説明

変化施設判定システム

【課題】サービス形態の変化した施設をプローブ情報により判定する。
【解決手段】サーバと複数の端末から成るシステムにおいて、端末の位置情報をサーバに送信し、サーバ側では、電子地図上の施設での端末位置情報の滞在時間を統計処理し、統計的に過去のデータと比べ変動のあった施設をサービス形態の変化した施設として判定する。端末は、自己の位置情報の内、判定に必要な部分だけを一定時間蓄積して送信することにより通信負荷を軽減する。サーバでの統計処理に用いる蓄積情報は、端末の施設での滞在時間、ユーザの平均年齢、男女比等である。端末側が判定で必要な情報のみサーバへ送信することにより、データ通信量の軽減が行え、さらに、統計処理を用いることにより、均一な判定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化施設判定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図としては紙媒体のもの、インターネット上で利用できるもの、また、スタンドアローン型で、コンピュータに直接インストールされたものなど、種々のものが活用されている。ところで、地図上に記載された施設は、現実世界では、入居テナントの変更により随時更新されてゆく。そのため、このような施設データを整備するためには、データの定期的な更新が必要となってくる。これらの施設データは、カーナビゲーションを初めとして、歩行者の為のナビゲーション等にも活用されている。
【0003】
従来から、このような施設の情報を活用する際に、データとして媒体に記載された施設の情報が古く、既にサービスの内容が変更された、つまり閉鎖された施設、営業内容の変更された施設を用いてナビゲーションをしてしまうといった問題があった。(例えば特許文献1)。このような問題を解決するため、従来の施設データの整備では、例えば、定期的に訪問調査や電話調査を行なって、施設データを更新していた。
【0004】
しかし、実際には、地図に掲載された施設のサービス内容が変更された直ぐ後に、地図上のサービス施設についても、そのデータを更新する事が望ましい。さらに、調査自体は定期的に行なわれるものであって、せっかく調査したのに、施設のサービス形態が全く変化していなかった場合等があり効率的に調査が行なわれているわけではなかった。正確で鮮度の高い地図を効率良く作成するためには、実際の調査が始まる前にサービス内容が変化した施設を事前に判定する必要がある。
【0005】
このような課題を解決する方法として、実際にユーザが、施設を訪れた際の軌跡情報であるプローブ情報を用いることが考えられる。プローブ情報は、各端末から発信されるデータを用いており、例えば施設の混雑度(人の滞留傾向)評価等に用いられている(例えば特許文献2)。
【0006】
ところが、地図整備のための調査は、全国規模で行なわれるものであり、何千万もの端末の位置情報を、測位された位置全てについて端末からサーバへ送って解析を行うのは現実的ではない。これらの地図整備の目的を達成するためには、端末側である程度情報を取捨選択してサーバへ情報を送信することが必要となってくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−189387号公報
【特許文献2】特開2007−114988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、サービス内容の変化した施設の変化を判定するために用いられる技術が求められている。
本発明は、上記の課題を解決することのできる変化施設判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のシステムは、サーバと複数の端末とを備えており、サービス形態の変化した施設を判定する変化施設判定システムであって、前記端末は、
位置を測定する位置測定部と、判定の対象となる対象施設の位置情報を記録した施設データ記憶部と、前記位置測定部によって測定された位置が前記対象施設における周辺の所定範囲の内側であった場合に、前記位置情報と、前記所定の範囲に端末が滞在した滞在時間情報とを蓄積情報として記憶する蓄積情報記憶部と、前記蓄積情報を送信する送信部とを備え、前記サーバは、前記蓄積情報を受信する受信部と、前記対象施設の位置情報を記録した施設データ記憶部と、前記位置情報に基づいて前記施設に対応する前記蓄積情報を抽出する抽出部と、前記抽出された蓄積情報が取得された全ての端末の台数を集計する全数カウンターと、前記全数カウンターで集計された端末の内、前記滞在時間情報が所定の値未満である通過端末数を集計する通過カウンターと、前記全数カウンターで集計された端末数に占める、通過カウンターで集計された台数の割合を計算する通過率算出部と、前記通過率に基づいて、前記施設のサービス形態が変化したか否かを判定する判定部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明のシステムは、前記判定部は、さらに、前記通過率について、過去に取得された前記通過率の基準データと、変化を判定する対象となる対象データとの間で統計的な母集団の変化について有意差検定を行う機能とを備え、前記判定機能は前記変化が統計的に有意であった場合に、前記目的施設のサービス形態が変化したと判定する機能とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、携帯端末からの軌跡情報(プローブ情報)を、サーバにより取得し、サービス形態の変化したことが予測される施設を判定することができる。また、サーバでの判定に必要な情報だけを端末の軌跡から端末側で選別し、サーバ側に送信することにより、サーバ側に送信するデータ量を少なくすることができる。さらにサーバ側では、これらのデータに基づいて統計的な解析処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例としての変化施設判定システムの概略構成を示す図
【図2】他の実施例としての変化施設判定システムの概略構成を示す図
【図3】システム全体のフローチャートを示す図
【図4】実施例1の施設領域への入出店情報を収集する端末のフローチャートを示す図
【図5】実施例1における施設領域への入出店を説明する図
【図6】実施例1における側プログラムのフローチャートを示す図
【図7】実施例1における側判定処理の詳細を示すフローチャートを示す図
【図8】実施例1におけるサーバ側で取得されたプローブ情報の経時変化を説明する図
【図9】実施例2における端末側のメインフローチャートを説明する図
【図10】実施例2における端末側の蓄積情報生成処理を説明する図
【図11】実施例2におけるサーバ側のメインフローチャートを説明する図
【図12】実施例2におけるサーバ側の通過フラグ設定処理を説明する図
【図13】実施例4における端末側の蓄積情報生成処理を説明する図
【図14】実施例4におけるサーバ側の通過フラグ設定処理を説明する図
【図15】実施例6における処理のメインフローチャートを説明する図
【図16】実施例6において、施設に着目した場合の処理を説明する図
【図17】実施例6において、プローブ情報に着目した場合の処理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。
A.実施例1
1.実施の形態1における変化施設判定システムの構成
図1は実施例としての変化施設判定システム10の概略構成を示す説明図である。図1と2の実施の形態は異なるが、共通する部分には共通の番号をふった。
図示するように、実施例の変化施設判定システム10は、サーバ100と基地局BSと地図データを利用するクライアント装置としての端末200とを含んでいる。サーバ100と基地局BSは、インターネットINTを介して通信可能に接続されている。端末200は、基地局BSと無線通信することが可能であり、この結果、端末200は、基地局BSを介して、サーバ100と通信を行うことができる。
1−1.端末側の構成(図1左側)
【0014】
本実施例の端末200は、地図データを記憶する端末側地図データ400を具備している。この地図データは、予め端末に記憶されていても良いし、通信回線とサーバ側に記録された地図データを用いて、いわゆるクライアントサーバシステムの形態で図示しない地図サーバから送信されてきても良い。
【0015】
送信部206は、端末と基地局BSとの間の通信を行うための装置である。端末と基地局の間の通信は、携帯電話の回線でも、PHSの回線でも良く、有線での通信等種々の様態を取りうる。これによって端末は地図データに基づく地図を表示する地図表示装置としても機能することができる。端末は、さらに、位置測定部(GPS受信機)201を備えており、経路案内機能を備えていても良い。
【0016】
なお、ここでの端末とは、例えば携帯電話や、PND、カーナビゲーションシステムを含むものであるが、上述の様に通信機能と地図データを備えたものであるならばどのようなものでも良い。GPS受信機201は、GPS(Global Positioning System/全地球測位システム)を構成するGPS衛星300から送信された電波を受信する装置である。ここでは通常3個以上のGPS衛星から届く電波の時間差を計算し位置を測定するものである。
【0017】
位置を測定する手段は、GPSに限らず、例えば、無線LANアクセスポイントを用いて、位置を測定するPlaceEngine(登録商標)などを用いても良い。時計部202は、位置測定部201によって位置が測定された際の時刻を測定する部分である。
【0018】
端末200の端末側制御部207は、端末の上述した各部201〜206を制御するためのコンピュータである。主制御部は、図示しない中央演算回路(CPU)と、RAMやROMを含んでいる。端末側制御部207は後述する各ステップで端末を制御し、位置測定部(GPS受信機)201で測位された位置と、時計部202で測定された、位置が測位された時間と、端末固有のユーザIDを端末側記憶部205に記憶する。
【0019】
ここでのユーザIDには、一般的にはユーザの性別、年齢等が紐付けられている。さらに端末側制御部207はこれらの端末側記憶部205に記憶された情報を所定の時間周期で蓄積情報として、サーバ100へ送信する。
【0020】
また、端末側記憶部には、プログラムを実行するためのソースコードが記録されている。端末側記憶部205は、ハードディスク、フラッシュメモリ、メモリカードなどで構成され得る。
【0021】
上記の内、測位された位置と時間情報についてさらに詳しく述べる。本発明による端末側制御部207は、滞在している場所の周辺の端末側地図データ400を用いて、地図上の境界における、端末の位置情報(位置情報)とその位置情報が測定された時刻情報を蓄積情報として端末側記憶部205に保存する。
【0022】
ここでの地図上の境界とは、例えば施設の敷地や家枠などである。これ以降これらの領域を施設領域と呼ぶ。端末側地図データ400は、これらの施設領域をポリゴンデータとして保存している。なお、端末側地図データ400では、これらのデータを施設データ401として保存している。端末側制御部207は、位置測定部201によって測定された位置が、施設領域の境界の外側から内側に進入した場合の位置情報と時刻情報を進入情報として、端末側記憶部に保存する。
【0023】
また、端末側制御部207は、測定された位置が境界の内側から外側に退出する場合の位置情報と時刻情報を退出情報として、端末側記憶部に保存する。したがって、蓄積情報の詳細には、進入情報と退出情報と、ユーザIDが含まれる。なお、ここでは、蓄積情報として、進入情報と退出情報について、測定時間を別々に測定して、蓄積情報としたが、端末側で、これらの時刻の差を取って、滞在時間を滞在時間情報として、蓄積情報に記入しても良い。また、ここでは、施設に進入する場合と施設から退出する場合に位置情報を蓄積情報に含み記録するが、施設近傍、すなわち対象施設近傍に端末が存在する場合に位置情報を記録するとしても良い。ここでの、対象施設近傍とは、施設の代表地点から半径50メートル以内等任意に設定可能である。
1−2.サーバ側の構成(図1右側)
【0024】
サーバ100は、受信部101により、端末200から蓄積情報を受信する。サーバ側制御部103は受信した蓄積情報をサーバ側記憶部102に保存する。サーバ側記憶部にはここで記載する以外にプログラムを実行するためのソースコードが記憶されている。
【0025】
まず、受付け部106はユーザからの入力を受付け後述する判定部105において、サービス形態が変化した施設を判定する範囲を定める。サーバ側制御部103はサーバ側記憶部102に保存された蓄積情報について、受付け部により指定された位置範囲の情報を選別し、判定部105へと送る。
【0026】
サーバ側制御部103は、蓄積情報から、サーバ側地図データを参照し、施設情報算出部107により、サーバ側地図データの店舗領域における情報を抽出する。ここで、抽出される情報は、プローブ情報から計算された端末の台数、端末が目的地に到着した時刻、端末が目的地を含む所定の領域から退出した時間、目的地での滞在時間、ユーザID(男女、年齢含む)等である。
【0027】
以降、施設毎に抽出された情報を、施設情報と呼ぶ。サーバ側制御部103は、先に計算された施設情報について1時間毎などの一定時間に区切って処理間隔を設定し、単位時間毎に施設情報記憶部109に記憶する。
【0028】
判定部110は、施設情報記憶部109に記憶された情報と判定対象となる情報の比較を行う。ここでは有意差検定を行うことが好ましい。詳細の手順については後述する。また本発明における装置構成は他の実施例においては若干異なるため都度説明する。
1−3システム全体のプログラム
【0029】
図3にシステム全体のフローチャートを示す。端末側では、端末側制御部207が情報蓄積処理S301を行う。情報蓄積処理S301は、端末200の位置に応じて、端末200が所定の領域に進入した場合と退出した場合の情報を蓄積情報として蓄積する処理である。
【0030】
S302では、端末側制御部207はこれら蓄積された情報にユーザIDを含め蓄積情報として、送信部206からサーバへ送信する。サーバ100はステップS303で、受信部101により送信部206から蓄積情報を受信する。サーバ側制御部103は、受信された蓄積情報を用いて、一旦サーバ側記憶部102を更新するS304。ここで更新されたデータは、サーバ側記憶部に保存され、判定を行うタイミングで、判定部105へと送られ、サービス形態が変化した施設として判定を行うS305。
1−4端末側のプログラム
【0031】
図4のフローチャートと、図5を用いて端末200の動作を説明する。まずユーザHは、端末200を携行し、施設領域Sに進入する、ユーザHは店内に入りその後施設領域Sから退出する。端末200の端末側制御部207はユーザが入口Iから施設に進入した場合には、入出店有りS401として入出店情報を作成するS402。
【0032】
また、ユーザが出口Oから退出した場合にも、入出店有りS401として入出店情報を作成するS402。ここでは入店と出店の両方のタイミングで入出店情報を作成したが、出店後のみ入出店情報を作成しても良い。
【0033】
ここで作成される入出店情報は、入口I近傍の位置情報と進入時刻、出口O近傍の位置情報と出店時刻である。入口Iの位置の把握は、好ましくは、端末側地図データと、端末軌跡の重ね合わせにより行う。すなわち端末200の端末側制御部207は自己の位置データを一定の周期で取得し、自己の持つ地図データの施設領域と比較し、端末の軌跡が施設領域の外部から進入してきた場合の施設領域の境界付近の端末の位置を入店情報(I近傍の位置の情報と取得時刻)として作成し、端末の軌跡が施設領域の内部から出店した場合の施設領域の境界付近の端末の位置を出店情報(O付近の位置情報と取得時刻)として作成する。
【0034】
入出店情報は、端末側制御部207の指令により蓄積情報として端末側記憶部205に記憶されるS402。
【0035】
また、蓄積情報は、端末が施設近傍にある場合に、端末の位置情報として記録されても良い、この場合には、施設近傍に滞在した、滞在時間を合わせて、端末側記憶部205に記憶すると好適である。ここでの近傍とは、施設領域内である場合でも良いし、施設の代表点から半径50メートル以内等、任意に設定された値の範囲内であれば良い。
【0036】
こうすることにより、サーバ側に、施設のサービス形態の変化の判定に、必要な部分だけを効率良く送信することができる。
【0037】
これらの処理は、蓄積条件を満たすまで続けられる。蓄積条件とは、蓄積された情報の情報量や蓄積された時間に関する条件である。
【0038】
端末はこれらの条件が満たされるまで、入出店情報を蓄積情報として保存し、条件が満たされた場合は端末側制御部207の指令により蓄積情報をサーバへと送信するS405。
【0039】
ここで情報量の条件については端末側記憶部の容量等にもよるが、時間の条件については例えば1日とし、毎日、深夜の携帯を使用する頻度の少ない時間帯に定期的にサーバへの送信を行うようにしても良い。また、施設の入口Iと施設の出口Oの情報は、サーバ側地図データを用いずに、例えば、施設の入口と出口に、送受信機を設置し、この送受信機と、端末の通信によって通信された位置と時間のみを夫々について保存しても良い。
【0040】
1−5サーバ側のプログラム
図6にサーバ側プログラムのフローを示す。サーバ側制御部103は、ステップS601においてサーバ側で判定要求があるかないかを確認する。判定要求は、オペレータからの入力によっても良いし、サーバ側制御部103の指示により定期的に自動で行なわれても良い。
【0041】
次にサーバ側制御部103はS602にて判定処理を行う。判定処理S602の詳細について、図7に示す。サーバ側制御部では、図7に示すフローの前処理として、受付け部106により処理する所定の領域を定めても良い。
【0042】
ここでいう所定の領域とは、例えば2次メッシュ、県域、市域、町域等の範囲である。受付け部106では、これら指定された範囲の中から、判定される施設数を算出する。S701とS706では、これら施設数について、全ての施設の判定が終わるまで判定ループを繰り返す。
【0043】
ここでは、S701の実変数iの初期値を0として、ループを初め、iが判定施設数を超えない範囲の場合のみ、判定ループを行ない、初期値iは、一つのループが始まる毎に1だけインクリメントされている。また、実変数iは、各施設のオブジェクトIDと紐付けられており、実変数iの値により、施設を特定することができる。
【0044】
S702では、サーバ側制御部103は、実変数iから、サーバ側地図データ500の属性データ502を参照し、対象施設のオブジェクトIDを特定する。S703では、オブジェクトIDから、サーバ側地図データを参照して、対象施設の施設基礎情報を得る。
【0045】
施設基礎情報には、施設の施設名、施設領域の緯度経度、階数等が含まれている。サーバ側制御部103は、施設基礎情報の、緯度経度情報を用いて、施設領域で測定された、蓄積情報から時間毎の各施設に含まれる端末の台数を施設情報算出部107で計算する。
【0046】
以降S704での経年変化の判定についてさらに詳しく説明する。図8は一日おきの端末の台数の推移の状態を示す図である。図中Lの位置では、それまでに比べて端末の台数が大きく落ち込んでおり、Hの位置では端末の台数数が回復しつつある。このような場合には、施設が一旦改修のために閉店しており、提供するサービスの形態が変化したと予測し判定部により判定することができるS705。
【0047】
また、蓄積情報には、ユーザIDとしてユーザの年齢や性別が記入されている。これらの、年齢、性別等について過去のデータとの間で統計的な検定を行ない、客層が変化した場合に、サービス形態の変化した可能性があるとして判定することも可能である。この統計処理については後述する。
【0048】
ある時期を境にして、プローブ情報が取得される時間帯に変化があった場合にも、施設の入れ替わりがあり、営業時間が変化したとして、サービス形態が変化した可能性があるとして判定することも可能である。
【0049】
さらに、ある時期を境にして、施設での滞在時間の統計結果に変化が生じた場合にも施設の入れ替えの可能性がありサービス形態が変化したとして判定することも可能であるS705。
【0050】
ここでは、サーバ側地図データから属性データ502を参照して、その属性から、平均的な滞在時間を予測しても良い。例えば、パン屋の場合平均5分、レストランの場合平均45分、スパーマーケットの場合30分、美容院なら1.5時間とし、取得されたプローブ情報から計算されたユーザの平均滞在時間の合計がこれらの値から大きく離れた場合を、施設のサービス内容が変化したとして判定しても良いS705。
【0051】
なお、ここでの統計処理についても後述する。一般的に、このように施設における端末の台数の減少には、セール期間の終了、営業はしているものの、平日であった場合、店休日、営業時間外である場合、改装中または閉店している場合、人気が無くなった場合等が考えられる。
【0052】
以上の処理にかかる統計処理には、以下の手順を用いると好適である。蓄積情報として取得された複数の端末ユーザの男女比率や、平均年齢、平均滞在時間等の値と過去のデータとの間に、統計的な有意差がある場合、サービス形態が変化した施設と判定する。
【0053】
有意差検定を行うための統計学的な手法としては、例えばスチューデントのt検定等の各種有意差検定法を用いる、t検定とは、帰無仮説が正しいと仮定した場合に、検定統計量がt分布に従う事を利用する統計学的検定法の総称である。
【0054】
またこれらは、母集団が、正規分布に従うと仮定するパラメトリック検定法であり、t分布が直接もとの平均や標準偏差にはよらない(ただし自由度による)ことを利用している。2つの集団の平均値に有意差があるかどうかの検定などに用いられる。
【0055】
・蓄積情報から取得されるユーザの性別についての検定処理
男女比が変化している場合には、まず、判定の対象となる、対象データと、過去に蓄積された基準データの間に、両データが同じ集合から採取されたデータであるとする帰無仮説を立て、式1により母比率検定を行う。
【数1】

【0056】
ここで、
Z:検定統計量
X:データのうち特性に該当するデータ数(例:女性のデータ数)
n:対象となるデータ数
X/n:データから導き出された母比率
0:過去のデータから導き出された母比率
である。
【0057】
ここでは、サーバ側制御部103は、施設情報記憶部において記憶されたデータの中からさらに、ユーザIDを参照し、上記統計量を用いて、検定統計量Zを算出する。サーバ側制御部は、統計検定量Zが表3のt分布表を参照して、予め設定した有意水準の棄却域(例えば5%の両側検定)に含まれているか判定する。
【0058】
この判定により対象データの検定統計量が棄却域である場合には、過去の対象データの母比率と基準データの母比率が異なるとして判定を行うS705。
蓄積情報から取得されたデータが、男女比率など定性的なデータである場合には、式1が有効である。式1を用いる他の実施例4があるが、それについては、後に詳細に述べる。
【0059】
・蓄積情報から取得されるユーザの平均年齢および平均滞在時間の経年変化についての検定
平均年齢および平均滞在時間が変化した場合には式2と式3により母平均の差の検定を行う。ここでも、施設情報記憶部に記憶された、対象データと、過去に蓄積された基準データの間に両者のデータが同じ母集団から取得されたという帰無仮説を立て、この仮説に対して検定を行う。
【数2】

ただし、上記式2におけるu2は以下の式3
【数3】

ここで、
Z:検定統計量
:過去のデータの平均値
1:対象データの平均値
:過去のデータの数
:対象データの数
:過去のデータの標本標準偏差
:対象データの標本標準偏差
u:標本標準偏差
【0060】
ここでは、サーバ側制御部103は、施設情報記憶部109に記憶されたデータの中からさらに、ユーザIDを参照し、ユーザの年齢を読み出し、上記のパラメータから検定統計量Zを算出する。以下にその詳細を説明する。表1には、施設Aの蓄積情報情報から取り出された各ユーザの情報が、データ番号、取得日付、年齢として記載されている。
【表1】

ここでは、日付条件の時間が2009年1月22日から、2009年1月28日までの1週間となっている。サーバ側制御部103は表1の、施設Aに関する情報を施設情報記憶部109から読み出す。ここでは対象データ、すなわち比較の対象となるデータは表1のデータである。次にサーバ側制御部103は、上記の式2と3のパラメータとなっている値について演算を行ない算出する。さらに、サーバ側制御部103は、施設情報記憶部から比較の対象となる施設Aの過去のデータ(基準データ)表2を読み込む。
【表2】

ここでは対象データ数nは15、年齢の平均値Xは27.067、標本標準偏差uは6.3636となる。また基準データ数nは表2から、30、同じく基準データの年齢の平均値Xは25.933、基準データの標本標準偏差uは5.3300となる。
これらのパラメータを式2に代入し、検定量Zは0.63017、式3に代入し標本標準偏差の2乗uは、32.344となる。有意水準の棄却域を5%の有意差検定とすると、自由度は(n−1)+(n−1)=43なので、表3のt分布表を参照し、閾値t0.05は2.0167となる。ここで対象データの検定量Z=0.63017は、t0.05は2.0167より小さく棄却域には含まれない。
【表3】

この場合、対象データと基準データが同一のサンプルから取得されたという帰無仮説は成り立ち、対象データと基準データの間の有意差が認められないため、経年変化なしとしてサービス形態が変化したとの判定は行なわれない。
【0061】
一方で、経年変化がありとして、施設のサービス形態が変化した施設として、判定される例を以下に示す。表5は、施設Bの、データ番号、日付、年齢を記載した蓄積情報である。
【表5】

【0062】
サーバ側制御部103は受信部からこれらのデータを受けとり、施設Aの場合と同様に、各パラメータを計算し、式2と3に代入し、検定統計量を求める。ここで、対象データ数nは表5より、15、対象データの年齢の平均値Xは45.400、標本標準偏差uは6.6740である。また、表2の施設Bより、基準データ数nは25、基準データの年齢の平均値はX=26.240標本標準偏差はu=6.6633となる。サーバ側制御部103はこれらのパラメータを式2および3に代入し、標本標準偏差の2乗値として、u=44.478、検定統計量として、Z=8.7965が得られる。ここで有意水準の棄却域を5%の両側検定とすると、自由度は、(n−1)+(n−1)=38となるので、表3のt分布表を参照し、求められる閾値はt0.05=2.0244である。ここで対象データの検定統計量Z=8.7965は、t0.05=2.0244より大きく棄却域に含まれる。この場合基準データと対象データが同一のサンプルから取得されたという帰無仮説は成り立たず、両データ間には有意差があると判定される。
【0063】
このためこの場合には経年変化ありとしての判定が行なわれる。以上、蓄積情報から得られたユーザ属性の平均年齢の経年変化による変化施設の判定を行なったが、これは例えば、蓄積情報から得られたユーザの平均的な滞在時間の変化についても適用可能である。この場合には、表1と表5における年齢のデータが、滞在時間に変更される。また、表2における、平均値が滞在時間の平均値に、標本標準偏差が滞在時間の標本標準偏差となる。検定対象の蓄積情報が、平均年齢や平均滞在時間などの定量的な内容の場合は、式2、3が有効である。
【0064】
また、端末は、対象施設の近傍に端末が存在した場合のみの滞在時間情報と、位置情報とを送信してきても良い。
【0065】
さらに、滞在時間情報に応じて、通過フラグを設定し、通過率を算出し、通過率が所定の範囲を超えた場合に施設のサービス形態が変化として判定しても良い。
【0066】
この場合の通過率の計算は以下の通りである。
まず、サーバ側記憶部103は、判定の対象となる対象施設の位置情報に基づいて、対象施設に対応する蓄積情報を抽出部により抽出する。次に、抽出された蓄積情報について、蓄積情報が取得された全端末の台数を全数カウンターにより集計する。さらに、施設サーバ側制御部103は、蓄積情報の滞在時間情報を参照し、滞在時間が所定の値未満のものについて通過フラグを設定する。
【0067】
ここでは、滞在時間が所定の値未満のものについて、通過フラグを1と設定する。一方で、滞在時間が所定の値以上であるものについては、通過フラグを0と設定する。サーバ側制御部103は、通過率を1とした蓄積情報について、その蓄積情報が送信された端末の台数を通過カウンターで集計する。
【0068】
ここでの所定の値とは、店舗の種別によって異なる値としても良い。例えばパン屋の場合平均5分、レストランの場合には45分、スーパーマーケットなら30分、美容院なら1.5時間等任意に設定可能である。これらの店舗情報は属性データ502から読み出されても良い。
【0069】
サーバ側制御部103は、さらに、通過率算出部115によって、(通過カウンターで集計された端末台数)/(全数カウンターにより集計された端末台数)を通過率として算出する。判定部105は、通過率が一定の値を超えた場合、例えば20/100を超えた場合を、サービス形態の変化した施設であると判定する。
【0070】
以上のように、実施例1は種々の形態で実施可能である。本実施例では、サーバ側の判定処理に、統計的な手法を用いることにより、検定統計量に変化のあった施設のみについて抽出することが可能である。このため、自動的な処理によって、ばらつきの無い均一な判定が可能となる。
また、端末からサーバに、サービス形態の変化した施設の判定のために必要な部分のみを送ることにより、データ転送の容量が削減できるという利点を持つ。
【0071】
B.実施例2
2.実施の形態2における変化施設判定システムの構成
2−1.端末側の構成(図2左側)
本実施例の端末200において、先の実施例と異なる部分は、目的地入力部203を備えている点である。具体的には、カーナビゲーションシステム、PND等が端末にあたる場合が本実施例に相当する。
【0072】
端末200はユーザからの目的地の入力に応じて図示しない経路探索部にて経路を探索する。好ましくは、ここで端末側地図データ400には、リンクデータ403、ノードデータ404、施設データ401、属性データ402を備えている。端末は、目的地の入力を、目的地入力部203で受付け、端末側制御部207は、この目的地の情報を経路案内部208に送る。
【0073】
経路案内部は経路案内を行ないユーザを目的地へと案内する。経路案内部は、端末に備えられても良いし、図示しないサーバに備えられ、サーバからの通信により、経路案内を行う態様にしても良い。端末は、目的地に到着すると端末側制御部207からの指示により、位置測定部201で取得された目的地の位置情報と、時計部により測定された目的地に到着した時間Tを蓄積情報として端末側記憶部205に記録する。また、端末側制御部207は、端末側地図データ400を参照して端末が目的地から所定のエリアを出たかどうかを判定する。
【0074】
所定のエリアを出た場合には、同様に、位置測定部201の位置情報データと時計部202で測定された退出時の時刻Tを蓄積情報として、送信部206からサーバへと送信する。目的地とエリア脱出地の蓄積情報にはそれぞれ目的地、脱出地を示すフラグをつけても良い。
【0075】
また、これとは異なるが、例えば目的地に到着してから、所定の時間(例えば30分)、経過した後に、所定のエリア例えば目的地から半径500メートルの外側に端末がある場合のみ、目的地の座標と、端末の座標、それぞれの位置情報の取得時間T、Tを蓄積情報として送信してもよい。ここでの所定の時間は施設のPOIに応じて設定されても良い、例えばパン屋なら5分、スーパーマーケットなら30分、レストランなら45分、美容院なら1.5時間等である。この場合、所定のエリアの内側にいる場合には、目的地の座標と取得時刻だけが蓄積情報として、サーバに送信されることとなる。この例については実施例4に記載する。
2−2.サーバ側の構成(図2右側)
【0076】
第2の実施例における、サーバ側の構成を説明する。受信部101は複数の端末200から受信された蓄積情報を受信する。これらの情報は、サーバ側制御部103により、サーバ側記憶部102に記憶される。ここで蓄積情報として受信されるのは、目的地とエリア脱出地の位置情報とその各々に到達した時間(T、T)である。次にサーバ側制御部103は、サーバー側記憶部102に記憶された蓄積情報を、通過フラグ設定部116へと送る。通過フラグ設定部116では、各端末から送信された蓄積情報に応じて通過フラグを設定する。
【0077】
設定された通過フラグは、通過フラグ記憶部111に記憶される。サーバ側制御部103は、サーバ側地図データを図示しない表示手段に表示させ、ユーザからの対象施設の指定を受け付ける。ここではさらに、蓄積情報が集まった領域のみを表示し、ユーザに設定させることも可能である。ここで利用されているサーバ側地図データ500は、少なくとも施設データ501と属性データ502を備え、施設データはできるだけ、正確なデータであれば好ましい。次にサーバ側制御部103は、抽出部により対象施設領域毎に通過フラグを読み出す。次に、サーバ側制御部103は、蓄積情報が送信された全ての端末の台数を全数カウンターにより集計する。また、サーバ側制御部103は、蓄積情報の内、通過フラグが1と設定されている端末の台数について、通過カウンターにより集計する。これらのカウンターにより集計された値から通過率を算出するのが通過率計算部115である。ここでは、(通過カウンターにより集計された端末の台数)/(全数カウンターにより集計された端末の台数)を通過率として算出する。これらの通過率は、通過率記憶部に保存されて、判定部105におけるサービス形態の変化した施設の判定に利用される。その際の処理の詳細については後に述べる。
2−3.端末側のプログラム
【0078】
図9に端末側の処理プログラムのフローチャートを示す。ユーザは目的地入力部203により目的地を設定するS901。その後、端末側制御部207はユーザを経路案内部208により、目的地まで案内し、ユーザが目的地に到着したかどうかを判断するS902。目的地に到着した場合には、S903の蓄積情報生成処理によって蓄積情報を生成する。蓄積情報生成処理の処理については後述する。
【0079】
端末側制御部207は、蓄積情報について、蓄積条件を超えたか否かを判断するS904。ここでの蓄積条件は実施例1の場合と同様である。次に端末は送信部206により蓄積情報をサーバへ送信するS905。図10を参照して蓄積情報生成処理について説明する。端末側制御部は、目的地に到着すると端末側記憶部205に目的地の位置と到着時刻Tを記入するS101、次に端末は端末が目的地から所定の距離だけ離れたエリアを脱出したかどうかを検出する。
【0080】
エリアは目的地を中心とする半径方向例えば500m等であっても良いし、道なりに沿った距離であってもよい(例えば700m)。端末側制御部207は、端末が所定のエリアから脱出した場合には、脱出した地点の位置情報と測位時刻情報Tを端末側記憶部に記憶S103する。その後端末側制御部207の指示によりこれらの蓄積情報は一定時間蓄積されるS103。端末側制御部は、蓄積情報について蓄積条件を超えたか否かを判断するS104。蓄積条件は、端末側記憶部の容量の制約や、蓄積された期間により設定される。期間による場合は例えば、1日に1回、深夜および早朝とすることなど任意に設定可能である。蓄積条件を超えた蓄積情報は、サーバへと送信されるS105。
【0081】
また、本実施例では、目的地の位置を蓄積情報として送信することとしたが、例えば端末側地図データとサーバ側地図データが目的地に関する固有のIDを共有している場合には、位置情報に代えてこのIDのみを送付しても良い。
2−4.サーバ側のプログラム
【0082】
図11は第2の実施の形態のサーバ側の処理プログラムについて示すものである。サーバ側制御部103は、受信部101により蓄積情報を受信する。サーバ側制御部103は蓄積情報をサーバ側記憶部102に記憶する。次に行なわれるのが通過フラグ設定部116で行われる通過フラグ設定処理S111である。通過フラグ設定処理については後述する。サーバ側制御部103は、判定施設名を目的地施設名から検索する。図12に通過フラグ設定処理の詳細を示す。サーバ側制御部103はサーバ側記憶部に記憶した蓄積情報を通過フラグ設定部116へと送る。
【0083】
S121では、サーバ側制御部103の指示により、蓄積情報から目的地に到着した到着時刻と脱出時刻の差を求める。続くS122では、目的地と脱出時刻の差(T−T)が閾値β以下かどうかを調べる、ここでいう閾値とは例えば30分である。この閾値βの値は、施設POIによって変化させても良い。例えば施設がパン屋なら5分、スーパーマーケットの場合は30分、レストランなら45分、美容院である場合には1.5時間等である。
【0084】
S123では、到着時間と脱出時間の差すなわち滞在時間が閾値以下である場合には通過フラグを1と設定する。一方で滞在時間が閾値以上であった場合には通過フラグは0と設定される。続くS124では、サーバ側制御部103の指示により目的地施設名と通過フラグの値を含む通過情報を生成し、通過フラグ記憶部111へ保存する。再び図11でのサーバ側の判定処理のメインフローチャートを説明する。まず、通過フラグ記憶部から、通過情報を読み出し部113で読み出すS114。
【0085】
次にS115で、サーバ側制御部103は特定された全データの中から通過フラグの値が1であるデータの割合をもとめ、通過率とする。これらの通過率は後に統計処理を行う場合に備えて、通過率記憶部111に保存される。統計処理を行う場合の詳細の処理については後述する。続くS116では、通過率が閾値α以上であるかどうかを判定する。ここではたとえば閾値αを20/100とする。
【0086】
この閾値αよりも通過率が大きな場合には対象施設を閉店した施設やサービス形態の変化した施設であるとして判定するS117。また判定処理は、端末で位置データが収集された時刻が営業時間外である場合や、収集された日が定休日である場合などは行われない構成としても良い。これらの情報はサーバ側地図データベースの属性情報から取得することが可能である。
【0087】
また目的地として設定される頻度自体に時間的に減少傾向があった場合には、すでに施設が閉店している可能性が高いと判断することもできる。上記の構成とすることにより、ユーザが確実に目的地に設定した施設データのみを判定することがでる。また、目的地と目的地を含む領域のみの情報を送付するため、端末とサーバ間の通信量が低減される。さらに目的地に設定した施設データから、通過率を基準として、閉店されたり、サービスの形態が変化した施設を判定することができる。
【0088】
C.実施例3
3−1端末側の構成
本実施例3は実施例2の変形例である。実施例2と異なる点は、実施例2では、端末が目的地に到着した時刻Tと目的地から所定の距離の領域を脱出した地点での時刻Tを含む情報を蓄積情報としてサーバに送信していたのに対して、本実施例では、T−Tを滞在時間Tとして、サーバに送信する点にある。こうすることにより、本来TとTを送る必要があった場合にくらべ少ない情報量で同様な処理が可能となる。また、蓄積情報には、目的地(到着地点)と脱出地の位置情報が含まれているが、目的地のみの位置情報が含まれていても良い、端末側で、目的地から、脱出地までのエリアの情報を持ち、滞在時間をサーバに送信することによって、サーバ側に送信する必要のある情報は、整備対象となる目的地と、評価の対象となる滞在時間Tのみになるためである。
【0089】
3−2サーバ側の構成
端末200から、滞在時間Tを受信することにより、本実施の形態では、サーバ側から図12のS121の処理は必要なくなり、端末側で行なわれる。その結果を滞在時間Tとして、サーバに送付する。
また、ここでは、目的地に関して、測位された位置情報を端末から送信し、サーバ側にあるサーバ側地図データ500の施設領域について判定し、施設おきに各施設でのユーザの滞在時間を抽出するS133。各施設での滞在時間を用いて通過率を抽出する点は、実施例2の内容と同一であるため説明を省略する。
【0090】
本実施の形態では、サーバ側での施設領域の抽出には、端末側から、位置情報を送信することとしたが、例えば各施設固有の施設IDを送信するとしても良い、この場合には、端末側とサーバ側で共通の施設IDを有している必要がある。本発明では、位置情報と、これら施設IDを含めて施設データと呼ぶことにする。
上記の構成とすることにより、判定対象の施設が目的地に設定された場合に端末から送付されるデータの量を低減することができる。
【0091】
D.実施例4
実施例4は、実施例2の変形例である。ハードウェア構成の説明は同一であるため省略する。
4−1.端末側プログラム
【0092】
図13は実施例4における端末側の蓄積情報生成処理を示す。メインフローチャートについては実施例2と同様であるため説明を省略する。図13では、まず端末側制御部207の指示により、目的地に到着した場合に、目的地の位置情報と到着時間を蓄積情報として端末側記憶部205に記憶するS131。ここでさらに、時計部202により目的地到着時からの経過時間を測定し、所定時間経過したかどうかを判断するS132。ここで所定時間とは例えばパン屋であったら15分、スパーマーケットなら30分、レストランなら45分、美容院なら45分である。所定時間経過している場合には次の処理に進む。端末側制御部207は、位置測定部201によって測定された位置を、端末側地図データ400の地図上に重ねあわせる。
【0093】
次に、先ほど到着した目的地とその後取得された現在地の位置情報を位置測定部201により比較し、現在地が目的地と比べて所定のエリア外かどうかを判断するS133。所定のエリアとは例えば目的地を中心として半径500メートル、道なりに700メートル等である、半径で比較する場合には、移動前と移動後の位置測定部201から取得された位置データにより比較を行う。
【0094】
一方で、道なりで評価する場合には位置測定部201により測定されたデータを端末側地図データ400のリンクデータ403に対してマップマッチングして道路に沿った移動距離を算出する。さらに、目的地が所定の領域の外である場合には、その時点の位置情報と時間情報を蓄積情報として、端末側記憶部205に記憶するS134。また、現在地が特定のエリアの内側にある場合には、その時点の位置情報も時刻も記入しない。これは、サーバ側で、後に記載する通過情報を算出するためである。端末側制御部207は、蓄積情報について、蓄積条件が満たされたかどうかを判断するS137。蓄積条件は実施例1と同様である。
【0095】
次に端末は、これら蓄積された蓄積情報をサーバ側へ送信するS136。ここでは、端末が所定の時間経過後に所定のエリアの外に存在した場合には、目的地の位置情報と到着時刻情報と、所定の時間経過した時点の位置情報と時刻情報が蓄積情報として送信される。また、所定の時間経過後に所定の領域の内側に存在した場合には、目的地の位置情報と、目的地への到着時刻情報のみが蓄積情報としてサーバに送信される。この場合、目的地の位置情報と到着時間情報には、固有の識別フラグを付与して、サーバ側で認識させるようにしても良い。
4−2.サーバ側プログラム
【0096】
図14にサーバ側の通過フラグ設定処理について示す。メインフローチャートは、実施例2の場合と同様であるため説明を省略する。サーバ側制御部103はまず、受信された蓄積情報に目的地に関する情報(位置、時刻)と目的地から所定の時間経過した際に所定の領域の外側にいた場合(エリア脱出地)の(位置、時刻)の情報が両方あるかどうかを判断するS141、両方ある場合には次のS142で通過フラグを1と設定する。目的地のみの場合にはデフォルト値のまま0と設定する。次にステップS143で、目的地施設名と通過フラグを設定する。
【0097】
上記実施例によれば、ユーザによって携行される端末が、所定時間内に所定のエリアに存在する場合には、目的地の位置情報と、目的地への到達時刻のみを送信することにより、サーバ側で通過率の算出が可能となる。このため、端末とサーバ間のデータ通信の負担を低減することが可能となる。
E.実施例5
【0098】
次に、実施例2、3、4の通過率を用いた場合の変形例として、統計処理を用いたサービス形態変化施設の判定におけるサーバ側の処理を記載する。最初に、経年変化が無いとして、サービス形態の変化しないとして判定した例を説明する。表6には施設Aに関する通過情報を示している。
【表6】

各データにはデータ番号と、取得日付と、取得曜日、取得時間、通過フラグ値が通過ありの場合が1として、通過なしの場合が0として記されている。ここで評価するデータは、2009年1月22日から1月28日までの1週間のデータである。取得された時間については、目的地に到着した時間を用いた。ここでは、営業時間内(11:00から22:00まで)のデータを処理の対象とし、店休日の日曜日は対象外とする。その結果として処理されるデータは、表6中の網掛けされたデータのみとなる。まずサーバ側制御部103は表6のデータを施設情報記憶部109から読み込む。以降では、実施例1の男女でのユーザ差の検定に用いた式1を用いて検定量を算出する。サーバ側制御部103は読み込んだ表6のデータから、式1のパラメータとなる各値を計算する。ここでは対象データ数nは12、このうち通過フラグ有りのデータXは2、X/nは0.1666となる。また表7には過去のデータから導き出された通過フラグの母比率が施設おきに示されている。表7のデータは2009年1月21日に更新されたものである。
【表7】

この表7から施設Aの基準値Pは0.2となる。サーバ側制御部103は上記パラメータを式1に代入し検定統計量Z=−0.2886が得られる。ここで有意水準の棄却域を5%の片側検定とすると、
表4の標準正規分布表から求められる閾値Z0.05は1.645である。
【表4】

対象データの検定統計量Z=−0.2886はZ0.05より小さく棄却域には含まれない。この場合対象データの属する集合は、基準データの属する集合と等しい母比率を持つと検定することができる。この場合には経年変化なしとしてサービス形態が変化した施設としての判定を行なわない。
【0099】
次に、通過率を用いた場合で経年変化ありとして判定を行う場合を例示する。表8には、表6と同様な施設Bに関する項目が示されている。
【表8】

判定を行う前提条件は、同様の期間、営業時間および店休日となっている。また、施設Bについての過去の基準値(母比率)も同様に表7に示されている。サーバ側制御部は同様にパラメータをこれらの表から算出し、対象データ数n=12、通過フラグ有りのデータ数Xは10、X/nは0.8333、基準値Pは0.4となる。これらのパラメータを式1に代入し検定統計量Z=3.064が得られる。ここで有意水準の棄却域を5%の片側検定とすると、標準正規分布表(表4)から求められる閾値Z0.05は1.645である。対象データの検定量、Z=3.064はZ0.05は1.645より大きく棄却域に含まれる。したがって対象データの属する集合は基準データの属する集合と母比率において有意差があり異なると検定されることとなる。したがってこの場合サービス形態の変化があった施設として判定が行なわれる。
【0100】
上記構成によれば、施設情報記憶部に記憶された通過率を過去の通過率データと比較することが可能となり、統計的に変化のあった場合のみに判定を行うことが可能となる。
G.実施例6
【0101】
次に、実施例6として、サーバ側での処理について記載する。これまで、ユーザによって携行される端末と、そのデータを処理するサーバについて述べてきたが、本発明は、例えば、既に取得された蓄積情報のみをデータとして取得し処理するサーバとしても実施可能である。図15にその場合のメインフローチャートを示す。サーバ側制御部103は、入出店情報を作成するS151。ここで、入出店情報とは、端末が施設へ入出店した日時、施設基礎情報を示す。ここで、施設基礎情報とは、施設名、緯度経度、階数等を示す。ここでいう入出店情報には、上述した蓄積情報が含まれる。
【0102】
サーバ側制御部103はサーバ側記憶部の蓄積情報を更新するS152。次ぎにサーバ側制御部103はS152にて、所定のタイミングでこれらの施設基礎情報を用いて判定処理を行う。これらの判定処理は上述したものである。ここでは特に、入出店情報の作成処理に特徴がある。入出店情報の作成処理には、2種類の方法があり状況に応じて使い分けると好適である、これらの方法は施設に着目する場合とプローブ情報に着目する場合である。
【0103】
まず施設に着目して処理する場合を図16に示す。この場合は、判定を行ないたい施設を指定する。サーバ側制御部103は、対象施設の指定を行うS161。次に、対象施設の情報を記憶装置から読み出すS162、ここでの対象施設の情報とは、例えば、対象施設の家枠等、施設の領域に関する情報である。さらに、S163では、対象施設の領域にあるプローブ情報の情報を抽出する。S164では、抽出された軌跡の情報と施設領域の情報から入出店情報を作成する。
【0104】
ここで作成される入出店情報の主なものは蓄積情報であり、施設への進入および退出の位置と時刻が記憶される。入出店情報のうち施設基礎情報は、施設のサーバ側地図データ500の属性データ502から得られる。図15のメインフローチャートは、施設の数だけ繰り返される。この実施例は、取得されたプローブ情報が数多くある場合に好適である。
【0105】
また、プローブ情報の数が少ない場合には、軌跡に注目して、入出店情報の作成を行う。この場合のフローを図17に記載する。S171では情報抽出範囲の指定を行う。ここでは、2次メッシュ等の種々の単位で、情報抽出単位の指定を行う。次にS172では、サーバ側制御部103は、指定範囲内の施設情報をサーバ側地図データ500の施設データ501および属性データ502から読み出す。
【0106】
施設データ501から読み出されるのは施設の領域に対する情報であり、属性データ502から読み出されるのは施設基礎情報である。次に、S173では、指定された範囲内でのプローブ情報を抽出する。ここでサーバ側制御部103は、指定された範囲内でのプローブ情報の数をカウントする。カウントされた値は、サーバ側記憶部102に記憶される。次にS174では、これらのプローブ情報の中から任意の軌跡を指定し、このプローブ情報に対して、これらの軌跡と、施設基礎情報から、入出店情報を作成する。すなわち、プローブ情報が多い場合には、全ての領域に対して、入出店情報を作成するのは、処理量的に困難であると考えて、各施設に着目して処理を行う。また、プローブ情報の数が少ない場合には、2次メッシュ等の所定の領域に対しての作成処理も可能としている。
【0107】
上記の構成によれば、プローブ情報の数が多い場合と、少ない場合における処理負荷を考慮した上で、入出店情報の作成処理が行える。
【0108】
以上本発明の実施例および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施例および変形例になんら限定されるものではない。例えば、本発明では、主に端末とサーバを組み合わせた際の両者間のデータ量削減について述べたが、本発明の目的であるサービス形態が変化した施設の判定を行う場合には、サーバに外部から同様なデータを入力し、処理する場合においても同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0109】
100…サーバ、
101…受信部、
102…サーバ側記憶部、
103…サーバ側制御部、
105…判定部、
107…施設情報算出部、
109…施設情報記憶部、
110…判定機能、
111…通過フラグ記憶部、
115…通過率設定部、
116…通過フラグ設定部、
200…端末、
201…位置測定部、
202…時計部、
203…目的地入力部、
205…端末側記憶部、
207…端末側制御部、
206…送信部、
208…経路案内部、
400…端末側地図データ記憶部、
500…サーバ側地図データ記憶部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと複数の端末とを備えており、サービス形態の変化した施設を判定する変化施設判定システムであって、
前記端末は、
位置を測定する位置測定部と、
判定の対象となる対象施設の位置情報を記録した施設データ記憶部と、
前記位置測定部によって測定された位置が前記対象施設における周辺の所定範囲の内側であった場合に、前記位置情報と、前記所定の範囲に端末が滞在した滞在時間情報とを蓄積情報として記憶する蓄積情報記憶部と、
前記蓄積情報を送信する送信部とを備え、
前記サーバは、
前記蓄積情報を受信する受信部と、
前記対象施設の位置情報を記録した施設データ記憶部と、
前記位置情報に基づいて前記施設に対応する前記蓄積情報を抽出する抽出部と、
前記抽出された蓄積情報が取得された全ての端末の台数を集計する全数カウンターと、
前記全数カウンターで集計された端末の内、前記滞在時間情報が所定の値未満である通過端末数を集計する通過カウンターと、
前記全数カウンターで集計された端末数に占める、通過カウンターで集計された台数の割合を計算する通過率算出部と、
前記通過率に基づいて、前記施設のサービス形態が変化したか否かを判定する判定部とを備えたことを特徴とする変化施設判定システム。
【請求項2】
前記端末は、目的地となる目的施設までの経路を案内する経路案内部を備え、
前記施設周辺の所定範囲は目的地を含み、
前記滞在時間情報は、前記目的施設に到着してから該目的施設の位置を含む所定領域を退出するまでの滞在時間であることを特徴とする請求項1記載の変化施設判定システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記通過率について、過去に取得された通過率の基準データと、変化を判定する対象となる対象データとの間で統計的な母集団の変化について有意差検定を行なう機能とを備え、前記判定機能は前記変化が統計的に有意であった場合に、前記目的施設のサービス形態が変化したと判定する機能とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の変化施設判定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−238004(P2010−238004A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85937(P2009−85937)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】