説明

壜胴部の欠陥検査装置

【課題】壜胴部の屈折性欠陥の判別が容易で、高速に検査を行うことができる壜胴部の欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】壜胴部の欠陥検査装置10は、光の出射角度をその表面に対して所定の角度範囲に制限するライトコントロールフィルム16と、ライトコントロールフィルム16を通して検査対象となる壜1に光を投光する照明装置14と、ライトコントロールフィルム16を通して壜1に投光された光が壜胴部の屈折性欠陥によって屈折する光を撮像する撮像装置18とを備えている。さらに、欠陥検査装置10は、壜1をライトコントロールフィルム16の前方で移動させる移動機構12を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壜胴部の欠陥検査装置に係り、特にガラス壜などの胴部に生ずる屈折性欠陥を検出する壜胴部の欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種のガラス壜を成型する際には、金型の温度の不均一などが原因でガラスが金型の表面全体に延びきらずに壜胴部に「しわ」と呼ばれる線状の凹部が形成されることがある。このような凹部は光線の方向により明暗として観察されるので、遮光性欠陥とは区別され、屈折性欠陥と定義される。このような外観上の欠陥を有する壜は不良品として排除することが好ましく、かかる屈折性欠陥を高精度に検出することが求められている。
【0003】
図1は、従来の壜胴部の欠陥検査装置を示す模式図である。図1に示す欠陥検査装置は、壜1にスポット光を照射する集光照明100と、集光照明100のスポット光の光軸101からずれた光路上に配置された撮像装置110とを有している。壜1の屈折性欠陥を検出するときは、インデックススピン機構により壜1を自転させつつ集光照明100の前に静止させて、集光照明100からのスポット光を壜1の検査部位に照射する。
【0004】
集光照明100からのスポット光が壜1の欠陥のない部分を透過する場合、図1に矢印Aで示すように、スポット光はそのまま(ほぼ)光軸101に沿った方向に出射される。この場合には、撮像装置110に光が入射しないこととなるので、撮像装置110には暗い像が写し出される。なお、実際には壜1に入射する際と壜1から出射する際に多少の光の屈折が生じるが、以下では、これらは無視し得るものとして説明する。
【0005】
一方、集光照明100からのスポット光が屈折性欠陥のある部分を透過する場合には、図1の矢印Bで示すように、スポット光は屈折性欠陥により屈折して、屈折光はスポット光の光軸101からずれた方向に出射される。上記撮像装置110はこのような屈折光の光路上に位置するように配置されている。したがって、撮像装置110には屈折性欠陥が明るく写し出されることになる。このように、撮像装置110には、屈折性欠陥のない部分は暗く、屈折性欠陥の部分は明るく写るので、この明暗の差を利用することで壜胴部の屈折性欠陥を検出できるようになっている。
【0006】
このような従来の欠陥検査装置においては、集光照明100からの光がスポット光であり発光面積が狭いため、壜1を水平方向に移動させながら欠陥を検出することができない。このため、上述したように、壜1を自転させつつ集光照明100の前に静止させるためのインデックススピン機構が必要となる。このようなインデックススピン機構は複雑かつ高価であり、また、検査のたびに壜1を集光照明100の前で静止させる必要があるため、検査速度が遅くなってしまう。
【0007】
また、壜を成型する際には、2つ割の金型の合わせ部分に「合わせ目」と呼ばれる段差または凸部が形成されるが、このような合わせ目に集光照明100からのスポット光が入射すると、図1の矢印Cで示すように、欠陥の場合と同様に屈折する。このときの屈折角は屈折性欠陥の場合よりも小さいが、撮像装置110には合わせ目が背景よりも明るく写し出されることとなる。このため、撮像装置110により得られた画像上で屈折性欠陥と合わせ目とを判別することが難しい場合があった。
【0008】
また、図1に示すような装置以外の欠陥検査装置としては、拡散照明と壜との間に斜方向の複数の隙間を有する遮光板を配置し、壜胴部を透過した光による縞模様の画像を走査して上記欠陥を検出するものも知られている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、このような装置では、縞模様の画像を走査するために複雑なアルゴリズムが必要となる上に、合わせ目も屈折性欠陥と同様に明るく写るため、屈折性欠陥と合わせ目とを判別することが難しい。
【0009】
【特許文献1】特開2000−162156号公報
【特許文献2】特公平6−90150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、壜胴部の屈折性欠陥の判別が容易で、高速に検査を行うことができる壜胴部の欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、壜胴部の屈折性欠陥の判別が容易で、高速に検査を行うことができる壜胴部の欠陥検査装置が提供される。この欠陥検査装置は、光の出射角度をその表面に対して所定の角度範囲に制限するライトコントロールフィルムと、上記ライトコントロールフィルムを通して検査対象となる壜に光を投光する照明装置と、上記ライトコントロールフィルムを通して上記壜に投光された光が壜胴部の欠陥によって屈折する光を撮像する撮像装置とを備えている。
【0012】
上記欠陥検査装置は、上記検査対象となる壜を上記ライトコントロールフィルムの前方で移動させる移動機構を備えていることが好ましい。この場合において、上記撮像装置が、上記壜の移動に追従して角度を調整可能なミラーと、該ミラーで反射した光を撮像するカメラとを含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ライトコントロールフィルムから一定の幅を持った指向性のある光を壜に投光することができ、屈折性欠陥により屈折した光を撮像装置により撮像して該屈折性欠陥を検出することができる。また、壜に投光される光は、一定の幅を持った指向性のある光であるので、屈折性欠陥のない部分を薄明るく撮像することができる。したがって、合わせ目により屈折した光を目立たなくすることができ、屈折性欠陥のみを目立たせることができる。したがって、屈折性欠陥を容易に区別することが可能となり、屈折性欠陥の検出を比較的簡単な画像処理で正確に行うことが可能となる。
【0014】
また、ライトコントロールフィルムを用いることにより、一定の幅を有する指向性のある光を幅のあるライトコントロールフィルムの全面から出射させることができるので、移動する壜に対しても光を投光することができる。したがって、検査に際して壜を静止させる必要がなく、壜を移動させながら屈折性欠陥の検出を行うことができる。このため、インデックススピン機構のような複雑な機構は不要となり、高速で検査を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る壜胴部の欠陥検査装置の実施形態について図2から図5を参照して詳細に説明する。なお、図2から図5において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図2は本発明の第1の実施形態における壜胴部の欠陥検査装置10を示す模式図、図3は図2の側面図である。本実施形態の欠陥検査装置10は、壜1中の縦方向(垂直方向)の屈折性欠陥2を検出するものである。図2および図3に示すように、欠陥検査装置10は、検査対象としての壜1を自転させつつ回転軸12aを中心として回転移動させるロータリースピン機構(移動機構)12と、照明装置としての拡散透過照明14と、ロータリースピン機構12に保持された壜1と拡散透過照明14との間に配置されたライトコントロールフィルム16と、ライトコントロールフィルムを通して壜1に投光された光を撮像する撮像装置18とを備えている。撮像装置18は、ロータリースピン機構12の回転に追従して角度を調整可能なミラー20と、ミラー20で反射した光を撮像するカメラ22とを備えている。
【0017】
ライトコントロールフィルム16は、出射する光の拡散を一定の範囲に抑えるものであり、本実施形態においては横方向(水平方向)に光の拡散を抑えるように構成されている。図4は、ライトコントロールフィルム16の構造を示す斜視図である。図4に示すように、ライトコントロールフィルム16は、互いに平行に配置された複数のルーバ16aを内部に含んでいる。図4に示す例では、それぞれのルーバ16aの面がライトコントロールフィルム16の表面に対して垂直になるように配置されている。
【0018】
このような構造により、例えば、ライトコントロールフィルム16の表面の法線Nの方向については光の透過率が75%となり、ルーバ16aの並び方向Xに関して法線Nと15°をなす方向に関しては光の透過率が35%となる。さらに、ルーバ16aの並び方向Xに関して法線Nと30°以上をなす方向に関しては光の透過率が0%となる。このように、ライトコントロールフィルム16は、光の出射角度をその表面に対して所定の角度範囲(上述の例では法線Nに対して±30°の範囲)に制限し、一定の幅を有する指向性を持った光を出射できるようになっている。
【0019】
ここで、ロータリースピン機構12は、複数の壜1を自転させながら保持できるようになっており、回転軸12aを中心として回転することにより検査対象である壜1をライトコントロールフィルム16の前方で移動させるようになっている。撮像装置18のミラー20は、検査対象である壜1の移動に追従して角度を変えられるようになっている。このようにミラー20が壜1の移動に追従することにより、移動する壜1の検査部位を撮像装置18のカメラ22で撮像できるようになっている。
【0020】
ここで、図2に示すように、ライトコントロールフィルム16は、その表面の法線Nが壜1とミラー20とを結ぶ線からずれるように配置されている。このような配置により、壜1中の屈折性欠陥2により屈折した光を撮像装置18のカメラ22に導くことが可能となる。すなわち、拡散透過照明14から発せられた光はライトコントロールフィルム16を通して壜1に投光されるが、上述したライトコントロールフィルム16の作用により、ライトコントロールフィルム16から出射される光は、法線N方向に最も強く、その両側の所定の範囲(水平方向に±30°)に制限された光となる。この最も強い法線N方向の光が壜1中の屈折性欠陥2のある部分を透過すると、光がこの屈折性欠陥2により屈折してミラー20の方向に出射される。これにより、屈折性欠陥2がカメラ22に明るく写し出される。
【0021】
一方、最も強い法線N方向の光が欠陥のない部分を透過する場合には、その光はそのまま直進するが、ライトコントロールフィルム16から出射される光は、スポット光と異なり、一定の幅を持った光であるため、一部の光はミラー20に入射することとなる。これにより、カメラ22には背景が薄明るく写し出されることになる。
【0022】
また、ライトコントロールフィルム16からの光が壜1の合わせ目を透過する場合、屈折性欠陥と同様に光が屈折し、一部の光がミラー20に入射する。この場合の屈折角は屈折性欠陥の場合よりも小さいため、カメラ22には屈折性欠陥2よりも暗く写し出される。上述したように、ライトコントロールフィルム16からの一定の幅を持った光により背景が薄明るく写し出されるため、合わせ目の明るさが目立たなくなる。したがって、屈折性欠陥2のみを目立たせることができ、屈折性欠陥2を容易に区別することが可能となる。このため、屈折性欠陥2の検出を比較的簡単な画像処理で正確に行うことが可能となる。
【0023】
また、上述したライトコントロールフィルム16を用いれば、一定の幅を有する指向性のある光を水平方向に幅のあるライトコントロールフィルム16の全面から出射させることができるので、移動する壜1に対しても光を投光することができる。したがって、検査に際して壜1を静止させる必要がなく、壜1を移動させながら屈折性欠陥2の検出を行うことができる。このため、インデックススピン機構のような複雑な機構は不要となり、高速で検査を行うことが可能となる。
【0024】
図5は、本発明の第2の実施形態における壜胴部の欠陥検査装置の要部を示す側面図である。本実施形態の欠陥検査装置は、壜1中の横方向(水平方向)の屈折性欠陥を検出するものである。本実施形態においては、ライトコントロールフィルム36は、縦方向(垂直方向)に光の拡散を抑えるように構成されており、図5に示すように、ライトコントロールフィルム36から出射される光が斜め下方を向くように、その上部が傾けられている。このような構成によれば、上述した第1の実施形態と同じ原理により、屈折性欠陥の区別が容易になり、屈折性欠陥の検出を比較的簡単な画像処理で正確に行うことができる。
【0025】
なお、上述したライトコントロールフィルムの大きさ、配置、および傾斜などは、壜の移動経路やカメラや壜の配置に応じて最適なものを選択できることは言うまでもない。
【0026】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の壜胴部の欠陥検査装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における壜胴部の欠陥検査装置を示す模式図である。
【図3】図2の側面図である。
【図4】図2の欠陥検査装置におけるライトコントロールフィルムの構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における壜胴部の欠陥検査装置の要部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 壜
2 屈折性欠陥
10 欠陥検査装置
12 ロータリースピン機構
14 拡散透過照明(照明装置)
16,36 ライトコントロールフィルム
18 撮像装置
20 ミラー
22 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の出射角度をその表面に対して所定の角度範囲に制限するライトコントロールフィルムと、
前記ライトコントロールフィルムを通して検査対象となる壜に光を投光する照明装置と、
前記ライトコントロールフィルムを通して前記壜に投光された光が壜胴部の欠陥によって屈折する光を撮像する撮像装置と、
を備えたことを特徴とする壜胴部の欠陥検査装置。
【請求項2】
前記検査対象となる壜を前記ライトコントロールフィルムの前方で移動させる移動機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記壜の移動に追従して角度を調整可能なミラーと、該ミラーで反射した光を撮像するカメラとを含むことを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−178242(P2007−178242A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376573(P2005−376573)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(390014661)株式会社キリンテクノシステム (126)
【Fターム(参考)】