説明

壁紙用接着剤組成物、内装用仕上げ材および壁構造

【課題】ガス透過性に優れた皮膜(接着剤層)を形成するための壁紙用接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】(a)固形分として5〜20質量%の澱粉と、(b)固形分として1〜10質量%の樹脂エマルションと、(c)(c−1)10質量%以下の無機多孔質材料および(c−2)0.1〜10質量%の精油成分から選択される少なくとも1種の成分とを含んでなる(該質量%は、組成物全体の質量を基準とする)、壁紙用接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス透過性に優れた皮膜(接着剤層)を形成するための壁紙用接着剤組成物、該接着剤組成物を塗布してなる内装用仕上げ材および壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築材料に用いられた接着剤等から室内へのホルムアルデヒドの拡散が問題視されており、建築材料自体にホルムアルデヒドを捕捉可能な性能を持たせたものが採用されるに至っている。石膏ボードに関しても、室内ホルムアルデヒドを低減させる目的で、ホルムアルデヒド捕捉材を添加したものが開発されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、石膏ボード上に壁紙用接着剤および壁紙が施工される場合、これらの層(特に接着剤層)のガス透過性が乏しいため、石膏ボードによるホルムアルデヒドの捕捉を阻害し、効果が十分に発揮できないという問題があった。
【0004】
一方、調湿性に優れた壁紙用接着剤として、合成樹脂エマルションを主成分とするコーティング剤が開発されている(特許文献2)。しかしながら、壁紙用接着剤としては、安全性や接着性が高く、且つ、安価であることから、澱粉系のものが主に使用されているため、実際の製品にはなり難い。
【0005】
また、従来の澱粉糊を主成分とする壁紙用接着剤(特許文献3等)は、ガス透過性に乏しいという問題があった。
【特許文献1】特開2008−127823号公報
【特許文献2】特開2008−138167号公報
【特許文献3】特開平8−291276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ガス透過性に優れた皮膜(接着剤層)を形成するための壁紙用接着剤組成物を提供することにある。
本発明の別の課題は、ガス透過性に優れた内装用仕上げ材を提供することにある。
さらに、本発明の他の課題は、ガス捕捉性および/または分解性に優れた壁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を進めたところ、(a)澱粉糊と、(b)樹脂エマルションと、(c)(c−1)無機多孔質材料および(c−2)精油成分から選択される少なくとも1種の成分とを所定量で含んでなる壁紙用接着剤組成物により、ガス透過性に優れた皮膜を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明には以下の好適な実施態様が含まれる。
〔1〕(a)固形分として5〜20質量%の澱粉糊と、
(b)固形分として1〜10質量%の樹脂エマルション、
(c)(c−1)10質量%以下の無機多孔質材料および(c−2)0.1〜10質量%の精油成分から選択される少なくとも1種の成分と
を含んでなる(該質量%は、組成物全体の質量を基準とする)
壁紙用接着剤組成物。
〔2〕(A)ガス透過性壁紙と、
(B)前記〔1〕に記載の接着剤組成物から形成される接着剤層と
を含んでなる、内装用仕上げ材。
〔3〕(A)ガス透過性壁紙と、
(B)前記〔1〕に記載の接着剤組成物から形成される接着剤層と、
(C)ガス捕捉性および/または分解性を有する建材と
を含んでなり、
該ガス透過性壁紙(A)と該建材(C)が、該接着剤層(B)を介して接着されている、壁構造。
〔4〕前記建材(C)が石膏系建材である前記〔3〕に記載の壁構造。
【発明の効果】
【0009】
本発明の壁紙用接着剤組成物は、ガス透過性に優れている。したがって、ガス透過性壁紙と組み合わせることによって、ガス透過性に優れた内装用仕上げ材を提供することができる。さらに、該内装用仕上げ材と、ガス捕捉性および/または分解性に優れた建材と組み合わせることによって、ガス捕捉性および/または分解性に優れた壁構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔接着剤組成物〕
以下、本発明の接着剤組成物を説明する。
本発明の接着剤組成物は、
(a)固形分として5〜20質量%の澱粉糊と、
(b)固形分として1〜10質量%の樹脂エマルションと、
(c)(c−1)10質量%以下の無機多孔質材料および(c−2)0.1〜10質量%の精油成分から選択される少なくとも1種の成分と
を含んでなる(該質量%は、組成物全体の質量を基準とする)。
【0011】
本発明の接着剤組成物の主接着成分である澱粉糊(a)は、既知の方法、例えば、澱粉を水に懸濁し、撹拌しながら加熱する方法(煮糊)、あるいは熱を加える代わりにアルカリを加える方法(冷糊法)により、澱粉を糊化したものである。原料としての澱粉は、糊化可能であれば如何なるものでもよく、例えば、米澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ、甘藷澱粉等の天然澱粉、または、それらを化学的、物理的に処理した加工澱粉(例えば、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酸処理澱粉、酸化澱粉、加水分解澱粉等)等が挙げられる。これらの澱粉は、単独であるいは2種以上の混合物として使用することができる。
これらの澱粉のなかでも、糊化特性の面から、好ましくは、タピオカスターチ等のイモ類の澱粉、コーンスターチ等の穀類の澱粉等が挙げられる。
【0012】
上記澱粉糊(a)を構成する澱粉における平均分子量は、好ましくは1万以上である。平均分子量が1万未満である場合、接着性能が低くなる虞がある。
尚、本明細書でいう平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより測定を行ない決定される値である。
【0013】
本発明の接着剤組成物において、澱粉糊(a)は、固形分として、組成物全体の質量を基準に5〜20質量%、好ましくは10〜15質量%の量で含有される。組成物中の澱粉糊(a)(固形分)の含有量が5質量%未満である場合、接着性能が低くなるという問題が生じる。一方、組成物中の澱粉糊(a)の含有量(固形分)が20質量%を超える場合、耐水接着強さが低くなるという問題が生じる。
【0014】
本発明の接着剤組成物は、樹脂エマルション(b)を含有し、これにより、本発明の接着剤組成物は、耐水性および柔軟性に優れた皮膜を形成することができる。
このような樹脂エマルション(b)を構成する樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独であるいは2種以上の混合物として使用することができる。
なかでも、柔軟性を付与できることから、好ましくはエチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0015】
本発明の接着剤組成物において、樹脂エマルション(b)は、固形分として、組成物全体の質量を基準に1〜10質量%、好ましくは2〜6質量%の量で含有される。組成物中の樹脂エマルション(b)(固形分)の含有量が1質量%未満である場合、皮膜の柔軟性に欠け、脆くなり易いという問題が生じる。一方、組成物中の樹脂エマルション(b)(固形分)の含有量が10質量%を超える場合、接着強度が高くなり、貼り直しができない等の問題が生じる。
【0016】
本発明の接着剤組成物は、無機多孔質材料(c−1)および精油成分(c−2)から選択される少なくとも1種の成分(c)を含有する。かかる成分(c)を含有することで、本発明の接着剤組成物は、ガス透過性に優れた皮膜を形成することができる。
尚、本明細書でいう「ガス」とは、水、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、イソ吉草酸などの悪臭物質、二酸化硫黄、二酸化炭素、窒素酸化物等の気体を意味する。
【0017】
上記無機多孔質材料(c−1)としては、例えば、粉粒炭、シリカゲル、アルミナゲル、ゼオライト、スメクタイト、珪藻土、アロフェン、活性白土、珪質頁岩、珪質泥岩、セピオライト、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等が上げられる。これらの無機多孔質材料は、単独であるいは2種以上の混合物として使用することができる。
なかでも、比表面積が大きいことから、好ましくは、珪藻土、珪質頁岩、珪質泥岩等が挙げられる。
【0018】
上記無機多孔質材料(c−1)における多孔の平均細孔半径は、好ましくは0.1〜10nmであり、より好ましくは1〜5nmである。平均細孔半径が0.1nm未満、もしくは、10nmを超える場合、ガス透過機能が十分に発揮されなくなる虞がある。
尚、本明細書でいう細孔半径は、窒素吸着法により測定を行ない決定される値である。
【0019】
上記無機多孔質材料(c−1)の比表面積は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100〜300m/gである。比表面積が50m/g未満である場合、ガス透過機能が十分に発揮されなくなる虞がある。一方、比表面積の上限は、特に制限されないが、接着剤組成物を塗布する際の作業性などに悪影響を与える点から、600m/g、好ましくは300m/gである。
尚、本明細書でいう比表面積は、窒素吸着法により測定を行ない決定される値である。
【0020】
上記無機多孔質材料(c−1)の平均粒径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは1〜100μmである。平均粒径が1000μmを超える場合、接着剤組成物の表面の平滑性が劣り、外観が悪くなる虞がある。一方、平均粒径の下限は、特に制限されないが、作業性の点から、1μmである。
尚、本明細書でいう平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定される値である。
【0021】
本発明の接着剤組成物において、無機多孔質材料(c−1)は、組成物全体の質量を基準に10質量%以下、好ましくは0.1〜8質量%、特に好ましくは1〜5質量%の量で含有される。組成物中の無機多孔質材料(c−1)の含有量が10質量%を超える場合、接着剤組成物の作業性などの特性に悪影響を与え、外観性も悪くなるという問題が生じる。一方、組成物中の無機多孔質材料(c−1)の含有量の下限は、特に制限されないが、ガス透過機能が十分に発揮され難い点から、0.1質量%、好ましくは1質量%である。
【0022】
本発明の接着剤組成物においては、無機多孔質材料(c−1)の代わりに、あるいは無機多孔質材料(c−1)と共に、精油成分(c−2)を使用することができる。かかる精油成分(c−2)は、本発明の接着剤組成物から形成される皮膜(接着剤層)から放散されるため、精油成分が存在していた箇所に空隙が生じる。ガスは、この空隙を通じて皮膜を通過することができる。
【0023】
上記精油成分(c−2)としては、例えば、テルペン類(例えば、リモネン、カレン、テルピネン、ピネン、ミルセン、オシメン、フェランドレン等)、アルコール類(例えば、シトロネロール、テルピネオール、テルピネン−4−オール、メントール、リナロール等)、アルデヒド類(アニスアルデヒド、ゲラニアール、シトラール、シトロネラール、シンナムアルデヒド等)、ケトン類、エステル類(cis−3−ヘキセニルブチレート等)、フェノール類、オキシド類等が挙げられる。これらの精油成分は、単独であるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0024】
上記精油成分(c−2)の蒸気圧は、好ましくは0.001〜10kPa(25℃)、より好ましくは0.01〜5kPa(25℃)である。蒸気圧が0.001kPa(25℃)未満である場合、精油成分が放散されず、ガス透過機能が十分に発揮されなくなる虞がある。一方、蒸気圧が10kPa(25℃)を超える場合、接着剤組成物が硬化する前に精油成分が放散され、ガス透過機能が充分に発揮され難くなる虞がある。
【0025】
上記植物精油成分(c−2)の水への溶解度は、好ましくは1〜10000ppm(25℃)、より好ましくは10〜5000ppm(25℃)である。水への溶解度が1ppm(25℃)未満である場合、接着剤組成物との相溶性が低く、接着剤組成物の接着性などの特性に悪影響を与える虞がある。一方、水への溶解度が10000ppm(25℃)を超える場合、水に精油成分が溶解するため充分な空隙が生じず、ガス透過機能が充分に発揮され難くなる虞がある。
【0026】
本発明の接着剤組成物において、精油成分(c−2)は、組成物全体の質量を基準に0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の量で含有される。組成物中の精油成分(c−2)の含有量が0.1質量%未満である場合、ガス透過機能が充分に発揮し難いという問題が生じる。一方、組成物中の精油成分(c−2)の含有量が10質量%を超える場合、接着剤組成物の接着性などの特性に悪影響を与えるという問題が生じる。
【0027】
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて、防腐剤を含有することができる。本発明の接着剤組成物に使用される防腐剤としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−tert−ブチル−4−(4−クロロフェニル)−1−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)−2−ブタノール、2−(4’−チアゾリル)ベンズイミダゾール、チアベンダゾール、サイアベンダゾール、TBZ、安息香酸ナトリウム、ヒドロキシ安息香酸ノルマルブチル、パラヒドロキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸ブチル、ブチルパラベン、プロピオン酸ナトリウムカリウム=2,4−ヘキサジエノアート、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。また、本発明の接着剤組成物中の防腐剤の量は、本発明の目的を害しない限り特に限定されず、従来技術に基づいて適宜設定することができる。例えば、防腐剤の含有量を、組成物全体の質量を基準に0.1〜3質量%とすることができる。
【0028】
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて、接着剤分野で従来既知の添加剤または助剤を含有することができる。このような添加剤または助剤としては、例えば、四硼酸ナトリウム十水和物、エチレングリコール等の保水剤が挙げられる。これらの本発明の接着剤組成物中の含有量は、本発明の目的を害しない限り特に限定されず、従来技術に基づいて適宜設定することができる。
【0029】
本発明の接着剤組成物は、既知の方法を用いて上記の各成分を混合することにより、製造することができる。例えば、上述の澱粉糊を調液した後、ついで上述の樹脂エマルションと、無機多孔質および精油成分から選択される少なくとも1種の成分を添加して十分攪拌混合した後、必要に応じて水で希釈して粘度調整を行うことにより製造できる。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、既知の方法(例えば、スプレーコート法、ロールコート法等)で壁紙、石膏系建材等の基材上に塗布することにより、皮膜(接着剤層)を形成することができる。本発明の接着剤組成物により形成される皮膜は、優れたガス透過性を有する。例えば、皮膜は、300g/m・24時間以上、より好ましくは500g/m・24時間以上の透湿度を有する。
尚、本明細書でいう透湿度は、JIS Z0208 防湿包装材の透湿度試験方法に準じた測定方法により決定される値である。
【0031】
また、本発明の接着剤組成物により形成される皮膜は、安価な澱粉糊を主成分とすることでコスト、接着性、安全性にも優れている。
【0032】
〔内装用仕上げ材〕
次に、本発明の内装用仕上げ材を説明する。
本発明の内装用仕上げ材は、(A)ガス透過性壁紙と、(B)上記本発明の接着剤組成物から形成される接着剤層とを含んでなる。
【0033】
本発明の内装用仕上げ材に使用されるガス透過性壁紙(A)は、ガス透過性に優れたものである。ガス透過性壁紙(A)の透湿度は、調湿性、ガス捕捉性に優れた壁構造を得られる点から、好ましくは300g/m・24時間以上、より好ましくは500g/m・24時間以上である。
このようなガス透過性壁紙(A)としては、例えば、麻や綿或いはパピルス等の天然素材或いは紙素材の壁紙、透湿機能を持つ珪藻土等の多孔質を含有した壁紙、針等により孔を開けて透湿性を持たせた壁紙等が挙げられる。これらの壁紙は、単独であるいは2種以上の混成物として使用することができる。
上記の針等により孔を開け透湿性を持たせた壁紙の孔径としては、0.01〜1mmである。孔の径が0.01mm未満では、透湿性を充分に発揮できなくなる虞があり、1mmを超える場合、加工上の問題や、強度上の問題から好ましくない。また、孔の数は、加工性の点と接着性の点から、10000〜1000000個/m、特に好ましくは100000〜500000個/mであることが好適である。
【0034】
上記ガス透過性壁紙(A)の厚さは、特に限定されないが、好ましくは100〜2000μm、より好ましくは500〜1500μmである。厚さが100μm未満、もしくは2000μmを超える場合、取扱性、壁紙としての特性にも悪影響を与える虞がある。
【0035】
上記接着剤層(B)は、上記本発明の接着剤組成物から形成されるものである。本発明の内装用建材における接着剤層(B)の塗布量は、特に限定されないが、接着性、施工性、ガス透過性の点から、固形分量として、好ましくは10〜80g/m、より好ましくは15〜50g/mである。
【0036】
上記接着剤層(B)の透湿度は、調湿性、ガス捕捉性に優れた壁構造を得られる点から、好ましくは300g/m・24時間以上、より好ましくは500g/m・24時間以上である。
【0037】
本発明の内装用仕上げ材は、ガス透過性壁紙(A)の表面に、上記の本発明の接着剤組成物を既知の方法(例えば、スプレーコート法、ロールコート法等)で塗布し、皮膜(接着剤層(B))を形成することにより製造することができる。
【0038】
本発明の内装用仕上げ材は、優れたガス透過性を有する。例えば、本発明の内装用建材は、300g/m・24時間以上、好ましくは500g/m・24時間以上の透湿度を有する。したがって、本発明の内装用建材は、ガス捕捉性および/または分解性建材上に施工された場合、建材のガス捕捉性および/または分解効果を阻害することなく、十分に発揮させることができる。
【0039】
また、本発明の内装用仕上げ材は、安価な澱粉糊を主成分とすることでコスト、施工性、接着性、安全性にも優れている。
【0040】
〔壁構造〕
以下、本発明の壁構造を説明する。
本発明の壁構造は、(A)ガス透過性壁紙と、(B)上記本発明の接着剤組成物から形成される接着剤層と、(C)ガス捕捉性および/または分解性を有する建材とを含んでなり、該ガス透過性壁紙(A)と該建材(C)が、該接着剤層(B)を介して接着されているものである。
【0041】
本発明の壁構造におけるガス透過性壁紙(A)および接着剤層(B)は、上記の本発明の内装用仕上げ材について説明したものと同様のものを使用することができる。また、本発明の壁構造における接着剤層(B)の塗布量も、本発明の内装用仕上げ材と同様である。
【0042】
本発明の壁構造における建材(C)の基材は、ガス捕捉性および/または分解性を有する建材であれば、特に制限されないが、ガス捕捉および/または分解成分を配合した石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板などの無機質ボード、パーティクルボード、MDFなどの木質ボードが挙げられる。
なかでも、防耐火性、寸法安定性、施工性、経済性及び居住性等の優れた性能を合わせ持つことから、石膏を主材とする石膏系建材等が挙げられる。
石膏系建材の主材となる石膏としては、天然石膏、排脱石膏、リン酸石膏等の原料石膏に由来するβ型半水石膏、α型半水石膏、二水石膏、これらの混合物等が挙げられる。また対象となる石膏系建材としては、石膏ボードの他に、石膏板、スラグ石膏板、石膏ブロック、石膏プラスター、石膏系パテ、石膏系目地処理材等が挙げられる。
【0043】
本発明における建材は、前記のように無機質系、木質系材料を主材とするものであるが、更にガス捕捉および/または分解成分を配合して成るものである。ガス捕捉および/または分解成分としては、例えば、キトサン、ヒドラジド類(例えば、アジピン酸ジヒドラジド)、硫酸アンモニウムやアミド硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、フタロシアニン等が挙げられる。これらのガス捕捉および/または分解成分は、単独であるいは2種以上の混合物として使用することができる。
なかでも、ホルムアルデヒド吸着性能が高いことから、好ましくは、キトサン、ヒドラジド類等が挙げられる。
【0044】
ガス捕捉および/または分解成分の配合量は特に制限されないが、全体の、言い替えれば製品である建材ボード中にて、0.1〜5質量%となるよう配合するのが好ましく、0.3〜3質量%となるよう配合するのがより好ましい。ガス捕捉および/または分解成分の配合量が全体の0.1質量%未満になると、ガス(例えば、ホルムアルデヒド等)の捕捉性能が不充分になり易く、逆に5質量%超にしても、その割にはガスの捕捉性能は変わらない。
【0045】
本発明における建材は、更に無機調湿性材料を配合したものとするのが好ましい。更に無機調湿性材料を配合すると、得られる建材が相応に調湿性能に優れたものとなるだけでなく、ガス捕捉および/または分解成分によるガス(例えば、ホルムアルデヒド等)の捕捉性能が一段と向上する。無機調湿性材料の配合量は特に制限されないが、全体の、言い替えれば製品である石膏系建材中にて、5〜40質量%となるよう配合するのが好ましく、20〜35質量%となるよう配合するのがより好ましい。無機調湿性材料の配合量が全体の5質量%未満になると、調湿性能が不充分になり易く、またガス捕捉および/または分解成分によるガスの捕捉性能の向上に対する寄与も不充分になり易い。逆に無機調湿性材料の配合量も全体の40質量%超にしても、その割にはガス捕捉および/または分解成分によるガスの捕捉性能の向上に対する寄与は変わらず、得られる建材ボードの物性面に不都合を生じ易くなる。
【0046】
配合する無機調湿性材料の種類も特に制限されないが、珪質頁岩、珪質泥岩、珪藻土、B型シリカゲル、アロフェン、セピオライトおよび酸性白土から選ばれる一つまたは二つ以上を用いるのが好ましく、珪質頁岩を用いるのがより好ましい。実際の配合に際してこれらは、粉体状、スラリー状、エマルション等の形態で用いる。
【0047】
本発明の壁構造における建材は、ガス捕捉および/または分解成分や無機調湿性材料を配合することを除き、それ自体は公知の各種の方法に準じて製造することができる。ガス捕捉および/または分解成分や無機調湿性材料は、建材を製造する任意の段階にて、好ましくは石膏スラリーを調製する段階にて、粉体状のままで、スラリーの形態で、またはエマルションの形態等で加えて配合することができるが、ガス捕捉および/または分解成分はエマルションの形態で加えるのが好ましい。半水石膏、混和剤および水を用いて石膏スラリーを調製するときに、調製用のミキサーにガス捕捉および/または分解成分と無機調湿性材料を加えて混合し、このときガス捕捉および/または分解成分をエマルションの形態で加えて混合すると、それらを均一分散させた均一組成の建材を製造することができ、かかる石膏系建材はホルムアルデヒドの捕捉性能に優れ、しかもその持続性に優れたものとなる。
【0048】
本発明の壁構造は、上記ガス透過性壁紙(A)の裏面に、上記の本発明の接着剤組成物を既知の方法(例えば、スプレーコート法、ロールコート法等)で塗布することにより皮膜(接着剤層(B))を形成し、次いで、接着剤層(B)を介して上記建材(C)を接着することにより製造することができる。或いは、建材(C)の表面に接着剤組成物を塗布することにより接着剤層(B)を形成し、次いで、接着剤層(B)を介してガス透過性壁紙(A)を接着するようにしてもよい。
【0049】
本発明の壁構造は、優れたガス捕捉性を有する建材ボード上に、優れたガス透過性を有する内装仕上げ材が施工されたものであり、内装仕上げ材によって建材のガス捕捉性および/または分解性は阻害されない。したがって、本発明の壁構造は、従来の内装仕上げ材を施工したものと比べて、優れたガス捕捉性および/または分解性を示す。
【0050】
また、本発明の壁構造は、コスト、安全性、意匠性にも優れている。
【実施例】
【0051】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例として、澱粉糊、EVA樹脂エマルション、珪質頁岩もしくは各種精油成分等を加えて攪拌後、粘度調整のため水で希釈し、接着剤組成物を作製した。
比較例として、上記と同様に、澱粉糊、EVA樹脂エマルション等を加えて攪拌後、粘度調整のため水で希釈し、接着剤組成物を作製した。作製した接着剤組成物は、珪質頁岩も、精油成分も配合していない所謂ブランクに相当するものである。
【0052】
実施例および比較例の接着剤組成物に使用した各成分の詳細を以下に示す。
1)澱粉糊:(製品名)タピオカスターチ、(メーカー名)日本エヌエスシー株式会社、固形分12質量%
2)EVA樹脂エマルジョン:(製品名)スミカフレックス408HQE、(メーカー名)住化ケムテックス、固形分50質量%、粘度100〜2000mPa・s
3)珪質頁岩:稚内層珪藻頁岩、平均細孔半径4nm、比表面積127m/g、平均粒径7nm
4)リモネン:(製品名)(R)−(+)リモネン、(メーカー名)和光純薬工業株式会社、蒸気圧0.2kPa(25℃)、水への溶解度13.8ppm(25℃)
5)cis−3−ヘキセニルブチレート:(製品名)(Z)−3−Hexenyl Butyrate、(メーカー名)和光純薬工業株式会社、蒸気圧0.07kPa(25℃)、水への溶解度300ppm(25℃)
6)リナロール:(製品名)リナロール、(メーカー名)和光純薬工業株式会社、蒸気圧0.02kPa(25℃)、水への溶解度1600ppm(25℃)
7)防腐剤、保水剤等:
[防腐剤]5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、(製品名)KATHON CG、(メーカー名)ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社
[保水剤]四硼酸ナトリウム十水和物
【0053】
各例について、作製した接着剤組成物の配合比(質量%)を表1に示す。
上記接着剤組成物の施工作業性を、糊付け機にて評価を行なった。試験は、作製した接着剤組成物を市販の壁紙に糊付け機にて塗布し、壁紙上に均一に塗布できたかを観察して行った。尚、評価基準において「○」が良好、「△」が大きな支障はない、「×」が不良を表し、「○」、「△」が実用レベルである。
【0054】
【表1】

【0055】
(試験体の作製)
上記接着剤組成物を、それぞれ、透湿性壁紙の裏面に塗布し、次いで、接着層を介してキトサン(0.5%)が配合された石膏ボードを接着することにより実施例7〜16、比較例3および4の試験体を作製した。
尚、透湿性壁紙に関しては、透湿性の異なる以下の2種類を用いた。
壁紙1:(メーカー名)トキワ産業株式会社、透湿度900g/m・24時間
壁紙2:(メーカー名)トキワ産業株式会社、透湿度3000g/m・24時間
また、石膏ボードとしては、特開2008−127823号公報の実施例1〜4に記載の方法と同様にして製造した石膏ボードを使用した。
【0056】
(試験方法)
試験体を以下の試験方法にて評価した。尚、試験は、ホルムアルデヒド濃度低減性能試験:JIS A 1905−1 小形チャンバー法による室内空気汚染濃度低減材の低減性能試験法に準じて行なった。ホルムアルデヒド低減性能を表わす指標として、相当換気回数k(/h)を用いる。
【0057】
【数1】

【0058】
Cin:チャンバー入口濃度(mg/m
Cout:試験片を設置したときのチャンバー出口濃度(mg/m
Cinb:試験片を設置しない状態でのチャンバー入口濃度(mg/m)(空試験)
Coutb:試験片を設置しない状態でのチャンバー出口濃度(mg/m)(空試験)
F:空気流量(0.166L/分=10L/h)
V:チャンバー容積(20L)
【0059】
得られた評価結果を表2に示す。但し、比較例2の接着剤組成物に関しては、施工作業性の評価が「×」であったため、他の試験は実施しなかった。評価基準は、以下の通りである。
◎:相当換気回数が0.7/h以上
○:相当換気回数が0.5/h以上0.7/h未満。
×:相当換気回数が0.5/h未満。
【0060】
【表2】

【0061】
表2の結果からも明らかなように、実施例7〜16は、ブランクに相当する比較例3および4と比べて、相当換気回数が明らかに高く、ホルムアルデヒド低減性能が発揮されている。特に、珪質頁岩を配合した接着剤組成物を用いた実施例8〜11、高い透湿性を有する壁紙を用いた実施例12では、ホルムアルデヒド低減性能の発現が顕著である。ホルムアルデヒド低減性能が優れていることにより、実施例7〜16で用いた接着剤組成物は、優れたガス透過性能を有していることが推定できる。
以上の評価結果より本発明の壁構造は、優れたガス捕捉性能を有することが確認された。また、本発明の壁紙用接着剤組成物は、優れたガス透過性を有することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)固形分として5〜20質量%の澱粉糊と、
(b)固形分として1〜10質量%の樹脂エマルション、
(c)(c−1)10質量%以下の無機多孔質材料および(c−2)0.1〜10質量%の精油成分から選択される少なくとも1種の成分と
を含んでなる(該質量%は、組成物全体の質量を基準とする)
壁紙用接着剤組成物。
【請求項2】
(A)ガス透過性壁紙と、
(B)請求項1に記載の接着剤組成物から形成される接着剤層と
を含んでなる、内装用仕上げ材。
【請求項3】
(A)ガス透過性壁紙と、
(B)請求項1に記載の接着剤組成物から形成される接着剤層と、
(C)ガス捕捉性および/または分解性を有する建材と
を含んでなり、
該ガス透過性壁紙(A)と該建材(C)が、該接着剤層(B)を介して接着されている、壁構造。
【請求項4】
前記建材(C)が石膏系建材である請求項3に記載の壁構造。

【公開番号】特開2010−126570(P2010−126570A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300507(P2008−300507)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(000199245)チヨダウーテ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】