説明

変圧器

【課題】一次巻線又は二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングするように構成してあり、配線インダクタンスが小さく、放熱設計の為の部品配置の自由度が大きい変圧器の提供。
【解決手段】一次巻線3又は二次巻線4が導電板で形成され、一次巻線3に印加される直流電圧をスイッチングするように構成してある変圧器。導電板で形成された一次巻線3又は二次巻線4の2つの引出し部5,6を、絶縁体(図示せず)を挟んで重ねてある構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次巻線又は二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングするように構成してある変圧器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変圧比が大きく、大電流を扱う変圧器では、巻数の少ない側の巻線を、銅板で構成し、流せる電流量を増大させる構造が取られることがある。
図4は、直流電圧をスイッチングすることにより変圧する変圧器の回路例を示すブロック図である。この変圧器18では、一次巻線3の巻始め側端子が電源11のプラス端子に接続され、一次巻線3の他側端子及び電源11のマイナス端子間に、スイッチング素子12が接続されている。
【0003】
二次巻線4の巻始め側端子が、平滑コイル16の一方の端子、及びダイオード17のカソードに接続されている。平滑コイル16の他方の端子は、平滑コンデンサ14及び負荷15の各プラス端子に接続されている。
二次巻線4の他側端子がダイオード13のカソードに接続され、ダイオード13のアノードは、ダイオード17のアノードと、平滑コンデンサ14及び負荷15の各マイナス端子とに接続されている。
【0004】
このような構成の変圧器18では、スイッチング素子12がオン/オフを繰り返すことにより、図7Aの波形図に示すように、スイッチング素子12の両端電圧V1が、0/V0(電源11の出力電圧)を繰り返し、両端電圧V1が0のときに、図7Bに示すように、一次巻線3に一次電流I1が流れる。一次巻線3の電流I1が通流/停止を繰り返すことにより、図7Dに示すように、ダイオード13の両端電圧V2が発生する。両端電圧V2の変化に応じて、二次巻線4の二次電流I2(図7C)、及びダイオード17の通流電流I3(図7E)が交互に流れる。
【0005】
特許文献1には、平板状をなす環状体の一部に開口部を形成して端部を設けると共に、これら端部側に接続部を設けた一次側と二次側の導電板を形成したインダクタンス素子が開示されている。これら一次側と二次側の導電板の少なくとも一方を複数用いると共に、それら一次側と二次側の導電板を絶縁状態で重ね合わせ、複数用いた側の導電板は、上の導電板の一方の接続部を下の導電板の他方の接続部に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−284130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された、一次側及び二次側の巻線を導電板で形成したインダクタンス素子では、巻線の取出し位置が互いに離れ、配線部分が長くなる為、配線インダクタンスを低減し難いという問題がある。また、巻線を導電板で形成し、図4に示すように、一次巻線に印加する直流電圧をスイッチングする変圧器では、前述したような配線インダクタンスが存在する為、スイッチング素子12がオフになったとき(図7A)、図7Dに示すように、二次電圧V2に有害なサージが発生するという問題がある。
【0008】
このような有害なサージの発生を防止するには、配線インダクタンスを小さくする為に、変圧器と整流素子(ダイオード13)とを接近させて配置し、配線部分を短くする必要がある。しかし、それぞれの耐熱温度が異なる為、接近させて配置すると、耐熱温度が低い側(変圧器である場合が多い)に合わせて放熱設計しなければならず、部品配置の自由度が制限されるという問題もある。
【0009】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、一次巻線又は二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングするように構成してあり、配線インダクタンスが小さく、放熱設計の為の部品配置の自由度が大きい変圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る変圧器は、一次巻線又は二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングするように構成してある変圧器において、前記導電板で形成された一次巻線又は二次巻線の2つの引出し部を、絶縁体を挟んで重ねてあることを特徴とする。
【0011】
この変圧器では、一次巻線又は二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングする。導電板で形成された一次巻線又は二次巻線の2つの引出し部を、絶縁体を挟んで重ねてある。
【0012】
第2発明に係る変圧器は、二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングし、前記二次巻線に整流素子が直列に接続するように構成してある変圧器において、前記二次巻線の2つの引出し部を、第1絶縁体を挟んで重ねてあり、前記整流素子が接続された側の前記引出し部に第2絶縁体を挟んで近接するヒートシンクを備えることを特徴とする。
【0013】
この変圧器では、二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングし、二次巻線に整流素子が直列に接続する。二次巻線の2つの引出し部を、第1絶縁体を挟んで重ねてあり、ヒートシンクが、整流素子が接続された側の引出し部に第2絶縁体を挟んで近接する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る変圧器によれば、一次巻線又は二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングするように構成してあり、配線インダクタンスが小さく、放熱設計の為の部品配置の自由度が大きい変圧器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る変圧器の実施の形態の要部外観を分解して示す分解斜視図である。
【図2】二次巻線の作成方法を説明する為の説明図である。
【図3】第2コアの円柱部を二次巻線が巻装し、ボビンがその二次巻線を嵌入した状態を示す部分断面図である。
【図4】変圧器を使用して、直流電圧をスイッチングすることにより変圧するように構成した回路例を示すブロック図である。
【図5】二次巻線の2つの端部に通流する入力電流及び出力電流それぞれによる磁束を説明する為の説明図である。
【図6】本発明に係る変圧器の実施の形態の、第2コアの円柱部を二次巻線が巻装し、ボビンがその二次巻線を嵌入した状態を示す部分断面図である。
【図7】直流電圧をスイッチングすることにより変圧する変圧器の動作例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る変圧器の実施の形態1の要部外観を分解して示す分解斜視図である。
この変圧器18は、長方形の底板と、底板の2つの短辺から対向するように立設された2つの側板と、底板の中央部から突設され、底板の短辺の長さを直径とする円柱部とからなり、側板及び円柱部が同じ高さに揃えられた第2コア7、及び第2コア7の底板と略同じ大きさの天板からなる第1コア1を備えている。
【0017】
変圧器18は、また、第2コア7の円柱部を巻装するように導電板(例えば銅板)が円筒状に形成された二次巻線4と、二次巻線4を嵌入し、一次巻線3が巻回されたボビン2と備えている。
二次巻線4は、図2Aに示すように、C字形状の導電板の対向する端部(引出し部)5,6に接続用のネジ穴8,9を設け、端部5,6を破線部で図の向こう側へ直角に折り曲げた状態で、図2Bに示すように、導電板を図の手前側へ円筒状に丸めて作製してある。端部5,6は、導電板を円筒状に丸めた状態で、互いに重なり合うようにしてある。
【0018】
変圧器18は、第2コア7の円柱部を二次巻線4が巻装し、一次巻線3が巻回されたボビン2がその二次巻線4を嵌入した状態で、第1コア(天板)1が、第2コア7の2つの側板、第2コア7の円柱部及びボビン2を覆って作製してある。
図3は、第2コア7の円柱部を二次巻線4が巻装し、一次巻線3が巻回されたボビン2がその二次巻線4を嵌入した状態を示す部分断面図であり、二次巻線4の円筒状に丸めて重なり合った部分、及び端部5,6の互いに重なり合った部分には、絶縁シート(絶縁体)10を挟んで二次巻線4の部分同士で短絡しないようにしてある。
【0019】
図4は、変圧器18を使用して、直流電圧をスイッチングすることにより変圧するように構成した回路例を示すブロック図である。
この変圧器18では、一次巻線3の巻始め側端子が電源11のプラス端子に接続され、一次巻線3の他側端子及び電源11のマイナス端子間に、スイッチング素子12が接続されている。
【0020】
二次巻線4の巻始め側端子が、平滑コイル16の一方の端子、及びダイオード17のカソードに接続されている。平滑コイル16の他方の端子は、平滑コンデンサ14及び負荷15の各プラス端子に接続されている。
二次巻線4の他側端子がダイオード13のカソードに接続され、ダイオード13のアノードは、ダイオード17のアノードと、平滑コンデンサ14及び負荷15の各マイナス端子とに接続されている。
【0021】
このような構成の変圧器18では、スイッチング素子12がオン/オフを繰り返すことにより、図7Aの波形図に示すように、スイッチング素子12の両端電圧V1が、0/V0(電源11の出力電圧)を繰り返し、両端電圧V1が0のときに、図7Bに示すように、一次巻線3に一次電流I1が流れる。一次巻線3の電流I1が通流/停止を繰り返すことにより、図7Dに示すように、ダイオード13の両端電圧V2が発生する。両端電圧V2の変化に応じて、二次巻線4の二次電流I2(図7C)、及びダイオード17の通流電流I3(図7E)が交互に流れる。
【0022】
但し、本発明に係る変圧器18では、二次巻線4の端部5,6を、絶縁シート10を挟んで互いに重なり合うようにしてあるので、二次巻線4に二次電流I2が通流する(図7C)際に、図5に示すように、例えば、端部6に流れる入力電流i1と端部5に流れる出力電流i2とは通流方向が互いに逆になる。
これにより、端部6に流れる入力電流i1、及び端部5に流れる出力電流i2それぞれによる磁束が相殺し合い、配線によるインダクタンスが低減されるので、図7Dに示すような二次電圧V2の有害なサージの発生は防止又は低減される。
【0023】
(実施の形態2)
図6は、本発明に係る変圧器の実施の形態2の、第2コア7の円柱部を二次巻線4が巻装し、一次巻線3が巻回されたボビン2がその二次巻線4を嵌入した状態を示す部分断面図である。
この変圧器18aでは、ダイオード(整流素子)13(図4)が端部6に接続されており、ダイオード13が接続された端部6には、絶縁シート(第2絶縁体)19を挟んでヒートシンク20が近接している。
【0024】
このように、ダイオード13と接続される側の配線(端部6)をヒートシンク20に近接させることにより、ダイオード13で生じた熱が巻線3,4側に伝わること、又は巻線3,4で生じた熱がダイオード13に伝わることを防ぐことができる。その他の構成及び動作は、実施の形態1で説明した構成及び動作と同様であるので、説明を省略する。
【符号の説明】
【0025】
1 第1コア
2 ボビン
3 一次巻線
4 二次巻線
5,6 端部(引出し部)
7 第2コア
10 絶縁シート(絶縁体)
11 電源
12 スイッチング素子
13 ダイオード(整流素子)
18,18a 変圧器
19 絶縁シート(第2絶縁体)
20 ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線又は二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングするように構成してある変圧器において、
前記導電板で形成された一次巻線又は二次巻線の2つの引出し部を、絶縁体を挟んで重ねてあることを特徴とする変圧器。
【請求項2】
二次巻線が導電板で形成され、一次巻線に印加される直流電圧をスイッチングし、前記二次巻線に整流素子が直列に接続するように構成してある変圧器において、
前記二次巻線の2つの引出し部を、第1絶縁体を挟んで重ねてあり、前記整流素子が接続された側の前記引出し部に第2絶縁体を挟んで近接するヒートシンクを備えることを特徴とする変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90363(P2013−90363A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226023(P2011−226023)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】