壁面劣化診断システム及び診断方法
【課題】簡便なシステム構成によって、高い精度で建物壁面の診断を行うことができ、診断結果処理のための労務負担や時間を大幅に低減することが可能壁面劣化診断システムを提供する。
【解決手段】本発明の壁面劣化診断システムは、ターゲットを本体部に備え、建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報収集部と、前記診断基礎情報収集部で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成部とを有する診断装置100と、前記ターゲットの自動追尾を行い、前記ターゲットの位置情報を取得するトータルステーション300と、前記診断装置によって生成された判定情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけて診断情報データベースとして記憶するパーソナルコンピュータ(200、400)と、からなることを特徴とする。
【解決手段】本発明の壁面劣化診断システムは、ターゲットを本体部に備え、建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報収集部と、前記診断基礎情報収集部で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成部とを有する診断装置100と、前記ターゲットの自動追尾を行い、前記ターゲットの位置情報を取得するトータルステーション300と、前記診断装置によって生成された判定情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけて診断情報データベースとして記憶するパーソナルコンピュータ(200、400)と、からなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物壁面におけるタイルなどの状態の診断・記録を行い、当該診断・記録の結果に応じて補修を行うために用いられる壁面劣化診断システム及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の老朽化に伴い、当該建物の外壁に用いられているタイルなどが剥離・落下し、通行人に危害を加えるような事態を避けるために、建物壁面のタイルの状態の診断を行い、必要に応じて補修を行うことが求められている。このような診断・補修作業に用いられる診断装置としては、例えば、特許文献1(特開2007−309827号公報)に開示されているようなものが知られている。この特許文献1には、タイル張り付け面の剥離状態を前記タイル張り付け面の打撃音に基づき診断する装置であって、前記タイル張り付け面の適宜な部分についての打撃音を基準信号として取得する手段と、前記取得した基準信号に基づきマザーウェーブレットを作成する手段と、前記タイル張り付け面の診断対象部分についての打撃音を測定信号として取得する手段と、前記取得した測定信号に対して、前記作成したマザーウェーブレットを用いてウェーブレット変換することにより、変換測定信号を生成する手段と、前記変換測定信号について時間− 周波数領域における音圧分布
に基づき剥離の有無及び剥離が有る場合の剥離状態を判定する手段とを備えるタイル張り付け面の剥離診断装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−309827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1記載の診断装置を用いて建物壁面の診断を行う方法によれば、作業員が検査の対象となるタイル壁面をハンマー等で打撃し、その打撃音を作業員が聞き分ける従来の方法に比べて、高い精度で剥離の診断を行うことが可能となるものの、建物壁面の診断結果を処理するために多大な時間と労力を要する、という問題があった。
【0004】
より具体的には、特許文献1記載の診断装置を用いた方法で建物壁面の診断結果を処理するためには以下のような手順をとることとなる。まず、診断装置で診断した結果、異常と判定された壁面箇所について作業員がチョークやテープなどを使ってマーキングを行う。次に、このようなマーキング結果を現場において作業員が書類などに記録する。そして次に、作業員によって記録されたマーキング結果を、建物の設計図面データ(CADデータ)などにデジタル入力する作業を行い、最終的にこのデジタルデータに基づいて建物壁面の診断結果の報告書を作成する。このように、従来の方法では、建物壁面の診断報告書を作成するまでに、多大な時間と労力を要することとなり問題となっていた。
【0005】
なお、建物壁面の走査が可能なロボットなどを導入して、このようなロボットと壁面診断装置とを組み合わせて診断を行うことで、診断結果処理負担を低減することも考えられるが、このようなロボットを用いた方法では、多大なコストが必要となると共に、ロボットの設置負担などの労力も大きいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような問題、課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ターゲットを本体部に備え、建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報収集部と、前記診断基礎情報収集部で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成部とを有する診断装置と、前記ターゲットの自動追尾を行い、前記ターゲットの位置情報を取得するトータルステーションと、前記診
断装置によって生成された判定情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけて診断情報データベースとして記憶する情報処理装置と、からなることを特徴とする壁面劣化診断システムである。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記診断基礎情報収集部は壁面に打撃を加える打撃部と、壁面から集音を行う集音部とからなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記診断装置は、ひび割れ位置入力スイッチと、前記ひび割れ位置入力スイッチが押下されている間にひび割れ情報を生成するひび割れ情報生成部とを有し、前記情報処理装置は、前記診断装置によって生成されたひび割れ情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけてひび割れ情報データベースとして記憶することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記情報処理装置は、建物の設計データと前記診断情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記情報処理装置は、建物の設計データと前記ひび割れ情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る発明は、診断装置によって建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報取得工程と、前記診断基礎情報取得工程で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成工程と、前記診断装置の位置情報を取得する位置情報取得工程と、前記判定情報生成工程で生成された判定情報と、前記位置情報取得工程で取得された位置情報とを関連づけて診断情報データとして記憶する診断情報データ記憶工程と、からなることを特徴とする診断方法である。
【0012】
また、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の診断方法において、前記位置情報取得工程において前記診断装置の位置情報を取得するときにトータルステーションを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の壁面劣化診断システム及び診断方法によれば、大きなコスト負担が不要である簡便なシステム構成によって、高い精度で建物壁面の診断を行うことが可能となり、さらに建物壁面の診断結果を処理するための労務負担や時間を大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100の外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100のブロック構成の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション300の設置と基準位置の登録の様子を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる建物壁面診断の作業状況を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける位置座標の算出方法を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション側パーソナルコンピュータの処理フローの概略を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置側パーソナルコンピュータの処理フローの概略を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによって、ひび割れ位置情報を記録する際の作業状況を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置側パーソナルコンピュータの処理フローの概略を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる診断結果作成処理の概略を説明する図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【図14】本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。図1において、100は診断装置、200はこの診断装置100と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、300はトータルステーション、400はこのトータルステーション300と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータをそれぞれ示している。
【0016】
診断装置100としては、診断対象となる建物壁面に打撃を加える打撃部と、壁面から集音を行うマイクロフォンなどの集音部とからなる診断基礎情報収集部を有しており、この集音部で集音された打撃音によって当該打撃位置が正常であるか異常であるかに係る判定するものであり、基本的には従来の診断装置と同様の原理のもの(例えば、特開平9−257765号公報、特開平11−304773号公報などに開示されているもの)を用いることができる。
【0017】
また、トータルステーション300は、ターゲットを自動追尾して、このターゲットに対して光波を射出し、ターゲットで反射された光波を計測することによって、ターゲットとの間の距離、鉛直角度、水平角度を取得するものであり、例えば、ニコントリンブル社製トータルステーション5600ATSなどを用いることができる。このようなトータルステーション300は一般的に、外部の情報処理装置と接続可能なインターフェイスが設けられている。
【0018】
診断装置100及びトータルステーション300と通信可能に接続されるパーソナルコンピュータ200及びパーソナルコンピュータ400としては現在普及している汎用のものを用いることができる。診断装置100及びトータルステーション300とパーソナルコンピュータとの接続にはRS232Cなどの規格の通信を用いることが好適である。また、本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおいては、パーソナルコンピュータ200とパーソナルコンピュータ400との間で情報通信を行うことを想定しているが、このための通信の構築としては、パーソナルコンピュータで一般的に採用されているIEEE802.11b/g/nなどの通信規格を用いて、無線LANなどのアクセスポイントを介
する形で行うことが簡便である。
【0019】
次に、以上のような概略の本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置100についてより詳しく説明する。図2は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100の外観斜視図であり、図3は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100のブロック構成の概略を示す図である。図2及び図3において、110は本体部、111は底面部、115は主制御部(判定情報生成部、ひび割れ情報生成部)、120は診断基礎情報収集部、121は打撃部、122は集音部、123はA/D変換部、130は手持ち部、131は診断開始/終了入力スイッチ、132はひび割れ位置入力スイッチ、140は通信部、141は通信ケーブル、150はターゲットをそれぞれ示している。
【0020】
診断装置100は、端部の一端に診断基礎情報収集部120を有してなる本体部110と、この本体部110から枝分かれするようにして延出している手持ち部130とから概略構成されている。本体部110の診断基礎情報収集部120が設けられていない方の端部には、本体部110とパーソナルコンピュータ200とを接続する通信ケーブル141が配されるようになっている。
【0021】
このような診断装置100による建物壁面の診断を行う場合には、手持ち部130を把持しながら、被測定面である建物の壁面を、本体部110の底面部111で走査するようにして、診断を行う。手持ち部130には、建物壁面診断を行う際に操作される2つの入力用スイッチ−診断開始/終了入力スイッチ131及びひび割れ位置入力スイッチ132−が配されている。
【0022】
診断開始/終了入力スイッチ131は、診断装置100による建物壁面診断の開始又は終了の時に押下されるスイッチであり、この診断開始/終了入力スイッチ131の操作を契機として、主制御部115が診断処理を開始又は終了する。
【0023】
建物壁面のひび割れは、特別な診断装置等を用いることなく目視によって確認することが可能であるが、本実施形態に係る壁面劣化診断システムでは、この目視確認されたひび割れの位置情報をシステムに記録させるための機能が設けられており、この機能を有効とするために、手持ち部130に配されているひび割れ位置入力スイッチ132が用いられる。目視確認されたひび割れは、ひび割れ位置入力スイッチ132を押下することによって、壁面劣化診断システム側にデータ入力がされるようになっている。ひび割れ位置入力スイッチ132は、押下しているときのみオンとなるようなスイッチであり、このスイッチが押下されているとき、主制御部115はひび割れ位置情報を生成するようになっている。
【0024】
本体部110の先端部には、建物壁面の診断を行うための基礎情報を収集するための構成である診断基礎情報収集部120が設けられており、この診断基礎情報収集部120には、建物壁面に打撃を加える打撃部121(物理的構成については不図示)と、壁面から集音を行うマイクロフォンなどの集音部122(物理的構成については不図示)とが配されている。診断基礎情報収集部120で集音された打撃音はA/D変換部123でデジタルデータに変換されて、このデジタルデータに基づいて、建物壁面の打撃位置が正常であるか異常であるかに係る判定処理が実行される。
【0025】
また、本体部110先端の診断基礎情報収集部120近傍には、トータルステーション300が自動追尾するターゲット150が設けられている。本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおいては、このようなターゲット150がトータルステーション300によって自動追尾されることによって、建物壁面をスキャンしているときにおける、診断装置
100(診断基礎情報収集部120近傍)の位置をシステム側で把握することができるようになっている。
【0026】
主制御部115はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。主制御部115は、図3に図示されている主制御部115と接続される各構成と協働・動作する。また、主制御部115は、診断装置100ムにおける種々の制御処理は、主制御部115内のROMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムやデータに基づいて実行されるものである。
【0027】
なお、本実施形態においては、診断装置100の処理動作は、主制御部115と主制御部115上で実行されるプログラムによって実現されるものとしているが、診断装置100の処理動作はこれに限定されるものではなく、論理回路などのハードウエアのみで実現されるようにしてもよい。
【0028】
本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおける主制御部115の重要な処理動作としては、A/D変換部123でデジタルデータに変換された打撃音に基づいて、建物壁面の打撃位置が正常であるか異常であるかに係る判定処理を行うことである。そして、主制御部115におけるこのような判定処理の結果は、判定情報として生成されて、通信部140を介してパーソナルコンピュータ200に送信される。また、壁面劣化診断システムにおける主制御部115は、ひび割れ位置入力スイッチ132が押下されているときには、ひび割れ位置情報を生成するようになっている。この主制御部115で生成されたひび割れ位置情報は、通信部140を介してパーソナルコンピュータ200に送信される。
【0029】
次に、以上のように構成される本実施形態に係る壁面劣化診断システムによる建物壁面診断のための作業手順について、図4乃至図6により説明する。図4は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション300の設置と基準位置の登録の様子を説明する図であり、図5は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる建物壁面診断の作業状況を説明する図であり、図6は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける位置座標の算出方法を説明する図である。
【0030】
トータルステーション300は、診断対象壁面と平行な平面内をスキャンしやすい、診断対象壁面の側方に設置固定され、一つの診断対象壁面の全体が診断装置100によって走査されるまで位置変更は行わないようにする。このようにトータルステーション300が設置固定されると、次に、診断対象壁面の基準位置を登録する。基準位置を登録する際には、診断装置100の底面を壁面に押し当てた状態で行う。このような基準位置の登録に用いる点としては任意の点で構わないが、ここでは、診断対象壁面の左隅下の1点について登録を行っている様子を示している。基準位置の登録に任意の点を用いることができるのは、診断対象壁面の設計図面データが予め存在し、この設計図面データと登録基準位置とを重ね合わせることによって、以後、トータルステーション300で診断対象壁面上の絶対値を知ることが可能であるからである。
【0031】
以上のようにトータルステーション300を設置固定し、基準位置を登録した後は、図5に示すように、診断対象である建物壁面全体をくまなく走査する作業を実施する。このような作業中にトータルステーション300が、診断装置100に配されているターゲット150を自動追尾することによって、壁面劣化診断システムは診断装置100によって診断が行われている位置情報を確度高く把握することが可能となる。
【0032】
次に、本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける位置座標の算出方法の一例について図6を参照して説明する。以下の算出方法においては、図6に示すようにZX平面が壁面と重なるように(X,Y,Z)座標をとるようにしている。
【0033】
診断対象壁面における登録位置である既知の基準位置(X0,Z0)をトータルステーション300で測定したときの(距離、鉛直角度、水平角度)を(L0,θV0,θH0)とす
る。また、診断対象壁面上の任意のターゲット位置をトータルステーション300で測定したときの(距離、鉛直角度、水平角度)を(L,θV,θH)とする。また、診断対象壁面の高さ基準面とトータルステーション300の水平軸との間の距離をTHとする。また
、壁面は地面に対して垂直な面であるものと仮定する。また、図6では、診断対象壁面の左端に基準位置をとっているのでX0=0である。
【0034】
まず、ターゲット位置のZ座標の算出について図6(A)を参照して説明する。同図に示すように、Z座標はトータルステーション300の高さをTHとToffとの和として表すことができる。すなわち、
【0035】
【数1】
である。
【0036】
また、THはトータルステーション300で測定した距離L0、鉛直角度θV0、及び既知のZ0から、(2)式のように表すことができる。
【0037】
【数2】
また、トータルステーション300の水平軸からターゲット位置までの高さToffは、
(3)式で求めることができる。
【0038】
【数3】
(2)式及び(3)式を(1)式に代入することによって、ターゲット位置のZ座標値を(4)式で求めることができる。
【0039】
【数4】
次に、ターゲット位置のX座標の算出について図6(B)を参照して説明する。X座標値については、三角形ABCに余弦定理を適用し、X座標値と同値である辺BCの長さを求めることで算出する。
三角形ABCの辺ABは、(5)式により、
【0040】
【数5】
また、三角形ABCの辺CAは、(6)式により、
【0041】
【数6】
また、三角形ABCの角度BACは(θH―θH0)であるので、三角形ABCに余弦定理
を適用することで、ターゲット位置のX座標値を(7)式で求めることができる
【0042】
【数7】
次に、壁面劣化診断システムの建物壁面診断時における各パーソナルコンピュータの処理の一例について説明する。なお、壁面劣化診断システムにおける各パーソナルコンピュータの処理は以下の例に限られるものではない。例えば、以下の例では、診断装置100のパーソナルコンピュータ200に診断情報などのデータベースを記録するようにしているが、このような記録については、トータルステーション300側のパーソナルコンピュータ400に行わせるようにシステムを組むことも可能である。図7は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション300側のパーソナルコンピュータ400の処理フローの概略を示す図である。
【0043】
図7において、ステップS100で、トータルステーション300側パーソナルコンピュータ400における処理が開始されると、続いて、ステップS101に進み、トータルステーション300がターゲット150をロック中であるか否かが判定される。ステップS101の判定結果がYESであるときにはステップS102に進む。また、この判定結果がNOであるときにはステップS106に進み、ステップS106では、パーソナルコンピュータ200側に測定不能である旨を送信する。
【0044】
ステップS102では、トータルステーション300から、ターゲット150の位置測定情報(距離、鉛直角度、水平角度)を取得し、ステップS103で、取得された距離、鉛直角度、水平角度から直交座標系(X,Y,Z)位置情報を演算する。そして、ステップS104で、測定情報及び直交座標系位置情報をパーソナルコンピュータ200側に送信する。
【0045】
ステップS105では、診断の中止命令があるか否かが判定される。このステップS105における判定結果がNOであるときにはステップS101に戻りループし、判定結果がYESであるときにはステップS107に進み、処理を終了する。
【0046】
次に、壁面劣化診断システムの建物壁面診断時における診断装置100側のパーソナルコンピュータの処理の一例について説明する。図8は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理フローの概略を示す図である。まず、図8におけるフローチャートでは、診断装置100側において診断開始/終了入力スイッチ131の開始操作がなされたときの診断モードにおける処理の流れを説明する。
【0047】
図8において、ステップS200で、診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理が開始されると、続いて、ステップS201では、診断装置100から受信した判定情報(正常であるか異常であるかに係るデータ)を取得する。また、ステップS202では、トータルステーション300からの情報(測定情報及び直交座標系位置情報、測定不能情報)を受信する。
【0048】
ステップS203では、ステップS201で取得した判定情報及びトータルステーション300からのトータルステーション情報を関連づけてマージし、パーソナルコンピュータ200の記憶装置(不図示)に診断情報データベース510として記憶する。
【0049】
ステップS204では、診断開始/終了入力スイッチ131の終了操作があるか否かが判定される。このステップS204における判定結果がNOであるときにはステップS201に戻りループし、判定結果がYESであるときにはステップS205に進み、処理を終了する。
【0050】
次に、診断装置100でひび割れ位置入力スイッチ132が操作されたときのパーソナルコンピュータ200の処理について説明する。前記したようにひび割れ位置入力スイッチ132は目視確認されたひび割れの位置情報をシステムに記録させるときに操作する。図9は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによって、ひび割れ位置情報を記録する際の作業状況を説明する図である。図9に示すように、診断情報100を走査する作業者が、目視されるひび割れの位置情報をシステムに入力するときには、ひび割れ位置入力スイッチ132を押下しながら、ひび割れ箇所を診断情報100によってトレースする。
【0051】
次に、診断装置100側においてひび割れ位置入力スイッチ132の操作がなされたときのひび割れ位置入力モードにおけるパーソナルコンピュータ200の処理の流れを説明する。図10は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理フローの概略を示す図である。
【0052】
図10において、ステップS300で、診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理が開始されると、続いて、ステップS301では、トータルステーション300からの情報(測定情報及び直交座標系位置情報、測定不能情報)を受信する。
【0053】
ステップS302では、診断装置100で生成されたひび割れ情報及びトータルステーション300からのトータルステーション情報を関連づけてマージし、パーソナルコンピュータ200の記憶装置(不図示)にひび割れ情報データベース520として記憶する。
【0054】
ステップS303では、ひび割れ位置入力スイッチ132の操作があるか否かが判定される。このステップS303における判定結果がNOであるときにはステップS301に戻りループし、判定結果がYESであるときにはステップS304に進み、処理を終了する。
【0055】
以上のように、本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムでは、診断装置100を壁面に沿って走査するだけで、トータルステーションによる高い精度の位置情報を含む診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520を構築することが可能である。
【0056】
次に、以上のように壁面劣化診断システムによって取得された診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520の診断結果作成処理への応用について説明する。図11は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる診断結果作成処理の概略を説明する図である。図11において、500は建物設計データ(CADデータ)、510は診断情報データベース、520はひび割れ情報データベース、530は補修費用情報データベース、540は補修図面/補修費用データベースをそれぞれ示している。また、それぞれのデータ(データベース)からの吹き出し内には、それぞれのデータのイメージ図が描かれている。また、図11に示されるデータ(データベース)は、パーソナルコンピュータなどに記憶され処理されるものである。このときに用いられるパーソナルコン
ピュータは、診断装置100に接続されるパーソナルコンピュータ200であってもよいし、他のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0057】
建物設計データ(CADデータ)500は、診断対象となる建物が建設されたときの設計図データであり、この設計図データの壁面データに対して、壁面劣化診断システムで取得される位置情報を含む診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520が重ね合わされることによって、補修図面/補修費用データベース540を得ることができる。これに基づいて、補修用の図面をパーソナルコンピュータのディスプレイ(不図示)に表示したり、或いはパーソナルコンピュータから印刷出力したりすることができる。
【0058】
また、補修図面/補修費用データベース540で補修が必要となる壁面部を割り出し、さらに、壁面タイルなどの材料の一枚当たりの価格や、一枚当たり工賃などが入力された補修費用情報データベース530に基づいて、補修費用算出結果をパーソナルコンピュータのディスプレイ(不図示)に表示したり、或いはパーソナルコンピュータから印刷出力したりすることができる。
【0059】
本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで取得される、位置情報を含む診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520を用いることで、建物壁面の診断結果を処理するための労務負担や時間を大幅に低減することが可能となる。
【0060】
なお、これまでの説明では診断装置100の位置情報をシステム側が把握するために、トータルステーションを用いる方法について説明したが、当該位置情報を把握するために他の方法を用いることも可能である。このような他の方法としては、無線を用いる方法、GPSを用いる方法、バルカン(商標)を用いる方法或いは、トータルステーションを用いる方法も加えた任意の方法の組み合わせによる方法などを挙げることができる。
【0061】
以上、本発明の壁面劣化診断システム、診断方法によれば、大きなコスト負担が不要である簡便なシステム構成によって、高い精度で建物壁面の診断を行うことが可能となり、さらに建物壁面の診断結果を処理するための労務負担や時間を大幅に低減することが可能となる。
【0062】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図12乃至図14は本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【0063】
図12に示す他の実施の形態のシステム構成では、トータルステーション300として、パーソナルコンピュータに代わる演算装置、通信装置が内蔵されているものを用いている。このようなトータルステーション300を用いると、図1のシステム構成で用いていたパーソナルコンピュータ400を省略して、トータルステーション300から、トータルステーション取得情報等を直接的にパーソナルコンピュータ200に送信することが可能となり、先の図1に示す実施形態と同様の効果に加え、さらにシステム構成が簡便になるという効果も享受することが可能となる。
【0064】
一方、図13に示す他の実施の形態のシステム構成では、診断装置100として、パーソナルコンピュータに代わる演算装置、通信装置が内蔵されているものを用いている。このような診断装置100を用いると、図1のシステム構成で用いていたパーソナルコンピュータ200を省略して、診断装置100から、診断情報、ひび割れ情報等を直接的にパーソナルコンピュータ400に送信することが可能となり、先の図1に示す実施形態と同様の効果に加え、さらにシステム構成が簡便になるという効果も享受することが可能となる。
【0065】
図14に示す他の実施の形態のシステム構成では、診断装置100及びトータルステーション300として、パーソナルコンピュータに代わる演算装置、通信装置が内蔵されているものを用い、診断装置100で得られる診断情報、ひび割れ情報等及びトータルステーション300で取得されるトータルステーション取得情報等をパーソナルコンピュータ600に送信するようにしている。このような診断装置100及びトータルステーション300を用いると、図1のシステム構成で用いていた機器接続されたパーソナルコンピュータ200、400を省略することが可能となり、先の図1に示す実施形態と同様の効果に加え、さらにシステム構成やセッティングが簡便になるという効果も享受することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
100・・・診断装置
110・・・本体部
111・・・底面部
115・・・主制御部(判定情報生成部、ひび割れ情報生成部)
120・・・診断基礎情報収集部
121・・・打撃部
122・・・集音部
123・・・A/D変換部
130・・・手持ち部
131・・・診断開始/終了入力スイッチ
132・・・ひび割れ位置入力スイッチ
140・・・通信部
141・・・通信ケーブル
150・・・ターゲット
200・・・パーソナルコンピュータ
300・・・トータルステーション
400・・・パーソナルコンピュータ
500・・・建物設計データ(CADデータ)
510・・・診断情報データベース
520・・・ひび割れ情報データベース
530・・・補修費用情報データベース
540・・・補修図面/補修費用データベース
600・・・パーソナルコンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物壁面におけるタイルなどの状態の診断・記録を行い、当該診断・記録の結果に応じて補修を行うために用いられる壁面劣化診断システム及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の老朽化に伴い、当該建物の外壁に用いられているタイルなどが剥離・落下し、通行人に危害を加えるような事態を避けるために、建物壁面のタイルの状態の診断を行い、必要に応じて補修を行うことが求められている。このような診断・補修作業に用いられる診断装置としては、例えば、特許文献1(特開2007−309827号公報)に開示されているようなものが知られている。この特許文献1には、タイル張り付け面の剥離状態を前記タイル張り付け面の打撃音に基づき診断する装置であって、前記タイル張り付け面の適宜な部分についての打撃音を基準信号として取得する手段と、前記取得した基準信号に基づきマザーウェーブレットを作成する手段と、前記タイル張り付け面の診断対象部分についての打撃音を測定信号として取得する手段と、前記取得した測定信号に対して、前記作成したマザーウェーブレットを用いてウェーブレット変換することにより、変換測定信号を生成する手段と、前記変換測定信号について時間− 周波数領域における音圧分布
に基づき剥離の有無及び剥離が有る場合の剥離状態を判定する手段とを備えるタイル張り付け面の剥離診断装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−309827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1記載の診断装置を用いて建物壁面の診断を行う方法によれば、作業員が検査の対象となるタイル壁面をハンマー等で打撃し、その打撃音を作業員が聞き分ける従来の方法に比べて、高い精度で剥離の診断を行うことが可能となるものの、建物壁面の診断結果を処理するために多大な時間と労力を要する、という問題があった。
【0004】
より具体的には、特許文献1記載の診断装置を用いた方法で建物壁面の診断結果を処理するためには以下のような手順をとることとなる。まず、診断装置で診断した結果、異常と判定された壁面箇所について作業員がチョークやテープなどを使ってマーキングを行う。次に、このようなマーキング結果を現場において作業員が書類などに記録する。そして次に、作業員によって記録されたマーキング結果を、建物の設計図面データ(CADデータ)などにデジタル入力する作業を行い、最終的にこのデジタルデータに基づいて建物壁面の診断結果の報告書を作成する。このように、従来の方法では、建物壁面の診断報告書を作成するまでに、多大な時間と労力を要することとなり問題となっていた。
【0005】
なお、建物壁面の走査が可能なロボットなどを導入して、このようなロボットと壁面診断装置とを組み合わせて診断を行うことで、診断結果処理負担を低減することも考えられるが、このようなロボットを用いた方法では、多大なコストが必要となると共に、ロボットの設置負担などの労力も大きいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような問題、課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ターゲットを本体部に備え、建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報収集部と、前記診断基礎情報収集部で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成部とを有する診断装置と、前記ターゲットの自動追尾を行い、前記ターゲットの位置情報を取得するトータルステーションと、前記診
断装置によって生成された判定情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけて診断情報データベースとして記憶する情報処理装置と、からなることを特徴とする壁面劣化診断システムである。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記診断基礎情報収集部は壁面に打撃を加える打撃部と、壁面から集音を行う集音部とからなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記診断装置は、ひび割れ位置入力スイッチと、前記ひび割れ位置入力スイッチが押下されている間にひび割れ情報を生成するひび割れ情報生成部とを有し、前記情報処理装置は、前記診断装置によって生成されたひび割れ情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけてひび割れ情報データベースとして記憶することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記情報処理装置は、建物の設計データと前記診断情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の壁面劣化診断システムにおいて、前記情報処理装置は、建物の設計データと前記ひび割れ情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る発明は、診断装置によって建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報取得工程と、前記診断基礎情報取得工程で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成工程と、前記診断装置の位置情報を取得する位置情報取得工程と、前記判定情報生成工程で生成された判定情報と、前記位置情報取得工程で取得された位置情報とを関連づけて診断情報データとして記憶する診断情報データ記憶工程と、からなることを特徴とする診断方法である。
【0012】
また、請求項7に係る発明は、請求項6に記載の診断方法において、前記位置情報取得工程において前記診断装置の位置情報を取得するときにトータルステーションを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の壁面劣化診断システム及び診断方法によれば、大きなコスト負担が不要である簡便なシステム構成によって、高い精度で建物壁面の診断を行うことが可能となり、さらに建物壁面の診断結果を処理するための労務負担や時間を大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100の外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100のブロック構成の概略を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション300の設置と基準位置の登録の様子を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる建物壁面診断の作業状況を説明する図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける位置座標の算出方法を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション側パーソナルコンピュータの処理フローの概略を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置側パーソナルコンピュータの処理フローの概略を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによって、ひび割れ位置情報を記録する際の作業状況を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置側パーソナルコンピュータの処理フローの概略を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる診断結果作成処理の概略を説明する図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【図14】本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。図1において、100は診断装置、200はこの診断装置100と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ、300はトータルステーション、400はこのトータルステーション300と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータをそれぞれ示している。
【0016】
診断装置100としては、診断対象となる建物壁面に打撃を加える打撃部と、壁面から集音を行うマイクロフォンなどの集音部とからなる診断基礎情報収集部を有しており、この集音部で集音された打撃音によって当該打撃位置が正常であるか異常であるかに係る判定するものであり、基本的には従来の診断装置と同様の原理のもの(例えば、特開平9−257765号公報、特開平11−304773号公報などに開示されているもの)を用いることができる。
【0017】
また、トータルステーション300は、ターゲットを自動追尾して、このターゲットに対して光波を射出し、ターゲットで反射された光波を計測することによって、ターゲットとの間の距離、鉛直角度、水平角度を取得するものであり、例えば、ニコントリンブル社製トータルステーション5600ATSなどを用いることができる。このようなトータルステーション300は一般的に、外部の情報処理装置と接続可能なインターフェイスが設けられている。
【0018】
診断装置100及びトータルステーション300と通信可能に接続されるパーソナルコンピュータ200及びパーソナルコンピュータ400としては現在普及している汎用のものを用いることができる。診断装置100及びトータルステーション300とパーソナルコンピュータとの接続にはRS232Cなどの規格の通信を用いることが好適である。また、本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおいては、パーソナルコンピュータ200とパーソナルコンピュータ400との間で情報通信を行うことを想定しているが、このための通信の構築としては、パーソナルコンピュータで一般的に採用されているIEEE802.11b/g/nなどの通信規格を用いて、無線LANなどのアクセスポイントを介
する形で行うことが簡便である。
【0019】
次に、以上のような概略の本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置100についてより詳しく説明する。図2は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100の外観斜視図であり、図3は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで用いられる診断装置100のブロック構成の概略を示す図である。図2及び図3において、110は本体部、111は底面部、115は主制御部(判定情報生成部、ひび割れ情報生成部)、120は診断基礎情報収集部、121は打撃部、122は集音部、123はA/D変換部、130は手持ち部、131は診断開始/終了入力スイッチ、132はひび割れ位置入力スイッチ、140は通信部、141は通信ケーブル、150はターゲットをそれぞれ示している。
【0020】
診断装置100は、端部の一端に診断基礎情報収集部120を有してなる本体部110と、この本体部110から枝分かれするようにして延出している手持ち部130とから概略構成されている。本体部110の診断基礎情報収集部120が設けられていない方の端部には、本体部110とパーソナルコンピュータ200とを接続する通信ケーブル141が配されるようになっている。
【0021】
このような診断装置100による建物壁面の診断を行う場合には、手持ち部130を把持しながら、被測定面である建物の壁面を、本体部110の底面部111で走査するようにして、診断を行う。手持ち部130には、建物壁面診断を行う際に操作される2つの入力用スイッチ−診断開始/終了入力スイッチ131及びひび割れ位置入力スイッチ132−が配されている。
【0022】
診断開始/終了入力スイッチ131は、診断装置100による建物壁面診断の開始又は終了の時に押下されるスイッチであり、この診断開始/終了入力スイッチ131の操作を契機として、主制御部115が診断処理を開始又は終了する。
【0023】
建物壁面のひび割れは、特別な診断装置等を用いることなく目視によって確認することが可能であるが、本実施形態に係る壁面劣化診断システムでは、この目視確認されたひび割れの位置情報をシステムに記録させるための機能が設けられており、この機能を有効とするために、手持ち部130に配されているひび割れ位置入力スイッチ132が用いられる。目視確認されたひび割れは、ひび割れ位置入力スイッチ132を押下することによって、壁面劣化診断システム側にデータ入力がされるようになっている。ひび割れ位置入力スイッチ132は、押下しているときのみオンとなるようなスイッチであり、このスイッチが押下されているとき、主制御部115はひび割れ位置情報を生成するようになっている。
【0024】
本体部110の先端部には、建物壁面の診断を行うための基礎情報を収集するための構成である診断基礎情報収集部120が設けられており、この診断基礎情報収集部120には、建物壁面に打撃を加える打撃部121(物理的構成については不図示)と、壁面から集音を行うマイクロフォンなどの集音部122(物理的構成については不図示)とが配されている。診断基礎情報収集部120で集音された打撃音はA/D変換部123でデジタルデータに変換されて、このデジタルデータに基づいて、建物壁面の打撃位置が正常であるか異常であるかに係る判定処理が実行される。
【0025】
また、本体部110先端の診断基礎情報収集部120近傍には、トータルステーション300が自動追尾するターゲット150が設けられている。本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおいては、このようなターゲット150がトータルステーション300によって自動追尾されることによって、建物壁面をスキャンしているときにおける、診断装置
100(診断基礎情報収集部120近傍)の位置をシステム側で把握することができるようになっている。
【0026】
主制御部115はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。主制御部115は、図3に図示されている主制御部115と接続される各構成と協働・動作する。また、主制御部115は、診断装置100ムにおける種々の制御処理は、主制御部115内のROMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムやデータに基づいて実行されるものである。
【0027】
なお、本実施形態においては、診断装置100の処理動作は、主制御部115と主制御部115上で実行されるプログラムによって実現されるものとしているが、診断装置100の処理動作はこれに限定されるものではなく、論理回路などのハードウエアのみで実現されるようにしてもよい。
【0028】
本実施形態に係る壁面劣化診断システムにおける主制御部115の重要な処理動作としては、A/D変換部123でデジタルデータに変換された打撃音に基づいて、建物壁面の打撃位置が正常であるか異常であるかに係る判定処理を行うことである。そして、主制御部115におけるこのような判定処理の結果は、判定情報として生成されて、通信部140を介してパーソナルコンピュータ200に送信される。また、壁面劣化診断システムにおける主制御部115は、ひび割れ位置入力スイッチ132が押下されているときには、ひび割れ位置情報を生成するようになっている。この主制御部115で生成されたひび割れ位置情報は、通信部140を介してパーソナルコンピュータ200に送信される。
【0029】
次に、以上のように構成される本実施形態に係る壁面劣化診断システムによる建物壁面診断のための作業手順について、図4乃至図6により説明する。図4は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション300の設置と基準位置の登録の様子を説明する図であり、図5は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる建物壁面診断の作業状況を説明する図であり、図6は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける位置座標の算出方法を説明する図である。
【0030】
トータルステーション300は、診断対象壁面と平行な平面内をスキャンしやすい、診断対象壁面の側方に設置固定され、一つの診断対象壁面の全体が診断装置100によって走査されるまで位置変更は行わないようにする。このようにトータルステーション300が設置固定されると、次に、診断対象壁面の基準位置を登録する。基準位置を登録する際には、診断装置100の底面を壁面に押し当てた状態で行う。このような基準位置の登録に用いる点としては任意の点で構わないが、ここでは、診断対象壁面の左隅下の1点について登録を行っている様子を示している。基準位置の登録に任意の点を用いることができるのは、診断対象壁面の設計図面データが予め存在し、この設計図面データと登録基準位置とを重ね合わせることによって、以後、トータルステーション300で診断対象壁面上の絶対値を知ることが可能であるからである。
【0031】
以上のようにトータルステーション300を設置固定し、基準位置を登録した後は、図5に示すように、診断対象である建物壁面全体をくまなく走査する作業を実施する。このような作業中にトータルステーション300が、診断装置100に配されているターゲット150を自動追尾することによって、壁面劣化診断システムは診断装置100によって診断が行われている位置情報を確度高く把握することが可能となる。
【0032】
次に、本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける位置座標の算出方法の一例について図6を参照して説明する。以下の算出方法においては、図6に示すようにZX平面が壁面と重なるように(X,Y,Z)座標をとるようにしている。
【0033】
診断対象壁面における登録位置である既知の基準位置(X0,Z0)をトータルステーション300で測定したときの(距離、鉛直角度、水平角度)を(L0,θV0,θH0)とす
る。また、診断対象壁面上の任意のターゲット位置をトータルステーション300で測定したときの(距離、鉛直角度、水平角度)を(L,θV,θH)とする。また、診断対象壁面の高さ基準面とトータルステーション300の水平軸との間の距離をTHとする。また
、壁面は地面に対して垂直な面であるものと仮定する。また、図6では、診断対象壁面の左端に基準位置をとっているのでX0=0である。
【0034】
まず、ターゲット位置のZ座標の算出について図6(A)を参照して説明する。同図に示すように、Z座標はトータルステーション300の高さをTHとToffとの和として表すことができる。すなわち、
【0035】
【数1】
である。
【0036】
また、THはトータルステーション300で測定した距離L0、鉛直角度θV0、及び既知のZ0から、(2)式のように表すことができる。
【0037】
【数2】
また、トータルステーション300の水平軸からターゲット位置までの高さToffは、
(3)式で求めることができる。
【0038】
【数3】
(2)式及び(3)式を(1)式に代入することによって、ターゲット位置のZ座標値を(4)式で求めることができる。
【0039】
【数4】
次に、ターゲット位置のX座標の算出について図6(B)を参照して説明する。X座標値については、三角形ABCに余弦定理を適用し、X座標値と同値である辺BCの長さを求めることで算出する。
三角形ABCの辺ABは、(5)式により、
【0040】
【数5】
また、三角形ABCの辺CAは、(6)式により、
【0041】
【数6】
また、三角形ABCの角度BACは(θH―θH0)であるので、三角形ABCに余弦定理
を適用することで、ターゲット位置のX座標値を(7)式で求めることができる
【0042】
【数7】
次に、壁面劣化診断システムの建物壁面診断時における各パーソナルコンピュータの処理の一例について説明する。なお、壁面劣化診断システムにおける各パーソナルコンピュータの処理は以下の例に限られるものではない。例えば、以下の例では、診断装置100のパーソナルコンピュータ200に診断情報などのデータベースを記録するようにしているが、このような記録については、トータルステーション300側のパーソナルコンピュータ400に行わせるようにシステムを組むことも可能である。図7は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおけるトータルステーション300側のパーソナルコンピュータ400の処理フローの概略を示す図である。
【0043】
図7において、ステップS100で、トータルステーション300側パーソナルコンピュータ400における処理が開始されると、続いて、ステップS101に進み、トータルステーション300がターゲット150をロック中であるか否かが判定される。ステップS101の判定結果がYESであるときにはステップS102に進む。また、この判定結果がNOであるときにはステップS106に進み、ステップS106では、パーソナルコンピュータ200側に測定不能である旨を送信する。
【0044】
ステップS102では、トータルステーション300から、ターゲット150の位置測定情報(距離、鉛直角度、水平角度)を取得し、ステップS103で、取得された距離、鉛直角度、水平角度から直交座標系(X,Y,Z)位置情報を演算する。そして、ステップS104で、測定情報及び直交座標系位置情報をパーソナルコンピュータ200側に送信する。
【0045】
ステップS105では、診断の中止命令があるか否かが判定される。このステップS105における判定結果がNOであるときにはステップS101に戻りループし、判定結果がYESであるときにはステップS107に進み、処理を終了する。
【0046】
次に、壁面劣化診断システムの建物壁面診断時における診断装置100側のパーソナルコンピュータの処理の一例について説明する。図8は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理フローの概略を示す図である。まず、図8におけるフローチャートでは、診断装置100側において診断開始/終了入力スイッチ131の開始操作がなされたときの診断モードにおける処理の流れを説明する。
【0047】
図8において、ステップS200で、診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理が開始されると、続いて、ステップS201では、診断装置100から受信した判定情報(正常であるか異常であるかに係るデータ)を取得する。また、ステップS202では、トータルステーション300からの情報(測定情報及び直交座標系位置情報、測定不能情報)を受信する。
【0048】
ステップS203では、ステップS201で取得した判定情報及びトータルステーション300からのトータルステーション情報を関連づけてマージし、パーソナルコンピュータ200の記憶装置(不図示)に診断情報データベース510として記憶する。
【0049】
ステップS204では、診断開始/終了入力スイッチ131の終了操作があるか否かが判定される。このステップS204における判定結果がNOであるときにはステップS201に戻りループし、判定結果がYESであるときにはステップS205に進み、処理を終了する。
【0050】
次に、診断装置100でひび割れ位置入力スイッチ132が操作されたときのパーソナルコンピュータ200の処理について説明する。前記したようにひび割れ位置入力スイッチ132は目視確認されたひび割れの位置情報をシステムに記録させるときに操作する。図9は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによって、ひび割れ位置情報を記録する際の作業状況を説明する図である。図9に示すように、診断情報100を走査する作業者が、目視されるひび割れの位置情報をシステムに入力するときには、ひび割れ位置入力スイッチ132を押下しながら、ひび割れ箇所を診断情報100によってトレースする。
【0051】
次に、診断装置100側においてひび割れ位置入力スイッチ132の操作がなされたときのひび割れ位置入力モードにおけるパーソナルコンピュータ200の処理の流れを説明する。図10は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムにおける診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理フローの概略を示す図である。
【0052】
図10において、ステップS300で、診断装置100側パーソナルコンピュータ200の処理が開始されると、続いて、ステップS301では、トータルステーション300からの情報(測定情報及び直交座標系位置情報、測定不能情報)を受信する。
【0053】
ステップS302では、診断装置100で生成されたひび割れ情報及びトータルステーション300からのトータルステーション情報を関連づけてマージし、パーソナルコンピュータ200の記憶装置(不図示)にひび割れ情報データベース520として記憶する。
【0054】
ステップS303では、ひび割れ位置入力スイッチ132の操作があるか否かが判定される。このステップS303における判定結果がNOであるときにはステップS301に戻りループし、判定結果がYESであるときにはステップS304に進み、処理を終了する。
【0055】
以上のように、本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムでは、診断装置100を壁面に沿って走査するだけで、トータルステーションによる高い精度の位置情報を含む診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520を構築することが可能である。
【0056】
次に、以上のように壁面劣化診断システムによって取得された診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520の診断結果作成処理への応用について説明する。図11は本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムによる診断結果作成処理の概略を説明する図である。図11において、500は建物設計データ(CADデータ)、510は診断情報データベース、520はひび割れ情報データベース、530は補修費用情報データベース、540は補修図面/補修費用データベースをそれぞれ示している。また、それぞれのデータ(データベース)からの吹き出し内には、それぞれのデータのイメージ図が描かれている。また、図11に示されるデータ(データベース)は、パーソナルコンピュータなどに記憶され処理されるものである。このときに用いられるパーソナルコン
ピュータは、診断装置100に接続されるパーソナルコンピュータ200であってもよいし、他のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0057】
建物設計データ(CADデータ)500は、診断対象となる建物が建設されたときの設計図データであり、この設計図データの壁面データに対して、壁面劣化診断システムで取得される位置情報を含む診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520が重ね合わされることによって、補修図面/補修費用データベース540を得ることができる。これに基づいて、補修用の図面をパーソナルコンピュータのディスプレイ(不図示)に表示したり、或いはパーソナルコンピュータから印刷出力したりすることができる。
【0058】
また、補修図面/補修費用データベース540で補修が必要となる壁面部を割り出し、さらに、壁面タイルなどの材料の一枚当たりの価格や、一枚当たり工賃などが入力された補修費用情報データベース530に基づいて、補修費用算出結果をパーソナルコンピュータのディスプレイ(不図示)に表示したり、或いはパーソナルコンピュータから印刷出力したりすることができる。
【0059】
本発明の実施の形態に係る壁面劣化診断システムで取得される、位置情報を含む診断情報データベース510及びひび割れ情報データベース520を用いることで、建物壁面の診断結果を処理するための労務負担や時間を大幅に低減することが可能となる。
【0060】
なお、これまでの説明では診断装置100の位置情報をシステム側が把握するために、トータルステーションを用いる方法について説明したが、当該位置情報を把握するために他の方法を用いることも可能である。このような他の方法としては、無線を用いる方法、GPSを用いる方法、バルカン(商標)を用いる方法或いは、トータルステーションを用いる方法も加えた任意の方法の組み合わせによる方法などを挙げることができる。
【0061】
以上、本発明の壁面劣化診断システム、診断方法によれば、大きなコスト負担が不要である簡便なシステム構成によって、高い精度で建物壁面の診断を行うことが可能となり、さらに建物壁面の診断結果を処理するための労務負担や時間を大幅に低減することが可能となる。
【0062】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図12乃至図14は本発明の他の実施の形態に係る壁面劣化診断システムの全体構成を示す図である。
【0063】
図12に示す他の実施の形態のシステム構成では、トータルステーション300として、パーソナルコンピュータに代わる演算装置、通信装置が内蔵されているものを用いている。このようなトータルステーション300を用いると、図1のシステム構成で用いていたパーソナルコンピュータ400を省略して、トータルステーション300から、トータルステーション取得情報等を直接的にパーソナルコンピュータ200に送信することが可能となり、先の図1に示す実施形態と同様の効果に加え、さらにシステム構成が簡便になるという効果も享受することが可能となる。
【0064】
一方、図13に示す他の実施の形態のシステム構成では、診断装置100として、パーソナルコンピュータに代わる演算装置、通信装置が内蔵されているものを用いている。このような診断装置100を用いると、図1のシステム構成で用いていたパーソナルコンピュータ200を省略して、診断装置100から、診断情報、ひび割れ情報等を直接的にパーソナルコンピュータ400に送信することが可能となり、先の図1に示す実施形態と同様の効果に加え、さらにシステム構成が簡便になるという効果も享受することが可能となる。
【0065】
図14に示す他の実施の形態のシステム構成では、診断装置100及びトータルステーション300として、パーソナルコンピュータに代わる演算装置、通信装置が内蔵されているものを用い、診断装置100で得られる診断情報、ひび割れ情報等及びトータルステーション300で取得されるトータルステーション取得情報等をパーソナルコンピュータ600に送信するようにしている。このような診断装置100及びトータルステーション300を用いると、図1のシステム構成で用いていた機器接続されたパーソナルコンピュータ200、400を省略することが可能となり、先の図1に示す実施形態と同様の効果に加え、さらにシステム構成やセッティングが簡便になるという効果も享受することが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
100・・・診断装置
110・・・本体部
111・・・底面部
115・・・主制御部(判定情報生成部、ひび割れ情報生成部)
120・・・診断基礎情報収集部
121・・・打撃部
122・・・集音部
123・・・A/D変換部
130・・・手持ち部
131・・・診断開始/終了入力スイッチ
132・・・ひび割れ位置入力スイッチ
140・・・通信部
141・・・通信ケーブル
150・・・ターゲット
200・・・パーソナルコンピュータ
300・・・トータルステーション
400・・・パーソナルコンピュータ
500・・・建物設計データ(CADデータ)
510・・・診断情報データベース
520・・・ひび割れ情報データベース
530・・・補修費用情報データベース
540・・・補修図面/補修費用データベース
600・・・パーソナルコンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットを本体部に備え、建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報収集部と、前記診断基礎情報収集部で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成部とを有する診断装置と、前記ターゲットの自動追尾を行い、前記ターゲットの位置情報を取得するトータルステーションと、
前記診断装置によって生成された判定情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけて診断情報データベースとして記憶する情報処理装置と、からなることを特徴とする壁面劣化診断システム。
【請求項2】
前記診断基礎情報収集部は壁面に打撃を加える打撃部と、壁面から集音を行う集音部とからなることを特徴とする請求項1に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項3】
前記診断装置は、ひび割れ位置入力スイッチと、前記ひび割れ位置入力スイッチが押下されている間にひび割れ情報を生成するひび割れ情報生成部とを有し、
前記情報処理装置は、前記診断装置によって生成されたひび割れ情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけてひび割れ情報データベースとして記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、建物の設計データと前記診断情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、建物の設計データと前記ひび割れ情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項6】
診断装置によって建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報取得工程と、
前記診断基礎情報取得工程で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成工程と、
前記診断装置の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記判定情報生成工程で生成された判定情報と、前記位置情報取得工程で取得された位置情報とを関連づけて診断情報データとして記憶する診断情報データ記憶工程と、からなることを特徴とする診断方法。
【請求項7】
前記位置情報取得工程において前記診断装置の位置情報を取得するときにトータルステーションを用いることを特徴とする請求項6に記載の診断方法。
【請求項1】
ターゲットを本体部に備え、建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報収集部と、前記診断基礎情報収集部で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成部とを有する診断装置と、前記ターゲットの自動追尾を行い、前記ターゲットの位置情報を取得するトータルステーションと、
前記診断装置によって生成された判定情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけて診断情報データベースとして記憶する情報処理装置と、からなることを特徴とする壁面劣化診断システム。
【請求項2】
前記診断基礎情報収集部は壁面に打撃を加える打撃部と、壁面から集音を行う集音部とからなることを特徴とする請求項1に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項3】
前記診断装置は、ひび割れ位置入力スイッチと、前記ひび割れ位置入力スイッチが押下されている間にひび割れ情報を生成するひび割れ情報生成部とを有し、
前記情報処理装置は、前記診断装置によって生成されたひび割れ情報と、前記トータルステーションによって取得された位置情報とを関連づけてひび割れ情報データベースとして記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項4】
前記情報処理装置は、建物の設計データと前記診断情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、建物の設計データと前記ひび割れ情報データベースとを関連づけて補修データベースとして記憶することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の壁面劣化診断システム。
【請求項6】
診断装置によって建物の壁面の所定位置における診断基礎情報を取得する診断基礎情報取得工程と、
前記診断基礎情報取得工程で取得された情報に基づいて当該位置が正常であるか異常であるかに係る判定情報を生成する判定情報生成工程と、
前記診断装置の位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記判定情報生成工程で生成された判定情報と、前記位置情報取得工程で取得された位置情報とを関連づけて診断情報データとして記憶する診断情報データ記憶工程と、からなることを特徴とする診断方法。
【請求項7】
前記位置情報取得工程において前記診断装置の位置情報を取得するときにトータルステーションを用いることを特徴とする請求項6に記載の診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−123006(P2011−123006A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282765(P2009−282765)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(599098127)株式会社ソーキ (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(599098127)株式会社ソーキ (28)
【Fターム(参考)】
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