説明

壁面への化粧シートの貼り合わせ方法

【課題】一度剥がしたものも再び貼り合わせることが容易となる、貼り替えが容易な壁面への化粧シートの貼り合わせ方法を提供すること。
【解決手段】壁面にエンボスを施し、化粧シート裏面に前記エンボスに嵌合可能となるエンボスを施し、前記化粧シートを適宜の大きさに切断し、前記壁面のエンボスに前記化粧シート裏面を接着剤を使用しないで貼り合わせてなること、前記嵌合可能となるエンボスの孔底部の直径と前記エンボスの孔同士の間隔とが50〜100μmで略同一であり、前記エンボスの孔底部の直径が前記エンボスの孔の入口の直径より2〜60μm広いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、店舗、鉄道車両、バスなどの内装、外装の壁面などに用いる化粧シートに関し、特には、用意に貼り合わせ、剥がし、貼り替えの可能な化粧シートの貼り合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内または屋外における壁面への意匠性の付与は、その壁面の材質にもよるが、何らかの絵柄模様を表面に印刷した化粧シートを接着剤で貼り合わせて行われる。
この壁面の模様替えを行う場合は、溶剤または物理的剥離によって壁面に貼り合せた古い化粧シートを除去し、壁面及び/又は新しい化粧シート裏面に接着剤を塗布し、該新しい化粧シートを貼り合わせていた。その際、絵柄シートの直交出し等の位置あわせの手間などがかかっていた。また、基材が紙からなる場合、貼り合わせは接着剤のほかにも粘着シールなどで行う場合もあるが、いずれにしても一度貼ったら剥す時に破れたりシワが入ったりするなどして、位置あわせが困難となるという問題点もあった。
【特許文献1】特開平6−341213号公報
【特許文献2】特公平8−22578号公報
【特許文献3】特開2006−77409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、一度剥がしたものも再び貼り合わせることが容易となる、貼り替えが容易な壁面への化粧シートの貼り合わせ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は壁面にエンボスを施し、化粧シート裏面に前記エンボスに嵌合可能となるエンボスを施し、前記化粧シートを適宜の大きさに切断し、前記壁面のエンボスに前記化粧シート裏面を接着剤を使用しないで貼り合わせてなることを特徴とする、壁面への化粧シートの貼り合わせ方法である。
【0005】
またその請求項2記載の発明は、前記嵌合可能となるエンボスの孔底部の直径と前記エンボスの孔同士の間隔とが50〜100μmで略同一であり、前記エンボスの孔底部の直径が前記エンボスの孔の入口の直径より2〜60μm広いことを特徴とする、請求項1記載の壁面への化粧シートの貼り合わせ方法である。
【0006】
またその請求項3記載の発明は、前記エンボスを格子状に間隔を空けて設けるものとし、前記格子状の垂直/水平方向を壁面の垂直/水平方向と合わせ、かつ化粧シートの裏面に設けるエンボスの垂直/水平方向を化粧シート表面の絵柄模様により壁面へ設ける際の垂直/水平方向と合わせてなることを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の壁面への化粧シートの貼り合わせ方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明はその請求項1記載の発明により、壁紙の簡易的な貼り替えで、接着剤の塗布工程を省く事が出来るという作用効果を奏する。
【0008】
またその請求項2記載の発明により、より強化な貼り合わせが可能となるという作用効果を奏する。
【0009】
またその請求項3の発明により、貼り合わせ時に垂直/水平方向を正確に合わせることが可能となり、直交出しの工程を省くことが出来るため、施工がさらに容易なものとなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の一実施例に用いるエンボス版の断面の形状を示す。エンボスによる凹凸が互い違いになるように孔の直径、孔の間隔、孔の深さを略同一とするように設ける。このようにしたエンボス版を化粧シート裏面と壁面へ同様に用いることで、これらのエンボス凹凸がそれぞれに設けられ、貼り合わせが可能となる。
【0011】
またさらに図1に示すように、孔の底部が広く、突起部の表面部が広くなるように孔の側面を逆テーパー状とすることで、より強固な貼り合わせが可能となる。エンボス版をこのような形状とするには、特に限定しないが、例えば、電気鍍金法によるクロムメッキの特性である、突起部への電流密度集中効果を利用し、パターン化したエッチング突起部へのクロムメッキ集中による膨らみを形成させることで可能となる。
【0012】
本発明に用いる化粧シートとしては、通常の化粧シートが使用可能であり特に限定するものではないが、裏面にエンボスが設けられる化粧シートの基材としては、壁面への隠蔽性も付与した着色熱可塑性樹脂シートが好適である。
【0013】
前記着色熱可塑性樹脂シートへのエンボスの付与方法としては、着色熱可塑性樹脂シートをシート状に形成した後に、エンボス版に加熱押圧してエンボスを付与するアフターエンボス方法が挙げられるが、シートの成形と同時にエンボスを付与するルーダー方式が好適である。ルーダー方式により、通常のアフターエンボス方法では入りきらない空間に樹脂を流し込むことが可能となり、流し込む樹脂の粘性を活かして硬化したエンボスシート表面に図1に示すような形状を形成することが容易に可能となる。
【0014】
本発明で用いるエンボス版としては、特に限定するものではないが、ロール状のエンボス版に流れ方向に対して垂直方向、平行方向に格子状に等間隔で孔を設けるのが好適である。これを用いて長尺のシート状物に成形し、エンボス付与することでエンボスを垂直/水平方向に合わせた格子状に等間隔に設けることが容易に可能となる。
【実施例1】
【0015】
鉄製円筒形状をした冷却式中空ロールに銅メッキを行い、電気鍍金及び砥石研磨法を使用し、その表面をRa0.04μm±0.02前後に仕上げた後、表面に膜厚2〜10μmの感光性皮膜または、樹脂を均一に塗布する。次に、写真製版法およびレーザービーム法を用い、パターン化したレジストを形成した。この際、格子状に垂直/水平方向に等間隔にパターン化させた。
【0016】
前記パターン化したレジストの表面にエッチング法にて昇華処理を行い、加工を行なった。この際、電気鍍金法によるクロムメッキの特性である、突起部への電流密度集中効果を利用し、パターン化したエッチング突起部へのクロムメッキ集中による膨らみを形成させた。
【0017】
このエンボス版を用いて、ルーダー方式によるエンボスを、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートの裏面に行い、その後、表面側に絵柄模様を印刷、表面側の透明樹脂層として80μm程度のポリプロピレン樹脂層を塗工により設けて化粧シートとした。
【0018】
一方、ルーダー方式によるエンボスを、厚み50μmポリエチレンテレフタレート樹脂シートに行い、このエンボスを設けた側を表面とし、設けなかった側を壁面に貼り合せた。その後、このエンボスを設けた壁面側表面と前記化粧シートの裏面側とを、接着剤を使用せずに貼り合せた。この貼り合わせは容易に着脱可能なものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の壁面への化粧シートの貼り合わせ方法により、部屋の一部または壁全体の意匠を容易に着脱可能で、ユーザーの好みに合ったレイアウトに出来るまた、店舗、鉄道車両、バスなどの内装、外装に粘着するタックシートの代替となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例に用いる化粧シート裏面に、エンボス版でエンボスを設ける際の断面の形状を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面にエンボスを施し、化粧シート裏面に前記エンボスに嵌合可能となるエンボスを施し、前記化粧シートを適宜の大きさに切断し、前記壁面のエンボスに前記化粧シート裏面を接着剤を使用しないで貼り合わせてなることを特徴とする、壁面への化粧シートの貼り合わせ方法。
【請求項2】
前記嵌合可能となるエンボスの孔底部の直径と前記エンボスの孔同士の間隔とが50〜100μmで略同一であり、前記エンボスの孔底部の直径が前記エンボスの孔の入口の直径より2〜60μm広いことを特徴とする、請求項1記載の壁面への化粧シートの貼り合わせ方法。
【請求項3】
前記エンボスを格子状に間隔を空けて設けるものとし、前記格子状の垂直/水平方向を壁面の垂直/水平方向と合わせ、かつ化粧シートの裏面に設けるエンボスの垂直/水平方向を化粧シート表面の絵柄模様により壁面へ設ける際の垂直/水平方向と合わせてなることを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の壁面への化粧シートの貼り合わせ方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−1683(P2010−1683A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162636(P2008−162636)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】