説明

壁構造

【課題】透湿機能を低下させずに他の機能を付与することができる壁構造を提供する。
【解決手段】建物躯体1の屋外側に透湿防水シート2を設けると共にこの透湿防水シート2の屋外側に間隔を介して機能性シート3を設けることによって、前記建物躯体1から屋外側に向かって、前記透湿防水シート2、第1通気層7、前記機能性シート3、第2通気層8の順に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁等の壁の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、透湿防水シートを用いた壁構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図8に透湿防水シートを用いた壁構造の一例を示す。この壁構造は、柱1aや間柱1bなどで構成される建物躯体1の屋外側に透湿防水シート2が設けられている。透湿防水シート2は湿気を通すが、水は通さないものであり、屋内の調湿と防水とを確保するものである。上記の柱1aと間柱1bの間には断熱材10が充填されており、柱1aと間柱1bと断熱材10の屋外側面を略全面にわたって覆うようにして透湿防水シート2が設けられている。また、柱1aと間柱1bとに対応する位置において、透湿防水シート2の屋外側には胴縁4が設けられている。胴縁4は柱1aや間柱1bと同様に縦方向に長く形成されている。また、各胴縁4には壁材取付具5が設けられており、この壁材取付具5により外壁材等の壁材6が各胴縁4の屋外側に透湿防水シート2と対向するように取り付けられている。そして、透湿防水シート2と壁材6との間において隣り合う胴縁4,4の間の空間は、縦方向に長い通気層7’として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−317528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、最近では、透湿防水シート2として遮熱性能や防音性能などの、透湿性や防水性以外の機能を付与したシート材を用いて上記のような壁構造を形成することが行われており、本来の壁の透湿機能が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、透湿機能や防水機能を低下させずに他の機能を付与することができる壁構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る壁構造は、建物躯体の屋外側に透湿防水シートを設けると共にこの透湿防水シートの屋外側に間隔を介して機能性シートを設けることによって、前記建物躯体から屋外側に向かって、前記透湿防水シート、第1通気層、前記機能性シート、第2通気層の順に形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明にあっては、前記第2通気層の屋外側に壁材を設けることができる。
【0008】
また、本発明にあっては、前記第1通気層及び前記第2通気層が胴縁により間隔を設けて形成されることが好ましい。
【0009】
また、本発明にあっては、前記第1通気層が胴縁により間隔を設けて形成され、前記第2通気層が壁材留め具により間隔を設けて形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明にあっては、前記機能性シートが遮熱シート、防音シート、電波遮蔽シートの少なくとも一つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、透湿機能を低下させずに他の機能を付与することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)は同上の軒部分の一例を示す断面図、(b)は通気見切縁の一例を示す一部の斜視図である。
【図3】同上の他の軒部分の一例を示す断面図である。
【図4】同上の土台部分の一例を示す断面図である。
【図5】同上の他の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図6】同上の壁材留め具の一例を示す斜視図である。
【図7】同上の壁材留め具を用いた一例を示す断面図である。
【図8】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
本発明の壁構造は、図1に示すように、建物躯体1の屋外側に、透湿防水シート2、機能性シート3、胴縁4、壁材6などを設けて形成されている。
【0015】
建物躯体1は柱1aや間柱1bなどで形成することができる。隣り合う柱1aと間柱1bとの間にはロックウールなどの断熱材10を充填することができる。
【0016】
透湿防水シート2は、水は通さないが、湿気は通す性質をもつシートであって、例えば、JIS A 6111に規定されているものなどを使用することができる。
【0017】
機能性シート3としては、透湿防水シート2が有する透湿機能と防水機能以外の機能を有するものを用いることができ、例えば、遮熱シート、防音シート、電波遮蔽シートの少なくとも一つを用いることができる。遮熱シートは、蓄熱された壁から放射される輻射熱などの熱を遮断して屋内に到達しにくくするものである。遮熱シートとしてはアルミ蒸着シートなどを備えた公知のものを使用することができる。防音シートは、屋外から屋内に音が侵入したり屋内から屋外に音が漏れ出たりするのを遮断して少なくするものである。防音シートとしては、高密度の樹脂シートなどを備えた公知のものを使用することができる。電波遮蔽シートは、屋外から屋内に電波が侵入したり屋内から屋外に電波が漏れ出たりするのを遮断して少なくするものである。電波遮蔽シートとしては、アルミニウム箔などを備えた公知のものを使用することができる。
【0018】
胴縁4は縦方向に長く形成されるものであって、角材等を用いることができる。
【0019】
壁材6は窯業系壁材や金属サイディング材などの板状の外壁材を用いることができる。
【0020】
そして、本発明の壁構造を形成するにあたっては、以下のようにして行う。
【0021】
まず、建物躯体1の屋外側に透湿防水シート2を設ける。透湿防水シート2は柱1aと間柱1b及び断熱材10の屋外側面をほぼ全面にわたって覆うようにして設けることができる。透湿防水シート2は柱1aや間柱1bに両面防水テープやビスなどの固定具で固定することができる。
【0022】
次に、透湿防水シート2の屋外側に複数本の胴縁4を横方向に並べて設ける。胴縁4は柱1aや間柱1bの位置に対応して設けることができる。また、胴縁4は、透湿防水シート2を介して柱1aや間柱1bの屋外側面に配置した後、ビス等の固定具を柱1aや間柱1bにまで打入して固定することができる。
【0023】
次に、胴縁4の屋外側に機能性シート3を設ける。機能性シート3は隣り合う胴縁4、4の間にわたるように設けることができ、上記透湿防水シート2とほぼ全面にわたって対向配置されるものである。また、機能性シート3は、胴縁4の屋外側面に配置した後、両面防水テープやビスなどの固定具で胴縁4に固定することができる。尚、機能性シート3は、機能の異なる複数種のものを併用することができる。
【0024】
次に、機能性シート3の屋外側に上記とは別の複数本の胴縁4を横方向に並べて設ける。この胴縁4は上記屋内側の胴縁4の位置に対応して設けることができる。また、屋外側の胴縁4は、機能性シート3を介して屋内側の胴縁4の屋外側面に配置した後、ビス等の固定具を屋内側の胴縁4にまで打入して固定することができる。
【0025】
次に、屋外側の胴縁4のさらに屋外側に複数枚の壁材6を縦横に並べて設ける。壁材6は、屋外側の胴縁4の屋外側面に設けた壁材取付具5などの金具に係止するなどして、胴縁4に取り付けることができる。また、縦方向で隣接する壁材6は実接合等により接続することができる。また、壁材6は、上記機能性シート3とほぼ全面にわたって対向するように縦横に配置される。
【0026】
このようにして形成される壁構造は、透湿防水シート2と機能性シート3の間の空間が第1通気層7として形成され、機能性シート3と壁材6の間の空間が第2通気層8として形成される。従って、この壁構造は、建物躯体1から屋外側に向かって、透湿防水シート2、第1通気層7、機能性シート3、第2通気層8、壁材6の順に並んで形成されている。
【0027】
第1通気層7は隣り合う屋内側の胴縁4、4の間に縦方向に連続するように形成されている。第1通気層7の屋内外方向の寸法は屋内側の胴縁4の屋内外方向の寸法により規定されるものであり、例えば、10〜20mmとすることができる。また、第2通気層8は隣り合う屋外側の胴縁4、4の間に縦方向に連続するように形成されている。第2通気層8の屋内外方向の寸法は屋外側の胴縁4の屋内外方向の寸法により規定されるものであり、例えば、10〜20mmとすることができる。
【0028】
図2(a)に上記壁構造の軒部分の一例を示す。この場合、第1通気層7及び第2通気層8の上端開口は軒天井11の端部下面が被せられて閉塞されている。また、機能性樹脂シート3の上端と軒天井11の端部下面との間には間隙31が形成されている。さらに、壁材6の上端と軒天井11の下面との間には間隙32が設けられている。また、軒天井11と壁材6の間には図2(b)のような通気見切縁30が設けられている。通気見切縁30は横方向(屋内外方向と直交する方向)に長尺に形成されるものであって、差込片33と、差込片33に対向配置される覆い片34と、差込片33及び覆い片34の上端間に設けられる連結片35とで断面略コ字状に形成されている。また、差込片33の上部には厚方向に貫通する貫通孔36が設けられている。貫通孔36は通気見切縁30の長手方向に並ぶように複数個設けられている。
【0029】
そして、通気見切縁30は差込片33の下部を屋外側の胴縁4と壁材6との間に差し込むようにして、壁材6の上側に取り付けられる。また、連結片35及び貫通孔36は上記の間隙32に位置する。さらに、覆い片34と壁材6の上端の屋外側面との間には吸排気口37となる間隙が設けられている。従って、第1通気層7は間隙31を通じて第2通気層8と連通し、また、第1通気層7及び第2通気層8は貫通孔36と間隙32と吸排気口37とを通じて壁材6よりも屋外側の空間と連通する。よって、図2(a)の矢印で示すように、第1通気層7及び第2通気層8から壁材6よりも屋外側の空間に排気することができると共に、壁材6よりも屋外側の空間から第1通気層7及び第2通気層8に吸気することができるものである。また、覆い片34で間隙32を壁材6の屋外側から見えにくくすることができ、壁の外観の低下を緩和することができるものである。
【0030】
図3に上記壁構造の軒部分の他例を示す。この場合、軒天井11の上側に通気路12が形成されている。また、第1通気層7の上端開口は軒天井11の上方において吸排気口14として開口している。また、第2通気層8の上端開口も軒天井11の上方において吸排気口13として開口している。さらに、軒天井11には、厚み方向(上下方向)に貫通する複数個の通気孔15が形成されている。従って、第1通気層7は通気路12及び吸排気口14並びに通気孔15を通じて通気することができるものである。また、第2通気層8は通気路12及び吸排気口13並びに通気孔15を通じて通気することができるものである。尚、壁材6の上端と軒天井11の間の隙間はシーリング材16で閉塞することができる。
【0031】
図4に上記壁構造の土台部分の一例を示す。17は基礎であって、基礎17の上面に土台18を設けると共に土台18の上面に柱1aや間柱1bを設けることによって、土台18と柱1aや間柱1bからなる建物躯体1を基礎17の上に形成することができる。そして、第1通気層7及び第2通気層8の下端開口は、土台18の屋外側において、吸排気口19、20として形成されている。従って、第1通気層7は吸排気口19を通じて通気することができ、第2通気層8は吸排気口20を通じて通気することができるものである。また、吸排気口19,20の下方には土台水切り21が設けられている。土台水切り21は土台18に取り付けることができる。この場合、土台18の上端部を土台18と透湿防水シート2との間に差し込んで土台18の屋外側面に固定することができる。
【0032】
そして、上記の壁構造では、透湿防水シート2と他の機能を有する機能性シート3とをそれぞれ別々に設けるので、透湿防水シート2に複数の機能を付与したシートを用いる場合に比べて、透湿防水シート2の透湿性能や防水性能が損なわれにくくなり、また、機能性シート3の各性能も十分に発揮させることができる。従って、透湿機能や防水機能を低下させずに他の機能を付与することができるものである。また、必要に応じて、機能性シート3の種類を選択して使用したり、複数種の機能性シート3を用いることができ、容易に機能を設計したり変更したりすることができる。また、透湿防水シート2と機能性シート3との間に第1通気層7を形成することによって、第1通気層7で通気させることで屋外からの防水性と屋内からの透湿性を確保することができ、透湿機能や防水機能を十分に発揮させることができるものである。ここで、透湿防水シート2は機能性シート3よりも屋内側に配置するものであり、これにより、屋内からの湿気が機能性シート3で遮られることなく、透湿防水シート2を通じて第1通気層7に排出しやすくなるものである。さらに、機能性シート3と壁材6との間に第2通気層8を形成することによって、第2通気層8で通気させることで壁材6の裏面(屋内側面)の結露を低減することができるものである。また、壁材6の裏面に入り込んだ水は第1通気層7や第2通気層8を通じて吸排気口19,20、37や通気孔15から屋外に排出することができ、透湿機能や防水機能を十分に発揮させることができるものである。さらに、夏場においては、熱せられた壁材6の裏面輻射熱による温度上昇を第2通気層8の通気によって緩和することができるものである。
【0033】
図5に他の実施の形態を示す。この壁構造では、屋外側の胴縁4と壁材取付具5の代わりに、壁材留め具9を用いるものであり、その他の構成は図1〜4に示す実施の形態と同様である。壁材留め具9は、図6に示すように、基板29の両側端部に基板29の表面側に突出する当接部28が設けられている。また、両側の当接部28,28の間において、基板29の表面には支持片22が突設されている。支持片22の先端には下方に突出する上部係止片23が形成されていると共に、上部係止片23の両側において支持片22の先端には上方に突出する下部係止片24、24が形成されている。
【0034】
そして、上記の壁材留め具9を用いて壁構造を形成するにあたっては以下のようにして行うことができる。すなわち、上記と同様にして、建物躯体1に透湿防水シート2と屋内側の胴縁4と機能性シート3とを取り付けた後、機能性シート3の屋外側に複数個の壁材留め具9を設ける。この場合、壁材留め具9を屋内側の胴縁4の位置に対応して設けることができる。また、壁材留め具9は、機能性シート3を介して屋内側の胴縁4の屋外側面に基板29を配置した後、ビス等の固定具25を屋内側の胴縁4にまで打入して基板29を固定することによって、屋内側の胴縁4に取り付けることができる。
【0035】
次に、壁材留め具9のさらに屋外側に複数枚の壁材6を縦横に並べて設ける。壁材6は、図7に示すように、その上端を壁材留め具9の上部係止片23に係止し、下端を壁材留め具9の下部係止片24に係止することによって、壁材留め具9に保持することができる。この場合、壁材留め具9の上部係止片23は、壁材6の上端に突設した実受け部6aの屋外側面に当接させて実受け部6aに係止する。また、壁材留め具9の下部係止片24は、壁材6の下端に突設した実突部6bの屋内側に設けた凹溝部6cに差し込んで凹溝部6cに係止する。また、壁材6の屋外側面の上部及び下部は、壁材留め具9の当接部28の屋外側面に当接される。また、縦方向で隣接する壁材6は、壁材留め具9の位置において、上側の壁材6の実突部6bを下側の壁材6の実受け部6aの屋外側に重ねることによって、実接合により接続することができる。また、壁材6は、上記機能性シート3とほぼ全面にわたって対向するように縦横に配置される。
【0036】
このようにして形成される壁構造は、上記と同様に、透湿防水シート2と機能性シート3の間の空間が第1通気層7として形成され、機能性シート3と壁材6の間の空間が第2通気層8として形成される。従って、この壁構造は、建物躯体1から屋外側に向かって、透湿防水シート2、第1通気層7、機能性シート3、第2通気層8、壁材6の順に並んで形成されている。そして、第2通気層8の屋内外方向の寸法は、壁材留め具9の厚み寸法(当接部21の突出寸法)で規定されるものである。
【0037】
図5、7に示す壁構造では、第2通気層8を形成するにあたって、図1〜4のものに比べて、部品点数や施工の省力化を図ることができ、コストダウンを図ることができるものである。また、図1〜4のものでは、第2通気層8が屋外側の胴縁4により横方向で区切られて連通しないが、図5、7に示す壁構造では、上下に隣り合う壁材留め具9、9が所定の間隔をおいて取り付けられるために、第2通気層8の全体にわたって、空気が流通しやすくなり、第2通気層8の通気性を向上させることができるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 建物躯体
2 透湿防水シート
3 機能性シート
4 胴縁
6 壁材
7 第1通気層
8 第2通気層
9 壁材留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体の屋外側に透湿防水シートを設けると共にこの透湿防水シートの屋外側に間隔を介して機能性シートを設けることによって、前記建物躯体から屋外側に向かって、前記透湿防水シート、第1通気層、前記機能性シート、第2通気層の順に形成して成ることを特徴とする壁構造。
【請求項2】
前記第2通気層の屋外側に壁材を設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記第1通気層及び前記第2通気層が胴縁により間隔を設けて形成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁構造。
【請求項4】
前記第1通気層が胴縁により間隔を設けて形成され、前記第2通気層が壁材留め具により間隔を設けて形成されて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁構造。
【請求項5】
前記機能性シートが遮熱シート、防音シート、電波遮蔽シートの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の壁構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92023(P2013−92023A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236209(P2011−236209)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】