説明

変圧器

【課題】金属粉などの固形物がコンサベータを介して変圧器タンク内へ侵入するのを確実に防止できる新規な変圧器の提供。
【解決手段】変圧器用絶縁油F1が充填された変圧器タンク10内に変圧器本体20と負荷時タップ切換器30の切換開閉器収容室31とを収容すると共に、前記収容室31内を開閉器用絶縁油F2で満たし、当該収容室31内と前記変圧器タンク10内とを前記変圧器タンク10上に位置するコンサベータ40にそれぞれの連結管50,70で連結し、前記収容室31側の連結管70に、当該連結管70を流通する開閉器用絶縁油F2中に含まれる固形物を分離除去するフィルター80を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷時タップ切換器を備えた変圧器に係り、さらに共用のコンサベータを備えた変圧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷時タップ切換器を備えた変圧器は、変圧器タンク内の絶縁油と負荷時タップ切換器の切換開閉器収容室内の絶縁油が互いに混ざり合わないように2つのコンサベータが独立して設けられている。しかし、一つの変圧器タンクに2つのコンサベータを設けると、部品点数や組立工数が多くなってコストが高くなったり、差圧によりシール機能を損なうおそれがある。
【0003】
そのため、例えば以下の特許文献1では、2つのコンサベータを1つに纏めて共用することでこれらの不都合を解消している。また、負荷時タップ切換器の切換開閉器に、収容室内の絶縁油と隔絶した真空バルブを備えることでアークによって汚損された絶縁油が共用のコンサベータを介して変圧器タンク内に流出するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−79920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1のようにコンサベータを共用した場合、収容室内の固形物が絶縁油と共にコンサベータを介して変圧器タンク内へ侵入する可能性が生ずる。そして、変圧器タンク内へ侵入した固形物がタップ切換時にコンタクトから発生した金属粉の場合には、その絶縁耐性を低下させたり、放電を引き起こして変圧器に大きな損傷を与えたりして、変圧器の機能を著しく損なうことが考えられる。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、金属粉などの固形物がコンサベータを介して変圧器タンク内へ侵入するのを確実に防止できる新規な変圧器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために第1の発明は、変圧器用絶縁油が充填された変圧器タンク内に変圧器本体と負荷時タップ切換器の切換開閉器収容室とを収容すると共に、前記収容室内を開閉器用絶縁油で満たし、当該収容室と前記変圧器タンクとを前記変圧器タンク上に位置するコンサベータにそれぞれの連結管で連結した変圧器であって、前記収容室側の連結管に、当該連結管を流通する絶縁油中に含まれる固形物を分離除去するフィルターを備えたことを特徴とする変圧器である。
【0008】
このような構成によれば、切換開閉器収容室内の開閉器用絶縁油が連結管に設けられたフィルターを通過してコンサベータ側に流れる際に、そのフィルターによって金属粉などの固形物が分離除去(捕集)される。これによって、開閉器用絶縁油中に含まれる金属粉などの固形物がコンサベータを介してそのまま変圧器タンク内へ侵入するのを確実に防止できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記フィルターを前記連結管から着脱自在に構成すると共に、当該連結管に、前記フィルターを迂回(バイパス)するバイパス管を設け、当該バイパス管の途中および前記フィルターの前後にそれぞれ開閉弁を備えたことを特徴とする変圧器である。
【0010】
このような構成によれば、バイパス管の開閉弁を開くと共にフィルター前後の開閉弁を閉じることでフィルターを迂回(バイパス)して開閉器用絶縁油を流通させることができる。これによって、変圧器タンク内および切換開閉器収容室内の絶縁油の容積膨張収縮を吸収するといったコンサベータの機能を停止させることなく、フィルターの点検作業や交換作業などを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の変圧器によれば、以下に示すような効果を発揮する。
(1)切換開閉器収容室内の絶縁油がフィルターを通過してコンサベータ側に流れる際に金属粉などの固形物を分離除去できるため、金属粉などの固形物がコンサベータを介してそのまま変圧器タンク内へ侵入するのを確実に防止できる。
(2)フィルターを迂回して絶縁油を流すことができるため、コンサベータの機能を停止させることなく、フィルターの点検作業や交換作業などを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る変圧器100の実施の一形態を示す断面図である。
【図2】図1中A部を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る変圧器100の実施の一形態を示したものである。図において、符号10はバスタブ状をした変圧器タンクであり、この変圧器タンク10内には、巻き線と鉄心を含む変圧器本体20と、負荷時タップ切換器30とが収容されている。そして、この変圧器タンク10内にはその上部開口部まで変圧器用絶縁油F1が充填されていると共に、その上部開口部は蓋体11で塞がれて外気と遮断されている。
【0014】
また、この変圧器タンク10の上方には、図示しない支持機構によって支持された円筒状のコンサベータ40が設けられており、その内部は第一の連結管50によって変圧器タンク10内と連通している。さらに、このコンサベータ40の上部には逆U字形をした呼吸管60の一端が接続されていると共に、その呼吸管60の他端(下端)には、除湿機能を有する呼吸器61が設けられている。
【0015】
このコンサベータ40内には、変圧器タンク10内の絶縁油F1の一部がその熱膨張・収縮などに伴って連結管60を介して流入・流出するようになっており、これによってタンク10内の圧力が大きく変動するのを防止している。なお、このコンサベータ40内の油面は図示しない可撓性のシートで覆われており、コンサベータ40内の絶縁油がその内部で空気(酸素)と直接接触するのを防止している。
【0016】
負荷時タップ切換器30は、変圧器タンク10の蓋体11の下面側に取り付けられた切換開閉器収容室31内に切換開閉器32を収容すると共に、その内部に開閉器用絶縁油F2が充填された構造となっている。そして、この負荷時タップ切換器30の切換開閉器収容室31内は第二の連結管70によってコンサベータ40内と連通している。
【0017】
なお、この負荷時タップ切換器30と変圧器本体20は図示しない多数の配線によって変圧器タンク10内で電気的に接続されて負荷変動に対処すべき変圧器本体20のタップの自動切り替えを行っているが、収容室31内の絶縁油F2は変圧器タンク10内の絶縁油F1とは隔絶されていて変圧器タンク10内では相互に混じり合わないようになっている。また、この負荷時タップ切換器30の切換開閉器32には、収容室31内の絶縁油F2と隔絶した真空バルブ(図示せず)が備えられており、アークなどによる絶縁油F2の汚損を防止している。
【0018】
この第二の連結管70には、フィルター80と、このフィルター80をバイパスするバイパス管90が設けられている。このフィルター80は、図2に示すように、絶縁油F2の出入口81,81を備えた筒状のケーシング82内に、天然パルプや合繊繊維などからなるフィルター本体82aを充填した構成をしている。そして、このケーシング82の出入口81,81にはそれぞれフランジ83,83が設けられており、これら各フランジ83,83が第二の連結管70の途中のフランジ71,71に対して図示しないシールを介して連結分離することでフィルター80が第二の連結管70に対して脱着自在に取り付けられている。
【0019】
また、このフィルター80の前後、すなわちこのフィルター80が脱着される第二の連結管70には、このフィルター80を挟むように一対の開閉弁84,84が設けられており、その部分を流通する絶縁油F2の流れを制御している。なお、通常運転時には、これらの開閉弁84,84は常時開いた状態となっている。
【0020】
一方、バイパス管90は、このフィルター80を迂回(バイパス)するようにこの第二の連結管70の途中に設けられており、その途中にはその部分を流通する絶縁油F2の流れを制御する開閉弁91が設けられている。なお、通常運転時には、この開閉弁91は常時閉じた状態となっている。
【0021】
さらに、この第二の連結管70と第一の連結管50には、それぞれ流量計51、71が設けられており、それぞれの連結管70、50内の絶縁油の流れの有無を監視している。
【0022】
次に、このような構成をした本発明の変圧器100の作用を説明する。通常運転時において、変圧器タンク10内の絶縁油F1は、運転時の温度変化の範囲で熱膨張・収縮を繰り返している。そして、変圧器タンク10内の絶縁油F1が高温となり、膨張してその容積が増大したときは、変圧器タンク10内の絶縁油F1が第一の連結管50を通過してコンサベータ40に流入することによってその容積増大を吸収する。反対に、変圧器タンク10内の絶縁油F1の温度が下がって容積が収縮減少したときはコンサベータ40内の絶縁油F1、F2が第一の連結管50を通過して変圧器タンク10に戻ることによってその容積減少を吸収する。
【0023】
一方、負荷時タップ切換器30においても、切換開閉器収容室31内の絶縁油F2が熱膨張・収縮によって容積が変動したときは、第2の連結管70内を介してコンサベータ40内との間で絶縁油F2が流れることによってその容積変化を吸収することができる。
【0024】
この負荷時タップ切換器30は、電圧を調整するために電圧の変動に応じて変圧器本体20に負荷を掛けた状態でタップ切換えを行う。このとき、切換開閉器32では、接点となる金属片同士が摺動を繰り返すことになるため、その摺動により節点が摩耗して金属粉が発生する。発生した金属粉の一部は、そのまま切換開閉器収容室31内の絶縁油F2と共に切換開閉器収容室31から第2の連結管70に流れ出るが、この連結管70を通過してコンサベータ40に流れ込む前に、このフィルター80を通過することによって絶縁油F2中から分離・除去されることになる。なお、このフィルター80では、切換開閉器32の金属粉のみならず、他の固形物が混じった場合にはこれらも同時に分離・除去されることは勿論である。
【0025】
これによって、開閉器用絶縁油F2中に含まれる金属粉などの固形物がコンサベータ40内の絶縁油と混ざり合ってそのまま変圧器タンク10内へ侵入するのを確実に防止できる。この結果、例えば切換開閉器32で発生した金属粉が変圧器本体2内の巻き線や鉄心の外表面に付着して電界集中による部分放電が起こり、絶縁が脅かされて絶縁耐圧が低下するなどといった事態を未然に回避できる。なお、前述したように通常運転時には、バイパス管90の開閉弁91は常時閉じた状態となっているため、金属粉を含んだ絶縁油F2がこのバイパス管90を通過してコンサベータ40内に流れ込むようなことはない。
【0026】
一方、このフィルター80が目詰まりなどを起こして絶縁油F2の流れが悪くなった場合には、フィルター80を点検して清掃するか、あるいは新たなものに交換する必要がある。この場合には、バイパス管90側の開閉弁91を開くと共にフィルター80前後の開閉弁84,84を閉じれば、絶縁油F2をフィルター80を迂回するように流通させることができる。
【0027】
これによって、絶縁油F2の容積膨張・収縮を吸収するといったコンサベータ40の機能を一切停止させることなく、フィルター80の点検作業や交換作業などを容易に行うことができる。
【0028】
そして、フィルター80の点検作業や交換作業などが終了したならば、バイパス管90側の開閉弁91を閉じると共にフィルター80前後の開閉弁84,84を開けば、前述したようなフィルター80による絶縁油F2の濾過機能を再開することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…変圧器
10…変圧器タンク
20…変圧器本体
30…負荷時タップ切換器
31…切換開閉器収容室
40…コンサベータ
50…第一の連結管
60…呼吸管
70…第二の連結管
80…フィルター
90…バイパス管
84,84,91…開閉弁
F1…変圧器用絶縁油
F2…開閉器用絶縁油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器用絶縁油が充填された変圧器タンク内に変圧器本体と負荷時タップ切換器の切換開閉器収容室とを収容すると共に、前記収容室内を開閉器用絶縁油で満たし、当該収容室と前記変圧器タンクとを前記変圧器タンク上に位置するコンサベータにそれぞれの連結管で連結した変圧器であって、
前記収容室側の連結管に、当該連結管を流通する絶縁油中に含まれる固形物を分離除去するフィルターを備えたことを特徴とする変圧器。
【請求項2】
前記フィルターを前記連結管から着脱自在に構成すると共に、当該連結管に、前記フィルターを迂回するバイパス管を設け、当該バイパス管の途中および前記フィルターの前後にそれぞれ開閉弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の変圧器。

【図1】
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【図2】
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