説明

変形性関節症に関連する組成物および方法

【課題】 本発明は、cDNAライブラリーおよびマイクロアレイを構築かつ使用することによる特定のヒト組織型における差次的な遺伝子発現のプロファイリングに関する。
【解決手段】 本発明は、胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症性および重症変形性関節症の発生段階および病期のいずれかに由来する軟骨細胞中で発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列を提供する。本発明はさらにまた、これらのポリヌクレオチド配列のあらゆる組み合わせを含むアレイおよび組成物に関する。本発明はさらにまた、本発明のアレイを使用して変形性関節症を診断する方法を提供する。本発明はさらにまた、本発明のポリヌクレオチド配列の発現レベルを変化させる、または軟骨細胞の同化レベルを変化させる治療薬を同定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、cDNAライブラリーおよびマイクロアレイを構築かつ使用することによる特定のヒト組織型における差次的な遺伝子発現のプロファイリングに関する。
【背景技術】
【0002】
変形性関節症(osteoarthritis; OA)は、骨の端部にあって関節の関節面を形成している関節軟骨が時の経過につれて次第に変性する慢性疾患である。患者を変形性関節症に罹患し易くさせると考えられる多数の要因があり、これには遺伝的感受性、肥満、事故あるいは運動による外傷、手術、薬物および身体への重度の負荷が含まれる。変形性関節症は、関節軟骨の損傷から始まる。関節にとって2つの最も一般的な傷害は、スポーツ関連性傷害および長期間にわたる「反復的な使用」による関節傷害である。変形性関節症に罹患することが最も多い関節は、膝関節、股関節および手指関節である。ほとんどの場合に、膝関節や股関節には非常に重要な体重負荷機能があるため、これらの関節における変形性関節症は手指の変形性関節症よりはるかに大きな能力障害を誘発する。軟骨変性が進行するにつれて、骨、筋肉、靱帯、半月板や滑膜を含む関節内およびその周囲における他の組織に続発性変化が発生する。軟骨組織の一次故障および他の組織への続発性損傷が及ぼす基本的な作用は、患者が疼痛、腫脹、虚弱および罹患した関節における機能的能力の消失を経験することにある。これらの症状は頻回に、生産性の損失および/または患者にとってのクオリティ・オブ・ライフの結果に関して重大な影響を及ぼす状態まで進行する。
【0003】
関節軟骨は、主として軟骨細胞、II型コラーゲン、プロテオグリカンおよび水から構成されている。関節軟骨には血液供給もしくは神経供給はなく、軟骨細胞はこの組織内に存在する唯一の細胞型である。軟骨細胞は、軟骨基質を形成するII型コラーゲンおよびプロテオグリカンの産生を担っている。この基質は、基質が水で飽和することを許容する物理化学的特性を有している。この構造的機能的関係の基本的な作用は、関節軟骨がきわめて優れた摩耗特性を有し、関節軟骨と関節面との間でほとんど摩擦を生じない動きを可能とすることである。変形性関節症がない場合、関節軟骨はしばしば生涯にわたって厳しい物理的条件下でさえ体重を負荷しても疼痛を生じることなく無制限で関節運動を可能にする。
【0004】
胎児の発生中には、関節軟骨は最初は間葉凝集体の帯間から発生する。間葉細胞は一塊に集まって基質タンパク質を合成する。この組織は基質の蓄積が細胞を分離したときに軟骨と認識され、細胞は球形の形状をしていて軟骨細胞と呼ばれている。軟骨の形成および成長中に、軟骨細胞は急速に増殖して大きな体積の基質を合成する。骨格が成熟する前に、軟骨細胞の代謝活性は最高レベルに達する。骨格が成熟に到達するにつれて、軟骨細胞の代謝活性および細胞分裂の速度は下降する。骨格成長の完了後には、ほとんどの軟骨細胞は分裂しないが、例えばコラーゲン、プロテオグリカンおよびその他の非コラーゲン性タンパク質のような基質タンパク質を合成し続ける(1、2)。
【0005】
すべての生きている組織と同様に、関節軟骨は、「古い」細胞と基質構成要素が取り除かれ(異化活性)、「新しい」細胞と分子が産生する(同化活性)再生プロセスを継続的に受け続ける。大多数の組織と比較して、関節軟骨における同化/異化回転率は低い。成熟軟骨の構造的完全性が長期的に維持されるかどうかは基質の合成と変性の適正な平衡にかかっている。軟骨細胞は、それらの環境からの化学的および機械的刺激へ応答することにより基質平衡を維持する。軟骨のホメオスタシスのためには、それらの刺激への適切かつ効果的な軟骨細胞の応答が不可欠である。不適正な同化活性または過度の異化活性のどちらかによるホメオスタシスの中断は、軟骨変性および変形性関節症を引き起こすことがある(3)。損傷して異化活性が増加している大多数の組織は、組織治癒を許容する同化応答を増加させることができる。残念なことに、軟骨細胞が軟骨基質の損傷または消失に応答してそれらの同化活性をアップレギュレートして、プロテオグリカンおよびII型コラーゲンの剛性を増加させることのできる能力はきわめて限られている。軟骨細胞のこの機能的制限は、変形性関節症を予防および治癒させることのできる療法の発達を妨害してきた根幹的問題である。さらに、早期の変形性関節症を検出するための確定的な診断テスト、および患者の治療への応答を効果的に監視する予後診断テストに対する必要がある。
【0006】
関節痛は、早期変形性関節症の最も一般的な徴候である。疼痛は数日間から数週間持続する一時的なもので、自然に軽減する傾向がある。関節の発赤および腫脹は一般的ではないが、変形性関節症が突然に再発すると関節に圧痛が発生する。
【0007】
「軽症」もしくは「早期変形性関節症」は診断するのが困難である。医師は主として、患者の既往歴および理学的検査に基づいて軽症変形性関節症の診断を下す。X線検査では、関節軟骨の基礎にある早期変化は明らかにならない。早期変形性関節症の診断確定に使用できる認知された生化学的マーカーは存在しない。
【0008】
中症変形性関節症の診断はX線検査での変化により確定できる。正常関節のX線検査では、良好に維持された対称性の関節窩が明らかになる。変形性関節症の患者のX線検査で所見される変化には、新しい骨の形成(骨棘)、関節窩狭小化および硬化症(骨の肥厚)が含まれる。この段階での「中症変形性関節症」の診断確定に使用できる認知された生化学的マーカーは存在しない。
【0009】
重症変形性関節症の関節の臨床検査では、圧痛、関節の変形および運動性消失が明らかになる。検査中の受動的関節運動は、関節が動くにつれて摩擦音もしくは骨と骨との摩擦を誘発することがある。X線検査での変化はしばしば重大である。関節窩が完全に破壊されていることがあり、関節の不均衡を所見できる。新しい骨の形成(骨棘)が顕著である。この場合も同様に、「重症変形性関節症」の診断確定に使用できる認知された生化学的マーカーは存在しない。
【0010】
「変形性関節症」は最も一般的な慢性関節疾患である。この疾患は、進行性変性および最終的には軟骨消失を特徴とする。現在、変形性関節症の経過を変化させる効果的治療法に対する必要がある。変形性関節症疾患プロセスの予防、修正または治癒が今後前進するかどうかは、少なくとも一部には軟骨における同化および異化プロセスの基礎にある分子機序の完全な理解にかかっている。細胞機能は実質的に細胞が発現する遺伝子によって決定されるので、相違する発生段階および病期の関節軟骨中で発現した遺伝子を解明すれば、軟骨の形成、傷害、疾患および修復に関係する分子および機序に関する新しい洞察を確実に提供できるであろう。
【0011】
正常と推定される、および重症変形性関節症のヒト軟骨組織由来のcDNAライブラリーは構築されている(Kumarら、第46回年次総会、OrthopaedicRes.Soc.,Abstract,p.1031)。しかし、この研究は、重症度(軽症、中症、顕著および重症)の相違する変形性関節症のヒト軟骨から得られた軟骨細胞遺伝子発現の弁別を正しく取り扱っていない。さらに、「正常な軟骨」サンプルは、死後24時間を過ぎた死亡ドナーから入手された。したがって、下記に記載するヒヒを使用した試験によって証明されるように、サンプル採取した関節への潅流停止後にはRNAの急速な変性が発生するため、このcDNAライブラリーは正確には正常軟骨細胞遺伝子発現を反映していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ヒト胎児関節軟骨、並びに正常個体、軽症、中症、顕著および重症変形性関節症患者の軟骨についての遺伝子発現の1種以上のプロフィールと、軟骨の傷害、修復および疾患進行において決定的な役割を果たす遺伝子を同定するための方法とに関する。成体軟骨細胞中では同化活性が本質的に低いことを前提とすると、胎児軟骨細胞では発現するが成体軟骨細胞では発現しない重要な複製遺伝子および/または同化遺伝子の同定には、成体の軟骨傷害および変形性関節症のための新規の疾患緩和(diseasemodifying)療法を開発するための重要な意味がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、軟骨細胞に豊富に存在するポリヌクレオチド配列または軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列を単離することである。
【0014】
ある実施態様では、図6に同定された遺伝子1〜5807に対応する図6Aに同定された配列および図13に同定された配列からなる群から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列が単離される。
【0015】
別の実施態様では、図6の遺伝子1〜5807に対応する図6Aに同定された配列および図13に同定された配列からなる群から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含むベクターが構築される。
【0016】
また別の実施態様では、前記ベクターを含む宿主細胞が構築される。
【0017】
本発明のまた別の態様は、1つ以上の軟骨細胞に豊富に含まれるポリヌクレオチド配列または軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0018】
本発明のまた別の態様は、(a)胎児、(b)正常、(c)軽症変形性関節症、(d)中症変形性関節症、(e)顕著変形性関節症または(f)重症変形性関節症の軟骨サンプルから単離された1つ以上の軟骨細胞に豊富に含まれるポリヌクレオチド配列もしくは軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0019】
本発明のまた別の実施態様は、本明細書に開示されるように、胎児cDNAライブラリーから単離された図6Bに同定された配列群から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0020】
本発明のまた別の実施態様は、本明細書に開示されるように、正常cDNAライブラリーから単離された図6Cに同定された配列群から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0021】
本発明のまた別の実施態様は、本明細書に開示されるように、軽症変形性関節症性軟骨細胞ライブラリーから単離された図6Dに同定された配列群から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0022】
本発明のまた別の実施態様は、本明細書に開示されるように、重症変形性関節症性軟骨細胞ライブラリーから単離された図6Eに同定された配列群から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0023】
本発明のまた別の実施態様は、図6B、6C、6Dおよび6Eに同定された配列群から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0024】
本発明のまた別の実施態様は、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つが正常個体由来の軟骨と比較して軽症変形性関節症であると診断された患者から得られた軟骨中で差次的に発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物であって、正常個体から単離された軟骨が死後14時間未満に入手された軟骨組織から単離されることを特徴とする組成物を提供する。
【0025】
本発明のまた別の実施態様は、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つが正常個体由来の軟骨と比較して重症変形性関節症であると診断された患者から得られた軟骨中で差次的に発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物であって、正常個体から単離された軟骨が死後14時間未満に入手された軟骨組織から単離されることを特徴とする組成物を提供する。
【0026】
本発明のまた別の実施態様は、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つが正常個体由来の軟骨と比較して中症変形性関節症であると診断された患者から得られた軟骨中で差次的に発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物であって、正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満に入手された軟骨組織から単離されることを特徴とする組成物を提供する。
【0027】
本発明のまた別の実施態様は、前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つが正常個体由来の軟骨と比較して顕著変形性関節症であると診断された患者から得られた軟骨中で差次的に発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物であって、正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満に入手された軟骨から単離されることを特徴とする組成物を提供する。
【0028】
本発明のまた別の実施態様は、1つ以上のポリヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチド配列の少なくとも1つは、(a)胎児、または(b)軽症変形性関節症の患者、(c)中症変形性関節症の患者、(d)顕著変形性関節症の患者、(e)重症変形性関節症の患者のうちのいずれか2つ以上の入手源から単離された軟骨中、または(f)正常個体から入手された軟骨組織から単離された軟骨中で差次的に発現することを特徴とする組成物を提供する。
【0029】
本発明のまた別の実施態様は、図9に同定された1つ以上のポリヌクレオチド配列および/または図9に開示された遺伝子に対応する図6Aに同定された配列を含む組成物を提供する。
【0030】
本発明のまた別の実施態様は、図11に同定された1つ以上のポリヌクレオチド配列および/または図11に開示された遺伝子に対応する図6Aに同定されたポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0031】
本発明のまた別の実施態様は、図15および図16に開示された遺伝子に対応する図6Aに同定された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0032】
本発明のまた別の実施態様は、図6に開示された遺伝子に対応する図6Aに同定された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0033】
本発明のまた別の実施態様は、図13に同定された配列から選択された1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む組成物を提供する。
【0034】
本発明のまた別の態様は、複数の軟骨細胞にもしくは軟骨細胞特異的核酸メンバーの配列を含む核酸アレイに関する。
【0035】
ある実施態様では、本発明は少なくとも1つのメンバーが正常個体から得られた軟骨と比較して軽症変形性関節症と診断された患者由来の軟骨中で差次的に発現する複数の核酸メンバーおよび1つの固体基質を含むアレイであって、各核酸メンバーはそのアレイ上で固有の位置を有し、固体基質と安定して結合しているアレイを提供する。
【0036】
また別の実施態様では、本発明は少なくとも1つのメンバーが正常個体から得られた軟骨と比較して重症変形性関節症と診断された患者から得られた軟骨中において差次的に発現する複数の核酸メンバーおよび固体基質を含むアレイであって、各核酸メンバーはそのアレイ上で固有の位置を有し、固体基質と安定して結合しているアレイを提供する。
【0037】
また別の実施態様では、本発明は少なくとも1つのメンバーが正常個体から得られた軟骨と比較して中症変形性関節症と診断された患者から得られた軟骨中において差次的に発現する複数の核酸メンバーおよび固体基質を含むアレイであって、各核酸メンバーはそのアレイ上で固有の位置を有し、固体基質と安定して結合しているアレイを提供する。
【0038】
また別の実施態様では、本発明は少なくとも1つのメンバーが正常個体から得られた軟骨と比較して顕著変形性関節症と診断された患者から得られた軟骨中で差次的に発現する複数の核酸メンバーおよび固体基質を含むアレイであって、各核酸メンバーはそのアレイ上で固有の位置を有し、固体基質と安定して結合しているアレイを提供する。
【0039】
また別の実施態様では、本発明は少なくとも1つのメンバーが正常個体から得られた軟骨と比較して胎児から単離された軟骨中で差次的に発現する複数の核酸メンバーおよび固体基質を含むアレイであって、各核酸メンバーはそのアレイ上で固有の位置を有し、固体基質と安定して結合しているアレイを提供する。
【0040】
ある好ましい実施態様では、軟骨は生きている正常個体から単離される。
【0041】
また別の好ましい実施態様では、軟骨は死後14時間未満の正常個体から単離される。
【0042】
また別の実施態様では、本発明は複数の核酸メンバーおよび1つの固体基質を含み、少なくとも1つのメンバーは、(a)胎児、(b)軽症変形性関節症の患者、(c)中症変形性関節症の患者、(d)顕著変形性関節症の患者、(e)重症変形性関節症の患者のうちのいずれか2つ以上の入手源から単離された軟骨中、または(f)正常個体から単離された軟骨中で差次的に発現し、各核酸メンバーはそのアレイ上で固有の位置を有していて固体基質と安定して結合していることを特徴とするアレイを提供する。
【0043】
ある実施態様では、本発明によるアレイ上の各核酸メンバーは少なくとも50ヌクレオチドである。
【0044】
また別の実施態様では、本発明によるアレイは10〜20,000個の位置を含む。
【0045】
さらにまた別の実施態様では、本発明によるアレイはさらにネガティブコントロール配列およびポジティブコントロール配列並びにRNA品質制御配列を含む。コントロール配列は、ハウスキーピング遺伝子のcDNA配列、植物遺伝子配列(および/またはそれらのcDNA配列)、細菌配列、PCR産物、ベクター配列、およびその組み合わせからなる群から選択することができる。
【0046】
本発明のまた別の態様は、変形性関節症性を診断する新規方法に関する。
【0047】
ある実施態様では、患者における軽症変形性関節症を診断する方法は、RNAに対応する核酸サンプル(例えば、RNAもしくはcDNAまたはRNAもしくはcDNAの増幅産物を含むサンプル)を固体基質および複数の核酸メンバーを含む1つのアレイへハイブリダイズさせるステップを含むが、このとき少なくとも1つのメンバーは正常個体から単離された軟骨と比較して軽症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現し、各核酸メンバーは固有の位置を有していて固体基質と安定して結合している。正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満の軟骨組織から単離される。核酸サンプルの1つ以上の核酸メンバーへのハイブリダイゼーションは、軽症変形性関節症を標示する。
【0048】
また別の実施態様では、患者における中症変形性関節症を診断する方法は、RNAに対応する核酸サンプルを固体基質および複数の核酸メンバーを含む1つのアレイへハイブリダイズさせるステップを含むが、このとき少なくとも1つのメンバーは正常個体から単離された軟骨と比較して中症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現し、各核酸メンバーは固有の位置を有していて固体基質と安定して結合している。正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満の軟骨組織から単離される。核酸サンプルの1つ以上の核酸メンバーへのハイブリダイゼーションは、中症変形性関節症を標示する。
【0049】
さらにまた別の実施態様では、患者における顕著変形性関節症を診断する方法は、RNAに対応する核酸サンプルを固体基質および複数の核酸メンバーを含む1つのアレイへハイブリダイズさせるステップを含むが、このとき少なくとも1つのメンバーは正常個体から単離された軟骨と比較して顕著変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現し、各核酸メンバーは固有の位置を有していて固体基質と安定して結合している。上記のアレイと同様に、正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満の軟骨組織から単離される。核酸サンプルの1つ以上の核酸メンバーへのハイブリダイゼーションは、顕著変形性関節症を標示する。
【0050】
また別の実施態様では、患者における重症変形性関節症を診断する方法は、RNAに対応する核酸サンプルを固体基質および複数の核酸メンバーを含む1つのアレイへハイブリダイズさせるステップを含むが、このとき少なくとも1つのメンバーは正常個体から単離された軟骨と比較して重症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現し、各核酸メンバーは固有の位置を有していて固体基質と安定して結合している。上記のアレイと同様に、正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満の軟骨組織から単離される。核酸サンプルの1つ以上の核酸メンバーへのハイブリダイゼーションは、重症変形性関節症を標示する。
【0051】
ある好ましい実施態様では、診断方法は変形性関節症の特定病期(例、軽症、中症、顕著または重症)に患者から軟骨サンプルを単離するステップを含む。
【0052】
また別の好ましい実施態様では、診断方法はさらに軟骨サンプルからRNAサンプルを調製するステップを含む。
【0053】
また別の好ましい実施態様では、診断方法はさらに血液からRNAサンプルを調製するステップを含む。
【0054】
また別の好ましい実施態様では、診断方法はさらに滑液からRNAサンプルを調製するステップを含む。
【0055】
本発明のまた別の態様は、胎児または軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症からなる群から選択された軟骨細胞疾患の患者に由来する軟骨細胞中で差次的に発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列の発現を増加または減少させる薬剤を同定する方法に関する。この方法は、候補薬剤と伴に死後14時間未満の正常個体から入手された軟骨サンプルから単離された軟骨細胞をインキュベートするステップを含む。RNAが軟骨細胞から単離され、プローブは胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症の発生段階または病期のうちの2つ以上から得られた軟骨細胞中で差次的に発現するポリヌクレオチド配列に対応するRNAにハイブリダイズされる。胎児、軽症変形性関節症の患者、中症変形性関節症の患者、顕著変形性関節症の患者および重症変形性関節症の患者のいずれか1体以上から得られたRNAへのプローブのハイブリダイゼーションに比較して正常個体から得られたRNAへのプローブの差次的ハイブリダイゼーションは、プローブへ特異的にハイブリダイズするRNAを差次的に発現した軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列として同定し、候補薬剤を軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列の発現を増加または減少させる薬剤として同定する。
【0056】
この方法はさらにまた軟骨細胞から入手されたRNAに対応するcDNAを評価することによって実施することもできる。
【0057】
この方法はさらにまた、血液から入手されたRNAに対応するcDNAを評価することによって実施することもできる。
【0058】
この方法はさらにまた、滑液から入手されたRNAに対応するcDNAを評価することによって実施することもできる。
【0059】
本発明はさらにまた、軟骨細胞cDNAライブラリーを作製する方法に関する。
【0060】
ある実施態様では、軟骨細胞cDNAライブラリーを作製する方法は、a)正常個体由来の軟骨サンプルから軟骨細胞を単離するステップであって、このとき軟骨サンプルが死後14時間未満に単離されるステップと、b)軟骨細胞から全RNAを単離するステップと、c)全RNA中でmRNAからcDNAを合成するステップと、d)cDNAをベクター内へ連結させるステップとを含む。
【0061】
また別の実施態様では、軟骨細胞cDNAライブラリーを作製する方法は、a)正常個体から得られた軟骨サンプルから軟骨細胞を単離するステップであって、このとき正常個体が生きているステップと、b)軟骨細胞から全RNAを単離するステップと、c)全RNA中でmRNAからcDNAを合成するステップと、d)cDNAをベクター内へ連結させるステップとを含む。
【0062】
また別の実施態様では、軟骨細胞cDNAライブラリーを作製する方法は、a)胎児由来の軟骨サンプルから軟骨細胞を単離するステップと、b)軟骨細胞から全RNAを単離するステップと、c)全RNA中でmRNAからcDNAを合成するステップと、d)cDNAをベクター内へ連結させるステップとを含む。
【0063】
また別の実施態様では、軟骨細胞cDNAライブラリーを作製する方法は、a)軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症または重症変形性関節症と診断された患者由来の軟骨サンプルから軟骨細胞を単離するステップと、b)軟骨細胞から全RNAを単離するステップと、c)全RNA中でmRNAからcDNAを合成するステップと、d)cDNAをベクター内へ連結させるステップとを含む。
【0064】
本発明はさらにまた、複数の予め選択された固有領域を備える表面を含む固体支持体上で図14の配列からなる群から選択された核酸配列を含む複数の核酸メンバーを含む1つのアレイを作製する方法に関する。この方法は、各核酸メンバーを予め選択された固有領域上に個別にスポットするステップと、各核酸メンバーを予め選択された領域で固体支持体と安定して結合するステップとを含む。
【0065】
ある好ましい実施態様では、少なくとも1つの核酸メンバーは正常個体から単離された軟骨と比較して軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症、または重症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現するが、このとき正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満に軟骨組織から単離される。
【0066】
また別の好ましい実施態様では、少なくとも1つの核酸メンバーは胎児から単離された軟骨と比較して軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症、または重症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現する。
【0067】
また別の好ましい実施態様では、少なくとも1つの核酸メンバーは正常個体から単離された軟骨と比較して胎児から単離された軟骨中で差次的に発現するが、このとき正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満に軟骨組織から単離される。
【0068】
また別の好ましい実施態様では、少なくとも1つの核酸メンバーは次の入手源:(a)胎児、(b)正常個体、このとき正常個体から単離された軟骨は死後14時間未満の軟骨組織から単離される、および(c)軽症変形性関節症の患者、(d)中症変形性関節症の患者、(e)顕著変形性関節症の患者、または(f)重症変形性関節症の患者のうちのいずれか2つ以上から単離された軟骨中で差次的に発現する。
【0069】
本発明はさらにまた、1種以上の組成物および/または上記のアレイを含むキットおよびそのためのパッケージング手段を提供する。
【0070】
本発明の目的および特徴は、下記の詳細な説明および添付の図面を参照することにより明確に理解できよう。
【発明の効果】
【0071】
本発明は、相違する発生段階および病期にある軟骨細胞中の差次的遺伝子発現を同定するためにヒト軟骨細胞中で発現した遺伝子配列をプロファイリングする方法に関する。差次的に発現した遺伝子およびそれらの産物(例、mRNAおよびタンパク質)は、変形性関節症を診断、予後診断、スクリーニングまたは治療するための方法に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
[用語の定義]
下記の説明で使用する特定の用語について下記の定義を提供する。
【0073】
本明細書で使用する「変形性関節症」とは、関節の関節面を形成している骨の端部にある関節軟骨が時が経つにつれて次第に変性する慢性疾患を意味する。軟骨変性は、異化活性(「古い」細胞および基質成分の除去)と同化活性(「新しい」細胞および分子の産生)の不均衡によって誘発される可能性がある(Westacottら、1996,SeminArthritis Rheum,15:254−72参照)。
【0074】
本明細書で使用する「軟骨」もしくは「関節軟骨」とは、ヒトおよびその他の種を含む哺乳動物における弾性かつ半透明の結合組織を意味する。軟骨は、主として軟骨細胞、II型コラーゲン、少量の他の型のコラーゲン、その他の非コラーゲンタンパク質、プロテオグリカンおよび水から構成され、通常はI型およびII型コラーゲン並びに他のプロテオグリカンの基質内で線維芽細胞からできている軟骨膜に取り囲まれている。ほとんどの軟骨は成熟すると骨になるが、一部の軟骨は鼻、耳、膝およびその他の関節のような場所では最初の形態のままとどまっている。関節軟骨には血液供給もしくは神経供給はなく、軟骨細胞はこの組織内に存在する唯一の細胞型である。
【0075】
本明細書で使用する「軟骨細胞(chondrocyte)」とは軟骨細胞(cartilagecell)を意味する。
【0076】
本明細書で使用する「滑液」とは各関節を取り囲んでいる「滑液嚢」から分泌される液体を意味する。滑液は、関節を保護し、関節を潤滑し、さらに関節軟骨へ栄養を与えるために役立つ。本発明による有用な滑液は、本明細書に記載するような当分野でよく知られている方法によりそれからRNAを単離できる細胞を含む。
【0077】
本明細書で使用する用語「変形性関節症(OA)病期分類」または「変形性関節症(OA)グレード分類」とは、軟骨における疾患の伸展度もしくは進行度を決定することを意味する。軟骨を相違する病期に分類するためには、当分野で知られている方法による採点システムを使用する。好ましくは、Marshall(MarshallW.,1996,The Journal of Rheumatology,23:582−584。参照することにより、本明細書に組み込まれる。)を使用する。この方法によると、6つの関節面(膝蓋骨、大腿骨滑車、内側大腿顆、内側脛骨プラトー、外側大腿顆および外側脛骨プラトー)の各々に特定表面上に存在する最悪病変に基づく軟骨グレードを指定する。その後、各関節面にその面についての軟骨重症度グレードを反映しているOA重症度数値が付けられる採点システムを適用する。例えば、内側大腿顆がその最も重症の軟骨損傷であるグレード1病変を有している場合は、数値1を指定する。その患者の総スコアは6つの関節面についてのスコアの総計から引き出す。総スコアに基づいて、各患者を次の4つのOA群の1つに分類する。軽症(早期)(1〜6)、中症(7〜12)、顕著(13〜18)および重症(>18)。
【0078】
本明細書で使用する「診断」とは、個体が疾患もしくは病気に罹っているかどうかを決定するプロセスを意味する。本発明による「OAの診断」もしくは「OA診断」とは、個体がOAに罹っているかどうかを決定することを意味する、または患者が診断されたら、病歴および、当分野で知られている方法(すなわち、関節X線検査)を使用して患者の理学的検査に基づいて、本明細書で使用するOA病期もしくはグレードを決定することを意味する。好ましくは、OA病期は上記のMarshallによって記載された採点システムを使用して測定する。「OAの予後診断」とは、患者におけるOAの推定される発生および/または進行、並びにOAからの回復の可能性、またはOAの症状が改善する可能性またはOAの作用を逆転させる可能性を予測することを意味する。
【0079】
本明細書で使用する「患者」とは、軽症、中症、顕著または重症の形態のOAであると診断された哺乳動物を意味する。
【0080】
本明細書で使用する「正常」とは、いずれのOA症状も示していない、または軟骨傷害もしくはOAであると診断されていない個体を意味する。本発明による「正常」とは、さらに死後14時間以内に正常個体から採取されたサンプルも意味する。正常軟骨組織サンプルは、例えばOAと診断されておらず、その死体が組織切除時点でOAの症状を全く示していない個体から得られた死後14時間以内の軟骨組織から単離された軟骨の全体もしくは一部を意味する。本発明の他の実施例では、「正常」軟骨組織サンプルは例えば死後13時間、12時間、11時間、10時間、9時間、8時間、7時間、6時間、5時間、4時間、3時間、2時間もしくは1時間以内のような死後14時間未満の軟骨組織から単離される。発明のある実施態様では、「正常」軟骨サンプルは死後14時間後に単離され、抽出されたmRNAサンプルの完全性が確認される。
【0081】
本明細書で使用する「mRNA完全性」とは、軟骨サンプルからのmRNA抽出物の品質を意味する。良好な完全性を備えたmRNA抽出物は、当分野においてよく知られている方法、例えばRNAアガロースゲル電気泳動法によって検査した場合には劣化するとは思われない(例、Ausubelら、JohnWeley & Sons,Inc.,1997,CurrentProtocols in Molecular Biologyを参照)。好ましくは、mRNAサンプルはそれから抽出される軟骨サンプルの遺伝子発現レベルを真に表すための良好な完全性を有している(例、10%未満、好ましくは5%未満、およびより好ましくは1%未満のmRNAしか劣化しない)。
【0082】
本明細書で使用する「胎児」軟骨サンプルとは、胎児から採取したサンプルを意味する。胎児軟骨の軟骨細胞は、正常成体もしくはいずれかの病期(軽症、中症、顕著および重症)のOAと診断された成体に由来する軟骨からの軟骨細胞と比較して高レベルの代謝活性および細胞分裂速度を有している。
【0083】
「核酸」、「核酸配列」、「配列」および「発現配列タグ(EST)」を含む、本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」は、一般にいずれかのポリリボヌクレオチドもしくはポリデオキシリボヌクレオチドを意味するが、これらは未修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAであってよい。「ポリヌクレオチド」には、制限なく一本鎖および二本鎖核酸が含まれる。本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」にも、1個以上の修飾塩基を含有する上記のようなDNAもしくはRNAが含まれる。したがって、安定性またはその他の理由から修飾されたバックボーンを備えるDNAもしくはRNAは「ポリヌクレオチド」である。本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」には、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態のポリヌクレオチド、並びにウイルスおよび例えば単純型および複雑型細胞を含む細胞を特徴とするDNAおよびRNAの化学的形態が含まれる。
【0084】
本明細書で使用する核酸に関連して使用する場合の「単離された」または「精製された」は、天然の配列がその正常な細胞(例、染色体)環境から取り除かれている、または非天然環境で合成されている(例、人工的に合成されている)ことを意味する。したがって「単離された」もしくは「精製された」配列は無細胞溶液中にあってよい、または種々の細胞環境に置かれてよい。用語「精製された」はその配列がヌクレオチドのみが存在していることを意味しておらず、その配列が本質的にその配列と自然に結び付いている非ヌクレオチド物質を含んでいない(約90〜95%純粋)、したがって単離された染色体とは区別されることを意味している。
【0085】
本明細書で使用する用語「プローブ」とは、プローブ内の少なくとも1つの配列と標的領域内の配列との相補性のために、標的核酸内の配列とともに二重構造を形成するオリゴヌクレオチドを意味する。
【0086】
本明細書で使用する「核酸アレイ」とは、20種を超える核酸/cm2の密度で固体支持体の1つの表面に付着させた複数の固有の核酸(もしくは「核酸メンバー」)を意味するが、このとき核酸メンバーの各々は同一ではない予め選択された領域内の固体支持体の表面に付着している。ある実施態様では、固体支持体の表面に付着した核酸メンバーはDNAである。ある好ましい実施態様では、固体支持体の表面に付着した核酸メンバーはcDNAである。また別の好ましい実施態様では、固体支持体の表面に付着した核酸メンバーはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって合成されたcDNAである。好ましくは、本発明によるアレイの核酸メンバーは長さが少なくとも50ヌクレオチドである。好ましくは、アレイの核酸メンバーは長さが6,000ヌクレオチド未満である。より好ましくは、アレイの核酸メンバーは長さが500ヌクレオチド未満のアレイを含む。ある実施態様では、アレイは固体支持体の表面に付着した少なくとも500種の核酸メンバーを含む。また別の実施態様では、アレイは固体支持体の表面に付着した少なくとも10種の核酸メンバーを含む。さらにまた別の実施態様では、アレイは固体支持体の表面に付着した少なくとも10,000種の核酸メンバーを含む。さらにまた別の実施態様では、アレイは固体支持体の表面に付着した少なくとも15,000種の核酸メンバーを含む。本明細書で使用する用語「核酸」は用語「ポリヌクレオチド」と取り替えることができる。
【0087】
本明細書で使用する「複数の」もしくは「1組の」とは、例えば3以上、100以上、1,000以上または10,000以上のような2以上を意味する。
【0088】
本明細書で使用する「付着させるステップ」または「スポットするステップ」とは、共有結合、水素結合またはイオン間相互作用を介して核酸が非可逆的に固体基質に結合するように、核酸アレイを形成するために固体基質上へ核酸を付着させるステップを意味する。
【0089】
本明細書で使用する「安定して結合」とは、核酸がアレイと安定して結合しているすべての他の核酸に対する、またはアレイが典型的に解析される条件下で(すなわち、ハイブリダイゼーション、洗浄および/またはスキャニング等の1つ以上のステップ中に)固体基質上のすべての他の予め選択された領域に対するその固有の予め選択された位置を維持するように、共有結合、水素結合またはイオン間相互作用を介してアレイを形成するために固体基質に非可逆的に結合している核酸を意味する。
【0090】
本明細書で使用する「固体基質」または「固体支持体」とは、剛性または半剛性の表面を有する物質を意味する。用語「基質」および「支持体」は本明細書では用語「固体基質」および「固体支持体」と取り替え可能に使用する。固体支持体は粒子、線維、沈降物、ゲル、シート、チューブ、球体、ビーズ、容器、毛細管、パッド、薄片、フィルム、プレート、スライド、チップ等として存在する生物学的、非生物学的、有機、無機物質またはこれらの組合せであってよい。しばしば、基質はシリコーンもしくはガラス面、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオライド、ポリスチレン、ポリカーボネート、例えばナイロン66もしくはニトロセルロースのような荷電膜またはその組合せである。ある好ましい実施態様では、固体支持体はガラスである。好ましくは、基質の少なくとも1つの表面は実質的に平面であろう。好ましくは、固体支持体の表面はカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等を含むがそれらに限定されない反応性基を含むであろう。ある好ましい実施態様では、表面は光学的に透過性である。
【0091】
本明細書で使用する「予め選択された領域」、「予め定義された領域」または「固有の位置」とは、核酸を付着させるためである、付着させるためであった、または付着させるために使用することを目的としている基質上の限局領域を意味しており、さもなければ、あるいはまた本明細書では「選択された領域」もしくは単純に「領域」と呼ぶ。予め選択された領域は、例えば環状、長方形、楕円形、楔形等の好都合の形状を有していてよい。一部の実施態様では、予め選択された領域は約1cmより小さい、より好ましくは1mm未満、さらにいっそう好ましくは0.5mm未満、および一部の実施態様では0.1mm未満である。「予め選択された領域」、「予め定義された領域」または「固有の位置」にある核酸メンバーは、それの同一性(例、配列)をその領域での位置もしくは固有の位置によって決定できる核酸メンバーである。
【0092】
本明細書で使用する「核酸標的」もしくは「標的核酸」は、1種以上の型の化学結合を介して、通常は相補的塩基対合、すなわち水素結合の形成を介して、相補的配列の核酸メンバーへ結合できる核酸であると定義する。本明細書で使用する核酸標的は、天然塩基(すなわち、A、G、CもしくはT)または修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシン等)を含有していてよい。さらに、核酸プローブ中の塩基は、それがハイブリダイゼーションを妨害しない限り(すなわち、プローブは依然として標準的なストリンジェント条件下もしくは選択的ハイブリダイゼーション条件下で相補的配列に特異的に結合する)、ホスホジエステル結合以外の連結によって結合していてもよい。そこで核酸標的は、構成塩基がホスホジエステル連結以外のペプチド結合によって結合しているペプチド核酸であってもよい。好ましくは、核酸標的はヒトの軟骨、血液または滑液抽出物から誘導する。より好ましくは、核酸標的はヒトの軟骨、血液または滑液RNA抽出物由来の、および好ましくはmRNA抽出物由来の一本鎖もしくは二本鎖DNA、RNAまたはDNA−RNAハイブリッドである。
【0093】
本明細書で使用する「軟骨核酸サンプル」とは、軟骨に由来する核酸を意味する。好ましくは、軟骨核酸サンプルはRNAである、または例えばcDNAのようなRNAに対応する核酸である。
【0094】
本明細書で使用する用語「ハイブリダイズする」または「ハイブリダイゼーション」とは、例えばアレイ内での標的核酸配列と核酸メンバーとの相互作用によるような、相補的核酸との水素結合を意味する。
【0095】
本明細書で使用する「特異的ハイブリダイゼーション」もしくは「選択的ハイブリダイゼーション」とは、2つの核酸配列が実質的に相補的である(少なくとも14〜25ヌクレオチドの伸展に渡って少なくとも約65%相補的、好ましくは少なくとも約75%相補的、より好ましくは少なくとも約90%相補的である)ときに発生するハイブリダイゼーションを意味する。参照してここに組み込まれるKanehisaM.,1984,Nucleic acids Res.,12:203を参照。その結果として、ある程度のミスマッチは容認されると予想される。このようなミスマッチは、例えばモノヌクレオチド、ジヌクレオチドもしくはトリヌクレオチドのように小さい可能性がある。あるいはまた、ミスマッチの領域は、中断されない一連の4個以上のヌクレオチド内にミスマッチが存在する領域と定義されるループを包含することができる。例えばアレイ上の核酸メンバーのような、標的核酸配列への2つの核酸のハイブリダイゼーションの効率および精度には多数の因子が影響を及ぼす。これらの因子には、核酸メンバーの長さ、ヌクレオチド配列および/または組成、ハイブリダイゼーション温度、バッファーの組成および核酸メンバーがそれにハイブリダイズすることが要求される領域における立体障害の可能性が含まれる。核酸メンバーの長さと核酸メンバーが標的配列にアニーリングする効率および精度の両方との間には正の相関が存在する。特に、配列が長いほど短い配列より高い融解温度(TM)を有しており、所定の標的配列内で反復されることはありそうもなく、それにより無差別ハイブリダイゼーションが最小限に抑えられる。ハイブリダイゼーション温度は核酸メンバーのアニーリング効率とは反比例して変化し、例えばホルムアミドのようなハイブリダイゼーション混合物中に含まれている可能性がある有機溶媒の濃度も同様であるが、他方塩濃度の上昇は結合を促進する。ストリンジェントなアニーリング条件下では、核酸は長いほど、より寛容な条件下では十分な短い核酸より効率的にハイブリダイズする。
【0096】
本明細書で使用する用語「差次的ハイブリダイゼーション」とは、2つ以上のサンプルから入手された同一ポリヌクレオチド配列へ種々のレベルでハイブリダイズできるプローブに関する。「差次的ハイブリダイゼーション」とは、別のサンプルから単離されたポリヌクレオチド配列と比較して、1つのサンプルから単離されたポリヌクレオチド配列に対するプローブのハイブリダイゼーションのレベルの比率が1.0に等しくないことを意味する。例えば、1つのサンプルから単離されたポリヌクレオチド配列へのプローブのハイブリダイゼーションのレベルの比率は、他のサンプルから単離されたポリヌクレオチド配列に比較して1.0より大きい、または1.0より小さい、1.5より大きく0.7より小さい、および2より大きく0.5より小さい比率を含む。差次的ハイブリダイゼーションはさらにまた、そのハイブリダイゼーションが1つのサンプルでは検出可能であるが別のサンプルでは検出できない場合にも存在する。
【0097】
本明細書で使用する用語「標準的ストリンジェント条件」とは、ハイブリダイゼーションが配列間に少なくとも95%および好ましくは少なくとも97%同一性が存在する場合にしか発生しないことを意味するが、このとき同一性の領域は少なくとも10ヌクレオチドを含む。ある実施態様では、これらの配列は42℃で一晩かけた配列のインキュベーション、およびその後にストリンジェントな洗浄(65℃で0.2×SSC)が続くストリンジェント条件下でハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーには数種の因子が影響を及ぼすので、パラメーターの組合せが単一因子の絶対尺度よりはるかに重要である。
【0098】
本明細書で使用する用語「発現レベル」とは、所定の核酸の測定可能な発現レベルを意味する。核酸の発現レベルは、当分野でよく知られている方法によって決定する。用語「差次的に発現した」もしくは「発現レベルにおける変化」とは、所定の核酸の測定可能な発現レベルにおける増加または減少を意味する。マイクロアレイ解析について言及するときに本明細書で使用する「差次的に発現した」は、1つのサンプル中の所定のポリヌクレオチドの発現レベルと別のサンプル中の所定のポリヌクレオチドの発現レベルとの比率が1.0に等しくないことを意味する。本発明によるマイクロアレイ解析について言及するときの「差次的に発現した」はさらに、その比率が1.0より大きいもしくは小さい、1.5より大きく0.7より小さい、並びに2.0より大きく0.5より小さい場合の、1つのサンプル中の所定のポリヌクレオチドの発現レベルと別のサンプル中の所定のポリヌクレオチドの発現レベルとの比率も意味する。核酸はさらに、2つのサンプル中の1つが核酸の検出可能な発現を含んでいない場合には、2つのサンプル中で差次的に発現すると言える。核酸の発現レベルの絶対的定量化は、1種以上のコントロール核酸種の既知濃度を含めるステップと、コントロール核酸の量に基づいて標準曲線を生成するステップと、標準曲線と比較して未知のハイブリダイゼーション強度から「未知」核酸種の発現レベルを推定するステップによって遂行できる。発現レベルは、当分野でよく知られている方法による標識標的核酸を使用するハイブリダイゼーション解析によって測定する。標的核酸上の標識は、蛍光標識、酵素標識、放射性標識、化学的標識もしくは物理的標識であってもよい。好ましくは、標的核酸は蛍光分子を用いて標識する。好ましい蛍光標識には、フルオレセイン、アミノクマリン酢酸、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、テキサスレッド、Cy3およびCy5が含まれるが、それらに限定されない。
【0099】
EST解析について言及するときに本明細書で使用する「差次的に発現した」とは、別のcDNAライブラリーに由来する同一遺伝子を表すESTの頻度と比較して、cDNAライブラリーに由来する遺伝子を表すESTの頻度に基づいた遺伝子の相対発現レベルを意味する。本明細書で使用するESTの「相対EST頻度」は、各特定遺伝子を表すESTの数を解析されたESTの総数で割ることにより計算する。「相対EST頻度」における差は、差次的遺伝子発現の指標として使用できる。
【0100】
核酸配列について言及するときに本明細書で使用する用語「有意なマッチ」とは、2つの核酸配列が当分野においてよく知られている比較方法(すなわち、AltschulS.F.ら、1997,Nucl.Acids Res.,25:3389−3402;SchaefferA.A.ら、1999,Bioinformatics 15:1000−1011を参照)を使用して少なくとも65%同一性、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、および好ましくは少なくとも90%同一性を示すことを意味する。本明細書で使用する「有意なマッチ」は、当分野でルーチンであるアラインメント法を使用して最高にアラインメントを作成したときに、配列が少なくとも65%、および好ましくは少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、および好ましくは少なくとも90%同一性を示す限り、非連続的もしくは散在性同一ヌクレオチドを含む。
【0101】
本明細書で使用する「新規配列」もしくは「新規発現配列タグ(EST)」とは、各新規配列を比較する時点にNCBIを介して利用できる「nt」、「nr」、「est」、「gss」および「htg」データベース内の既存配列との有意なマッチを有していない核酸配列を意味する。「非有意マッチ」とは、当分野においてよく知られている方法を使用して配列を最高にアラインメントを作成後に、好ましくはデータベース内の他の配列に対してクエリーされている新規配列間の65%未満のマッチ、および好ましくは50%未満マッチ、40%未満マッチ、または30%未満マッチを意味する。本明細書で使用する「既知配列」とは、NCBIを介して利用できる「nt」、「nr」、「est」、「gss」および「htg」データベース内の少なくとも1つの既存配列との有意なマッチを有する核酸配列を意味する。「1つの機能を備えた既知配列」とは、既知機能を備えたポリペプチドをコードする既存配列との有意なマッチを備えた核酸を意味する。「機能を備えていない既知配列」とは、未知の機能を有するポリペプチドをコードする既存配列との有意なマッチを示す核酸を意味する。
【0102】
本明細書で使用する「軟骨細胞特異的核酸」とは、軟骨細胞中では検出可能なレベルで発現するが、他の細胞型からの配列を含む利用可能ないずれかのデータベース中のいずれかの配列への有意なマッチを有していないと指示された、他のいずれの細胞型中でも検出可能なレベルで発現しない核酸配列である。
【0103】
本明細書で使用する「軟骨細胞に豊富に存在する核酸」もしくは「軟骨細胞に豊富に存在する配列」とは、非軟骨細胞に比較して軟骨細胞中で差次的に発現する配列を意味する。
【0104】
本明細書で使用する「疾患を標示する」とは、発現パターンが、ある疾患を有している患者ではその疾患を有していない患者におけるより有意に頻回に見いだされる(信頼水準を95%に設定したルーチンの統計的手法を使用して測定した場合に)ようにその疾患に特徴的である発現パターンを意味する。好ましくは、疾患を標示する発現パターンはその疾患を有する患者の少なくとも70%において見いだされ、その疾患を有していない患者の10%未満でしか見いだされない。より好ましくは、疾患を標示する発現パターンはその疾患を有する患者の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上において見いだされ、その疾患を有していない患者の10%未満、8%未満、5%未満、2.5%未満または1%未満でしか見いだされない。
【0105】
本明細書で使用する「遺伝子発現パターン」もしくは「遺伝子発現プロフィール」は1組以上の核酸配列の発現パターンを含んでおり、その組の1つ以上のメンバーは差次的に発現している。
【0106】
本明細書で使用する「核酸アレイ発現プロフィール」は、サンプルに由来する核酸の本発明によるアレイを構成する1つ以上の核酸メンバーへのバイブリダイゼーションから生成される。
【0107】
本明細書で使用する「治療薬」もしくは「薬剤」とは、本明細書で定義した(a)胎児、(b)軽症変形性関節症、(c)中症変形性関節症、(d)顕著変形性関節症および(e)重症変形性関節症の次の発生段階もしくは病期、または(f)正常個体のうちのいずれか2つからの軟骨細胞中で差次的に発現するポリヌクレオチド配列の発現を増加もしくは減少させる化合物を意味する。本発明による治療薬は、さらにまた軟骨細胞の同化活性を増加または減少させる化合物を意味する。本発明は、1)変形性関節症の開始を予防する;2)例えば疼痛、腫脹、虚弱および罹患関節における機能的能力の消失のような変形性関節症の症状を軽減する、遅延させる、もしくは排除する;3)軟骨変性を軽減する、遅延させる、または排除する、および/または軟骨細胞代謝活性および細胞分裂速度を強化する;および/または4)患者に投与したときに患者の1種以上の疾患を標示する核酸の1種以上の発現プロフィールを正常個体の発現プロフィールにより類似するプロフィールへ回復させる「治療薬」を提供する。
軟骨細胞に豊富に存在するポリヌクレオチドおよび軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列の同定
cDNAライブラリーは、ヒトの胎児、正常、軽症変形性関節症性および重症変形性関節症性軟骨サンプルから構築した。その後にこれらのライブラリーに由来する既知および新規クローンを使用して、軽症(早期)変形性関節症を検出するための診断ツールとして有用な差次的遺伝子発現プロフィールを生成するためにヒト軟骨細胞特異的マイクロアレイを構築した。本発明のアレイは、変形性関節症診断のためのゴールドスタンダードとして、および新薬ターゲットの治療有効性を同定および監視する目的で使用するために有用である。
【0108】
所定の組織中の遺伝子発現パターンを特徴付ける1つの有効かつ迅速な方法は、このような組織から作製したcDNAライブラリーの大規模部分シーケンシングを介して発現配列タグ(EST)を作製することである。このアプローチは、相違する組織および細胞中での遺伝子発現に関する定量的および定性的情報の両方を提供した(4−7)。cDNAライブラリーはこのライブラリーを構築するために使用された組織の細胞中の遺伝子転写を表すので、無作為サンプリングおよびシーケンシングにより生成した遺伝子発現プロフィールを使用すると試験した組織の発生段階、正常および病理学的段階の間の詳細な遺伝子レベルを比較できる。
【0109】
多くのヒト遺伝子は、相違する発達(胎児対成熟)段階または病期にある軟骨中では相違するレベルで発現する。ある場合には、遺伝子は一部の発生段階または病期では全く発現しないが、他の発生段階または病期では高レベルで発現する(例えば図6、15および16を参照)。本発明によると、ESTに基づくアプローチを使用した相違する軟骨の発生段階および相違する病期における軟骨細胞遺伝子発現の層別解析で、変形性関節症の病因および軟骨修復において重要な役割を果たす遺伝子を同定できた。この方法の長所は、他の方法より大きな規模で遺伝子発現情報を提供できることにある。このアプローチによって生成したcDNAクローンは一定の遺伝子の機能試験のためにも有用である。この型のゲノムに基づくアプローチは変形性関節症の疾患プロセスに関する我々の理解についての重要な新規の洞察を提供して、新規の診断学的、予後診断学的および治療的アプローチを提供する。
サンプル
軟骨
ある態様では、軟骨は当分野において知られている方法を使用して胎児から入手する。胎児軟骨の軟骨細胞は健常成体またはいずれかの病期(軽症、中症、顕著および重症)の変形性関節症と診断された患者のいずれか由来の軟骨からの軟骨細胞に比較して高いレベルの代謝活性および細胞分裂速度を有している。
【0110】
また別の態様では、軟骨は当分野においてよく知られている下記に記載する方法により生きている正常個体から入手する、または死後14日間未満の軟骨組織から入手する。成人からの正常関節軟骨は、いずれかの知られている方法を使用して入手する。しかし真の正常軟骨は、一般に倫理的考慮のために生きているドナーからサンプリングすることはできない。好ましくは、正常軟骨サンプルは、その時間枠を超えると観察されるRNAの変性を最小限に抑えるために、採取される関節への灌流の停止後14時間の時間枠以内に死亡したドナーから死後入手する。他の実施態様では、「正常」組織は例えば死後13、12、11、10、9、8、6、4、2または1時間のように14時間未満に入手する。このアプローチを確証するためにヒヒ試験を実施し、下記の実施例11に記載した。好ましくは、正常軟骨は死後14時間未満に入手する。より好ましくは、正常軟骨は死後12時間未満に入手する。
【0111】
好ましくは、軟骨はさらに変形性関節症の軽症、顕著、中症および重症の病期からも単離する。変形性関節症性個体由来のヒト軟骨サンプルはいずれかの知られている方法によって入手する。好ましくは、軟骨は関節鏡検査もしくは全膝関節置換術を受けた個体から入手し、サンプルは必要になるまで液体窒素中に保存する。ある好ましい実施態様では、cDNAライブラリーを構築するために2μgの全RNA抽出物を入手するために最低0.05gの軟骨サンプルを単離する。また別の好ましい実施態様では、マイクロアレイのための標的サンプルとして使用する目的で1μgの全RNA抽出物を入手するために最低0.025gの軟骨サンプルを単離する。本発明によって有用な軟骨サンプルは、本発明による1つ以上のポリヌクレオチド配列を検出するために十分な量である。
血液および滑液
本発明による有用なサンプルには、血液および滑液サンプルも含まれる。
【0112】
ある態様では、血液は正常個体、または当分野においてよく知られている静脈切開法により変形性関節症を有すると診断された、または有することが疑われる個体から入手する。本発明による有用な血液サンプルの量は、1μL〜100mL、好ましくは10μL〜50mL、より好ましくは10μL〜25mL、および最も好ましくは10μL〜1mLの範囲内である。本発明による有用な血液サンプルの量は、本発明による1つ以上のポリヌクレオチド配列を検出するために十分な量である。ある実施態様では、血液サンプル中に含まれたポリヌクレオチドは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)もしくはRT−PCRによって増幅させる。当分野でよく知られている他の増幅方法(例、リガーゼ連鎖反応、NASBA、3SR等)もまた本発明の範囲内に包含されている。
【0113】
滑液サンプルは、当分野においてよく知られている方法により変形性関節症を有すると診断された、または有することが疑われる個体から入手する。好ましくは、滑液は関節鏡検査法によって吸引によりヒト膝関節から収集する。本発明による有用な滑液サンプルの量は、0.1mL〜20mLおよび好ましくは0.5mL〜10mLの範囲内である。本発明による有用な滑液サンプルの量は、本発明による1つ以上のポリヌクレオチド配列を検出するために十分な量である。
関節軟骨の発生段階および病期
軟骨細胞は、好ましくは胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症または重症変形性関節症の発生段階および病期のいずれかから入手する。
【0114】
ヒト胎児(例、発達中の胎児)から単離された軟骨は上記に特徴付けられており、本発明による胎児軟骨細胞の解析のために有用である。
【0115】
本明細書で定義した「正常」個体から単離された軟骨もまた本発明による「正常」軟骨細胞の単離および解析のために有用である。
【0116】
軽症、中症、顕著および重症変形性関節症のいずれかであると診断された患者から単離された軟骨もまた本発明において有用である。
【0117】
病期にしたがって軟骨を分類するために、関節鏡検査技師による主観的決定を最小限に抑えるための採点システムを使用する。ここに定義した病期を定義する採点システムは、参照してここに組み込まれる上記のMarshall採点法である。この方法によると、6つの関節面(膝蓋骨、大腿骨滑車、内側大腿顆、内側脛骨プラトー、外側大腿顆および外側脛骨プラトー)の各々に特定表面上に存在する最悪病変に基づいて軟骨グレードを指定する。その後、表1に記載したように、各関節面にその面についての軟骨重症度グレードを反映しているOA重症度数値を付ける採点システムが適用される。
【0118】
【表1】

例えば、内側大腿顆が最も重症の軟骨損傷であるグレード1病変を有している場合は、数値1を指定する。その患者の総スコアは6つの関節面についてのスコアの総計から引き出す。総スコアに基づいて、各患者を次の4つのOA群の1つに分類する。軽症(1〜6)、中症(7〜12)、顕著(13〜18)および重症(>18)。
RNAの調製
ある態様では、RNAはここに記載した相違する病期または発生段階からの軟骨サンプルから単離する。サンプルは単一患者からであっても、複数患者からプールされてもよい。
【0119】
また別の態様では、RNAはここに記載した変形性関節症の相違する病期または発生段階にあるヒトの滑液から直接に単離する。サンプルは単一患者からであっても、複数患者からプールされてもよい。
【0120】
また別の態様では、RNAはここに記載した変形性関節症の相違する病期または発生段階にあるヒトの血液サンプルから直接に単離する。サンプルは単一患者からであっても、複数患者からプールされてもよい。
【0121】
全RNAは当分野でよく知られた方法による軟骨サンプルから抽出する。ある実施態様では、RNAは次の方法にしたがって軟骨組織から精製する。個体もしくは患者から当該組織を除去した後、RNAの変性を防止するためにこの組織を液体窒素中で急速冷凍する。ある量の組織グアニジニウム液を添加した直後に、組織サンプルをホモジナイザー中で2、3回の10秒間バーストを適用して粉砕する。組織グアニジニウム液(1L)を調製するために、イソチオシアン酸グアニジニウム590.8gを約400mLのDEPC処理HO中に溶解させる。25mLの2MTris−Cl、pH7.5(最終濃度0.05M)および20mLのNaEDTA(最終濃度0.01M)を添加し、この溶液を一晩撹拌し、容量を950mLへ調整し、50mLの2−MEを添加する。
【0122】
均質化した組織サンプルに12,000×g、12℃で10分間にわたり遠心単離を受けさせる。結果として生じる上清を、9mLの5.7MCsCl液(0.1g CsCl/mL)の上方に層状に重ねた0.1容量の20%サルコシルの存在下において65℃で2分間インキュベートし、113,000×g、22℃で一晩遠心単離によって分離する。上清を注意深く除去した後に、チューブを反転させて排液する。チューブ(RNAペレットを含有する)の底部を50mLプラスチックチューブ内に配置し、RNAペレットの完全再懸濁を許容するために3mL組織再懸濁バッファー(5mMEDTA、0.5%(v/v)サルコシル、5%(v/v)2−ME)の存在下において4℃で一晩(または以上)インキュベートする。結果として生じるRNA液を、25:24:1のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール、続いて24:1のクロロホルム/イソアミルアルコールを用いて連続的に抽出し、3M酢酸ナトリウム(pH5.2)および2.5容量の100%エタノールの添加によって沈降させ、さらにDEPC水中に再懸濁させる(Chirgwinら、1979,Biochemistry,18:5294を参照)。
【0123】
あるいはまた、RNAは次の単一ステッププロトコールにしたがって軟骨組織から単離する。当該組織は、組織100mg当たり変性液(4Mチオ硫酸グアニジニウム、25mMクエン酸ナトリウム(pH7.0)、0.1M2−ME(w/v)N−ラウリルサルコシン)1mL中でガラス・テフロン(登録商標)製ホモジナイザー中での均質化により調製する。ホモジネートを5mLポリプロピレン・チューブに移した後、0.1mLの2M酢酸ナトリウム(pH4)、1mLの水飽和フェノール、および0.2mLの49:1クロロホルム/イソアミルアルコールを連続的に添加する。各成分の添加後にサンプルを混合し、全成分を添加した後に0〜4℃で15分間インキュベートする。このサンプルを10,000×g、4℃で20分間にわたる遠心単離によって分離し、1mLの100%イソプロパノールの添加によって沈降させ、−20℃で30分間インキュベートし、10,000×g、4℃で10分間にわたる遠心単離によりペレット化する。結果として生じるRNAペレットを0.3mL変性液中へ溶解させ、マイクロフュージチューブへ移し、−20℃での30分間にわたる0.3mLの100%イソプロパノールの添加によって沈降させ、10,000×g、4℃で10分間にわたり遠心単離する。RNAペレットを70%エタノール中で洗浄し、乾燥させ、100〜200μLDEPC処理水またはDEPC処理0.5%SDS中に再懸濁させる(Chomczynski and Sacchi,1987,Anal.Biochem.,162:156を参照)。
【0124】
好ましくは、軟骨サンプルは液体窒素下で微細に粉末化し、TRIzol(登録商標)試薬(GIBCO/BRL製)を使用して全RNAを抽出する。
【0125】
あるいはまた、RNAを次のプロトコールによって血液から単離する。溶解バッファーは溶解バッファー3部対血液1部の比率で血液サンプルへ添加する(溶解バッファー(1L)0.6gEDTA;1.0gKHCO、pH7.4に調整した(NaOHを使用して)8.2gのNH4Cl)。サンプルを混合し、透明になるまで5〜10分間にわたり氷上に置く。溶解したサンプルを1,000rpmで10分間にわたり4℃で遠心し、上清を吸引する。ペレットは5mL溶解バッファー中に再懸濁させ、再び1,000rpmで10分間にわたり4℃で遠心する。ペレット化した細胞はTRIzol(登録商標)試薬(GIBCO/BRL製)を使用して最初の血液サンプル10mLにつき約6mLのTRIzol(登録商標)の比率で均質化させ、しっかりとボルテックス・ミキサーにかける。サンプルを室温で5分間放置する。TRIzol(登録商標)1mLにつき1.2mLのクロロホルムを使用してRNAを抽出する。サンプルは12,000×gで5分間にわたり4℃で遠心し、上層を収集する。上層へ、イソプロパノールをTRIzol(登録商標)1mLにつき0.5mLの比率で添加する。サンプルは−20℃で一晩、または−20℃で1時間放置する。RNAは知られている方法によるペレット化し、RNAペレットを風乾し、ペレットをDEPC処理ddHO中に再懸濁させる。RNAサンプルもまた75%エタノール中に貯蔵できるが、このとき前記サンプルは輸送のために室温で安定性である。
【0126】
あるいはまた、RNAはTRIzol(登録商標)試薬(GIBCO/BRL製)を使用して滑液から単離する。
【0127】
RNAの純度および完全性は、260/280nmの吸光度およびアガロースゲル電気泳動法並びにその後に紫外線下での検査によって評価する。
cDNAライブラリーの構築
cDNAライブラリーは当分野においてよく知られている方法により構築する(参照してここに組み込まれる例えば上記のAusubelおよび上記のSambrookを参照)。
【0128】
ある態様では、cDNAサンプル、すなわち例えばmRNAのようなRNAに対して相補的であるDNAを調製する。cDNAの調製は、先行技術においてよく知られていて十分に立証されている。
【0129】
cDNAは次の方法により調製できる。全細胞RNAを単離し(上記の通り)、ポリARNAを単離するためにオリゴ(dT)−セルロースのカラムを通過させる。結合したポリAmRNAは低イオン強度バッファーを含むカラムから溶出する。cDNA分子を作製するために、短いデオキシチミジンオリゴヌクレオチド(12〜20ヌクレオチド)は、DNA合成のための鋳型としてRNAを使用する酵素である逆転写酵素のためのプライマーとして使用されるポリAテールへハイブリダイズさせる。あるいはまた、または追加して、mRNA種はcDNA合成のためのプライマーとしての当該mRNAに相補的なきわめて多数の配列を含む短いオリゴヌクレオチドフラグメントを使用することによって多くの位置からプライミングされる。結果として生じるRNA−DNAハイブリッドは、当分野でよく知られている相違する酵素ステップによって二本鎖DNA分子へ転換する(Watsonら、1992,RecombinantDNA,第2版,Scientific American Books,NewYorkを参照)。
【0130】
cDNAライブラリーを構築するために、ポリ(A)+RNA破片はオリゴ−dTセルロースクロマトグラフィー(ファルマシア(Pharmacia)製)によって単離でき、λZAP発現ベクター(ストラタジーン(Stratagene)製)においてcDNAライブラリーを構築するために3〜5μgのポリ(A)+RNAを使用する。あるいはまた、cDNAライブラリーはSMART(SwitchingMechanism At 5’ end of RNA Transcript(RNA転写物の5’末端でのスイッチングメカニズム))cDNAライブラリー構築キット(クローンテック[Clonetech]製)を使用するPCRに基づく方法を介してλTriplEx2ベクター内に構築できる。第1鎖cDNAは5’メチルdCTPの存在下でXhoI−オリゴ(dT)アダプター−プライマーを用いて合成する。第2鎖合成およびEcoRIアダプターの連結後、cDNAをXho Iを用いて消化すると、5’末端でのEcoRI部位と3’末端でのXho I部位によって挟まれたcDNAが生じる。消化cDNAはセファクリルS−500スピンカラム(ストラタジーン製)中でサイズ分別し、その後EcoRIおよびXhoIを用いて前消化したλZAP発現ベクター内に連結させる。結果として生じるDNA/cDNAコンカテマーはギガパック・ゴールド(GigapackGold)パッケージング抽出物を使用してパッケージングする。滴定後、一次パッケージング混合物のアリコートは一次ライブラリーストックとして−80℃で7%DMSO中に貯蔵し、残りは安定性ライブラリーストックを確立するために増幅させる。
【0131】
増幅したライブラリーから、ファージプラークを適切な培地上でプレーティングする。好ましくは、ファージプラークは色を選択するためにIPTG/X−galを含む大腸菌XL1−ブルーMRF菌叢上に200〜500pfu/150mmプレートの密度でプレーティングする。その後プラークを無作為に採取し、当分野においてよく知られていて下記に記載される方法によるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってポジティブインサートを同定する。好ましくは、プラークは75μL懸濁液培地バッファー(100mMNaCl、10mM MgSO、1mM Tris、pH7.5、0.02%ゼラチン)内に採取する。ファージ溶出液(5μL)を、125μmol/Lの各dNTP(ファルマシア製)、各10pmolの修飾T3(5’−GCCAAGCTCGAAATTAACCCTCACTAAAGGG−3’)およびT7(5’−CCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGCG−3’)プライマー、および2UのTaqDNAポリメラーゼ(ファルマシア製)を含むPCR反応液(総量50μL)に対して使用できる。反応液はDNAサーマルサイクラー(パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)製)内を循環させる[95℃で5分間の変性、その後に増幅の30サイクル(94℃、45秒間;55℃、30秒間;72℃、3分間)および末端等温伸長(72℃、3分間)]。インサートの存在および純度はアガロースゲル電気泳動を使用して評価する。
【0132】
その後PCR産物に、知られている方法(上記のAusubelら、および上記のSambrookらを参照)を使用してDNAシーケンシングを受けさせる。シーケンシングの方法には、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ(Klenow)フラグメント、Sequenase(登録商標)(USバイオケミカル・コーポレーション(BiochemicalCorp.,クリーブランド、OH)製)、Taqポリメラーゼ(パーキン・エルマー製、ノーウォーク、CT)、熱安定性T7ポリメラーゼ(アマーシャム(Amersham)製、シカゴ、IL)または組換えポリメラーゼおよびELONGASE増幅システム(Gibco−BRL製、ゲーサーズバーグ、MD)のようなプルーフリーディングエキソヌクレアーゼの組合せのような酵素を使用する。好ましくは、このプロセスは例えばハミルトン・マイクロ・ラブ(HamiltonMicro Lab)2000(ハミルトン製、レノNV)、ペルチェ(Peltier)サーマルサイクラー(PT200;MJリサーチ(Research)製、ウォータータウン、MA)、ABI377DNAシーケンサー(パーキン・エルマー製)、およびPEバイオシステムズ(Biosystems)ABIプリズム(Prism)3700DNAアナライザーのような機械を使用して自動化する。
【0133】
PCR産物は、まず最初に特異的プライマー、BigDye(商標)ターミネーターサイクルシーケンシングv2.0レディ反応液(PEバイオシステムズ製)、TrisMgClバッファーおよびサーモサイクラー内の水を使用してDNAシーケンシング反応を受けさせる。シーケンシング反応液を94℃で2分間インキュベートし、その後94℃、30秒間;55℃、20秒間;および72℃、1分間の25サイクルおよび94℃、30秒間;72℃、1分間;および72℃、5分間の15サイクルを受けさせる。その後この反応液を、当分野でよく知られている方法(すなわち、アルコール沈降またはエタノール沈降)を使用して精製するまで4℃で保持した。自動化シーケンシングは、好ましくはPEバイオシステムズ製ABIプリズム3700DNAアナライザーを用いて実行する。
PCR
ある態様では、本発明のポリヌクレオチド配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅させる。PCR法は、当業者にはよく知られている。
【0134】
PCRは、当該標的配列を増幅させるために熱安定性のDNA依存性DNAポリメラーゼによって触媒されるDNA複製の複数サイクルを使用して、特定ポリヌクレオチド配列を迅速に増幅させる方法を提供する。PCRには、増幅させられる核酸の存在、増幅される配列を挟んでいる2種の一本鎖オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオチド三リン酸塩、バッファーおよび塩類が必要である。
【0135】
PCRの方法は、当分野においてよく知られている。PCRは、参照してここに組み込まれるMullisand Fallona,1987,Methods Enzymol.,155:335に記載された通りに実施する。
【0136】
PCRは、鋳型DNA(少なくとも1fg;より有用には、1〜1,000ng)および少なくとも25pmolのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して実施する。典型的反応混合物には次が含まれる。2μLのDNA、25pmolのオリゴヌクレオチドプライマー、2.5μLの10HPCRバッファー1(パーキン・エルマー製、フォスターシティ、CA)、0.4μLの1.25μM dNTP、0.15μL(もしくは2.5単位)のTaq DNAポリメラーゼ(パーキン・エルマー製、フォスターシティ、CA)および総量25μLまでの脱イオン水。鉱油をオーバーレイし、PCRはプログラム可能サーマルサイクラーを使用して実施する。
【0137】
PCRサイクルの各ステップの長さおよび温度、並びにサイクル数は、実質的にストリンジェント要求事項にしたがって調整する。アニーリングの温度および実施時期はプライマーが鋳型へアニールすると予想される効率および容認されなければならないミスマッチ度の両方によって決定される。プライマーのアニーリング条件のストリンジェンシーを最適化する能力は、当業者の中程度の知識の範囲内に十分に含まれている。30℃〜72℃のアニーリング温度を使用する。鋳型分子の初期変性は通常92℃〜99℃、4分間に発生し、その後に変性(94〜99℃で15秒間〜1分間)、アニーリング(上記で考察した通りに決定した温度;1〜2分間)、および伸長(72℃で1分間)から構成される20〜40サイクルを実施する。最終伸長ステップは一般に72℃で4分間実施し、その後に4℃に不定期間(0〜24時間)のステップを続けることができる。
【0138】
本発明によると電気泳動を使用せずにPCR産物を定量的に検出するための幾つかの方法も有用なことがある。これらの方法の1つは、そのために例えばTaqman(商標)(パーキン・エルマー製、フォスターシティ、CA)のような市販で入手できるキットがあり、転写特異的アンチセンスプローブを用いて実施する。このプローブはPCR産物(例、遺伝子由来の核酸フラグメント)に対して特異的で、オリゴヌクレオチドの5’末端に複合した消光剤および蛍光レポータープローブを用いて調製する。相違する蛍光マーカーを相違するレポーターに付着させると、1つの反応で2つの産物を測定することが可能になる。TaqDNAポリメラーゼが活性化されると、これは5’−to−3’エキソヌクレアーゼ活性によって鋳型に結合したプローブの蛍光レポーターを開裂する。消光剤の不在下では、レポーターは蛍光を発する。レポーターにおける色の変化は各特異的産物の量に比例しており、PCR産物は蛍光光度計によって測定される。このため各色の量が測定されて、PCR産物が定量される。PCR反応は、多数の個体に由来するサンプルを同時に処理かつ測定できるように96ウェルプレートで実施する。Taqman(商標)システムはゲル電気泳動を必要としないという追加の利点を有しており、標準曲線を使用すると定量が可能になる。
本発明によると有用なポリヌクレオチド配列
本発明は、マイクロアレイ上に配列するとプローブとして使用できる、および/または変形性関節症の治療法を開発するために使用できるESTを含む単離されたポリヌクレオチド配列を提供する。
【0139】
ある態様では、相違する発生段階の軟骨遺伝子発現プロフィールが同定される。本発明のまた別の態様の目的は、変形性関節症の種々の病期にあると診断された変形性関節症患者の軟骨遺伝子発現プロフィールを監視することである。本発明の第3態様の目的は、罹患した軟骨細胞の遺伝子発現プロフィールを変化させる潜在的治療薬についてスクリーニングすることである。このため本発明は、正常、胎児、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症の発生段階および病期の各々に存在するポリヌクレオチド配列を提供する。本発明はさらにまた、正常、胎児、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症の発生段階および病期のうちのいずれか2つにおいて差次的に発現するポリヌクレオチド配列も提供する。
【0140】
本発明によると有用なポリヌクレオチドは、1つの発生段階または病期(正常、胎児、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症)から軟骨組織サンプルを単離し、cDNAライブラリー(上記の通り)を調製し、さらに発現配列タグ(EST)を生成するためにcDNAライブラリーの大規模部分シーケンシング(本明細書で記載される)を実施することによって調製する。本発明によると有用なESTは、長さが好ましくは50〜1,000ヌクレオチドおよび最も好ましくは50〜50ヌクレオチドの範囲内にある。
【0141】
本発明は、すべてここに定義された「機能を有する既知配列」および「既知機能を有していない既知配列」を含む「新規」もしくは「未知」と分類されるポリヌクレオチド配列もしくはESTを提供する。
核酸メンバーおよびプローブ
ある態様では、本発明は標的核酸配列(例、軟骨核酸サンプル中に存在する)に特異的に結合する核酸メンバーおよびプローブを提供する。
【0142】
核酸メンバーは、本発明によるアレイを構成する固体支持体へ安定して結合される。核酸メンバーの長さは、50〜6,000ヌクレオチド、100〜500ヌクレオチド、および他の実施態様では500〜1,500ヌクレオチドの範囲内にある。核酸メンバーは、一本鎖もしくは二本鎖であってよい、および/またはcDNAから増幅させたPCRフラグメントであってよい。
【0143】
本発明はさらにまた、プローブを含むポリヌクレオチド配列を提供する。一定の実施態様では、プローブは当分野で知られている方法により標識される。本発明によるプローブは、長さが50〜5,000ヌクレオチド、より好ましくは100〜500ヌクレオチド、および最も好ましくは50〜250ヌクレオチドである。プローブは、一本鎖もしくは二本鎖であってよい、およびcDNAから増幅させたPCRフラグメントであってよい。
【0144】
本発明による核酸メンバーおよびプローブは、軟骨細胞富裕もしくは軟骨細胞特異的配列のような標的配列、および好ましくはサンプル中のその存在が変形性関節症の病期を標示する、または診断もしくは予後診断する配列を検出するために使用できる。
解析される標的核酸配列は、好ましくはヒトの軟骨、血液または滑液からであり、好ましくはRNAまたはRNAに対応する核酸(すなわち、cDNAまたはRNAもしくはcDNAの増幅産物)を含む。
データ収集およびEST配列の解析
本発明は、「新規配列」、「新規発現配列タグ(EST)」並びに「1つの機能を含む既知配列」および「既知機能を有していない既知配列」を含む「既知配列」を含むEST配列を提供する。
【0145】
生成したEST配列は、既知遺伝子もしくはその他のESTとのESTマッチングについての推定同一性を決定するためにNCBIを介して利用できる「nt」、「nr」、「est」、「gss」および「htg」データベースを含む利用可能なデータベースに対して検索される。相対EST頻度レベルは、その後既知の方法を使用して計算できる。既知遺伝子マッチを有するESTの機能的特徴付けは、いずれかの既知の方法により行う。好ましくは、生成したEST配列はBLASTアルゴリズム(8)を使用して非冗長性Genbank/EMBL/DDBJおよびdbESTデータベースと比較する。既知遺伝子もしくはその他のESTとのESTマッチングについての推定同一性を指定するためには、P=10−10の最小値および>95%のヌクレオチド配列同一性が必要とされるが、このとき配列同一性は不連続性もしくは散乱性である。ESTセットに表示された遺伝子の非冗長性リストの構築は、NCBI(NationalCenter for BiotechnologyInformation(全米バイオテクノロジー情報センター)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)にあるUnigene、EntrezおよびPubMedを用いて実施する。相対遺伝子発現頻度は、各遺伝子についてのESTコピー数を解析されたESTの総数で割ることによって計算する。
【0146】
遺伝子は知られている方法によりESTから同定する。新規遺伝子をEST配列から同定するために、ESTはアノテーションのためには好ましくは長さが少なくとも100ヌクレオチド、およびより好ましくは長さが150ヌクレオチドでなければならない。好ましくは、ESTはオープンリーディングフレームの特徴を示す(すなわち、推定ポリペプチドをコードすることができる)。
【0147】
ヒトゲノムプロジェクトが完成したために、ゲノム配列とマッチする特定ESTはゲノム配列の染色体位置に基づいて特定染色体上にマッピングできる。しかし配列によってコードされたタンパク質に対しては機能が判明しない可能性があり、そのESTは機能的意味で「新規」と見なされる。ある態様では、本発明を使用してそのESTを含む遺伝子の機能(例、軟骨形成および/または軟骨細胞に影響を及ぼす病理学における遺伝子によって産生した発現産物の役割)を決定するために機能が知られていないより大きな既知配列の一部が使用される新規ESTを同定する。あるいはまた、または追加して、ESTを使用すると軟骨形成および/または軟骨細胞に影響を及ぼす病理学の診断もしくは予後診断マーカーとしてのより大きな配列によってコードされるmRNAもしくはポリペプチドを同定することができる。
【0148】
軟骨細胞富裕もしくは軟骨細胞特異的であるより大きな配列に対応するESTを同定すると、そのESTを含むより大きな配列の他の部分は遺伝子機能を引き出すためのアッセイにおいて、例えば胎児、成体、正常および/または罹患個体における軟骨細胞中の遺伝子によってコードされたポリペプチドを単離するため、これらのポリペプチドと特異的に反応する抗体を生成するために、ポリペプチド(受容体、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト等)の結合パターンを同定するために、および/または遺伝子の発現(もしくはその欠如)を検出するために使用できる。
【0149】
また別の態様では、本発明はクエリーが実施される時点に配列データベース中の公に既知配列のいずれかとの「有意なマッチ」を示さないポリヌクレオチド配列を提供する。これらの型の新規EST配列を含む長いゲノムセグメントはゲノムライブラリーを調査することによって同定できるが、他方長い発現配列はcDNAライブラリーにおいて、および/または当分野において知られているようなプライマー配列を引き出すためにEST配列を使用してポリメラーゼ伸長反応(例、RACE)を実施することによって同定できる。長いフラグメントはFISHおよびその他の方法によって特定染色体へマッピングすることができ、それらの配列はゲノム配列データベースおよび/または発現配列データベース中の既知配列と比較し、上記の通りに詳細な機能的解析を実施できる。
【0150】
本発明による方法を使用すると、4つのcDNAライブラリーからの全57,422EST中で618配列については有意なマッチは見いだされなかった。残りの配列を図5に示した通りに特徴付けした。
【0151】
同定された遺伝子については、それらの推定機能にしたがって一覧表を作製できる。既知遺伝子マッチを有するESTの機能的特徴付けは、好ましくはHwangら(5)によって記載されたカテゴリーにしたがって行う。細胞以下カテゴリーの各々における遺伝子の分布は組織の動態を標示しており、変形性関節症の疾患プロセスについての重要な洞察を提供するであろう。この解析の結果は図7に提供したが、ここでは相違するヒト軟骨ライブラリーにおける方法によって同定されたESTの総数が各ライブラリーで同定された既知遺伝子の機能的分類に基づいて特徴付けされている。
【0152】
ESTを解析するまた別の方法もまた利用できる。例えば、各ライブラリーからのESTは例えばPHREDおよびPHRAPのような配列アライメント、エディティングおよびアセンブリープログラムを用いてコンティグへアセンブリすることができる(参照してここに組み込まれるEwingら、1998,GenomeRes.3:175;http://bozeman.genome.washington.edu/)。コンティグ冗長性は、単一ESTcDNAクローンに対するノンオーバーラッピング5’および3’配列読取りに対して一般的であるESTクローン同定番号を使用してノンオーバーラッピング配列コンティグをクラスタリングすることによって減少させる。ある態様では、各クラスターからのコンセンサス配列がNCBIサイトにあるUnigene、EntrezおよびPubMedを含むBLASTアルゴリズムを用いて実施する非冗長性Genbank/EMBL/DDBJおよびdbESTデータベースと比較する。
既知ポリヌクレオチド配列もしくはESTおよび新規ポリヌクレオチド配列もしくはEST
既存ポリヌクレオチド配列データベース中の少なくとも1つの既存配列と有意なマッチ(>65%、および好ましくは90%以上の同一性)を示すESTは本発明による「既知」配列と特徴付けられる。このカテゴリー内では、一部の既知ESTは既知機能を有するポリヌクレオチドをコードする既存配列とマッチし、「1つの機能を有する既知配列」と呼ばれる。その他の「既知」ESTは未知機能のポリペプチドをコードする既存配列との有意なマッチを示し、「既知機能を有していない既知配列」と呼ばれる。
【0153】
ある態様では、本発明はさらに軟骨細胞富裕または軟骨細胞特異的である既知ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0154】
上記に挙げた利用できるデータベース中のいずれかの既存配列との有意なマッチを有していない(同一性が65%未満)EST配列は、新規ESTと分類される。これらの新規ESTは、それらが他の組織由来の他の遺伝子もしくはESTとマッチしていないので軟骨細胞特異的であると見なされている。EST配列からの新規遺伝子を同定するためには、ESTは好ましくは長さが少なくとも150ヌクレオチドである。より好ましくは、ESTはオープンリーディングフレーム、すなわち潜在的にポリヌクレオチド配列に翻訳される翻訳開始コドンと停止コドンの間のポリヌクレオチド配列の少なくとも一部をコードする。
【0155】
本発明は、正常、胎児、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症性軟骨において特異的に発現する既知および新規ポリヌクレオチド配列を提供する。図6および13は、本発明による方法を使用して胎児、正常、軽症変形性関節症、および重症変形性関節症性cDNAライブラリー中の固有既知遺伝子および現在までに同定された新規配列名を示している。
【0156】
本発明はさらにまた、正常、胎児、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症性軟骨中でアップレギュレートおよびダウンレギュレートされる既知および新規ポリヌクレオチド配列を提供する。ある態様では、軟骨細胞中では非軟骨細胞である細胞と比較して、または変形性関節症である個体由来の軟骨細胞中では正常個体と比較して、または特定の発生段階または病期由来の軟骨細胞中で他の特定の発生段階または病期と比較して、ポリヌクレオチド配列に富んでいる。
【0157】
本発明はさらにまた、胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症の発生段階および病期のうちのいずれか2つからの軟骨中で差次的に発現するポリヌクレオチド配列を提供する。
【0158】
相対EST頻度は、各遺伝子についてのESTコピー数を解析したESTの総数で割ることによって計算される。多数の新規ESTの軟骨細胞特異的発現は当分野において知られている方法によって確証されている。組織中の遺伝子発現を測定するための有用な方法には、RTPCR、ノーザンブロット法等が含まれる。
新規核酸分子
本発明の新規核酸分子の多数は軽症変形性関節症と重症変形性関節症の病期間で差次的に発現するので、したがって変形性関節症の潜在的薬物ターゲットまたは疾患プロセスのための潜在的マーカーとして有用である。本発明はさらにまた、胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症性の発生段階および病期のうちの2つ以上で差次的に発現する1つ以上の核酸分子を提供する。本発明はさらに、胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症の発生段階および病期のうちの2つ以上で差次的に発現する1つ以上の新規クローンを提供する。
マイクロアレイ
ポリヌクレオチドマイクロアレイ
マイクロアレイを構築するために、軟骨細胞cDNAライブラリーのいずれかから生成したポリヌクレオチド配列のいずれかの組合せを使用する。ある実施態様では、マイクロアレイは軟骨細胞特異的であり、変形性関節症の疾患プロセスにおいて重要である遺伝子の全スペクトルを含むと予想される。本発明によるマイクロアレイは、好ましくは10〜20,000核酸メンバーを含む、およびより好ましくは少なくとも5,000核酸メンバーを含む。核酸メンバーは、ここに記載した既知もしくは新規ポリヌクレオチド配列、またはその組合せである。本発明によるマイクロアレイを使用すると、相違する軟骨発生段階および変形性関節症病期で特異的に発現する遺伝子の相違する遺伝子発現プロフィールを確認できる。
【0159】
本発明はさらにまた、変形性関節症発生の早期リスク因子の同定を可能にする正常個体と軽症変形性関節症患者との間で差次的に発現する遺伝子を含むマイクロアレイを提供する。本発明はさらにまた、正常個体と軽症、中症、顕著および重症変形性関節症を有すると診断された患者との間で差次的に発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む、変形性関節症性を診断するためのマイクロアレイを提供する。このようなアレイは、さらにまた治療への患者の応答を監視するための予後診断方法のためにも使用できる。好ましくは、変形性関節症診断のためのアレイは10〜20,000核酸メンバーおよびより好ましくは50〜15,000核酸メンバーを含む。ある実施態様では、上記のマイクロアレイを使用すると軟骨細胞の同化活性を調節する、または胎児、正常、軽症、中症、顕著および重症変形性関節症性の発生段階および病期のうちのいずれかに由来する軟骨細胞中で差次的に発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の発現レベルを変化(例、増加または減少)させる治療薬を同定できる。
【0160】
本発明のマイクロアレイを用いてハイブリダイズされて解析される標的核酸サンプルは、好ましくはヒトの軟骨、血液または滑液由来である。この手順についての限界は、標的核酸サンプルとして使用するために入手できるRNAの量にある。好ましくは、本発明により使用するためには少なくとも1μgの全RNAを入手する。これは、滑液および多数の軟骨生検サンプル中のRNAの量がきわめてわずかなので有益である。
マイクロアレイの構築
ある態様では、ヒト軟骨cDNAライブラリーから生成したcDNAをマイクロアレイ上に配列する。好ましくは、本発明によるマイクロアレイは軟骨細胞富裕もしくは軟骨細胞特異的遺伝子を含んでおり、変形性関節症の疾患プロセスにおいて重要な全範囲の遺伝子を含む。
【0161】
図6(並びに図15および16に示したその部分)におけるEST頻度解析は、既知遺伝子についての差次的遺伝子発現プロフィールを示している。本発明によるマイクロアレイを使用するとこれらのプロフィールを確認することができ、さらに新規EST配列について相違する発生段階および変形性関節症病期管の差次的遺伝子発現プロフィールを示すこともできる。これらの新規EST配列はさらにまた新規EST配列によってどのくらいの数の固有遺伝子を表示できるのかを決定するためにクラスターおよびアライメント解析によって特徴付けすることができる。同定された新規固有遺伝子は変形性関節症の疾患進行および治療における重要なマーカーを同定するためのベースを提供できる。
【0162】
標題方法では、実質的に固体支持体の表面と安定して結合された核酸メンバーのアレイを、アレイ上の特異的位置での1つ以上の相補的核酸メンバーが特異的に標的核酸にハイブリダイズする相補的核酸メンバー/標的複合体のバイブリダイゼーションパターンを作製するために重要なハイブリダイゼーション条件下で、標的ポリヌクレオチドを含むサンプルと接触させる。ハイブリダイズする標的核酸の同一性は、アレイ上の核酸メンバーの位置を参照して決定できる。
【0163】
核酸メンバーは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および逆転写(RT)のような確立された方法を使用して作製できる。これらの方法は当分野において現在知られている方法(例えば、PCRStrategies,Michael A.Innnis(編集)ら(1995)およびPCR:Introductionto Biotechniques Series,C.R.Newton,A.Graham(1997)を参照)と類似である。増幅させたポリヌクレオチドは当分野においてよく知られている方法(例、カラム精製法またはアルコール沈降法)によって精製する。ポリヌクレオチドは、プライマーおよび所望のポリヌクレオチドの合成中に生成する不完全生成物を実質的に含んでいないように単離された場合に純粋と見なされる。好ましくは、精製ポリヌクレオチドはさらにまた分子の特異的結合活性を妨害もしくはさもなければ遮蔽する可能性がある汚染物質を実質的に含んでいない。
【0164】
本発明によるマイクロアレイは、相違する20種のポリヌクレオチド/cm2を超える密度で固体支持体の1表面に付加された複数の特異的ポリヌクレオチドを含むが、このときポリヌクレオチド各々は同一ではない予め選択された領域内の固体支持体の表面に付加される。アレイ上に結合された各サンプルは、下記でより詳細に説明する既知の同一性、通例は既知配列のポリヌクレオチド組成を含む。本発明では考えられるあらゆる基質を使用できる。
【0165】
ある実施態様では、固体支持体の表面に付加されたポリヌクレオチドはDNAである。ある好ましい実施態様では、固体支持体の表面に付加されたポリヌクレオチドはcDNAもしくはRNAである。また別の実施態様では、固体支持体の表面に付加されたポリヌクレオチドはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって合成されたcDNAである。好ましくは、本発明によるアレイ内の核酸メンバーの長さは少なくとも50ヌクレオチドである。ある実施態様では、核酸メンバーの長さは少なくとも150ヌクレオチドである。好ましくは、核酸メンバーの長さは1,000ヌクレオチド未満である。より好ましくは、核酸メンバーの長さは500ヌクレオチド未満である。ある実施態様では、アレイは固体支持体の1表面に付加された少なくとも10種のポリヌクレオチドを含む。また別の実施態様では、アレイは固体支持体の1表面に付加された少なくとも100種のポリヌクレオチドを含む。さらにまた別の実施態様では、アレイは固体支持体の1表面に付加された少なくとも10,000種のポリヌクレオチドを含む。さらにまた別の実施態様では、アレイは固体支持体の1表面に付加された少なくとも15,000種のポリヌクレオチドを含む。
【0166】
本発明のアレイでは、ポリヌクレオチド組成物は固体支持体の表面と安定して結合しているが、このとき支持体は柔軟性もしくは剛性固体支持体であってよい。「安定して結合された」は、各核酸メンバーがハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で固体支持体に対して特異的位置を維持することを意味している。したがって、サンプルは支持体表面と非共有的または共有的に安定して結合している。非共有的結合の例には、非特異的吸着、静電的相互作用(例、イオン対相互作用)、疎水性相互作用、水素結合相互作用に基づく結合、支持体表面に共有的に付加された特異的結合対メンバーを介しての特異的結合等が含まれる。共有結合の例には、ポリヌクレオチドと剛性支持体(例、−OH)の表面上に存在する官能基との間で形成された共有結合が含まれるが、このとき官能基は天然型であっても、下記でより詳細に記載する導入された連結基のメンバーとして存在していてもよい。
【0167】
各組成物中に存在するポリヌクレオチドの量は、そのアレイが使用されるアッセイ中に標的ポリヌクレオチド配列の適正なハイブリダイゼーションおよび検出を提供するために十分である。一般に、アレイの固体支持体と安定して結合している各核酸メンバーの量は少なくとも約0.001ng、好ましくは少なくとも約0.02ngおよびより好ましくは少なくとも約0.05ngであるが、このときこの量は1,000ng以上であってもよいが、通常は約20ngを超えない。核酸メンバーが全円形寸法を含むスポットで固体支持体上に「スポット」される場合は、「スポット」の径は一般に約10〜5,000μm、通常は約20〜2,000μmおよびより通常は約100〜200μmの範囲内である。
【0168】
コントロール核酸メンバーはゲノムDNA、ハウスキーピング遺伝子、ベクター配列、植物核酸配列、ネガティブコントロールおよびポジティブコントロール遺伝子等に対応するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む核酸メンバーを含むアレイ上に存在していてよい。コントロール核酸メンバーは、それらの機能が当該の特定「鍵」遺伝子が発現するかどうかを教示することではなく、むしろ例えば発現のバックグラウンドレベルもしくは基礎レベルのような他の有用な情報を提供することである校正またはコントロール遺伝子である。
【0169】
他のコントロールポリヌクレオチドは、アレイ上にスポットして、非特異的結合またはプローブが向けられる標的以外のサンプル中のポリヌクレオチドへの公差ハイブリダイゼーションを監視するために、標的発現対照ポリヌクレオチドおよびミスマッチ対照ヌクレオチドとして使用される。したがってミスマッチプローブはハイブリダイゼーションが特異的であるか否かを標示する。例えば、標的が存在する場合、完全にマッチしたプローブはミスマッチプローブより一貫して明るいはずである。さらに、全対照ミスマッチが存在する場合は、ミスマッチプローブを使用すると突然変異を検出できる。
固体基質
本発明によるアレイは柔軟性基質もしくは剛性基質のいずれかを含む。柔軟性基質は曲げたり、折り畳んだり、または破損させずに同様の操作を行うことができる。本発明に関連して柔軟性固体支持体である固体材料の例には、例えばナイロン、柔軟性プラスチックフィルム等の膜が含まれる。「剛性」は支持体が固体で容易に曲がらない、すなわち支持体が柔軟性ではないことを意味している。したがって、標題アレイの剛性基質はアレイが使用されるアッセイ条件下、特に高スループット取扱い条件下でその上に存在する結合されたポリヌクレオチドへ物理的支持体および構造を十分に提供できる。
【0170】
基質は、粒子、ストランド、沈降物、ゲル、シート、チューブ、球体、ビーズ、容器、毛細管、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライド、チップ等として存在する生物学的基質、非生物学的基質、有機基質、無機基質、またはこれらのいずれかの組合せであってよい。基質は例えば円板、正方形、球形、円形等のようないずれかの従来型形状を有していてよい。基質は、好ましくは平坦もしくは平面的であるが、相違する代替表面構造であってもよい。基質は、重合ラングミュア・ブロジェット(LangmuirBlodgett)フィルム、機能性ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SIN4、改質シリコーン、または広範囲のゲルもしくは例えば(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオライド、ポリスチレン、ポリカーボネートのようなポリマーのいずれか1つ、もしくはそれらの組合せであってよい。その他の基質材料は、本開示を詳細に読めば当業者には容易に明白であろう。
【0171】
ある好ましい実施態様では、基質は板ガラスもしくは単結晶シリコーンである。一部の実施態様によると、基質の表面は所望の表面特徴を提供するためによく知られた方法を使用してエッチングする。例えば、溝、V形溝、メサ構造等の形成によって、合成領域は衝突する光線の焦点内により近くに配置され、蛍光源からの集光を最大化するために反射「鏡」構造を備えていてよい。
【0172】
固体基質上の表面は、常にではないが、通常は基質と同一材料から構成する。あるいはまた、この表面を例えばポリマー、プラスチック、樹脂、多糖類、シリカもしくはシリカに基づく材料、炭素、金属、無機ガラス、膜のような広範囲の材料のいずれか、または上記の基質材料のいずれかから構成してもよい。一部の実施態様では、表面は基質の表面にしっかりと付着されているケージ化結合メンバーの使用を提供できる。好ましくは、この表面はカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基等である反応性基を含む。最も好ましくは、この表面は光学的に透明であり、シリカ表面上で見いだされるような表面Si−OH機能性を有している。
【0173】
基質の表面には、好ましくはリンカー分子の層が用意されているが、リンカー分子が本発明の必須要素ではないことは理解されるであろう。リンカー分子は、好ましくは本発明のポリヌクレオチドを許容するため、基質上で他のポリヌクレオチド分子へハイブリダイズするため、その基質に曝露させられた分子と自由に相互作用するために十分な長さである。
【0174】
しばしば、基質はシリコーンもしくはガラス表面、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオライド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ナイロン66もしくはニトロセルロースのような荷電膜、またはその組合せである。ある好ましい実施態様では、固体支持体はガラスである。好ましくは、基質の少なくとも1つの表面は実質的に平坦である。好ましくは、固体支持体の表面はカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基等を含むがそれらに限定されない反応性基を含む。ある実施態様では、表面は光学的に透明である。ある好ましい実施態様では、基質はポリリシン被覆スライドもしくはガンマアミノプロピルシラン被覆コーニング・マイクロアレイ・テクノロジー(CorningMicroarray Technology)−GAPSもしくはCMT−GAP2被覆スライドである。
【0175】
本発明では、核酸メンバーを付着させることのできるあらゆる固体支持体を使用できる。適切な固体支持体材料の例には、例えばガラスおよびシリカゲルのようなケイ酸塩、セルロースおよびニトロセルロース紙、ナイロン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゴムおよびTEFLON(商標)のようなフルオロカーボン樹脂が含まれるが、それらに限定されない。
【0176】
固体支持体材料は、スライドやビーズを含むがそれらに限定されない広範囲の形状で使用できる。スライドは幾つかの機能的長所を提供するので、固体支持体の好ましい形態である。ガラススライドを使用すると、それらの表面が平坦であるために、プローブおよびハイブリダイゼーション試薬は最小限に抑えられる。スライドを使用すると、さらにまた試薬を標的に絞って適用することができ、一定温度に容易に維持でき、容易に洗浄でき、固体支持体上に固定化されたRNAおよび/またはDNAを直接視認することができる。スライドを使用すると、固体支持体上に固定化されたRNAおよび/またはDNAも容易に除去できる。
【0177】
固体支持体として選択された特定材料は、それが上記の機能を提供する限り本発明にとって必須ではない。通常、本発明を作製もしくは使用する人は費用の経済性および入手し易さ、最終生成物について予想される用途の要求事項、および総合製造プロセスの要求に基づいて市販で最も入手し易い材料を選択するであろう。
スポッティング法
ある態様では、本発明はアレイを含む各核酸メンバーが固体支持体上にスポットされるアレイを提供する。
【0178】
好ましくは、スポッティングは次のように実施される。変形性関節症、胎児または正常軟骨cDNAライブラリーからのcDNAクローンのPCR産物(〜40μL)を、増幅に使用したものと同一96ウェルチューブ内で、4μL(1/10容量)の3M酢酸ナトリウム(pH5.2)および100μL(2.5容量)のエタノールを用いて沈降させ、−20℃で一晩貯蔵する。その後これらを3,300rpm、4℃で1時間遠心する。入手されたペレットは50μLの氷温70%エタノールを用いて洗浄し、再び30分間遠心する。その後ペレットを風乾させ、20μL3×SSC中または50%ジメチルスルホキシド(DMSO)中に一晩かけてしっかりと再懸濁させる。その後サンプルをポリリシン被覆スライド(シグマ(Sigma)製、製品番号P0425)上にロボット型GMS417もしくは427アレイヤー(アフィメトリックス[Affymetrix]製、Ca)を使用して1つずつ、または2つずつのどちらかでスポットする。
【0179】
マイクロアレイ上のスポットの境界は、ダイヤモンドスクライバーを用いてマークできる(スポットは後工程後には見えなくなるので)。アレイはスライドを約1分間にわたり温かい微粒子無含有ddHOを含む培養皿の上方に浮遊させることによって再水和させ、逆方向加熱ブロック上で70〜80℃で3秒間急速乾燥させる。その後、核酸をハイブリダイゼーション前にスライド(ストラタジーン製、ストラタリンカー(Stratalinker)製、65mJ−650×100μJである「650」へ表示するように設定)へUV架橋させる、またはアレイを80℃で2〜4時間焼成する。このアレイをスライドラック内に置く。空のスライドチャンバーを用意し、次の溶液を充填する。無水コハク酸(オールドリッチ製)3.0gを1−メチル−2−ピロリドン(試薬の迅速な添加が不可欠)189mLを溶解させる;無水コハク酸の最終薄片が溶解した直後に、0.2Mホウ酸ナトリウム21.0mLを混入し、その溶液をスライドチャンバー内に注入する。スライドラックをスライドチャンバー内に迅速かつ均一に押し入れ、スライドに決して溶液が残らないように数秒間にわたり激しく上下に振り混ぜ、その後軌道撹拌装置で15〜20分間混合する。スライドラックを2分間にわたり95℃ddHO中へ穏やかに押し入れ、次に95%エタノール中へ5回押し入れる。次に余分のエタノールをペーパータオルに滴下させることによってスライドを風乾させる。アレイは、使用時まで室温でスライドボックス内に貯蔵する。
【0180】
本発明の核酸メンバーを基質へ付着させる(「スポッティング」と呼ばれるプロセス)ために多数の方法を使用できる。例えば、ポリヌクレオチドはポリマー付着の方法を教示するために参照してここに組み込まれる、例えば米国特許第5,807,522号の方法を用いて付着させる。
【0181】
あるいはまた、スポッティングは当分野で知られているコンタクトプリンティングを使用して実施することもできる。
キット
本発明は、本発明のアレイを使用して発現アッセイを実施するためのキットを提供する。標題発明によるこのようなキットは、少なくとも結合された核酸メンバーおよびこのためのパッケージング手段を有する本発明のアレイを含むであろう。キットはさらにまた、例えば1)試験ポリヌクレオチドを生成するためのプライマー;2)任意で1つ以上の特異的に標識したdNTPsおよび/またはrNTPs(例、ビオチニル化またはCy3もしくはCy5タグ付きdNTPs)と一緒にdNTPsおよび/またはrNTPs(事前混合された、または別個のいずれかの);3)例えば蛍光色素の化学的に活性な誘導体のような合成後標識試薬;4)例えば逆転写酵素、DNAポリメラーゼ等のような酵素;5)例えばハイブリダイゼーション用および洗浄用バッファーのような相違するバッファー媒体;6)標識プローブ精製試薬およびスピンカラム等のようなコンポーネント;および7)例えばストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ抱合体、化学蛍光もしくは化学発光基質等のようなシグナル発生試薬およびシグナル検出試薬のような種々の方法に使用される1種以上の追加試薬を含んでいてよい。
マイクロアレイの使用
本発明によるポリヌクレオチドアレイは、1種以上の標的核酸配列を含むサンプル中のきわめて多数のポリヌクレオチドをアッセイできる高スループット法に使用できる。標題発明のアレイは、遺伝子発現解析、変形性関節症の診断および変形性関節症の予後診断、治療への患者の応答の監視、薬物スクリーニング等を含む様々な用途に利用できる。
【0182】
ある態様では、本発明のアレイは、その用途の中でも特に差次的遺伝子発現アッセイに使用される。例えば、アレイは(a)変形性関節症罹患組織と正常組織;(b)相違する病期の変形性関節症を表す組織;(c)発達中の軟骨(例、胎児軟骨);(d)外部もしくは内部刺激への軟骨細胞の応答;(e)治療への軟骨/軟骨細胞応答;(f)軟骨組織工学技術;(g)薬理ゲノム学等の差次的遺伝子発現解析において有用である。アレイはさらにまた、例えば特定細胞における遺伝子の発現パターンに特定活性薬剤が及ぼす作用のような新薬の開発および研究のための広範囲発現スクリーニングにおいても有用であり、このときこのような情報は薬物の有効性および毒性、環境モニタリング、疾患研究等を解明するために使用される。例えば、対応する正常細胞中では観察されない変形性関節症(軽症、中症、顕著、もしくは重症)サンプル中の特定ポリヌクレオチド配列の高度の発現は、変形性関節症特異的遺伝子産物を標示する可能性がある。
標的の調製
本発明によるマイクロアレイのための標的は、好ましくはヒトの軟骨、血液または滑液に由来する。
【0183】
標的ポリヌクレオチドは1種以上の型の化学結合を介して、通常は相補的塩基対合を介して、通常は水素結合形成を介してポリヌクレオチドプローブまたは相補的配列の核酸メンバーに結合することができる。
【0184】
本明細書で使用する「mRNA転写体に由来するポリヌクレオチド」もしくは「mRNAに対応するポリヌクレオチド」とは、それに対するmRNA転写体もしくはそのサブ配列の合成が最終的に鋳型として役立ったポリヌクレオチドを意味する。したがって、mRNAから逆転写させたcDNA、そのcDNAから転写させたRNA、そのcDNAから増幅させたDNA、増幅させたDNAから転写させたRNA等はすべてmRNA転写体に由来する、もしくは対応し、このような由来する、もしくは対応する産物の検出はサンプル中の最初の転写体の存在および/または富裕を標示する、または比例する。したがって、適切な標的核酸サンプルには1つ以上の遺伝子のmRNA転写体、mRNAから逆転写させたcDNA、cDNAから転写させたcRNA、1つ以上の遺伝子から増幅させたDNA、増幅させたDNAから転写させたRNA等が含まれるが、それらに限定されない。本明細書で使用したポリヌクレオチド標的は、好ましくはヒトの軟骨、血液または滑液抽出物に由来する。好ましくは、標的はヒトの軟骨、血液または滑液抽出物に由来するポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、例えば逆転写もしくはPCRのような当分野で知られている方法を使用してヒトの軟骨、血液または滑液mRNA抽出物から合成した一本鎖もしくは二本鎖DNA、RNA、またはDNA−RNAハイブリッドであってよい。
【0185】
最も単純な実施態様では、このようなポリヌクレオチド標的は軟骨、血液または滑液サンプルから単離されたmRNA(例、cDNA)に対応する全mRNAもしくは核酸サンプルを含む。また別の実施態様では、全mRNAは例えば酸グアニジニウム−フェノール−クロロホルム抽出法を使用して所定のサンプルから単離し、ポリA+mRNAはオリゴdTカラムクロマトグラフィーによって、または(dT)n磁気ビーズを使用して単離される(例えば、Sambrookら、MolecularCloning:A Laboratory Manual(分子クローニング:実験マニュアル))(第2版)、第1〜3巻,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)、またはCurrentProtocols in Molecular Biology(分子生物学における最新プロトコル),F.Ausubelら編集,Greene Publishing and Wiley−Interscience,NewYork(1987)を参照)。ある好ましい実施態様では、全RNAはTRIzol(登録商標)試薬(GIBCO/BRL、インビトロジェン・ライフ・テクノロジーズ(InvitrogenLife Technologies)製、製品番号15596)を使用して抽出される。RNAの純度および完全性は、260/280nmでの吸光度およびアガロースゲル電気泳動法、その後に紫外線下での検査によって評価される。
【0186】
一部の実施態様では、例えば滑液を使用したときは、ハイブリダイゼーション前に標的核酸サンプルを増幅させることが望ましい。当業者であれば、増幅方法を使用した場合は常に、定量的結果が望ましい場合は、増幅させたポリヌクレオチドの相対頻度を維持もしくは制御する方法を使用するために注意を払わなければならないことを理解するであろう。「定量的」増幅方法は当業者にはよく知られている。例えば、定量的PCRは同一プライマーを使用して同時に既知量のコントロール配列を共増幅させることを含む。これはPCR反応を校正するために使用できる内標準物質を提供する。高密度アレイは増幅させたポリヌクレオチドを定量するための内標準物質に特異的なプローブを含むことができる。定量的PCRのための詳細なプロトコールは、PCRProtocols,A Guide to Methods and Applications(PCRプロトコール、方法および適用の入門書),Innisら、AcademicPress,Inc.N.Y.,(1990)に提供されている。
【0187】
その他の適切な増幅方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Innisら、PCRProtocols,A Guide to Methods and Applications(PCRプロトコール、方法および適用の入門書)、AcademicPress,Inc.,サンディエゴ,(1990)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallace,1989,Genomics,4:560;Landegrenら、1998,Science,241:1077およびBarringerら、1990,Gene,89:117を参照)、転写増幅(Kwohら、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:1173を参照)、および自己持続性配列複製(Guatelliら、1990,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,87:1874を参照)が含まれるが、それらに限定されない。
【0188】
特に好ましい実施態様では、標的核酸サンプルmRNAを、逆転写酵素およびオリゴdTと一本鎖DNA鋳型を提供するためにファージT7プロモーターをコードする配列とから構成されるプライマーを用いて逆転写する。第2DNA鎖はDNAポリメラーゼを用いて重合させる。二本鎖cDNAの合成後に、T7RNAポリメラーゼを添加し、RNAをcDNA鋳型から転写する。各単一cDNA鋳型からの連続転写過程は増幅させたRNAを生じさせる。インビトロ転写法は当業者にはよく知られており(例、上記のSambrookを参照)、この特定方法はこの方法によるとインビトロ増幅が相違するRNA転写体の相対頻度を維持することを証明したVanGelderら、1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:1663−1667によって詳細に記載されている。さらにその上、Eberwirnら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:3010−3014は、生物学的サンプルが限定される場合にさえ発現のモニタリングを許容する最初の出発物質の10倍を超える増幅を達成するためにインビトロ転写による2回の増幅を使用するプロトコールを提供している。
標的もしくは核酸プローブの標識
標的もしくはプローブのいずれかを標識できる。
【0189】
本発明では、分子に付着されている、または分子内に組み込まれている分析により検出可能なあらゆるマーカーを使用できる。分析により検出可能なマーカーとは、分析により検出かつ定量されるあらゆる分子、部分もしくは原子を意味する。
【0190】
本発明に使用するために適切な検出可能な標識には、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的もしくは化学的手段によって検出可能なあらゆる組成物が含まれる。本発明における有用な標識には、標識ストレプトアビジン抱合体を用いて染色するためのビオチン、磁気ビーズ(例、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質等)、放射性標識(例、3H、125I、35S、14Cもしくは32P)、酵素(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAで一般に使用されるその他の酵素)、および例えばコロイド状金もしくは色ガラスもしくはプラスチック(例、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)ビーズのような比色標識が含まれる。このような標識の使用を教示している特許には、その全体が参照してここに組み込まれる米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号および第4,366,241号が含まれる。
【0191】
このような標識を検出する手段は、当業者にはよく知られている。したがって、例えば放射性標識は写真用フィルムまたはシンチレーション計数管を使用して検出でき、蛍光マーカーは放射光を検出するための光検出器を使用して検出できる。酵素標識は、典型的には基質とともに酵素を提供し、基質上の酵素の作用によって生成する反応産物を検出することによって検出され、さらに比色標識は色標識を単純に視認することによって検出される。
【0192】
標識は、当業者によく知られている多数の手段のいずれかによって組み込むことができる。しかし、ある好ましい実施態様では、標識はサンプルポリヌクレオチドの調製における増幅ステップ中に同時に組み込む。したがって、例えば標識プライマーまたは標識ヌクレオチドとのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は標識増幅産物を提供する。ある好ましい実施態様では、上記のような標識ヌクレオチド(例、フルオレセイン標識UTPおよび/またはCTP)を使用した転写増幅は標識を転写ポリヌクレオチド内へ組み込んでいる。
【0193】
あるいはまた、標識は最初のポリヌクレオチドサンプル(例、mRNA、ポリA mRNA、cDNA等)または増幅が完了した後の増幅産物へ直接に添加することができる。ポリヌクレオチドへ標識を付着させる手段は当業者にはよく知られており、例えばポリヌクレオチドのキナーゼ化およびその後のサンプルポリヌクレオチドを標識(例、蛍光体)を結合するポリヌクレオチドリンカーの付着(連結)によるニックトランスレーションまたは末端標識化(例、標識RNAを用いて)が含まれる。
【0194】
ある好ましい実施態様では、蛍光修飾は例えばCy3/Cy5 dUTP、Cy3/Cy5 dCTP(アマーシャム・ファルマシア(Amersham Pharmacia)製またはアレクサ(alexa)色素(Khanら、1998,Cancer Res.58:5009−5013を参照)のようなシアニン色素によって行う。
【0195】
ある好ましい実施態様では、例えば正常軟骨から作製した標的をCy5を用いて標識し、軽症変形性関節症の軟骨から作製した標的をCy3を用いて標識するように、比較のために使用する2つの標的サンプルを識別可能な検出シグナルを生成する種々の蛍光色素を用いて標識する。差次的に標識した標的サンプルを同一マイクロアレイに同時にハイブリダイズさせる。ある好ましい実施態様では、標識標的は、例えばエタノール精製またはカラム精製によって当分野でよく知られている方法を使用して精製する。
【0196】
ある好ましい実施態様では、標的はマイクロアレイから生成したシグナルを標準化するためにマイクロアレイ上のコントロールプローブにハイブリダイズする1つ以上のコントロール分子を含む。好ましくは、標識標準化標的は上記の通りにマイクロアレイ上にスポットされるコントロールオリゴヌクレオチドに完全に相補的であるポリヌクレオチド配列である。ハイブリダイゼーション後の標準化コントロールから入手された信号はハイブリダイゼーション条件、標識強度、「読取り」効率およびアレイ間で変化する完全ハイブリダイゼーションのシグナルを誘発する可能性がある他の因子における変動に対するコントロールを提供する。ある好ましい実施態様では、アレイ内の他のすべてのプローブから読み取られたシグナル(例、蛍光強度)をそれにより測定値を標準化するために、コントロールプローブからのシグナル(例、蛍光強度)で割る。
【0197】
好ましい標準化標的は、サンプル中に存在する他の標的の平均長を反映するように選択するが、しかしそれらはある範囲の長さを含むように選択する。1つ以上の標準化コントロールはさらにまた、アレイ内の他のプローブの(平均)塩基組成を反映するように選択できるが、しかしある好ましい実施態様では、1つまたは小数の標準化プローブだけを使用し、それらはそれらがしっかりとハイブリダイズし(すなわち、二次構造を有しておらず、自己ハイブリダイズしない)、いずれの標的分子にもマッチしないように選択する。
【0198】
標準化プローブは、ハイブリダイゼーション効率における空間的変動について対照するためにアレイ内のいずれかの位置またはアレイ全体の複数の位置に局在させる。ある好ましい実施態様では、標準化コントロールはアレイの隅もしくは辺縁並びに中央に置く。
ハイブリダイゼーション条件
ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションは、プローブもしくは標的核酸メンバーおよびその相補的標的が相補的塩基対合を介して安定性のハイブリッド二重鎖を形成できる条件下で変性したプローブもしくは標的核酸メンバーおよび標的ポリヌクレオチドを提供することを含む。その後ハイブリッド二重鎖を形成しないポリヌクレオチドは、典型的には付着された検出可能な標識の検出を介して検出されるハイブリダイズされたポリヌクレオチドを残して洗い流す。一般には、ポリヌクレオチドは温度を増加させる、またはポリヌクレオチドを含有するバッファーの塩濃度を低下させることによって変性させられると認識されている。低ストリンジェント条件(例、低温および/または高塩含量)下では、ハイブリッド二重鎖(例、DNA:DNA、RNA:RNAまたはRNA:DNA)はアニーリングされた配列が完全に相補的ではない場合でさえ形成する。したがってハイブリダイゼーションの特異性は、低ストリンジェンシーでは低下する。これとは反対に、ストリンジェンシーが高い場合(例、高温または低塩含量)は、ハイブリダイゼーションに成功するにはミスマッチが少ないことが必要とされる。
【0199】
本発明は、Digハイブリダイゼーションミックス(ベーリンガー(Boehringer)製);または例えば上記のAusubelらおよび上記のSambrookらに記載されているホルムアミドをベースとするハイブリダイゼーション液を含むハイブリダイゼーション条件を提供する。
【0200】
ハイブリダイゼーション条件を最適化する方法は、当業者によく知られている(例えば、LaboratoryTechniques in Biochemistryand Molecular Biology,Vol.24:HybridizationWith Polynucleotide Probes(生化学および分子生物学における実験技術第24巻:ポリヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーション),P.Tijssen編集、Elsevier,N.Y.(1993)を参照)。
【0201】
ハイブリダイゼーション後、ハイブリダイズしなかった標識もしくは非標識ポリヌクレオチドを好都合にも洗浄によって支持体表面から取り除くと、それにより基質表面上にハイブリダイズした標的ポリヌクレオチドのパターンが生成する。様々な洗浄液が当業者に知られており、これらを使用してもよい。標識されたハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドの結果として生じるハイブリダイゼーションパターンは、試験ポリヌクレオチドの特定標識に基づいて選択される検出の特定方法を含む様々な方法で視認または検出することができるが、このとき代表的検出手段にはシンチレーション計数、オートラジオグラフィー、蛍光測定、比色測定、発光測定等が含まれる。
画像収集およびデータ解析
上記のようなハイブリダイゼーションおよびあらゆる洗浄ステップおよび/または引き続いての処理後に、結果として生じるハイブリダイゼーションパターンが検出される。ハイブリダイゼーションパターンを検出または視認する際に、標識の強度およびシグナル値は検出されるだけではなく定量されるが、これはハイブリダイゼーションパターンにおけるアレイ上の特定スポットへハイブリダイズする各末端標識標的のコピー数の計数値または絶対値を入手するためにハイブリダイゼーションの各スポットからのシグナルが測定されて既知数の末端標識ポリヌクレオチドによって放出されたシグナルに対応する単位値と比較されることを意味する。
【0202】
アレイへのハイブリダイゼーションから収集したデータを解析する方法は、当分野においてよく知られている。例えば、ハイブリダイゼーションの検出が蛍光標識を含む場合は、データ解析は収集したデータから基質の位置の関数として蛍光強度を測定するステップ、外れ値、すなわち規定の統計的分布から逸脱しているデータを取り除くステップ、および残っているデータから試験ポリヌクレオチドの相対結合親和性を計算するステップを含む。結果として生じたデータは、関連オリゴヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドおよび試験ポリヌクレオチドの間の結合親和性により変化する各領域における強度を含む画像として表示される。
【0203】
比較される2つの軟骨サンプルを同時解析するためには下記の検出プロトコールが使用されるが、このとき各サンプルは相違する蛍光色素を用いて標識される。
【0204】
マイクロアレイの各要素は第1蛍光色についてスキャンされる。各アレイ要素での蛍光強度はサンプル中のその遺伝子の発現レベルと比例している。
【0205】
スキャニング操作を第2蛍光標識について繰り返される。2種の蛍光強度の比率は2種の組織サンプル中の相対遺伝子発現レベルの高度に正確かつ定量的測定を提供する。
【0206】
ある好ましい実施態様では、固定化標的核酸配列の蛍光強度はレーザー励起源およびCy3およびCy5蛍光色素のために適切な干渉フィルターを装備した特注共焦点顕微鏡を用いて撮影した画像から決定した。1ピクセル当たり225μmの解像度および65,536グレーレベルの解像度で各蛍光色素について個別スキャンを実施した。ハイブリダイゼーションの領域を同定するための画像分割、2つの蛍光色素画像間の強度の標準化、および標準化平均蛍光値の計算は記載されている通りである(Khanら、1998,CancerRes.58:5009−5013.Chenら、1997,Biomed.Optics 2:364−374を参照)。画像間の標準化を使用すると、2種の蛍光色素を用いた標識および検出における相違する効率について調整できる。これはアレイ上にスポットされた1組の内部コントロール遺伝子のシグナル強度比の数値を平衡化することによって達成される。
【0207】
また別の好ましい実施態様では、アレイはCy3およびCy5チャネルでスキャンされ、個別16ビットTIFF画像として保存される。画像は、アレイ上の各スポットからハイブリダイゼーション強度データを捕捉するためにデータをグリッド・プロセスを含むソフトウェアを使用して組み込まれて解析される。各スポットの蛍光強度およびバックグラウンド除去ハイブリダイゼーション強度を収集し、Cy5対Cy3の測定した平均強度の比率が計算される。標準化のために線形回帰アプローチを使用し、測定したCy5対Cy3の散布図が1つの範囲を有するはずであると推定する。比率の平均値を計算し、これを使用してデータのサイズを変更し、1つへの傾斜を調整する。1.0倍を超えるアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションの標準化後カットオフを使用して差次的に発現した遺伝子が同定される。
【0208】
検出または視認に引き続いて、ハイブリダイゼーションパターンを使用してハイブリダイゼーションパターンを生成するためにアレイと接触させた標識標的ポリヌクレオチドサンプル、並びに標識標的ポリヌクレオチドサンプルが由来する生理学的起源の遺伝的プロフィールについての定量的情報が決定される。「遺伝的プロフィール」とは、例えばそれに対してそれらが相補的である遺伝子の型、および/またはサンプル中の各特定ポリヌクレオチドのコピー数のようなサンプル中に存在するポリヌクレオチドの型に関する情報を意味する。このデータから、例えば標的の生理学的起源である組織もしくは細胞中で発現した遺伝子の型、並びに特に定量的表現での各遺伝子の発現レベルのようなそれに標的ポリヌクレオチドサンプルが由来した生理学的起源についての情報を引き出すこともできる。
【0209】
2つ以上の生理学的起源から標的ポリヌクレオチドを比較するために標題方法を使用した場合は、ハイブリダイゼーションパターンを比較するとパターン間の差を同定することができる。相違する核酸メンバーの各々が既知遺伝子と対応するアレイを使用した場合は、何らかの矛盾は比較されている生理学的起源中の特定遺伝子の差次的発現に関連している。したがって、標題方法は差次的遺伝子発現アレイにおいて利用でき、その場合には標題方法を(a)例えば変形性関節症性組織と正常組織のような疾患組織対正常組織、(b)相違する病期の変形性関節症に由来する組織等の差次的発現解析に使用できる。
【0210】
特に好ましい実施態様では、サンプル中の1つ以上のポリヌクレオチド配列の転写レベル(およびそれによる発現)を定量することが好ましい場合は、標的核酸サンプルは1つ以上の遺伝子のmRNA転写体の濃度と、またはmRNA転写体に由来するポリヌクレオチドの濃度はその遺伝子の転写レベル(およびこのために発現レベル)と比例している。同様に、ハイブリダイゼーションシグナル強度がハイブリダイズされたポリヌクレオチドの量と比例することが好ましい。比例が相当に厳密であること(例えば、転写速度における倍加はサンプルポリヌクレオチドプールにおけるmRNA転写体の倍加およびハイブリダイゼーションシグナルの倍加を生じさせる)が望ましいが、当業者であれば比例がより緩やかであったり、非線形であったり、さらに有意味な結果を提供できる可能性があることを理解するであろう。したがって、例えば標的mRNAの濃度における5倍の差がハイブリダイゼーション強度における3〜6倍の差を生じさせるアッセイはほとんどの目的にとって十分である。より正確な定量が必要とされる場合は、本明細書で記載したサンプル調製およびハイブリダイゼーションに導入された変化を補正するために適切なコントロールがランされる。さらに、「標準」標的mRNAの連続希釈を使用して当業者にはよく知られている方法によって検量線が作製される。当然ながら、転写体が存在するか不在であるかについての単純な検出が望ましい場合は、念入りのコントロールもしくは校正は必要とされない。
【0211】
例えば、マイクロアレイ核酸メンバーがハイブリダイゼーション後に標識されない場合は、これはその核酸メンバーを含む遺伝子がいずれのサンプルにおいても発現していないことを標示する。核酸メンバーが単色で標識された場合は、これは標識遺伝子が1つのサンプル中でのみ発現したことを標示する。アレイを構成する核酸メンバーの両方の色を用いた標識は、その遺伝子が両方のサンプル中で発現したことを標示する。1細胞につき1回しか発現しなかった遺伝子でさえ検出される(100,000分の1の感度)。比較されている2つのサンプル中の発現強度における差は差次的発現を指示しており、2つのサンプル中の強度の比率は1.0ではない、好ましくは0.7未満もしくは1.2より大きい、より好ましくは0.5未満もしくは1.5より大きい。
【0212】
多数のヒト遺伝子は、相違する発生段階(胎児対成熟)または病期の軟骨中で相違するレベルで発現する。ある場合には、1つの遺伝子は一部の発生段階もしくは病期においては発現せず、他の発生段階もしくは病期においては高レベルで発現する。ESTに基づくアプローチを使用して種々の軟骨状態における軟骨細胞遺伝子発現の層別解析を使用すると、変形性関節症の病因および軟骨修復における重要な役割を果たす可能性がある遺伝子を同定することができる。この方法の長所は、他の方法より大規模で遺伝子発現情報を提供できる点にある。このアプローチによって生成したcDNAクローンは、一定の遺伝子の今後の機能的試験のために有用である。この型のゲノムに基づくアプローチは、変形性関節症の疾患プロセスの理解についての重要な新規洞察を提供でき、さらに新規の診断学的、予後診断学的および治療的アプローチを提供できる。
診断学的もしくは予後診断学的試験
本発明は、さらにまた変形性関節症を検出するための診断試験を提供する。本発明はさらにまた患者の治療への応答を監視するために予後診断試験を提供する。
【0213】
本発明の方法によると、患者から軟骨サンプルを入手することにより軽症、中症、顕著または重症変形性関節症が検出される。また別の実施態様では、血液もしくは滑液サンプルを患者から入手する。RNAに対応する核酸(すなわち、RNAもしくはcDNA)を含むサンプルは、患者の軟骨(または血液もしくは滑液)サンプルから調製する。RNAに対応する核酸を含むサンプルは固体基質および複数の核酸メンバーを含むアレイへハイブリダイズさせられるが、このとき少なくとも1つのメンバーは本発明によると、「健常個体」と比較して、軽症、中症、顕著または重症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現する。この診断学的試験によると、RNAに対応する核酸を含むサンプルのアレイ上の1つ以上の核酸メンバーへのハイブリダイゼーションは疾患を標示する。
【0214】
治療への患者の応答は、本発明による予後診断学的試験を使用して監視される。ある態様では、本発明による予後診断学的試験は治療前、治療の経過中および治療後に患者から軟骨サンプルを入手するステップを含む。好ましくは、患者はサンプルを採取する少なくとも12時間前に治療される。また別の実施態様では、治療前、治療の経過中および治療後に患者から血液もしくは滑液サンプルを入手する。RNAに対応する核酸(すなわち、RNAもしくはcDNA)を含むサンプルは患者の軟骨(または血液もしくは滑液)サンプルから調製する。RNAに対応する核酸を含むサンプルは固体基質および複数の核酸メンバーを含むアレイへハイブリダイズさせられ、このとき少なくとも1つのメンバーは本発明によると、健常個体と比較して、軽症、中症、顕著または重症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨中で差次的に発現する。患者の治療の診断状態によって選択されるアレイは監視される。この予後診断学的試験によると、治療前および治療後に単離されたRNAに対応する核酸を含むサンプルのアレイ上の1つ以上の核酸メンバーへの差次的ハイブリダイゼーションは有効な治療を標示する。好ましくは、治療されている患者における遺伝子発現プロフィールは、疾患のより重症性の低い形態の患者における遺伝子発現プロフィールへより密接に似るように変化する、またはより好ましくは正常患者における遺伝子発現プロフィールにより密接に似ている。遺伝子発現プロフィールにおける変化の程度は、さらにまたこの疾患に関連している1つ以上の症状の重症度および/または発生における減少のような相違する治療エンドポイントとさらに相関している可能性がある。
治療薬
本発明による有用な治療薬は、軟骨細胞の同化活性および/または異化活性を増加または低下させる可能性がある。好ましくは、治療薬は軟骨細胞の同化活性および/または異化活性を未治療軟骨細胞と比較して1.0倍より大きく、より好ましくは1.5〜5、および最も好ましくは5〜100倍増加または低下させる可能性がある。
【0215】
ある実施態様では、治療薬は胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症の軟骨細胞の病期または発生段階のうちのいずれかに由来する軟骨細胞中で差次的に発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の発現レベルを変化(例、増加または低下)させる。好ましくは、治療薬ポリヌクレオチド配列の発現レベルの変化または胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症の軟骨細胞の病期または発生段階のうちのいずれかに由来する軟骨細胞中で差次的に発現するポリヌクレオチド配列の発現における増加もしくは低下を誘発するが、このとき変化は候補治療薬の不在下での発現レベルに比較しておおよそ1.0倍より大きい、より好ましくは1.5〜5倍、および最も好ましくは5〜100倍である。
【0216】
また別の実施態様では、本発明による治療薬は軟骨変性、もしくは疼痛、腫脹、虚弱および/または軟骨変性に関連した罹患関節における機能的能力の消失を含む変形性関節症に関連した少なくとも1つの症状および/または変化を改善することができる。
【0217】
候補治療薬は、合成化合物、もしくは複数の化合物の混合物であってよい、または天然生成物(例、植物抽出物もしくは培養上清)であってよい。
【0218】
合成もしくは天然化合物の大規模ライブラリーからの候補治療薬または化合物をスクリーニングすることができる。現在は糖類、ペプチドおよび核酸に基づく化合物をランダム合成および指向性合成のためにきわめて多数の手段が使用されている。合成化合物ライブラリーは、メイブリッヂ・ケミカル社(MaybridgeChemical Co.)(Trevillet,コーンウォール、英国)、コムジェネックス(Comgenex)(プリンストン、NJ)、ブランドン・アソシエイツ(BrandonAssociates)(メリマク、NH)、およびマイクロソース(Microsource)(ニューミルフォード、CT)を含む多数の企業から市販で入手できる。希少化学薬品ライブラリーはオールドリッチ(Aldrich)(ミルウォーキー、WI)から入手できる。コンビナトリアル・ライブラリーを利用でき、調製できる。あるいはまた、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態にある天然化合物のライブラリーは、例えばパン・ラボラトリーズ(PanLaboratories)(ボセル、WA)またはマイコサーチ(MycoSearch)(NC)から入手できる、または当分野でよく知られた方法によって容易に作製できる。さらに、天然および合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、従来型の化学的、物理的および生化学的手段を介して容易に修飾される。
【0219】
有用な化合物は多数の化学クラス内で見出すことができる。有用な化合物は有機化合物、もしくは小さな有機化合物であってよい。小さな有機化合物は50を超えるがそれでも2,500ダルトン未満の、好ましくは約750未満、より好ましくは約350ダルトン未満の分子量を有している。代表的クラスには異種細胞、ペプチド、糖類、ステロイド等が含まれる。これらの化合物は、有効性、安定性、薬学的適合正当を増強するために修飾することができる。薬剤の構造的同定を使用すると追加の物質を同定、生成またはスクリーニングすることができる。例えば、ペプチド物質が同定される場合は、それらは例えばD−アミノ酸、特にD−アラニンのような例えば非天然アミノ酸を使用して、例えばアミノ基についてはアシル化またはアルキル化、およびカルボキシル基についてはエステル化もしくはアミド化等のようなアミノ末端もしくはカルボキシル末端を機能化することによるような、様々な方法でそれらの安定性を増強するために修飾することができる。
【0220】
本発明による治療薬は、相違する発生段階および病期の軟骨から構築したcDNAライブラリーのいずれかから同定されたEST配列に対応する遺伝子であってよい。
【0221】
各cDNAライブラリーは、特定段階に特異的な多数のEST配列を明らかにした。ESTはまず最初にそれらの推定機能(表2〜6)により特徴付けされ、それらの発現が本明細書で記載したマイクロアレイを使用して確証される。変形性関節症は異化活性と同化活性の間の不均衡、すなわち異化活性の増大および/または同化活性の低下によって惹起される慢性疾患であるので、正常もしくは胎児特異的ESTは異化活性と同化活性との間の平衡を維持できるように軟骨の正常代謝機能を維持することに重要である可能性がある。このため、これらのESTの1つ以上に対応する全長遺伝子配列の発現増加は罹患軟骨における同化活性を修復する可能性がある。本発明による遺伝子発現の変化を含む療法(例、遺伝子療法、遺伝子破壊、アンチセンス療法等)は有用である。
【0222】
正常もしくは胎児特異的遺伝子の1つに対応する全長遺伝子配列は当分野においてよく知られた方法(例、Ausubelら、JohnWeley & Sons,Inc.,1997,CurrentProtocols in Molecular Biology)によってクローン化される。クローン化配列はいずれかの病期の変形性関節症(例、軽症、中症、顕著および重症)から単離された罹患軟骨細胞内にトランスフェクトされる。正常もしくは胎児特異的遺伝子が罹患軟骨細胞における同化作用の欠陥を補完する能力が利用される。
【0223】
ある実施態様では、これは正常もしくは胎児特異的遺伝子を用いてトランスフェクトされた罹患軟骨細胞の発現プロフィールを試験することにより達成される。罹患軟骨細胞の発現プロフィールを正常もしくは胎児特異的遺伝子の発現プロフィールへより密接に近づけるために修復できる正常もしくは胎児特異的遺伝子は、変形性関節症の治療のための有用な候補である。
【0224】
また別の実施態様では、正常もしくは胎児特異的遺伝子を用いてトランスフェクトされた罹患軟骨細胞の同化活性はWestacottら(1996,SeminArthritis Rheum,25:254−72)によって記載された通りに測定する。同化活性を増加させる正常もしくは胎児特異的遺伝子は変形性関節症の治療のために有用である。
【0225】
治療薬を定義したら、遺伝子配列を遺伝子療法のために適切なベクター内にサブクローニングする。マウス白血病ウイルス(MLV)に基づくレトロウイルスベクターは、遺伝子療法臨床試験で最も広範囲に使用される遺伝子送達媒体の1つであり、承認されたプロトコールのほぼ70%で使用されてきた(AliM.ら、1994,Gene Ther.,1:367−384;Marshall,1995,Science,269:1050−1055,1995を参照)。その他の有用なベクターも当分野において知られている(例、Carterand Samulski,2000,Int.J.Mol.Med.6:17−27;Leverら、1999,Biochem.Soc.Trans.27:841−7)。ヒトの疾患に対する遺伝子療法の方法は、その全体が参照してここに組み込まれる例えば米国特許第6,190,907号;第6,187,305号;第6,140,087号;および第6,129,705号に記載されている。
用量および投与
本発明の治療薬は、好ましくは生物学上適合する溶液もしくは医薬上許容される送達媒体中に含めて、摂取、注射、吸入または当分野で日常的な他のいずれかの方法によって患者に投与する。投与する用量は患者毎に相違する。「治療有効量」は、例えば機能増強レベル(例えば、軟骨細胞同化活性の増加もしくは減少、または胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症または重症変形性関節症の軟骨細胞の病期もしくは発生段階のいずれかに由来する軟骨細胞中で差次的に発現する少なくとも1つのポリヌクレオチド配列の発現の増加もしくは低下)によって決定される。
【0226】
本発明による治療薬は単回投与で投与する。この投与は、1日1回、週1回、月1回、年1回または治療を行う医師が適切と見なしたときに繰り返すことができる。
医薬組成物
本発明は、生理学的に適合する担体と混合された本発明による治療薬を含む組成物を提供する。本明細書で使用する「生理学的に適合する担体」とは例えば水、リン酸緩衝食塩液、または生理食塩液のような生理学的に許容される希釈剤を意味し、さらにアジュバントを含むこともできる。不完全フロイントアジュバント、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムもしくはミョウバンのようなアジュバントは当分野でよく知られている物質である。
【0227】
本発明はさらにまた医薬組成物を提供する。有効成分に加えて、これらの医薬組成物は医薬上使用される適切な医薬上許容される担体調製物を含んでいてよい。
【0228】
経口投与するための医薬組成物は経口投与に適切な用量で当分野でよく知られている医薬上許容される担体を使用して調製する。このような担体は、医薬組成物を患者によって摂取される錠剤、丸薬、錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として調製することを可能にする。
【0229】
経口使用するための医薬調製物は、有効成分と固形賦形剤との組み合わせ、結果として生じた混合物を任意で粉末化し、所望であれば錠剤もしくは糖衣錠コアを入手するために適切な補助物質を添加した後に顆粒の混合物を加工処理することで入手する。適切な賦形剤は、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールのような糖類;トウモロコシ、麦、米、馬鈴薯もしくは他の植物からのデンプン;例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース;アラビアゴムおよびトラガガントゴムを含むゴム;およびゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質のような炭水化物またはタンパク質充填剤である。所望であれば、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギニン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムのような、その塩のような、崩壊剤、もしくは溶解補助剤を添加できる。
【0230】
糖衣錠のコアにはさらにアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、および適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物も含んでいてよい糖濃縮液のような適切なコーティング剤が用意されている。製品同定または有効成分の量、すなわち用量を特徴付けるために錠剤もしくは糖衣錠コーティング剤に染料もしくは顔料を添加できる。
【0231】
経口使用する医薬調製物は、ゼラチンから作られた押込み嵌めカプセル、並びにゼラチンから作られた軟質密封カプセルおよびグリセロールもしくはソルビトールのようなコーティング剤を含むことができる。押込み嵌めカプセルは例えばラクトースもしくはデンプンのような充填剤もしくは結合剤、例えばタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および任意で安定剤と混合された有効成分を含有することができる。軟質カプセルでは、有効成分は例えば脂肪油、液状パラフィン、または安定剤を含む、もしくは含まない液状ポリエチレングリコールのような適切な液体中に溶解もしくは懸濁させることができる。
【0232】
非経口投与用の医薬調製物には、有効成分の水溶液が含まれる。注射用には、本発明の医薬組成物は水溶液中で、好ましくは例えばハンクス液、リンガー液、または生理学的緩衝食塩液のような生理学的に適合するバッファー中で調製できる。水性注射用懸濁液は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、もしくはデキストランのような懸濁液の粘度を増加させる物質を含有していてよい。さらに、有効溶媒もしくは媒体の懸濁液には、例えばゴマ油のような脂肪油、または例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステルまたはリポソームが含まれる。任意で、懸濁液は、さらにまた適切な安定剤、または高濃縮液の調整を可能にするために、化合物の溶解度を上昇させる物質を含有してよい。
【0233】
経鼻投与用には、浸透させられる特定障壁に適切な浸透剤を調製物中に使用する。このような浸透剤は一般に当分野で知られている。
【0234】
本発明の医薬組成物は、例えば従来型混合、溶解、顆粒形成、糖衣錠形成、浮揚、乳化、カプセル封入、封入または凍結乾燥プロセスにより当分野で知られている方法で製造できる。
【0235】
医薬組成物は、塩として用意でき、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸等を含むがそれらに限定されない多数の酸を用いて形成する。塩は、遊離塩基形に対応する水性または他のプロトン性溶媒中でより溶解性である傾向がある。他の場合には、好ましい調製物は使用前にバッファーと組み合わせられる4.5〜5.5のpH範囲の1mM−50mMヒスチジン、0.1%〜2%スクロース、2%〜7%マンニトール中の凍結乾燥粉末であってよい。
【0236】
許容される担体中で調製された本発明の治療薬を含む医薬組成物が調製された後、それらは適切な容器に入れられ、量、投与頻度および投与方法を含む情報とともに指示された条件の治療について標識される。
定義された治療薬を使用する変形性関節症治療の有効性
本発明による治療薬のいずれかを使用した治療の有効性は、医師が決定する。この決定は例えば疼痛、腫脹、虚弱および機能的能力の消失のような変形性関節症の症状を緩和すること、および/またはMarshall(1996年、上記)に記載された変形性関節症の診断基準に関連する可能性がある。
【0237】
上記の開示では、本発明を概して説明した。例示だけを目的として提供されて本発明の範囲を限定することは意図されていない次の特異的サンプルを参照することにより、本発明をより完全に理解することができよう。
[実施例]
下記の実施例は非限定的であり、単に本発明の相違する態様および特徴を表している。
【実施例1】
【0238】
[RNA抽出および胎児cDNAライブラリーの構築]
cDNAライブラリーを胎児軟骨から調製した。ESTはcDNAライブラリーから入手し、胎児軟骨細胞についての1つ以上の遺伝子発現プロフィールを作製するために評価した。
【0239】
ヒト胎児大腿骨軟骨RNAは、流産した胎児(8〜12週齢)のプール標本から抽出した。サンプルは液体窒素下で微細粉末化し、TRIzol(登録商標)試薬(GIBCO/BRL)を使用して全RNAを抽出した。RNAの純度および完全性は260/280nmでの吸光度およびアガロースゲル電気泳動により評価した。ポリ(A)+RNA破片はオリゴ−dTセルロースクロマトグラフィー(ファルマシア製)によって単離でき、および3〜5μgのポリ(A)+RNAを使用してλZAP発現ベクター(ストラタジーン製)中でcDNAライブラリーを構築した。第1鎖cDNAは5’−メチルdCTPの存在下でXhoI−オリゴ(dT)アダプター−プライマーを用いて合成した。第2鎖合成およびEcoRIアダプターの連結後、Xho Iを用いてcDNAを消化させると、5’末端でのEcoRI部位および3’末端でのXho I部位によって挟まれたcDNAが生じた。消化されたcDNAをセファクリル(Sephacryl)S−500スピンクラム(ストラタジーン製)内でサイズ分別し、その後EcoRIおよびXhoIを用いて前消化されたλZAP発現ベクター内へ連結させた。結果として生じたDNA/cDNAコンカテマーはギガパック・ゴールド(GigapackGold)パッケージング抽出物を使用してパッケージングした。滴定後、一次パッケージング混合物のアリコートを一次ライブラリーストックとして−80℃の7%DMSO中に保存し、残りは安定性ライブラリーストックを確立するために増幅させた。
cDNSインサートの大規模シーケンシング
増幅させたλZAP発現ライブラリーから、ファージプラークを色選択のためにIPTG/X−galを含む大腸菌XL1−ブルーMRF’菌叢上で200〜500pfu/150mm(プレート)の密度でプレーティングした。その後プラークを75μL懸濁液培地バッファー(100mMNaCl、10mM MgSO、1mM Tris[pH7.5]、0.02%ゼラチン)内に採取した。125μmol/Lの各dNTP(ファルマシア製)、各10pmolの修飾T3(5’−GCCAAGCTCGAAATTAACCCTCACTAAAGGG−3’)およびT7(5’−CCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGCG−3’)プライマー、および2UのTaqDNAポリメラーゼ(ファルマシア製)を含むPCR反応液(総量50μL)に対して、ファージ溶出液(5μL)を使用した。この反応液をDNAサーマルサイクラー(パーキン・エルマー(Perkin−Elmer)製)内を循環させる[95℃で5分間の変性、その後に増幅の30サイクル(94℃、45秒間;55℃、30秒間;72℃、3分間)および末端等温伸長(72℃、3分間)]。アガロースゲル電気泳動を使用してインサートの存在および純度を評価した。PCR産物には特異的プライマーであるBigDye(商標)TerminatorCycle Sequencing v2.0 Ready Reaction(PEバイオシステムズ製)、TrisMgClバッファーおよびサーモサイクラー中の水を使用するDNAシーケンシング反応を受けさせた。シーケンシング反応液は94℃で2分間インキュベートし、その後94℃、30秒間;55℃、20秒間;および72℃、1分間の25サイクル、および94℃、30秒間;72℃、1分間および72℃、5分間の15サイクルを実施した。反応はその後、先行技術においてよく知られている方法(すなわち、カラム精製法またはアルコール沈降法)を介して精製するまで4℃で中断させた。自動シーケンシングは、PEバイオシステムズ製ABIプリズム3700DNA分析装置を用いて実施した。
【0240】
配列は手動で編集した、またはシーケンチャー(Sequencher)ソフトウエア(ジーンコーズ(GeneCodes)製)を使用して編集した。編集した全EST配列はBLASTアルゴリズム(8)を使用して非冗長Genbank/EMBL/DDBJおよびdbESTデータベースと比較した。既知遺伝子または他のESTとのESTマッチングのために推定同一性を指定するためにはP=10−10の最小値および>95%のヌクレオチド配列同一性が必要とされた。ESTセットに標示された遺伝子の非冗長性リストの構築は、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/))にあるUnigene、EntrezおよびPubMedを用いて実施した。相対遺伝子発現頻度は、各遺伝子についてのESTコピー数を解析されたESTの総数で割ることによって計算した。既知遺伝子マッチを用いてのESTの機能的特徴付けはHwangら、AGenome−Based Resource forMolecular Cardiovascular Medicine:Toward a Compendium of Cardiovascular Genes.(分子心血管医学のゲノムに基づく起源:心血管遺伝子についての概論,Circulation1997;96:4146−203)によって記載されている分類により実施した。
ヒト胎児軟骨cDNAライブラリーから計13,398個のESTを入手した。これらのうち、5,747EST(41.8%)は既知遺伝子配列にマッチし、1,855EST(13.4%)は他のESTにマッチし、さらに3,053個(22.0%)はミトコンドリア、リボソーム、ベクターおよびcDNA/仮定的タンパク質配列にマッチした。いずれの既知配列にもマッチしなかった209EST(4.7%)を新規と指定した。残りはゲノムDNA配列(1.948EST、13.8%)および反復配列(586EST、4.3%)にマッチした。
【0241】
胎児ライブラリー中の13,398EST配列はそれらが発現した2,570特異的既知遺伝子の機能的分類に基づいて特徴付けた。次の表はこの解析結果を表示している。
【0242】
【表2】

【実施例2】
【0243】
[RNA抽出および正常成体cDNAライブラリーの構築]
正常成体軟骨からcDNAライブラリーを調製した。ESTをcDNAライブラリーから入手し、正常成体軟骨細胞に対する1つ以上の遺伝子発現プロフィールを作製するために特徴付けた。
cDNAインサートの大規模シーケンシング
cDNAライブラリーは、SMART(Switching Mechanism At 5’ end of RNA Transcript(RNA転写物の5’末端でのスイッチングメカニズム))cDNAライブラリー構築キット(クローンテック製)を使用するPCRに基づく方法を介してλTripleEx2ベクター内に構築した。ファージプラークを無作為に採取して、PCRによってポジティブインサートを同定した。インサートの存在および純度はアガロースゲル電気泳動を使用して評価した。PCR産物にその後、5’ベクター特異的フォワードプライマーを用いた自動DNAシーケンシングを受けさせ、ABIPRISM377DNAシーケンサー(パーキン・エルマー製)およびABIプリズム3700DNA分析装置(アプライド・バイオシステムズ(AppliedBiosystems)製)によって配列決定した。生成したすべてのEST配列を非冗長性Genbank/EMBL/DDBL、dbESTおよびGSSデータベースに対して検索した。既知遺伝子または他のESTとのESTマッチングについて推定同一性を指定するためにはP=10−10の最小値および>90%のヌクレオチド配列同一性を必要とした。相対EST頻度レベルは、その遺伝子にマッチしたEST数をライブラリーから入手されたESTの総数で割ることによって計算した。
【0244】
配列は手動で編集した、またはシーケンチャー(Sequencher)ソフトウエア(ジーンコーズ(GeneCodes)製)を使用して編集した。編集した全EST配列はBLASTアルゴリズム(8)を使用して非冗長Genbank/EMBL/DDBJおよびdbESTデータベースと比較した。既知遺伝子または他のESTとのESTマッチングのために推定同一性を指定するためにはP=10−10の最小値および>95%のヌクレオチド配列同一性が必要であった。ESTセットに標示された遺伝子の非冗長性リストの構築は、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)にあるUnigene、EntrezおよびPubMedを用いて実施した。相対遺伝子発現頻度は、各遺伝子についてのESTコピー数を解析されたESTの総数で割ることによって計算した。既知遺伝子マッチを用いてのESTの機能的特徴付けはHwangら、(HwangDM,Dempsey AA,Wang RX,RezvaniM,Barrans JD,Dai KSら、AGenome−Based Resource forMolecular Cardiovascular Medicine:Toward a Compendium of Cardiovascular Genes.(分子心血管医学のゲノムに基づく起源:心血管遺伝子についての概論,Circulation1997;96:4146−203)によって記載されている分類により実施した。
【0245】
正常軟骨cDNAライブラリーから計17,151ESTを入手した。これらのうち6,755EST(44.2%)は2,518個の既知遺伝子にマッチした。1.4%(132EST)は有意なマッチを示さなかったので、新規と指定した。既知/固有遺伝子の機能的分類に基づいた17,151EST配列の特徴付けから次の表が生じた。
【0246】
【表3】

【実施例3】
【0247】
[軽症変形性関節症性軟骨細胞および重症変形性関節症性軟骨細胞からのRNA抽出およびcDNAライブラリーの構築]
軽症変形性関節症性軟骨および重症変形性関節症性軟骨からcDNAライブラリーを調製した。ESTはcDNAライブラリーから入手し、軽症変形性関節症性軟骨細胞および重症変形性関節症性軟骨細胞についての1つ以上の遺伝子発現プロフィールを作製するために特徴付けた。
【0248】
関節軟骨は関節鏡視下膝関節手術中または全膝関節置換術中のどちらかで入手した。軟骨サンプルはきわめて早期の軟骨変性(軽症)の領域または疾患末期(重症)の部位のどちらかから入手した。cDNAライブラリーは正常成体サンプル(実施例2)について記載した通りに構築した。
cDNAインサートの大規模シーケンシング
cDNAライブラリーは、SMART(Switching Mechanism At 5’ end of RNA Transcript(RNA転写物の5’末端でのスイッチングメカニズム))cDNAライブラリー構築キット(クローンテック製)を使用するPCRに基づく方法を介してλTripleEx2ベクター内に構築した。ファージプラークを無作為に採取して、PCRによってポジティブインサートを同定した。インサートの存在および純度はアガロースゲル電気泳動を使用して評価した。PCR産物にその後、5’ベクター特異的フォワードプライマーを用いた自動DNAシーケンシングを受けさせ、ABIPRISM377DNAシーケンサー(パーキン・エルマー製)およびABIプリズム3700DNA分析装置(アプライド・バイオシステムズ製)によって配列決定した。生成したすべてのEST配列を非冗長性Genbank/EMBL/DDBL、dbESTおよびGSSデータベースに対して検索した。既知遺伝子または他のESTとのESTマッチングについて推定同一性を指定するためにはP=10−10の最小値および>90%のヌクレオチド配列同一性を必要とした。相対EST頻度レベルは、その遺伝子にマッチしたEST数をライブラリーから入手されたESTの総数で割ることによって計算した。
【0249】
配列は手動で編集した、またはシーケンチャーソフトウエア(ジーンコーズ製)を使用して編集した。編集した全EST配列はBLASTアルゴリズム(8)を使用して非冗長Genbank/EMBL/DDBJおよびdbESTデータベースと比較した。既知遺伝子または他のESTとのESTマッチングのために推定同一性を指定するためにはP=10−10の最小値および>95%のヌクレオチド配列同一性が必要であった。
【0250】
ESTセットに標示された遺伝子の非冗長性リストの構築は、NCBI(全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)にあるUnigene、EntrezおよびPubMedを用いて実施した。相対遺伝子発現頻度は、各遺伝子についてのESTコピー数を解析されたESTの総数で割ることによって計算した。
【0251】
既知遺伝子マッチを用いてのESTの機能的特徴付けはHwangら、(Hwang DM,Dempsey AA,Wang RX,RezvaniM,Barrans JD,Dai KSら、AGenome−Based Resource forMolecular Cardiovascular Medicine:Toward a Compendium of Cardiovascular Genes.(分子心血管医学のゲノムに基づく起源:心血管遺伝子についての概論,Circulation1997;96:4146−203)によって記載されている分類により実施した。
【0252】
軽症および重症OAのcDNAライブラリーから各々計12,651ESTおよび14,222ESTを入手した(表5および表6)。軽症の約43%および重症の51%のOAESTがデータベース中の既知遺伝子にマッチした。ESTの約2.6%および1.5%は各々有意なマッチを示さなかったので、新規と指定した。
【0253】
既知遺伝子の機能的分類に基づいた軽症OAライブラリーからの12,651EST配列および重症OAライブラリーからの14,222EST配列の特徴付けから次の表が生じた。
【0254】
【表4】

【0255】
【表5】

【実施例4】
【0256】
[胎児、正常、軽症変形性関節症性、および重症変形性関節症性軟骨中で差次的に発現した遺伝子の同定]
正常、軽症、重症および胎児軟骨間で本明細書で定義したように差次的に発現した遺伝子を相対EST頻度解析により同定された(表6参照)。図6に同定された5,807個の既知固有遺伝子中、この遺伝子は全4種の組織型において発現することが見いだされた。可能性のあるサブ解析の例は図15および16に示した。特に顕著差次的発現を示したこれらの遺伝子の一部は図4に示した。コラーゲン(図2および3)および選択された細胞外基質タンパク質(図1参照)を発現しているESTの相対頻度についても解析した。
【実施例5】
【0257】
[マイクロアレイの構築]
本発明によるマイクロアレイを次の通りに構築した。
【0258】
増幅に使用したものと同一の96ウェルチューブ内のOA軟骨cDNAライブラリーからのcDNAクローンのPCR産物(〜40μL)を、3M酢酸ナトリウム(pH5.2)4μL(1/10容量)およびエタノール100μL(2.5容量)により沈降させ、−20℃で一晩保存した。これらをその後3,300rpm、4℃で1時間遠心した。入手されたペレットは氷温70%エタノール50μLを用いて洗浄し、再び30分間遠心した。このペレットをその後風乾させ、50%ジメチルスルホキシド(DMS)または20μLの3×SSC中でしっかりと再懸濁させた。サンプルをその後1つずつ、または2つずつγ−アミノプロピルシラン(Corning製CMT−GAPSまたはCMT−GAP2、製品番号40003、40004)またはポリリシン被覆スライド(シグマ製、製品番号P0425)上にロボット型GMS417もしくは427アレイヤー(アフィメトリックス製、CA)を使用して配置した。マイクロアレイ上のDNAスポットの境界はダイヤモンドスクライバーを用いてマーキングした。本発明は、アレイを調製するために固体支持体上に10〜20,000PCR産物がスポットされるアレイを提供する。
【0259】
アレイは、約1分間温かい微粒子無含有ddHOを含む培養皿の上方にスライドを浮遊させることによって再水和させ(スポットはわずかに膨潤するが、相互に溶け込むことはない)、70〜80℃の逆方向加熱ブロック上で3秒間急速乾燥させた。その後DNAをスライドへUV架橋結合させた(ストラタジーン製、ストラタリンカー、65mJ−650×100μJである「650」へディスプレイを設定)、または2〜4時間80℃で焼成した。これらのアレイをスライドラックに入れた。空のスライドチャンバーを用意し、次の溶液で充填した。無水コハク酸(アルドリッチ製)3.0gを1−メチル−2−ピロロドン189mL中に溶解させる(試薬の迅速な添加が不可欠);無水コハク酸の最後の破片が溶解した直後に、0.2Mホウ酸ナトリウム21.0mLを混入し、この溶液をスライドチャンバーに注入した。スライドラックをスライドチャンバー内に迅速かつ均一に押込み、スライドに決して溶液が残らないように数秒間にわたり激しく上下に振り混ぜ、その後軌道撹拌装置で15〜20分間混合した。スライドラックを2分間にわたり95℃ddHO中へ穏やかに押し入れ、次に95%エタノール中へ5回押し入れた。次に余分のエタノールをペーパータオルに滴下させることによってスライドを風乾させた。アレイは、使用時まで室温でスライドボックス内に貯蔵した。
【実施例6】
【0260】
[標的核酸の調製およびハイブリダイゼーション]
mRNAからの蛍光DNAプローブの調整
本発明のアレイを用いた解析のために蛍光標識標的核酸サンプルを調製した。
【0261】
オリゴ−dTプライマー2μgを変形性関節症であると診断された、または変形性関節症であると疑われた患者の軟骨サンプルから単離された総量15μLのmRNAの2μgへ70℃へ10分間加熱することによりアニーリングし、氷上で冷却した。mRNAはサンプルを42℃で1.5〜2時間、最終濃度が50mMのTris−HCl(pH8.3)、75mMのKCl、3mMのMgCl2、25mMのDTT、25mMの未標識dNTPs、400単位のSuperscriptII(200U/μL、Gibco BRL製)、および15mMのCy3もしくはCy5(アマーシャム製)を含有する100μL容量でサンプルをインキュベートすることにより逆転写させた。その後RNAは15μLの0.1NNaOHを添加することにより分解させ、70℃で10分間インキュベートした。この反応混合物に15μLの0.1N HClを添加して中和し、TE(10mM Tris、1mM EDTA)を用いて容量を500μLにし、さらに20μgのCotlヒトDNA(Gibco BRL製)を添加した。
【0262】
標識標的核酸サンプルは、セントリコン(Centricon)−30マイクロ濃縮器(アミコン[Amicon]製)中での遠心単離により精製した。2つの相違する標的核酸サンプル(例、相違する患者に由来する2つのサンプル)を同一アレイへのハイブリダイゼーションによって解析かつ比較する場合は、各標的核酸サンプルを相違する蛍光標識(例、Cy3およびCy5)を用いて標識して、別個に濃縮した。別個に濃縮した標的核酸サンプル(Cy3およびCy5標識)を新鮮セントリコン中で結合させ、500μLTEを用いて洗浄し、再び7μL未満の容量に濃縮した。1μLの10μg/μLポリA RNA(シグマ製、#P9403)および1μLの10μg/μL tRNA(Gibco BRL製、#15401−011)を添加し、蒸留水を用いて容量を9.5μLへ調整した。最終標的核酸調製のために、2.1μL 20×SSC(1.5M NaCl、150mMクエン酸ナトリウム(pH8.0))および0.35μL10%SDSを添加した。
ハイブリダイゼーション
標識核酸を100℃で2分間加熱することによって変性させ、37℃で20〜30分間インキュベートして、22mm×22mmガラス製カバースリップ下の核酸アレイ上に置いた。ハイブリダイゼーションは、3×SSCの小さなリザバーによって維持した湿気を含む特注スライドチャンバー内で14〜18時間、65℃で実施した。このアレイは0.1%SDSを含む2×SSC、その後に1×SSCおよび0.1×SSC中で2〜5分間浸漬して攪拌することによって洗浄した。最後に、アレイは650RPMで2分間、マイクロプラス(Microplus)キャリアー内のベックマン(Beckman)GS−6テーブルトップ型遠心機内でスライドラックに入れた状態での2分間の遠心単離により乾燥させた。
【実施例7】
【0263】
[シグナル検出およびデータ生成]
1つ以上の標識標的核酸サンプルを含むアレイのハイブリダイゼーションに引き続き、アレイは直ちにGMSスキャナー418およびスキャナライザー(Scanalyzer)ソフトウエア(MichaelEisen、スタンフォード大学)、その後にジーンスプリング(GeneSpring)ソフトウエア(シリコーン・ジェネティクス(SiliconGenetics)、CA)解析を使用してスキャンした。あるいはまたジーンスプリングソフトウエア解析の後にGMSスキャナー428およびジャガー(Jaguar)ソフトウエアを使用してもよい。
【0264】
1つの標的核酸サンプルを解析する場合は、サンプルは1種の蛍光色素(例、Cy3もしくはCy5)を用いて標識する。
【0265】
実施例6に記載した通りのマイクロアレイへのハイブリダイゼーション後に、マイクロアレイ上の関連核酸メンバーでの蛍光強度はレーザー励起源およびCy3もしくはCy5蛍光色素のために適した干渉フィルターを装備した特注共焦点顕微鏡を用いて撮影した画像から決定する。
【0266】
マイクロアレイ上のCy3もしくはCy5蛍光色素の存在は標的核酸および特異的核酸メンバーがマイクロアレイ上にハイブリダイズしたことを標示する。Cy3もしくはCy5蛍光の強度はマイクロアレイ上の核酸メンバーへハイブリダイズした標的核酸の量を表示し、標的サンプル中の特異的核酸メンバー配列の発現レベルを標示する。
【0267】
2つの標的核酸サンプル(例、軽症変形性関節症対重症変形性関節症)が解析かつ比較される場合は、1つの標的核酸サンプル(例えば、軽症変形性関節症)が蛍光色素Cy3で標識され、もう1つの標的核酸サンプル(例えば、重症変形性関節症)が蛍光色素Cy5で標識される。
【0268】
実施例6に記載した通りのハイブリダイゼーション後に、マイクロアレイ上の関連核酸メンバーでの蛍光強度はレーザー励起源およびCy3およびCy5蛍光色素のために適切な干渉フィルターを装備した特注共焦点顕微鏡を用いて撮影した画像から決定される。各蛍光色素について1ピクセル当たり225μmの解像度および65,536グレーレベルで別個のスキャン画像が入手される。画像間の標準化を使用して2種の蛍光色素を用いた標識および検出における相違する効率について調整される。これは1組の内部コントロール遺伝子をほぼ等しい強度にさせるための検出感度の手動マッチングおよびその後のこのセットの遺伝子のための最適強度マッチングに必要な残留スカラーのコンピュータによる計算によって達成される。
【0269】
マイクロアレイ上のCy3もしくはCy5蛍光色素の存在は、マイクロアレイ上での標的核酸および特異的核酸メンバーのハイブリダイゼーションを標示する。Cy3もしくはCy5の強度は、マイクロアレイ上の核酸メンバーへハイブリダイズした標的核酸の量を標示し、標的サンプル中の特異的核酸メンバー配列の発現レベルを標示する。アレイ上の核酸メンバーが色を全く示さない場合は、その要素内の遺伝子がどちらのサンプルにおいても発現していないことを標示している。アレイ上の核酸メンバーが1つの色を示した場合は、標識遺伝子がその細胞サンプル中でのみ発現していることを標示する。両方の色の出現は、その遺伝子が両方の組織サンプル中で発現していることを標示している。Cy3およびCy5蛍光強度における相違は、標準化後、比較のための2つのサンプル中の関連核酸メンバー配列の発現レベルの相違を標示している。2つのサンプル間の1.0倍を超える発現強度における相違は差次的遺伝子発現の指標として使用される。
【0270】
アレイはCy3およびCy5チャネルにおいてスキャンされ、別個の16ビットTIFF画像として保存される。これらの画像は、アレイ上の各スポットからハイブリダイゼーション強度データを捕捉するためにグリッド・プロセスを含むスキャナライザーソフトウェアを使用して組み込まれて解析される。各スポットの蛍光強度およびバックグラウンド除去ハイブリダイゼーション強度が収集され、Cy5対Cy3の測定した平均強度の比率が計算される。標準化のために線形回帰アプローチが使用され、測定したCy5対Cy3の散布図が1つの範囲を有するはずであると推定される。比率の平均値が計算され、これを使用してデータのサイズが変更され、1つへの傾斜が調整される。1.0倍を超えるアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションの標準化後カットオフを使用して、差次的に発現した遺伝子が同定される。
【0271】
図14に記載の配列の一部を含むマイクロアレイの解析は、2倍を超える中央比を示した軽症OAライブラリーにおける36個のアップレギュレートされた候補遺伝子および0.2倍未満の中央比を示した47個のダウンレギュレートされた候補遺伝子を生じさせた(各々、図9および10)。重症OAライブラリーでは、2倍を超える中央比を示した計38個のアップレギュレートされた候補遺伝子および0.2倍未満の中央比を示した51個のダウンレギュレートされた候補遺伝子を同定した(各々、図11および12)。この実施態様によると、マイクロアレイは軽症変形性関節症と診断された個体に由来する標的核酸サンプルおよび重症変形性関節症と診断された個体に由来する標的核酸サンプルを用いてハイブリダイズされた。当業者には明白であるように、図13に同定された配列、またはここに開示した方法を用いて図6に開示した遺伝子に対応する図6Aに同定された配列のいずれについても同様の解析を実施できる。
【実施例8】
【0272】
[軟骨細胞特異的遺伝子用マイクロアレイおよび診断用マイクロアレイの構築]
軽症OA診断用マイクロアレイを構築するためには、実施例5に記載した通りに核酸メンバーの収集物をガラススライド上にスポットする。重症OA診断用マイクロアレイを構築するためには、実施例5に記載した通りに核酸メンバーの収集物をガラススライド上にスポットする。軟骨細胞特異的遺伝子マイクロアレイを構築するために、実施例5に記載した通りに軟骨細胞特異的核酸メンバーの収集物をガラススライド上にスポットする。ここに記載したマイクロアレイ上にスポットした核酸メンバーは図6B、6C、6Dおよび6Eに挙げたものから選択する。
【実施例9】
【0273】
[診断]
標的核酸サンプルは個体の軟骨RNA抽出物から調製し(実施例6に記載した通り)、核酸メンバーの収集物を含むマイクロアレイへハイブリダイズさせるが、このとき少なくとも1つのメンバーは本明細書で定義した正常個体から単離された軟骨と比較して、軽症、中症、顕著または重症変形性関節症と診断された患者から単離された軟骨においては差次的に発現する。ハイブリダイゼーションパターンは、実施例7に記載したように生成かつ解析される。例えば、少なくとも1つのメンバーが正常個体と比較して軽症変形性関節症性軟骨中では差次的に発現する核酸メンバーの収集物を含むマイクロアレイ上での標的核酸サンプルの1つ以上の核酸メンバーへのハイブリダイゼーションは、その標的核酸サンプルが由来する個体の軽症変形性関節症を標示する。核酸メンバーが正常個体と比較して重症変形性関節症性軟骨中では差次的に発現する核酸メンバーの収集物を含むマイクロアレイ上での標的核酸サンプルの1つ以上の核酸メンバーへのハイブリダイゼーションは、その標的核酸サンプルが由来する個体の重症変形性関節症を標示する。
【実施例10】
【0274】
[治療薬のスクリーニング]
胎児、軽症変形性関節症性、中症変形性関節症性、顕著変形性関節症および重症変形性関節症性の軟骨細胞の病期または発生段階のいずれかに由来する軟骨細胞中で差次的に発現する1つ以上のポリヌクレオチド配列の発現を増加または低下させる候補治療薬を次の方法によりスクリーニングする。
【0275】
軟骨細胞は「正常」個体から単離して相違する時間量(すなわち、30分間、1時間、5時間、24時間、48時間および96時間)にわたり候補薬の存在下および不在下でインキュベートする。治療薬についてスクリーニングするときには、図6Aまたは図13に記載の1つのESTに対応する全長遺伝子配列のクローンを使用して軟骨細胞をトランスフェクトさせる。トランスフェクトされた軟骨細胞は相違する時間量(すなわち、1、2、3、5、7;10または14日間)にわたり培養する。インキュベーション後、標的核酸サンプルを軟骨細胞から調製し、胎児、正常、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、および重症変形性関節症の少なくともいずれか2つに由来する軟骨細胞中で差次的に発現するポリヌクレオチド配列に対応する核酸プローブへハイブリダイズさせる。核酸プローブは、ここに記載した当分野においてよく知られている方法により例えば放射性標識を用いて標識する。ハイブリダイゼーションは、上記のAusubelら、または上記のSambrookらに記載されているように例えばノーザンブロット法によって実施する。胎児、軽症変形性関節症、中症変形性関節症、顕著変形性関節症および重症変形性関節症性のいずれか1つからのRNAに比較して正常からの標的核酸サンプルへプローブのここで定義した差次的ハイブリダイゼーションは差次的に発現した軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列に対応するRNAの発現レベルを表示している。候補薬の存在下でのインキュベーションステップの結果としてのプローブ配列の発現レベルにおける変化は、対応する軟骨細胞特異的ポリヌクレオチド配列の発現を増加または低下させる物質であることを表示している。
【実施例11】
【0276】
[死後に単離された軟骨RNAの完全性の評価]
新しく単離されたRNAの品質と相違する死後経過時間で単離されたRNAの品質とを評価するために、次のヒヒ軟骨試験を実施した。
【0277】
7本のバイアルにヒヒ軟骨を入手し、使用時まで液体窒素中で保存した。
【0278】
各バイアルからのヒヒ軟骨を計量し、液体窒素下で微細に粉末化した。このサンプルをその後TRIzol(登録商標)試薬(0.1g/mLTRIzol(登録商標))中でホモジナイズし、全RNAを抽出した。RNAの量は、OD260値により計算した。RNAゲル上の2本の鮮明なバンドの外観は、RNAが良好な品質であることを表示していた。
【0279】
各サンプルからの0.1μgの全RNAを使用して、II型コラーゲン(COL2A1)、β−アクチンおよびGAPDHの遺伝子発現についてRT−PCRを実施した。
【0280】
RNAゲルパターンは、明白にこのRNAが死後12時間まで変性しなかったことを示している(表7)。このため、死後12時間以内の生検サンプルからは安定性RNAを入手できると予想できる。
【0281】
【表6】

II型コラーゲンは正常関節軟骨に富裕で特異的である。そのmRNAレベルは#9(死後24時間)を除く全サンプル間で匹敵していた。早期に採取したサンプルほど自然のインビボ状態をより良好に反映することを言及しておかなければならない。
【実施例12】
【0282】
[軽症変形性関節症性および重症変形性関節症性軟骨中でのヒト軟骨細胞遺伝子発現の発現配列タグ(EST)解析]
OA進行においてきわめて重要な役割を果たす可能性がある遺伝子に対応する発現配列タグ(EST)を同定するために、ヒト胎児軟骨から入手されたcDNAライブラリーの大規模部分スクリーニングを実施した。ヒトの正常、軽症および重症OA軟骨からのcDNAライブラリーの大規模シーケンシングも実施し、3種のcDNAライブラリーからの計44,000個を超えるESTを解析した。
【0283】
正常軟骨はマイアミ大学整形外科・リハビリテーション学科のドナー・プログラムから入手した。OA軟骨サンプルは、関節鏡視下膝関節手術中または全膝関節置換術中のどちらかのきわめて早期の軟骨変性(軽症)の領域または疾患末期(重症)の部位から入手した。軟骨からの全RNAはTRIzol(登録商標)試薬(GIBCO製)を用いて抽出した。cDNAライブラリーは、上記のようにSMART(SwitchingMechanism At 5’ end of RNA Transcript(RNA転写物の5’末端でのスイッチングメカニズム))cDNAライブラリー構築キット(クローンテック製)を使用するPCRに基づく方法を介してλTriplEx2ベクター内に構築した。ファージプラークを無作為に採取して、PCRによってポジティブインサートを同定した。インサートの存在および純度はアガロースゲル電気泳動を使用して評価した。PCR産物にその後、5’ベクター特異的フォワードプライマーを用いた自動DNAシーケンシングを受けさせ、ABIPRISM377DNAシーケンサー(パーキン・エルマー製)およびABIプリズム3700DNA分析装置(アプライド・バイオシステムズ製)によって配列決定した。生成したすべてのEST配列を非冗長性Genbank/EMBL/DDBL、dbESTおよびGSSデータベースに対して検索した。既知遺伝子または他のESTとのESTマッチングについて推定同一性を指定するためにはP=10−10の最小値および>90%のヌクレオチド配列同一性を必要とした。相対EST頻度レベルは、その遺伝子にマッチしたEST数をライブラリーから入手されたESTの総数で割ることによって計算した。
【0284】
正常、軽症および重症OA cDNAライブラリーから計17,151EST、12,651ESTおよび14,222ESTを入手し、これらを使用して遺伝子発現プロファイリングを実施した。これら3種のcDNAライブラリーからの全ESTのうち約44%はデータベース中の既知遺伝子にマッチし、約0.9%のEST(409)は既知遺伝子との有意なマッチを生じさせなかったので新規と指定された。既知遺伝子マッチの非冗長性解析は、正常軟骨では2,518個、軽症OA軟骨中では1,938個、および重症OA軟骨中では2,526個の固有遺伝子の同定を生じさせた。差次的に発現した特に胎児(22)、正常、軽症および重症OA軟骨(23)の既知遺伝子は、図6に示したように相対EST発現頻度レベルを試験することによって同定された。
【0285】
特に顕著差次的発現を示した遺伝子の一部をここに提供した図4に示した。熱ショックタンパク質90(HSP90)は軽症OAにおける最も富裕なESTマッチを有する遺伝子であった。その転写レベルは胎児軟骨中で低かった。β−2ミクログロブリン(B2M)レベルは、正常軟骨より罹患軟骨中で高く、胎児軟骨より罹患軟骨中の方が有意に高かった。軽症および重症OA中のESTレベルは類似であった。骨芽細胞特異的因子2(OSF−2pI)は胎児、軽症および正常軟骨と比較して重症OA中で高度に発現した。また別の差次的に発現した遺伝子は巨核球刺激因子(MSF、表層タンパク質、またはプロテオグリカン4としても知られている)であった。これは重症OAより軽症OAにおいて有意に高い発現を有していた。
【0286】
コラーゲンを発現するESTの相対頻度も図3に示した通りに解析した。
【0287】
非コラーゲン性基質タンパク質プロフィールは、ここに提示した図1および4に示したように軽症および重症OA軟骨デコリン(DCN)、フィブロネクチン(FN)、ルミカン(LUM)および基質G1aタンパク質(MGP)より高いESTレベルを示した。
【実施例13】
【0288】
[ヒト変形性関節症におけるβ−2ミクログロブリン(B2M)発現のマイクロアレイ解析]
上記のように、β−2ミクログロブリン(B2M)は軽症および重症OA軟骨中で高いEST発現レベルを示した。B2Mは炎症性および悪性疾患において上昇する非グリコシル化ポリペプチドである。B2Mはヒト滑液線維芽細胞中でストロメリシンおよびシクロオキシゲナーゼ−2合成を誘発することが証明されている(24、25)。
【0289】
相違する病期の変形性関節症中のB2M発現を評価した。ヒトOA滑液(SF)は関節鏡検査または全膝関節置換術中の吸引によってヒト膝関節から採取した。正常サンプルは膝関節傷害または関節炎の病歴のない健常者から採取した。器官培養は次の通りに実施した。ヒト重症OA軟骨スライスを37℃の5%COの加湿大気中で10%FCS、100単位/mLペニシリンおよび100mg/mLストレプトマイシン(DMEM++)を添加したDMEM(ダルベッコ修正イーグル培地)を充填した24ウェルプレート中で1スライス/ウェルで培養した。その後B2M試験のために相違する時点に培地(20μL)を採取した。滑液および軟骨器官培地中のB2MレベルはB2M酵素イムノアッセイ試験キット(ALPCO製)を使用して測定した。統計的有意性はスチューデント(Student)のt−検定を使用して0.05未満のP値を有意と見なして評価した。重症OAの患者からの軟骨細胞の細胞培養は次の通りに実施した。軟骨細胞はII型コラゲナーゼ消化により重症OAの患者からの軟骨から取り出した。その後細胞を6ウェルプレート中に6.5X10/ウェル(3.2X10/mL)で播種し、10μg/mLB2M(シグマ製)を添加して、または添加せずに72時間処理した。遺伝子発現プロファイリングには5,184個の軟骨細胞特異的cDNAクローンを含有するマイクロアレイを使用した。
【0290】
正常(nor)、軽症(mioa)、中症(mooa)、顕著(maoa)および重症OA(seoa)滑液中で検出された平均B2Mレベルを図17に示した。変形性関節症性滑液中のB2Mは正常中より有意に高かった。しかし、相違する変形性関節症性病期間でB2Mレベルの有意差は所見されなかった。
【0291】
軟骨細胞がB2Mレベル分泌に寄与するかどうかを評価するために、培養した重症OA軟骨からの培地を採取し、B2Mについて試験した。図18は、B2M遊離は培養24時間後には検出可能で、72時間の試験期間中に増加し続けることを示している。72時間後には、B2Mの蓄積は約2.1μg/g(軟骨)であった。各々が相違するドナーからの軟骨を使用した3回の実験ランに渡って同様の結果が入手された。
【0292】
B2Mにより調節された遺伝子が、上記のマイクロアレイ技術により検出された。図19は、2色蛍光スキャンの白黒表示を示している。Cy3標識(緑色スポットとして現れる)は非B2M処理軟骨細胞中で優先的に発現した遺伝子に対応し、他方Cy5標識(赤色がかったスポットとして現れる)はB2M処理軟骨細胞中で優先的に発現した遺伝子を表している。ほぼ同等レベルで発現した遺伝子は黄色スポットとして現れる。遺伝子の同一性はアレイ上の核酸メンバーの場所によって決定した。B2Mによって少なくとも2倍アップレギュレートまたはダウンレギュレートされた遺伝子の一部を表8に列挙した。
【0293】
図14は、本発明のある実施態様による、4つのヒト軟骨cDNAライブラリーから同定されたEST配列すべてを含有している、本明細書に添付されているCDROMである。CD−ROM上のEST配列すべての名称は、図6B、6C、6Dおよび6Eに列挙した。
【0294】
【表7】

当業者であれば、発明の精神および範囲から逸脱することなくここに記載したものの変形、修飾およびその他の実行が頭に浮かぶであろう。下記に提供した参考文系はその全体が参照してここに組み込まれる。
[文献]
【0295】
【表8A】

【0296】
【表8B】

【0297】
【表8C】

【図面の簡単な説明】
【0298】
【図1】本発明のある実施態様による、胎児、正常、軽症変形性関節症および重症変形性関節症の軟骨cDNAライブラリーの選択された細胞外基質(ECM)タンパク質の相対EST頻度レベルを示しているグラフである。パーセンテージは一定の型のECMタンパク質にマッチしたESTの数を1ライブラリー当たりのECMESTの総数で割ることにより計算した。凡例:COL=コラーゲン、PGL=プロテオグリカン、CMP=軟骨基質タンパク質、OSN=オステオネクチン、FN=フィブロネクチン、CRTL1=軟骨結合タンパク質。
【図2】本発明のある実施態様による、胎児、正常、軽症変形性関節症および重症変形性関節症の軟骨cDNAライブラリーのコラーゲンの相対EST頻度レベルを示しているグラフである。パーセンテージは特定ライブラリー内のコラーゲンESTの総数を4つの軟骨ライブラリーからのコラーゲンESTの総数で割ることにより計算した。
【図3】本発明のある実施態様による、胎児、正常、軽症変形性関節症および重症変形性関節症の軟骨cDNAライブラリーの特異的コラーゲン型の相対EST頻度レベルを示しているグラフである。パーセンテージは特定ライブラリー内の各型のコラーゲンのESTの総数を各ライブラリーからのコラーゲンESTの総数で割ることにより計算した。
【図4】本発明のある実施態様による、胎児、正常、軽症変形性関節症および重症変形性関節症のcDNAライブラリーの選択された軟骨細胞遺伝子の相対EST頻度レベルを示しているグラフである。パーセンテージは各遺伝子についてのESTの数を各ライブラリー内の固有の遺伝子の総数で割ることにより計算した。凡例:DCN=デコリン(コンドロイチン/デルマタン硫酸プロテオグリカン(PG40))、HSP90=熱ショックタンパク質90/α遺伝子配列、MSF=巨核球刺激因子/プロテオグリカン4/表層タンパク質、B2M=β2ミクログロブリン、MGP=基質Glaタンパク質、LUM=ルミカン、TB4=チモシンβ4、OSF−2=骨芽細胞特異的因子2に対するmRNA、CHI=キチナーゼ、Vim=ビメンチン。
【図5】本発明のある実施態様による、4つのcDNAライブラリー各々のESTの総数および各ライブラリー内の新規配列(すなわち、有意なマッチを示さないEST)の数を含めてESTが表している内訳を示している表である。
【図6】本発明のある実施態様による、現在までに4つのcDNAライブラリー内で同定された固有既知遺伝子(5,807個)を列挙している表である。
【図6A】本発明のある実施態様による、図6に同定された固有の既知遺伝子の各々を表している4つのcDNAライブラリー内で同定されたEST配列の名称を列挙している表である。
【図6B】本発明のある実施態様による、胎児軟骨組織から構築したcDNAライブラリーから同定されたEST配列すべての名称を列挙している表である。
【図6C】本発明のある実施態様による、死後14時間未満に入手された場合に正常軟骨組織から構築したcDNAライブラリーから同定されたEST配列すべての名称を列挙している表である。
【図6D】本発明のある実施態様による、軽症変形性関節症の患者の軟骨から構築したcDNAライブラリーから同定されたEST配列すべての名称を列挙している表である。
【図6E】本発明のある実施態様による、重症変形性関節症の患者の軟骨から構築したcDNAライブラリーから同定されたEST配列すべての名称を列挙している表である。
【図7】本発明のある実施態様による、ESTによって表した固有既知遺伝子の機能的分類に基づいた4つのcDNAライブラリー(57,422)からのESTの総数の特徴付けを示している表である。
【図8】本発明のある実施態様による、マイクロアレイを含む軽症および重症変形性関節症cDNAライブラリーからの既知および新規ESTクローンのリストである。
【図9】本発明のある実施態様によるマイクロアレイ解析に基づいた、軽症変形性関節症cDNAライブラリー内で検出されたアップレギュレートされる候補遺伝子を示している表である。
【図10】本発明のある実施態様によるマイクロアレイ解析に基づいた、軽症変形性関節症cDNAライブラリー内で検出されたダウンレギュレートされる候補遺伝子を示している表である。
【図11】本発明のある実施態様によるマイクロアレイ解析に基づいた、重症変形性関節症cDNAライブラリー内で検出されたアップレギュレートされる候補遺伝子を示している表である。
【図12】本発明のある実施態様によるマイクロアレイ解析に基づいた、重症変形性関節症cDNAライブラリー内で検出されたダウンレギュレートされる候補遺伝子を示している表である。
【図13】本発明のある実施態様による、現在までの4つのcDNAライブラリーの各々で同定された新規配列を表しているEST配列名を列挙している表である。
【図15】本発明のある実施態様による、胎児および正常cDNAライブラリー間で差次的に発現している、EST頻度解析を介して同定された遺伝子のリストを含む。
【図16】本発明のある実施態様による、軽症変形性関節症および重症変形性関節症cDNAライブラリー間で差次的に発現している、EST頻度解析を介して同定された遺伝子のリストを含む。
【図17】本発明のある実施態様による、正常個体および相違する病期の変形性関節症の患者由来の滑液中のβ2ミクログロブリン(B2M)のレベルを示している棒グラフである。凡例:nor=正常個体、mioa=軽症変形性関節症の患者、mooa=中症変形性関節症性の患者、maoa=顕著変形性関節症の患者、seoa=重症変形性関節症の患者。
【図18】本発明のある実施態様による、相違する期間の培養中における重症変形性関節症の患者由来の軟骨から培養した培地中のβ2ミクログロブリン(B2M)のレベルを示している棒グラフである。
【図19】非B2M処理軟骨細胞中で優先的に発現した遺伝子(緑色スポットとして現れる)およびB2M処理軟骨細胞中で優先的に発現した遺伝子(赤みがかったスポットとして現れる)を示している、本発明のある実施態様による2色蛍光スキャンの白黒表示である。ほぼ同等レベルで発現した遺伝子は、黄色スポットとして現れる。B2M=β2ミクログロブリン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト被験軟骨サンプルにおけるTNFAIP6(tumor necrosis factor alpha-induced protein)、カルモジュリン1(CALM1)及びラミニンγ1(LAMC1)からなるグループの遺伝子の発現を検出する方法であって、
前記グループの遺伝子の各遺伝子について、前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAを検出し、RNAレベルを測定するステップと、
測定された前記RNAレベルを、コントロール軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされたコントロールRNAの測定されたレベルと比較するステップと、ここで、前記コントロールサンプルは健康な軟骨であると分類されている、
TNFAIP6及びCALM1について、前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされたRNAの前記レベルが、前記コントロールサンプルにおけるレベルよりも高く、LAMC1について、前記ヒト前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAの前記レベルが、前記コントロールサンプルにおけるレベルよりも低い場合に、前記被験サンプルを変形性関節症の軟骨である候補として分類するステップと、ここで、前記遺伝子は、前記被験軟骨サンプルにおいて、0.05未満のp値で、前記コントロールサンプルに比べて異なって発現される
を含む方法。
【請求項2】
変形性関節症の軟骨の候補についてヒト被験軟骨サンプルをスクリーニングする方法であって、TNFAIP6、CALM1及びLAMC1からなるグループの遺伝子から選択される各遺伝子について、
(a)前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAを検出するステップと、
(b)ステップ(a)において検出された前記遺伝子によりコードされるRNAのレベルを測定するステップと、
(c)ステップ(b)において測定された前記RNAレベルを、健康な軟骨サンプルであると分類されているコントロール軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるコントロールRNAの測定レベルと比較するステップと
を含み、
ここで、TNFAIP6及びCALM1について、前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされたRNAの前記レベルが、0.05未満のp値で健康な軟骨と分類されている前記コントロールサンプルにおけるレベルよりも高く、LAMC1について、前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAの前記レベルが、0.05未満のp値で、健康な軟骨である分類されている前記コントロールサンプルにおけるレベルよりも低い場合に、前記被験サンプルが変形性関節症の候補である、方法。
【請求項3】
ヒト被験軟骨サンプルにおけるTNFAIP6、CALM1、及びLAMC1からなるグループの遺伝子の発現を分類する方法であって、前記グループの遺伝子の各遺伝子について、
(a)前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAのレベルを測定するステップと、
(b)ステップ(a)の前記レベルを、変形性関節症の軟骨であると分類されているコントロール軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAの測定されたレベルと比較するステップと、
(c)ステップ(a)の前記レベルを、健康な軟骨であると分類されているコントロール軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされたRNAの測定されたレベルと比較するステップと、
ここで、ステップ(a)の前記レベルが、
(i)変形性関節症の軟骨であると分類されている前記軟骨サンプルにおける前記レベルに統計的に類似する、
(ii)TNFAIP6及びCALM1について、健康な軟骨であると分類されている前記サンプルにおける前記レベルに比較して統計的に高い、および
(iii)LAMC1について、健康な軟骨であると分類されている前記サンプルにおける前記レベルに比較して統計的に低い、
というステップ(b)及び(c)からの決定事項により、前記被験サンプルにおける前記グループの遺伝子の発現が、変形性関節症の軟骨であると分類されている前記サンプルの前記発現であるという分類となり、
ステップ(a)の前記レベルが、
(1)TNFAIP6及びCALM1について、変形性関節症の軟骨であると分類されている前記サンプルにおける前記レベルに比較して統計的に低い、
(2)LAMC1について、変形性関節症の軟骨であると分類されている前記サンプルにおける前記レベルに比較して統計的に高い、及び
(3)健康であると分類されている前記サンプルにおける前記レベルに統計的に類似する、
というステップ(b)及び(c)からの決定事項により、前記被験サンプルの前記グループの遺伝子の発現が、健康な軟骨であると分類されている前記サンプルの前記発現であるという分類になる、方法。
【請求項4】
前記遺伝子によりコードされたRNAの前記レベルの前記測定は、ハウスキーピング遺伝子に関するRNAの前記レベルの測定により達成される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子によりコードされたRNAの前記レベルの前記測定は、前記遺伝子によりコードされるRNAに相補的なcDNAの測定により達成される請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子によりコードされるRNAの前記レベルの前記定量化は、PCRを用いて達成される請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子によりコードされるRNAの前記レベルの前記測定は、アレイを用いて達成される請求項3に記載の方法。
【請求項8】
変形性関節症の軟骨であると疑われるヒト被験軟骨サンプルが、変形性関節症の軟骨であるかどうかを決定する方法であって、
TNFAIP6、CALM1、及びLAMC1からなるグループの遺伝子から選択される各遺伝子について、
(a)前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAのレベルを決定するステップと、
(b)前記レベルと、健康な軟骨であるコントロール軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAのレベルを比較するステップと
を含み、
前記遺伝子が、前記被験サンプルと前記コントロールサンプルとの間で統計的に有意に異なって発現するというステップ(b)からの決定が、前記被験サンプルが変形性関節症の軟骨であることを示唆するものであり、前記異なった発現は、TNFAIP6及びCALM1については、前記コントロールサンプルと比べて、前記被験サンプルにおいて発現が増加し、LAMC1については、前記コントロールサンプルと比べて、前記被験サンプルにおいて発現が減少する、方法。
【請求項9】
前記被験軟骨サンプルからRNAを単離するステップをさらに含む、請求項8の方法。
【請求項10】
前記被験軟骨サンプルにおける前記遺伝子によりコードされるRNAの前記レベルを決定するステップは、前記軟骨サンプルから得られた核酸サンプルを、基材と複数の核酸メンバーを含むアレイにハイブリダイズさせることを含み、各核酸メンバーは、前記基材上のアドレス可能な位置に結合し、前記核酸サンプルの前記核酸メンバーへのハイブリダイゼーションにより、前記RNA転写物の前記レベルを決定できる、請求項8の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図6−7】
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【図6−8】
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【図6−9】
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【図6−10】
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【図6−11】
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【図6−12】
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【図6−13】
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【図6−14】
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【図6−15】
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【図6−16】
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【図6−17】
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【図6−18】
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【図6−19】
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【図6−20】
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【図6−21】
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【図6−22】
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【図6−23】
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【図6−24】
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【図6−25】
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【図6−26】
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【図6−27】
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【図6−28】
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【図6−29】
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【図6−30】
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【図6−31】
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【図6−32】
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【図6−33】
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【図6−34】
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【図6−35】
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【図6−36】
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【図6−37】
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【図6−38】
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【図6−39】
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【図6−40】
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【図6−41】
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【図6−42】
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【図6−43】
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【図6−44】
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【図6−45】
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【図6−46】
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【図6−47】
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【図6−48】
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【図6−49】
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【図6−50】
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【図6−51】
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【図6−52】
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【図6−53】
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【図6−54】
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【図6−55】
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【図6−56】
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【図6−57】
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【図6−58】
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【図6−65】
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【図6−70】
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【図6−72】
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【図6−74】
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【図16−14】
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【図16−15】
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【図16−16】
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【図16−17】
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【図16−18】
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【図16−19】
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【図16−20】
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【図16−21】
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【図16−22】
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【図16−23】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−295459(P2008−295459A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212602(P2008−212602)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願2002−570759(P2002−570759)の分割
【原出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(503312697)コンドロジーン・インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】