説明

壁紙

【課題】貼着施工にでんぷん糊等の水性糊剤を用いることができ、施工時の水性糊の塗布によるカール発生が少なく、また施工後の壁紙の継ぎ目部に目開きや突き上げが生じるのを低減させた壁紙を提供する。
【解決手段】芯成分がポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分がポリエチレンである芯鞘型複合繊維5〜25質量%、針葉樹パルプ繊維5〜25質量%及び広葉樹パルプ繊維50〜90質量%からなる混抄紙を基材シートとし、該基材シートの表面に樹脂層を設けてなる壁紙であって、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分のポリエチレンが隣接する繊維と融着している壁紙である。上記の樹脂層は、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層又は発泡ポリオレフィン系樹脂層が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙に関する。更に詳しくは、芯鞘型合成複合繊維と木材パルプ繊維とからなる混抄紙を基材シートに用い、水中伸度を低減させ、施工時の水性糊の糊付けの際のカールを抑制し、施工後の壁紙間の継ぎ目部(ジョイント部)の目隙や突き上げを少なくした壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙は、紙、不織布などの基材シートの表面に樹脂層を設けたものが一般である。そして、基材シートとしては、表面の樹脂層との密着性が良いこと、施工時にでんぷん糊等の水性糊が使用できこと、また価格が安いことなどの理由で、紙が用いられてきた。しかし、従来、壁紙の基材シートの紙としては、木材パルプを抄紙した紙が用いられているが、木材パルプを抄紙した紙は吸水性が強く、この紙を基材シートにした壁紙は、基材シートが水性糊の付着や湿気などの水分の影響で伸縮し、寸法安定性が劣る欠点があり、そのため施工時に水性糊の塗布でカールが生じたり、施工後の壁紙の継ぎ目部に、目開き(目隙)が生じたり、突き上げが生じる欠点がある。
【0003】
これらの欠点を補うべく、木材パルプを抄紙した紙に代えて、木材パルプと合成繊維を混抄し、水性糊の付着や湿気などの水分の影響による伸縮性を低減させた紙を、基材シートに用いることが提案されている。例えば、ポリエステル繊維25〜50重量%、ポリエチレン繊維5〜15重量%、麻5〜30重量%および針葉樹、広葉樹からなる木材パルプから選ばれる繊維65〜5重量%とからなる混抄紙を、壁紙の基材シートにすることが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−299017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、壁への貼着施工にでんぷん糊等の水性糊剤を用いることができ、水性糊剤の付着や湿気など水分の影響による伸縮が少なく、寸法安定性が優れており、施工時の水性糊の塗布によるカールの発生を抑制させ、また施工後の壁紙の継ぎ目部に、目開き(目隙)や突き上げが生じるのを低減させた壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、芯成分がポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分がポリエチレンである芯鞘型複合繊維5〜25質量%、針葉樹パルプ繊維5〜25質量%及び広葉樹パルプ繊維50〜90質量%からなる混抄紙を基材シートとし、該基材シートの表面に樹脂層を設けてなる壁紙であって、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分のポリエチレンが隣接する繊維と融着していることを特徴とする壁紙である。上記の樹脂層は、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層又は発泡ポリオレフィン系樹脂層が好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の壁紙の基材シートは、芯成分がポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分がポリエチレンである芯鞘型複合繊維を含む混抄紙である。この混抄紙を基材シートにした壁紙は、湿気など水分の影響による伸縮が少なく、寸法安定性が優れており、施工にあたり水性糊剤を付着したとき寸法変化やカールが少なくて施工し易く、また施工後の壁紙の継ぎ目部の目開き(目隙)や突き上げが小さい。また、この壁紙は、壁への貼着施工にでんぷん糊等の水性糊剤を用いることができ、樹脂層と基材シートの紙との密着性もよい。また、上記の混抄紙は、従来の普通紙と同様に層間剥離し、したがって壁紙の張替えが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で用いる基材シートは、芯成分がポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分がポリエチレンである芯鞘型複合繊維と、針葉樹パルプと、広葉樹パルプとを含む混抄紙である。この芯鞘型複合繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維の周囲をポリエチレンが覆うっている形状の繊維である。この芯鞘型複合繊維は、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとを紡糸口金から、容積比約50:50で芯鞘型に溶融紡糸した、太さ8〜15μの繊維が好ましい。この芯鞘型複合繊維は、繊維長2〜8mm、好ましくは4〜6mmに切断して、混抄に用いる。この芯鞘型複合繊維は、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がポリエチレンであるので疎水性であり、吸湿、吸水による伸縮が少なく、これを混抄した混抄紙は水分に対する安定性がよい。しかも、本発明では、この混抄紙を加熱処理して、芯鞘型複合繊維の鞘成分のポリエチレンを溶融させ、芯成分のポリエチレンテレフタレート繊維とそれに隣接するパルプ繊維や他のポリエチレンテレフタレート繊維とを接着させるので、水分に対する寸法安定性が一層向上している。
【0008】
混抄するときの芯鞘型複合繊維の配合量は、混抄紙構成繊維の5〜25質量%、好ましくは10〜15質量%である。配合量が5質量%未満では、吸湿、吸水による伸縮性の低下、またポリエチレンの隣接繊維との融着による寸法安定性を充分に向上させることができない。また配合量が25質量%を超えると、混抄紙の表面にケバが生じ、表面の平滑性が失われ、ポリ塩化ビニルゾルを塗布して樹脂層を形成するとき、ブツの発生により凹凸が生じ、その後のプリント時に飛びが生じるなどの不都合を生じやすい。
【0009】
混抄紙に配合する針葉樹パルプは、繊維長2〜5mmのものが好ましく用いられる。また、広葉樹パルプは、繊維長0.5〜2.5mmのものが好ましく用いられる。針葉樹パルプは、紙の引き裂き強度、破断強度を高め、また広葉樹パルプは層間剥離を良くする性質がある。そのため、針葉樹パルプと広葉樹パルプとを併用する。針葉樹パルプ繊維の配合量は、混抄紙構成繊維の5〜25質量%、好ましくは10〜15質量%である。また、広葉樹パルプ繊維の配合量は、混抄紙構成繊維の50〜90質量%、好ましくは65〜80質量%である。木材パルプの一部を他のパルプや他の天然繊維で置換えてもよい。抄紙にあたっては、カオリン、炭酸カルシウム、白土、シリカなど通常用いられる填料を配合するのが好ましい。填料は混抄紙の5〜10質量%を配合するのが好ましい。
【0010】
本発明の壁紙は、上述の混抄紙の表面に樹脂層を設けて製造するが、この製造工程中における加熱処理によって、混抄紙中の芯鞘型複合繊維の鞘成分であるポリエチレンを溶融させる。この加熱処理は、ポリエチレンテレフタレートの融点以下、ポリエチレンの融点以上の温度、例えば130〜140℃で行う。加熱処理は独立して行ってもよいが、例えば発泡加工時に行う加熱処理と兼ねさせてもよい。この加熱処理によって溶融したポリエチレンが、ポリエチレンテレフタレート繊維と、これに隣接するパルプ繊維や他のポリエチレンテレフタレート繊維とを接着させるので、疎水性のポリエチレンテレフタレート繊維を仲立ちとする繊維同士の接着が強固になり、より一層に水中伸縮性が低減し、寸法安定性が向上する。また、混抄した混抄紙を、あらかじめ、ポリエチレンテレフタレートの融点以下、ポリエチレンの融点以上の温度で加熱処理して、ポリエチレンを溶融し、隣接する繊維同士を融着させ、これを壁紙の基材シートに用いてもよい。
【0011】
パルプ繊維とポリエチレン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維とを混抄した紙を基材シートに用いた壁紙においても、加熱処理によって、ポリエチレン繊維が溶融し、ポリエチレンテレフタレート繊維と、これに隣接するパルプ繊維や他のポリエチレンテレフタレート繊維とを接着する場合が生じるが、この場合は、ポリエチレン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維とパルプ繊維との三者が隣接した個所でのみ行われる。すなわち、隣接するパルプ繊維と接着していないポリエチレンテレフタレート繊維が存在することがある。本発明の芯鞘型複合繊維を用いた場合は、ポリエチレンテレフタレート繊維の周囲の(鞘部分の)ポリエチレンが溶融し、接着作用するので、ポリエチレンテレフタレート繊維と隣接するパルプ繊維とは確実に接着する。したがって、本発明の壁紙は、寸法安定性に優れている。
【0012】
本発明における樹脂層は、発泡樹脂層でも、非発泡樹脂層でもよい。これらの樹脂層の形成は、それ自体既知の方法を採用できる。樹脂層を形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレンーメチルメタクリレート共重合体(EMMA)などが用いられる。これらは、発泡剤、隠蔽剤、充填剤、可塑剤などを配合して用いることができる。基材シートの表面に樹脂層を設けには、塗布方式、カレンダー方式、押し出し機方式などで行う。例えば、発泡ポリ塩化ビニル樹脂層を形成する場合は、基材シートの表面に、発泡剤を配合したポリ塩化ビニルペーストレジンをコーティングし、その後乾燥、発泡処理し、所望に応じてエンボス加工する。
【実施例1】
【0013】
芯鞘型複合繊維20質量%と針葉樹パルプ20質量%と広葉樹パルプ60質量%とを混抄して、坪量65g/mの混抄紙を得た。この芯鞘型複合繊維は、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとを、容積比約50:50で、芯鞘型(芯部:ポリエチレンテレフタレート、鞘部:ポリエチレン)に溶融紡糸して製造した繊維で、太さ10μ、繊維長5mmの繊維である。
上記の混抄紙の表面に、次の組成のポリ塩化ビニルペーストを0.09mmの厚さに塗布し、150℃で乾燥し、220℃で加熱発泡処理し、次いで190℃でエンボス加工し、本発明の壁紙を得た。この壁紙の基材シートである混抄紙は、ポリエチレンの溶融により、隣接する繊維同士が融着していた。
【0014】
ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストの組成
ポリ塩化ビニル(重合度800) 100部
フタル酸ジイソノニル(可塑剤) 40部
Ba‐Zn(安定剤) 3部
ADCA/OBSH(発泡剤) 5部
炭酸カルシウム(充填剤) 60部
酸化チタン 15部
【0015】
比較例1.
針葉樹パルプ40質量%と広葉樹パルプ60質量%とを混抄して得た普通紙(中越パルプ社製:CG65CO)の表面に、実施例1のポリ塩化ビニル(PVC)ペーストを用いて、実施例1と同様にして発泡樹脂層を形成して壁紙を製造した。
【実施例2】
【0016】
次の組成のエチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)組成物を、0.13mmの厚さにカレンダーロールで圧延し、この圧延シートを、上記実施例1で得た混抄紙の表面に熱ラミネートした。その後、220℃で加熱発泡処理し、180℃でエンボス加工し、本発明の壁紙を得た。この壁紙の基材シートである混抄紙は、ポリエチレンの溶融により、隣接する繊維同士が融着していた。
【0017】
エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)組成物
EMMA 100部
炭酸カルシウム(充填剤) 60部
水酸化マグネシウム(難燃剤) 10部
ADCA/OBSH(発泡剤) 5部
Zn系安定剤 1部
酸化チタン 20部
【0018】
比較例2.
針葉樹パルプ40質量%と広葉樹パルプ60質量%とを混抄して得た普通紙(大王製紙社製:NPW65)の表面に、実施例2のエチレンーメチルメタクリレート共重合体(EMMA)組成物を用いて、実施例2と同様にして発泡樹脂層を形成して壁紙を製造した。
【0019】
上記で実施例1、2及び比較例1、2で得た壁紙について、原紙及び壁紙の水中伸度、壁紙の糊付け時のカールの程度、施工後のジョイント部目隙の有無について評価した。その結果を、表1に示す。なお、評価方法と評価基準は次のとおりである。
水中伸度:試料(15cm×15cm)を、水中に3分間浸漬し、水中から取り出し、その直後の横方向の寸法を測定し、寸法変化を算出した(例えば、横方向に1.3%伸びたときは1.3と表す。また1.3%縮んだときは−1.3%と表す)。
糊付け時のカール:試料に、水で30質量%に希釈したでんぷん糊を、糊付け機で160g/mの目付けで塗布し、その糊付け面同士を重ねて20分間放置し、試料の耳部のカールを目視で評価し、貼着作業した。評価は、カールが全くみられず、作業に影響がないものないものを○、カールしたが作業にほとんど影響がないものを△、カールが大きくて伸ばしながら作業するものを×とした。
ジョイント部の目隙:試料を石膏ボードに貼着し、1日経過後に継ぎ目部の目隙の有無について目視で調べた。評価は、目隙が全く見られないものを○、よく見なければ目隙が分からないものを△、一見して目隙がわかるものを×とした。
【0020】
【表1】

【0021】
表1から分かるように、本発明の壁紙の基材シートである混抄紙は、従来用いられていた普通紙に比し、水中伸度が低い。また、基材シートの表面に樹脂層を設けて壁紙にしたときの水中伸度も、本発明の混抄紙を基材シートに用いたものは、従来の普通紙を用いたものに比し低い。すなわち、水分に対する寸法安定性が優れていた。また、糊付け時のカールの程度及び施工後の目隙の有無についての評価は、いずれも、本発明の混抄紙を基材シートに用いた壁紙は、従来の普通紙を基材シートに用いた壁紙に比し優れていた。
【実施例3】
【0022】
実施例1で用いた混抄紙の表面に、次の組成のポリ塩化ビニルペーストを0.2mmの厚さに塗布し、150℃で乾燥し、200℃の炉の中を通して加熱処理し、次いで190℃でエンボス加工し、本発明の壁紙を得た。この壁紙の基材シートである混抄紙は、ポリエチレンの溶融により、隣接する繊維同士が融着していた。この壁紙は、糊付け時のカールが全くみられず、また施工後に継ぎ目部の目隙も見られなかった。
【0023】
ポリ塩化ビニル(PVC)ペーストの組成
ポリ塩化ビニル(重合度800) 100部
フタル酸ジイソノニル(可塑剤) 40部
Ba‐Zn(安定剤) 3部
炭酸カルシウム(充填剤) 60部
酸化チタン 15部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分がポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分がポリエチレンである芯鞘型複合繊維5〜25質量%、針葉樹パルプ繊維5〜25質量%及び広葉樹パルプ繊維50〜90質量%からなる混抄紙を基材シートとし、該基材シートの表面に樹脂層を設けてなる壁紙であって、前記芯鞘型複合繊維の鞘成分のポリエチレンが隣接する繊維と融着していることを特徴とする壁紙。
【請求項2】
樹脂層が発泡ポリ塩化ビニル樹脂層又は発泡ポリオレフィン系樹脂層である請求項1記載の壁紙。

【公開番号】特開2010−116631(P2010−116631A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288391(P2008−288391)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】