変動性硬度を有するカバーを持つゴルフボール
【課題】 高いカバー硬度と関連する有利なプレイ特徴(長い距離)を実現し、同時に、低いカバー硬度と関連する有利なプレイ特徴(高スピン)を実現するゴルフボールを提供すること。
【解決手段】 全体として開示されるのは、コア及びカバー層を含むゴルフボールである。カバー層は、ディンプルに一致する硬い区域、及び、ディンプル間の平地に一致する軟らかい区域を含む。カバー層は、例えば、加熱によって選択的に処理されて、単一カバー層材料を使用しながら、硬度差を実現する。それとは別に、カバー層は、コーティング材料によって選択的に処理されて異なる硬度を持ってもよい。硬いディンプル及び軟らかい平地の配置の結果、ゴルフボールは、比較的大きな力で打たれると(例えば、ドライバーショットの際)、スピンの低下及び距離の延長を実現し、一方同時に、比較的小さな力で打たれると(例えば、チップの際)、スピンの増大及びコントロールの向上を実現する。
【解決手段】 全体として開示されるのは、コア及びカバー層を含むゴルフボールである。カバー層は、ディンプルに一致する硬い区域、及び、ディンプル間の平地に一致する軟らかい区域を含む。カバー層は、例えば、加熱によって選択的に処理されて、単一カバー層材料を使用しながら、硬度差を実現する。それとは別に、カバー層は、コーティング材料によって選択的に処理されて異なる硬度を持ってもよい。硬いディンプル及び軟らかい平地の配置の結果、ゴルフボールは、比較的大きな力で打たれると(例えば、ドライバーショットの際)、スピンの低下及び距離の延長を実現し、一方同時に、比較的小さな力で打たれると(例えば、チップの際)、スピンの増大及びコントロールの向上を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ゴルフボール、及び、該ボールを製造する方法に関する。特に、ゴルフボールのカバー層は、比較的高い硬度を有する区域、及び、比較的低い硬度を有する区域を含む。
【背景技術】
【0002】
ゴルフゲームは、アマチュアレベルでもプロレベルでも、人気度が増しているスポーツである。当該技術分野では、ゴルフボールの製造及び設計に関連して広範な技術が知られる。このような技術は、種々のプレイ特徴を有するゴルフボールを生みだしてきた。例えば、様々のスウィングスピードなど様々なゴルフプレイ能力を有するプレイヤーに対し、様々なゴルフボールが製造され、市場に供給されている。
【0003】
同様に、ゴルファーは、該ゴルファーの好みにしたがって、種々のプレイ特徴を有する、様々なゴルフボールを使用する場合がある。例えば、様々なディンプルパターンは、飛行中、ゴルフボールの航空力学的特性に影響を及ぼす可能性があり、或いは、カバー層の硬度における違いは、バックスピン率に影響を及ぼす可能性がある。特に硬度に関しては、ゴルファーは、比較的硬いか、又は軟らかいカバー層及び/又はコアを持つゴルフボールを使用することを選ぶ場合がある。比較的硬いカバー層を有するゴルフボールは、一般に、低いドライバースピンを実現し、比較的長い距離を実現する。しかしながら、比較的硬いカバー層の引き起こすスピン率は比較的低く、したがって、ドライバーショットにはより優れるが、比較的短いショットではコントロールがより難しくなる。一方、比較的軟らかいカバー層を有するゴルフボールは、一般に、比較的多数のスピンを受け、したがって、コントロールはより易しく、グリーンでは停止するが、ティーからの距離に不足する。
【0004】
当該技術分野では、種々の硬度特徴を有する、様々なゴルフボールが知られる。一般に、ゴルフボールの硬度は、ゴルフボールを構成する種々層の化学的組成及び物理的配置によって決定される。したがって、様々な硬度値及び様々な硬度プロフィールを有するゴルフボールを生みだすために、いくつかの異なるゴルフボール材料が混ぜ合わされ、種々の組み合わせ及び配置において適合される。
【0005】
しかしながら、所望の硬度特徴を実現するようにゴルフボールをデザインすることは、少なくともいくつかの困難に悩まされる。一般に、公知のゴルフボールの構築は、様々な設計変数、例えば、層配置、各層に使用される材料、及び、層厚が、それぞれに対してバランスされることを要求する。したがって、これらの変数のいずれのものであれ、それの変化による所望の硬度の向上は、必ず他のプレイ特徴の犠牲を伴う。さらに、公知のゴルフボール構築に関連する材料コスト及びデザインコストは、エンドユーザーに対しゴルフボールコストを不当に上げる可能性がある。恐らくもっとも重要なのは、公知のゴルフボールは、高いカバー硬度と関連する有利なプレイ特徴(長い距離)を実現し、一方ではさらに、低いカバー硬度と関連する有利なプレイ特徴(高スピン)を同時に実現することができないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当該技術分野では、上述の従来技術の欠点に対処するシステム及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一局面では、本発明は、ゴルフボールであって、コア;及び、事実上コアを取り囲み、複数のディンプル、及び、該ディンプルを隔てる少なくともひとつの平地区域を含むカバー層、を含み;該カバー層は、第1硬度を有し、その上に少なくとも一つのディンプルを有する第1部分、及び、第2硬度を有し、その上に少なくとも一つの平地区域を有する第2部分、を含み;ここに、第1部分及び第2部分は、連続カバー層材料から成る非重複部分であり;且つ、第1硬度の方が第2硬度よりも高いことを特徴とする、ゴルフボールを提供する。
【0008】
別局面では、本開示は、上述のゴルフボールであって、カバー層の第1部分は第1結晶度を有し、カバー層の第2部分は第2結晶度を有し、第1結晶度の方が第2結晶度よりも高いことを特徴とする、ゴルフボールを提供する。
【0009】
さらに、本開示は、ゴルフボールであって:コア;及び、カバー層において、コアを事実上取り囲み、第1硬度を有する材料から形成され、その上に複数のディンプル及び少なくとも一つの平地区域を有するカバー層、を含み;該複数のディンプルは、該カバー層の上に第1パターンとして配置され;該少なくとも一つの平地区域は、該カバー層の上に第2パターンとして配置され、第1パターン及び第2パターンは非重複パターンであり;ここに、カバー層は、第2硬度を有するコーティング材料によってコートされ、そのため、コーティング材料は、第1パターンと第2パターンの内の一方の少なくとも一部と重複するが、第1パターンと第2パターンの内の他方とは重複せず;且つ、第2硬度は第1硬度とは異なることを特徴とする、ゴルフボールを提供する。
【0010】
最後に、本開示はさらに、ゴルフボールの製造法であって、下記の工程:(1)コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を有するゴルフボールを受容すること、ここに、カバー層は、複数のディンプル、及び、隣接ディンプルを隔離する少なくとも一つの平地区域を有し、該複数のディンプルは、カバー層において第1パターンとして配置され、該少なくとも一つの平地区域は、カバー層において第2パターンとして配置される;(2)第1パターン及び第2パターンの内の少なくとも一方の少なくとも一部において、カバー層をコーティング材料によってコートすること;及び、要すれば、(3)カバー層からコーティング材料を選択的に除去すること、を含み、上記工程によって、コーティング材料は、第1パターン及び第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターン及び第2パターンの内の他方とは事実上重複しない、ことを特徴とする方法を提供する。
【0011】
本開示の他のシステム、方法、特色、及び利点は、当業者には明白であろうし、或いは、下記の図面及び詳細な説明を精査することによって明白となろう。そのような追加のシステム、方法、特色、及び利点は全て、本明細書及び本概要の範囲に含まれ、本開示の範囲に含まれ、且つ、下記の特許請求項によって保護されることが意図される。
【0012】
本発明は、下記の図面及び説明を参照することによってさらによく理解することが可能である。図面の成分は必ずしも実尺に合致するものではなく、強調はむしろ本開示の原理の具体的説明に置かれる。さらに、図面において、同じ参照数字は、種々の投影図を通じて対応する部品を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】選択的処理前後の、例示ゴルフボールを示す。
【図2】選択的処理前後の該ゴルフボールの断面を示す。
【図3】別のディンプルパターンを有するゴルフボールの断面を示す。
【図4】選択的加熱を実現するために使用することが可能な加熱デバイスを示す。
【図5】加熱前後の、ゴルフボールと加熱デバイスの断面を示す。
【図6】加熱前後における、ゴルフボールの一部及び第2加熱デバイスの断面を示す。
【図7】選択的コーティング前後の、例示ゴルフボールを示す。
【図8】選択的コーティング前後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面を示す。
【図9】異なる選択的コーティング前後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面を示す。
【図10】ゴルフボールカバー層の一部の、さらに詳細な断面を示す。
【図11】選択的コーティングの一部が除去された後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面拡大図を示す。
【図12】ゴルフボールカバー層の一部の、さらに詳細な断面の第2実施態様を示す。
【図13】選択的コーティングの一部が除去された後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面拡大図の第2実施態様を示す。
【図14】必要に応じて任意に選択されるステップを含む、ゴルフボール製造法を詳述するフローチャートである。
【図15】ゴルフボールをドライバーによってまさに打たんとするゴルファー、及び、ドライバーによって打たれる前のゴルフボールの詳細図を示す。
【図16】ゴルフボールをドライバーによって打ちつつあるゴルファー、及び、ドライバーによって打たれつつあるゴルフボールの、二つの詳細図を示す。
【図17】ゴルフボールをアイアンによって打ちつつあるゴルファー、及び、アイアンによって打たれつつあるゴルフボールの、二つの詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般に本開示は、比較的硬い、カバー層上の区域、及び、比較的軟らかい、カバー層上の区域を有するゴルフボールに関する。比較的硬い区域は、カバー層のディンプルの内の少なくともいくつかに一致し、比較的軟らかい区域は、ディンプル間の少なくとも一つの平地区域の少なくとも一部に一致する。硬ディンプル及び軟平地区域(単数又は複数)の配置のために、このゴルフボールは、比較的大きな力で打たれるとき(例えば、ドライバーショット時)、経験するスピン率が比較的低く、一方、比較的小さな力で打たれるとき、経験するスピン率は比較的高く、コントロールは増大する(例えば、チップ・ショット時)。したがって、このゴルフボールは、ドライバーショット時には、比較的硬いカバー層と関連する有利なプレイ特徴(例えば、距離がより長くなる)を実現し、他方同時に、短いショットの際は、比較的軟らかいカバー層と関連する有利なプレイ特徴(例えば、スピンがより高くなる)を実現する。
【0015】
本開示はさらに、このようなゴルフボールの製造法に関する。
【0016】
図1は、本開示による例示ゴルフボール100を示す。ゴルフボール100は、その上に複数のディンプル104、及び少なくとも一つの平地区域106を有するカバー層から構成される。ゴルフボール100は、一般に、コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を有するものであればいずれのタイプのゴルフボールであってもよい。例えば、ゴルフボール100は、コアとカバー層しか持たない、2層(ツーピース)構造であってもよいし、或いは、ゴルフボール100は、コアとカバー層の間に一つ以上の中間層を配置させてもよい。本明細書においてそうではないと断る場合を除いては、ゴルフボール100の各層は、ゴルフボール製造の技術分野で周知のものであればいずれの材料から形成されてもよく、又はいずれの構造を持っていてもよい。例えば、ゴルフボール100の種々層は、ゴム、ゴムコンポジット、熱可塑性ポリウレタン、高度に中和されるポリマー、アイオノマー、及び、ゴルフボール製造分野において公知の、他のポリマー材料から構成されてもよい。
【0017】
上記複数のディンプル104は、一般に、ゴルフボール技術分野で公知のものと同様の任意のパターンとしてカバー層上に配置されてよい。種々の公知の、高密度ディンプルパターンが当該技術分野で知られる。ディンプル104は、一般に、円形、三角形、又は多辺形など、任意の形状を取ってもよい。ディンプル104は、均一の形状及びサイズを持ってもよいし、或いは、ディンプルパターンは、(例えば)異なるサイズ又は異なる形状を持つ、二つ以上の異なるタイプのディンプルから構成されてもよい。少なくとも一つの平地区域106とは、少なくとも二つのディンプル104を隔て、凹んでいなかったり、又はその他のやり方でディンプルの一部となっていない、カバー層の部分である。一般に、平地区域106は、隣接ディンプル104の間の「隆起」又は「フレット」である。ゴルフボール100は、図1に示すように、カバー層全体に亘って一つの連続的平地区域106を含んでもよいし、又は、複数のディンプル104の間に、複数の、別々の平地区域を含んでもよい。
【0018】
図1に示すように、ゴルフボール100は、平地区域106において選択的処理を受ける。図1に示す実施態様では、この選択的処理によって、平地区域106の全体が、第1状態から、第2状態の平地区域108に変えられる。別の実施態様では、選択的処理は、平地区域106の一部に適用されてもよい。この選択的処理は、下記にさらに詳述するように、加熱工程を含んでもよい。
【0019】
図2は、選択的処理前後のゴルフボール100の断面を示す。特に、ゴルフボール100は、コア202及びカバー層200を含む。カバー層200は、その上にディンプル104及び平地区域106を含む。選択的処理前、カバー層200は、その上に少なくとも一つのディンプル104を有するいくつかのセクション204、及び、その頂上境界を形成する少なくとも一つの平地区域106の少なくとも一部を有するいくつかのセクション206から構成される。選択的処理後、その上に少なくとも一つの平地区域106の一部を有するセクション206は、第2状態の平地区域108に関して上述したように、第2状態208に変化する。
【0020】
選択的処理後、カバー層200は、一般に、第1硬度を有する第1部分、及び、第2硬度を有する第2部分を含む。第1部分は、一般に、その上に少なくとも一つのディンプル104を有するカバー層200のセクション204を含む。第1部分は、その上にディンプル104を有する、カバー層200の全セクション204を含んでもよく、或いは、第1部分は、セクション204のいくつかを含んでもよいが、他のものは含まない。言い換えると、第1部分は、全体として、その上のディンプル104の全部を含んでもよく、或いは、その上の複数のディンプル104全体よりは少ないディンプルのサブセットを含んでもよい。一般に、カバー層200の第1部分は、任意の数及び配置のセクション204から構成させることが可能である。同様に、カバー層200の第2部分は、一般に、その上に少なくとも一つの平地区域108の、少なくとも一部を有するセクション208を含む。第2部分はさらに、全セクション208、又は、全セクション208よりも少ないセクションから構成されていてもよい。言い換えると、第2部分は、全体として、その上の平地区域(単数又は複数)全部の全体を含んでもよく、或いは、その上の平地区域(単数又は複数)全部の全体よりは少ない平地区域を含んでもよい。
【0021】
第1又は第2部分は、図2に示すように、カバー層200の断面厚全体に亘って延びてもよいし、或いは、図5に示すように、カバー層200の断面の一部分だけに亘って延びていてもよい。再び図2を参照すると、具体的には、第2部分は、カバー層200の外面250からカバー層200の内面252に延びていてもよい。それとは別に、図5に示すように、第2部分は、カバー層200の外面250から、カバー層200の外面250と内面252の間の中間点254に延びていてもよい。
【0022】
第1部分及び第2部分は、それぞれ、連続的カバー層材料の非重複部分である。すなわち、図2に示すように、部分204及び部分206は、ディンプル104及び平地106によって定められるが、それ以外の点では、同じ連続的カバー層200の部分である。特定実施態様では、カバー層200の第1部分及び第2部分は、同じ材料組成を有する、すなわち、第1部分及び第2部分を構成する材料の化学的組成に違いは無い。
【0023】
カバー層200の第1部分に関連する第1硬度は、カバー層200の第2部分に関連する第2硬度よりも高い。したがって、ディンプル104に関連する、カバー層200の部分は、一般に相対的に硬く、一方、平地区域108に関連するカバー層200の部分は、一般的に相対的に軟らかい。第1部分及び第2部分の間の硬度差の程度は、僅少差でなければ、いずれの硬度差であってもよい。ある実施態様では、第1部分の硬度は、第2部分の硬度よりも、ショアDスケールにおいて少なくとも約3単位硬くともよい。別の実施態様では、第1部分は、第2部分よりも、ショアDスケールにおいて少なくとも約5単位硬くともよい。
【0024】
一般に、本開示は、カバー層において、異なる硬度を有する二つ以上のゾーンを包含する。例えば、ゴルフボールは、三つの硬度ゾーンを有してもよい。このような実施態様では、カバー層200は第3部分を含む。第1部分、第2部分、及び第3部分は、全て、連続的カバー層材料の非重複部分である。
【0025】
例えば、本開示と結びつけて使用してよいディンプルパターンの第2実施態様を図3に示す。この実施態様では、カバー層200は再び、ディンプル104、及び、少なくとも二つのディンプル104を隔離する平地区域106を含む。この実施態様では、各ディンプル104は、中心ディンプルセクション152、及び、放射辺縁ディンプルセクション150から構成される。カバー層200は、平地区域の基底となる部分206(上述の、図2に示す実施態様と同様)、放射辺縁ディンプルセクション150の基底部分214、及び、中心ディンプルセクション152の基底部分216を含む。部分214及び216は、まとめると、上述の図2に示す実施態様の部分204と等価である。
【0026】
次に、図3に示すカバー層200は、該カバー層のある部分の硬度を変えるように選択的処理を受けてもよい。具体的には、先ず、部分206は、第2状態の部分208に変化させられるよう、選択的処理を受けてもよい。それによって、部分208は、上述のように第2硬度を実現する。さらに、部分216も、第2状態の部分218に変化させられるよう、選択的処理を受ける。部分218は第3硬度を有する。第3硬度は、第2硬度と異なっていてもよいし、等しくてもよい。最後に、部分214は不変のままであり、第4硬度を有する。第4硬度は、第3硬度より高くてもよい。したがって、選択的処理の経過後、カバー層200は、三つの硬度ゾーン:第2硬度を有する平地区域106、第3硬度を有する中心ディンプルセクション152、及び、第4硬度を有する放射辺縁ディンプルセクション150、を実現する。この場合、上述の「第1部分」は、中心ディンプルセクション152及び放射辺縁ディンプルセクション150を有する少なくとも一つのディンプル104を含み、上述の「第1硬度」は、ディンプル104中の中心ディンプルセクション152及び放射辺縁ディンプルセクション150の相対的比率に基づく、第3硬度及び第4硬度の実効平均と考えてよい。
【0027】
カバー層200は、一般に、選択的処理に反応して硬度を変えることが可能であるならば、いずれの材料で構成されてもよい。選択的処理が加熱を含む特定実施態様では、カバー層200は、米国特許出願公開第2008/0081710号(以後、「710出願」と呼ぶ)に記載される相転移材料を含んでもよい。なお、上記特許文書の開示全体を引用により本明細書に含める。具体的には、「710出願」に記載される相転移材料は、2から6個の炭素原子を有する少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー残基、及び、3から8個の炭素原子を有する少なくとも一つのα,β-エチレン不飽和カルボン酸のコポリマー残基を含む酸性コポリマーである。
【0028】
「710出願」に記載されるように、この相転移材料は加熱に反応して硬度を変える。具体的には、熱エネルギーは、材料の二次結晶構造を破壊することによって硬度を下げる。ポリマー科学において周知のように、半結晶性ポリマー材料の硬度は、該ポリマー材料の結晶度に比例することが可能である。結晶度とは、非晶相にある材料の量と比較した場合の、結晶相にある材料の量である。結晶相は、一般に、非晶相よりも硬く、これは、結晶相では、ポリマー分子が緊密にパックされた結晶構造となっているためである。
【0029】
したがって、ゴルフボール100は、所望の硬度差を実現するために、図4に示すような加熱デバイス600において加熱してもよい。加熱デバイス600は、米国特許第___号に完全に記載され、最近では、2009年10月23日出願、ゴルフボールの加熱用デバイスという表題の、米国特許出願第12/604,830号に記載される。なお、これらの開示の全体を引用により本明細書に含める。加熱デバイス600は、ユーザーの手602によって把持され、図示のように、加熱面106がゴルフボール100に接触させられるように動かされる。
【0030】
具体的には、図5に示すように、所望の硬度差を実現するために、加熱要素606によってカバー層200を選択的に加熱してもよい。具体的には、加熱要素606を、カバー層200の平地区域106と接触させてもよい。したがって、加熱要素606に触れる平地区域106の表面にもっとも近いカバー層200のセクションは加熱される。これらのセクションは、上述のように、カバー層の第2部分を形成する。図5に示すように、ここで記載される実施態様では、第2部分は、加熱要素606によって印加される熱の性質及び程度に依存して、カバー層200の外面250から、外面250と内面252の間の中間点254まで延びる。平地区域106に印加される選択的加熱のため、カバー層200の第1部分(未処理セクション204を包含する)は、第2部分(処理セクション208を包含する)の第2硬度よりも高い第1硬度を有する。具体的には、第2部分の二次結晶構造は破壊され、そのため、第1部分の結晶度の方が、第2部分の結晶度よりも高くなる。
【0031】
図5は、この選択的加熱プロセスが、カバー層200の特定断面に印加されるところだけを示すが、この選択的加熱プロセスは、全ての平地区域106が加熱されるように、ゴルフボール100の全表面に印加されてもよい。それとは別に、選択的加熱プロセスは、所望のままに、ゴルフボール100の種々の場所の内の、ある平地区域106には印加されるが、他の平地区域には印加されなくともよい。いずれの場合でも、カバー層200の第2部分は、カバー層200の、加熱される部分のみを包含し、したがって、カバー層200の第1部分とは異なる硬度差を有する。
【0032】
別実施態様では、カバー層220は、半結晶性熱可塑性材料を含んでもよい。半結晶性材料の硬度を変える方法は、米国特許第___号に完全に記載され、最近では、2010年1月20日出願、ゴルフボールをカスタマイズするための方法及びシステムという表題の、米国特許出願第12/690,493号に記載される。なお、これらの開示の全体を引用により本明細書に含める。
【0033】
具体的には、図6に示すように、加熱要素608は、ディンプル104と関連するカバー層220のセクション210を加熱するために使用されてもよい。「493出願」に記載される方法にしたがって、これらのセクション210は、半結晶性熱可塑性材料中のポリマー分子の運動を増すように加熱され、その後、これらのセクション210の結晶度を上げるために、ゆっくりと冷却されてもよい。したがって、セクション210は、全体として、上述のように、カバー層200の第1部分を構成し、全体として第2部分を構成する非加熱セクション212よりも高い硬度を有する。このような実施態様では、再び、カバー層200の第1部分の結晶度は、第2部分の結晶度よりも高い。言い換えると、第1部分は第1結晶度を有し、第2部分は第2結晶度を有し、第1結晶度は、第2結晶度よりも高い。
【0034】
上述の方法において使用される加熱要素606、又は加熱要素608は、一般に、カバー層の所望の部分を選択的に加熱することが可能であるならば、いずれの加熱機構であってもよい。特定実施態様では、上述し、図4で示したように、加熱要素は、米国特許出願第12/604,830号(以後、「830出願」と呼ぶ)に完全に記載される加熱装置の成分であってもよい。このような実施態様では、加熱要素606又は加熱要素608は、「830出願」に記載されるような内部的加熱面であってもよい。同様に、図5及び6に示す、加熱要素バッキング604は、「830出願」に記載される外部筐体であってもよい。「830出願」に記載されるデバイスによって、消費者は、内部加熱面において特定のパターンを用いることによって、本開示にしたがって所望の硬度差を生みだすことが可能である。
【0035】
上に色々と論じてきたものとは異なる実施態様では、ディンプルと平地区域の間の硬度差は、コーティング材料の使用によって実現することが可能である。図7は、これらの実施態様によるゴルフボール300、及びそのようなゴルフボールを製造するための一般的プロセスを示す。一般に、ゴルフボール300は、コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を含んでもよく、その際、カバー層は、第1硬度を有する材料から形成され、且つ、その上に、複数のディンプル304、及び少なくとも一つの平地区域306を有する。この複数のディンプル304は、カバー層の上に、第1パターンとして配置され、この少なくとも一つの平地306は、カバー層の上に、第2パターンとして配置され、ここに、第1パターンと第2パターンは非重複パターンである。次に、カバー層は、第2硬度を有するコーティング材料308によって、第1パターンと第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターンと第2パターンの内の他方とは事実上重複することがないように、コートされてもよい。第2硬度は第1硬度とは異なる。
【0036】
図7に示す実施態様では、コーティング材料308は、ディンプル304に一致する第1パターンに選択的に印加される。このような実施態様では、第2硬度(すなわち、コーティング材料の硬度)は、第1硬度(すなわち、カバー材料の硬度)よりも高い。したがって、コーティング材料308はディンプル304を硬くし、一方、平地区域306において暴露されるカバー層は、軟らかい。図7は、ディンプル304の全てがコーティング材料308によってコートされるところが示されるが、別態様として、コーティング材料308は、第1パターンのある部分だけをコートしてもよい。
【0037】
図8は、図6に示すディンプル304及び平地区域306の断面図を示す。図8において、コーティング材料308は、各ディンプル304の頂上にコートされ、カバー層302の上にコーティング材料308の薄層を形成する。コーティング材料308の厚みは、一般に、ディンプルの内部に適合するものである限り、いずれの厚みであってもよい。コーティング材料308は、一般に、ゴルフボールの航空力学に著明に影響を及ぼすほど厚くなってはならないが、一方、所望の深さのディンプル形態を実現するように印加されてもよい。ある実施態様では、カバー層は、約2 mm以下の厚みを有していてもよい。したがって、これらの実施態様では、コーティング材料308は、例えば、0.5 mm以下、又は0.3 mm以下、又は0.1 mm以下の桁の厚みを有していてもよい。
【0038】
図9は、平地区域306がコーティング材料310によってコートされる、別の実施態様を示す。この実施態様では、コーティング材料310は、平地区域306に一致する第2パターンの少なくとも一部を覆う。図8の実施態様に関連して上述したように、図9の実施態様でも、コーティング材料310は、一般に、第2パターンの全て、又は、第2パターンの全てよりも小さい部分を、所望の任意の配置において覆ってもよい。コーティング材料310が、第2パターンの少なくとも一部を覆う実施態様では、第2硬度(すなわち、コーティング材料310の硬度)は、カバー層材料の硬度よりも小さい。したがって、コーティング材料310によってコートされる平地区域306は、比較的軟らかく、一方、ディンプル104は、比較的硬い。
【0039】
図10及び11は、上述の実施態様のいずれかと組み合わせて使用されてもよいコーティングのさらに別の特色を示す。具体的には、図10は、カバー層302の表面にいくつかのポケット312を示す。図10は、ポケット312を、平地区域306に一致するカバー層302上に配置されるものとして示しているけれども、ポケット312は、図12及び13に示すように、ディンプル304に一致するカバー層302の上にも同様に配置させてもよい。一般に、ポケット312は、小さな陥凹、又は、カバー層302の表面上に意図的に形成される切痕である。ポケット312は、一般に、ディンプル304の深度よりも少なくとも小さく、ある実施態様では、ディンプル304の深度よりも著明に小さい深度320を有する。カバー層302が約2.0 mmの厚みを有する実施態様では、ポケット312は、約0.5 mm未満、約0.3mm未満、又は、約0.1 mm未満の深度320を有していてもよい。ポケット312は、コーティング材料308、310がカバー層302により良く接着することを可能とする。ポケット312はさらに、ゴルフボールのデザインにおけるより大きな弾力性を可能にする、例えば、所望の硬度差を、ディンプル深度又はゴルフボールの全体直径を変えずに実現する。
【0040】
コーティング材料310が、その中にポケット312を有するカバー層302の上にコートされると、コーティング材料310は、ポケット312を充填するだけでなく、コーティング材料310の頂上セクション314によってカバー層302の表面をもコートする。コーティング材料310の頂上セクション314は、適宜、平地区域306頂上の第2パターン上にそのまま残してもよいし、或いは、取り去って、ポケット312の中だけにコーティング材料310を残してもよい。図11に示すように、コーティング材料310は、ポケットには配置されるが、その他の場所では、カバー層302の表面とは事実上重複しない。
【0041】
図12及び13は、ポケット316が、ディンプル304に配置されるカバー層の表面に作製される実施態様を示す。上述の場合と同様、コーティング材料308は、頂上セクション318を含むだけでなく、ポケット316を充填してもよい。次に、適宜、コーティング材料308の頂上セクション318は除去し、ポケット316だけにコーティング材料308を残してもよい。ディンプル304中のポケット316は、平地区域306と関連するポケット312の深度320と同じであってもよいし、異なっていてもよい深度322を有する。
【0042】
ポケット312及び/又はポケット316を含むこれらの実施態様では、一般に、ゴルフボールの直径又は航空力学的性能を変えることなく、本発明にしたがって、コーティング材料を、第2パターンの硬度を変えるために使用することが可能である。したがって、ゴルフボールの物理的構造の再設計、又は、有利な航空力学的特性の犠牲を要することなく、より広範囲のゴルフボール設計を本開示にしたがって使用することが可能である。
【0043】
コーティング材料は、一般に、所望の硬度に基づいて選ばれてよい。図7及び8に示す実施態様、すなわち、コーティング材料が、カバー層材料の硬度よりも高い硬度を有する実施態様では、コーティング材料は、硬いポリマー又は金属メッキであってもよい。当該技術分野においては、高い硬度値を持つ、広範囲のポリマーが知られる。ポリマー材料の硬度は、一般に、例えば、架橋結合の程度、結晶度、及び重合鎖長によって調節することが可能である。例えば、ある特異的実施態様では、カバー層は、ショアDスケールにおいて約45から60の硬度を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)であってもよく、コーティング材料は、ショアDスケールにおいて約65の硬度を有する熱可塑性ポリウレタンであってもよい。一般に、ポリマーコーティング材料は、任意の熱可塑性、熱硬化性、アイオノマー、コポリマー、又は、ゴルフボール技術分野で知られ、使用される他のポリマー材料であってよい。
【0044】
さらに、コーティング材料は金属メッキであってもよい。ほぼ全ての典型的金属は使用が可能である。なぜなら、大抵の金属は、通例の温度において、ゴルフボールカバー層の形成に通常使用されるポリマー材料よりも高い硬度を有するからである。コーティング材料として使用してもよい例示の金属としては、種々ある中でも特に、アルミニウム、スチール、タングステン、チタン、マグネシウム、及び鉄合金が挙げられる。金属コーティング材料は、硬度、加工性、及びコスト有効性に基づいて選んでもよい。
【0045】
図14は、必要に応じて任意に選択されるステップを含む、上述のゴルフボール製造法を詳述するフローチャートである。一般に、ゴルフボールを製造する方法700は、コア、及び、その上に複数のディンプル及び少なくとも一つの平地区域を有するカバー層を持つゴルフボールを受容する第1ステップ702を含む。次に、カバー層にポケット312を創出するようにカバー層を処理する、任意の予備ステップをゴルフボールに対して実施してもよい。この予備的処理ステップは、例えば、表面の物理的荒削り、又は、カバー層のごく小部分、例えば、ゴルフボールの非マスク部分を腐食する化学的エッチングであってもよい。
【0046】
次に、ゴルフボール製造法700は、二つの一般的ルートのいずれかを取ってもよい。第1ルートの第1ステップ706では、カバー層全体がコーティング材料によってコートされる。コーティングは、例えば、刷毛塗り、浸漬、スプレイ塗布、又はその他の物理的塗布手段による物理的コーティングステップであってもよい。それとは別に、コーティングは、化学的コーティングステップ、例えば、化学気相成長(CVD)、プラズマスプレイコーティング、又はその他の化学的塗布手段であってもよい。次に、ステップ708において、コーティング材料は、コーティング層が、適宜、第1又は第2パターンのいずれかのみに残留するように除去される。コーティング材料の除去は、コーティングの物理的削除であってもよいし、或いは、化学的除去、例えば、選択されるコート区域の除去を防ぐために該選ばれたコート区域を保護するマスクを使用する、化学的エッチングによる除去であってもよい。
【0047】
それとは別に、ステップ710では、ゴルフボール全体にマスクを印加してもよい。マスクは、第1パターン又は第2パターンのいずれかに一致するパターンの孔を有する物理的マスクであってもよい。次に、コーティング材料がマスクの上に塗布され712、その後714、マスクが除かれ、コーティング材料は、マスクの孔に一致するパターンの上だけに残される。
【0048】
最後に、ゴルフボールにステップ704を実施してポケットを創出したならば、コーティング材料314の表面部分は、ステップ716において除去してもよい。このステップによって、コーティング材料は、ポケットのみに残され、カバーの表面において、他の場所では事実上重複することはない。
【0049】
どのような特定の行動理論にも拘束されることを望むものではないが、本開示のゴルフボールは、図14-16に示すように、ゴルフクラブのフェースと、ゴルフボールの間の相互作用によって優れたプレイ特徴を発揮するものと考えられる。
【0050】
図15では、ゴルファー400は、ゴルフクラブ402を、ゴルフボール100に向かって振り下ろす。この図ではゴルフボール100が参照されるが、同じ結果がゴルフボール300によっても実現されることに注意しなければならない。ゴルフクラブ402はドライバーである。すなわち、大きなクラブヘッド404、及び広いクラブフェース406を持ち、低いロフト角を有する。図12の拡大セクションにおいて見られるように、ゴルフボール100は、ディンプル104及び平地区域108を含む(図1の場合と同様)。
【0051】
図16では、クラブフェース406は、駆動に一致する大きな力でゴルフボール100を打つ。したがって、ゴルフボール100は、第1拡大セクションに示すように変形する。具体的には、ゴルフボール100は、ゴルフボールカバー層の第1区域550が、クラブフェース406に対して平坦となるように変形する。第1区域550では、クラブフェース406は、平地区域とディンプルの両方に衝突し、それらをコア202(及び、任意の内部層)に対して圧縮する。硬いディンプル104及び軟らかい平地108の両方がクラブフェースに対して平坦となる、この第1区域550では、カバー層は、「見かけ上」、ディンプルの硬度と、平地の硬度の間の硬度(それぞれの比に依存する)を持つように見える。「見かけ上」とは、クラブフェース406が、この区域でカバー層にどのように干渉するかを意味する。
【0052】
特に、図16の第2拡大セクションに見られるように、第1区域550の辺縁では、クラブフェースは、平地には衝突するが、ディンプルに対しては種々の程度で衝突する。具体的には、第1ディンプル500はまったく衝突されないが、一方、第1平地区域510は僅かに衝突される。第2ディンプル502は、ディンプル502の現在の形と、輪郭線506によって示される元の形の間の差によって示されるように、僅かに衝突される。なぜなら、第1平地510及び第2平地512は、部分的には圧縮されるが全体的には圧縮されないからである。同様に、第3ディンプル504も、輪郭線508によって示されるように、幾分かは圧縮されるが、全体的には圧縮されない。したがって、高度の力を含むゴルフショット(例えば、ドライバーショット)の際、ゴルフボール100は圧縮され、そのため、クラブフェースは、ディンプルの比較的硬い表面の少なくともいくつかに接触する。
【0053】
図17は、異なるタイプの、活動中のゴルフショットを示す。図17では、ゴルフクラブ410は、例えば、アイアンである。アイアン410のクラブヘッド412は、図17の第1拡大セクションにおけるクラブフェース406の角度によって見られるように比較的高いロフト角を有する。このシナリオでは、図16の場合よりも、ゴルフボールを打つ力は小さい。したがって、ゴルフボール100は、図17の第1拡大セクションに示すように、ディンプルを変形するほどクラブフェース406に対して圧縮されない。図17は、変形される第2区域の辺縁を示すが、そこでは、クラブフェース406は、再び、第1平地510及び第2平地512には衝突するものの、この場合、第1ディンプル500、第2ディンプル502、又は第3ディンプル504は変形しない。したがって、カバー層の見かけの硬度は、図16に示す圧縮下のカバー層の見かけの硬度に比べ、低い。なぜなら、クラブフェース406は、ディンプル104の比較的硬い面に接触することなく、比較的軟らかい平地区域108だけに接触するからである。
【0054】
このようにして、本ゴルフボールは、より小さい力で打たれると、見かけ上、より軟らかくなり、より大きな力で打たれると、見かけ上、より硬くなる。したがって、本ゴルフボールは、ドライバーショットの際には、より硬いカバー層に関連する有利なプレイ特徴(例えば、より長い距離)を実現し、一方同時に、短いショットの際には、より軟らかいカバー層に関連する有利なプレイ特徴(例えば、より高度のスピン)を実現する。さらに、本開示にしたがって製造されるゴルフボールはさらに、硬度に関係しない有利なプレイ特徴を同時に実現することも可能である。
【0055】
これまで本発明の各種実施態様が説明されてきたわけであるが、この説明は、限定的であるよりはむしろ例示的であることを意図するものであり、本発明の範囲内において、さらに多くの実施態様及び実行例が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求項及びその等価物に徴することを除き、限定されてはならない。さらに、種々の改変及び変更が、添付の特許請求項の範囲内において実行することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 ゴルフボール
104 ディンプル
106 平地区域
108 平地区域
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ゴルフボール、及び、該ボールを製造する方法に関する。特に、ゴルフボールのカバー層は、比較的高い硬度を有する区域、及び、比較的低い硬度を有する区域を含む。
【背景技術】
【0002】
ゴルフゲームは、アマチュアレベルでもプロレベルでも、人気度が増しているスポーツである。当該技術分野では、ゴルフボールの製造及び設計に関連して広範な技術が知られる。このような技術は、種々のプレイ特徴を有するゴルフボールを生みだしてきた。例えば、様々のスウィングスピードなど様々なゴルフプレイ能力を有するプレイヤーに対し、様々なゴルフボールが製造され、市場に供給されている。
【0003】
同様に、ゴルファーは、該ゴルファーの好みにしたがって、種々のプレイ特徴を有する、様々なゴルフボールを使用する場合がある。例えば、様々なディンプルパターンは、飛行中、ゴルフボールの航空力学的特性に影響を及ぼす可能性があり、或いは、カバー層の硬度における違いは、バックスピン率に影響を及ぼす可能性がある。特に硬度に関しては、ゴルファーは、比較的硬いか、又は軟らかいカバー層及び/又はコアを持つゴルフボールを使用することを選ぶ場合がある。比較的硬いカバー層を有するゴルフボールは、一般に、低いドライバースピンを実現し、比較的長い距離を実現する。しかしながら、比較的硬いカバー層の引き起こすスピン率は比較的低く、したがって、ドライバーショットにはより優れるが、比較的短いショットではコントロールがより難しくなる。一方、比較的軟らかいカバー層を有するゴルフボールは、一般に、比較的多数のスピンを受け、したがって、コントロールはより易しく、グリーンでは停止するが、ティーからの距離に不足する。
【0004】
当該技術分野では、種々の硬度特徴を有する、様々なゴルフボールが知られる。一般に、ゴルフボールの硬度は、ゴルフボールを構成する種々層の化学的組成及び物理的配置によって決定される。したがって、様々な硬度値及び様々な硬度プロフィールを有するゴルフボールを生みだすために、いくつかの異なるゴルフボール材料が混ぜ合わされ、種々の組み合わせ及び配置において適合される。
【0005】
しかしながら、所望の硬度特徴を実現するようにゴルフボールをデザインすることは、少なくともいくつかの困難に悩まされる。一般に、公知のゴルフボールの構築は、様々な設計変数、例えば、層配置、各層に使用される材料、及び、層厚が、それぞれに対してバランスされることを要求する。したがって、これらの変数のいずれのものであれ、それの変化による所望の硬度の向上は、必ず他のプレイ特徴の犠牲を伴う。さらに、公知のゴルフボール構築に関連する材料コスト及びデザインコストは、エンドユーザーに対しゴルフボールコストを不当に上げる可能性がある。恐らくもっとも重要なのは、公知のゴルフボールは、高いカバー硬度と関連する有利なプレイ特徴(長い距離)を実現し、一方ではさらに、低いカバー硬度と関連する有利なプレイ特徴(高スピン)を同時に実現することができないことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当該技術分野では、上述の従来技術の欠点に対処するシステム及び方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一局面では、本発明は、ゴルフボールであって、コア;及び、事実上コアを取り囲み、複数のディンプル、及び、該ディンプルを隔てる少なくともひとつの平地区域を含むカバー層、を含み;該カバー層は、第1硬度を有し、その上に少なくとも一つのディンプルを有する第1部分、及び、第2硬度を有し、その上に少なくとも一つの平地区域を有する第2部分、を含み;ここに、第1部分及び第2部分は、連続カバー層材料から成る非重複部分であり;且つ、第1硬度の方が第2硬度よりも高いことを特徴とする、ゴルフボールを提供する。
【0008】
別局面では、本開示は、上述のゴルフボールであって、カバー層の第1部分は第1結晶度を有し、カバー層の第2部分は第2結晶度を有し、第1結晶度の方が第2結晶度よりも高いことを特徴とする、ゴルフボールを提供する。
【0009】
さらに、本開示は、ゴルフボールであって:コア;及び、カバー層において、コアを事実上取り囲み、第1硬度を有する材料から形成され、その上に複数のディンプル及び少なくとも一つの平地区域を有するカバー層、を含み;該複数のディンプルは、該カバー層の上に第1パターンとして配置され;該少なくとも一つの平地区域は、該カバー層の上に第2パターンとして配置され、第1パターン及び第2パターンは非重複パターンであり;ここに、カバー層は、第2硬度を有するコーティング材料によってコートされ、そのため、コーティング材料は、第1パターンと第2パターンの内の一方の少なくとも一部と重複するが、第1パターンと第2パターンの内の他方とは重複せず;且つ、第2硬度は第1硬度とは異なることを特徴とする、ゴルフボールを提供する。
【0010】
最後に、本開示はさらに、ゴルフボールの製造法であって、下記の工程:(1)コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を有するゴルフボールを受容すること、ここに、カバー層は、複数のディンプル、及び、隣接ディンプルを隔離する少なくとも一つの平地区域を有し、該複数のディンプルは、カバー層において第1パターンとして配置され、該少なくとも一つの平地区域は、カバー層において第2パターンとして配置される;(2)第1パターン及び第2パターンの内の少なくとも一方の少なくとも一部において、カバー層をコーティング材料によってコートすること;及び、要すれば、(3)カバー層からコーティング材料を選択的に除去すること、を含み、上記工程によって、コーティング材料は、第1パターン及び第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターン及び第2パターンの内の他方とは事実上重複しない、ことを特徴とする方法を提供する。
【0011】
本開示の他のシステム、方法、特色、及び利点は、当業者には明白であろうし、或いは、下記の図面及び詳細な説明を精査することによって明白となろう。そのような追加のシステム、方法、特色、及び利点は全て、本明細書及び本概要の範囲に含まれ、本開示の範囲に含まれ、且つ、下記の特許請求項によって保護されることが意図される。
【0012】
本発明は、下記の図面及び説明を参照することによってさらによく理解することが可能である。図面の成分は必ずしも実尺に合致するものではなく、強調はむしろ本開示の原理の具体的説明に置かれる。さらに、図面において、同じ参照数字は、種々の投影図を通じて対応する部品を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】選択的処理前後の、例示ゴルフボールを示す。
【図2】選択的処理前後の該ゴルフボールの断面を示す。
【図3】別のディンプルパターンを有するゴルフボールの断面を示す。
【図4】選択的加熱を実現するために使用することが可能な加熱デバイスを示す。
【図5】加熱前後の、ゴルフボールと加熱デバイスの断面を示す。
【図6】加熱前後における、ゴルフボールの一部及び第2加熱デバイスの断面を示す。
【図7】選択的コーティング前後の、例示ゴルフボールを示す。
【図8】選択的コーティング前後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面を示す。
【図9】異なる選択的コーティング前後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面を示す。
【図10】ゴルフボールカバー層の一部の、さらに詳細な断面を示す。
【図11】選択的コーティングの一部が除去された後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面拡大図を示す。
【図12】ゴルフボールカバー層の一部の、さらに詳細な断面の第2実施態様を示す。
【図13】選択的コーティングの一部が除去された後の、ゴルフボールカバー層の一部の断面拡大図の第2実施態様を示す。
【図14】必要に応じて任意に選択されるステップを含む、ゴルフボール製造法を詳述するフローチャートである。
【図15】ゴルフボールをドライバーによってまさに打たんとするゴルファー、及び、ドライバーによって打たれる前のゴルフボールの詳細図を示す。
【図16】ゴルフボールをドライバーによって打ちつつあるゴルファー、及び、ドライバーによって打たれつつあるゴルフボールの、二つの詳細図を示す。
【図17】ゴルフボールをアイアンによって打ちつつあるゴルファー、及び、アイアンによって打たれつつあるゴルフボールの、二つの詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般に本開示は、比較的硬い、カバー層上の区域、及び、比較的軟らかい、カバー層上の区域を有するゴルフボールに関する。比較的硬い区域は、カバー層のディンプルの内の少なくともいくつかに一致し、比較的軟らかい区域は、ディンプル間の少なくとも一つの平地区域の少なくとも一部に一致する。硬ディンプル及び軟平地区域(単数又は複数)の配置のために、このゴルフボールは、比較的大きな力で打たれるとき(例えば、ドライバーショット時)、経験するスピン率が比較的低く、一方、比較的小さな力で打たれるとき、経験するスピン率は比較的高く、コントロールは増大する(例えば、チップ・ショット時)。したがって、このゴルフボールは、ドライバーショット時には、比較的硬いカバー層と関連する有利なプレイ特徴(例えば、距離がより長くなる)を実現し、他方同時に、短いショットの際は、比較的軟らかいカバー層と関連する有利なプレイ特徴(例えば、スピンがより高くなる)を実現する。
【0015】
本開示はさらに、このようなゴルフボールの製造法に関する。
【0016】
図1は、本開示による例示ゴルフボール100を示す。ゴルフボール100は、その上に複数のディンプル104、及び少なくとも一つの平地区域106を有するカバー層から構成される。ゴルフボール100は、一般に、コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を有するものであればいずれのタイプのゴルフボールであってもよい。例えば、ゴルフボール100は、コアとカバー層しか持たない、2層(ツーピース)構造であってもよいし、或いは、ゴルフボール100は、コアとカバー層の間に一つ以上の中間層を配置させてもよい。本明細書においてそうではないと断る場合を除いては、ゴルフボール100の各層は、ゴルフボール製造の技術分野で周知のものであればいずれの材料から形成されてもよく、又はいずれの構造を持っていてもよい。例えば、ゴルフボール100の種々層は、ゴム、ゴムコンポジット、熱可塑性ポリウレタン、高度に中和されるポリマー、アイオノマー、及び、ゴルフボール製造分野において公知の、他のポリマー材料から構成されてもよい。
【0017】
上記複数のディンプル104は、一般に、ゴルフボール技術分野で公知のものと同様の任意のパターンとしてカバー層上に配置されてよい。種々の公知の、高密度ディンプルパターンが当該技術分野で知られる。ディンプル104は、一般に、円形、三角形、又は多辺形など、任意の形状を取ってもよい。ディンプル104は、均一の形状及びサイズを持ってもよいし、或いは、ディンプルパターンは、(例えば)異なるサイズ又は異なる形状を持つ、二つ以上の異なるタイプのディンプルから構成されてもよい。少なくとも一つの平地区域106とは、少なくとも二つのディンプル104を隔て、凹んでいなかったり、又はその他のやり方でディンプルの一部となっていない、カバー層の部分である。一般に、平地区域106は、隣接ディンプル104の間の「隆起」又は「フレット」である。ゴルフボール100は、図1に示すように、カバー層全体に亘って一つの連続的平地区域106を含んでもよいし、又は、複数のディンプル104の間に、複数の、別々の平地区域を含んでもよい。
【0018】
図1に示すように、ゴルフボール100は、平地区域106において選択的処理を受ける。図1に示す実施態様では、この選択的処理によって、平地区域106の全体が、第1状態から、第2状態の平地区域108に変えられる。別の実施態様では、選択的処理は、平地区域106の一部に適用されてもよい。この選択的処理は、下記にさらに詳述するように、加熱工程を含んでもよい。
【0019】
図2は、選択的処理前後のゴルフボール100の断面を示す。特に、ゴルフボール100は、コア202及びカバー層200を含む。カバー層200は、その上にディンプル104及び平地区域106を含む。選択的処理前、カバー層200は、その上に少なくとも一つのディンプル104を有するいくつかのセクション204、及び、その頂上境界を形成する少なくとも一つの平地区域106の少なくとも一部を有するいくつかのセクション206から構成される。選択的処理後、その上に少なくとも一つの平地区域106の一部を有するセクション206は、第2状態の平地区域108に関して上述したように、第2状態208に変化する。
【0020】
選択的処理後、カバー層200は、一般に、第1硬度を有する第1部分、及び、第2硬度を有する第2部分を含む。第1部分は、一般に、その上に少なくとも一つのディンプル104を有するカバー層200のセクション204を含む。第1部分は、その上にディンプル104を有する、カバー層200の全セクション204を含んでもよく、或いは、第1部分は、セクション204のいくつかを含んでもよいが、他のものは含まない。言い換えると、第1部分は、全体として、その上のディンプル104の全部を含んでもよく、或いは、その上の複数のディンプル104全体よりは少ないディンプルのサブセットを含んでもよい。一般に、カバー層200の第1部分は、任意の数及び配置のセクション204から構成させることが可能である。同様に、カバー層200の第2部分は、一般に、その上に少なくとも一つの平地区域108の、少なくとも一部を有するセクション208を含む。第2部分はさらに、全セクション208、又は、全セクション208よりも少ないセクションから構成されていてもよい。言い換えると、第2部分は、全体として、その上の平地区域(単数又は複数)全部の全体を含んでもよく、或いは、その上の平地区域(単数又は複数)全部の全体よりは少ない平地区域を含んでもよい。
【0021】
第1又は第2部分は、図2に示すように、カバー層200の断面厚全体に亘って延びてもよいし、或いは、図5に示すように、カバー層200の断面の一部分だけに亘って延びていてもよい。再び図2を参照すると、具体的には、第2部分は、カバー層200の外面250からカバー層200の内面252に延びていてもよい。それとは別に、図5に示すように、第2部分は、カバー層200の外面250から、カバー層200の外面250と内面252の間の中間点254に延びていてもよい。
【0022】
第1部分及び第2部分は、それぞれ、連続的カバー層材料の非重複部分である。すなわち、図2に示すように、部分204及び部分206は、ディンプル104及び平地106によって定められるが、それ以外の点では、同じ連続的カバー層200の部分である。特定実施態様では、カバー層200の第1部分及び第2部分は、同じ材料組成を有する、すなわち、第1部分及び第2部分を構成する材料の化学的組成に違いは無い。
【0023】
カバー層200の第1部分に関連する第1硬度は、カバー層200の第2部分に関連する第2硬度よりも高い。したがって、ディンプル104に関連する、カバー層200の部分は、一般に相対的に硬く、一方、平地区域108に関連するカバー層200の部分は、一般的に相対的に軟らかい。第1部分及び第2部分の間の硬度差の程度は、僅少差でなければ、いずれの硬度差であってもよい。ある実施態様では、第1部分の硬度は、第2部分の硬度よりも、ショアDスケールにおいて少なくとも約3単位硬くともよい。別の実施態様では、第1部分は、第2部分よりも、ショアDスケールにおいて少なくとも約5単位硬くともよい。
【0024】
一般に、本開示は、カバー層において、異なる硬度を有する二つ以上のゾーンを包含する。例えば、ゴルフボールは、三つの硬度ゾーンを有してもよい。このような実施態様では、カバー層200は第3部分を含む。第1部分、第2部分、及び第3部分は、全て、連続的カバー層材料の非重複部分である。
【0025】
例えば、本開示と結びつけて使用してよいディンプルパターンの第2実施態様を図3に示す。この実施態様では、カバー層200は再び、ディンプル104、及び、少なくとも二つのディンプル104を隔離する平地区域106を含む。この実施態様では、各ディンプル104は、中心ディンプルセクション152、及び、放射辺縁ディンプルセクション150から構成される。カバー層200は、平地区域の基底となる部分206(上述の、図2に示す実施態様と同様)、放射辺縁ディンプルセクション150の基底部分214、及び、中心ディンプルセクション152の基底部分216を含む。部分214及び216は、まとめると、上述の図2に示す実施態様の部分204と等価である。
【0026】
次に、図3に示すカバー層200は、該カバー層のある部分の硬度を変えるように選択的処理を受けてもよい。具体的には、先ず、部分206は、第2状態の部分208に変化させられるよう、選択的処理を受けてもよい。それによって、部分208は、上述のように第2硬度を実現する。さらに、部分216も、第2状態の部分218に変化させられるよう、選択的処理を受ける。部分218は第3硬度を有する。第3硬度は、第2硬度と異なっていてもよいし、等しくてもよい。最後に、部分214は不変のままであり、第4硬度を有する。第4硬度は、第3硬度より高くてもよい。したがって、選択的処理の経過後、カバー層200は、三つの硬度ゾーン:第2硬度を有する平地区域106、第3硬度を有する中心ディンプルセクション152、及び、第4硬度を有する放射辺縁ディンプルセクション150、を実現する。この場合、上述の「第1部分」は、中心ディンプルセクション152及び放射辺縁ディンプルセクション150を有する少なくとも一つのディンプル104を含み、上述の「第1硬度」は、ディンプル104中の中心ディンプルセクション152及び放射辺縁ディンプルセクション150の相対的比率に基づく、第3硬度及び第4硬度の実効平均と考えてよい。
【0027】
カバー層200は、一般に、選択的処理に反応して硬度を変えることが可能であるならば、いずれの材料で構成されてもよい。選択的処理が加熱を含む特定実施態様では、カバー層200は、米国特許出願公開第2008/0081710号(以後、「710出願」と呼ぶ)に記載される相転移材料を含んでもよい。なお、上記特許文書の開示全体を引用により本明細書に含める。具体的には、「710出願」に記載される相転移材料は、2から6個の炭素原子を有する少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー残基、及び、3から8個の炭素原子を有する少なくとも一つのα,β-エチレン不飽和カルボン酸のコポリマー残基を含む酸性コポリマーである。
【0028】
「710出願」に記載されるように、この相転移材料は加熱に反応して硬度を変える。具体的には、熱エネルギーは、材料の二次結晶構造を破壊することによって硬度を下げる。ポリマー科学において周知のように、半結晶性ポリマー材料の硬度は、該ポリマー材料の結晶度に比例することが可能である。結晶度とは、非晶相にある材料の量と比較した場合の、結晶相にある材料の量である。結晶相は、一般に、非晶相よりも硬く、これは、結晶相では、ポリマー分子が緊密にパックされた結晶構造となっているためである。
【0029】
したがって、ゴルフボール100は、所望の硬度差を実現するために、図4に示すような加熱デバイス600において加熱してもよい。加熱デバイス600は、米国特許第___号に完全に記載され、最近では、2009年10月23日出願、ゴルフボールの加熱用デバイスという表題の、米国特許出願第12/604,830号に記載される。なお、これらの開示の全体を引用により本明細書に含める。加熱デバイス600は、ユーザーの手602によって把持され、図示のように、加熱面106がゴルフボール100に接触させられるように動かされる。
【0030】
具体的には、図5に示すように、所望の硬度差を実現するために、加熱要素606によってカバー層200を選択的に加熱してもよい。具体的には、加熱要素606を、カバー層200の平地区域106と接触させてもよい。したがって、加熱要素606に触れる平地区域106の表面にもっとも近いカバー層200のセクションは加熱される。これらのセクションは、上述のように、カバー層の第2部分を形成する。図5に示すように、ここで記載される実施態様では、第2部分は、加熱要素606によって印加される熱の性質及び程度に依存して、カバー層200の外面250から、外面250と内面252の間の中間点254まで延びる。平地区域106に印加される選択的加熱のため、カバー層200の第1部分(未処理セクション204を包含する)は、第2部分(処理セクション208を包含する)の第2硬度よりも高い第1硬度を有する。具体的には、第2部分の二次結晶構造は破壊され、そのため、第1部分の結晶度の方が、第2部分の結晶度よりも高くなる。
【0031】
図5は、この選択的加熱プロセスが、カバー層200の特定断面に印加されるところだけを示すが、この選択的加熱プロセスは、全ての平地区域106が加熱されるように、ゴルフボール100の全表面に印加されてもよい。それとは別に、選択的加熱プロセスは、所望のままに、ゴルフボール100の種々の場所の内の、ある平地区域106には印加されるが、他の平地区域には印加されなくともよい。いずれの場合でも、カバー層200の第2部分は、カバー層200の、加熱される部分のみを包含し、したがって、カバー層200の第1部分とは異なる硬度差を有する。
【0032】
別実施態様では、カバー層220は、半結晶性熱可塑性材料を含んでもよい。半結晶性材料の硬度を変える方法は、米国特許第___号に完全に記載され、最近では、2010年1月20日出願、ゴルフボールをカスタマイズするための方法及びシステムという表題の、米国特許出願第12/690,493号に記載される。なお、これらの開示の全体を引用により本明細書に含める。
【0033】
具体的には、図6に示すように、加熱要素608は、ディンプル104と関連するカバー層220のセクション210を加熱するために使用されてもよい。「493出願」に記載される方法にしたがって、これらのセクション210は、半結晶性熱可塑性材料中のポリマー分子の運動を増すように加熱され、その後、これらのセクション210の結晶度を上げるために、ゆっくりと冷却されてもよい。したがって、セクション210は、全体として、上述のように、カバー層200の第1部分を構成し、全体として第2部分を構成する非加熱セクション212よりも高い硬度を有する。このような実施態様では、再び、カバー層200の第1部分の結晶度は、第2部分の結晶度よりも高い。言い換えると、第1部分は第1結晶度を有し、第2部分は第2結晶度を有し、第1結晶度は、第2結晶度よりも高い。
【0034】
上述の方法において使用される加熱要素606、又は加熱要素608は、一般に、カバー層の所望の部分を選択的に加熱することが可能であるならば、いずれの加熱機構であってもよい。特定実施態様では、上述し、図4で示したように、加熱要素は、米国特許出願第12/604,830号(以後、「830出願」と呼ぶ)に完全に記載される加熱装置の成分であってもよい。このような実施態様では、加熱要素606又は加熱要素608は、「830出願」に記載されるような内部的加熱面であってもよい。同様に、図5及び6に示す、加熱要素バッキング604は、「830出願」に記載される外部筐体であってもよい。「830出願」に記載されるデバイスによって、消費者は、内部加熱面において特定のパターンを用いることによって、本開示にしたがって所望の硬度差を生みだすことが可能である。
【0035】
上に色々と論じてきたものとは異なる実施態様では、ディンプルと平地区域の間の硬度差は、コーティング材料の使用によって実現することが可能である。図7は、これらの実施態様によるゴルフボール300、及びそのようなゴルフボールを製造するための一般的プロセスを示す。一般に、ゴルフボール300は、コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を含んでもよく、その際、カバー層は、第1硬度を有する材料から形成され、且つ、その上に、複数のディンプル304、及び少なくとも一つの平地区域306を有する。この複数のディンプル304は、カバー層の上に、第1パターンとして配置され、この少なくとも一つの平地306は、カバー層の上に、第2パターンとして配置され、ここに、第1パターンと第2パターンは非重複パターンである。次に、カバー層は、第2硬度を有するコーティング材料308によって、第1パターンと第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターンと第2パターンの内の他方とは事実上重複することがないように、コートされてもよい。第2硬度は第1硬度とは異なる。
【0036】
図7に示す実施態様では、コーティング材料308は、ディンプル304に一致する第1パターンに選択的に印加される。このような実施態様では、第2硬度(すなわち、コーティング材料の硬度)は、第1硬度(すなわち、カバー材料の硬度)よりも高い。したがって、コーティング材料308はディンプル304を硬くし、一方、平地区域306において暴露されるカバー層は、軟らかい。図7は、ディンプル304の全てがコーティング材料308によってコートされるところが示されるが、別態様として、コーティング材料308は、第1パターンのある部分だけをコートしてもよい。
【0037】
図8は、図6に示すディンプル304及び平地区域306の断面図を示す。図8において、コーティング材料308は、各ディンプル304の頂上にコートされ、カバー層302の上にコーティング材料308の薄層を形成する。コーティング材料308の厚みは、一般に、ディンプルの内部に適合するものである限り、いずれの厚みであってもよい。コーティング材料308は、一般に、ゴルフボールの航空力学に著明に影響を及ぼすほど厚くなってはならないが、一方、所望の深さのディンプル形態を実現するように印加されてもよい。ある実施態様では、カバー層は、約2 mm以下の厚みを有していてもよい。したがって、これらの実施態様では、コーティング材料308は、例えば、0.5 mm以下、又は0.3 mm以下、又は0.1 mm以下の桁の厚みを有していてもよい。
【0038】
図9は、平地区域306がコーティング材料310によってコートされる、別の実施態様を示す。この実施態様では、コーティング材料310は、平地区域306に一致する第2パターンの少なくとも一部を覆う。図8の実施態様に関連して上述したように、図9の実施態様でも、コーティング材料310は、一般に、第2パターンの全て、又は、第2パターンの全てよりも小さい部分を、所望の任意の配置において覆ってもよい。コーティング材料310が、第2パターンの少なくとも一部を覆う実施態様では、第2硬度(すなわち、コーティング材料310の硬度)は、カバー層材料の硬度よりも小さい。したがって、コーティング材料310によってコートされる平地区域306は、比較的軟らかく、一方、ディンプル104は、比較的硬い。
【0039】
図10及び11は、上述の実施態様のいずれかと組み合わせて使用されてもよいコーティングのさらに別の特色を示す。具体的には、図10は、カバー層302の表面にいくつかのポケット312を示す。図10は、ポケット312を、平地区域306に一致するカバー層302上に配置されるものとして示しているけれども、ポケット312は、図12及び13に示すように、ディンプル304に一致するカバー層302の上にも同様に配置させてもよい。一般に、ポケット312は、小さな陥凹、又は、カバー層302の表面上に意図的に形成される切痕である。ポケット312は、一般に、ディンプル304の深度よりも少なくとも小さく、ある実施態様では、ディンプル304の深度よりも著明に小さい深度320を有する。カバー層302が約2.0 mmの厚みを有する実施態様では、ポケット312は、約0.5 mm未満、約0.3mm未満、又は、約0.1 mm未満の深度320を有していてもよい。ポケット312は、コーティング材料308、310がカバー層302により良く接着することを可能とする。ポケット312はさらに、ゴルフボールのデザインにおけるより大きな弾力性を可能にする、例えば、所望の硬度差を、ディンプル深度又はゴルフボールの全体直径を変えずに実現する。
【0040】
コーティング材料310が、その中にポケット312を有するカバー層302の上にコートされると、コーティング材料310は、ポケット312を充填するだけでなく、コーティング材料310の頂上セクション314によってカバー層302の表面をもコートする。コーティング材料310の頂上セクション314は、適宜、平地区域306頂上の第2パターン上にそのまま残してもよいし、或いは、取り去って、ポケット312の中だけにコーティング材料310を残してもよい。図11に示すように、コーティング材料310は、ポケットには配置されるが、その他の場所では、カバー層302の表面とは事実上重複しない。
【0041】
図12及び13は、ポケット316が、ディンプル304に配置されるカバー層の表面に作製される実施態様を示す。上述の場合と同様、コーティング材料308は、頂上セクション318を含むだけでなく、ポケット316を充填してもよい。次に、適宜、コーティング材料308の頂上セクション318は除去し、ポケット316だけにコーティング材料308を残してもよい。ディンプル304中のポケット316は、平地区域306と関連するポケット312の深度320と同じであってもよいし、異なっていてもよい深度322を有する。
【0042】
ポケット312及び/又はポケット316を含むこれらの実施態様では、一般に、ゴルフボールの直径又は航空力学的性能を変えることなく、本発明にしたがって、コーティング材料を、第2パターンの硬度を変えるために使用することが可能である。したがって、ゴルフボールの物理的構造の再設計、又は、有利な航空力学的特性の犠牲を要することなく、より広範囲のゴルフボール設計を本開示にしたがって使用することが可能である。
【0043】
コーティング材料は、一般に、所望の硬度に基づいて選ばれてよい。図7及び8に示す実施態様、すなわち、コーティング材料が、カバー層材料の硬度よりも高い硬度を有する実施態様では、コーティング材料は、硬いポリマー又は金属メッキであってもよい。当該技術分野においては、高い硬度値を持つ、広範囲のポリマーが知られる。ポリマー材料の硬度は、一般に、例えば、架橋結合の程度、結晶度、及び重合鎖長によって調節することが可能である。例えば、ある特異的実施態様では、カバー層は、ショアDスケールにおいて約45から60の硬度を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)であってもよく、コーティング材料は、ショアDスケールにおいて約65の硬度を有する熱可塑性ポリウレタンであってもよい。一般に、ポリマーコーティング材料は、任意の熱可塑性、熱硬化性、アイオノマー、コポリマー、又は、ゴルフボール技術分野で知られ、使用される他のポリマー材料であってよい。
【0044】
さらに、コーティング材料は金属メッキであってもよい。ほぼ全ての典型的金属は使用が可能である。なぜなら、大抵の金属は、通例の温度において、ゴルフボールカバー層の形成に通常使用されるポリマー材料よりも高い硬度を有するからである。コーティング材料として使用してもよい例示の金属としては、種々ある中でも特に、アルミニウム、スチール、タングステン、チタン、マグネシウム、及び鉄合金が挙げられる。金属コーティング材料は、硬度、加工性、及びコスト有効性に基づいて選んでもよい。
【0045】
図14は、必要に応じて任意に選択されるステップを含む、上述のゴルフボール製造法を詳述するフローチャートである。一般に、ゴルフボールを製造する方法700は、コア、及び、その上に複数のディンプル及び少なくとも一つの平地区域を有するカバー層を持つゴルフボールを受容する第1ステップ702を含む。次に、カバー層にポケット312を創出するようにカバー層を処理する、任意の予備ステップをゴルフボールに対して実施してもよい。この予備的処理ステップは、例えば、表面の物理的荒削り、又は、カバー層のごく小部分、例えば、ゴルフボールの非マスク部分を腐食する化学的エッチングであってもよい。
【0046】
次に、ゴルフボール製造法700は、二つの一般的ルートのいずれかを取ってもよい。第1ルートの第1ステップ706では、カバー層全体がコーティング材料によってコートされる。コーティングは、例えば、刷毛塗り、浸漬、スプレイ塗布、又はその他の物理的塗布手段による物理的コーティングステップであってもよい。それとは別に、コーティングは、化学的コーティングステップ、例えば、化学気相成長(CVD)、プラズマスプレイコーティング、又はその他の化学的塗布手段であってもよい。次に、ステップ708において、コーティング材料は、コーティング層が、適宜、第1又は第2パターンのいずれかのみに残留するように除去される。コーティング材料の除去は、コーティングの物理的削除であってもよいし、或いは、化学的除去、例えば、選択されるコート区域の除去を防ぐために該選ばれたコート区域を保護するマスクを使用する、化学的エッチングによる除去であってもよい。
【0047】
それとは別に、ステップ710では、ゴルフボール全体にマスクを印加してもよい。マスクは、第1パターン又は第2パターンのいずれかに一致するパターンの孔を有する物理的マスクであってもよい。次に、コーティング材料がマスクの上に塗布され712、その後714、マスクが除かれ、コーティング材料は、マスクの孔に一致するパターンの上だけに残される。
【0048】
最後に、ゴルフボールにステップ704を実施してポケットを創出したならば、コーティング材料314の表面部分は、ステップ716において除去してもよい。このステップによって、コーティング材料は、ポケットのみに残され、カバーの表面において、他の場所では事実上重複することはない。
【0049】
どのような特定の行動理論にも拘束されることを望むものではないが、本開示のゴルフボールは、図14-16に示すように、ゴルフクラブのフェースと、ゴルフボールの間の相互作用によって優れたプレイ特徴を発揮するものと考えられる。
【0050】
図15では、ゴルファー400は、ゴルフクラブ402を、ゴルフボール100に向かって振り下ろす。この図ではゴルフボール100が参照されるが、同じ結果がゴルフボール300によっても実現されることに注意しなければならない。ゴルフクラブ402はドライバーである。すなわち、大きなクラブヘッド404、及び広いクラブフェース406を持ち、低いロフト角を有する。図12の拡大セクションにおいて見られるように、ゴルフボール100は、ディンプル104及び平地区域108を含む(図1の場合と同様)。
【0051】
図16では、クラブフェース406は、駆動に一致する大きな力でゴルフボール100を打つ。したがって、ゴルフボール100は、第1拡大セクションに示すように変形する。具体的には、ゴルフボール100は、ゴルフボールカバー層の第1区域550が、クラブフェース406に対して平坦となるように変形する。第1区域550では、クラブフェース406は、平地区域とディンプルの両方に衝突し、それらをコア202(及び、任意の内部層)に対して圧縮する。硬いディンプル104及び軟らかい平地108の両方がクラブフェースに対して平坦となる、この第1区域550では、カバー層は、「見かけ上」、ディンプルの硬度と、平地の硬度の間の硬度(それぞれの比に依存する)を持つように見える。「見かけ上」とは、クラブフェース406が、この区域でカバー層にどのように干渉するかを意味する。
【0052】
特に、図16の第2拡大セクションに見られるように、第1区域550の辺縁では、クラブフェースは、平地には衝突するが、ディンプルに対しては種々の程度で衝突する。具体的には、第1ディンプル500はまったく衝突されないが、一方、第1平地区域510は僅かに衝突される。第2ディンプル502は、ディンプル502の現在の形と、輪郭線506によって示される元の形の間の差によって示されるように、僅かに衝突される。なぜなら、第1平地510及び第2平地512は、部分的には圧縮されるが全体的には圧縮されないからである。同様に、第3ディンプル504も、輪郭線508によって示されるように、幾分かは圧縮されるが、全体的には圧縮されない。したがって、高度の力を含むゴルフショット(例えば、ドライバーショット)の際、ゴルフボール100は圧縮され、そのため、クラブフェースは、ディンプルの比較的硬い表面の少なくともいくつかに接触する。
【0053】
図17は、異なるタイプの、活動中のゴルフショットを示す。図17では、ゴルフクラブ410は、例えば、アイアンである。アイアン410のクラブヘッド412は、図17の第1拡大セクションにおけるクラブフェース406の角度によって見られるように比較的高いロフト角を有する。このシナリオでは、図16の場合よりも、ゴルフボールを打つ力は小さい。したがって、ゴルフボール100は、図17の第1拡大セクションに示すように、ディンプルを変形するほどクラブフェース406に対して圧縮されない。図17は、変形される第2区域の辺縁を示すが、そこでは、クラブフェース406は、再び、第1平地510及び第2平地512には衝突するものの、この場合、第1ディンプル500、第2ディンプル502、又は第3ディンプル504は変形しない。したがって、カバー層の見かけの硬度は、図16に示す圧縮下のカバー層の見かけの硬度に比べ、低い。なぜなら、クラブフェース406は、ディンプル104の比較的硬い面に接触することなく、比較的軟らかい平地区域108だけに接触するからである。
【0054】
このようにして、本ゴルフボールは、より小さい力で打たれると、見かけ上、より軟らかくなり、より大きな力で打たれると、見かけ上、より硬くなる。したがって、本ゴルフボールは、ドライバーショットの際には、より硬いカバー層に関連する有利なプレイ特徴(例えば、より長い距離)を実現し、一方同時に、短いショットの際には、より軟らかいカバー層に関連する有利なプレイ特徴(例えば、より高度のスピン)を実現する。さらに、本開示にしたがって製造されるゴルフボールはさらに、硬度に関係しない有利なプレイ特徴を同時に実現することも可能である。
【0055】
これまで本発明の各種実施態様が説明されてきたわけであるが、この説明は、限定的であるよりはむしろ例示的であることを意図するものであり、本発明の範囲内において、さらに多くの実施態様及び実行例が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求項及びその等価物に徴することを除き、限定されてはならない。さらに、種々の改変及び変更が、添付の特許請求項の範囲内において実行することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 ゴルフボール
104 ディンプル
106 平地区域
108 平地区域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールであって:
コア;及び、
カバー層において、事実上コアを取り囲み、複数のディンプル、及び、該ディンプルを隔てる少なくともひとつの平地区域を含むカバー層、を含み;
該カバー層は、
第1部分であって、第1硬度を有し、その上に少なくとも一つのディンプルを有する第1部分、及び、
第2部分であって、第2硬度を有し、その上に少なくとも一つの平地区域を有する第2部分、を含み;
ここに、第1部分及び第2部分は、連続カバー層材料から成る非重複部分であり;且つ、
第1硬度の方が第2硬度よりも高い、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項2】
前記カバー層の第1部分、及び該カバー層の第2部分が同じ組成を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記カバー層の第1部分が、その上に前記複数のディンプルの全てを含み、該カバー層の第2部分が、その上に前記平地区域(単数又は複数)の全ての全体を含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記カバー層の第1部分が、その上に、前記複数のディンプルの全てよりは少数のサブセットを含み、該カバー層の第2部分が、その上に、前記平地区域(単数又は複数)の全ての全体よりも小部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記カバー層の第2部分が、該カバー層の外面から、該カバー層の外面と該カバー層の内面の間の中間点に延びることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記カバー層の第2部分が、該カバー層の外面から該カバー層の内面に延びることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記カバー層が、2から6個の炭素原子を有する少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー残基、及び、3から8個の炭素原子を有する少なくとも一つのα,β-エチレン不飽和カルボン酸のコポリマー残基を含む酸性コポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記カバー層の第1部分が第1結晶度を有し、該カバー層の第2部分が第2結晶度を有し、第1結晶度の方が第2結晶度よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項9】
ゴルフボールであって:
コア;及び、
カバー層において、事実上コアを取り囲み、第1硬度を有する材料から形成され、その上に複数のディンプル及び少なくとも一つの平地区域を有するカバー層、を含み;
該複数のディンプルは、該カバー層の上に第1パターンとして配置され;
該少なくとも一つの平地区域は、該カバー層の上に第2パターンとして配置され、
第1パターン及び第2パターンは非重複パターンであり;
ここに、該カバー層は、第2硬度を有するコーティング材料によってコートされ、そのため、該コーティング材料は、第1パターンと第2パターンの内の一方の少なくとも一部と重複するが、第1パターンと第2パターンの内の他方とは事実上重複せず;且つ、
ここに、第2硬度は第1硬度とは異なる、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項10】
前記コーティング材料が、第1パターンの少なくとも一部とは重複するが、第2パターンとは事実上重複せず、且つ、第2硬度値の方が第1硬度値よりも高いことを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項11】
前記コーティング材料が、第1パターンの全てと事実上重複することを特徴とする請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項12】
前記コーティング材料が、第2パターンの少なくとも一部と重複するが、第1パターンとは事実上重複せず、且つ、第2硬度値の方が第1硬度値よりも低いことを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項13】
前記コーティング材料が、第2パターンの事実上全てと重複することを特徴とする、請求項12に記載のゴルフボール。
【請求項14】
第1パターンと第2パターンの内の一方と一致する、前記カバー層の表面が、該カバー層の該表面にポケットを含み、前記コーティング材料が、第1パターンと第2パターンの内の同じ一方に対しコートされ、そのため、該ポケットは該コーティング材料によって充填されることを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項15】
前記コーティング材料は、前記ポケットの中に位置づけられるが、それ以外には、前記カバー層の表面とは事実上重複しないことを特徴とする、請求項14に記載のゴルフボール。
【請求項16】
前記コーティング材料が、金属メッキ及びポリマーから成る群から選ばれることを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項17】
下記の工程を含むことを特徴とする、ゴルフボールを製造する方法:
(1)コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を有するゴルフボールを受容すること、ここに、該カバー層は、複数のディンプル、及び、隣接ディンプルを隔離する少なくとも一つの平地区域を有し、該複数のディンプルは、該カバー層において第1パターンとして配置され、該少なくとも一つの平地区域は、該カバー層において第2パターンとして配置される;
(2)第1パターン及び第2パターンの内の少なくとも一方の少なくとも一部において、該カバー層をコーティング材料によってコートすること;及び、要すれば、
(3)該カバー層から該コーティング材料を選択的に除去すること、
但し、該コーティング材料は、第1パターン及び第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターン及び第2パターンの内の他方とは事実上重複しない。
【請求項18】
前記カバー層から前記コーティング材料を選択的に除去する前記工程(3)が:
前記コーティング材料の上に、マスキング剤を、第1パターンと第2パターンの内の一方に一致するパターンとして塗布し、該マスキング剤によって被覆されないコーティング材料を、化学的エッチングによって除去すること、
を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記カバー層から前記コーティング材料を選択的に除去する前記工程(3)が:
該カバー層から該コーティング材料の一部を除去するように該コーティング材料を物理的に研削することを含み、そのため、残留コーティング材料は、第1パターン及び第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターン及び第2パターンの内の他方とは事実上重複しない、ことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記カバー層を前記コーティング材料によってコートする前に、工程(1b):
該カバー層の表面を、該表面上にポケットを創出するように処理することにおいて、処理は、該ポケットが、第1パターン又は第2パターンのいずれかと一致する、該カバー層の少なくとも一部分の上に創出されるように行われること、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項1】
ゴルフボールであって:
コア;及び、
カバー層において、事実上コアを取り囲み、複数のディンプル、及び、該ディンプルを隔てる少なくともひとつの平地区域を含むカバー層、を含み;
該カバー層は、
第1部分であって、第1硬度を有し、その上に少なくとも一つのディンプルを有する第1部分、及び、
第2部分であって、第2硬度を有し、その上に少なくとも一つの平地区域を有する第2部分、を含み;
ここに、第1部分及び第2部分は、連続カバー層材料から成る非重複部分であり;且つ、
第1硬度の方が第2硬度よりも高い、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項2】
前記カバー層の第1部分、及び該カバー層の第2部分が同じ組成を有することを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記カバー層の第1部分が、その上に前記複数のディンプルの全てを含み、該カバー層の第2部分が、その上に前記平地区域(単数又は複数)の全ての全体を含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記カバー層の第1部分が、その上に、前記複数のディンプルの全てよりは少数のサブセットを含み、該カバー層の第2部分が、その上に、前記平地区域(単数又は複数)の全ての全体よりも小部分を含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記カバー層の第2部分が、該カバー層の外面から、該カバー層の外面と該カバー層の内面の間の中間点に延びることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記カバー層の第2部分が、該カバー層の外面から該カバー層の内面に延びることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記カバー層が、2から6個の炭素原子を有する少なくとも一つのアルファオレフィンのコポリマー残基、及び、3から8個の炭素原子を有する少なくとも一つのα,β-エチレン不飽和カルボン酸のコポリマー残基を含む酸性コポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記カバー層の第1部分が第1結晶度を有し、該カバー層の第2部分が第2結晶度を有し、第1結晶度の方が第2結晶度よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項9】
ゴルフボールであって:
コア;及び、
カバー層において、事実上コアを取り囲み、第1硬度を有する材料から形成され、その上に複数のディンプル及び少なくとも一つの平地区域を有するカバー層、を含み;
該複数のディンプルは、該カバー層の上に第1パターンとして配置され;
該少なくとも一つの平地区域は、該カバー層の上に第2パターンとして配置され、
第1パターン及び第2パターンは非重複パターンであり;
ここに、該カバー層は、第2硬度を有するコーティング材料によってコートされ、そのため、該コーティング材料は、第1パターンと第2パターンの内の一方の少なくとも一部と重複するが、第1パターンと第2パターンの内の他方とは事実上重複せず;且つ、
ここに、第2硬度は第1硬度とは異なる、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。
【請求項10】
前記コーティング材料が、第1パターンの少なくとも一部とは重複するが、第2パターンとは事実上重複せず、且つ、第2硬度値の方が第1硬度値よりも高いことを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項11】
前記コーティング材料が、第1パターンの全てと事実上重複することを特徴とする請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項12】
前記コーティング材料が、第2パターンの少なくとも一部と重複するが、第1パターンとは事実上重複せず、且つ、第2硬度値の方が第1硬度値よりも低いことを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項13】
前記コーティング材料が、第2パターンの事実上全てと重複することを特徴とする、請求項12に記載のゴルフボール。
【請求項14】
第1パターンと第2パターンの内の一方と一致する、前記カバー層の表面が、該カバー層の該表面にポケットを含み、前記コーティング材料が、第1パターンと第2パターンの内の同じ一方に対しコートされ、そのため、該ポケットは該コーティング材料によって充填されることを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項15】
前記コーティング材料は、前記ポケットの中に位置づけられるが、それ以外には、前記カバー層の表面とは事実上重複しないことを特徴とする、請求項14に記載のゴルフボール。
【請求項16】
前記コーティング材料が、金属メッキ及びポリマーから成る群から選ばれることを特徴とする、請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項17】
下記の工程を含むことを特徴とする、ゴルフボールを製造する方法:
(1)コア、及び、該コアを事実上取り囲むカバー層を有するゴルフボールを受容すること、ここに、該カバー層は、複数のディンプル、及び、隣接ディンプルを隔離する少なくとも一つの平地区域を有し、該複数のディンプルは、該カバー層において第1パターンとして配置され、該少なくとも一つの平地区域は、該カバー層において第2パターンとして配置される;
(2)第1パターン及び第2パターンの内の少なくとも一方の少なくとも一部において、該カバー層をコーティング材料によってコートすること;及び、要すれば、
(3)該カバー層から該コーティング材料を選択的に除去すること、
但し、該コーティング材料は、第1パターン及び第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターン及び第2パターンの内の他方とは事実上重複しない。
【請求項18】
前記カバー層から前記コーティング材料を選択的に除去する前記工程(3)が:
前記コーティング材料の上に、マスキング剤を、第1パターンと第2パターンの内の一方に一致するパターンとして塗布し、該マスキング剤によって被覆されないコーティング材料を、化学的エッチングによって除去すること、
を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記カバー層から前記コーティング材料を選択的に除去する前記工程(3)が:
該カバー層から該コーティング材料の一部を除去するように該コーティング材料を物理的に研削することを含み、そのため、残留コーティング材料は、第1パターン及び第2パターンの内の一方の少なくとも一部とは重複するが、第1パターン及び第2パターンの内の他方とは事実上重複しない、ことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記カバー層を前記コーティング材料によってコートする前に、工程(1b):
該カバー層の表面を、該表面上にポケットを創出するように処理することにおいて、処理は、該ポケットが、第1パターン又は第2パターンのいずれかと一致する、該カバー層の少なくとも一部分の上に創出されるように行われること、をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−147775(P2011−147775A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−5928(P2011−5928)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5928(P2011−5928)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
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