67は、その一端部が、下地壁面53に打設されたコンクリートアンカー75に固定されており、その他端部が、タイルパネル55の表側に突出するように配置される。固定ロッド67としては、ボルト、または、少なくとも他端側にねじ溝が形成されている軸部材が用いられる。裏面当接板69は、固定ロッド67に螺合されており、樹脂層63の裏面(下地壁面53側の面)に当接されている。座金71は、タイルパネル55の表側にあてがわれ、タイルパネル55の表側に突出した固定ロッド67の端部に、ナット等の押さえ体73がねじ込まれる。このようにして、タイルパネル55が下地壁面53に対して固定される。
【0019】
続いて、タイルパネル55の詳細について説明する。複数のタイル59は、基材61上で、隣り合うタイル59の間に目地を確保するようにして、縦横それぞれに複数列をなすように整然と並べられている。また、タイルパネル55は、複数の基材露出部77を有している。基材露出部77はそれぞれ、隣接して並ぶタイルの隣接しあうタイルコーナー部に切欠部を設けておき、それら切欠部を対面させることで得られている。より具体的には、目地の交差部分、すなわち、それぞれが異なるタイル59の角である四つの対面しあうタイルコーナー部に切欠部79を形成しておき、それら切欠部79が対面しあうように離隔することで、目地部分が拡大されたような基材露出部77が得られる。
【0020】
なお、本実施の形態では、各タイル59は、長方形または正方形に形成されており、切欠部79は、タイル59の対角線とほぼ平行に延びるように形成されているので、基材露出部77は、ひし形または正方形に形成されている。
【0021】
前述した座金71は、かかる基材露出部77において露出した基材61の部分にあてがわれており、押さえ体73は、基材露出部77に収容されている。なお、複数の基材露出部77を、どのようなパターン(数、位置、間隔)で設けるかといった点や、実際に取付具65を、どの基材露出部77に対して施工するかいった点は、特に限定はなく、適宜、設定・改変することができるだろう。
【0022】
続いて、基材61、タイル59、樹脂層63、モルタル層57等の具体的構成について説明する。まず、基材61は、耐火性等の面から繊維強化セメント板やけい酸カルシム板等の窯業系無機質板や金属板が用いられている。本実施の形態においては、後述するモルタルの打設により、金属板は変形しやすいことから、窯業系無機質板の方が適している。
【0023】
基材61として使用する窯業系無機質板の見掛け密度は、1.6〜2.3g/cmが好適であり、更に好適には1.7〜1.9g/cmである。見掛け密度が2.3g/cmを上回ると、タイルパネルが重くなり、施工がしにくくなるという問題がある。見掛け密度が1.6g/cmを下回ると、基材の空隙率が高くなり、長期使用により凍害の影響を受けやすくなるという問題がある。また、窯業系無機質板の厚さは、4〜12mmが好適であり、更に好適には4〜8mmである。厚さが12mmを上回ると、タイルパネルが重くなり、施工がしにくくなるという問題がある。厚さが4mmを下回ると、後述するモルタルの打設により、タイルパネルが変形しやすくなるという問題がある。基材61の最も好適な一例としては、厚さ8mmの繊維強化セメント板を挙げることができる。
【0024】
一例であるが、タイル59は、その幅が50mmから120mm、長さが90mmから220mm、厚さが6〜10mmのものを使用することができる。上下方向および左右方向に隣接する各タイル間に生じる目地幅は、2〜4mmが好適である。
【0025】
タイル59を基材61に接着するのに使用する接着剤としては、エポキシ樹脂等の耐水性を有する樹脂系接着剤を使用するのが好適である。接着剤の塗布量は、300〜800g/cmが好適であり、更に好適には350〜500g/cmである。接着剤の塗布量が800g/cmを上回ると、タイルパネルのタイル接着面側からの加熱による耐火性が低下する危険性がある。接着剤の塗布量が300g/cmを下回ると、タイルと基材との接着が不十分となる場合がある。
【0026】
樹脂層63は、FRP(繊維強化プラスチック)板またはPP(ポリプロピレン)板といった発泡樹脂板が好適である。これらFRP板またはPP板によれば、コストをかけずに、モルタルを打設した際のタイルパネルの変形や破損を防止することができるという利点がある。また、樹脂層63を構成する樹脂板の厚さは、0.6mm〜5mmが好適である。厚さが0.6mmを下回ると、モルタルを打設した際のタイルパネルの変形や破損を防止できない場合があるからである。また、厚さが5mmを上回ると、コストが高くなるという問題がある。
【0027】
樹脂層63と基材61との接着には、エポキシ樹脂等の耐水性を有する樹脂系接着剤の使用が好適である。また、接着剤の塗布量は、200〜400g/cmが好適である。接着剤の塗布量が400g/cmを上回ると、接着性能の向上は期待できないにもかかわらずコストが高くなる。接着剤の塗布量が200g/cmを下回ると、樹脂板と基材との接着が不十分となる場合がある。なお、図2の点線円内に平面視の一部分を示したように、樹脂層63と基材61とは、タイルパネルの端部が相じゃくり形状となるように、1〜5cmずらして接着すると好適である。端部を相じゃくり形状としたタイルパネル同士を接続することにより、後述するモルタルの打設に際して、タイルパネル同士の接続部からモルタルが漏れ出すことをより確実に防止することができる。
【0028】
モルタル層57は、タイルパネル55を所定の間隔を設けて下地壁面53に支持させ、タイルパネル55と下地壁面53との間に空間部を形成させておき、その空間部に、モルタルを打設(充填)することで得られる。使用するモルタルは、特に限定されるものではなく、一般の土木工事用のものを用いることができる。打設したモルタルは、自然養生により硬化し、モルタル層57として壁構造51の一部を構成する。
【0029】
次に、本実施の形態に係る壁構造の施工方法について説明する。端的には、本実施の形態は、次の三つの工程を備えている。すなわち、複数のタイル59が基材61の表面に接着され基材61の裏面に樹脂層63が接着されたタイルパネル55を用意する第1工程と、タイルパネル55を、下地壁面53との間で所定の間隔を設けて樹脂層63が下地壁面53と対向するように配置し、取付具65を用いてタイルパネル55を下地壁面53に支持させることで、下地壁面53と樹脂層63との間に空間部を形成しておく第2工程と、その後、その空間部にモルタルを打設し、硬化させる第3工程とである。
【0030】
図5を参照しながら具体的に説明する。図5は、本実施の形態の施工方法を側方から模式的に示す図である。まず、第1工程として、予め、前述した構成を備えたタイルパネル55を用意しておく。次に、第2工程として、まず、図5の(a)に示されるように、タイルパネル55の取付具65を用いる位置(基材露出部77が向き合う位置)に対応する下地壁面53の部分にアンカー75を打設する。続いて、図5の(b)に示されるように、まず、アンカー75に固定ロッド67を固定する。固定ロッド67のタイルパネル取付側にはねじ溝を切っておく。既存の壁面である下地壁面53からタイルパネル55までの間隔が所望の値となるように、固定ロッド67の所定の位置に裏面当接板69を配置する。
【0031】
続いて、予め、取付に使用する基材露出部77に貫通孔をあけておき、その貫通孔に固定ロッド67を貫通させるようにして、タイルパネル55の樹脂層63を裏面当接板69に当接させ、タイルパネル55を下地壁面53から所定の間隔に配置する。一例を示すと、樹脂層63と下地壁面53との間隔は、20mm以上が好適である。間隔が20mmを下回ると、後述するモルタルを打設しにくくなるという問題があるからである。特に、既存のトンネルの劣化したコンクリート壁面の補修に適用する場合は、補修によるトンネル空間の減少を少なくする必要があるので、当該間隔は100mm以下とするのが好適である。また、劣化したコンクリート壁面の表面(コンクリート露出面またはタイル内装面)は、厳密には平坦ではなく凹凸を含んでいることが多いので、その場合、樹脂層63と下地壁面53との間隔は、コンクリート壁面の表面の最も突出した凸部を基準に測るものとする。
【0032】
上記のようにタイルパネル55を所望の位置に配置したならば、タイルパネル55の表面側から、座金71を介して押さえ体73を固定ロッド67の端部にねじ込む。これによって、タイルパネル55を下地壁面53から上記所望の間隔のところに固定することができる。
【0033】
タイルパネル55を下地壁面53から浮かせた固定が完了すると、樹脂層63と下地壁面53との間には、空間部81が生じる(図5の(b)参照)。次に、第3工程として、図5の(c)に示されるように、樹脂層63と下地壁面53との間に形成された空間部81内に、モルタルを打設する。充填されたモルタルは硬化し、樹脂層63と下地壁面53との間にモルタル層57が形成される。このようにして、既存のコンクリート壁面がタイルにより補修された壁構造が完成する。
【0034】
以上に説明した本実施の形態に係る壁構造等によれば、まず、タイルパネルを、劣化等により凹凸のある下地表面に対し、不陸調整材を使用することなく浮かせて配置するので、施工効率を高めることこができる。さらに加えて、施工効率を高めるべくなされたタイルパネルの浮かせた配置により生じた空間には、モルタルが充填されるので、そのような浮かせた配置を採用しても、下地表面が崩れることを防止することができる。さらに加えて、タイルパネルにおいてタイルを接着した面とは反対側の面(基材とモルタル層との間)には、樹脂層が設けられているので、モルタルを打設した際に、取付具の係止部に集中応力が発生してタイルパネルが破損したり、打設したモルタルの重みにより、タイルパネルが変形したりすることを抑制することができ、さらには、モルタルの湿分が基材側に浸透することで基材が劣化しタイルパネルがダメージを受けるといった現象をも防止することができる。このように、本実施の形態に係る壁構造等によれば、タイルによる壁面補修を効率よく行うことができるという利点を得ながら、下地となっている壁面の崩れを防止することができるという利点も得ると共に、さらに、それら両利点の実現を可能とさせているタイルパネルの配置態様及びモルタル層の形成に起因したタイルパネルへのダメージを低減することができる利点も得られている。
【0035】
さらに、本実施の形態によれば、樹脂層は、既存のコンクリート壁面に対面して(補修された壁構造における表面ではなく内部に)配置されており、しかも、その既存のコンクリート壁面と樹脂層との間の空間にはモルタルが充填されているので、タイルパネルは、樹脂層側から加熱を受ける恐れはない。よって、本実施の形態では、上述したような壁面補修の高効率、既存壁面崩落防止、タイルパネルへのダメージ遮断という優れた効果に寄与している樹脂層が、補修された壁構造の耐火性を低下させてしまうという恐れも排除されている。
【0036】
さらに、本実施の形態においては、下地壁面とタイルパネルとの間に空間部を形成する際、タイルパネルの下地壁面に対する位置が裏面当接板によって位置決めされるので、下地壁面とタイルパネルとの間隔つまりは空間部やモルタル層の大きさを正確に得ることができ、ひいては、補修された壁構造の寸法も正確に得ることができる利点がある。しかも、かかる利点は、タイルパネルを裏面当接板に当接させるという簡単な作業だけで得られる。
【0037】
また、タイルパネルのモルタル打設側には樹脂層が設けられ、打設したモルタル層と樹脂層とは接着しにくいので、本壁構造の完成後、さらに、タイルパネルの劣化等、何らかの事由によりタイルパネルを交換したい場合でも、押さえ体等を外せば、樹脂層ごとタイルパネルを簡単に除去することができ、新しいタイルパネルを同様に取り付けて元に戻せば、当該交換作業を極めて簡単に完了させることができる。なお、交換により新たに設けるパネルは、タイルパネルに限らず、また、タイルパネルであっても樹脂層が設けられている構成に限定されるものではない。
【0038】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0039】
例えば、本発明は、裏面当接板を用いることには限定されない。すなわち、施工時には、タイルパネルは、モルタルの打設により下地壁面から離れる向きの力を受けるので、取付具としては、少なくとも、タイルパネルを下地壁面から離そうとする向きの力に抗してタイルパネルを押さえ込む作用の構造を含んでいれば良い。そのような作用の取付具を用いれば、裏面当接板を用いないで済む分、部品点数・コスト・施工作業数の削減、作業時間の短縮等を図ることもできる。
【符号の説明】
【0040】
51 壁構造、53 下地壁面、55 タイルパネル、57 モルタル層、59 タイル、61 基材、63 樹脂層、65 取付具、75 アンカー、77 基材露出部、79 切欠部、81 空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地壁面と、その下地壁面の表側を覆うように設けられたタイルパネルとを備えた壁構造であって、
前記タイルパネルは、複数のタイルと、該複数のタイルをまとめて表面に支持する基材とを含み、
前記基材の裏面には、樹脂層が設けられており、
前記樹脂層と前記下地壁面との間には、モルタルが充填されて形成されたモルタル層が設けられている
壁構造。
【請求項2】
前記基材は、窯業系無機質板であり、
前記樹脂層は、FRP(繊維強化プラスチック)板またはPP(ポリプロピレン)板である請求項1の壁構造。
【請求項3】
前記タイルパネルは、複数の基材露出部を有しており、
前記基材露出部はそれぞれ、隣接して並ぶタイルの隣接しあうタイルコーナー部に切欠部を設けておき、それら切欠部を対面させることで得られており、
前記基材露出部において前記基材および前記樹脂層を貫通する取付具を、前記下地壁面に打設されたアンカーに固定することで、前記タイルパネルは、前記下地壁面に対して支持される
請求項1又は2の壁構造。
【請求項4】
下地壁面の表側にタイルパネルが設けられた壁構造の施工方法であって、
複数のタイルを、基材の表裏面のうちの一方の面に接着するとともに、前記表裏面の他方の面には樹脂層を接着して、タイルパネルを得る第1工程と、
前記タイルパネルを、前記下地壁面との間で所定の間隔を設けて前記樹脂層が前記下地壁面と対向するように配置し、取付具を用いて前記タイルパネルを前記下地壁面に支持させることで、該下地壁面と前記樹脂層との間に空間部を形成しておく第2工程と、
その後、前記空間部にモルタルを打設し、硬化させる第3工程と
を含む壁構造の施工方法。
【請求項5】
前記基材には、窯業系無機質板が用いられ、
前記樹脂層には、FRP(繊維強化プラスチック)板またはPP(ポリプロピレン)板が用いられる
請求項4の壁構造の施工方法。
【請求項6】
前記第1工程において、前記タイルパネルには、隣接して並ぶタイルの隣接しあうタイルコーナー部に切欠部が設けられ、それら切欠部を対面させることで得られた複数の基材露出部が形成されており、
前記第2工程では、前記複数のタイルが接着された側の面から、前記基材露出部における前記基材および前記樹脂層を貫通する取付具を、前記下地壁面に打設されたアンカーに固定することで、前記タイルパネルを前記下地壁面に支持させる
請求項4又は5の壁構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−32620(P2013−32620A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167928(P2011−167928)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】