説明

声帯および軟組織の増強および修復用ヒドロゲル

本発明は、声帯修復または増強、および他の軟組織修復または増強(たとえば膀胱頚部増強、皮膚充填剤、乳房インプラント、椎間円板、筋量)のためのヒドロゲルおよびその組成を提供する。ヒドロゲルまたはその組成を表面固有層または発声上皮に注入して声帯の発声粘膜を回復することによって、患者の声を回復することができる。特に、約25Paの剪断弾性係数を有するヒドロゲルが発声粘膜の柔軟性を回復するのに有用であることが判明した。本発明はさらに、本発明のヒドロゲルを調製および使用する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2008年9月4日に出願された米国仮特許出願第61/094,237号の優先権を主張し、この米国仮特許出願第61/094,237号は、ここに引用により援用されている。
【0002】
発明の背景
声帯ヒダは、発声に必須の最も重要な振動組織である。ヒトには2つの声帯ヒダがあり、各々が、固有層(lamina propria: LP)および声帯筋を被包する重層扁平上皮からなる(Hirano, Phonosurgery: Basic and Clinical Investigations. Otologia (Fukuoka), 1975.21:p.239-442; Hirano, Structure of the vocal fold in normal and diseased states: anatomical and physical studies. The Conference on the Assessment of Vocal Patology; The American Speech-Language-Hearing Association, 1981.11:p.11-27の議事録;この各々がここに引用により援用されている)。固有層は、表面、中間、深部の3層に大まかに分割できる軟組織である。声帯靱帯は固有層の中間層および深層で構成され、声帯筋は声帯靱帯の深くに位置している。図1a−1b参照。声帯粘膜(すなわち表面固有層およびそれを覆う上皮)は、正常な発声に不可欠な主要な振動層であると長年にわたり認識されている(Bishop, J., Experimental Researches into the Physiology of the Human Voice. The London & Edinburgh Philosophical Magazine & Journal of Science, 1836;ここに引用により援用されている)。表面固有層(superficial lamina propria: SLP)は比較的無細胞の柔軟な軟組織であり、振動を担う発声粘膜の主要な構成要素である。これは、ほとんどの音声外科手術において同定、評価、および維持されなければならない(Zeitels, S.M., Hillman, R.E., Franco, R.A., Bunting, G., Voice and Treatment Outcome from Phonosurgical Management of Early Glottic Cancer. Annals of Otology, Rhinology and Laryngology, 2002.111(Supplement 190):p.1-20; Zeitels, S.M., Hillman, R.E., Desloge, R.B., Mauri, M., Doyle, P.B., Phonomicrosurgery in Singers & Performing Artists: Treatment Outcomes, Management Theories, & Future Directions. Annals of Otology, Rhinology, & Laryngology, 2002.111(Supplement 190):p.21-40; Zeitels, S.M., Healy, G.B., Laryngology and Phonosurgery. New England Journal of Medicine, 2003.349(9):p.882-92;この各々がここに引用により援用されている)。声帯粘膜の柔軟性が減少すると典型的に、永続的な嗄声が引起こされる(Zeitels, S.M., Hillman, R.E., Franco, R.A., Bunting, G., Voice and Treatment Outcome from Phonosurgical Management of Early Glottic Cancer. Annals of Otology, Rhinology and Laryngology, 2002.111(Supplement 190):p.1-20; Zeitels, S.M., Hillman, R.E., Desloge, R.B., Mauri, M., Doyle, P.B., Phonomicrosurgery in Singers & Performing Artists: Treatment Outcomes, Management Theories,& Future Directions. Annals of Otology, Rhinology,& Laryngology, 2002.111(Supplement 190):p.21-40; Zeitels, S.M., Healy, G.B., Laryngology and Phonosurgery. New England Journal of Medicine, 2003.349(9):p.882-92;この各々がここに引用により援用されている)。この柔軟性の減少は、良性腫瘍、悪性腫瘍、疾病、および挿管(たとえば、麻酔または長期の集中治療室での呼吸補助のため)に起因し得る。長期にわたって過度に話す(音声外傷)という形での声帯ヒダに対する自己誘発性損傷、または煙、アルコール、もしくは逆流症による胃酸などの環境性損傷でさえ、表面固有層の硬化および瘢痕化を引起し得る。最も一般的な欠陥の1つは、SLPの瘢痕化を引起す、声帯発声粘膜における上皮下I型コラーゲンの堆積である。
【0003】
自家移植片脂肪組織を用いてSLPを回復する試みがなされてきたが、そのような試みは限られた成果しか挙げていない(Zeitels, S.M., Sulcus, Scar, Synechia, and Web, Atlas of Phonomicrosurgery and Other Endolaryngeal Procedures for Benign and Malignant Disease. 2001, Singular:San Diego. p.133-151;ここに引用により援用されている)。現在、SLPの柔軟性を回復し、それによって発声粘膜の硬直を修復し、それに伴う嗄声を取除くか減少させることが実証された、臨床的に実現可能かつ再現可能な方法はない。今日まで、発声粘膜に失われた柔軟性を回復して、声帯振動障害およびそれに伴う永続的な嗄声を解消する合成材料または自家移植片はない(Zeitels, S.M., Blitzer, A., Hillman, R.E., Anderson, R.R., Foresight in Laryngology and Laryngeal Surgery: A 2020 Vision. Ann Otol Rhinol Laryngol, 2007.116(Supplement 198):p.1-16;ここに引用により援用されている)。現在の方策はすべて、よりよい弁の閉鎖を達成するために機能不全の声帯ヒダの形状および位置を変更するに過ぎない(Zeitels, S.M., Jarboe, J., Franco, R.A., Phonosurgical Reconstruction of Early Glottic Cancer. Laryngoscope, 2001.111:p.1862-1865; Kriesel, K.J., Thibeault, S.L., Chan, R.W., Suzuki, T., VanGroll, P.J., Bless, D.M., Ford, C.N., Treatment of vocal fold scarring: Rheological and histological measures of homologous collagen matrix. Annals of Otology. Rhinology, and Laryngology, 2002.111:p.884-889;この各々がここに引用により援用されている)。これらの技術は、空気力学的不全を減少させることによって音声形成を向上させるものであり、約1世紀前に初めて行われた外科的手技である(Brunings, W., Eine neue Behandlungsmethode der Rekurrenslahmungen. Verhandl Deutsch Vereins Deutscher Laryngologen, 1911.18:93-151;ここに引用により援用されている)。これらの方策は非常に限られた成果しか挙げておらず、解剖学的、生理学的、および/または生体力学的欠陥に対処していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の要約
本発明は、ヒドロゲルを用いて対象の発声粘膜の柔軟性を修復するためのシステムを提供する。本システムは、表面固有層が欠けている(たとえば声帯癌の治療が成功した後)、または表面固有層の機能的な振動能力が減少している(たとえば声の使い過ぎおよび/もしくは喫煙による慢性嗄声)上皮下発声粘膜領域に、ヒドロゲルまたは他の材料を挿入または注入することを伴う。これは、発声粘膜の柔軟性および正常な声帯振動を回復し、それによって硬直およびそれに伴う嗄声を減少させるために行なわれる。約25Paの剪断弾性係数を有するヒドロゲルが声帯修復用の発明のシステムに特に有用であることが判明した。本発明に有用なヒドロゲルは典型的に、1つのポリマーが非架橋性ポリマーの存在下で自己架橋すると形成される、半相互浸透網状組織である。本発明は、声帯修復用の発明のシステムに有用な新規のヒドロゲル組成、ならびに表面固有層の直下または内部に形成された空間にヒドロゲルを送達するための方法および装置を提供する。注入されたヒドロゲルは発声粘膜を増強するように作用し、この組織の振動および発声を可能にする。たとえば、限定されないが、関節保護薬(たとえばHYALGAN(登録商標)(ヒアルロン酸ナトリウム)、SYNVISC(登録商標)(Hylan G-F 20)、ORTHOVISC(登録商標)(高分子量ヒアルロナン))および皮膚充填剤(たとえばRESTYLANE(登録商標)(ヒアルロン酸)、PERLANE(登録商標)(ヒアルロン酸)、HYLAFORM(登録商標)(安定化ヒアルロン酸)、RADIESSE(登録商標)(水性ゲル中のカルシウムヒドロキシルアパタイトミクロスフェア))などの他の材料も、声帯修復のために用いられ得る。当業者によって認識されるように、本明細書中に記載のヒドロゲルは、他の軟組織を修復および/または増強するのにも有用である。たとえば、ヒドロゲルは、中央化(たとえば麻痺性発声障害)用の深部声帯インプラント(副声門筋肉)、皮膚充填剤、乳房インプラント、失禁治療用膀胱頚部インプラント、椎間円板、筋量、顔の輪郭矯正、および関節液として用いられ得る。さらに、傷、または鼻や耳などの開口部を含む切開部を埋めるためにも用いられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの局面では、本発明は、声帯修復用、または他の軟組織の修復もしくは増強用の、本発明のシステムで用いる新規のヒドロゲルを提供する。これら新規のヒドロゲルは、長期的または一時的な声帯の即時再構成を提供し得、ヒドロゲルは、細胞(たとえば幹細胞などの多能性細胞)または他の生理活性剤(たとえば薬品)を導入するための基質または足場(scaffold)を提供し得る。たとえば、溶解ヒドロゲルが、痙攣性発声障害を治療するためにボトックス(ボツリヌス毒素)の定期的な注入を投与される患者と同様に、対象の必要に応じて2−3ヶ月ごと、または6ヶ月ごとに手術室や診療所で再挿入/再注入され得る。本発明に有用なヒドロゲルは典型的に、ポリマーの半相互浸透網状組織であるが、ポリマーと一成分ヒドロゲルとの相互浸透網状組織も本発明で用いられ得る。ヒドロゲルは、約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する。ある実施形態では、剪断弾性係数は、約20Paから約30Paの範囲である。ある実施形態では、ヒドロゲルの剪断弾性係数は約25Paである。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリエチレングリコールおよび別の水溶性の非架橋性ポリマー(たとえばポリエチレングリコール、タンパク質、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリリシン、デキストラン、アルギネート、ゼラチン、エラスチン、セルロースなど)を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性タンパク質またはペプチド(たとえばエラスチン様ペプチド、コラーゲン模倣ペプチド、コラーゲン関連ペプチド、ポリリシンの架橋性誘導体)または架橋性ポリサッカリド(たとえばヒアルロン酸、メチルセルロース、デキストラン、アルギネートなどの架橋性誘導体)を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性エラストマーポリマー(たとえばセバシン酸ポリグリセロールの架橋性誘導体)を含む。架橋性ペプチド、タンパク質、またはポリサッカリドは、架橋用のアクリレート部分を含み得る。本発明では、さまざまなポリマー、分子量、架橋範囲、濃度、架橋性部分、および架橋性ポリマー対非架橋性ポリマーの比率が利用され得る。ある実施形態では、ヒドロゲルの架橋性ポリマー成分は、光架橋を用いて(たとえばUV光を用いて)架橋される。ある実施形態では、ヒドロゲルの架橋性ポリマー成分は、フリーラジカル反応を用いて架橋される。そのようなフリーラジカル反応は、光、熱、または生物学的もしくは化学的触媒を用いて開始され得る。ある実施形態では、フリーラジカル反応は熱を用いて開始される。ある実施形態では、フリーラジカル反応は光(たとえばUV光)を用いて開始される。ヒドロゲルは典型的に生体適合性であり、容易に生分解可能ではないため、注入場所においてインビボでの半減期が延長する。細胞、ポリヌクレオチド、タンパク質、医薬品などの生理活性剤、または微粒子、ナノ粒子、またはこれらの生理活性剤のうちのいずれかを含有する他の薬品送達デバイスをヒドロゲルに加えてもよい。
【0006】
さらに別の局面では、本発明は、声帯修復を必要とする患者の治療に有用なキットを提供する。キットは、患者の治療に必要なすべての構成要素のすべてまたはサブセットを含み得る。キットはたとえば、ヒドロゲル、ヒドロゲルの成分、架橋試薬、UVランプ、注射器、針、麻酔薬、抗生物質などを含み得る。ある実施形態では、キットの構成要素は、外科医または他の医療専門家が使いやすいように無菌包装される。キットはさらに、ヒドロゲルを投与するための指示も含み得る。キットは、1回分の使用に必要な構成要素を提供し得る。キットはさらに、医薬品および/または医療機器を規制する政府規制当局が要求するようなパッケージングおよび情報も含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1aは、中咽頭からの喉頭口および声帯ヒダの頭側の図である。図1bは、層状のミクロ構造を示す声帯ヒダの冠状部を示す図である。
【図2】相互浸透網状組織中に存在するポリエチレングリコール−ジアクリレート(PEG−DA)の画分に対するヒドロゲルの剪断弾性係数の依存を示す図である。相互浸透網状組織の第2の成分は、ポリエチレングリコール(PEG)である。剪断弾性係数は、PEG−DAの画分だけでなく、成分の分子量にも大きく依存する。
【図3】ウシ(cow)の喉頭モデルにおける、声帯ヒダ可動域の生成能力に基づいた材料硬さの区別を示す図である。
【図4】異なる材料を移植した際の、ウシ(cow)の喉頭モデルにおける声帯ヒダ可動域を示す図である。
【図5】PEG30非注入声帯ヒダに対する注入声帯ヒダの振幅比の百分率を、イヌモデルを用いてインビボで測定した時間関数として示す図である。
【図6】緩衝液中のPLGA(50:50;75:25)ナノ粒子からのラパマイシンの徐放を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
本明細書中で用いられる「抗炎症剤」とは、炎症の1つ以上の徴候または症状を抑制する任意の物質を指す。
【0009】
本明細書中で用いられる「抗線維剤」とは、線維症を抑制する任意の物質を指す。例示的な抗線維剤はラパマイシンである。
【0010】
本明細書中で用いられる「水媒体」とは、水と、任意に1つ以上の水混和性溶媒(たとえばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびヒドロカルビルアルコール、ジオール、またはグリセロール)とを含有する液体培地を意味する。水媒体は、少なくとも50容量%、60容量%、70容量%、80容量%、90容量%以上の水を含有し得る。水媒体は、溶解、分散、または懸濁したさまざまな物質を含有し得ることが認識されるであろう。
【0011】
数に関する「約」という用語は概して、特に明記しない限り、または特に文脈から明白でない限り(そのような数が可能値の100%を超える場合以外)、当該数のいずれかの方向(当該数よりも大きいか小さい)における5%の範囲内の数を含む。
【0012】
「生体適合性の」とは、使用場所での量で受容者の細胞にとって実質的に無毒であり、かつ、たとえば容認できない免疫または炎症反応、容認できない瘢痕組織形成などの重大な有害影響または悪影響を使用場所で受容者の体に誘発したり引起こしたりしない材料を指す。
【0013】
「生体適合性の」とは、配置される領域内の残留または一部機能組織の正常機能の悪化をもたらさない材料を指す。
【0014】
「生分解性の」とは、たとえば、生理的条件下での加水分解によって、および/または細胞内もしくは体内に存在する酵素の作用などの生物学的プロセスによって、および/または典型的に代謝され、任意に体によって用いられ、および/または排出もしくはそうでなければ処分され得るさらに小さい化学種を形成する溶解、分散などのプロセスによって、材料が対象の細胞内または体内で物理的および/または化学的に崩壊可能であることを意味する。本発明の目的上、モノマーの数の減少のために分子量がインビボで時間とともに減少するポリマーまたはヒドロゲルは生分解性であると考えられる。ある実施形態では、声帯修復に有用なヒドロゲルは実質的に生分解性ではない。
【0015】
「生理活性剤」とは、たとえばインビボでの治療、診断、および/または予防性質などの所望の生物学的活性を有する任意の化合物もしくは薬剤、またはその薬学的に許容可能な塩である。当該薬剤は、生物学的活性を発揮するためにヒドロゲルから放出される必要があり得ることが理解される。生理活性剤は本明細書中に記載の治療剤を含むが、これらに限定されない。生理活性剤は、限定されないが、小分子、ペプチドまたはポリペプチド、免疫グロブリン、たとえば抗体、核酸、細胞、組織構成物であり得る。限定されないが、ホルモン、成長因子、薬品、サイトカイン、ケモカイン、凝固因子および内因性凝固因子などが生理活性剤である。
【0016】
本明細書中で用いられる「架橋された」という用語は、ポリマーの反復単位に見出されないか、ポリマーの反復単位同士の間に見出される、少なくとも1つの共有結合を有するポリマーについて述べている。架橋結合は典型的に、ポリマーの個々の鎖同士または分子同士の間にあるが、大環状構造を形成するための分子内架橋も生じ得る。架橋は、ポリマーの(たとえば端で、側鎖上で、など)任意の2個の官能基同士の間に形成される。ある実施形態では、架橋は、ポリマーの末端のアクリレート単位同士の間に形成される。また、任意の種類の共有結合が架橋を形成し得る(たとえば炭素−炭素、炭素−酸素、炭素−窒素、酸素−窒素、硫黄−硫黄、酸素−リン、窒素−窒素、酸素−酸素など)。結果として得られる架橋材料は、分岐状、直鎖状、樹枝状などであり得る。ある実施形態では、架橋は、架橋の三次元網状組織を形成する。架橋は、共有結合を引起す任意の化学反応によって形成され得る。典型的に、架橋は、たとえば光開始剤または熱開始剤を用いてフリーラジカル開始反応によって作られる。
【0017】
「内視鏡」または「喉頭鏡」という用語は、声帯ヒダの正確な層へのヒドロゲルの配置を導くために用いる器具を意味する。一般に、3種類の喉頭鏡がある。喉頭ミラーと同様の角張った光学部品を有する剛性望遠鏡を口から中咽頭に入れて、声帯を見ることができる。可撓性喉頭鏡を鼻から咽頭に入れて、声帯を見ることができる。直接型喉頭鏡は剛性スパチュラまたは管状検鏡で構成され、患者の口から入れられ、典型的に無意識状態時に用いられ、内視鏡的喉頭手術時に声帯ヒダを視覚化および計測したり、全身麻酔または気道支持のために患者に挿管したりする。
【0018】
「ヒドロゲル」とは、大量の水を含有する親水性ポリマーを含む三次元網状組織である。ヒドロゲルはたとえば、w/w基準で、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれよりも高い水分量を含有し得る。「ヒドロゲル前駆体」とは、水媒体中で少なくとも部分的に可溶性であり、かつ架橋されてヒドロゲルを形成可能なポリマーである。
【0019】
「相互浸透網状組織」とは、2個のポリマーが互いの存在下で架橋される、ポリマーの網状組織を有する任意の材料を指す。両ポリマーは架橋性であり、各々は他方のポリマーとではなく自己架橋することによって自身の網状組織を形成する。典型的に、2個のポリマーは互いの存在下で合成および/または架橋され、両ポリマーは同様の反応速度を有し、2個のポリマーは明らかに相分離していない。
【0020】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを指す。「ポリヌクレオチド」、「核酸」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、区別なく用いられ得る。典型的に、ポリヌクレオチドは少なくとも2個のヌクレオチドを含む。DNAおよびRNAはポリヌクレオチドである。ポリマーは、天然ヌクレオシド(すなわちアデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、およびデオキシシチジン)、ヌクレオシド類似体(たとえば2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3-メチルアデノシン、C5-プロピニルシチジン、C5-プロピニルウリジン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-メチルシチジン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および2-チオシチジン)、化学修飾塩基、生物修飾塩基(たとえばメチル化塩基)、介在塩基、修飾糖質(たとえば2'-フルオロリボース、2'-メトキシリボース、2'-アミノリボース、リボース、2'-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース)、または修飾リン酸基(たとえばホスホロチオエートおよび5'-Nホスホラミダイト連鎖)を含み得る。天然または修飾ヌクレオシドの鏡像異性体も用いられ得る。核酸はさらに、核酸ベースの治療剤、たとえば核酸リガンド、siRNA、低分子ヘアピン型RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、およびWlotzka, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002,99(13):8898に記載のオリゴヌクレオチドリガンドであるSPIEGELMERS(商標)を含み、この文献の全内容がここに引用により援用されている。
【0021】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、または「タンパク質」は、ペプチド結合によってともに連鎖された少なくとも3つのアミノ酸の鎖を含む。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は区別なく用いられ得る。ペプチドは、個々のペプチドまたは収集ペプチドを指し得る。発明のペプチドは好ましくは、天然アミノ酸のみを含有するが、非天然アミノ酸(すなわち、天然発生しないがポリペプチド鎖に取込まれ得る化合物)および/または当該技術において公知のアミノ酸類似体を代替的に用いてもよい。また、ペプチド中の1つ以上のアミノ酸は、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、共役結合基、官能基化、または他の修飾などのためのリンカーなどの化学物質を加えることによって修正され得る。1つの実施形態では、ペプチドの修飾によって、より安定したペプチド(たとえばインビボでの半減期の延長)がもたらされる。これらの修飾は、ペプチドの環化、D−アミノ酸の取込みなどを含み得る。いずれの修飾も、ペプチドの所望の生物学的活性を実質的に妨害するべきでない。
【0022】
「ポリサッカリド」および「炭水化物」という用語は区別なく用いられ得る。ほとんどの炭水化物は多くのヒドロキシル基を含むアルデヒドまたはケトンであり、通常、分子の各炭素原子上に1つずつヒドロキシル基を有する。炭水化物は一般に、分子式C2nを有する。炭水化物は、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、またはポリサッカリドであり得る。最も基本的な炭水化物は、グルコース、スクロース、ガラクトース、マンノース、リボース、アラビノース、キシロース、およびフルクトースなどの単糖である。二糖は、連結された2個の単糖である。例示的な二糖は、スクロース、マルトース、セロビオース、およびラクトースを含む。典型的に、オリゴ糖は3個から6個の単糖単位(たとえばラフィノース、スタキオース)を含み、ポリサッカリドは6個以上の単糖単位を含む。例示的なポリサッカリドは、デンプン、グリコーゲン、およびセルロースを含む。炭水化物は、ヒドロキシル基が除去された2'-デオキシリボース、ヒドロキシル基がフッ素で置換された2'-フルオロリボース、またはグルコースの窒素含有形態であるN-アセチルグルコサミン(たとえば2'-フルオロリボース、デオキシリボース、およびヘキソース)などの修飾糖単位を含有し得る。本発明に有用な炭水化物は、直鎖状または分岐状であり得る。炭水化物は、たとえば配座異性体、環状形態、非環状形態、立体異性体、互変異性体、アノマー、異性体などの多くの異なる形態で存在し得る。
【0023】
「半相互浸透網状組織」とは、1つのポリマーが非架橋性ポリマーの存在下で自己架橋する、ポリマーの網状組織を指す。
【0024】
「小分子」とは、分子量が比較的低く、かつタンパク質、ポリペプチド、または核酸ではない、自然発生するか人工的に生成された(たとえば化学合成によって)有機化合物を指す。小分子は典型的に、反復単位を有するポリマーではない。ある実施形態では、小分子の分子量は、約1500g/モル未満である。また、小分子は典型的に、複数の炭素−炭素結合を有し、複数の立体中心および官能基を有し得る。
【0025】
「溶解度」とは、たとえば飽和溶液を作るために規定の温度およびpHで一定量の溶媒に溶解する物質量を指す。溶解度は、たとえば振盪フラスコ溶解度法を用いて求められ得る(ASTM:E 1148-02, Standard Test Method for Measurements of Aqueous Solubility, Book of Standards Volume 11.05)。溶解度は、pH3.0から9.0で、たとえば4.0から8.0、5.0から8.0、6.0から8.0、たとえば6.5から7.6、たとえば6.8−7.4、たとえば7.0、または上記範囲内の任意の値で求められ得る。溶解度は、20から40℃、たとえば約25−37℃、たとえば約37℃、または上記範囲内の任意の値の温度で試験され得る。たとえば、溶解度は、約7.0−7.4のpHで、かつ約37℃で求められ得る。
【0026】
本明細書中で用いられる「対象」とは、たとえば実験、診断、および/または治療目的で薬剤が送達される個体を指す。好ましい対象は哺乳類、特に家畜哺乳類(たとえばイヌ、ネコなど)、霊長類、またはヒトである。医師または他の医療提供者の治療を受けている対象は、「患者」と称され得る。
【0027】
「薬品」とも称される「医薬品」とは、本明細書中では、疾病、障害、または対象にとって有害な他の臨床的に認識された状態の治療目的や予防目的で対象に投与され、かつ疾病、障害、または状態を治療するために臨床的に重大な影響を体に及ぼす薬剤を指す。治療薬は、限定されないが、米国薬局方(USP)、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 10th Ed., McGraw Hill, 2001; Katzung, B.(ed.) Basic and Clinical Pharmocology, McGraw-Hill/Appleton & Lange; 8th edition (September 21, 2000); Physician's Desk Reference (Thomson Publishing)、および/またはThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 17th ed.(1999)、またはその出版後の第18版(2006)、Mark H. Beers and Robert Berkow (eds.), Merck Publishing Group、または動物の場合はThe Merck Veterinary Manual, 9th ed., Kahn, C.A.(ed.), Merck Publishing Group, 2005に列挙された薬剤を含む。
【0028】
「粘度」とは、一定温度での液体の厚みまたは流れ抵抗の測定値を指す。粘度は、当該技術において公知のさまざまな方法および器具を用いて求められ得る。たとえば、まずポリマーを計量し、次に適切な溶媒中に溶解させる。溶液および粘度計を定温ウォーターバスに入れる。溶液中に熱平衡が得られる。次に、液体を粘度計の上限目盛線よりも高い位置まで動かす。溶液が上限目盛線から下限目盛線まで流れる時間を記録する。ポリマーを含む溶液の粘度は、ASTM Book of Standards, Practice for Dilute Solution Viscosity of Polymers (ASTM D2857), Volume 08.01, June 2005、または特定のポリマーについての関連のASTM基準に従って求められ得る。溶解度は、20から40℃、たとえば約25−37℃、たとえば約37℃、または上記範囲内の任意の値の温度で試験され得る。たとえば、溶解度は、約7.0−7.4のpHで、かつ約37℃で求められ得る。
【0029】
材料の「剪断弾性係数」とは、材料の1つの表面と平行に力が印加されつつ、その反対面が対抗力(たとえば摩擦)を受けるときに材料が弾性的に(すなわち非永続的に)変形する傾向の数学的記述である。剪断弾性係数は、剪断歪みに対する剪断応力の比率として計算される。たとえば、1Nの力が1mの面積の表面に対して接線方向に(xy面上で)印加され、xy面において1%の形状変化(歪み=0.01)をもたらす場合、その材料の剪断弾性係数は1/0.01=100Paである。
【0030】
発明のある実施形態の詳細な説明
本発明は、声帯ヒダの発声上皮下軟組織が振動および発声可能なように柔軟性を有しなければならないという認識に由来している。正常な状態では、これは表面固有層(SLP)である。この認識に基づいて、発声上皮の内部または下にヒドロゲルを注入すると、硬化および/または瘢痕化した声帯ヒダを有する患者の発声を向上できることが判明した。この方法に有用なヒドロゲルは典型的に、約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する。本発明はさらに、患者の声帯修復および他の軟組織(たとえば皮膚、筋肉、乳房、膀胱、椎間円板)に有用な新規のヒドロゲルおよびその組成を提供する。
【0031】
ヒドロゲル
本発明は、声帯修復、または他の軟組織修復もしくは増強に用いる新規のヒドロゲルを提供する。ヒドロゲルは、超吸収性の天然または合成ポリマーである。ヒドロゲルは、最大99重量%の水を含有し得る。ある一定のヒドロゲルが声帯修復に有用であることが判明した。ヒドロゲルは、1つ以上のポリマーを含み得る。ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋および/または非架橋ポリマーの混合物である。特に、ヒドロゲルを形成するポリマーの半相互浸透網状組織が声帯修復に有用であることが分かった。ヒドロゲルおよび一成分ヒドロゲルを形成するポリマーの相互浸透網状組織も声帯修復に有用であることが分かった。さらに、約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有するヒドロゲルが、声帯の発声粘膜の柔軟性の回復に特に有用であることが判明した。ある実施形態では、ヒドロゲルの剪断弾性係数は約20Paから約30Paの範囲である。ある実施形態では、ヒドロゲルの剪断弾性係数は約25Paである。
【0032】
ある実施形態では、ヒドロゲルは1つのポリマーのみを含む。ある他の実施形態では、ヒドロゲルは2個以上のポリマーを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは2個のポリマーを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは3個、4個、5個、またはそれ以上のポリマーを含む。ポリマーの混合物によって、ヒドロゲルの所望の特性を調整することができる。ヒドロゲルの調製時には如何なるポリマーを用いてもよい。ヒドロゲルのポリマーは、天然でも合成でもよい。典型的に、ヒドロゲルで用いられるポリマーは、少なくともある程度水溶性である。ヒドロゲルの調製時に有用なポリマーの例は、ポリカーボネート(たとえばポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(たとえばポリ(セバシン酸無水物))、ポリヒドロキシ酸(たとえばポリ(s−ヒドロキシアルカノエート))、ポリプロピルフメレート、ポリカプロラクトン、ポリアミド(たとえばポリカプロラクタム、ポリリシン、D−アミノ酸で作られたペプチド)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(たとえばポリラクチド、ポリグリコリド)、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリサッカリド(たとえばヒアルロン酸、デキストラン、アルギネート、セルロース)、ポリアミン、およびそれらのコポリマーを含むが、これらに限定されない。天然ポリマーの例は、タンパク質、ペプチド(たとえばエラスチン様ペプチド、コラーゲン模倣ペプチド、コラーゲン関連ペプチド)、ポリサッカリド(たとえばヒアルロン酸、メチルセルロース、デキストラン、アルギネート)、および核酸を含む。
【0033】
ある実施形態では、ヒドロゲルはポリオールを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルはポリエーテル(たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール)を用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルはポリエチレングリコールを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエーテルおよび別のタイプのポリマーを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールおよび別のタイプのポリマーを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエーテルおよびタンパク質を用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエーテルおよびポリサッカリドを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエーテルおよび別のポリエーテルを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエーテルおよびポリオールを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、少なくとも2つのポリエーテルを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化バージョンのポリエチレングリコールおよび別のタイプのポリマーを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ジアクリル化バージョンのポリエチレングリコールおよび別のタイプのポリマーを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリ(セバシン酸グリセロール)およびアクリル化ポリエチレングリコールを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ヒアルロン酸およびアクリル化ポリエチレングリコールを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、メチルセルロースおよびアクリル化ポリエチレングリコールを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、デキストランおよびアクリル化ポリエチレングリコールを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、アルギネートおよびアクリル化ポリエチレングリコールを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリリシンおよびアクリル化ポリエチレングリコールを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリ(セバシン酸グリセロール)およびポリエチレングリコール−ジアクリレートを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ヒアルロン酸およびポリエチレングリコール−ジアクリレートを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、メチルセルロースおよびポリエチレングリコール−ジアクリレートを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、デキストランおよびポリエチレングリコール−ジアクリレートを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、アルギネートおよびポリエチレングリコール−ジアクリレートを用いて調製される。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリリシンおよびポリエチレングリコール−ジアクリレートを用いて調製される。
【0034】
ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性ペプチドまたはタンパク質および別のタイプのポリマーを用いて調製される。ある実施形態では、架橋性ペプチドは、架橋性バージョンのエラスチン様ペプチド(ELP)、コラーゲン模倣ペプチド(CMP)、またはコラーゲン関連ペプチド(CRP)である。ペプチドは、天然L−アミノ酸、非天然D−アミノ酸、またはそれらの組合わせを含み得る。ペプチドがD−アミノ酸からなる場合、結果として得られるペプチドは典型的に生分解、特に酵素分解できない。ある実施形態では、架橋性ペプチドは、アクリル化バージョンのペプチドを含む。本明細書中に記載の他の架橋性部分も用いられ得る。架橋性ペプチドは、本明細書中に記載の任意の他のポリマーと組合わせられ得る。ある実施形態では、架橋性ペプチドは、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、メチルセルロース、エラスチン、ポリリシン、またはそれらの誘導体の存在下で架橋する。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(D−ペプチド形態)およびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(L−ペプチド形態)およびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(D−ペプチド形態)およびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(L−ペプチド形態)およびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(D−ペプチド形態)およびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(L−ペプチド形態)およびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(D−ペプチド形態)およびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(L−ペプチド形態)およびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(D−ペプチド形態)およびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ELP(L−ペプチド形態)およびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリリシンおよびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリリシンおよびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリリシンおよびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリリシンおよびエラスチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリリシンおよびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリリシンおよびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリリシンおよびゼラチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、天然ポリマーのみを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールまたはその誘導体を含まない。
【0035】
ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性ポリサッカリドおよび別のタイプのポリマーを用いて調製される。ある実施形態では、架橋性ポリサッカリドは水溶性ポリサッカリドである。ある実施形態では、架橋性ポリサッカリドは直鎖状ポリサッカリドである。別の実施形態では、架橋性ポリサッカリドは分岐状ポリサッカリドである。ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性バージョンのヒアルロン酸を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、、架橋性バージョンのメチルセルロースまたは他のセルロース誘導体を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、、架橋性バージョンのデキストランを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性バージョンのアルギネートを含む。ある実施形態では、架橋性ポリサッカリドは、アクリル化バージョンのポリサッカリドである。本明細書中に記載の他の架橋性部分も用いられ得る。架橋性ポリサッカリドは、本明細書中に記載の任意の他のポリマーと組合わせられ得る。ある実施形態では、架橋性ポリサッカリドは、ヒアルロン酸、コラーゲン、デキストラン、ゼラチン、ポリリシン、アルギネート、メチルセルロース、エラスチン、またはそれらの誘導体の存在下で架橋する。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化メチルセルロースおよびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化メチルセルロースおよびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化メチルセルロースおよびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化メチルセルロースおよびエラスチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化メチルセルロースおよびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化メチルセルロースおよびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化メチルセルロースおよびゼラチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ヒアルロン酸およびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ヒアルロン酸およびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ヒアルロン酸およびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ヒアルロン酸およびエラスチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ヒアルロン酸およびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ヒアルロン酸およびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ヒアルロン酸およびゼラチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、アクリル化ヒアルロン酸は、メタクリル化ヒアルロン酸である。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化デキストランおよびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化デキストランおよびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化デキストランおよびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化デキストランおよびエラスチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化デキストランおよびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化デキストランおよびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化デキストランおよびゼラチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化アルギネートおよびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化アルギネートおよびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化アルギネートおよびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化アルギネートおよびエラスチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化アルギネートおよびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化アルギネートおよびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化アルギネートおよびゼラチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは天然ポリマーのみを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリサッカリドまたはポリサッカリドの誘導体のみを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールまたはその誘導体を含まない。
【0036】
ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性エラストマーポリマーおよび別のタイプのポリマーを用いて調製される。ある実施形態では、ヒドロゲルは、架橋性バージョンのポリ(セバシン酸グリセロール)(PGS)を含む。ある実施形態では、架橋性ポリサッカリドは、アクリル化バージョンのエラストマーポリマーである。本明細書中に記載の他の架橋性部分も用いられ得る。架橋性エラストマーポリマーは、本明細書中に記載の任意の他のポリマーと組合わせられ得る。ある実施形態では、架橋性エラストマーポリマーは、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、メチルセルロース、エラスチン、デキストラン、ポリリシン、またはそれらの誘導体の存在下で架橋する。ある実施形態では、架橋性エラストマーポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、またはそれらの誘導体の存在下で架橋する。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびヒアルロン酸の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびメチルセルロースの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびエラスチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびコラーゲンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびゼラチンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびデキストランの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびアルギネートの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびポリリシンの半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化PGSおよびポリエチレングリコール(PEG)の半相互浸透網状組織を含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、天然ポリマーのみを含む。ある実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールまたはその誘導体を含まない。
【0037】
ある実施形態では、ヒドロゲルは、1つのポリマーが非架橋性ポリマーの存在下で自己架橋すると形成される、ポリマーの半相互浸透網状組織である。ある実施形態では、架橋性ポリマーは水溶性である。ある実施形態では、非架橋性ポリマーは水溶性である。水溶性ポリマーは典型的に、水1リットル当たりポリマーが少なくとも約0.1gの最小溶解度を有する。ある実施形態では、水に対するポリマーの溶解度は、水1リットル当たりポリマーが少なくとも約0.5gである。ある実施形態では、水に対するポリマーの溶解度は、水1リットル当たりポリマーが少なくとも約1gである。ある実施形態では、水に対するポリマーの溶解度は、水1リットル当たりポリマーが少なくとも約5gである。ある実施形態では、水に対するポリマーの溶解度は、水1リットル当たりポリマーが少なくとも約10gである。ヒドロゲルはさらに、水溶性または非水溶性の他のポリマーを含み得る。本明細書中に記載のポリマーのいずれかを用いて、ポリマーの半相互浸透網状組織が調製され得る。ある実施形態では、ポリマーの半相互浸透網状組織の調製時にポリエーテルが用いられる。ある実施形態では、ポリマーは架橋に好適であるように修飾される。たとえば、架橋に好適な官能基(たとえばアクリルレート部分、ビニル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、メタクリレート部分、シアノアクリレート部分)がポリマーに加えられ得る。
【0038】
ヒドロゲルの架橋性ポリマー成分は、架橋可能な任意の合成または天然ポリマーであり得る。ある実施形態では、架橋性ポリマーは合成ポリマーである。ある実施形態では、架橋性ポリマーは、タンパク質または炭水化物などの天然ポリマーである。ポリマーは典型的に、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アルキン、カルボン酸、アミン、アルデヒド、ハライド、アジド、エステル、チオール、ジアジリン、カルボジイミド、イミドエステル、アゼン、エポキシドまたはアジリジンなどの歪環などの、架橋に好適な官能基を含むか、含むように修飾され得る。ある実施形態では、ポリマーはアクリル化ポリエチレングリコールである。たとえば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールトリアクリレートなどがヒドロゲル中の架橋性ポリマーとして用いられ得る。ポリエチレングリコール以外の他のポリマーは、ポリマーの骨格を形成し得る。他の例示的なポリマー骨格は、ポリエステル、ポリアミン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリウレア、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酸、ポリプロピルフマレート、ポリカプロラクトン、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、およびポリカーボネートを含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、ポリマー骨格はポリプロピレングリコールである。ある実施形態では、ポリマー骨格はポリブチレングリコールである。ある実施形態では、ポリマーはアクリル化ではなくメタクリル化されている。ある実施形態では、ポリマーはシアノアクリル化されている。ある実施形態では、ポリマーは、アクリレートまたはメタクリレート部分ではなくビニル部分を含む。ある実施形態では、ポリマーはアジド部分を含む。ある実施形態では、ポリマーは歪環を含む。ある実施形態では、ポリマーはエポキシド部分を含む。ある実施形態では、ポリマーはアジリジン部分を含む。ある実施形態では、ポリマーはアミンを含む。ある実施形態では、ポリマーはアルデヒドを含む。ある実施形態では、ポリマーはハロゲンを含む。ある実施形態では、ポリマーはアルケニル部分を含む。ある実施形態では、ポリマーはアルキニル部分を含む。ある実施形態では、ポリマーはカルボン酸を含む。ある実施形態では、ポリマーはエステルを含む。ある実施形態では、ポリマーはチオールを含む。ある実施形態では、ポリマーはジアジリンを含む。ある実施形態では、ポリマーはカルボジイミドを含む。ある実施形態では、ポリマーはイミドエステルを含む。ある実施形態では、ポリマーはアゼン部分を含む。ある実施形態では、ポリマーはニトレン部分を含む。
【0039】
ヒドロゲルの非架橋性ポリマー成分も、合成または天然であり得る。典型的に、ヒドロゲルの非架橋性ポリマー成分は水溶性ポリマーである。ある実施形態では、非架橋性ポリマーは合成ポリマーである。他の実施形態では、非架橋性ポリマーは天然ポリマーである。例示的な非架橋性の水溶性ポリマーは、ポリエーテル、ポリペプチド(たとえばポリリシン、ポリセリン、ポリスレオニン、ポリグルタメート、ポリアスパルテート、ポリヒスチジン、ポリアルギニン)、ポリサッカリド(たとえばアルギネート、デキストラン、セルロース、ヒアルロン酸)、ポリアミド、タンパク質(たとえばゼラチン、エラスチン)、およびそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、たとえば非アクリル化ポリマー(たとえばポリエチレングリコール)対アクリル化ポリマー(たとえばポリエチレングリコールジアクリレート)のように、非架橋性ポリマーは架橋性ポリマーと類似している。
【0040】
ヒドロゲルの物理化学的性質は、非架橋性ポリマーと比較した架橋性ポリマーの一部、一方または両方のポリマーの分子量、ポリマーの濃度、および架橋の範囲を変更することによって変わり得る。
【0041】
いずれのポリマーの分子量も、約2,000g/モルから最大約600,000g/モルの範囲であり得る。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約5,000g/モルから約30,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約5,000g/モルから約10,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約10,000g/モルから約15,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約10,000g/モルから約20,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約20,000g/モルから約30,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約30,000g/モルから約40,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約40,000g/モルから約50,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、架橋前の架橋性ポリマーの分子量は、約5,000g/モル、約10,000g/モル、約15,000g/モル、約20,000g/モル、約25,000g/モル、約30,000g/モル、約35,000g/モル、約40,000g/モル、約45,000g/モル、および約50,000g/モルである。ある実施形態では、非架橋性ポリマーの分子量は、約5,000g/モル、約10,000g/モル、約15,000g/モル、約20,000g/モル、約25,000g/モル、約30,000g/モル、約35,000g/モル、約40,000g/モル、約45,000g/モル、および約50,000g/モルである。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約50,000g/モルから約100,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約100,000g/モルから約200,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約200,000g/モルから約300,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約250,000g/モルである。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約300,000g/モルから約400,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約400,000g/モルから約500,000g/モルの範囲である。ある実施形態では、ポリマーの分子量は、約500,000g/モルから約600,000g/モルの範囲である。
【0042】
発明のヒドロゲルでは、架橋性ポリマーと非架橋性ポリマーとの任意の比率が用いられ得る。ある実施形態では、ほぼ同等の各ポリマー成分を用いてヒドロゲルが調製される。ある実施形態では、一方のポリマーの量が他方よりも多い。ある実施形態では、非架橋性ポリマーの量が架橋性ポリマーの量よりも多い。ある実施形態では、非架橋性ポリマーと架橋性ポリマーとの比率は、約10:90、約20:80、約30:70、約40:60、約50:50、約60:40、約70:30、約80:20、または約90:10である。ある特定の実施形態では、非架橋性ポリマーと架橋性ポリマーとの比率は、約70:30である。ある特定の実施形態では、非架橋性ポリマーと架橋性ポリマーとの比率は、約69:31である。ある特定の実施形態では、非架橋性ポリマーと架橋性ポリマーとの比率は、約71:29である。ある特定の実施形態では、非架橋性ポリマーと架橋性ポリマーとの比率は、約72:28である。ある特定の実施形態では、非架橋性ポリマーと架橋性ポリマーとの比率は、約65:35である。ある特定の実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約10%から約50%の範囲である。ある特定の実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約20%から約40%の範囲である。ある特定の実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約25%から約35%の範囲である。ある実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約25%である。ある実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約30%である。ある実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約35%である。ある実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約40%である。ある実施形態では、ヒドロゲル中の架橋性ポリマーの百分率は、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、または約35%である。
【0043】
ポリマーの半相互浸透網状組織の架橋性ポリマーは、フリーラジカル媒介法によって架橋する。2個以上のポリマー成分が所望の割合でヒドロゲル中で混合され、架橋反応が開始されて架橋性ポリマーを架橋する。ある実施形態では、ポリマーはフリーラジカル開始剤を用いて架橋する。開始剤は熱開始剤または光開始剤であり得る。ある実施形態では、ポリマーは光誘発架橋(たとえばUV光、可視光、IR光)によって架橋する。ある実施形態では、光は約365nmの中央値を有する。他の実施形態では、ポリマーは熱(たとえば30−200℃)によって架橋する。他の実施形態では、ポリマーは生物学的または化学的触媒を用いて架橋する。架橋処理は、結果として得られるヒドロゲルの所望の性質をもたらすのに好適な条件下で行なわれる。たとえば、架橋の範囲は、反応時間、開始剤の量/濃度、ポリマー出発物質、開始剤、架橋を生じさせるために用いる光の周波数、添加物、反応温度、使用溶媒、ポリマー出発物質の濃度、酸素抑制、水抑制などによって制御され得る。
【0044】
典型的に、開始剤は、加熱または一定波長の光への露光によって分解し、架橋反応を開始する2個のフリーラジカルを生じる。開始剤は、さまざまな有機溶媒、水、または水溶液中で働き得る。使用可能な有機溶媒はアセトン、エーテル、ベンゼン、THF、トルエン、ヘキサン、DMSO、DMFなどを含む。ある実施形態では、架橋反応は水または水溶液中で行なわれる。ある特定の実施形態では、架橋反応はリン酸緩衝食塩水中で行なわれる。水溶液は、酸性または塩基性であり得る。
【0045】
開始剤は典型的に、ポリマーの構造、生成する所望の架橋材料、架橋の範囲、材料のその後の使用などを含むさまざまな事柄に基づいて選択される。これらおよび他の事柄は、使用する熱開始剤を選択する当業者によって考慮され得る。開始剤は、Sigma-Aldrich社、Ciba-Geigy社、Sartomer社などの商業的供給源から得ることができる。開始剤は、合成的にも調製され得る。
【0046】
ある実施形態では、開始剤は熱開始剤である。任意の熱開始剤が架橋反応において用いられ得る。ある実施形態では、熱開始剤は、30℃から200℃の範囲の温度で働くように設計される。ある実施形態では、開始剤は、50℃から170℃の範囲の温度で働くように設計される。他の実施形態では、開始剤は、50℃から100℃の範囲の温度で働くように設計される。ある実施形態では、開始剤は、100℃から170℃の範囲の温度で働くように設計される。ある特定の実施形態では、開始剤は、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、または170℃で働くように設計される。熱開始剤は、過酸化物、過酸、過酢酸塩、過硫酸塩などであり得る。例示的な熱開始剤は、tert-アミルペルオキシベンゾエート;4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸);1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル);2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AlBN);過酸化ベンゾイル;2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン;2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン;ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン;1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;tert-ブチルヒドロペルオキシド;過酢酸tert-ブチル;過酸化tert-ブチル;tert-ブチルペルオキシベンゾエート;tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;クメンヒドロペルオキシド;過酸化シクロヘキサノン;過酸化ジクミル;過酸化ラウロイル;2,4-過酸化ペンタンジオン;過酢酸;および過硫酸カリウムを含む。ある実施形態では、熱開始剤の組合わせが用いられる。
【0047】
他の実施形態では、開始剤は光開始剤である。光開始剤は、ヒドロゲルの架橋性成分の架橋を開始する反応性フリーラジカル種を生成する。任意の光開始剤が架橋反応において用いられ得る。光開始重合および光開始剤は、Rabek, Mechanisms of Photophysical Processes and Photochemical Reactions in Polymers, New York: Wiley & Sons, 1987; Fouassier, Photoinitiation, Photopolymerization, and Photocuring, Cincinnati, OH: Hanser/Gardner; Fisher et al., “Photoinitiated Polymerization of Biomaterials”Annu, Rev. Mater. Res. 31:171-81,2001に詳細に記載されており、当文献はここに引用により援用されている。光開始剤は、任意の光波長でフリーラジカルを生成するように設計され得る。ある実施形態では、光開始剤は、UV光(200−400nm)を用いて働くように設計される。ある実施形態では、長い紫外線が用いられる。他の実施形態では、短い紫外線が用いられる。他の実施形態では、光開始剤は、可視光(400−800nm)を用いて働くように設計される。ある実施形態では、光開始剤は、青色光(420−500nm)を用いて働くように設計される。さらに他の実施形態では、光開始剤は、IR光(800−2500nm)を用いて働くように設計される。ある実施形態では、光開始剤は過酸化物(たとえばROOR’)である。他の実施形態では、光開始剤はケトン(たとえばRCOR’)である。他の実施形態では、化合物は、アゾ化合物(たとえばa−N=N-基を有する化合物)である。ある実施形態では、光開始剤はアシルホスフィンオキシドである。他の実施形態では、光開始剤は硫黄含有化合物である。さらに他の実施形態では、開始剤はキノンである。例示的な光開始剤は、アセトフェノン;アニソイン;アントラキノン;アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水化物;(ベンゼン)トリカルボニルクロム;ベンジン;ベンゾイン;ベンゾインエチルエーテル;ベンゾインイソブチルエーテル;ベンゾインメチルエーテル;ベンゾフェノン;ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;4-ベンゾイルビフェニル;2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4'-モルフォリノブチロフェノン;4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;カンファーキノン;2-クロロチオキサンテン-9-オン;(クメン)シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロリン酸;ジベンゾスベレノン;2,2-ジエトキシアセトフェノン;4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン;4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;4,4'-ジメチルベンジル;2,5-ジメチルベンゾフェノン;3,4-ジメチルベンゾフェノン;ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン;4'-エトキシアセトフェノン;2-エチルアントラキノン;フェロセン;3'-ヒドロキシアセトフェノン;4'-ヒドロキシアセトフェノン;3-ヒドロキシベンゾフェノン;4-ヒドロキシベンゾフェノン;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン;2-メチルベンゾフェノン;3-メチルベンゾフェノン;メチベンゾイルホルマート;2-メチル-4'-(メチルチオ)-2-モルフォリノプロピオフェノン;フェナントレンキノン;4'-フェノキシアセトフェノン;チオキサンテン-9-オン;トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩;トリアリールスルホニウムヘキサフルオロリン酸塩;過酸化水素;過酸化ベンゾイル;ベンゾイン;2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン;ジベンゾイルジスルフィド;ジフェニルジチオカーボネート;2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AlBN); カンファーキノン(CQ);エオシン;ジメチルアミノベンゾエート(DMAB);ジメトキシ-2-フェニル−アセトフェノン(DMPA);Quanta-cure ITX光増感剤(Biddle Sawyer);Irgacure 907(Ciba Geigy);Irgacure 651(Ciba Geigy);Irgacure 2959(Ciba Geigy);Darocur 2959(Ciba Geigy);エチル-4-N,N-ジメチルアミノベンゾエート(4EDMAB);1-[-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン;1-ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン;65%(オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]および35%プロポキシ化グリセリルトリアクリレート;ベンジルジメチルケタール;ベンゾフェノン;ベンゾフェノンとα-ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの調合物;Esacure KIP150とEsacure TZTの調合物;Esacure KIP150とEsacure TZTの調合物;Esacure KIP150とTPGDAの調合物;ホスフィンオキシド、Esacure KIP150およびEsacure TZTの調合物;二官能のα-ヒドロキシケトン;エチル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;イソプロピルチオキサントン;4-メチルベンゾフェノンとベンゾフェノンの液体調合物;オリゴ(2-ヒドロキシ-2メチル-1-4(1-メチルビニル)フェニルプロパノン(エマルション);オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-4(1-メチルビニル)フェニルプロパノンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(単量体);オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-4(1-メチルビニル)フェニルプロパノンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(重合体);トリメチルベンゾフェノンおよびメチルベンゾフェノン;ならびに2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、アルファヒドロキシケトン、トリメチルベンゾフェノン、および4-メチルベンゾフェノンの水エマルションを含む。ある実施形態では、光開始剤はIrgacure 2959である。ある実施形態では、光開始剤の組合わせが用いられる。
【0048】
ヒドロゲルは、調製された後、任意に精製され、および/またはそうでなければ処理され得る。ある実施形態では、ヒドロゲルは生成された後、所望の剪断弾性係数のヒドロゲル組成を生成するために剪断される。剪断は典型的に、ヒドロゲルを狭窄開口から押出すことによって行われる。ある実施形態では、だんだん小さくなる開口が用いられ得る。ある実施形態では、ヒドロゲルは、だんだん小さくなる穴を有する一連の針から押出される。たとえば、ヒドロゲルは、16ゲージ、18ゲージ、20ゲージ、および22ゲージの針に連続的に通され得る。ある実施形態では、より大容量の注射器状装置が用いられる。他の実施形態では、超音波および/または機械的剪断法が用いられ得る。ある実施形態では、ホモジナイザーが用いられる。ある実施形態では、ミクロ流動化剤が用いられる。ヒドロゲルは典型的に、材料の所望の剪断弾性係数が達成されるまで処理される。ある実施形態では、剪断弾性係数は約15Paから約35Paの範囲である。ある実施形態では、剪断弾性係数は約20Paから約30Paの範囲である。ある実施形態では、剪断弾性係数は約21Paである。ある実施形態では、剪断弾性係数は約22Paである。ある実施形態では、剪断弾性係数は約23Paである。ある実施形態では、剪断弾性係数は約24Paである。ある実施形態では、剪断弾性係数は約25Paである。ある実施形態では、剪断弾性係数は約26Paである。
【0049】
ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールを含む組成である。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびポリエチレングリコールを含む組成である。ある実施形態では、ポリエチレングリコールジアクリレートの分子量は約10,000g/モルである。ある実施形態では、ポリエチレングリコールの分子量は約10,000g/モルである。非架橋性ポリマーの10%溶液7を架橋性ポリマーの10%溶液3に混合し、結果として得られる組成を光開始剤およびUV光を用いて架橋する。ある実施形態では、光開始剤Irgacure 2959(Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NJ)が光重合反応において用いられる。UV光の強度は、約1mW/cmから約20mW/cmの範囲である。ある実施形態では、UV光の強度は約10mW/cmである。結果として得られるヒドロゲルは、穴のサイズが徐々に小さくなる針(たとえば16ゲージ、18ゲージ、20ゲージ、および22ゲージの針)に通されることによって剪断される。ある実施形態では、ヒドロゲルを各サイズの針に2回通してから、より小さな針を使用する。
【0050】
ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリエチレングリコールおよびヒアルロン酸を含む組成である。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびヒアルロン酸を含む組成である。ある実施形態では、ポリエチレングリコールジアクリレートの分子量は約10,000g/モルである。ある実施形態では、ヒアルロン酸の分子量は約560,000g/モルである。1mg/mLのヒアルロン酸溶液73を100mg/mLの架橋性ポリマー27に混合し、結果として得られる組成を光開始剤およびUV光を用いて架橋する。ある実施形態では、光開始剤Irgacure 2959(Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NJ)が光重合反応において用いられる。UV光の強度は、約0.5mW/cmから約20mW/cmの範囲である。ある実施形態では、UV光の強度は約1mW/cmから約5mW/cmの範囲である。ある実施形態では、UV光の強度は約5mW/cmから約10mW/cmの範囲である。ある実施形態では、UV光の強度は約1mW/cmである。ある実施形態では、UV光の強度は約2mW/cmである。ある実施形態では、UV光の強度は約5mW/cmである。ある実施形態では、UV光の強度は約10mW/cmである。結果として得られるヒドロゲルは、穴のサイズが徐々に小さくなる針(たとえば16ゲージ、18ゲージ、20ゲージ、および22ゲージの針)に通されることによって剪断される。ある実施形態では、ヒドロゲルを各サイズの針に2回通してから、より小さな針を使用する。
【0051】
ある実施形態では、ヒドロゲルは、アクリル化ポリエチレングリコールおよびデキストランを含む組成である。ある特定の実施形態では、ヒドロゲルは、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびデキストランを含む組成である。ある実施形態では、ポリエチレングリコールジアクリレートの分子量は約10,000g/モルである。ある実施形態では、デキストランの分子量は約200,000g/モルである。20mg/mLのデキストラン溶液7を100mg/mLの架橋性ポリマー3に混合し、結果として得られる組成を光開始剤およびUV光を用いて架橋する。ある実施形態では、光開始剤Irgacure 2959(Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NJ)が光重合反応において用いられる。UV光の強度は、約1mW/cmから約20mW/cmの範囲である。ある実施形態では、UV光の強度は約10mW/cmである。結果として得られるヒドロゲルは、穴のサイズが徐々に小さくなる針(たとえば16ゲージ、18ゲージ、20ゲージ、および22ゲージの針)に通されることによって剪断される。ある実施形態では、ヒドロゲルを各サイズの針に2回通してから、より小さな針を使用する。
【0052】
本発明に有用なヒドロゲルは典型的に、インビボで分解しないか、緩徐に崩壊する。生分解性の欠如は主に、ヒドロゲルを声帯ヒダまたは他の区域に繰返し再注入しなくてもよくするのに有用である。典型的に、そのような注入は、1か月に1度、2−3か月に1度、6か月に1度、または1年に1度のみ繰返されるべきである。ヒドロゲルの注入同士の間の時間は長いほど良い。
【0053】
ヒドロゲルは、他の治療活性剤および/または薬学的に許容可能な賦形剤と組合わされて、声帯修復または他の軟組織修復もしくは増強に有用な組成を形成し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書中に記載のヒドロゲルを含む組成を提供する。そのような組成は任意に、1つ以上の付加的な生理活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、発明の組成はヒトに投与される。
【0055】
本明細書中で提供されるヒドロゲル組成の説明は、ヒトへの投与に好適な組成を主に対象にしているが、そのような組成は一般にあらゆる種類の動物への投与に好適であることが当業者に理解されるであろう。ヒトへの投与に好適な医薬組成をさまざまな動物への投与に好適にするための組成の修飾はよく理解されており、通常熟練の獣医薬理学者は、たとえあったとしても通常の実験のみでそのような修飾を設計および/または実行可能である。本発明の医薬組成の投与の対象は、ヒトおよび/または他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、フェレットおよび/またはイヌなどの哺乳類を含む哺乳類を含むが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書中に記載の医薬組成の製剤は、薬剤技術で公知の、または今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、そのような調製方法は、ヒドロゲルを1つ以上の賦形剤および/または1つ以上の他の副材料と関連付けるステップと、その後必要であれば、および/または所望であれば、製品を所望の単一用量または複数用量単位に成形および/または包装するステップとを含む。
【0057】
本発明の医薬組成におけるヒドロゲル、薬学的に許容可能な賦形剤、および/または任意の付加的な材料の相対量は、対象の個性、サイズ、および/または状態に依存して変わる。たとえば、組成は、1%から99%(w/w)のヒドロゲルを含み得る。
【0058】
本発明の医薬製剤はさらに、薬学的に許容可能な賦形剤を含み得、これは、明細書中では、所望の特定の用量形態に適するように、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、または他の液体媒介物、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、肥厚もしくは乳化剤、保存剤、固形結合剤、潤滑剤などを含む。RemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy, 21stEdition, A.R.Gennaro, (Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006(ここに引用により援用されている)は、医薬組成の処方時に用いられるさまざまな賦形剤、およびそれらの調製のための公知の技術を開示している。何らかの望ましくない生物学的効果を生じるか、そうでなければ医薬組成のいずれかの他の成分と有害に相互作用するなどによって任意の従来の賦形剤が物質またはその誘導体と適合しない場合を除いて、その使用は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒトでの使用および家畜への使用のために承認される。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認される。いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬品等級である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、ヨーロッパ薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0060】
ヒドロゲル組成の製造に用いられる薬学的に許容可能な賦形剤は、不活性希釈剤、分散剤、界面活性剤および/もしくは乳化剤、分解剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤、ならびに/または油を含むが、これらに限定されない。そのような賦形剤は任意に、発明の製剤に含まれ得る。着色剤などの賦形剤は、処方者の判断にしたがって組成中に存在し得る。
【0061】
例示的な希釈剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖など、およびそれの組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0062】
例示的な分散剤は、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類の果肉、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル-ピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物など、およびそれらの組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0063】
例示的な界面活性剤および/または乳化剤は、天然乳化剤(たとえばアカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガント、コンドラックス、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド粘土(たとえばベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVeegum[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(たとえばステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(たとえばカルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラゲナン、セルロース誘導体(たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[Tween(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[Tween(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート[Tween(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[Span(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[Span(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[Span(登録商標)65]、グリセリルモノオレアート、ソルビタンモノオレアート[Span(登録商標)80]、ポリオキシエチレンエステル(たとえばポリオキシエチレンモノステアレート[Myrj(登録商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(たとえばCremophor(登録商標))、ポリエチレンエーテル(たとえばポリオキシエチレンラウリルエーテル[Brij(登録商標)30]、ポリ(ビニル−ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic F 68、Poloxamer 188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウムなど、および/またはそれらの組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0064】
例示的な結合剤は、デンプン(たとえばコーンスターチおよびデンプン糊);ゼラチン;糖質(たとえばスクロース、グルコース、ブドウ糖、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然および合成ゴム(たとえばアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワールゴム、ガッチゴム、イサポール皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル−プロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、およびカラマツアラボガラクタン);アルギネート;酸化ポリエチレン;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコールなど、ならびにそれらの組合わせを含むが、これらに限定されない。
【0065】
例示的な保存剤は、抗酸化剤、キレート化剤、抗菌保存剤、抗真菌保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、および他の保存剤を含み得る。例示的な抗酸化剤は、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。例示的なキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水化物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、およびエデト酸三ナトリウムを含む。例示的な抗菌保存剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールを含むが、これらに限定されない。例示的な抗真菌保存剤は、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびソルビン酸を含むが、これらに限定されない。例示的なアルコール保存剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸、およびフェニルエチルアルコールを含むが、これらに限定されない。例示的な酸性保存剤は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸を含むが、これらに限定されない。他の保存剤は、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート、セトリミド、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant Plus(登録商標)、Phenonip(登録商標)、メチルパラベン、Germall 115、Germaben II、Neolone(商標)、Kathon(商標)、およびEuxyl(登録商標)を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、保存剤は抗酸化剤である。他の実施形態では、保存剤はキレート化剤である。
【0066】
例示的な緩衝剤は、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D−グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、リン酸水酸化カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、第二リン酸カリウム、第一リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェン遊離水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0067】
例示的な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0068】
例示的な油は、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ種子、ルリジサ、カデ、カモミール、キャノーラ、キャラウェー、カルナウバ、ヒマシ、シナモン、ココアバター、ココナッツ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、マツヨイグサ、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ヒョウタン、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツェアクベバ、マカデミアナッツ、アオイ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシ種子、カボチャ種子、菜種、米糠、ローズマリー、ベニバナ、ビャクダン、サザンカ、サボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、大豆、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチベル、クルミ、および小麦胚芽油を含むが、これらに限定されない。例示的な油は、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱物油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0069】
非経口投与のための液体投薬形態は、薬学的に許容可能なエマルション、ミクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシル剤を含むが、これらに限定されない。ヒドロゲルに加えて、液体投薬形態は、たとえば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの、当該技術において一般に用いられる不活性希釈剤を含み得る。ある実施形態では、本発明のヒドロゲルは、Cremophor(登録商標)、アルコール、油、修飾油、グリコール、ポリソルビン酸、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの組合わせなどの可溶化剤と混合される。
【0070】
たとえば無菌注射用水性または油性懸濁剤などの注射用製剤は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて、公知の技術に従って処方され得る。無菌注射用調製物は、たとえば1,3-ブタンジオール中の溶液としての、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液、懸濁液またはエマルションであり得る。使用され得る許容可能な媒介物および溶媒には、水、リンゲル液、U.S.P.および等張食塩水がある。また、無菌の固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドなどの任意の無刺激性固定油が用いられ得る。また、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において用いられる。
【0071】
注射用製剤は、たとえば、バクテリア保持フィルターによる濾過によって、または使用前に無菌水もしくは他の無菌注射用媒体に溶解もしくは分散し得る無菌固体組成の形態で滅菌剤を取込むことによって、滅菌され得る。
【0072】
医薬品の処方および/または製造における一般的な考察は、たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2005に見られる。
【0073】
発明のヒドロゲルは、1つ以上の生理活性剤と組合わせられ得る。ある実施形態では、ヒドロゲルは医薬品と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは抗炎症剤と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは抗線維剤と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは抗増殖剤と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは抗生物質と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルはタンパク質またはペプチドと組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは成長因子と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは細胞と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは自己細胞と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルは幹細胞と組合される。ある実施形態では、ヒドロゲルはヒドロゲル投与のための液体賦形剤と組合される。ある実施形態では、賦形剤は水溶液である。ある実施形態では、賦形剤は緩衝水溶液である。ある実施形態では、賦形剤はリン酸緩衝食塩水である。ある実施形態では、賦形剤は細胞外液と等張である。
【0074】
使用
本発明はさらに、瘢痕化した声帯ヒダの柔軟性を回復するために、声帯の内部または声帯の発声上皮の直下にポリマーヒドロゲルまたはその組成を注入する方法を提供する。ある実施形態では、ヒドロゲルは、粘膜の損失上皮下表面固有層に注入される。発明のヒドロゲルは、他の軟組織を修復または増強するためにも用いられ得る。ある実施形態では、ヒドロゲルは尿失禁治療のために膀胱頚部を増強するために用いられる。他の実施形態では、ヒドロゲルは、皮膚充填剤、乳房インプラント、椎間円板、筋量、および関節液として用いられる。
【0075】
声帯修復の設定では、ヒドロゲルまたは他の材料は、残留表面固有層の内部または発声上皮の直下に注入される。本明細書中に記載のように、約20Paから約30Paの範囲の剪断弾性係数を有するヒドロゲルが発声粘膜の柔軟性の回復に特に有用であることが判明した。発明の技術を用いて、一方または両方の声帯ヒダが治療され得る。ある実施形態では、約0.1mLから約5mLのヒドロゲル組成が声帯ヒダに注入される。ヒドロゲルは、非常に薄いゲージ針(たとえば25−30ゲージ)を用いて声帯ヒダに注入される。
【0076】
ヒドロゲルは、声帯の上皮下領域または表面固有層(SLP)において、数週間から数か月持続し得る。必要に応じてこの処置を繰返して声帯の柔軟性を回復し、それによって患者の声が回復し得る。治療の頻度は、患者および注入するヒドロゲルに依存することになる。声帯ヒダ麻痺を持った患者の場合、治療に当たる医師は、自然な音声神経の再生を可能にしつつ発声機能を与えるために、インプラントが約6ヶ月後に分解することを望み得る。
【0077】
本明細書中に記載のヒドロゲンと同様の性質(たとえば、約15Paから約35Paの剪断弾性係数)を有する他の材料を、声帯または軟組織の修復または増強に用いてもよい。典型的に、材料は、軟質のゲル状材料である。そのような材料は単独で、または本明細書中に記載のヒドロゲルと共に用いられ得る。発明の方法で用いる例示的な材料は、関節保護薬および皮膚充填剤を含み得る。ある実施形態では、使用材料はヒアルロン酸またはその塩を含む。ある実施形態では、関節保護薬は、HYALGAN(登録商標)(ヒアルロン酸ナトリウム)、SYNVISC(登録商標)(Hylan G-F 20)、またはORTHOVISC(登録商標)(高分子量ヒアルロナン)である。他の関節保護薬を用いてもよい。ある実施形態では、皮膚充填剤は、RESTYLANE(登録商標)(ヒアルロン酸)、PERLANE(登録商標)(ヒアルロン酸)、HYLAFORM(登録商標)(安定化ヒアルロン酸)、またはRADIESSE(登録商標)(水性ゲル中のカルシウムヒドロキシルアパタイトミクロスフェア)である。他の皮膚充填剤を用いてもよい。
【0078】
キット
本発明はさらに、本明細書中に記載の1つ以上のヒドロゲルまたはヒドロゲル成分を容器に含むパッケージまたはキットを提供する。たとえば、容器には、患者に使用できる状態にあるヒドロゲル組成が入っていてもよい。または、容器には、ヒドロゲルを形成するために混合および架橋される必要があるヒドロゲル(たとえば架橋性ポリマー、非架橋性ポリマー)の成分が入っていてもよい。パッケージはまた、典型的に、医療機器および/または医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって処方された形態の、容器に関連付けられた告知を含み得、この告知は、声帯疾患または他の軟組織修復もしくは増強用の治療のヒトまたは動物投与についての、政府機関による組成の承認を反映している。ヒドロゲル組成の使用に関する指示も含まれ得る。そのような指示は、患者へのヒドロゲルの投与に関する情報を含み得る。特に、その指示は、患者の声帯へのヒドロゲルの注入に関する情報を含み得る。
【0079】
本発明のある実施形態では、キットは複数の個別容器を含み、その各々にヒドロゲルの成分が入っている。たとえば、第1の容器には架橋性ポリマーが入っており、第2の容器には非架橋性ポリマーが入っていてもよい。架橋開始剤は、さらなる第3の容器内に提供され得る。ポリマーは、開始剤の存在下で溶液中で互いに混合されると所望の特性を有するヒドロゲルを形成するように、予め定められた量で提供され得る。パッケージはさらに、投与前にヒドロゲルに含められる生理活性剤が入った1つ以上の容器を含み得る。
【0080】
パッケージは、ヒドロゲル組成の調製用の装置または入れ物を含み得る。装置は、たとえば測定装置または混合装置であり得る。
【0081】
パッケージはさらに任意に、本発明のヒドロゲル組成を投与するための装置を含み得る。例示的な装置は、さまざまな喉頭鏡設計と適合性のある特化された注射器、針、およびカテーテルを含む。
【0082】
キットの構成要素は、比較的厳重に閉込められた状態で、たとえばプラスチックまたはスタイロフォームの箱などの、単一のより大きな容器内に提供され得る。典型的に、キットは、医療専門家による使用のために便利に包装される。ある実施形態では、キットの構成要素は、手術室または診療所などの無菌環境での使用のために、無菌包装される。
【0083】
実施例
実施例1:瘢痕化した声帯ヒダに注入するためのヒドロゲルの調製
半相互浸透網状組織技術を用いて、本実施例のヒドロゲルを作製した。この処理は、非架橋性ポリマー(Y)の存在下で重合する架橋性ポリマー(X)の使用を伴う。ゲルの物理化学的性質は、i)溶液中のXの画分(f);ii)成分の濃度(CおよびC);ならびにiii)ヒドロゲルの成分の分子量(MおよびM)を独立して変更することによって制御した。本実施例のヒドロゲルを形成するために用いたポリマーは、すべて水溶性であった。Irgacure 2959(Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NJ)を光開始剤として使用して、UV光(中央値が365nm)を用いた光重合を行なった。以下に与えられる説明では、ある例示的なヒドロゲルを調製するための詳細なプロトコルを概説する。ここにおいて、
X=SunBio Inc.社から入手したポリエチレングリコールジアクリレート(PEG−DA)
Y=ポリエチレングリコール(PEG)
=混合前の100mg/mL(10% w/v)
=混合前の100mg/mL(10% w/v)
=10,000(10kDa)
=10,000(10kDa)
f=0.3
である。
【0084】
プロトコル
1.リン酸緩衝食塩水(PBS)中で、PEG−DAおよびPEGの別個の溶液(両方100mg/mL)を作る。脱イオン水中のエタノール溶液(70%v/v)中で、Irgacure 2959の溶液(50mg/mL)を作る。
【0085】
2.700μLのPEG溶液を、12ウェルプレートのウェルに加える。300μLのPEG−DA溶液をPEG溶液に加え、よく混合する。10μLのIrgacure 2959溶液を、PEGとPEG−DAの溶液に加える。
【0086】
3.12ウェルプレートを、EXFO UV架橋系からのUV光源の下に置く。観察者をUV光から保護するためだけでなく、UV光を内部に反射させるためにも、装置の側面をアルミ箔で覆う。強度ノブ、およびプレートの底部からの光源の高さを操作することによって、プレートの底部に落下する光の強度を10mW/cmに調節する。
【0087】
4.次に、光源から発せられるUVビームが上記の調製溶液を含有するウェルの中心で中央値を有するようにプレートを置く。UV光を、ゲル化が完了する点である200sの間照らす。
【0088】
5.次に、このように調製したゲルを、PBS(〜8mL)中で37℃で、6ウェルプレートの1つのウェル内で24時間インキュベートする。インキュベーションには、37℃の温度および5%COの雰囲気での生物学的インキュベータを用いる。
【0089】
6.インキュベーションが完了した後、ゲルをルアーロック注射器(3mLまたは5mL)の穴に入れる。ゲルを、この注射器の開口から別のルアーロック注射器(3mLまたは5mL)に押出すことによって剪断し、この処理を繰返してヒドロゲルを第1の注射器に戻す。
【0090】
7.上記の剪断処理を、穴のサイズが徐々に小さくなる針を用いて繰返す。具体的には、16ゲージ、18ゲージ、20ゲージ、および22ゲージの針を連続的に使用し、ヒドロゲルは各針を通って2回剪断される。
【0091】
8.このようにして剪断処理の最後に得られるヒドロゲルを、未使用の新たなルアーロック注射器(3mLまたは5mL)の穴に加え、未使用の新たな16ゲージの針で蓋をする。ゲル含有注射器を室温で24−48時間保管してもよい。長期使用のためには、4℃での保管が推奨される。
【0092】
9.無菌ヒドロゲルを調製する場合、ゲル化装置全体を生物学的フード内に移す。70%エタノール溶液(v/v)で機器を洗浄することによって殺菌を行なう。ヒドロゲルおよび他の機器を扱うために無菌技術を用いる。無菌ヒドロゲルを作る場合、上記のプロトコルに以下の変更が加えられる:
a.上記のようにして得られるポリマーの溶液を、無菌PBSを用いてオートクレーブバイアル内で作製し、注射器フィルタで濾過しない。一方、光開始剤溶液は、使用前に注射器フィルター(0.2μm)で濾過する。
【0093】
b.ヒドロゲルを無菌12ウェルプレート内で形成し、オートクレーブピンセットを用いて扱う。
【0094】
c.上記の手順を用いてヒドロゲルを形成すると、ヒドロゲルを、無菌脱イオン水中で作った70%エタノール溶液(v/v)中でのインキュベーションによってさらに殺菌する。ヒドロゲルを、無菌6ウェルプレートのウェルに入れた8mLの70%エタノール中で1分間インキュベートする。毎回新鮮なエタノール溶液を用いて、インキュベーション全3回繰返す。
【0095】
d.次に、70%エタノール中でのインキュベーションによって殺菌したヒドロゲルを、無菌6ウェルプレートのウェル内の無菌PBS(8mL)中で5分間インキュベートする。毎回新鮮な無菌PBSを用いて、インキュベーション全3回繰返し、ゲルに吸収されたエタノールを除去する。ゲルがより大量のアルコールを保持していたと思われる場合(ゲルの外観がアルコールの吸収時に縮んでいる)、インキュベーションの回数をより多くしてもよい。
【0096】
e.エタノールを除去した後、新たな無菌6ウェルプレート内の新鮮な無菌PBS(8mL)内でヒドロゲルを24時間インキュベートする。(オートクレーブピンセットを用いて)ゲルを除去し、無菌PBSを含有する新たな無菌6ウェルプレートに入れることによって、ウェル内のPBSを、インキュベーションの12時間後に新鮮な無菌PBS(8mL)に交換する。
【0097】
f.次に、上記のステップ6および7で概説した手順を用いてヒドロゲルを剪断する。唯一の相違点は、無菌注射器および針を用いて、生物学的フードの内部で剪断を行なうことである。
【0098】
10.我々は、上記に概説した手順を用いていくつかの異なるゲルを調製し、X、Y、f、C、C、M、およびMを独立して系統的に変化させた。たとえば、
a. X=SunBio Inc.社のポリエチレングリコールジアクリレート
Y=Genzyme社のヒアルロン酸
=10kDa
=560kDa
=100mg/mL
=1mg/mL
f=0.27
b. X=SunBio Inc. 社のポリエチレングリコールジアクリレート
Y=デキストラン
=10kDa
=200kDa
=100mg/mL
=20mg/mL
f=0.3
とした。
【0099】
上記のプロトコルを用いて調製した他のヒドロゲルを、以下の表に列挙する。
【0100】
【表1】

【0101】
実施例2:エクスビボモデル(ex vivo model)を用いた発声粘膜の柔軟性の修復におけるヒドロゲルの効力の実証
ウシ(cow)喉頭モデル。エクスビボのウシ喉頭モデルを用いて、声帯ヒダ柔軟性の測定値として、粘膜の波振幅に対するゲル硬さの影響を評価した。甲状腺薄膜に1cm×3cmの窓を切った後、甲状披裂筋の塊を除去して、SLPと甲状披裂筋との間のコラーゲン性組織の層である声帯靭帯の深面を露出させることによって、成牛(cow)死骸の喉頭を準備した。超小型はさみで靭帯を開き、固有層の軟質内容物を声帯ヒダの全範囲にわたって注意深く除去し、最小限のSLPが付着した薄い透明の上皮だけを残した。試験材料を、除去した固有層の体積と等しい体積(〜0.25ml)で上皮の後ろに層状に重ねた結果、2−3mmの厚みのゲル層が得られた。硬質ラテックスシートの楕円形片を、試験材料の後ろの、以前に声帯靭帯が占めていた場所に配置した。次に、高速画像法を用いた粘膜の波振幅の測定用に、筋肉および甲状軟骨全体の残りの空洞を硬質アルギネートで充填した。アルギネート、ダム、および試験材料を、同じ生体力学的環境における異なるヒドロゲルのその後の試験用に、容易に除去した。PEG30(G’=25Pa)、PEG34(G’=121Pa),およびPEG50(G’=566Pa)を調製し、試験した。制御として、声帯ヒダをさらにアルギネートのみで充填して硬直状態を作り出し、わずかな量のSLPしか残らないようにした。すべての材料を同じ喉頭内で試験し、各材料を2回試験した。声門圧力を下回る圧力用に制御される試験からの複数の高速ビデオクリップを選択し、最大の中央膜状声帯ヒダ可動域を2名の観察者によって盲検的に測定した。VF可動域は、各ゲルの駆動圧力と高度に相関関係があり(図3)、本モデルはゲルの硬さに敏感であった。図3に示されるように、PEG30はより硬いゲルよりも広い声帯ヒダ可動域に対応し、アルギネート充填状態はほとんど移動を示していない。
【0102】
PEG30と生体力学的に同等の声帯ヒダインプラント材料の試験。PEG30と生体力学的に同様である(剪断弾性係数、G’を測定することによって判断)異なるヒドロゲルを、濃度、前駆体溶液中の容量比率、ならびに架橋性および非架橋性成分に用いられるポリマーを系統的に変化させることによって調製した。我々は、剪断弾性係数に基づいてPEG30と力学的に同等であると考えられ得る5個の材料を同定することができた(実施例1の表を参照)。これらの材料を、上記に概説した手順を用いてウシ(cow)喉頭モデルでも試験した。ヒドロゲルおよびアルギネートに加えて、我々はさらに、声帯ヒダにおける用途に用いられてきた市販の皮膚充填剤であるRESTYLANE(登録商標)(ヒアルロン酸)も試験した。これらの材料はすべて単一のウシ(cow)喉頭内で試験し、各材料を2回試験した。声門圧力を下回る圧力用に制御される試験からの複数の高速ビデオクリップを選択し、MATLABプログラムを用いて最大の中央膜状声帯ヒダ可動域を測定した。
【0103】
図4は、声帯ヒダ(VF)で発声可能な最低駆動圧力における、異なる材料についての最大VF可動域を示す。RestylaneおよびPEG−HAの場合のVF可動域は、それぞれ13.9cmおよび9.7cmの駆動圧力で測定したのに対して、他の材料のVF可動域は約6.5cmの圧力で測定したことに留意することが重要である。発声を開始するために必要な最低駆動圧力の高い値は、試験中の材料の硬さが、最低駆動圧力の値がより低い材料よりも比較的高いことを示す。
【0104】
我々の研究所で開発した材料はすべて、アルギネートまたはRestylaneよりも広いVF可動域に対応した。また、これらの材料に対応するVF可動域は大きさが同様であり、したがって、これらの材料はすべて声帯ヒダの発声粘膜の修復に生体力学的に好適であることを示唆している。
【0105】
実施例3:インビボモデル(in vivo model)におけるPEG30の安全性および効力の実証
イヌでの試験。16匹の正常なイヌのVFにPEG30を一側性に(unilaterally)注入し、1、2、3、および4ヶ月(n=4/時点)の注入後生存期間を用いた。平均60μmのPEG30をVFに注入した。我々は、MGH Center for Laryngeal Surgery and Voice Rehabilitationで開発された方法を用いて、VF外観およびインビボでの機能を定期的に検査した。これらの検査時に、気管針を用いて発声のために空気を注入しつつ、VF振動のストロボ高速映像(4000フレーム/秒)を記録した。これらの記録によって、生理的条件下でのVFの柔軟性を評価することができる。麻酔後に切除した喉頭に高解像度MRIおよび組織学的検査を行なって、VF内のPEG30の場所を同定し、注入材料に対する組織反応を観察した。
【0106】
インビボでの声帯ヒダの柔軟性を維持するPEG30の能力。VF柔軟性の測定値として、定期検査時にインビボ設定で採取した高速映像(HSV)から、VF振動の振幅を測定した。注入側と非注入側の振動の振幅比を、各インビボ試験時点で比較した。図5は、4ヶ月にわたる、PEG30非注入VFに対する注入VFの振幅比の平均百分率を示す。各時点は、合計7匹のイヌから得られた少なくとも3つの測定値の平均である。全検査時点において振幅比測定値同士の間に統計学的差異はなかったため、PEG30非注入VFと比較した注入VFの柔軟性の最小の摂動(perturbation)を実証している。手術用顕微鏡を用いたイヌVFのインビボ検査の結果、検査動物には炎症の徴候はほとんどまたは全くないことが判明した。注入後1週目または2週目に注入VFの軽度の発赤が一時的に観察された2、3の動物を除いて、注入VF面は、高倍率下で非注入VFと同一に見えた。
【0107】
声帯ヒダの組織学的解析の結果、PEG30は、PEG30を活発に貪食するマクロファージの存在によって特徴付けられる異物反応を動物VFに発生させることが判明した。しかし、PEG30の存在およびその関連反応は、VFの振動を損なわなかった。16週目の終わりまでにはPEG30は再吸収して異物反応はほぼ完全に消散し、VF柔軟性に対する明らかな損傷はなかった。全体として、VFにPEG30を注入しても、有害な組織反応をまったく引起さず、VFの正常な振動も妨げられなかった。したがってこれらの結果は、発声粘膜の柔軟性を修復するための声帯ヒダインプラントとしてのPEG30の潜在的有用性を示唆している。
【0108】
実施例4:声帯ヒダでの徐放用のヒドロゲルにおける療法の取込み
単一のエマルション技術を用いて、抗線維薬であるラパマイシンを組込むポリ-L-乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)ナノ粒子(NP)を作った。この技術は、多数の他の薬投与PLGAナノ粒子を調製するために用いられてきた。ラパマイシン投与NPを、乳酸:グリコール酸比が異なる2つのPLGAポリマー:すなわち乳酸:グリコール酸比がそれぞれ75:25および50:50のPLGA75:25およびPLGA50:50を用いて調製した。図6に示されるように、水性緩衝液中のPLGA75:25NPからのラパマイシンの放出割合は、同量の全投与薬品に対するPLGA50:50NPからの割合よりも低い。緩衝液中のPLGA75:25の分解割合は、PLGA50:50の割合よりも緩やかである。したがって、PLGA75:25を用いて作ったラパマイシン投与NPは、PLGA50:50を用いて作ったものよりも緩徐に薬品を放出すると予測された。約200nmのサイズのラパマイシン投与PLGA50:50NPを、ゲル化前の前駆体溶液にNPを取込むことによって、PEG30ヒドロゲルに投与した。最大8mg/mL(前駆体溶液中で)のラパマイシン投与PLGA NPを含有するPLGA50:50−PEG30ゲルは、NPをまったく含有しないPEG30と同様の生体力学的性質を有していた。この結果は、PEG30は発声粘膜の柔軟性を修復するために用いられ得るだけではなく、ラパマイシンなどの治療薬を声帯ヒダに放出することもできることを示唆している。薬品投与PLGA NPの作製過程は、ありとあらゆる薬品の取込みおよび徐放を受け入れられる。さらに、これらのNPが我々のヒドロゲルの好ましい力学的性質を損なわずにヒドロゲルに取込むことができる容易性から、さまざまな薬品溶出の、生体力学関連ヒドロゲルを声帯ヒダで用いるために特定的に調製可能であると考えられる。
【0109】
均等物および範囲
当業者は、本明細書中に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するか、通常の実験を用いるだけで把握することができるであろう。本発明の範囲は上記の説明に限定されるよう意図されておらず、むしろ添付の請求項に記載される。
【0110】
請求項において、"a"、"an"、および"the"は、異なる記載がない限り、または文脈から明白でない限り、1つ以上を意味し得る。グループの1つ以上の部材同士の間に"or"を含む請求項または説明は、異なる記載がない限り、または文脈から明白でない限り、グループ部材の1つ、2つ以上、またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在しているか、採用されているか、そうでなければ関連していれば満足していると見なされる。本発明は、グループの1つの部材のみが所与の製品またはプロセスに存在しているか、採用されているか、そうでなければ関連している実施形態を含む。本発明はまた、グループ部材の2つ以上またはすべてが所与の製品またはプロセスに存在しているか、採用されているか、そうでなければ関連している実施形態を含む。さらに、本発明は、1つ以上の請求項または説明の関連部分からの1つ以上の限定、要素、節、記述用語等が別の請求項に導入されたすべての変形例、組合わせ、および置換を含むと理解される。たとえば、別の請求項に従属している任意の請求項は、同じ基礎請求項に従属しているいずれかの他の請求項中に見られる1つ以上の限定を含むように修正され得る。また、請求項が組成を記載している場合、異なる記載がない限り、または不一致もしくは矛盾が生じるであろうことが当業者にとって明白でない限り、本明細書中に開示されたいずれかの目的のために当該組成を用いる方法が含まれること、および本明細書中に開示されたいずれかの製造方法や当該技術において公知の他の方法にしたがった当該組成の製造方法が含まれることが理解される。たとえば、本発明のいずれの組成も、声帯修復またはほかの軟組織修復もしくは増強のために用いられ得ることが理解される。また、本明細書中に開示された組成の調製方法にしたがって作られるいずれの組成も、声帯ヒダ修復またはほかの軟組織修復もしくは増強のために用いられ得ることが理解される。さらに、本発明は、本明細書中に開示された組成の調製方法のいずれかにしたがって作られる組成を含む。
【0111】
たとえばマルクーシュグループフォーマットでリストとして要素が提示される場合、要素の各サブグループも開示されており、任意の要素をグループから除去可能であることが理解される。また、「備える」という用語は排他的でないよう意図されており、付加的な要素またはステップを含有してもよい。概して、本発明または本発明の局面が特定の要素、特徴、ステップ等を備えると述べられている場合、本発明のある実施形態または本発明の局面がそのような要素、特徴、ステップ等で構成される、または本質的に構成されることが理解されるべきである。簡素化のため、これらの実施形態は本明細書中では具体的にこれらの文言で記載されていない。したがって、1つ以上の要素、特徴、ステップ等を備える本発明の実施形態ごとに、本発明は、それらの要素、特徴、ステップ等で構成される、または本質的に構成される実施形態も提供する。
【0112】
数値範囲が与えられる場合は、その終点は本発明に含まれる。また、異なる記載がない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、当該範囲の下限の単位の10分の1に至るまで、本発明の異なる実施形態において記載範囲内の任意の具体的な値を取り得ることが理解される。また、異なる記載がない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から明白でない限り、数値範囲として表される値は、所与の範囲内の任意のサブ範囲を取り得、サブ範囲の終点は、当該範囲の下限の単位の10分の1と同一の精度で表される。
【0113】
また、本発明のいずれの特定の実施形態も、いずれか1つ以上の請求項から明示的に排除され得ることが理解される。本発明の組成および/または方法のいずれの実施形態、要素、特徴、用途、および局面も、いずれか1つ以上の請求項から排除され得る。簡潔化のため、1つ以上の要素、特徴、目的、または局面が排除されたすべての実施形態が本明細書中で明示的に記載されているとは限らない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ポリマーと水溶性ポリマーの半相互浸透網状組織を備えるポリマーヒドロゲルであって、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項2】
架橋ポリマーの相互浸透網状組織を備えるポリマーヒドロゲルであって、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項3】
ヒドロゲルが約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、一成分ポリマーヒドロゲル。
【請求項4】
ポリマーヒドロゲルであって、
ポリマーの架橋アクリル化誘導体と、
水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項5】
ポリマーヒドロゲルであって、
ポリアルキレングリコールの架橋アクリル化誘導体と、
ポリエーテル、ポリオール、ポリ(アミノ酸)、タンパク質、およびポリサッカリドからなるグループから選択される水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項6】
ポリマーヒドロゲルであって、
ペプチドまたはタンパク質の架橋アクリル化誘導体と、
ポリエーテル、ポリオール、ポリ(アミノ酸)、タンパク質、およびポリサッカリドからなるグループから選択される水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項7】
ポリマーヒドロゲルであって、
ポリサッカリドの架橋アクリル化誘導体と、
ポリエーテル、ポリオール、ポリ(アミノ酸)、タンパク質、およびポリサッカリドからなるグループから選択される水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項8】
ポリマーヒドロゲルであって、
エラストマーポリマーの架橋アクリル化誘導体と、
ポリエーテル、ポリオール、ポリ(アミノ酸)、タンパク質、およびポリサッカリドからなるグループから選択される水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項9】
ポリマーヒドロゲルであって、
ポリアルキレングリコールの架橋アクリル化誘導体と、
ポリエーテル、ポリオール、ポリ(アミノ酸)、タンパク質、ペプチド、ポリサッカリド、およびエラストマーポリマーからなるグループから選択される架橋バージョンの水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項10】
ポリマーヒドロゲルであって、
ポリエチレングリコールの架橋アクリル化誘導体と、
ポリエーテル、ポリオール、ポリ(アミノ酸)、タンパク質、およびポリサッカリドからなるグループから選択される水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項11】
ポリマーヒドロゲルであって、
架橋ポリエチレングリコールジアクリレートと、
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(リシン)、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン、セルロース、メチルセルロース、およびそれらの誘導体からなるグループから選択される水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項12】
ポリマーヒドロゲルであって、
架橋ヒアルロン酸メタクリレートと、
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(リシン)、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン、セルロース、メチルセルロース、およびそれらの誘導体からなるグループから選択される水溶性ポリマーとを備え、前記ヒドロゲルはポリマーの半相互浸透網状組織であり、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、ポリマーヒドロゲル。
【請求項13】
前記ヒドロゲルは約20Paから約30Paの範囲の剪断弾性係数を有する、請求項1から12のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項14】
前記ヒドロゲルは約20Paから約25Paの範囲の剪断弾性係数を有する、請求項1から12のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項15】
前記ヒドロゲルは約25Paの剪断弾性係数を有する、請求項1から12のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項16】
前記水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項17】
前記水溶性ポリマーはヒアルロン酸(HA)である、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項18】
前記水溶性ポリマーはデキストランである、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項19】
前記水溶性ポリマーはポリ(セバシン酸グリセロール)(PGS)である、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項20】
前記水溶性ポリマーはメチルセルロースである、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項21】
前記水溶性ポリマーはコラーゲンである、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項22】
前記水溶性ポリマーはエラスチンである、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項23】
前記水溶性ポリマーはゼラチンである、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項24】
前記水溶性ポリマーはアルギネートである、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項25】
前記水溶性ポリマーはポリ(リシン)である、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項26】
前記ポリマーヒドロゲルは約25Paの剪断弾性係数を有する、請求項16から25のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項27】
前記架橋ポリマーは光架橋されている、請求項1に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項28】
生理活性剤をさらに備える、請求項1から12のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項29】
前記生理活性剤は細胞である、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項30】
前記生理活性剤は哺乳類細胞である、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項31】
前記生理活性剤は幹細胞である、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項32】
前記生理活性剤はタンパク質またはペプチドである、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項33】
前記生理活性剤はポリヌクレオチドである、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項34】
前記生理活性剤は医薬品である、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項35】
前記生理活性剤は抗炎症剤である、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項36】
前記生理活性剤は抗線維剤である、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項37】
前記生理活性剤は抗増殖剤である、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項38】
前記生理活性剤はナノ粒子または微粒子に被包されている、請求項28に記載のポリマーヒドロゲル。
【請求項39】
ポリマーヒドロゲルを調製する方法であって、
ポリマーの第1の架橋性誘導体を提供するステップと、
第2の水溶性ポリマーを提供するステップと、
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体を前記第2の水溶性ポリマーに接触させるステップと、
ポリマーヒドロゲルを形成するために前記第2の水溶性ポリマーの存在下でポリマーの前記第1の架橋性誘導体を架橋させるステップとを備え、前記ヒドロゲルは約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、方法。
【請求項40】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体は、ポリアルキレングリコールのアクリル化誘導体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体は、ポリエチレングリコールのアクリル化誘導体である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体は、ポリエチレングリコールジアクリレートである、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体は、ヒアルロン酸メタクリレートである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の水溶性ポリマーは、ポリエーテル、ポリオール、ポリ(アミノ酸)、タンパク質、およびポリサッカリドからなるグループから選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(リシン)、ヒアルロン酸(HA)、デキストラン、アルギネート、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン、セルロース、メチルセルロース、およびそれらの誘導体からなるグループから選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記第2の水溶性ポリマーはポリエチレングリコールである、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の水溶性ポリマーはヒアルロン酸である、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の水溶性ポリマーはデキストランである、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の水溶性ポリマーはアルギネートである、請求項39に記載の方法。
【請求項50】
前記第2の水溶性ポリマーはポリ(リシン)である、請求項39に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリマーヒドロゲルを剪断するステップをさらに備える、請求項39に記載の方法。
【請求項52】
架橋させる前記ステップは、ポリマーの前記第1の架橋性誘導体を光架橋させるステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項53】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体を光架橋させる前記ステップは、光開始剤の使用を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体を光架橋させる前記ステップは、UV光の使用を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体を光架橋させる前記ステップは、可視光の使用を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体を光架橋させる前記ステップは、熱開始剤の使用を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項57】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体と前記第2の水溶性ポリマーの比率は約4:6である、請求項39に記載の方法。
【請求項58】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体と前記第2の水溶性ポリマーの比率は約3:7である、請求項39に記載の方法。
【請求項59】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体と前記第2の水溶性ポリマーの比率は約2:8である、請求項39に記載の方法。
【請求項60】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体と前記第2の水溶性ポリマーの比率は約35:65である、請求項39に記載の方法。
【請求項61】
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体と前記第2の水溶性ポリマーの比率は約25:75である、請求項39に記載の方法。
【請求項62】
前記ポリエチレングリコールジアクリレートの分子量は約10kDaである、請求項42に記載の方法。
【請求項63】
前記第2の水溶性ポリマーの分子量は約10kDaである、請求項39に記載の方法。
【請求項64】
前記第2の水溶性ポリマーの分子量は約560kDaである、請求項39に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の水溶性ポリマーの分子量は約200kDaである、請求項39に記載の方法。
【請求項66】
前記ヒドロゲルは約25Paの剪断弾性係数を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項67】
ポリマーヒドロゲルを調製する方法であって、
ポリマーの第1の架橋性誘導体を提供するステップと、
ポリマーの第2の架橋性誘導体を提供するステップと、
ポリマーの前記第1の架橋性誘導体をポリマーの前記第2の架橋性誘導体に接触させるステップと、
前記第1および第2の架橋性誘導体を架橋させるステップとを備え、前記ヒドロゲルは、ポリマーの相互浸透網状組織を形成し、約15Paから約35Paの範囲の剪断弾性係数を有する、方法。
【請求項68】
軟組織を増強、修復、または交換する方法であって、
請求項1から38のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲルを対象の軟組織に投与するステップを備える、方法。
【請求項69】
前記軟組織は皮膚である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記軟組織は乳房組織である、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記軟組織は声帯である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記軟組織は膀胱である、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
声帯の発声粘膜を増強する方法であって、
請求項1から38のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲルを、対象の声帯の表面固有層または発声上皮に形成された空間に投与するステップを備える、方法。
【請求項74】
投与する前記ステップは、請求項1から38のいずれか1つに記載のポリマーヒドロゲルを、声帯の表面固有層または発声上皮に形成された空間に注入するステップを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ポリマーヒドロゲルは生理活性剤をさらに含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記生理活性剤は細胞である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記生理活性剤は哺乳類細胞である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記生理活性剤は幹細胞である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記生理活性剤はタンパク質またはペプチドである、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記生理活性剤はポリヌクレオチドである、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記生理活性剤は医薬品である、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
前記生理活性剤は粒子に被包されている、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
前記粒子は微粒子またはナノ粒子である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記対象は哺乳類である、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
前記対象はヒトである、請求項75に記載の方法。
【請求項86】
前記対象は瘢痕化した声帯ヒダを患っている、請求項75に記載の方法。
【請求項87】
前記対象は硬化した声帯ヒダを患っている、請求項75に記載の方法。
【請求項88】
声帯の発声粘膜を増強する方法であって、
関節保護薬または皮膚充填剤を、対象の声帯の表面固有層または発声上皮に形成された空間に投与するステップを備える、方法。
【請求項89】
前記関節保護薬は、HYALGAN(登録商標)(ヒアルロン酸ナトリウム)、SYNVISC(登録商標)(Hylan G-F 20)、またはORTHOVISC(登録商標)(高分子量ヒアルロナン)である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記皮膚充填剤は、RESTYLANE(登録商標)(ヒアルロン酸)、PERLANE(登録商標)(ヒアルロン酸)、HYLAFORM(登録商標)(安定化ヒアルロン酸)、またはRADIESSE(登録商標) (水性ゲル中のカルシウムヒドロキシルアパタイトミクロスフェア)である、請求項88に記載の方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−501724(P2012−501724A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526044(P2011−526044)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/004974
【国際公開番号】WO2010/027471
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】