説明

変圧器の爆発防止装置

【課題】変圧器の爆発防止装置の提供。
【解決手段】可燃性の冷却流動体で満たされたタンク2を備えた変圧器の爆発を防止するための装置であって、該装置が、前記タンクの排出口に配置され前記タンクを減圧する圧力除去エレメント15と、前記圧力除去エレメントの下流に配置された貯留容器と、前記貯留容器の前記排出口に取り付けられた少なくとも一つの手動バルブとを含み、前記圧力除去エレメントを通過する流動体を回収するように前記貯留容器は密封されている前記装置において、該装置が、更に前記圧力除去エレメントと前記貯留容器との間に配置された減圧チャンバ、前記減圧チャンバと前記貯留容器との間に配置されたパイプ17、パイプによって前記タンクに接続されたレベル・タンク、及び前記パイプと前記パイプ17の最高部分を接続する接続するパイプ56を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多量の可燃性流動体で冷却される変圧器の爆発防止の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器は巻線及び鉄心の両方の損失に耐えるため発生した熱を放散する必要がある。そこで、高電力の変圧器は通常オイルなどの流動体で冷却されている。使われるオイルは誘電体で、温度が約140℃を上回ると着火可能になる。変圧器は非常に高価な装置なので、その保護については特段の注意を払う必要がある。
【0003】
絶縁不良は、まず第一に強い電気アークを発生させ、これが電気的保護システムを誘起して変圧器の電力キュービクル(電流遮断器)を作動させる。また、電気アークはエネルギーの放散をもたらし、絶縁オイルを分解してガス、特に水素とアセチレンを放出させる。
【0004】
ガスが放出されると変圧器タンクの内部圧力が急激に上昇し、多くの場合非常に激しい爆燃が起こる。この爆燃が変圧器タンクの機械的連結(ボルト、溶接部)に大きな裂傷を引き起こし、前記のガスを周辺の空気中の酸素と接触させる。アセチレンは酸素が存在すると自己発火するので、すぐさま火災を生じ、同様に大量の可燃性物質を包含している可能性の高い敷地内の他の設備類に延焼する。
【0005】
爆発は、過負荷、サージ電圧、漸進的絶縁劣化、不十分なオイル・レベル、水又はカビ類の混入、絶縁部品の故障による短絡に起因する絶縁破壊により起こる。
【0006】
従来から、火災検知器により作動する変圧器用の消火システムが知られている。しかしながら、こういったシステムは、相当な時間差をもって、変圧器のオイルが既に燃えているときに作動する。従って、こういったシステムは、火災を関連する設備内に止め、隣接する設備を延焼させないためにだけに使われてきた。
【0007】
電気アークによる絶縁流動体の分解速度を落とすため、従来の鉱物オイルの代わりにシリコン・オイルを用いることができる。但し、内部圧力上昇による変圧器タンクの爆発をごく短時間、数ミリ秒程度延ばすだけである。この時間では爆発を防ぐことはできなかった。シリコン・オイルは高価である。
【0008】
国際公開A−97/12379号に、可燃性の冷却流動体を満たしたタンクを備えた変圧器の爆発及び火災を防止するための方法が記載されており、この方法では、圧力センサを使って変圧器の電気絶縁の破壊を検知し、バルブを使ってタンクに包含される冷却流動体の減圧をし、タンク底部にある高圧不活性ガスを注入し前記流動体をかき立てて酸素が変圧器タンクに入り込むのを防止する。この方法は十分なもので変圧器タンクが爆発するのを防止する。
【0009】
国際公開A−00/57438号は、変圧器爆発防止装置用の急速に開口する破裂エレメントを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、簡単な構造の部品を使い、極めて急速にタンクを減圧し、変圧器、負荷時タップ切替え装置、及びブッシングの全体性を保つ可能性をさらに向上させる、改良された装置を提供することである。
【0011】
可燃性の冷却流動体で満たされたタンクを備える変圧器の爆発を防止するための装置は、タンクの放出口に配置されたタンク減圧のための圧力除去エレメントと、圧力除去エレメントの下流に配置された貯留容器と、該貯留容器の排出口に取り付けられた少なくとも一つの手動操作バルブとを含み、貯留容器は密封され、圧力除去エレメントを通過した流動体を回収する。かくして、流動体が、安全性、公害の面から又は他の理由により望ましくない場所に拡散するのを防止する。これは、流動体が、液体とガスとの混合物となることがあり、発火及び爆発のための条件を満たすのに十分な酸素がある場合に着火する危険があるからである。さらに、この流動体の特定の成分は、特に閉ざされた雰囲気では、人体及び/又は環境に有害なことが判明している。
【0012】
有利には、貯留容器の放出口に自動的圧力除去エレメントを取り付ける。該圧力除去エレメントには、貯留容器の爆発を防止するため、圧力が閾値を超えた場合に開く能力のあるバルブを含めることができる。このときのバルブによる放出は、該バルブの作動閾値より低い圧力に戻すのに必要な量に限られる。圧力除去エレメントの下流に追加のパイプを配置することができる。追加パイプは、流動体を最も適切な場所に導くためのものである。この追加パイプには冷却手段を備えることができる。こうして流動体を逃がす前にその温度を下げ、発火の危険を低減することができる。貯留容器に、例えば、ガス膨張バルブなどの形で冷却手段を備えることができる。
【0013】
有利には、火炎防止エレメントを追加パイプに備えることができる。この火炎防止エレメントを酸素がパイプに入るのを防止する流動体逆止めバルブの形にすることができる。また、火炎防止エレメントには、火炎が存在すると該バルブを遮断する能力のある部分を含めることができる。また、圧力除去エレメントには、ソレノイド・バルブを含め、燃焼の存在下では該ソレノイド・バルブを閉じるように命令する能力を備えた、外部の制御ユニット又は該バルブに隣接する温度検知器に制御させことができる。
【0014】
貯留容器には冷却手段を備えることができる。
【0015】
一つの実施形態において、該装置は貯留容器につながれた真空ポンプを含む。こうして、貯留容器を周辺の大気及び変圧器の通常行き渡った圧力よりも大幅に低い圧力にすることができ、これによって変圧器タンクの減圧が容易になり、同タンク中に存在する酸素の量が低減される。
【0016】
一つの実施形態において、該装置は、ガスポンプ及び補助貯留容器を含む。ガスポンプは、貯留容器と補助貯留容器との間に配置され、例えばポンプ送りと同時に窒素をフラッシングしながら、可燃性及び/又は毒性のガスを貯留容器から補助貯留容器に搬送し、その後該補助容器を貯留容器及びガスポンプから分離することができる。ガスポンプには、コンプレッサを含めることができ、補助貯留容器には圧力囲壁を含めることができる。こうして可燃性の毒性ガスを縮小された容積中に収納することができる。
【0017】
有利には、該装置は、圧力除去エレメントと貯留容器との間に配置された減圧チャンバを含む。該減圧チャンバは非常に低い損失水頭を示し、圧力除去エレメントのすぐ下流に配置して変圧器タンクの急速な減圧を可能にすることができる。貯留容器は、減圧チャンバから、変圧器タンクと減圧チャンバとの間の距離よりもずっと大きな距離を離して置くことができる。この減圧チャンバは、パイプの直径よりもずっと大きな直径を持つ配管の一部の形をとることができる。減圧チャンバを、貯留容器に対し設計されたよりも大きな高圧力と機械的負荷とに耐えるように有利に設計することができる。
【0018】
一つの実施形態において、圧力除去エレメントは、有孔剛体ディスクと不透過性膜とを含む。また、圧力除去エレメントには、スロット割りディスクを含め、該ディスクを流動体の流れの方向に半球形にすることができる。スロット割りディスクには、ほぼ放射状になったスロット割りによって相互に分離された複数のローブを含めることができる。ローブはディスクの環状部分に接続され、止めヅメを使い相互に重なり合って、変圧器タンクの内部圧力よりも大きな外部圧力に耐えることができる。有孔剛体ディスクには、該ディスクの中心近くに配置された複数のスルーホールを設け、そこから放射状にスロットを伸ばすことができる。不透過性膜をポリ四フッ化エチレン・ベースの薄層で構成することができる。
【0019】
スロット割りディスクには軸方向に推力がかかっている間、相互に重なることのできる複数の部分を設けることができる。
【0020】
一つの実施形態において、圧力除去エレメントは、不透過膜を保護するためのディスクをさらに含み、該保護ディスクは事前カットされた薄いシートを含む。該保護ディスクを不透過膜よりも大きな厚さを持つポリ四フッ化エチレン・シートで作製することができる。事前カット・シートの形状を円形の一部の形状とすることができる。有孔剛体ディスクには、相互に区別された放射状の複数のスロットを設けることができる。
【0021】
有利には、該装置は、複数の変圧器に接続するよう意図された複数の圧力除去エレメントを含む。こうして、単一の貯留容器が複数の変圧器の爆発防止に対処することができ、各変圧器は少なくとも一つの圧力除去エレメントに関連付けられている。
【0022】
該装置には、圧力除去エレメントに内蔵された破裂検知手段を含め、これにより、所定の圧力除去閾値に対するタンク圧力の検知を行うことができる。破裂検知手段には、圧力除去エレメントと同時に破断するよう意図された電気配線を含めることができる。該電気配線を圧力除去エレメントの、望ましくは流動体に対して反対側に接合することができる。該電気配線を保護フィルムでカバーすることができる。
【0023】
該装置には、少なくとも一つの変圧器の複数の油入りコンデンサに連結するよう意図された複数の圧力除去エレメントを含めることができる。
【0024】
可燃性の冷却流動体で満たされたタンクを備えた変圧器の爆発を防止する方法は、タンクを圧力除去エレメントで減圧する工程と、圧力除去エレメントを通過した流動体を密封された貯留容器で回収する工程と、少なくとも一つの手動バルブでガスを抜く工程とを含む。
【0025】
該爆発防止装置は、メイン・タンクと、負荷時タップ切替え装置又は切り替え装置群のタンクと、電気ブッシングのタンクに対するもので、この後者のタンクは「オイル・ボックス」とも言われる。電気ブッシングの役割は、出力導体を介して変圧器の巻線が接続された高圧及び低圧の電力線から、変圧器のメイン・タンクを分離することである。各出力導体は、特定量の絶縁流動体を包含するオイル・ボックスに囲まれている。ブッシング及び/又はオイル・ボックスの中の絶縁流動体は、変圧器のものとは異なる。変圧器タンクにつながれ、故障が検知されたときに手動又は自動で作動するよう意図された、窒素注入手段を備えることができる。窒素の注入は、可燃性のガスの変圧器タンクから貯留容器への、必要な場合には補助貯留容器への排出を促進する。
【0026】
該爆発防止装置には、変圧器の電力キュービクルの作動を検知する手段と、変圧器のセンサ手段から送信される信号を受信して、制御信号を送信することのできる制御ユニットとを備えることができる。
【0027】
可燃性及び/又は有毒な流動体が該装置の外部に漏れ出す可能性が大幅に低減され、しかして、こういったガスが発火する危険及び近辺にいる作業者が中毒する危険が軽減されることになる。
【0028】
該爆発防止装置は、閉ざされた場所、例えばトンネル、鉱山、又は市街地の地下などに所在する変圧器に対し特に適している。
【0029】
まったく限定はされない例を使い、添付の図面に示したいくつかの実施形態の詳細な説明を検討することによって、本発明は十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】火災防止装置の概略図である。
【図2】図1の詳細図である。
【図3】いくつかの変圧器に関連付けられた火災防止装置の概略図である。
【図4】図1の改良型を示す。
【図5】図1の改良型を示す。
【図6】破裂エレメントの断面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】図6に対応する上面図である。
【図9】図6に対応する下面図である。
【図10】垂直の減圧チャンバを備えた火災防止装置の概略図である。
【図11】図10に対応する全体図である。
【図12】図1の改良型を示す。
【図13】図1の改良型を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図に示されるように、変圧器1は、脚4を使って地面3に設置されたタンク2を含み、絶縁体6によって囲まれた電力線5から電気エネルギーを供給される。タンク2は本体2a及び蓋2bを含む。
【0032】
タンク2は例えば絶縁オイルのような冷却流動体7で満たされている。タンク2中の冷却流動体7の一定なレベルを確実にするため、変圧器1は、パイプ9でタンク2とつながれたレベル・タンク(conservator)8を備えている。
【0033】
パイプ9は、流動体7の速い移動を検知すると直ちにパイプ9を遮断する自動逆止めバルブ10を備えている。かくして、タンク2の減圧の過程でパイプ9中の圧力が低下し流動体7が急に流れ出したとき、自動逆止めバルブ10の遮断処置によってすばやく流れが止められる。かくして、レベル・タンク8の中にある流動体7の排出が防止される。
【0034】
また、タンク2は一本以上の火災検知ケーブル11を備えている。提示された実施形態では、火災検知ケーブル11はタンク2の上部に取り付けられ、蓋2bの上に設置されたブロック12によって支持されている。ケーブル11は数センチメーターの距離で蓋2bから隔てられている。ケーブル11には、低融点の合成膜で分離された2本の電線を含め、膜が溶融するとこの2本の電線が接触するようにできる。ケーブル11を、タンク2のふちの近くに長方形の経路で配置することができる。
【0035】
タンク2には、冷却流動体からの蒸気の存在を検知するため、タンク2の高い箇所通常パイプ9上に取り付けられる、ブッフホルツ(Buchholz)とも呼ばれるセンサを含めることができる。電気絶縁の破壊は、タンク2中の流動体7からの蒸気の放出を引き起こす。蒸気センサを使ってある程度の遅れで電気絶縁の破壊を検知することができる。
【0036】
変圧器1は、図示されていないが電力キュービクルを装備しており、これはブレーカなどの電力遮断手段を含み、作動センサ類を備えている。
【0037】
該防止装置は、本体2aの高い箇所に配置されたタンク2の放出口に取り付けられたバルブ13と、その破損を利用して、変圧器の電気絶縁の破壊に起因する圧力の変化を遅滞なく検知するための破裂エレメント15と、その一つはバルブ13と破裂エレメント15との間に配置されている2つの振動吸収弾性スリーブ14とを含む。また、該防止装置は、破裂エレメント15の下流に取り付けられ破裂エレメントよりも大きな直径を持つ減圧チャンバ16と、破裂エレメント15の破損後にタンク2からの流動体を回収するよう意図されさらにガス部分から液体部分を分離するよう意図された貯留容器18によって支持された、排液パイプ17とを含む。パイプ17は減圧チャンバ16と貯留容器18との間に取り付けられる。もう一つの弾性スリーブ14が減圧チャンバ16とパイプ17との間に取り付けられる。
【0038】
貯留容器18には冷却用フィン18aを備えることができる。貯留容器18はオイルから発生したガスを逃がすための導管19を備えている。導管19を、一時的に移動容器につないで貯留容器18からの排出を行うことができる。こうして、タンク2は即時に減圧され、その後オイルの一部が貯留容器18の中に排出される。破裂エレメント15を1バールより低い、例えば0.6バールから1.6バールの間で、望ましくは0.8バールから1.4バールの間の所定の圧力で開口するように設計することができる。
【0039】
バルブ20は導管19に配置され、貯留容器18及びタンク2の中のガスとオイルの燃焼を発生させかねない空気中の酸素が入り込むのを防ぎ、ガス又は液体の制御されない流出を防止する。バルブ20を手動又は手動制御による電動式にすることができる。バルブ20は、貯留容器18中に存在するガスを抜くとき、又はガスのパージを行うときを除き、常時閉じられて貯留容器の密閉性を保持する。
【0040】
タンク2は、タンク2の底部にある窒素などの不活性ガスを注入することによって流動体7を冷却する手段を含む。不活性ガスは、圧力容器に格納され、該容器は、バルブと、膨張バルブ又は減圧バルブと、ガスをタンク2に搬送するホース21とを備える。該圧力容器は、キャビネット22の中に収納される。
【0041】
ケーブル11と、破裂エレメント15と、蒸気センサと、作動センサと、バルブ13と、阻止バルブ20とは、該装置の作動をモニタするよう意図された制御ユニット23に連結されている。制御ユニット23は、各種のセンサからの信号を受信し、特にバルブ20に対する制御信号を送信する能力のある情報処理手段を備えている。
【0042】
通常の運転では、バルブ13は開かれ、破裂エレメント15は無傷すなわち閉じている。バルブ20も閉じている。保全作業のため、変圧器1をオフにしてバルブ13を閉じることができる。弾性スリーブ14は変圧器1が作動時、及び短絡した際に発生する変圧器1の振動を吸収し振動が他の構成要素、特に破裂エレメント15に伝わるのを防止する。減圧チャンバ16は、非常に低い損失水頭によって、破裂エレメント15が破損したときに急激な圧力低下を可能にする。
【0043】
変圧器1の電気的故障の後、破裂エレメント15が破損すると、タンク2内の圧力は低下する。ガス及び/又は液体のジェットが破裂エレメント15を通過して減圧チャンバ16の中に流れ出し、次に貯留容器18へのパイプ17に流入する。破裂エレメント15の破損の後の数ミリ秒における減圧チャンバ16の役割が特に重要であることが分かっている。
【0044】
減圧の後、例えば窒素などの不活性ガスをタンク2の底部に注入し、タンク2中に残存しやすい可燃性ガスを追い出し、変圧器の熱くなった部分を冷却してガスの発生を止めることができる。不活性ガスの注入を、破裂エレメント15の破損の後数分から数時間作動させ、望ましくは、ガスと液体とを適切に分離するのに十分な鎮静時間をとる。さらに貯留容器18とその内容が冷却するのを待つことができよう。前記の可燃性ガスは貯留容器18に排出される。移動容器を導管19につないでバルブ20を開き、貯留容器18の中にある流動体を受けることができる。不活性ガスを使って貯留容器18をパージすることができる。その後、破裂エレメント15を交換することができる。安全のため、不活性ガス用の容器は、約45分の期間不活性ガスを注入できるように設計され、この期間は、オイルをかき立ててオイル及び熱くなった部分を冷却し、これによりオイルの分解によるガスの発生を止めるのに効果的であることが分かっている。
【0045】
変圧器1に、該変圧器1とそれが連結されている電力ネットワークとの間のインタフェースの役割を果たす一つ以上の負荷時タップ切替え装置25を備え、ネットワークに供給される電流が変動しても一定の電圧を提供することができる。負荷時タップ切替え装置25は、排液パイプ26によって排出用に意図されたパイプ17につながれている。これは、負荷時タップ切替え装置25も同様に可燃性冷却流動体によって冷却されているからである。その高い機械的強度の故に、負荷時タップ切替え装置の爆発は非常に激しいものとなり、燃えている冷却用流動体のジェットの噴出を伴う可能性がある。パイプ26は、短絡とそれによる負荷時タップ切替え装置25内部の過剰圧力とが生じた場合に、破裂できる圧力除去エレメント27を備えている。こうして、負荷時タップ切替え装置25のタンクの爆発が防止される。
【0046】
本発明によって、このように、非常に迅速に絶縁破壊を検知し、同時にもたらされる結果を限定するための処置をとる変圧器爆発防止装置が提供される。結果として、変圧器、負荷時タップ切替え装置、及びブッシングが助かり、絶縁不良に関連する損害が最小限に抑えられる。
【0047】
図2に示すように、減圧チャンバ16は、タンク2の本体2aに固定されたブラケットによって支持された4つのダンパー28の上に置かれている。これにより、一方で通常の運転時には、変圧器1からの振動と減圧チャンバ16との間で、他方で絶縁破壊の際には、変圧器の変形と該チャンバとの間で機械的な分離が図られている。
【0048】
図3に示された実施形態において、いくつかの隣り合った変圧器1が貯留容器18につながれている。言い換えれば、いくつかの異なる変圧器に対するいくつかの防止装置が一つの貯留容器18を共有することができる。これは、特に利用可能なスペースが限定された閉じられた領域で特に有利なのは明らかである。
【0049】
図4に示された実施形態において、該防止装置は、パイプで貯留容器18につながれた真空ポンプ30をさらに含む。貯留容器18には、例えば窒素ガス膨張などによる冷却システム18bを備えることができる。該防止装置を運転するときは、真空ポンプ30を作動し貯留容器18内に不完全真空を生成した後停止する。破裂エレメント15が破れた後、貯留容器18に収納可能なタンク2からのガスの質量は最大等圧において増加する。従って減圧を容易にすることができる。貯留容器の容積を低減し、これによりスペースの利得を得ることができる。
【0050】
図5に示された実施形態において、該防止装置は、パイプ17又は貯留容器18に連結され、圧力に耐える瓶32の中に排気するガスポンプ31をさらに含む。破裂エレメント15が破損した後、ガス類が冷却するのに十分な時間流れてから、ガスポンプ31を作動させ貯留容器18の中に存在するガスを排出する。かくして貯留容器18の中のガスは除去され、このガスは不活性ガスと可燃性ガスとの混合となろう。ガスポンプ31を停止させた後、瓶32を容易に取り外し離れたところに移送できる。この実施形態は特に鉱山又はトンネルに据え付けられた変圧器に適している。
【0051】
図6〜9に示すように、破裂エレメント15は凸状のドーム型円形で、タンク2の排出口の、図示されていない開口部に、2つの円板形のフランジ33、34で固定して取り付けるよう意図されている。圧力除去エレメント15は、例えばステンレス鋼、アルミニウム、又はアルミニウム合金製などの薄い金属シート状の保持部分35を含む。保持部分35の厚さを0.05mmから0.25mmの間にすることができる。
【0052】
保持部分35は、いくつかの部分に分かれた放射状の溝36を有する。放射状溝36は、保持部分35の厚みの中への凹みとして形成され、保持部分35がその中心部から裂けて、破片が生じことなく破裂が起こるようになっており、これにより、圧力除去エレメント15の破片が切り離され、圧力除去エレメント15を通過する流動体に流されて下流に配置されたパイプを損傷するリスクが発生するのを防止する。
【0053】
保持部分35には、溝36ごとに中心部近くに配置された非常に小さな直径のスルーホール37が設けられている。別の言い方をすれば、いくつかのホール37が六角形に配置されている。これらホール37は強度の弱い、裂け目発生の箇所を形成し、破裂が保持部分35の中央から開始されることを確実にする。溝36ごとに少なくとも一つのホール37を形成することによって各溝36が同時に分離されるのを確実にし、可能最大の通過路断面を生成する。変形型として、溝36の数を6以外にする及び/又は溝36ごとにいくつかのホール37を形成することも考えられる。不透過性コーティング50でホール37をふさぐことができる。
【0054】
圧力除去エレメント15の破裂圧力は、特に、ホール37の直径と位置、溝36の深さ、及び保持部分35を形成する材料の厚さと組成により決まる。望ましくは、溝36を保持部分35の全厚に亘って形成する。保持部分35の残りの部分は一定の厚さとすることができる。
【0055】
隣り合う2つの溝36は三角形39を形成し、破裂時にはホール37の間の材料が裂けて隣の三角形と分離され、折り曲げられて下流の方向に変形することになる。三角形39は裂けることなく折れ曲がり、これら三角形39が切り離され、下流のパイプを損傷したり下流のパイプの流れを妨げたりして、損失水頭を増大させ、上流側の減圧プロセスを減速させる可能性を防止する。また、溝36の数は、保持エレメント15の直径にも左右される。
【0056】
フランジ33の下流に配置されたフランジ34は、それを通して開けられた半径方向の穴を有し、この穴の中には保護チューブ41が配置される。破裂検知素子は、保持部分35の下流側面に固定され、ループ状に配置された電気配線42を含む。電気配線42は保護チューブ41中に及び接続ユニット43にまで伸びている。電気配線42は、保持エレメント15のほぼ全直径に亘って伸びており、配線の一部42aは、一つの溝36と平行に該溝36の片側に配置され、配線の他の部分42bは、同じ溝36の他の側に該溝36と平行に半径方向に配置されている。この2本の配線部分42a、42bの間の距離は小さい。この距離を、2つのホール37を隔てる最大距離よりも小さくして、配線42にホール37の間を通過させることができる。
【0057】
電気配線42は、これを腐食から保護し、保持部分35の下流側に接着すること両方の役割を果たす保護フィルムでカバーされる。また、このフィルムの組成は破裂エレメント15の破裂圧力を変化させないものを選択するようにする。このフィルムを脆化ポリアミドとすることができる。破裂エレメントの破損は必然的に配線42の切断につながる。この断線は、配線42を通って流れる電流の中断、もしくは配線42の両端の間の電圧差異により非常に簡単で信頼できる方法によって検知することができる。
【0058】
また、破裂エレメント15は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、又はアルミニウム合金製など金属シートの形でフランジ33と34との間に配置された強化部分44を含む。強化部分44の厚さを0.2mmから1mmの間にするとよい。
【0059】
強化部分44は、例えば5つの、厚さ全体に亘って形成された放射状の溝45で分離された複数のローブを含む。ローブは外部環状縁部に結合されており、溝46が、隣りのローブの近辺を除き、円の弧の形で各ローブの全厚に亘って形成され、これによってローブは軸方向に変形することができるようになっている。ローブの一つが、中央部の多角形47に例えば溶接などで結合される。多角形47は、ローブ群の中央を閉じ、他のローブに固定されたフック48と重なり、多角形47が軸方向に各ローブと対応するフック48との間に入るようにして、ローブ群に対して軸方向に組み合わされる。多角形47をフック48の底面と接させて軸方向に抑えさせることができる。強化部分44は一つの方向には十分な軸方向強度を、他の方向、すなわち破裂エレメント15が破損する方向には非常に低い軸方向強度を有する。強化部分44は、変圧器1のタンク2中の圧力が、減圧チャンバ16の圧力よりも低い場合には特に有用であり、こういったことは、変圧器1の充てんのためタンク2中が不完全真空にされた場合に生ずることがある。
【0060】
保持部分35と強化部分44との間に、例えば、ポリ四フッ化エチレン・ベースの不透過性合成材料の薄膜50を含む不透過性部分49を配置し、保持部分35及び強化部分44によって薄膜50に穴を開けられることを防止するため、事前カットされた合成材料の厚膜51でその両面を囲うことができる。各々の厚膜51には、例えば、ポリ四フッ化エチレン・ベースの厚さ0.1mm〜0.3mm台の合成材料を含めることができる。厚膜51を約330°の円弧の形に事前カットすることができる。薄膜50の厚さを0.005mm〜0.1mm台とすることができよう。
【0061】
破裂エレメント15は、一方向からの圧力に対する十分な抵抗力と、他の方向からの圧力に対する調整された抵抗力と、優れた不透過性と、遅延のない破損とを備える。
【0062】
不透過性を強化するため、破裂エレメント15には、フランジ33と保持部分35との間に配置されたワッシャ52、及びフランジ34と強化部分44との間に配置されたワッシャ53を含めることができる。ワッシャ52及び53をポリ四フッ化エチレン・ベースの材料で作製することができる。
【0063】
さらに、該防止装置に流動体を冷却するための手段を備えることができる。該冷却手段には、パイプ17上及び/又は貯留容器18上のフィン、貯留容器18用の空調設備、及び/又は、例えば窒素など膨張によって貯留容器18を冷却することのできる液化ガスの貯蔵を含めることができる。
【0064】
図10及び11の実施形態において、該防止装置は、例えばタンク2の蓋2bの上に、ほぼ垂直に配置されている。減圧チャンバ16は、終端が閉じられ、破裂エレメント15に接続され、破裂エレメント15よりも大きな直径を有し、破裂エレメント15の下流に取り付けられた垂直軸型シリンダを含む。また、減圧チャンバ16は回収容器も形成している。パイプ19は減圧チャンバ16のシリンダの上部域に連結されている。パイプ54は、液体の除去のため、減圧チャンバ16のシリンダの下部域に結合されている。この実施形態は特にコンパクトで、防止装置の大部分がタンク2の上に配置されている。
【0065】
一つの有利な改良型において、パイプ54はレベル・タンク8につながれている(図10の点線参照)。レベル・タンク8のまだ利用可能な容積、すなわち液体が占めていない部分は、減圧チャンバ16からの液体の受け入れに使うことができる。追加の破裂エレメント61を、パイプ54の減圧チャンバ16とレベル・タンク8との間に配置することができる。この追加の破裂エレメント61は、減圧チャンバ16の上流の破裂エレメント15よりも高い破裂圧力に設定することができる。
【0066】
作動時には、パイプ54中の損失水頭によって、破裂エレメント15の破裂の間に自動逆止めバルブ10が閉じる時間が得られる。レベル・タンク8は、減圧チャンバ16から液体を回収し、自動逆止めバルブ10は閉じられている。
【0067】
図11に示すように、減圧チャンバ16は、パイプ26の延長として配置されたパイプ17の中に開かれている。パイプ17はレベル・タンク8に入り込んでいる。
【0068】
図12の実施形態において、該防止装置は、本体2aの高さの約半分から3分の2の間の位置の本体2aの点に配置されたタンク2の排出口に取り付けられたバルブ13を含む。パイプ17は減圧チャンバ16の後で上向きに曲がり、変圧器1の巻線のレベルよりも高いレベルに配置された最高部分17aを含む。一例として、最高部分17aの底部を、巻線の上端より上約20mmに位置させることができよう。これにより、部分的排出及び減圧状態においても、巻線が浸漬状態にとどまり絶縁を保持することが可能になる。
【0069】
パイプ9には、自動逆止めバルブ10とタンク2の蓋2bとの間に配置された、ガス検知器55が備えられている。パイプ56は、パイプ9とパイプ17の最高部分17aとを結んでいる。パイプ56は、ガス検知器55と自動逆止めバルブ10との間でパイプ9につながれている。パイプ56には、保全作業期間を除いて開状態に保たれている手動バルブ57と、制御ユニット23に制御され通常運転の間は閉位置にあり、エレメント15による圧力開放の後は開状態になってパイプ9の中に存在する可燃性ガスを取り出すソレノイド・バルブ58とが配置されている。
【0070】
さらに、絶縁オイルを備えたブッシング6にも、パイプ17につながれたパイプ60中に開放する圧力除去エレメント59が備えられている。圧力除去エレメント59を、圧力除去エレメント15と同様な構造とし、サイズを調整することができる。このように、タンク、ブッシング、及び負荷時タップ切替え装置に各々圧力除去エレメントを備え、これらの完全性を保つ可能性を高めることができよう。
【0071】
図13の実施形態において、該防止装置は、本体2aの低い箇所に配置されたタンク2の排出口に取り付けられたバルブ13を含む。パイプ17は、前の実施形態と同様、減圧チャンバ16の後ろで上向きに曲がり、最高部分17aを含む。
【0072】
こういった保護システムは、経済的で、隣の設備に対し独立しており、サイズがコンパクトで保守作業が要らない。
【0073】
また、制御ユニットを、火災検知器、蒸気センサ(ブッフホルツ)などの二次的なセンサ、及び爆発防止装置が役立たない場合の消化プロセスを作動するための、電力キュービクルの作動センサに接続することもできる。
【0074】
かくして、本発明により、変圧器の構成要素の変更がほとんど必要なく、絶縁破壊を非常に早く検出し、同時に、閉じられた場所での場合も含め、発生事故を限定する処置を取る変圧器爆発防止装置を提供する。これは油入りコンデンサの爆発とこれによる火災を防止し、短絡に関連した、変圧器、負荷時タップ切替え装置及びブッシングへの損害を軽減する効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性の冷却流動体で満たされたタンク(2)を備えた変圧器(1)の爆発を防止するための装置であって、該装置が、前記タンクの排出口に配置され前記タンクを減圧する圧力除去エレメント(15)と、前記圧力除去エレメントの下流に配置された貯留容器(18)と、前記貯留容器の前記排出口に取り付けられた少なくとも一つの手動バルブ(20)とを含み、前記圧力除去エレメントを通過する流動体を回収するように前記貯留容器は密封されている前記装置において、該装置が、更に
前記圧力除去エレメントと前記貯留容器との間に配置された減圧チャンバ、
前記減圧チャンバと前記貯留容器との間に配置されたパイプ(17)、
パイプ(9)によって前記タンクに接続されたレベル・タンク、及び
前記パイプ(9)と前記パイプ(17)の最高部分を接続する接続するパイプ(56)を含むことを特徴とする、爆発を防止するための前記装置。
【請求項2】
前記パイプ(56)に配置された手動バルブ及びソレノイド・バルブを具備する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ソレノイド・バルブは、制御ユニットによって制御され、通常運転の間は閉位置にあり、前記圧力除去エレメントによる圧力開放の後は開位置になる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
流動体の速い移動が検出されると直ちにパイプを遮断する自動逆止めバルブ、及び前記自動逆止めバルブと前記タンクの蓋との間に設けられたガス検出器が、前記パイプ(17)に設けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記パイプ(56)が、前記ガス検出器と前記自動逆止めバルブとの間に前記パイプ(17)が接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記パイプ(9)が、前記変成器の捲線のレベルよりも高いレベルに配置された最高部分を含む、請求項1乃至5の何れか1項記載に記載の装置。
【請求項7】
前記減圧チャンバが、実質的に水平な軸を有している、請求項1乃至6の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記減圧チャンバが、実質的に水平な軸を有している、請求項1乃至7の何れか1項に記載の装置。
【請求項9】
液体の除去のため、前記減圧チャンバの下部域に接続されているパイプ(54)を含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載の装置。
【請求項10】
ガスを逃がすための導管を備えている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
一つ以上の負荷時タップ切替え装置(25)は、排液パイプによってパイプ(17)につながれている、請求項1乃至10の何れか1項記載の装置。
【請求項12】
前記圧力除去エレメントが、制御ボックスに接続されている請求項1乃至10の何れか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−74728(P2012−74728A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265834(P2011−265834)
【出願日】平成23年12月5日(2011.12.5)
【分割の表示】特願2008−518898(P2008−518898)の分割
【原出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(508002977)
【Fターム(参考)】