説明

声音効果処理と騒音制御を有する装置及びその方法

【課題】3次元の声音効果処理と主動騒音制御によって外界の騒音を削除しかつ音響効果の改善を図る。
【解決手段】デジタル信号プロッセサーにより声音信号に対して残響と声音位置測定処理を行い、また、イヤホンによって放送し、スピーカーの前端のセンサーを利用し放送の際の外部ノイズ騒音を検知し、騒音制御装置に帰還し、騒音制御装置によって抵抗騒音信号が上記外部のノイズ騒音を消除し、信号騒音比率の向上と3次元声音領域の強化を図り、さらに、ヘッド関連移転函数の声音位置決め処理の向上を行い、ヘッド関連移転函数に代わるより効果的な両耳の間の移転函数を使用し、全体の演算量を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は騒音制御の装置とその方法に関わるもので、とりわけ三次元の声音効果処理及び騒音制御の装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音響システムを用いて音楽を聴く、映画を見るもしくはラジオを聞く、といったことは現代の生活において、言うまでもなく一般的な休日の娯楽のひとつとなっており、総じて家庭用のスピーカー、車の音響なども日常生活に氾濫している。最も普及しているイヤホンを例に挙げると、使用者が更によい音響効果を得るために、一般のイヤホンは音信を放送する機能以外に、使用者が音楽を聴くのと同時に受けとる外界の騒音を制御する機能をもつ。制御の方法は一通りではなく、受動的または主動的という二つの方法がある。受動的な方法は、防音材料をもって外界のノイズを遮断し、ゆえにイヤホンの外観は大半が比較的厚く重く、かつ低周波の騒音に対する遮断効果が比較的弱い。そのため、主動的な方法は上述の欠点がなく、従って主動的な騒音制御のイヤホンが今のところ市場で消費者に広く受け入れられている。
【0003】
近年、信号処理の技術の発展は著しく、各種の主動的騒音制御システムが続々と出回っている。既存の技術は通常一つもしくは一組のスピーカーによって騒音削除信号を発し、上記騒音削除信号は騒音の音源及びその誤差信号により計算できる。これは台湾の特許番号第562382号の帰還式主動的騒音制御イヤホンと同じく、環境騒音の振幅と相当する音波信号で環境騒音を削除する。また、台湾の特許番号第364947号の騒音制御システムは干渉式音波が騒音を相殺し防止する。但し、上述の方法は騒音制御を考える上で限界があり、もちろん騒音妨害を制御することはできるが、音源の信号の放送する品質について、使用者の聴き心地に対して最大の効果をあげるには、更なる改良の余地がある。
【特許文献1】台湾特許番号第562382号
【特許文献2】台湾特許番号第364947号
【0004】
他に、上述の既存の技術は騒音制御効果がわずかであり、音響効果処理がないという欠点がある。本考案は有効的な主動的騒音制御と三次元音響効果処理の装置とその方法に関するもので、各方面の音響効果の放送装置に応用することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、騒音制御と音響効果処理を併せ持つ装置と方法である。反抗騒音を用いて外界の騒音を削除し、デジタル信号処理の技術をもって声音の安定感と空間感を産み、声音の深み、広さ、残響度を増し、使用者に聴覚的に素晴らしい音響効果を感じさせる。
【0006】
本発明の他の目的は、異なる仕様方式に対して制御装置構造の調整を行い、各種の音響効果放送装置に対して騒音制御と音響効果処理を応用する装置と方法である。
【0007】
本発明のさらなる目的は、速効性のある制御効果をもつ、騒音制御と音響効果を併せ持つ装置と方法である。デジタル信号処理を用いて三次元の音信処理を行い、比類の電気回路をもってデジタル電気回路が主動的騒音制御を行う。これにより、入力信号と出力信号の間の時間差を免れ、速効性のある効果を得ることができる。
【0008】
本発明の又もう一つの目的は演算量を減らし、数儲存量の音信処理と騒音制御の装置と方法である。また、ヘッド移転函数という新しい実施方式で、本発明は両耳の間のヘッド移転函数の差異性を表す両耳の間の移転函数はヘッド移転函数となり、さらにはっきりと有効的な方式で音源の安定感を増す。
【0009】
本発明のさらにもう一つの目的は、有限パルス応答を基礎とする両耳の間の移転函数表示法である。ウィンナーフィルター近似法によって函数の有限パルス応答を求め、人の耳に聞こえない周波数の信号を無視する。ローエンドで演算量が小さいため、何度も応用しても効果は高く、音響カードのICチップやウインドウシステムといった音響効果システムの中に簡単に埋め込むことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を果たすために、本考案はまず入力する音信信号に三次元音信処置を行い、さらに声音の安定感と空間感を与え、処理を施した後の音信信号を騒音制御装置に入力し、声音放送装置が放送する。声音放送装置内のセンサーが放送と同時に起こる外界の騒音を検知すると、回帰方式によってさらに騒音制御装置に入力し、受信した外界の騒音を削除し、使用者が聞こえるのは音響効果処理を施し、外界の騒音を含まない音信信号となる。
下記に具体的な実施例による図と詳細な説明を加える。さらに本考案の目的、技術内容、特徴、および効果が理解するようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0012】
本考案は、三次元の声音効果処理と主動騒音制御を結合した装置と方法についてのもので、デジタル信号プロセッサーによって声音の三次元位置決め処理を行うほか、センサーを用いて放送と同時に起こる外界の騒音を拾い取り、それを騒音制御装置に帰還し、抵抗騒音を用いて外界の騒音を消去する。このようにして、最終的にスピーカーの放送を通し、音声効果処理を行い、騒音妨害を含まない声音信号とする。
【0013】
図1は本考案の装置を示す図である。図の示すように、本考案は、デジタル信号プロセッサー10、入力した音信信号に対して残響と三次元の声音の位置決め処理を行う、音信信号を放送する声音放送装置30,および騒音除去を担当する騒音制御器20,音信信号を入力するデジタル信号プロセッサー10、それは三次元の声音を模擬する技術により声音の位置決めをする、およびに信号波を通して異なる空間の反響を模擬する、立体空間感のある音場を設定することにより、上記音信信号がデジタル信号プロセッサー10を経て音響効果処理を行った後、声音放送装置30に送る。声音放送装置30はスピーカー32,センサー34を含む。スピーカー34はマイクロフォンであり、スピーカーの前方に位置し、デジタル信号処理装置10の音信信号を受信した後、スピーカー32によって声音を放送し、但し放送と同時に使用者は外界の環境の騒音がさらに聞こえる。ノイズ騒音を消し使用者に完全にもともとの声音信号が聞こえるように、センサー34は検知した外界の環境騒音の音信信号を騒音制御装置20に送り、もともとの放送していない音信信号と比べた後上記外界の騒音量を得られ、さらに騒音制御装置20により比較した結果反抗信号で外界の騒音を削除する。ゆえに騒音制御装置20からスピーカー32に入力し、最後に使用者が聞こえるのは音響効果処理と騒音削除をほどこした声音信号である。もちろん音の安定感と空間感があるだけでなく、さらに声音の深み、広さ、残響度を増し、聴覚的に使用者はすばらしい音響効果を感じられる。
【0014】
騒音制御装置20は量化回帰理論(Quantitative Feedback Theory, QFT)を基礎とし、声音放送装置30の仕様に合わせて設計された。それは回帰方式を利用し声音放送装置30の不確定性と規格の許容度を数量化し、期待される騒音制御の性能を得ることにより、本考案は異なる仕様方式に基づいて騒音制御器20を設計した。イヤホン、携帯電話の各種音響効果放送装置に応用され、図2は本考案がイヤホン装置の騒音制御を模擬し応用した結果で、点線は設計理論値である。実験結果は図中の実線が示すとおりで、模擬結果により、本考案が示す音響効果と騒音制御装置の結合は700Hz〜2kHzの間の10dBの騒音を除去することができることが分かる。
【0015】
それに、本考案はデジタル電気回路によって三次元の音信処理を行い、類比の電気回路がつながる回帰制御システムによって、デジタル電気回路による主動式騒音制御を取って代わり、信号を入力、出力する間の時差を防ぎ、速効性のある制御効果を得ることができる。
【0016】
図3は本考案がヘッド移転パルス函数を基礎とし、声音の位置決め処理を行う実施例の一つである。その内、ヘッド移転パルス函数は、仮に使用者の頭部の位置が固定していて動かないとすると、音源が外耳を通って耳膜に達することから、一つの線の同時システムとみなせる。ゆえにシステムの特性として時間域のパルス応答もしくは周波域の移転パルスを表し、これをヘッド移転パルス函数とする。二つの耳は音源との距離が異なるため、音源と同一の側のヘッド移転パルス応答装置と、音源と異なる側のヘッド移転パルス応答装置に分けることができる。そこで直接ヘッド移転パルス函数を測定し三次元の声音の位置を決めるため、より多くの係数の試算と演算量が必要となる。デジタル信号処理装置10は二つの耳の間の移転函数によって、同一の側のヘッド移転パルス応答と異なる側のヘッド移転パルス応答の間の差異値がヘッド移転函数を声音位置決め処理とする。図3が示すとおり、音信信号と同一側のヘッド移転パルス応答装置14は回転積分により、同一側の入力信号を得ることができる。上記同一側の入力信号は更に両耳の間の移転函数装置12を通って転換され、両耳の時間差遅延装置16によって両耳の間の時間差相当を加えて、異なる側の入力信号を得ることができる。その中の両耳の間の移転函数装置12はウィンナーフィルターの近似法を用いて、最も低音の有限パルス応答フィルター構造を得られる。また人の耳に聞こえる周波数の範囲(15kHz以下)に設計され、人の耳に聞こえない周波数の範囲は無視される。不必要な演算量を減らすことで、上記声音の位置決め法は同一側のシステムのみに行い、差異値を加える方式によって異なる側の信号を得ることができ、ゆえに直接ヘッド移転パルス函数によって声音の位置を決め、係数の範囲及び演算量を40%節減でき、かつ同様の効果を得ることができる。その実験結果は図4から図6が示すとおりである。図4は水平面45度で合成した両耳の移転函数とヘッド移転函数の比較図である。図5、図6はあらゆる水平面と垂直面の角度の比較図で、設計した周波数の範囲(15kHz以下)の内、両者の効果はほとんど同じであり、実験結果が実証するとおり、本実施例は演算の複雑度を減らしても音質に影響がないといえる。
【0017】
以上の実施例は本考案の技術アイディアと特徴を説明したものにすぎず、その目的はこれらの技術を熟知する人が本考案の内容を理解し実施するためのもので、本考案の申請範囲を限定するものではなく、およそ本考案が示す考えは、変形させ修飾しようとも、本考案の申請範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本考案の装置を示す図である。
【図2】本考案をイヤホン装置に応用した騒音制御模擬の結果である。
【図3】本考案のもう一つの実施例の装置を示す図である。
【図4】水平45度での両耳の移転函数とヘッド移転函数の比較図である。
【図5】あらゆる水平角度の両耳の移転函数とヘッド移転函数の比較図である。
【図6】あらゆる垂直角度の両耳の移転函数とヘッド移転函数の比較図である。
【符号の説明】
【0019】
10 デジタル信号プロセッサー
12 両耳の間の移転函数装置
14 同一側ヘッド移転パルス応答装置
16 両耳の時差遅延装置
20 騒音制御装置
30 声音放送装置
32 スピーカー
34 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した声音信号に残響の合成し及び声音位置決め処理を行うデジタル信号プロッセッサーと、
スピーカー及び上記スピーカーの前方のセンサーを含み、上記声音信号を受信、放送すると共に、上記センサーにより外部騒音を加えた上記声音信号を検知する声音放送装置と、
上記デジタル信号プロッセッサー及び上記声音放送装置に接続し、上記センサーが検知する外部騒音を加えた声音信号を利用し、抵抗騒音が上記声音信号を妨害する上記外界のノイズを消除する騒音制御装置を具備することを特徴とする声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項2】
上記声音位置決め処理がヘッド関連移転函数声音位置決めの3次元声音効果処理をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項3】
上記ヘッド関連移転函数が両耳の間の移転函数で示すことを特徴とする請求項2に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項4】
上記両耳の間の移転函数が音源と同一側の同一側ヘッド移転パルス応答及び上記音源と異なる側のヘッド移転パルス応答の両者の差異値であることを特徴とする請求項1に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項5】
両耳の間の移転函数が上記ヘッド関連移転函数を示す工程が、信号と上記同一側ヘッド移転パルス応答を回転積分により同一側出力信号とする工程と、上記同一側出力信号が両耳の間の移転函数を介し転換され、相対する両耳の間の時間差を加えることにより異なる側の出力信号が得られる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項6】
上記両耳の間の移転函数がウィンナーフィルターの近似法でローエンドの有限パルス応答フィルターの構造を求めることを特徴とする請求項4に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項7】
上記有限パルス応答フィルターの構造が人間の耳に聞こえる周波数領域に応じて設計され、人間の耳に聞こえない周波数領域を無視することを特徴とする請求項6に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項8】
上記騒音制御装置が量子化帰還論理を基礎として、上記声音放送装置の仕様に応じて設計されることを特徴とする請求項1に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項9】
上記装置がイヤホンと携帯電話に応用されることを特徴とする請求項1に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項10】
声音信号を入力する工程と、
上記声音信号に残響を合成し、声音位置決め処理を行う工程と、
声音信号を声音放送装置により放送する工程と、
上記声音放送装置におけるセンサーにより上記声音信号を受信し、同時に起こる外部の騒音を放送する工程と、
上記外部騒音を加えた上記声音信号を騒音制御装置へ伝達する工程と、
上記騒音制御装置により抵抗騒音信号が上記外部騒音のノイズを消除する工程と、
上記外部騒音を削除する上記声音信号を上記声音放送装置により放送する工程を具備することを特徴とする声音効果処理と騒音制御を有する方法。
【請求項11】
上記声音位置決め処理がヘッド関連移転函数声音位置決めの3次元声音効果処理をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載する声音効果処理と騒音制御を有する方法。
【請求項12】
上記ヘッド関連移転函数が両耳の間の移転函数で示すことを特徴とする請求項11に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項13】
上記両耳の間の移転函数が音源の同一側の同一側ヘッド移転パルス応答及び上記音源の異なる側のヘッド移転パルス応答の両者の差異値であることを特徴とする請求項12に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項14】
両耳の間の移転函数により上記ヘッド関連移転函数を示す工程が、信号と上記同一側ヘッド移転パルス応答を回転積分により同一側出力信号とする工程と、上記同一側出力信号が両耳の間の移転函数を介し転換され、相応する両耳の時間差を加えることにより異なる側の出力信号を得る工程を含むことを特徴とする請求項13に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項15】
上記両耳の間の移転函数がウィンナーフィルターの近似法でローエンドの有限パルス応答フィルターの構造を求めることを特徴とする請求項1に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。
【請求項16】
上記有限パルス応答フィルターの構造が人間の耳に聞こえる周波数領域に応じて設計され、人間の耳に聞こえない周波数領域を無視することを特徴とする請求項1に記載する声音効果処理と騒音制御を有する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−139307(P2006−139307A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2006−17053(P2006−17053)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(503077109)国立交通大学 (34)
【Fターム(参考)】