説明

変位計測装置、変位計測方法及びプログラム

【課題】赤熱状態にある測定対象物においても複数の評価点の変位を同時に計測できる変位計測手法を提供すること
【解決手段】画像成分決定手段3bにより、赤熱前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定し、画像変換手段3cにより、変形前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データを、画像成分決定手段3bにより決定された成分の画像データに変換し、この変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、変位演算手段3により、パターンマッチング処理を行い、変位を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測装置、変位計測方法及びプログラムに関する。なお、赤熱状態とは測定対象物の種類によっても変化するが、概ね700℃以上の状態をいう。
【背景技術】
【0002】
赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する手法としては、従来、透過型又は反射型のレーザー変位計(例えば特許文献1)、変位を伝達する検出棒(例えば特許文献2)、あるいはひずみゲージ(例えば特許文献3)を用いる手法が知られている。しかし、これら手法はいずれも一つの変位計を用いて一点の変位を計測するものであり、複数の評価点の変位を同時に計測するには、評価点と同じ数の変位計とそれらを固定するジグを用いる必要があるために、装置が複雑になり高額になる問題があった。
【0003】
一方、複数の評価点の変位を同時に計測する手法として画像相関法が知られている(例えば特許文献4)。画像相関法では、変形前後の測定対象物の表面をデジタルカメラで撮影し、変形前の画像を複数の領域に分割して、その分割された変形前の画像領域(テンプレート画像)に対応する変形後の画像領域をパターンマッチング処理により探し出すことで変位を計測する。このため、画像相関法では測定対象物の表面にランダムパターンが施される。
【0004】
しかし、この画像相関法を赤熱状態にある測定対象物の変位計測に使用した場合、赤熱領域からの発光により、撮影された測定対象物表面のランダムパターンが識別できなくなり、パターンマッチング処理による変位の計測ができなくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−333154号公報
【特許文献2】特開平5−248961号公報
【特許文献3】特開平7−19808号公報
【特許文献4】特開2009−198452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、赤熱状態にある測定対象物においても複数の評価点の変位を同時に計測できる変位計測手法を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測装置であって、赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する画像成分決定手段と、変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、前記画像成分決定手段により決定された成分の画像データに変換する画像変換手段と、前記画像変換手段により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手段とを備えた変位計測装置が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によれば、変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測装置であって、変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、RGB成分のいずれかの成分の画像データに変換する画像変換手段と、前記画像変換手段により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手段とを備えた変位計測装置が提供される。
【0009】
本発明の更に他の観点によれば、変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測方法であって、赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する画像成分決定工程と、変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、前記画像成分決定工程により決定された成分の画像データに変換する画像変換工程と、前記画像変換工程により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算工程とを有する変位計測方法が提供される。
【0010】
本発明の更に他の観点によれば、変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測方法であって、変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、RGB成分のいずれかの成分の画像データに変換する画像変換工程と、前記画像変換工程により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算工程とを有する変位計測方法が提供される。
【0011】
本発明の更に他の観点によれば、変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測するためにコンピュータに、赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する画像成分決定手順と、変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、前記画像成分決定手順により決定された成分の画像データに変換する画像変換手順と、前記画像変換手順により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手順とを実行させるためのプログラムが提供される。
【0012】
本発明の更に他の観点によれば、変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測するためにコンピュータに、変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、RGB成分のいずれかの成分の画像データに変換する画像変換手順と、前記画像変換手順により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手順とを実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分の画像データ、すなわち赤熱の影響を最も受けなかった成分の画像データを使用して変位を計測するので、赤熱状態にある測定対象物においても複数の評価点の変位を同時に計測できる。
【0014】
赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分がR成分、G成分及びB成分のいずれであるかは、予め、赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を求めることで決定できる。なお、予め、各成分の赤熱前後の赤熱領域の輝度値の変化を求めるまでもなく、赤熱前後の赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分が明確である場合には、予め赤熱前後の赤熱領域の輝度値の変化を求める処理は省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による変位計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の変位計測装置による変位計測方法において、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する手順を示すフローチャートである。
【図3】図1の変位計測装置による変位計測の手順を示すフローチャートである。
【図4】耐火物のスポーリング試験の要領を示す説明図である。
【図5】実施例1における赤熱後の測定対象物の画像データを示す。
【図6】図5の画像データをRBG成分に分離した画像データを示し、(a)はR成分、(b)はG成分、(c)はB成分を示す。
【図7】実施例1による変位演算の結果をイメージ化したものである。
【図8】比較例1による変位演算の結果をイメージ化したものである。
【図9】実施例2における赤熱後の測定対象物の画像データを示す。
【図10】図9の画像データをRBG成分に分離した画像データを示し、(a)はR成分、(b)はG成分、(c)はB成分を示す。
【図11】実施例2による変位演算の結果をイメージ化したものである。
【図12】比較例2による変位演算の結果をイメージ化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による変位計測装置の構成を示すブロック図である。図1に示す変位計測装置は、測定対象物1を撮影するデジタルカメラ2と、デジタルカメラ2で撮影した画像データを処理するコンピュータ3とから構成される。
【0017】
コンピュータ3は、メモリ手段3a、画像成分決定手段3b、画像変換手段3c、変位演算手段3d及びフィルタ手段3eを備える。
【0018】
メモリ手段3aは、デジタルカメラ2で撮影した画像データを保存する。
【0019】
画像成分決定手段3bは、赤熱前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する。赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する方法としては、例えば、各成分について赤熱前後で赤熱領域(赤熱前では赤熱後の赤熱領域に対応する領域)の輝度値の平均値を演算し、赤熱前後の輝度値の平均値の差が最も小さい領域を求める方法を採用できる。赤熱前後の赤熱領域の輝度値の変化を求める際には、赤熱領域全体の輝度値の平均値を使用できるほか、赤熱領域を一ピクセル単位あるいは複数のピクセル単位に区分して、そのピクセル単位毎の輝度値の平均値を使用できる。赤熱領域をピクセル単位に区分する場合、赤熱前後で対応するピクセル単位毎に赤熱前後の輝度値の変化を求め、その変化の平均値が最も小さい成分を、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分とすることができる。
【0020】
なお、本発明において、画像成分決定手段3bは、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定するもので、その決定方法は上述の方法に限定されず、例えば上述の方法のほかに、カラー画像で十分に赤熱していると判断された領域を定義し、RGBの各画像について、その領域内における輝度値の標準偏差を計算し、標準偏差の大きい成分を選択する方法を採用することもできる。
【0021】
また、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分の決定は、画像成分決定手段3bによる演算によらず、目視で決定することもできる。
【0022】
画像変換手段3cは、変形前後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影した画像データを、画像成分決定手段3bにより決定された成分の画像データに変換する。
【0023】
変位演算手段3dは、画像変換手段3cにより変換された変形前後の測定対象物1の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する。
【0024】
フィルタ手段3eは、赤熱において発光輝度が高い長波長側の光(具体的には例えば400nm以上の波長)をカットする。本実施形態では、フィルタ手段3eで赤熱による発光をカットした画像データがメモリ手段3aに保存され、その画像データが、上述の画像成分決定手段3b、画像変換手段3c及び変位演算手段3dに供される。
【0025】
これらの画像成分決定手段3b、画像変換手段3c、変位演算手段3d及びフィルタ手段はCPUで構成することができ、コンピュータ3にインストールされたプログラムに従い機能する。
【0026】
以下、図2及び図3を参照して、図1の変位計測装置による変位計測方法を説明する。図2は、図1の変位計測装置による変位計測方法において、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する手順を示すフローチャート、図3は、図1の変位計測装置による変位計測の手順を示すフローチャートである。
【0027】
本実施形態では、予め、図2の手順により赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分、すなわち赤熱の影響を最も受けなかった成分を決定する。
【0028】
具体的には、まず、赤熱前と赤熱後の測定対象物1をデジタルカメラ2で撮影し、それぞれの画像データから赤熱による発光をフィルタ手段3eでカットした上で、各画像データ(赤熱前後の画像データ)をメモリ手段3aに保存する。次に、画像成分決定手段3bが、メモリ手段3aから赤熱前後の画像データを読み出し、これをRGB成分に分離して、R成分、G成分及びB成分のそれぞれについて赤熱領域における輝度値の平均値を演算し、赤熱前後の輝度値の平均値の差が最も小さい成分を決定する。
【0029】
以下、図3を参照して図1の変位計測装置による変位計測の手順を説明する。
【0030】
まず、変形中(変形前後を含む)の測定対象物1をデジタルカメラ2で連続的に撮影し、その画像データから赤熱による発光をフィルタ手段3eでカットした上で、当該画像データをメモリ手段3aに保存する。
【0031】
一方、画像変換手段3c及び変位演算手段3dは、画像データの処理に先立ち、メモリ手段3aに別途保存されているパラメータを読み込む。具体的には、画像変換手段3cは、画像変換に必要なパラメータとして、予め図2の手順で決定された、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分の種類を読み込む。また、変位演算手段3dは、変位の演算に必要なパラメータとして、パターンマッチング処理の際のテンプレート画像の大きさ、検索領域の大きさ、更にはサブピクセル処理の種類とそのパラメータを読み込む。
【0032】
次に、画像変換手段3cが、メモリ手段3aから変形中の画像データを読み出し、上述のパラメータに基づき、その画像データをR成分、G成分又はB成分の画像データに変換する。
【0033】
この変換された画像データを使用して、変位演算手段3dがパターンマッチング処理により変位を演算する。具体的には、変位演算手段3dは、まず、メモリ手段3aから変形前画像データと変形後画像データを選択して読み出す。ここで、変形前画像データとはデジタルカメラ2で連続的に撮影した画像データのうち先に撮影した画像データのことをいい、変形後画像データとは後に撮影した画像データのことをいう。
【0034】
次に、変位演算手段3dは、上述のパラメータに基づき、処理領域としてテンプレート画像の大きさと位置を決定し、変形前画像データからテンプレート画像を、変形後画像データから検索領域の画像を作成する。すなわち、変位演算手段3dは、処理領域として変形前画像データをテンプレート画像の大きさで分割して、そのうちの一つをテンプレート画像として選択し上で、変形後画像データから検索領域の画像を作成する。そして、変位演算手段3dは、テンプレート画像と検索領域の画像をパターンマッチング処理し、ピクセルレベルでの変位を演算する。パターンマッチング処理によるピクセルレベルでの変位を演算する手法は、画像相関法において周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0035】
次に、変位演算手段3dは、上述のパラメータに基づきサブピクセル処理を行ってサブピクセルレベルでの変位を算出し、これをピクセルレベルの変位に加算する。サブピクセル処理の手法は、画像相関法において周知であり、類似度補間法又は相違度補間法、画像補間法、勾配法、2次元DFT(Discrete Fourier Transform)法をそれぞれ単独で又は組み合わせて適用できる。本実施形態では、類似度補間法と画像補間法を組み合わせて適用した。
【0036】
変位演算手段3dは、以上の処理を全ての分割領域の処理が完了するまで繰り返し、全ての分割領域の処理が完了したら、選択した変形前後の画像データにおける変位の演算結果を出力する。変位演算手段3dは、変形前後の画像データを順次選択して処理を行い、全ての画像データの処理が完了したら、処理を終了する。
【0037】
なお、以上の実施形態では、画像成分決定手段3bを使用して、図2の手順により、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定するようにしたが、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分が明確である場合には、画像成分決定手段3bによる図2の処理を省略し、図3の手順において、単にパラメータとして、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分の種類を読み込むようにしてもよい。また、サブピクセル処理も省略することができる。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
図4に示す要領で耐火物製の測定対象物1のスポーリング試験を行い、測定対象物1の変位を計測した。すなわち、実施例1では、図4に示すように、ベースれんが4に保持された測定対象物1の一端(一側面)をガスバーナ5で加熱し、その一端を含む領域を上方からデジタルカメラ2で撮影し、その画像データを図1で説明したコンピュータ3で処理した。なお、実施例1では、フィルタ手段3eは使用しなかった。
【0039】
一方、比較例1では、実施例1と同じ測定対象物1の画像データをRGB成分に分離することなく、変位演算手段3dで処理した。
【0040】
図5は、デジタルカメラ2で撮影した赤熱後の測定対象物1の画像データを示す。また、図6は、図5の画像データをRBG成分に分離した画像データを示し、(a)はR成分、(b)はG成分、(c)はB成分を示す。
【0041】
これらの赤熱後のR成分、G成分、B成分の画像データと、予め撮影しておいた同じ視野での測定対象物1の赤熱前の画像データのR成分、G成分、B成分とを画像成分決定手段3bで処理し、赤熱前後で赤熱領域の輝度値(平均値)の変化が最も小さい成分を求めたところ、B成分であった。
【0042】
そこで、実施例1では、B成分の画像データを使用して、図3に示した手順にて変位演算手段3dによりパターンマッチング処理を行い測定対象物1の変位を演算した。パターンマッチング処理におけるテンプレート画像の大きさは縦50ピクセル、横50ピクセルとした。
【0043】
図7は、実施例1による上述の変位演算の結果をイメージ化したものである。図7では、ピクセルレベルでの変位の大きさをグレースケールの濃淡で示すとともに、上述のパターンマッチング処理における相関係数(類似度)が0.1以下の領域は、変位計測不能と見なして非表示領域としている。なお、非表示領域は、図7中の外枠内における白色部分の領域のことをいう(図8、図11、図12についても同様)。
【0044】
一方、図8は、比較例1による変位演算の結果を図7と同じ要領でイメージ化したものである。
【0045】
図7及び図8において、その画像の上部が赤熱領域であり、図7と図8を比較すると、実施例1の図7では比較例1の図8に比べ、赤熱領域において変位計測不能であることを示す非表示領域が少なく、実施例1では赤熱の影響を軽減できていることがわかる。
【0046】
(実施例2)
上記実施例1と同じ要領で耐火物製の測定対象物1のスポーリング試験を行い、測定対象物1の変位を計測した。ただし、実施例2ではフィルタ手段3eを使用した。フィルタ手段3eでは赤熱成分として主に390nmより長波長の光をカットできるものを使用した。
【0047】
図9は、赤熱後の測定対象物1の画像データ(フィルタ手段3eにより赤熱成分カット済)を示す。また、図10は、図9の画像データをRBG成分に分離した画像データを示し、(a)はR成分、(b)はG成分、(c)はB成分を示す。
【0048】
これらの赤熱後のR成分、G成分、B成分の画像データと、予め撮影しておいた同じ視野での測定対象物1の赤熱前の画像データのR成分、G成分、B成分とを画像成分決定手段3bで処理し、赤熱前後で赤熱領域の輝度値(平均値)の変化が最も小さい成分を求めたところ、R成分であった。
【0049】
そこで、実施例2では、R成分の画像データを使用して、実施例1と同様に変位演算手段3dによりパターンマッチング処理を行い測定対象物1の変位を演算した。
【0050】
一方、比較例2では、実施例2と同じ測定対象物1の画像データ(フィルタ手段3eにより赤熱成分カット済)をRGB成分に分離することなく、変位演算手段3dで処理した。
【0051】
図11は、実施例2による変位演算の結果をイメージ化したもの、図12は、比較例2による変位演算の結果をイメージ化したものである。図11及び図12においても、パターンマッチング処理における相関係数(類似度)が0.1以下の領域は、変位計測不能と見なして非表示としている。
【0052】
図11と図12を比較すると、実施例2の図11では比較例2の図12に比べ、赤熱領域において変位計測不能であることを示す非表示領域が少なく、実施例2では赤熱の影響を軽減できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による変位計測手法は、上述のスポーリング試験による変位(ひずみ)の計測のほか、高温下で行う材料試験における亀裂の長さと幅の計測、高温下で行う材料試験における試料の変位量計測、高温となった炉体の変形計測、浸漬ノズルの交換時における高温となった部材の移動量計測などに利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 測定対象物
2 デジタルカメラ
3 コンピュータ
3a メモリ手段
3b 画像成分決定手段
3c 画像変換手段
3d 変位演算手段
3e フィルタ手段
4 ベースれんが
5 ガスバーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測装置であって、
赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する画像成分決定手段と、
変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、前記画像成分決定手段により決定された成分の画像データに変換する画像変換手段と、
前記画像変換手段により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手段と
を備えた変位計測装置。
【請求項2】
変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測装置であって、
変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、RGB成分のいずれかの成分の画像データに変換する画像変換手段と、
前記画像変換手段により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手段と
を備えた変位計測装置。
【請求項3】
変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測方法であって、
赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する画像成分決定工程と、
変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、前記画像成分決定工程により決定された成分の画像データに変換する画像変換工程と、
前記画像変換工程により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算工程と
を有する変位計測方法。
【請求項4】
変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測する変位計測方法であって、
変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、RGB成分のいずれかの成分の画像データに変換する画像変換工程と、
前記画像変換工程により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算工程と
を有する変位計測方法。
【請求項5】
変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測するためにコンピュータに、
赤熱前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データをそれぞれRGB成分に分離して、赤熱前後で赤熱領域の輝度値の変化が最も小さい成分を決定する画像成分決定手順と、
変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、前記画像成分決定手順により決定された成分の画像データに変換する画像変換手順と、
前記画像変換手順により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手順と
を実行させるためのプログラム。
【請求項6】
変形前後の少なくともいずれかにおいて赤熱状態にある測定対象物の変位を計測するためにコンピュータに、
変形前後の測定対象物をデジタルカメラで撮影した画像データを、RGB成分のいずれかの成分の画像データに変換する画像変換手順と、
前記画像変換手順により変換された変形前後の測定対象物の画像データを使用して、パターンマッチング処理により変位を演算する変位演算手順と
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−83605(P2013−83605A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225052(P2011−225052)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】