壁表層部の剥離診断装置
【課題】診断音発生用部材が自動的に壁表層部の表面を摺動するように構成し、壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かを診断する際の作業者の労力を軽減できる壁表層部の剥離診断装置を得る。
【解決手段】棒体2と、棒体2の一端に取り付けられた診断音発生用部材7と、を備え、診断音発生用部材7を建築物の壁表層部の表面を摺動させて壁表層部の建築物本体からの剥離有無を診断する壁表層部の診断装置1において、棒体2がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能にして配置される連結筺体10と、連結筺体10に取り付けられ、棒体2の一端側を所定方向に移動させるトルクを発生するサーボモータ15と、トルクを棒体2に伝達する動力伝達手段20と、を備えている。
【解決手段】棒体2と、棒体2の一端に取り付けられた診断音発生用部材7と、を備え、診断音発生用部材7を建築物の壁表層部の表面を摺動させて壁表層部の建築物本体からの剥離有無を診断する壁表層部の診断装置1において、棒体2がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能にして配置される連結筺体10と、連結筺体10に取り付けられ、棒体2の一端側を所定方向に移動させるトルクを発生するサーボモータ15と、トルクを棒体2に伝達する動力伝達手段20と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かを診断するのに用いられる壁表層部の剥離診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の壁面剥離検知具は、棒と、棒の先端に固定された接触子と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
そして、モルタルなどで構成される建築物の壁表層部が、建築物本体から剥離しているか否かの診断は、作業員が接触子を壁の表面に摺動させるように棒を持って移動させることで行われる。このとき、接触子が壁の表面を摺動するときの音は、壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かで異なり、作業員は、この音の違いを聞き分けて、壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かを判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−180424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の壁面剥離検知具を用いて壁表層部の剥離有無を診断する場合、作業者は、剥離診断の対象となる壁表層部の表面の全エリアに順次接触子を摺動させるように棒を持って移動させなければならない。このため、壁表層部の剥離有無を診断する際の作業者の労力が増大してしまっていた。
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、診断音発生用部材が自動的に壁表層部の表面を摺動するように構成し、壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かを診断する際の作業者の労力を軽減できる壁表層部の剥離診断装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、棒体と、棒体の一端に取り付けられた診断音発生用部材と、を備え、診断音発生用部材を建築物の壁表層部の表面を摺動させて壁表層部の建築物本体からの剥離有無を診断する壁表層部の診断装置であって、棒体がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に配置される連結筺体と、連結筺体に取り付けられ、棒体の一端側を所定方向に移動させるトルクを発生する動力発生手段と、トルクを棒体に伝達する動力伝達手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明の壁表層部の剥離診断装置は、棒体の一端側を回動させる動力発生手段を有しているので、作業者が壁表層部の剥離有無の診断を行う際、剥離診断装置を所定の姿勢に保持するだけで、診断音発生用部材が、壁表層部の表面を自動的に摺動する。これにより、壁表層部の剥離有無の診断を行う際の作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が伸ばされた状態を示している。
【図2】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が縮められた状態を示している。
【図3】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の側面図である。
【図4】図1のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図2のV−V矢視断面図である。
【図6】図2のVI−VI矢視断面図である。
【図7】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置のシステム構成図である。
【図8】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置による壁表層部の剥離診断の動作を説明する図である。
【図9】図8のIX−IX矢視断面図であり、診断音発生用部材が、壁表層部を構成するタイルの表面に当接した状態を示している。
【図10】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、タイル間の目地を通過する状態を示す断面図である。
【図11】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、モルタルからなる壁表層部の表面を摺動している状態を示す断面図である。
【図12】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が目地を通過する際に建築物本体から剥離していないタイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図である。
【図13】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地有り用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図である。
【図14】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、通過する際に建築物本体から剥離したタイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図である。
【図15】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地無し用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が伸ばされた状態を示している。図2はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が縮められた状態を示している。図3はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の側面図、図4は図1のIV−IV矢視断面図、図5は図2のV−V矢視断面図、図6は図2のVI−VI矢視断面図、図7はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置のシステム構成図である。図8はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置による壁表層部の剥離診断の動作を説明する図、図9は図8のIX−IX矢視断面図であり、診断音発生用部材が、壁表層部を構成するタイルの表面に当接した状態を示している。図10はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、タイル間の目地を通過する状態を示す断面図、図11はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、モルタルからなる壁表層部の表面を摺動している状態を示す断面図、図12はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が目地を通過する際に建築物本体から剥離していない試験用タイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図、図13はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地有り用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図、図14はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、通過する際に建築物本体から剥離したタイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図、図15はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地無し用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図である。
【0010】
図1〜図7において、壁表層部の剥離診断装置1(以下、単に剥離診断装置1とする)は、伸縮自在に構成された第1分割棒体2A及び第2分割棒体2Bを有する棒体2と、棒体2の一端近傍に付勢ばね8を介して取り付けられた診断音発生用部材7と、を備えている。また、剥離診断装置1は、第1分割棒体2Aがその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に配置される連結筺体10と、連結筺体10に取り付けられ、第1分割棒体2Aを所定方向に移動させるトルクを発生する動力発生手段としてのサーボモータ15と、サーボモータ15のトルクを第1分割棒体2Aに伝達する動力伝達手段20と、を備えている。また、剥離診断装置1は、第1分割棒体2Aの一端側に取り付けられ、外部から入力された音声を電気的な音声信号に変換して出力する集音マイク25と、報知手段としてのスピーカ26及び発光ダイオード27(LED27)と、集音マイク25が出力した音声信号を解析し、解析結果に応じてスピーカ26及びLED27の制御を行う演算制御装置40と、サーボモータ15、LED27、演算制御装置40など、各電力消費機器に電力を供給するバッテリ28と、を備えている。
【0011】
第1分割棒体2Aは、第1パイプ2aと、第1パイプ2a内をスライド移動可能に配設され、第1パイプ2aの一端から出没可能な第2パイプ2bと、を備える。
【0012】
そして、以下に説明するスライド規制手段3Aが第1分割棒体2Aに装着され、スライド規制手段3Aは、第2パイプ2bがその一端部を残して第1パイプ2に没したとき、または第2パイプ2bがその他端部を残して第1パイプ2aから引き出されたときに、第2パイプ2bのスライド移動を規制するようになっている。
【0013】
スライド規制手段3Aは、図4及び図5に示されるように、環状の第1弾性部材3a〜第3弾性部材3cにより構成されている。第1弾性部材3aは、第1パイプ2aの一端側の内周面に嵌められ、第2弾性部材3b及び第3弾性部材3cは、第2パイプ2bの一端側及び他端側の外周面に嵌められている。
【0014】
そして、第1弾性部材3aは、中央部から両端に向かって開口径が漸次大きくなるテーパ状に形成されている。また、第2弾性部材3bは、一端部近傍から他端側に向かって外径が漸次小さくなるテーパ状に形成されている。また、第3弾性部材3cは、一端側に向かって外径が漸次小さくなるテーパ状に形成されている。
【0015】
そして、図5に示されるように、第2パイプ2bを、その一端部を残して第1パイプ2aに没するように押し込むと、第2弾性部材3bが第1弾性部材3aの一端側に食い込んで、第1弾性部材3a及び第2弾性部材3bは収縮して押圧しあう。これにより、第2パイプ2bの主要部が第1パイプ2aに没した状態、言い換えれば、第1分割棒体2Aを縮めた状態を安定して維持することができる。
【0016】
また、図4に示されるように、第2パイプ2bを、その他端部を残して第1パイプ2aから延出させるように引き出すと、第3弾性部材3cが第1弾性部材3aの他端側に食い込んで、第1弾性部材3a及び第3弾性部材3cは収縮して押圧しあう。これにより、第2パイプ2bの主要部を第1パイプ2aから引き出した状態、言い換えれば、第1分割棒体2Aを伸ばした状態を安定して維持することができる。
【0017】
また、第2分割棒体2Bは、第3パイプ2cと、第3パイプ2c内をスライド移動可能に配設され、第3パイプ2cの一端から出没可能な第4パイプ2dと、を備える。
また、以下に説明するスライド規制手段3Bが第2分割棒体2Bに装着され、第4パイプ2dがその一端部を残して第3パイプ2cに没したとき、または第4パイプ2dがその他端部を残して第3パイプ2cから引き出されたときに、第3パイプ2cのスライド移動を規制するようになっている。
【0018】
スライド規制手段3Bは、スライド規制手段3Aと同様の構成を有し、図6に示されるように、第1弾性部材3aが第3パイプ2cの一端側の内周面に嵌められ、第2弾性部材3bが、第4パイプ2dの一端側の外周面に嵌められている。また、詳細には図示しないが、第3弾性部材が、第4パイプ2dの他端側の外周面に嵌められている。
そして、第2分割棒体2Bは、第1分割棒体2Aと同様、スライド規制手段3Bにより伸び縮みした状態を安定して維持できるようになっている。
【0019】
また、連結筺体10は、図6に示されるように、円筒部10Aと、円筒部10Aの両開口を塞口するように円筒部10Aの両端に固定されたモータ取付壁10B及び配置基準壁10Cと、からなる中空の円柱形状に形成されている。そして、軸挿入穴10aが、連結筺体10の内外を連通するようにモータ取付壁10Bに形成されている。さらに、パイプ挿入穴10bが、連結筺体10の内外を連通するように、円筒部10Aに周方向に150度程度の角度範囲に亘って形成されている。
【0020】
また、サーボモータ15は、周知であるので詳細な説明は省略するが、その主要構成を収納する筺体部15A、及びモータ軸15Bを有する。筺体部15Aが、モータ取付壁10Bの外面に固定され、モータ軸15Bの先端は筺体部15Aから延出され、軸挿入穴10aから連結筺体10内に挿入されている。
【0021】
動力伝達手段20は、図6に示せられるように、モータ軸15B及び連結筺体10内に設けられた減速機構21により構成されている。
減速機構21は、第1歯車22a〜第4歯車22dと、第1歯車軸23a及び第2歯車軸23bと、を有する。
第1歯車軸23a及び第2歯車軸23bは、モータ軸15Bに平行に、連結筺体10に回転自在に支持されている。
【0022】
そして、第1歯車22aはモータ軸15Bに同軸に固定され、モータ軸15Bと同一の角速度で回転する。また、第2歯車22bは、第1歯車22aより大径であり、第1歯車22aに噛合するように第1歯車軸23aに同軸に固定されている。これにより、第2歯車22bは、第1歯車22aの角速度に対して所定の第1減速比(<1)を乗じた角速度に減速されて回転する。
【0023】
また、第3歯車22cが、第1歯車軸23aに同軸に固定され、第2歯車22bと同一の角速度で回転する。そして、第4歯車22dは、第3歯車22cより大径であり、第3歯車22cに噛合するように第2歯車軸23bに同軸に固定されている。これにより、第4歯車22dは、第3歯車22cの回転に対して所定の第2減速比(<1)を乗じた各速度に減速されて回転する。
【0024】
そして、第1分割棒体2Aの他端側、言い換えれば、第1パイプ2aの他端側が、パイプ挿入穴10bから連結筺体10内に挿入されて、第2歯車軸23bに固定されている。第2歯車軸23bに固定された第1分割棒体2Aは、サーボモータ15の駆動に連動して、モータ軸15Bの角速度に対し、第1減速比と第2減速比を乗じた角速度に減速されて第2歯車軸23bの軸まわりに回転する。
【0025】
また、第2分割棒体2Bの一端が、パイプ挿入穴10bと反対側の円筒部10Aの外周面に固定されている。このように、第1分割棒体2Aと第2分割棒体2Bとが、連結筺体10に支持されたサーボモータ15及び動力伝達手段20を介して連結されている。ここで、第1分割棒体2Aの一端を棒体2の一端とする。つまり、棒体2がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に連結筺体10に配置されている。また、サーボモータ15のトルクによって、棒体2の一端側が、円筒部10Aの周方向(所定方向)に回動するようになっている。
【0026】
また、診断音発生用部材7及び付勢ばね8は、連結筺体10の配置基準壁10Cに直交する方向に第1パイプ2aの一端側から突出している。そして、診断音発生用部材7は、配置基準壁10Cが任意の平面に押しあてられたときに、この平面を所定の押圧力で押し付けるように付勢ばね8に付勢されるようになっている。
また、集音マイク25は、第2パイプ2bの外周面の診断音発生用部材7近傍の部位に取り付けられている。
【0027】
演算制御装置40は、図7に示されるように、集音マイク25が出力したアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するA/D変換器41と、CPU42と、デジタル音声信号の周波数分析、スピーカ26による音声報知やLED27の発光制御、及びサーボモータ15の駆動制御などをCPU42に行わせるためのプログラムが書き込まれたROM43と、CPU42の演算処理時にワーキングスペースに使用されるRAM44と、を備えている。
【0028】
ここで、剥離診断装置1は、図9に示されるように、建築物60Aの目地62bを有する壁表層部62Aの表面に診断音発生用部材7を摺動させて、壁表層部62Aの建築物本体61Aからの剥離有無を診断したり、図11に示されるように、建築物60Bの目地のないおおよそ平坦な壁表層部62Bの表面に診断音発生用部材7を摺動させて、壁表層部62Bの建築物本体61Bからの剥離有無を診断したりするものである。
【0029】
壁表層部62Aは、建築物本体61Aに貼り付けられた複数のタイル62aにより構成されている。そして、目地62bが隣接するタイル62aの間に形成され、壁表層部62Aの表面に凹凸を有している。
また、壁表層部62Bは、モルタルなどにより形成され、その表面がおおよそ平坦になるように構成されている。
【0030】
そして、ROM43に格納されるプログラムは、表面に目地62bを有する壁表層部62Aの剥離有無の診断をCPU42に行わせるための目地有り用診断プログラム、及び表面がおおよそ平坦に構成される壁表層部62Bの剥離有無の診断をCPU42に行わせるための目地無し用診断プログラムを有する。
【0031】
また、演算制御装置40は、図1〜図3に示されるように、第2分割棒体2Bの他端に固定された中空の直方体形状の収納体部50に収納されている。
また、把持部51が、収納体部50から第2分割棒体2Bと反対側に突出するように収納体部50に固定されている。
【0032】
また、演算制御装置40と、パソコン70との通信を行うための出力端子53が、収納体部50の外壁に露出するように設けられている。そして、パソコン70を、出力端子53を利用して演算制御装置40に接続することで、演算制御装置40とパソコン70との間でデータの送受を行うことが可能になる。
【0033】
また、サーボモータ15の駆動スイッチ54が、図1、図2及び図7に示されるように、収納体部50の外壁に露出するように設けられている。さらに、演算制御装置40のCPU42に、目地有り用診断プログラムに従って壁表層部62Aの剥離有無の診断を行せるか、目地無し用診断プログラムに従って壁表層部62Bの剥離有無の診断を行わせるかを作業者が選択するための選択スイッチ55が、収納体部50の外壁に露出するように設けられている。また、スピーカ26、及びLED27が収納体部50の外壁に露出するように設けられている。
【0034】
また、バッテリ28が収納体部50内に配設されている。そして、バッテリ28は、図7に示されるように、スピーカ26、LED27、選択スイッチ55、駆動スイッチ54、サーボモータ15、及び演算制御装置40に電力を供給している。
そして、サーボモータ15、集音マイク25、スピーカ26、LED27、選択スイッチ55、及び駆動スイッチ54が、演算制御装置40に接続されている。
なお、図1及び図2に示されるように、バッテリ28の電源供給、及び演算制御装置40と通信を行うための接続用端子56が収納体部50に設けられており、集音マイク25は、ケーブル29aを介して接続用端子56に接続されている。
【0035】
また、バッテリ28の電源をサーボモータ15に供給したり、演算制御装置40とサーボモータ15との間の通信を行ったりするためのケーブル29bの一端側が、サーボモータ15に接続されている。そして、ケーブル29bは、図6に示されるように、円筒部10A及び第2分割棒体2Bの内部に引き回されている。そして、図示しないが、ケーブル29bの他端は、収納体部50内まで延長されている。
【0036】
そして、選択スイッチ55は、電圧のON/OFFを切り替え可能に構成された図示しない電圧出力端子を有し、選択スイッチ55の切り替え操作に応じて、電圧出力端子のON/OFFが切り替わるようになっている。そして、この電圧出力端子が、演算制御装置40に接続され、CPU42は、電圧出力端子のON/OFFを認識可能になっている。また、CPU42は、電圧出力端子の出力がONであると判断すると、目地有り用診断プログラムに従って、壁表層部62Aの剥離有無の診断を行い、電圧出力端子の出力がOFFであると判断すると、目地無し用診断プログラムに従って、壁表層部62Bの剥離有無の診断を行う。
【0037】
また、演算制御装置40は、サーボモータ15を駆動させる駆動スイッチ54がONとなるように操作されたと判断すると、モータ軸15Bを所定の角速度でかつ所定の角度範囲を繰り返し回動させるようにサーボモータ15を制御する。
また、演算制御装置40は、スピーカ26の報知制御、及びLED27の発光制御が可能となっている。
【0038】
以下、目地を有する壁表層部62Aの剥離有無を、剥離診断装置1を用いて診断する作業について説明する。
まず、ROM43には、壁表層部62Aの剥離有無の判定基準となる以下に説明する第1剥離判定値が予め格納されている。
建築物本体61Aと同じ材料の下地(図示せず)にタイル62aと同じタイル(図示せず)を貼り付け、タイル62aが建築物本体61Aに健全に貼られた壁表層部62Aと同じ条件の壁表層部を作り出すことは可能である。以下、壁表層部62Aと同じ条件に作り出された壁表層部を第1判定値測定用壁表層部とし、これに使用されるタイルを試験用タイルとする。
【0039】
例えば、作業者は、工場等で第1判定値測定用壁表層部を構築し、診断音発生用部材7が、試験用タイルの表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度[W/Hz]を以下のように取得する。このとき、取得されるパワースペクトル密度は、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62Aを摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度に相当する。以下、診断音発生用部材7が、試験用タイルの表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を第1基準パワースペクトル密度とする。
【0040】
まず、第1基準パワースペクトル密度を取得するために、まず、作業者は、パソコン70を、図1に示されるように、出力端子53を利用して演算制御装置40に接続し、演算制御装置40のスペクトル解析の結果をパソコン70に取り込み可能にする。
なお、選択スイッチ55のON/OFFの操作に関わらず、CPU42は、パソコン70の接続を認識すると、集音マイク25から入力される音声信号をスペクトル解析した結果を微小時間間隔でパソコン70に送信するように制御する。
【0041】
そして、作業者は、第1分割棒体2A及び第2分割棒体2Bを所望の長さに調整し、把持部51を持って、診断音発生用部材7を第1判定値測定用壁表層部に向け、連結筺体10の配置基準壁10Cを、第1判定値測定用壁表層部の表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。このとき、診断音発生用部材7は、付勢ばね8の付勢力により所定の押圧力で試験用タイルの表面を押し付けるようになっている。また、第1分割棒体2Aの回動方向は、試験用タイルの表面に沿って移動する方向に一致する。
【0042】
そして、作業員は、サーボモータ15を駆動させる。これにより、診断音発生用部材7は、第1判定値測定用壁表層部の表面を摺動しつつ、所定の角度範囲を往復するように第2歯車軸23bの軸まわりに回動する。このとき、演算制御装置40は、図1において実線で示した第1分割棒体2Aと一点鎖線で示した第1分割棒体2Aの間を往復移動させるように、サーボモータ15の駆動を制御する。これにより発生する摺動音が、集音マイク25に入力され、集音マイク25が出力するアナログ音声信号は、A/D変換器41でデジタル音声信号に変換される。
【0043】
そして、作業者は、診断音発生用部材7が、摺動音のパワースペクトル密度をパソコン70に取得させる。このとき、演算制御装置40によるスペクトル分析は、下限周波数fL(=0)[Hz]、上限周波数fH=(12000Hz)[Hz]の範囲で行っている。なお、上限周波数fHに設定した12000[Hz]は、おおよそ人の可聴領域の上限値である。また、演算制御装置40は、例えば、診断音発生用部材7が1cm程度移動する間に、微小時間間隔で複数回のパワースペクトル密度を演算するようになっている。
【0044】
次いで、作業者は、診断音発生用部材7が、試験用タイルの間の目地を通過する際、試験用タイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度をパソコン70に取得させる。
ここで、診断音発生用部材7が目地を通過する際に試験用タイルに当たったときの音量は、試験用タイルの表面を摺動しているときより大きくなるので、このときのスペクトル密度の最大値は、診断音発生用部材7が試験用タイルの表面を摺動しているときのものに比べて大きく増大する。
【0045】
パソコン70のCPU(図示せず)は、パワースペクトル密度の最大値が大きく増大する方向に変化したときのパワースペクトル密度を、診断音発生用部材7が目地を通過する際に試験用タイルに当たって発生した音のパワースペクトル密度として認識して、当該パワースペクトル密度を取得する制御を行うようになっている。
【0046】
このとき取得されるパワースペクトル密度は、図12に示されるように最大値P0をとる。前述したように、このパワースペクトル密度は、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62Aを摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度に相当する。そして、他の試験用タイルに診断音発生用部材7が当たって発生する音のパワースペクトル密度も、おおよそ図12に示される波形となるが、観測されるパワースペクトル密度の最大値は、ある程度のばらつきを生じる。作業者は、このばらつき量を考慮し、診断音発生用部材7が健全な任意のタイル62aに当たって発生する音のパワースペクトル密度の想定される最大値よりもやや大きくなる値を第1剥離判定値とし、予め、第1剥離判定値を目地有り用診断プログラムに組み込んでROM43に格納する。
【0047】
次いで、作業者が建築物60Aのある場所まで赴き、壁表層部62Aの剥離有無を行う際の手順について説明する。
作業者は、選択スイッチ55の出力をONにし、演算制御装置40に目地有り用診断プログラムに従って壁表層部62Aの剥離有無の判定を行わせるように設定する。
【0048】
次いで、作業員は、図8に示されるように、剥離診断装置1の把持部51を持って診断音発生用部材7を壁表層部62Aに向け、連結筺体(図示せず)の配置基準壁(図示せず)を、壁表層部62Aの表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。このとき、診断音発生用部材7は、付勢ばね8の付勢力により所定の押圧力でタイル62aの表面を押し付けるようになっている。
そして、作業員は、サーボモータ15を駆動させる。これにより、診断音発生用部材7は壁表層部62Aの表面を摺動しつつ、所定の角度範囲を往復するように第2歯車軸23bの軸まわりに回動する。このとき発生する摺動音が、集音マイク25に入力され、集音マイク25が出力するアナログ音声信号は、A/D変換器41でデジタル音声信号に変換される。
【0049】
以下、目地有り用診断プログラムに基づいた演算制御装置40の制御動作について図13のフロー図を参照しつつ説明する。
なお、説明の便宜上、図13では、ステップ101〜ステップ103をS101〜S103と記載する。
【0050】
ステップ101で、CPU42は、A/D変換器41から出力されるデジタル音声信号をスペクトル解析し、スペクトル解析により得られたパワースペクトル密度のデータをRAM44に格納する。なお、前回の取得したパワースペクトル密度のデータが既にRAM44に格納されている場合には、上書きして格納する。
【0051】
ここで、診断音発生用部材7が、図10に示されるように、建築物本体61Aから一部が剥離し、建築物本体61Aとの間に隙間64を有するタイル62aに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の例を図14に示す。
以下、建築物本体61Aから一部が剥離し、建築物本体61Aとの間に隙間64を有するタイル62aを不健全なタイル62aとする。
【0052】
診断音発生用部材7が目地62bを通過する際に、不健全なタイル62aに当接して発生する音をスペクトル解析して得たパワースペクトル密度は、不健全なタイル62aと建築物本体61Aの間の隙間64の深さに応じて変化する周波数f0で最大ピーク値Pm1をとる。タイル62aが建築物本体61Aにしっかり固定されていないため、診断音発生用部材7が不健全なタイル62aの表面を通過するときに振動するタイル62aの振動周波数が隙間64の深さに応じて変化する。これに起因して、最大ピーク値Pm1が観測される周波数f0も変化するものと考えられる。
そして、最大ピーク値Pm1は、第1剥離判定値や、健全なタイル62aの表面が摺動したときに発生する音をスペクトル解析して得られるパワースペクトル密度の最大値より十分に大きな値となる。
【0053】
そこで、ステップ102で、CPU42は、RAM44に格納されたパワースペクトル密度の最大値が、第1剥離判定値以上か否かを判断する。
ステップ102で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第1剥離判定値以上でないと判断すると、タイル62aは剥離していないものと判断し、ステップ101に戻る。
ステップ102で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第1剥離判定値以上であると判断すると、タイル62aは剥離しているものと判断し、スピーカ26からアラーム音を流し、LED27を点灯させて、タイル62aの剥離異常を作業員に知らせる(ステップ103)。これにより、作業員は、アラーム音やLED27が点灯したときに、診断音発生用部材7が摺動していたタイル62aの部位が剥離していることを認識し、当該箇所を確認し、確認結果に応じた対処をとる。
【0054】
次いで、壁表層部62Bがモルタルで形成され、壁表層部62Bの表面がおおよそ平坦である場合に、壁表層部62Bの剥離の有無を診断する方法について説明する。
【0055】
まず、ROM43には、壁表層部62Bの剥離有無の判定基準となる以下に説明する第2剥離判定値が予め格納されている。
建築物本体61Bと同じ材料の下地の表面に壁表層部62Bと同じ厚みのモルタルを固め、モルタルが建築物本体61Bから剥離されていない壁表層部62Bと同じ条件の壁表層部(図示せず)を作り出すことは可能である。以下、壁表層部62Bと同じ条件に作り出された壁表層部を第2判定値測定用壁表層部とする。
【0056】
例えば、作業者は、工場等で第2判定値測定用壁表層部を構築し、診断音発生用部材7が、第2判定測定用壁表層部の表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を以下のように予め取得する。このとき取得されるパワースペクトル密度は、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62Bを摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度に相当する。以下、診断音発生用部材7が、試験用タイルの表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を第2基準パワースペクトル密度とする。
【0057】
第2基準パワースペクトル密度を取得するために、まず、作業差は、パソコン70を、図1に示されるように、出力端子53を利用して演算制御装置40に接続し、演算制御装置40のスペクトル解析の結果をパソコン70に取り込み可能にする。
【0058】
また、作業者は、診断音発生用部材7を第2判定値測定用壁表層部に向け、連結筺体(図示せず)の配置基準壁(図示せず)を、第2判定値測定用壁表層部の表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。これにより、診断音発生用部材7は、付勢ばね8の弾性力により所定の押圧力で第2判定値測定用壁表層部の表面に押し付けられる。
【0059】
そして、作業者は、サーボモータ15を駆動させ、診断音発生用部材7が、第2判定値測定用壁表層部の表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を取得する。なお、剥離有無の診断対象となる第2判定値測定用壁表層部の場所を代えてパワースペクトル密度を取得したり、同じ診断対象の壁表層部62Bでもパワースペクトル密度を再取得したりした場合、パワースペクトル密度の最大値はおおよそ同じになるものの、ある程度のばらつきを生じる。作業者は、このばらつき量を考慮し、診断音発生用部材7を健全な壁表層部62Bの診断領域の任意の場所を摺動させて得たパワースペクトル密度の想定される最大値よりもやや大きな値を第2剥離判定値とし、予め、第2剥離判定値を目地無し用診断プログラムに組み込んでROM43に格納する。
【0060】
次いで、作業者が建築物60Bのある場所まで赴き、壁表層部62Bの剥離有無を行う際の手順について説明する。
作業者は、選択スイッチ55の出力をOFFにし、演算制御装置40に目地無し用診断プログラムに基づいて、壁表層部62Bの剥離有無の判定を行わせるように設定する。
【0061】
次いで、作業員は、剥離診断装置1の把持部(図示せず)を持ち、図11に示されるように、診断音発生用部材7を壁表層部62Bに向け、連結筺体(図示せず)の配置基準壁(図示せず)を、壁表層部62Bの表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。そして、作業員は、サーボモータ15を駆動させて診断音発生用部材7を壁表層部62Bの表面に沿って摺動させる。これにより、診断音発生用部材7が所定の角度範囲を往復するように第2歯車軸23bの軸まわりに回動する。このとき発生する摺動音が、集音マイク25に入力され、集音マイク25が出力するアナログ音声信号は、A/D変換器41でデジタル音声信号に変換される。
【0062】
以下、目地無し用診断プログラムに基づいた演算制御装置40の制御動作について図15のフロー図を参照しつつ説明する。
なお、説明の便宜上、図15ではステップ201〜ステップ203をS201〜S203と記載する。
ステップ201で、CPU42は、現在A/D変換器41が出力しているデジタル音声信号をスペクトル解析し、スペクトル解析により得られたパワースペクトル密度データをRAM44に格納する。
【0063】
ここで、詳細には図示しないが、診断音発生用部材7が、建築物本体61Bから剥離している壁表層部62Bの表面を摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度は、壁表層部62Bと建築物本体61Bの隙間の大きさに応じて変化する共振周波数で最大ピーク値Pm2をとる。このときの最大ピーク値Pm2は、第2剥離判定値より十分に大きな値となる。
【0064】
そこで、ステップ202で、CPU42は、格納されたパワースペクトル密度の最大値が、第2剥離判定値以上か否かを判断する。
ステップ202で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第2剥離判定値以上でないと判断すると、壁表層部62Bは健全な状態にあると判断し、ステップ201に戻る。
ステップ202で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第2剥離判定値以上であると判断すると、壁表層部62Bが建築物本体61Aから剥離していると判断し、スピーカ26からアラーム音を流し、LED27を点灯させて、壁表層部62Bの剥離異常を作業員に知らせる(ステップ203)。
【0065】
この実施の形態によれば、第1分割棒体2Aの一端側を、言い換えれば、棒体2の一端側を回動させるサーボモータ15を有しているので、作業者は、壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を行う際、剥離診断装置1を所定の姿勢に保持するだけで、診断音発生用部材7が、壁表層部62A,62Bの表面を自動的に摺動する。そして、作業者は、診断音発生用部材7が、所定の角度範囲を移動するごとに、診断音発生用部材7の位置を順次ずらすという動作をくり返すだけで、診断対象の壁表層部62A,62Bの表面の全エリアの診断することができ、壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を行う際の作業者の負担を軽減できる。
【0066】
また、演算制御装置40が、予め格納された壁表層部62A,62Bの剥離有無の判断基準となる剥離判定値を、剥離有無の診断時に演算したパワースペクトル密度の最大値と比較して壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を機械的に行っている。従って、壁表層部62A,62Bが剥離していることを見逃したりすることがなくなる。
【0067】
また、第1分割棒体2A、及び第2分割棒体2Bが伸縮自在に、言い換えれば、棒体2が伸縮自在に構成されているので、作業者から診断対象の壁表層部62A,62Bまでの距離に応じて棒体2の長さを調整すれば、作業員は窮屈な姿勢になることなく剥離診断装置1を把持して壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を実施できる。
【0068】
なお、この発明では、集音マイク25、演算制御装置40を設けるものとして説明したが、作業者が、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62A,62Bの表面を摺動するときとそうでないときの摺動音を聞き分けられれば、集音マイク25を省略でき、また、演算制御装置40のスペクトル解析機能も省略できる。さらに、付勢ばね8を介さずに、診断音発生用部材7を直接棒体2の一端側に取り付けても良い。
また、棒体2は第1分割棒体2A及び第2分割棒体2Bからなるものとして説明したが、第2分割棒体2Bを省略したり、分割棒体を追加して設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 壁表層部の剥離診断装置、2 棒体、7 診断音発生用部材、10 連結筺体、15 サーボモータ(動力発生手段)、20 動力伝達手段、60A,60B 建築物、61A,61B 建築物本体、62A,62B 壁表層部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かを診断するのに用いられる壁表層部の剥離診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の壁面剥離検知具は、棒と、棒の先端に固定された接触子と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
そして、モルタルなどで構成される建築物の壁表層部が、建築物本体から剥離しているか否かの診断は、作業員が接触子を壁の表面に摺動させるように棒を持って移動させることで行われる。このとき、接触子が壁の表面を摺動するときの音は、壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かで異なり、作業員は、この音の違いを聞き分けて、壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かを判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−180424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の壁面剥離検知具を用いて壁表層部の剥離有無を診断する場合、作業者は、剥離診断の対象となる壁表層部の表面の全エリアに順次接触子を摺動させるように棒を持って移動させなければならない。このため、壁表層部の剥離有無を診断する際の作業者の労力が増大してしまっていた。
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、診断音発生用部材が自動的に壁表層部の表面を摺動するように構成し、壁表層部が建築物本体から剥離しているか否かを診断する際の作業者の労力を軽減できる壁表層部の剥離診断装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、棒体と、棒体の一端に取り付けられた診断音発生用部材と、を備え、診断音発生用部材を建築物の壁表層部の表面を摺動させて壁表層部の建築物本体からの剥離有無を診断する壁表層部の診断装置であって、棒体がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に配置される連結筺体と、連結筺体に取り付けられ、棒体の一端側を所定方向に移動させるトルクを発生する動力発生手段と、トルクを棒体に伝達する動力伝達手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明の壁表層部の剥離診断装置は、棒体の一端側を回動させる動力発生手段を有しているので、作業者が壁表層部の剥離有無の診断を行う際、剥離診断装置を所定の姿勢に保持するだけで、診断音発生用部材が、壁表層部の表面を自動的に摺動する。これにより、壁表層部の剥離有無の診断を行う際の作業者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が伸ばされた状態を示している。
【図2】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が縮められた状態を示している。
【図3】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の側面図である。
【図4】図1のIV−IV矢視断面図である。
【図5】図2のV−V矢視断面図である。
【図6】図2のVI−VI矢視断面図である。
【図7】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置のシステム構成図である。
【図8】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置による壁表層部の剥離診断の動作を説明する図である。
【図9】図8のIX−IX矢視断面図であり、診断音発生用部材が、壁表層部を構成するタイルの表面に当接した状態を示している。
【図10】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、タイル間の目地を通過する状態を示す断面図である。
【図11】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、モルタルからなる壁表層部の表面を摺動している状態を示す断面図である。
【図12】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が目地を通過する際に建築物本体から剥離していないタイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図である。
【図13】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地有り用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図である。
【図14】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、通過する際に建築物本体から剥離したタイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図である。
【図15】この発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地無し用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が伸ばされた状態を示している。図2はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の正面図であり、棒体が縮められた状態を示している。図3はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の側面図、図4は図1のIV−IV矢視断面図、図5は図2のV−V矢視断面図、図6は図2のVI−VI矢視断面図、図7はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置のシステム構成図である。図8はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置による壁表層部の剥離診断の動作を説明する図、図9は図8のIX−IX矢視断面図であり、診断音発生用部材が、壁表層部を構成するタイルの表面に当接した状態を示している。図10はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、タイル間の目地を通過する状態を示す断面図、図11はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、モルタルからなる壁表層部の表面を摺動している状態を示す断面図、図12はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が目地を通過する際に建築物本体から剥離していない試験用タイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図、図13はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地有り用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図、図14はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の診断音発生用部材が、通過する際に建築物本体から剥離したタイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の特性図、図15はこの発明の一実施の形態に係る壁表層部の剥離診断装置の演算制御装置による目地無し用診断プログラムに従った制御動作を説明するフロー図である。
【0010】
図1〜図7において、壁表層部の剥離診断装置1(以下、単に剥離診断装置1とする)は、伸縮自在に構成された第1分割棒体2A及び第2分割棒体2Bを有する棒体2と、棒体2の一端近傍に付勢ばね8を介して取り付けられた診断音発生用部材7と、を備えている。また、剥離診断装置1は、第1分割棒体2Aがその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に配置される連結筺体10と、連結筺体10に取り付けられ、第1分割棒体2Aを所定方向に移動させるトルクを発生する動力発生手段としてのサーボモータ15と、サーボモータ15のトルクを第1分割棒体2Aに伝達する動力伝達手段20と、を備えている。また、剥離診断装置1は、第1分割棒体2Aの一端側に取り付けられ、外部から入力された音声を電気的な音声信号に変換して出力する集音マイク25と、報知手段としてのスピーカ26及び発光ダイオード27(LED27)と、集音マイク25が出力した音声信号を解析し、解析結果に応じてスピーカ26及びLED27の制御を行う演算制御装置40と、サーボモータ15、LED27、演算制御装置40など、各電力消費機器に電力を供給するバッテリ28と、を備えている。
【0011】
第1分割棒体2Aは、第1パイプ2aと、第1パイプ2a内をスライド移動可能に配設され、第1パイプ2aの一端から出没可能な第2パイプ2bと、を備える。
【0012】
そして、以下に説明するスライド規制手段3Aが第1分割棒体2Aに装着され、スライド規制手段3Aは、第2パイプ2bがその一端部を残して第1パイプ2に没したとき、または第2パイプ2bがその他端部を残して第1パイプ2aから引き出されたときに、第2パイプ2bのスライド移動を規制するようになっている。
【0013】
スライド規制手段3Aは、図4及び図5に示されるように、環状の第1弾性部材3a〜第3弾性部材3cにより構成されている。第1弾性部材3aは、第1パイプ2aの一端側の内周面に嵌められ、第2弾性部材3b及び第3弾性部材3cは、第2パイプ2bの一端側及び他端側の外周面に嵌められている。
【0014】
そして、第1弾性部材3aは、中央部から両端に向かって開口径が漸次大きくなるテーパ状に形成されている。また、第2弾性部材3bは、一端部近傍から他端側に向かって外径が漸次小さくなるテーパ状に形成されている。また、第3弾性部材3cは、一端側に向かって外径が漸次小さくなるテーパ状に形成されている。
【0015】
そして、図5に示されるように、第2パイプ2bを、その一端部を残して第1パイプ2aに没するように押し込むと、第2弾性部材3bが第1弾性部材3aの一端側に食い込んで、第1弾性部材3a及び第2弾性部材3bは収縮して押圧しあう。これにより、第2パイプ2bの主要部が第1パイプ2aに没した状態、言い換えれば、第1分割棒体2Aを縮めた状態を安定して維持することができる。
【0016】
また、図4に示されるように、第2パイプ2bを、その他端部を残して第1パイプ2aから延出させるように引き出すと、第3弾性部材3cが第1弾性部材3aの他端側に食い込んで、第1弾性部材3a及び第3弾性部材3cは収縮して押圧しあう。これにより、第2パイプ2bの主要部を第1パイプ2aから引き出した状態、言い換えれば、第1分割棒体2Aを伸ばした状態を安定して維持することができる。
【0017】
また、第2分割棒体2Bは、第3パイプ2cと、第3パイプ2c内をスライド移動可能に配設され、第3パイプ2cの一端から出没可能な第4パイプ2dと、を備える。
また、以下に説明するスライド規制手段3Bが第2分割棒体2Bに装着され、第4パイプ2dがその一端部を残して第3パイプ2cに没したとき、または第4パイプ2dがその他端部を残して第3パイプ2cから引き出されたときに、第3パイプ2cのスライド移動を規制するようになっている。
【0018】
スライド規制手段3Bは、スライド規制手段3Aと同様の構成を有し、図6に示されるように、第1弾性部材3aが第3パイプ2cの一端側の内周面に嵌められ、第2弾性部材3bが、第4パイプ2dの一端側の外周面に嵌められている。また、詳細には図示しないが、第3弾性部材が、第4パイプ2dの他端側の外周面に嵌められている。
そして、第2分割棒体2Bは、第1分割棒体2Aと同様、スライド規制手段3Bにより伸び縮みした状態を安定して維持できるようになっている。
【0019】
また、連結筺体10は、図6に示されるように、円筒部10Aと、円筒部10Aの両開口を塞口するように円筒部10Aの両端に固定されたモータ取付壁10B及び配置基準壁10Cと、からなる中空の円柱形状に形成されている。そして、軸挿入穴10aが、連結筺体10の内外を連通するようにモータ取付壁10Bに形成されている。さらに、パイプ挿入穴10bが、連結筺体10の内外を連通するように、円筒部10Aに周方向に150度程度の角度範囲に亘って形成されている。
【0020】
また、サーボモータ15は、周知であるので詳細な説明は省略するが、その主要構成を収納する筺体部15A、及びモータ軸15Bを有する。筺体部15Aが、モータ取付壁10Bの外面に固定され、モータ軸15Bの先端は筺体部15Aから延出され、軸挿入穴10aから連結筺体10内に挿入されている。
【0021】
動力伝達手段20は、図6に示せられるように、モータ軸15B及び連結筺体10内に設けられた減速機構21により構成されている。
減速機構21は、第1歯車22a〜第4歯車22dと、第1歯車軸23a及び第2歯車軸23bと、を有する。
第1歯車軸23a及び第2歯車軸23bは、モータ軸15Bに平行に、連結筺体10に回転自在に支持されている。
【0022】
そして、第1歯車22aはモータ軸15Bに同軸に固定され、モータ軸15Bと同一の角速度で回転する。また、第2歯車22bは、第1歯車22aより大径であり、第1歯車22aに噛合するように第1歯車軸23aに同軸に固定されている。これにより、第2歯車22bは、第1歯車22aの角速度に対して所定の第1減速比(<1)を乗じた角速度に減速されて回転する。
【0023】
また、第3歯車22cが、第1歯車軸23aに同軸に固定され、第2歯車22bと同一の角速度で回転する。そして、第4歯車22dは、第3歯車22cより大径であり、第3歯車22cに噛合するように第2歯車軸23bに同軸に固定されている。これにより、第4歯車22dは、第3歯車22cの回転に対して所定の第2減速比(<1)を乗じた各速度に減速されて回転する。
【0024】
そして、第1分割棒体2Aの他端側、言い換えれば、第1パイプ2aの他端側が、パイプ挿入穴10bから連結筺体10内に挿入されて、第2歯車軸23bに固定されている。第2歯車軸23bに固定された第1分割棒体2Aは、サーボモータ15の駆動に連動して、モータ軸15Bの角速度に対し、第1減速比と第2減速比を乗じた角速度に減速されて第2歯車軸23bの軸まわりに回転する。
【0025】
また、第2分割棒体2Bの一端が、パイプ挿入穴10bと反対側の円筒部10Aの外周面に固定されている。このように、第1分割棒体2Aと第2分割棒体2Bとが、連結筺体10に支持されたサーボモータ15及び動力伝達手段20を介して連結されている。ここで、第1分割棒体2Aの一端を棒体2の一端とする。つまり、棒体2がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に連結筺体10に配置されている。また、サーボモータ15のトルクによって、棒体2の一端側が、円筒部10Aの周方向(所定方向)に回動するようになっている。
【0026】
また、診断音発生用部材7及び付勢ばね8は、連結筺体10の配置基準壁10Cに直交する方向に第1パイプ2aの一端側から突出している。そして、診断音発生用部材7は、配置基準壁10Cが任意の平面に押しあてられたときに、この平面を所定の押圧力で押し付けるように付勢ばね8に付勢されるようになっている。
また、集音マイク25は、第2パイプ2bの外周面の診断音発生用部材7近傍の部位に取り付けられている。
【0027】
演算制御装置40は、図7に示されるように、集音マイク25が出力したアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換するA/D変換器41と、CPU42と、デジタル音声信号の周波数分析、スピーカ26による音声報知やLED27の発光制御、及びサーボモータ15の駆動制御などをCPU42に行わせるためのプログラムが書き込まれたROM43と、CPU42の演算処理時にワーキングスペースに使用されるRAM44と、を備えている。
【0028】
ここで、剥離診断装置1は、図9に示されるように、建築物60Aの目地62bを有する壁表層部62Aの表面に診断音発生用部材7を摺動させて、壁表層部62Aの建築物本体61Aからの剥離有無を診断したり、図11に示されるように、建築物60Bの目地のないおおよそ平坦な壁表層部62Bの表面に診断音発生用部材7を摺動させて、壁表層部62Bの建築物本体61Bからの剥離有無を診断したりするものである。
【0029】
壁表層部62Aは、建築物本体61Aに貼り付けられた複数のタイル62aにより構成されている。そして、目地62bが隣接するタイル62aの間に形成され、壁表層部62Aの表面に凹凸を有している。
また、壁表層部62Bは、モルタルなどにより形成され、その表面がおおよそ平坦になるように構成されている。
【0030】
そして、ROM43に格納されるプログラムは、表面に目地62bを有する壁表層部62Aの剥離有無の診断をCPU42に行わせるための目地有り用診断プログラム、及び表面がおおよそ平坦に構成される壁表層部62Bの剥離有無の診断をCPU42に行わせるための目地無し用診断プログラムを有する。
【0031】
また、演算制御装置40は、図1〜図3に示されるように、第2分割棒体2Bの他端に固定された中空の直方体形状の収納体部50に収納されている。
また、把持部51が、収納体部50から第2分割棒体2Bと反対側に突出するように収納体部50に固定されている。
【0032】
また、演算制御装置40と、パソコン70との通信を行うための出力端子53が、収納体部50の外壁に露出するように設けられている。そして、パソコン70を、出力端子53を利用して演算制御装置40に接続することで、演算制御装置40とパソコン70との間でデータの送受を行うことが可能になる。
【0033】
また、サーボモータ15の駆動スイッチ54が、図1、図2及び図7に示されるように、収納体部50の外壁に露出するように設けられている。さらに、演算制御装置40のCPU42に、目地有り用診断プログラムに従って壁表層部62Aの剥離有無の診断を行せるか、目地無し用診断プログラムに従って壁表層部62Bの剥離有無の診断を行わせるかを作業者が選択するための選択スイッチ55が、収納体部50の外壁に露出するように設けられている。また、スピーカ26、及びLED27が収納体部50の外壁に露出するように設けられている。
【0034】
また、バッテリ28が収納体部50内に配設されている。そして、バッテリ28は、図7に示されるように、スピーカ26、LED27、選択スイッチ55、駆動スイッチ54、サーボモータ15、及び演算制御装置40に電力を供給している。
そして、サーボモータ15、集音マイク25、スピーカ26、LED27、選択スイッチ55、及び駆動スイッチ54が、演算制御装置40に接続されている。
なお、図1及び図2に示されるように、バッテリ28の電源供給、及び演算制御装置40と通信を行うための接続用端子56が収納体部50に設けられており、集音マイク25は、ケーブル29aを介して接続用端子56に接続されている。
【0035】
また、バッテリ28の電源をサーボモータ15に供給したり、演算制御装置40とサーボモータ15との間の通信を行ったりするためのケーブル29bの一端側が、サーボモータ15に接続されている。そして、ケーブル29bは、図6に示されるように、円筒部10A及び第2分割棒体2Bの内部に引き回されている。そして、図示しないが、ケーブル29bの他端は、収納体部50内まで延長されている。
【0036】
そして、選択スイッチ55は、電圧のON/OFFを切り替え可能に構成された図示しない電圧出力端子を有し、選択スイッチ55の切り替え操作に応じて、電圧出力端子のON/OFFが切り替わるようになっている。そして、この電圧出力端子が、演算制御装置40に接続され、CPU42は、電圧出力端子のON/OFFを認識可能になっている。また、CPU42は、電圧出力端子の出力がONであると判断すると、目地有り用診断プログラムに従って、壁表層部62Aの剥離有無の診断を行い、電圧出力端子の出力がOFFであると判断すると、目地無し用診断プログラムに従って、壁表層部62Bの剥離有無の診断を行う。
【0037】
また、演算制御装置40は、サーボモータ15を駆動させる駆動スイッチ54がONとなるように操作されたと判断すると、モータ軸15Bを所定の角速度でかつ所定の角度範囲を繰り返し回動させるようにサーボモータ15を制御する。
また、演算制御装置40は、スピーカ26の報知制御、及びLED27の発光制御が可能となっている。
【0038】
以下、目地を有する壁表層部62Aの剥離有無を、剥離診断装置1を用いて診断する作業について説明する。
まず、ROM43には、壁表層部62Aの剥離有無の判定基準となる以下に説明する第1剥離判定値が予め格納されている。
建築物本体61Aと同じ材料の下地(図示せず)にタイル62aと同じタイル(図示せず)を貼り付け、タイル62aが建築物本体61Aに健全に貼られた壁表層部62Aと同じ条件の壁表層部を作り出すことは可能である。以下、壁表層部62Aと同じ条件に作り出された壁表層部を第1判定値測定用壁表層部とし、これに使用されるタイルを試験用タイルとする。
【0039】
例えば、作業者は、工場等で第1判定値測定用壁表層部を構築し、診断音発生用部材7が、試験用タイルの表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度[W/Hz]を以下のように取得する。このとき、取得されるパワースペクトル密度は、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62Aを摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度に相当する。以下、診断音発生用部材7が、試験用タイルの表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を第1基準パワースペクトル密度とする。
【0040】
まず、第1基準パワースペクトル密度を取得するために、まず、作業者は、パソコン70を、図1に示されるように、出力端子53を利用して演算制御装置40に接続し、演算制御装置40のスペクトル解析の結果をパソコン70に取り込み可能にする。
なお、選択スイッチ55のON/OFFの操作に関わらず、CPU42は、パソコン70の接続を認識すると、集音マイク25から入力される音声信号をスペクトル解析した結果を微小時間間隔でパソコン70に送信するように制御する。
【0041】
そして、作業者は、第1分割棒体2A及び第2分割棒体2Bを所望の長さに調整し、把持部51を持って、診断音発生用部材7を第1判定値測定用壁表層部に向け、連結筺体10の配置基準壁10Cを、第1判定値測定用壁表層部の表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。このとき、診断音発生用部材7は、付勢ばね8の付勢力により所定の押圧力で試験用タイルの表面を押し付けるようになっている。また、第1分割棒体2Aの回動方向は、試験用タイルの表面に沿って移動する方向に一致する。
【0042】
そして、作業員は、サーボモータ15を駆動させる。これにより、診断音発生用部材7は、第1判定値測定用壁表層部の表面を摺動しつつ、所定の角度範囲を往復するように第2歯車軸23bの軸まわりに回動する。このとき、演算制御装置40は、図1において実線で示した第1分割棒体2Aと一点鎖線で示した第1分割棒体2Aの間を往復移動させるように、サーボモータ15の駆動を制御する。これにより発生する摺動音が、集音マイク25に入力され、集音マイク25が出力するアナログ音声信号は、A/D変換器41でデジタル音声信号に変換される。
【0043】
そして、作業者は、診断音発生用部材7が、摺動音のパワースペクトル密度をパソコン70に取得させる。このとき、演算制御装置40によるスペクトル分析は、下限周波数fL(=0)[Hz]、上限周波数fH=(12000Hz)[Hz]の範囲で行っている。なお、上限周波数fHに設定した12000[Hz]は、おおよそ人の可聴領域の上限値である。また、演算制御装置40は、例えば、診断音発生用部材7が1cm程度移動する間に、微小時間間隔で複数回のパワースペクトル密度を演算するようになっている。
【0044】
次いで、作業者は、診断音発生用部材7が、試験用タイルの間の目地を通過する際、試験用タイルに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度をパソコン70に取得させる。
ここで、診断音発生用部材7が目地を通過する際に試験用タイルに当たったときの音量は、試験用タイルの表面を摺動しているときより大きくなるので、このときのスペクトル密度の最大値は、診断音発生用部材7が試験用タイルの表面を摺動しているときのものに比べて大きく増大する。
【0045】
パソコン70のCPU(図示せず)は、パワースペクトル密度の最大値が大きく増大する方向に変化したときのパワースペクトル密度を、診断音発生用部材7が目地を通過する際に試験用タイルに当たって発生した音のパワースペクトル密度として認識して、当該パワースペクトル密度を取得する制御を行うようになっている。
【0046】
このとき取得されるパワースペクトル密度は、図12に示されるように最大値P0をとる。前述したように、このパワースペクトル密度は、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62Aを摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度に相当する。そして、他の試験用タイルに診断音発生用部材7が当たって発生する音のパワースペクトル密度も、おおよそ図12に示される波形となるが、観測されるパワースペクトル密度の最大値は、ある程度のばらつきを生じる。作業者は、このばらつき量を考慮し、診断音発生用部材7が健全な任意のタイル62aに当たって発生する音のパワースペクトル密度の想定される最大値よりもやや大きくなる値を第1剥離判定値とし、予め、第1剥離判定値を目地有り用診断プログラムに組み込んでROM43に格納する。
【0047】
次いで、作業者が建築物60Aのある場所まで赴き、壁表層部62Aの剥離有無を行う際の手順について説明する。
作業者は、選択スイッチ55の出力をONにし、演算制御装置40に目地有り用診断プログラムに従って壁表層部62Aの剥離有無の判定を行わせるように設定する。
【0048】
次いで、作業員は、図8に示されるように、剥離診断装置1の把持部51を持って診断音発生用部材7を壁表層部62Aに向け、連結筺体(図示せず)の配置基準壁(図示せず)を、壁表層部62Aの表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。このとき、診断音発生用部材7は、付勢ばね8の付勢力により所定の押圧力でタイル62aの表面を押し付けるようになっている。
そして、作業員は、サーボモータ15を駆動させる。これにより、診断音発生用部材7は壁表層部62Aの表面を摺動しつつ、所定の角度範囲を往復するように第2歯車軸23bの軸まわりに回動する。このとき発生する摺動音が、集音マイク25に入力され、集音マイク25が出力するアナログ音声信号は、A/D変換器41でデジタル音声信号に変換される。
【0049】
以下、目地有り用診断プログラムに基づいた演算制御装置40の制御動作について図13のフロー図を参照しつつ説明する。
なお、説明の便宜上、図13では、ステップ101〜ステップ103をS101〜S103と記載する。
【0050】
ステップ101で、CPU42は、A/D変換器41から出力されるデジタル音声信号をスペクトル解析し、スペクトル解析により得られたパワースペクトル密度のデータをRAM44に格納する。なお、前回の取得したパワースペクトル密度のデータが既にRAM44に格納されている場合には、上書きして格納する。
【0051】
ここで、診断音発生用部材7が、図10に示されるように、建築物本体61Aから一部が剥離し、建築物本体61Aとの間に隙間64を有するタイル62aに当たったときに発生する音のパワースペクトル密度の例を図14に示す。
以下、建築物本体61Aから一部が剥離し、建築物本体61Aとの間に隙間64を有するタイル62aを不健全なタイル62aとする。
【0052】
診断音発生用部材7が目地62bを通過する際に、不健全なタイル62aに当接して発生する音をスペクトル解析して得たパワースペクトル密度は、不健全なタイル62aと建築物本体61Aの間の隙間64の深さに応じて変化する周波数f0で最大ピーク値Pm1をとる。タイル62aが建築物本体61Aにしっかり固定されていないため、診断音発生用部材7が不健全なタイル62aの表面を通過するときに振動するタイル62aの振動周波数が隙間64の深さに応じて変化する。これに起因して、最大ピーク値Pm1が観測される周波数f0も変化するものと考えられる。
そして、最大ピーク値Pm1は、第1剥離判定値や、健全なタイル62aの表面が摺動したときに発生する音をスペクトル解析して得られるパワースペクトル密度の最大値より十分に大きな値となる。
【0053】
そこで、ステップ102で、CPU42は、RAM44に格納されたパワースペクトル密度の最大値が、第1剥離判定値以上か否かを判断する。
ステップ102で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第1剥離判定値以上でないと判断すると、タイル62aは剥離していないものと判断し、ステップ101に戻る。
ステップ102で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第1剥離判定値以上であると判断すると、タイル62aは剥離しているものと判断し、スピーカ26からアラーム音を流し、LED27を点灯させて、タイル62aの剥離異常を作業員に知らせる(ステップ103)。これにより、作業員は、アラーム音やLED27が点灯したときに、診断音発生用部材7が摺動していたタイル62aの部位が剥離していることを認識し、当該箇所を確認し、確認結果に応じた対処をとる。
【0054】
次いで、壁表層部62Bがモルタルで形成され、壁表層部62Bの表面がおおよそ平坦である場合に、壁表層部62Bの剥離の有無を診断する方法について説明する。
【0055】
まず、ROM43には、壁表層部62Bの剥離有無の判定基準となる以下に説明する第2剥離判定値が予め格納されている。
建築物本体61Bと同じ材料の下地の表面に壁表層部62Bと同じ厚みのモルタルを固め、モルタルが建築物本体61Bから剥離されていない壁表層部62Bと同じ条件の壁表層部(図示せず)を作り出すことは可能である。以下、壁表層部62Bと同じ条件に作り出された壁表層部を第2判定値測定用壁表層部とする。
【0056】
例えば、作業者は、工場等で第2判定値測定用壁表層部を構築し、診断音発生用部材7が、第2判定測定用壁表層部の表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を以下のように予め取得する。このとき取得されるパワースペクトル密度は、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62Bを摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度に相当する。以下、診断音発生用部材7が、試験用タイルの表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を第2基準パワースペクトル密度とする。
【0057】
第2基準パワースペクトル密度を取得するために、まず、作業差は、パソコン70を、図1に示されるように、出力端子53を利用して演算制御装置40に接続し、演算制御装置40のスペクトル解析の結果をパソコン70に取り込み可能にする。
【0058】
また、作業者は、診断音発生用部材7を第2判定値測定用壁表層部に向け、連結筺体(図示せず)の配置基準壁(図示せず)を、第2判定値測定用壁表層部の表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。これにより、診断音発生用部材7は、付勢ばね8の弾性力により所定の押圧力で第2判定値測定用壁表層部の表面に押し付けられる。
【0059】
そして、作業者は、サーボモータ15を駆動させ、診断音発生用部材7が、第2判定値測定用壁表層部の表面を摺動するときに発生する音のパワースペクトル密度を取得する。なお、剥離有無の診断対象となる第2判定値測定用壁表層部の場所を代えてパワースペクトル密度を取得したり、同じ診断対象の壁表層部62Bでもパワースペクトル密度を再取得したりした場合、パワースペクトル密度の最大値はおおよそ同じになるものの、ある程度のばらつきを生じる。作業者は、このばらつき量を考慮し、診断音発生用部材7を健全な壁表層部62Bの診断領域の任意の場所を摺動させて得たパワースペクトル密度の想定される最大値よりもやや大きな値を第2剥離判定値とし、予め、第2剥離判定値を目地無し用診断プログラムに組み込んでROM43に格納する。
【0060】
次いで、作業者が建築物60Bのある場所まで赴き、壁表層部62Bの剥離有無を行う際の手順について説明する。
作業者は、選択スイッチ55の出力をOFFにし、演算制御装置40に目地無し用診断プログラムに基づいて、壁表層部62Bの剥離有無の判定を行わせるように設定する。
【0061】
次いで、作業員は、剥離診断装置1の把持部(図示せず)を持ち、図11に示されるように、診断音発生用部材7を壁表層部62Bに向け、連結筺体(図示せず)の配置基準壁(図示せず)を、壁表層部62Bの表面におしあてるように剥離診断装置1を配置する。そして、作業員は、サーボモータ15を駆動させて診断音発生用部材7を壁表層部62Bの表面に沿って摺動させる。これにより、診断音発生用部材7が所定の角度範囲を往復するように第2歯車軸23bの軸まわりに回動する。このとき発生する摺動音が、集音マイク25に入力され、集音マイク25が出力するアナログ音声信号は、A/D変換器41でデジタル音声信号に変換される。
【0062】
以下、目地無し用診断プログラムに基づいた演算制御装置40の制御動作について図15のフロー図を参照しつつ説明する。
なお、説明の便宜上、図15ではステップ201〜ステップ203をS201〜S203と記載する。
ステップ201で、CPU42は、現在A/D変換器41が出力しているデジタル音声信号をスペクトル解析し、スペクトル解析により得られたパワースペクトル密度データをRAM44に格納する。
【0063】
ここで、詳細には図示しないが、診断音発生用部材7が、建築物本体61Bから剥離している壁表層部62Bの表面を摺動したときに発生する音のパワースペクトル密度は、壁表層部62Bと建築物本体61Bの隙間の大きさに応じて変化する共振周波数で最大ピーク値Pm2をとる。このときの最大ピーク値Pm2は、第2剥離判定値より十分に大きな値となる。
【0064】
そこで、ステップ202で、CPU42は、格納されたパワースペクトル密度の最大値が、第2剥離判定値以上か否かを判断する。
ステップ202で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第2剥離判定値以上でないと判断すると、壁表層部62Bは健全な状態にあると判断し、ステップ201に戻る。
ステップ202で、CPU42は、パワースペクトル密度の最大値が、第2剥離判定値以上であると判断すると、壁表層部62Bが建築物本体61Aから剥離していると判断し、スピーカ26からアラーム音を流し、LED27を点灯させて、壁表層部62Bの剥離異常を作業員に知らせる(ステップ203)。
【0065】
この実施の形態によれば、第1分割棒体2Aの一端側を、言い換えれば、棒体2の一端側を回動させるサーボモータ15を有しているので、作業者は、壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を行う際、剥離診断装置1を所定の姿勢に保持するだけで、診断音発生用部材7が、壁表層部62A,62Bの表面を自動的に摺動する。そして、作業者は、診断音発生用部材7が、所定の角度範囲を移動するごとに、診断音発生用部材7の位置を順次ずらすという動作をくり返すだけで、診断対象の壁表層部62A,62Bの表面の全エリアの診断することができ、壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を行う際の作業者の負担を軽減できる。
【0066】
また、演算制御装置40が、予め格納された壁表層部62A,62Bの剥離有無の判断基準となる剥離判定値を、剥離有無の診断時に演算したパワースペクトル密度の最大値と比較して壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を機械的に行っている。従って、壁表層部62A,62Bが剥離していることを見逃したりすることがなくなる。
【0067】
また、第1分割棒体2A、及び第2分割棒体2Bが伸縮自在に、言い換えれば、棒体2が伸縮自在に構成されているので、作業者から診断対象の壁表層部62A,62Bまでの距離に応じて棒体2の長さを調整すれば、作業員は窮屈な姿勢になることなく剥離診断装置1を把持して壁表層部62A,62Bの剥離有無の診断を実施できる。
【0068】
なお、この発明では、集音マイク25、演算制御装置40を設けるものとして説明したが、作業者が、診断音発生用部材7が健全な壁表層部62A,62Bの表面を摺動するときとそうでないときの摺動音を聞き分けられれば、集音マイク25を省略でき、また、演算制御装置40のスペクトル解析機能も省略できる。さらに、付勢ばね8を介さずに、診断音発生用部材7を直接棒体2の一端側に取り付けても良い。
また、棒体2は第1分割棒体2A及び第2分割棒体2Bからなるものとして説明したが、第2分割棒体2Bを省略したり、分割棒体を追加して設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 壁表層部の剥離診断装置、2 棒体、7 診断音発生用部材、10 連結筺体、15 サーボモータ(動力発生手段)、20 動力伝達手段、60A,60B 建築物、61A,61B 建築物本体、62A,62B 壁表層部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒体と、
上記棒体の一端に取り付けられた診断音発生用部材と、を備え、
上記診断音発生用部材を建築物の壁表層部の表面を摺動させて上記壁表層部の建築物本体からの剥離有無を診断する壁表層部の診断装置であって、
上記棒体がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に配置される連結筺体と、
上記連結筺体に取り付けられ、上記棒体の一端側を上記所定方向に移動させるトルクを発生する動力発生手段と、
上記トルクを上記棒体に伝達する動力伝達手段と、を備えていることを特徴とする壁表層部の剥離診断装置。
【請求項2】
上記診断音発生用部材が上記壁表層部の表面を摺動する際に発生する摺動音を電気的な音声信号に変換して出力する集音マイクと、
上記壁表層部の剥離有無の判定基準となる剥離判定値が予め格納され、上記音声信号をスペクトル解析して得られたパワースペクトル密度の最大値を上記剥離判定値と比較して上記壁表層部の剥離有無を判断する演算制御装置と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の壁表層部の剥離診断装置。
【請求項3】
上記棒体は伸縮自在に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の壁表層部の剥離診断装置。
【請求項1】
棒体と、
上記棒体の一端に取り付けられた診断音発生用部材と、を備え、
上記診断音発生用部材を建築物の壁表層部の表面を摺動させて上記壁表層部の建築物本体からの剥離有無を診断する壁表層部の診断装置であって、
上記棒体がその一端側を延出させて、かつ、一端側を所定方向に移動可能に配置される連結筺体と、
上記連結筺体に取り付けられ、上記棒体の一端側を上記所定方向に移動させるトルクを発生する動力発生手段と、
上記トルクを上記棒体に伝達する動力伝達手段と、を備えていることを特徴とする壁表層部の剥離診断装置。
【請求項2】
上記診断音発生用部材が上記壁表層部の表面を摺動する際に発生する摺動音を電気的な音声信号に変換して出力する集音マイクと、
上記壁表層部の剥離有無の判定基準となる剥離判定値が予め格納され、上記音声信号をスペクトル解析して得られたパワースペクトル密度の最大値を上記剥離判定値と比較して上記壁表層部の剥離有無を判断する演算制御装置と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の壁表層部の剥離診断装置。
【請求項3】
上記棒体は伸縮自在に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の壁表層部の剥離診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−243404(P2010−243404A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94173(P2009−94173)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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