説明

壁面打撃装置

【課題】 マイクに集音される音波の雑音をできる限り少なくして、ハンマで壁面を打撃した際の、壁面内部からの反射波を確実に集音できるようにする。
【解決手段】 台車1によって壁面Hの所望する位置に移動させる移動部Aと、該台車1の枠体2に回転自在に設けられるハンマ15によって壁面Hを打撃する打撃部Bと、該ハンマ15による打撃をソレノイド30によって駆動制御する駆動制御部Cと、ハンマ15の打撃による壁面H及び壁面内部からの反射波X〜Zをマイク42で集音する集音部Dと、該集音部Dで集音される反射波X〜Zを解析する解析部Eとを備えた壁面打撃装置において、ハンマ15が壁面Hを打撃した際の壁面内部からの反射波Y,Zを伝達させるための伝達媒体7を、打撃点P近傍の壁面Hに当接させると共に、該伝達媒体7にマイク42の受信部を接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の壁面内部の空隙、タイルの剥がれ、モルタルの浮き状態を、これら壁面を打ち叩いて、その反射波を集音する壁面打撃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の壁面打撃装置としては、例えばソレノイドによってハンマを進出させると共に、スプリングによってハンマを後退させる駆動部と、該ハンマの進出動作によって、壁面が打ち叩かれる打撃音を収集する集音部と、該打撃音の音圧を電気信号に変換し、該信号と予め設定されている基準信号とを照合して、該両信号の音圧差を求める解析部とを本体に内装し、さらに、該音圧差に応じて発光ダイオードを点灯させたり、ブザーを鳴らしたりして、壁面内部の空隙の有無を表示する表示手段を、外部から目視できるように本体に取り付けたものが公知になっている(特許文献1)。
【0003】
また、他の壁面打撃装置としては、中心部が回転自在に支持されたアーム、及び該アームの両端部に設けられた鉄塊部を有するハンマと、アームの回動を直流電圧で駆動制御するソレノイドとを備えたものも公知になっている(特許文献2)。
【特許文献1】特開昭61−169761号公報
【特許文献2】特開平02−62960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の上記前者の壁面打撃装置の場合、スプリングを使用しているため、打撃音にスプリングの伸縮する音が雑音として含まれるようになり、壁面内部の欠陥を正確に調査するのが困難であると考えられる。しかも、マイクが本体に内装されているため、打撃音が空気を伝達媒体として集音されるという問題がある。
【0005】
また、上記後者の壁面打撃装置の場合、アームの軸受け部における回動摩擦が雑音としてマイクに集音されてしまう。また、前記と同様に、壁面内部からの反射波が空気を介してマイクに集音されてしまう。このため、壁面内部の欠陥の有無を探査する精度が低いと考えられる。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、マイクに集音される音波の雑音をできる限り少なくして、ハンマで壁面を打撃した際の、壁面内部からの反射波を確実に集音できる壁面打撃装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る壁面打撃装置は、ハンマ15によって壁面Hを打撃する打撃部Bと、該ハンマ15による打撃をソレノイド30によって駆動制御する駆動制御部Cと、ハンマ15の打撃による壁面H及び壁面内部からの反射波X〜Zをマイク42で集音する集音部Dと、該集音部Dで集音される反射波X〜Zを解析する解析部Eとを備えた壁面打撃装置において、ハンマ15が壁面Hを打撃した際の壁面内部からの反射波Y,Zを伝達させるための伝達媒体7を、打撃点P近傍の壁面Hに当接させることを特徴とする。
【0008】
この場合、伝達媒体7を壁面Hに当接させているので、壁面Hを打撃した際の、壁面Hを伝達する反射波X及び壁面内部からの反射波Y,Z、即ちデシベルの高い領域から低い領域の反射波X〜Zを集音部Dに確実に伝達できる。
【0009】
また、本発明によれば、前記伝達媒体7にマイク42の受信部を接触させるような構成を採用することもできる。
【0010】
この場合、伝達媒体7にマイク42の受信部を当接しているので、伝達媒体7で伝達される反射波X〜Zを確実に集音できる。
【0011】
また、本発明によれば、前記ハンマ15を、壁面Hの所望する位置に移動させる台車1の枠体2に設け、さらに、前記伝達媒体7を、台車1の車輪6のうち、少なくとも一つに設けられた鉄輪7で構成するようにしてもよい。
【0012】
この場合、伝達媒体として固有振動数の高い鉄製のものを使用しているので、壁面Hを打撃した際の音波を確実に伝達できる。また、壁面Hに接触する車輪6の一部に伝達媒体鉄輪7を設けるようにしているので、構成が簡素化され、組み立て作業の効率化も図れる。
【0013】
また、本発明によれば、前記ハンマ15を回動自在に設けて、さらに、該ハンマ15を回転自在に支持するための軸16a,16a及びその軸受け20に、銅、砲金、セラミック、プラスチックのうちいずれかを使用するような構成を採用することもできる。
【0014】
この場合、軸16a,16aと軸受け20に吸音性を有する材料を使用しているので、ハンマ15を回動させる際、軸16a,16aと軸受け20の回動摩擦によって生じる雑音を解消できるようになり、解析精度が向上する。
【0015】
また、本発明によれば、前記ソレノイド30に直流電源を供給するような構成を採用することもできる。
【0016】
この場合、ソレノイドに直流電源を供給するようにしているので、交流成分が含まれない分、ハンマで打撃する際のソレノイド30における雑音を除去できるようになり、解析精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、ハンマが壁面を打撃した際の壁面及び壁面内部からの反射波を伝達させるための伝達媒体を、打撃点近傍の壁面に当接させるようにしたので、壁面及び壁面内部からの反射波を確実に伝達できるようになり、コンクリート製の壁面内部の空洞、タイルの剥がれ、モルタルの浮き状態を正確に探査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る壁面打撃装置につき図1〜図4を参照して説明する。なお、これらの図においては、図面を正面視した状態で、上側を前側、下側を後側、左右を左側及び右側とする。
本実施形態に係る壁面打撃装置の構成は、図1及び図3に示すように、該装置を、打撃しようとする壁面Hの位置に移動する移動部Aと、該移動部Aに設けられた打撃部Bと、該打撃部Bを駆動制御する駆動制御部Cと、打撃部Bによって壁面内部から反射される反射波を集音する集音部Dと、該集音部Dにより集音したデータを解析する解析部Eとから構成されている。
【0019】
移動部Aは、前後方向に細長く骨組みされた枠体2と、該枠体2の前部の両側に回動支持された一対のゴム製の車輪6,6と、枠体2の後部中央に回動支持された伝達媒体としての鉄輪(鉄製の車輪)7とを備えた台車1より構成されている。そして、枠体2は、左右の両側に断面L字形状の側枠3,3が配置されると共に、前端部及び後端部にそれぞれ平板状の前枠4及び後枠5が溶着されている。また、両側枠3,3の中途部に、前記打撃部B及び前記駆動制御部Cが設置される平面視略正方形状の受板10が架設されている。また、図1の一点鎖線に示すように、両側枠3,3に、該駆動制御部Cを保護するためのカバー11,11が立設されている。該カバー11,11は、略台形状を呈しており、前側及び後側が低く、前側及び後側から駆動制御部Cの側方に向かうにしたがって高くなるように作製されている。また、鉄輪7は、車輪6,6よりも径が大きく、その両側に突設された軸8,8が、両側枠3,3の後部下面に固着された軸受け9によって回動自在に支持されている。
【0020】
打撃部Bは、鉄製のハンマ15で構成されており、角柱状に形成された基端部16、及び該基端部16の一端面の中央部から軸方向に沿って前方に延出された棒状の柄部17と、該柄部17の先端部に固着された球体からなる鉄塊部18とを備えている。そして、図1及び図2に示すように、上述した受板10に、その後側の両側部に断面L字形状の一対の支持板19,19が固着されている。該両支持板19,19には、銅、砲金、セラミック、プラスチックの材料、即ち吸音性を有する材料で構成された軸受け20が設けられている。該軸受け20には、ハンマ15の基端部16に突設された軸16a,16aが挿通されて、該基端部16が軸16a,16aを支点にして回動するようになっている。また、ハンマ15は、基端部16の軸16a,16aが両支持板19,19に支持されることにより、台車1の前後方向の中心線に沿って位置するように配されている。また、ハンマ15の鉄塊部18は、受板10と前枠4との間の開口12よりも内側に位置する場合、所定の角度を持って壁面Hを打ち叩ける待機位置Sに位置することになる。一方、この待機位置Sから、前記開口12よりも外側(壁面H側)に位置する場合、図3に示すように、壁面Hを打ち叩く打撃位置Tに位置することになる。
【0021】
駆動制御部Cは、受板10の支持板19,19の両外側にそれぞれ立設された側板26,26、及び該両側板26,26の上端部に架設された上板27を有する取付体25と、該取付体25の上板27に吊設された、ハンマ15の基端部16を押し引きするソレノイド30とから構成されている。該ソレノイド30は、直流電源によって進退するプランジャ31が下向きになるように吊設されており、該プランジャ31の先端部がハンマ15の基端部16を押し引きできるように連結されている。具体的に説明すると、ハンマ15の基端部16の上面に一対の断面コ字形状の支持板35が固設され、該支持板35の両折曲片35a,35aの間にプランジャ31の先端部が挿入されて、両折曲片35a,35aとプランジャの先端部をピン36が貫通している。この連結によって、プランジャ31の上下方向の進退動作がハンマ15の基端部16の回動動作に変換されることになる。即ち、図3に示すように、プランジャ31の進出位置(下降位置)においては、ハンマ15の基端部16が押し下げられて、ハンマ15の鉄塊部18が壁面Hから離間して、前記待機位置Sに位置する。一方、図4に示すように、プランジャ31の後退位置(上昇位置)においては、ハンマ15の基端部16が引き上げられて、ハンマ15の鉄塊部18が壁面Hを打ち叩く。なお、壁面Hに対するハンマ15の打撃力は、直流電圧のパルス幅や振幅、或いはハンマ15の傾斜角度を制御することによって適宜変更できるものとする。
【0022】
集音部Dは、台車1の後枠5の中央部に立設された支持台40と、その基端部が支持台40に水平支持された板バネ41と、該板バネ41における鉄輪7との接触部位に接触するように設けられたマイク42とを備えている。そして、板バネ41が鉄輪7の周面に対して接線方向に接触すると共に、反射波を受信するマイク42の受信部が板バネ41に接触し、ハンマ15で打ち叩いた壁面内部からの反射音を、鉄輪7、板バネ41を伝達媒体として集音するようになっている。
【0023】
解析部Eは、マイク42によって集音されたデータを、例えば本願出願人が鋭意研究を重ねて発明された解析方法によって壁面内部の空洞部の有無を探査する。即ち、集音された音波をウェーブレット変換してスケーログラムを作成し、視覚を通じて客観的に壁面内部の欠陥の有無を判定する(特許登録番号第2610378号参照)。
【0024】
つぎに本実施形態に係る壁面打撃装置の使用態様について図3〜図5を参照して説明する。まず、図3に示すように、ソレノイド30のプランジャ31を進出、即ちハンマ15の基端部16を押し下げて、待機位置Sに位置させておいて、壁面Hの所望する位置、即ちハンマ15で壁面Hを打ち叩く打撃位置Tに台車1を移動させて停止させる。
【0025】
この状態において、ソレノイド30に直流電圧を印加すると、図4に示すように、プランジャ31が後退して、ハンマ15の基端部16が引き上げられて、ハンマ15の鉄塊部18が台車1の開口12を通って外側(壁面H側)に回動し壁面Hを打ち叩く。
【0026】
そして、打ち叩いた直後に、ソレノイド30の直流電圧の印加を停止すると、プランジャ31が進出して、ハンマ15の基端部16が押し下げられて、ハンマ15の鉄塊部18が台車1の開口12を通って内側に移動し、ハンマ15が待機位置Sに戻って停止する。
【0027】
ハンマ15の鉄塊部18が壁面Hを打撃した際、図5に示すように、ハンマ15の鉄塊部18で打撃した打撃点Pから、壁面Hを伝達媒体にして伝達される伝達波Xは、デシベルの高い領域にあり、最も早くマイク42の受信部に伝達される。一方、壁面内部の空洞部Gに反射されてマイク42の受信部に伝達される伝達波(反射波)Y,Zは、デシベルの低い領域にあり、伝達波Xよりも遅れて伝達される。このような音質(周波数、振幅、周期、到達時間など)を、上述した解析手法(ウェーブレット変換を用いた打音調査方法)で解析することによって、壁面内部の状態、即ち空洞部Gの有無を判定する。
【0028】
なお、前記実施形態においては、台車1が移動可能な壁面Hとしては、直立した壁面、水平な壁面、傾斜を有する壁面の何れにも適用可能であることは言うまでもない。また、台車1の走行及びハンマ15の駆動制御部Cの操作を遠隔操作するようにしてもよい。
【0029】
また、前記実施形態の場合、伝達媒体として鉄輪7を用いたが、これに限定されるものではなく、壁面Hに当接する接触面を有し、且つ固有振動数の高い金属製の中実体であればよい。例えばステンレス製の柱状体を台車1の枠体2に取り付けるようにしてもよい。要は、ハンマ15によって壁面Hを打撃した際の、デシベルの低い領域にある壁面内部の反射波Y,Zを減衰することなく伝達できるものであれば何でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る壁面打撃装置を示す斜視図。
【図2】図1のハンマの基端部の支持構造を示した拡大図。
【図3】ハンマが壁面から離間して待機している状態を示した概略側面図。
【図4】ハンマが壁面を打ち叩いた状態を示した概略側面図。
【図5】ハンマの打撃による壁面及び壁面内部の反射波がマイクの受信部に伝達される状態を示した説明図。
【符号の説明】
【0031】
1…台車、2…枠体、3…側枠、4…前枠、5…後枠、6…車輪、7…鉄輪、8,16a…軸、10…受板、11…カバー、12…開口、15…ハンマ、16…基端部、17…柄部、18…鉄塊部、19,35…支持板、25…取付体、26…側板、27…上板、30…ソレノイド、31…プランジャ、35a…折曲片、36…ピン、40…支持台、41…板バネ、42…マイク、A…移動部、B…打撃部、C…駆動制御部、D…集音部、E…解析部、G…空洞部、H…壁面、P…打撃点、S… 待機位置、T… 打撃位置、X… 伝達波、Y,Z…反射波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンマ(15)によって壁面(H)を打撃する打撃部(B)と、該ハンマ(15)による打撃をソレノイド(30)によって駆動制御する駆動制御部(C)と、ハンマ(15)の打撃による壁面(H)及び壁面内部からの反射波(X〜Z)をマイク(42)で集音する集音部(D)と、該集音部(D)で集音される反射波(X〜Z)を解析する解析部(E)とを備えた壁面打撃装置において、ハンマ(15)が壁面(H)を打撃した際の壁面内部からの反射波(Y,Z)を伝達させるための伝達媒体(7)を、打撃点(P)近傍の壁面(H)に当接させることを特徴とする壁面打撃装置。
【請求項2】
前記伝達媒体(7)にマイク(42)の受信部を接触させることを特徴とする請求項1に記載の壁面打撃装置。
【請求項3】
前記ハンマ(15)は、壁面(H)の所望する位置に移動させる台車(1)の枠体(2)に設けられ、さらに、前記伝達媒体(7)は、台車(1)の車輪(6)のうち、少なくとも一つに設けられた鉄輪(7)であることを特徴とする請求項1又は2に記載の壁面打撃装置。
【請求項4】
前記ハンマ(15)は回動自在に設けられ、さらに、該ハンマ(15)を回転自在に支持するための軸(16a,16a)及びその軸受け(20)に、銅、砲金、セラミック、プラスチックのうちいずれかが使用されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁面打撃装置。
【請求項5】
前記ソレノイド(30)は、直流電源が供給されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の壁面打撃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85361(P2010−85361A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257390(P2008−257390)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(500305601)
【出願人】(591088537)日本物理探鑛株式会社 (6)
【出願人】(508296783)
【出願人】(592180694)株式会社大北耕商事 (8)
【Fターム(参考)】