説明

変型可能な防水隔壁を有する自動車のフロントフェンダー

本発明は自動車の変形可能なフロントフェンダーに関する。該自動車はシャシを具備し、該フェンダーは外壁部(12)と変形可能な防水隔壁部(24)とを含み、該外壁部(12)は内縁部(20)によって延長された上部縁(18)を有し、該変形可能な防水隔壁部(24)は、外壁部(12)に向かって湾曲的に延びながら内縁(20)とシャシ(22)とを連結し、フロントフェンダーが衝撃の影響を受けてシャシ(22)の方向に押圧されると、該変形可能な防水隔壁部(24)は、該外壁部(12)の方向に側方にそれながら、それ自体が折り畳まれるように構成される。本発明によれば、変形可能な防水隔壁部(24)は、フロントフェンダー(10)が押圧されると、フロントフェンダー(10)を側方に誘導するように外壁部(12)に向かってほぼ平行に屈曲した二つの側壁部(26、28)を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、変形可能な防水隔壁を有する自動車のフロントフェンダーに関する。
【0002】
フェンダーのようなものは、自動車のフロント部で緩衝を目的としてフロントバンパーとフロントガラスとの間に特に配置され、歩行者に対して衝撃があった場合にエネルギーを吸収することができ、歩行者の怪我を抑える。
【0003】
通常、自動車はシャシと該シャシに搭載された自動車の推力系統とを含み、該推力系統はボンネットで覆われる。前記フェンダーは、前記推力系統に沿うように前記ボンネットから延長され、前記シャシのフレームサイドメンバーで支持される。さらに、前記フェンダーは、衝撃があった場合にエネルギーを吸収するために外壁部と変形可能な防水隔壁部とを有し、前記外壁部は前記ボンネットを縁取るように取付けられた上縁部を有し、前記上縁部は前記ボンネットの下方に延びる内縁部によって延長される。
【0004】
前記変形可能な防水隔壁部は、前記外壁部と前記推力系統との間において前記外壁部に向かって湾曲的に延びながら前記内縁部と前記シャシとを連結し、特に車輪による水の巻き上げから前記推力系統を保護する。さらに、フロントフェンダーが衝突の影響を受けて前記シャシの方向に押圧されると、前記変形可能な防水隔壁部は前記外壁部に向かって側方にそれながらそれ自身が屈曲するように取付けられている。このように前記フェンダーによって吸収されるエネルギーは前記防水隔壁部を撓めるように伝達される。
【0005】
特に、特許文献1を参照することができ、当該文献にはフェンダーの変形を可能にするためにそのような装置が開示されている。
【特許文献1】DE10233474
【0006】
前記変形可能な防水隔壁を備えたこのようなフェンダーの課題の1つは、変形行程の軌道にある。実際、この軌道は車両が偶然歩行者に衝突する角度に依存するので制御されず、歩行者と同様に車両においてもその影響を予測することは難しい。
【0007】
従って、本発明は、フェンダーの軌道行程を適切に制御できる変形可能な防水隔壁部を提供することにより、提起された発明の課題を解決することを目的とする。
【0008】
この課題を解決するために、本発明は、自動車の変形可能なフロントフェンダーを提案する。自動車の車両は、シャシと該シャシに搭載される推力系統とを含み、該推力系統はボンネットで覆われ、前記フェンダーは、側方で前記推力系統に沿い、シャシ上で支持されるようにボンネットから延長され、前記フェンダーは、推力系統を隔離させるために、外壁部と変形可能な防水隔壁部とを備え、該外壁部は前記ボンネットを縁取るように上部縁を有し、該上部縁は前記ボンネットの下方に延びる内縁部によって延長され、前記変形可能な防水隔壁部は、前記外壁部と前記推力系統との間において、前記外壁部に向かって湾曲的に延びながら前記内縁部と前記シャシとを連結し、前記変形可能な防水隔壁部は、フロントフェンダーが衝撃の影響を受けて前記シャシの方向に押圧されると、前記外壁部の方向にそれながら折り畳まれるように構成される。つまり、本発明によれば、前記変形可能な防水隔壁部は前記外壁部の方向にほぼ平行に屈曲した2つの側壁部を有し、それにより、前記フェンダーが押圧されると、該フェンダーを側方へ誘導する。
【0009】
従って、本発明の一つの特徴は、ほぼ平行な二重壁の防水隔壁部の実施にあり、それにより、防水隔壁部においてフェンダーの外壁部及びシャシ対して軸回転しないようにする。このように、フロントフェンダーがシャシの方向に押圧されると、該フェンダーは、同時に平行に折り畳まれる側壁部によって定められた軌道に沿って並進するように誘導され、それにより、特に衝突箇所の露出を避けるために、フェンダーの各種要素の相対的な位置を予測できる。さらに、これによって損傷を受けそうな要素の位置を予測できる。
【0010】
有利には、前記側壁部は前記内縁部に連結された上方翼部と前記シャシに連結された下方翼部とをそれぞれ有し、前記側壁部は、上壁部及び下壁部によって互いに間隔を保ち、該上壁部は上方翼部を連結し、該下壁部は下方翼部を連結することにより、例えば、単一部品の筒状の防水隔壁部を形成する。このように、前記防水隔壁部を適用することにより、経済性が向上するだけでなく、フロントフェンダーが押圧されると、側壁部が折り畳まれる間に、上壁部は、ほぼ同様に方向づけられた状態の下壁部に近づく。側壁部はまずそれ自体がそれぞれ屈曲しており、下壁部及び上壁部に対して関節接続される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、特に有利には、前記上壁部及び下壁部は、互いにほぼ平行でほぼ同一幅を有し、これにより上壁部及び下壁部に平行な面に対して対称的な筒状の防水隔壁部を形成でき、防水隔壁部は前記上壁部及び下壁部の間において、以下でさらに詳述する側壁の凹部のほぼ中央部で側壁を区切るように延びる。従って、フロントフェンダーへの押圧によって、防水隔壁部は規則的に変形し、その結果、側面の理想的な誘導が生じる。
【0012】
さらに、好ましい本発明の一実施形態によれば、屈曲した前記側壁部のうち一方が、前記側壁部の他方の側壁部に対して前記外壁部と反対側に位置して推力系統の正面に延びる凹面を有しており、該凹面には、凹部の中央部から上壁部及び下壁部の間を平行に延び、側方にそれるように構成されたサポートリブを備える。このサポートリブは、例えば、ラジエーターグリルあるいは着脱可能な隔壁部のために支持部を形成でき、変形の際、そこから遠ざかりながら、サポートリブは、それ自体でラジエーターグリルあるいは着脱可能な隔壁部の移動を可能にする。
【0013】
優先的には、前記側壁部は、上壁部及び下壁部とともに二つ分の変形可能な平行四辺形を形成するようにV字型傾斜又は山形状の横断面を有し、歩行者による衝撃があると、ほぼ直線的な軌道に沿ってフェンダーの行程を正確に誘導することができる。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、参考としてだが非限定的に与えられる本発明の特定の実施形態に係る後述の詳細な説明を読むことによって明らかとなる。
【0015】
図1は、本発明に係る自動車のフロントフェンダー10の垂直横断面を示す。該フロントフェンダー10は自動車のボンネット14に向かって登る外壁12を有する。ボンネット14は推力系統16を保護する。外壁12はボンネット14に沿う上部縁18を有し、該上部縁18はボンネット14の下方にほぼ垂直方向に延びる折り返し内縁20が延長している。さらに、自動車は推力系統16を載置するシャシを備え、一部分22は図1に示されフレームサイドメンバーを形成する。
【0016】
さらに、防水隔壁24は、例えば金属材からなり、前記外壁12と前記推力系統16との間において前記フレームサイドメンバー22から前記上部縁18まで延び、地面からの不測的な飛散物から前記推力系統を保護する。防水隔壁24は、凹面27が推力系統16の正面に広がる第1側壁26と凸状表面30が外壁12の正面に広がる第二側壁28との、V字状に傾斜した二つの側壁を有する。第1側壁26は、接続用の上方自由翼部34が延長している第1上方翼部32と、接続用の第1下方自由翼部38が延長している第1下方翼部36とを有する。第1下方翼部36と第1上方翼部32は、例えば100度から170度の範囲の鈍角をなし、凹状中央部に相当する前記二つの翼部の第1接合部41において、凹面27から突出したサポートリブ42がほぼ二等分線に沿って水平に延びている。接続用の上方翼部34は、ほぼ垂直に直接内縁20に対して適用され、その位置で螺子止め手段40を介して締結され、一方、接続用の下側翼部38は、ほぼ水平にフレームサイドメンバーの部分22に支持され、推力系統16に向けて延びる。
【0017】
さらに、サポートリブ42はラジエーターグリル43の支持部を形成し、及び/または、図示しない着脱可能な隔壁を保持するように構成される。
【0018】
第2側壁28は、第1上方翼部32に平行な第2上方翼部44と、第1下方翼部36に平行な第2下方翼部46とを有し、これらの翼部は第二接合部47で接合される。前記2つの上方翼部44、32及び前記2つの下方翼部46、36は、互いに平行に延びる上壁部48及び下壁部50によってそれぞれの翼部間において連結され、下壁部50は、接続用の下方自由翼部38の延長部においてフレームサイドメンバーの一部分22に支持される。このように、防水隔壁24は、矩形の筒状ユニットで実施することができ、断面において上壁部48と下壁部50にそれぞれ対応して向かい合う二辺と、二つの側壁26、28にそれぞれ対応して向かい合う二辺であって、中央部で同方向に屈曲された二辺とを有する。
【0019】
従って、歩行者に衝撃があり、上方から下方への圧力Pがフェンダーの外壁部12に加わることになると、接続用の上方自由翼部34に応力がかかり、以下に記述する防水隔壁24の変形形態によって、フレームサイドメンバーの一部分22に向けて垂直方向に並進するよう誘導される。勿論、隔壁の厚みによって、特に折り目の角度について、防水隔壁24が変形する圧力Pの強度が決定される。
【0020】
この圧力Pに達すると、垂直方向の力Fが上壁部48と第1上方翼部32との間の接合部に加えられ、それにより上壁部48は上方から下方への垂直方向Dに下壁部50に向けて誘導される。従って、第1上方翼部32及び第1下方翼部36と、2つの第2翼部44、46とは、ほぼ同時かつ平行に、上壁部48が下壁部50に近づくにつれて、それぞれが互いに折り畳まれるようになる。さらに、二つの接合部41、47は、外壁12に向けて側方へ同時に導かれ、それによりサポートリブ42も同様に外壁21の方向にそれて、その結果、ラジエーターグリル43はサポートリブの届く範囲から外れる。
【0021】
従って、行程の終わりでは、フロントフェンダー10の軌道は垂直方向Dに従ってほぼ直線であり、同様に図2に示されるように、一方では2つの第1翼部32、36が互いにほぼ平行であり、下壁部50と上壁部48との間で折り畳まれ、フロントサイドメンバー22の高さで、サポートリブ42が前記2つの第1翼部間で平坦になっており、他方では2つの第2翼部44、46も同様に互いに折り畳まれる。
【0022】
従って、フロントフェンダー10の衝撃力は6つの異なる角度に対して互いにそれぞれ折り畳まれる異なる壁によって吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の状態にある本発明に係るフロントフェンダーの概略的な垂直断面図である。
【図2】第2の状態にある図1に示したフロントフェンダーの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の変形可能なフロントフェンダーであって、該車両はシャシと、該シャシに搭載された推力系統(16)とを含み、該推力系統はボンネット(14)によって覆われ、前記フェンダーは、側方で前記推力系統に沿って、前記シャシ(22)上で支持されるように前記ボンネットから延長され、前記フェンダーは、前記推力系統(16)を隔離するために、外壁部(12)と変形可能な防水隔壁部とを備え、前記外壁部(12)は前記ボンネット(14)を縁取るように上部縁(18)を有し、該上部縁は前記ボンネットの下方に延びる内縁部によって延長され、前記変形可能な防水隔壁部(24)は、該外壁部と前記推力系統(16)との間において、前記外壁部(12)に向かって湾曲的に延びながら前記内縁部(20)と前記シャシ(22)とを連結し、フロントフェンダーが衝撃の影響を受けて前記シャシ(22)の方向に押圧されると、前記変形可能な防水隔壁部(24)は、それ自体が前記外壁部(12)の方向に側方にそれて折り畳まれるように構成され、
前記防水隔壁部(24)は前記外壁部(12)の方向にほぼ平行に屈曲した二つの側壁部(26、28)を有し、フロントフェンダーが押圧されると、前記フロントフェンダー(10)を側方に誘導することを特徴とする変形可能なフロントフェンダー。
【請求項2】
前記側壁部(26、28)が、前記内縁部(20)に連結された上方翼部(32;44)と、前記シャシ(22)に連結された下方翼部(36;46)とをそれぞれ有し、前記側壁部(26、28)が上壁部(48)と下壁部(50)とによって互いに間隔を保ち、前記上壁部が上方翼部(32、44)を連結し、前記下壁部が下方翼部(36、46)を連結することを特徴とする請求項1に記載の変形可能なフロントフェンダー。
【請求項3】
前記上壁部(48)及び下壁部(50)が互いにほぼ平行でほぼ同一幅を有することを特徴とする請求項2に記載の変形可能なフロントフェンダー。
【請求項4】
前記屈曲した側壁部(26、28)のうち一方が、他方の前記側壁部に対して前記外壁部(12)と反対側に位置して、側方にそれるように構成されたサポートリブ(42)を備えた凹面(27)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の変形可能なフロントフェンダー。
【請求項5】
前記側壁部(26、28)がV字型横断面を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の変形可能なフロントフェンダー。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501111(P2009−501111A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520923(P2008−520923)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050678
【国際公開番号】WO2007/006996
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】