説明

変形誘導可能な粒子

【課題】形状変化が誘発可能な、活性細胞への取り込みが制御可能な粒子の提供。
【解決手段】粒子は生物活性のある分子または診断薬の担体として用いることができ、この粒子は球状の形状では、細胞への取り込みが可能な大きさを持っている。いずれの粒子も一時的な形状である、非球形の形状であって、そしてこれにより取り込みが可能でないかまたは僅かに取り込み可能な形状を取り、この形状は適切な刺激によって球状に移行可能であり、そしてこれにより取り込み可能な形状に移行可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導可能な変形を示し、細胞への取り込みが能動的に制御できる粒子に関する。これらの粒子は生物活性のある分子または診断薬の担体として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
多くの医学的応用分野において、例えば人間および動物での薬剤を用いた治療においては、作用物質(Wirkstoffen)の放出を時間的および局所的に制御することへの要求が常に存在していた。更に、人間および動物において特定の部位、あるいは生物の特定の組織において、例えば画像を生成するために、診断薬を局所的に濃縮するという要求がある。とりわけ生理学および病理学においては、多くの場合、免疫システムの関与の下に進行する生体内作用が重要である。
【0003】
例えば細菌または粒子のような異物粒子の免疫学的処理には、まずこの異物粒子が活性細胞、特に抗原性を示す細胞に取り込まれることが必要である。治療または診断での応用分野において、粒子が細胞に取り込まれる時点を制御できることが現在望まれている。このため、粒子の生物学的認識および細胞への取り込みを切り替え可能とする方法への要求がある。
【0004】
形状が安定した粒子がこの粒子の形状に依存して、貪食活性のある細胞に取り込まれるか、または取り込まれないか取り込みが大幅に減少することが知られている(非特許文献1および非特許文献2) 。これらの、活性細胞による認識への粒子形状の影響の研究により、特定の形状、例えばワームのような形状の粒子は球状の粒子に比べ、取り込みレートが小さいことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Proc. Natl. Acad. Sci. 103(2006) 、p.4930-4934
【非特許文献2】Pharma. Res. 25(2008)、p.1815-1821
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明による粒子を用いて、上記の1つ以上の問題が解決されるか、または少なくとも軽減される。本発明により、変形が誘導可能な特性を持った粒子が提供される。細胞への取り込みに適した粒子は、使用前には一時的な非球形であって、このため取り込みできないかまたは僅かにのみ取り込み可能な形状を取り、この形状は適切な刺激によって球状となり、そしてこれにより細胞への取り込み可能な形状に移行される。各々の粒子がこのように一時的な、非球形であって、このため活性細胞によって取り込みができないか、または僅かにのみ取り込み可能な形状を取り、この形状は適切な刺激によって球状となり、これより細胞への取り込み可能な形状に移行可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粒子を最初細胞への取り込みに不適合な一時的形状で提供するという知見に基づいている。投与した後に粒子に作用するトリガー(Ausloser)を用いることによって誘発されて、この粒子は球状の形状となる。この形状は、細胞への取り込みを初期形状に対して大幅に改善することを可能とする。言い換えれば、永続的な球状の形状に戻った後に漸く、この粒子の生きた細胞による取り込みが増加する。生物活性のある分子を持つ粒子の場合は、活性細胞の内部で、この生物活性のある分子の影響による望ましい作用を発現することができる。意図的な粒子形状の変化によって、この粒子の細胞への取り込みのための生物学的認識を切り替えを可能とする、このような技術的方法は今まで知られていない。このような粒子の一部または全体は(場合によって持ち込もうとする作用物質および更なる任意の賦形剤(Hilfsstoff)の他に)、一時的な形状が固定され、そしてこの形状で使用することができるような材料からできている。適切な刺激を使用することによって、この材料は復元し(Ruckstellung)、これにより粒子全体は、プログラムされた球状の形状となる。すなわち一時的な、活性細胞による取り込み可能でない形状から取り込み可能な形状に復元する。
【0008】
本出願では、「粒子」の概念で意味するものは、様々な構造的な特徴を持った粒子に関するものである。この粒子は、全体または部分的に、特に凝縮した凝集マトリックスを備えてよく、多孔質の構造を備えてよく、液体で満たされたネットワークまたは相互侵入ネットワークであってよく、核と1つ以上の被覆層を持ったカプセル状の構造であってよく、または多数の独立した粒子の集合体であってよい。本発明の目的においては、この粒子が、非球状の形状から球状の形状への意図的な変形が可能であり、この変形が適合した刺激によって誘発されるということが重要である。好ましくは、この粒子は、多孔質の材料/骨組から出来ているか、または多数の小さな粒子から出来ている。
【0009】
本出願では、「刺激」の概念で意味するものは、この粒子が永続的な球状の形状に復元するような作用を持つような、この粒子へのあらゆる作用であると解される。トリガーは、例えば温度変化、またはpH値またはこれと類似の化学的環境の変化であってよい。この元の形状への復元は、この粒子粒子を非球状の形状に固定する構造の分解によって誘発されることも可能である。
【0010】
「取り込み」の概念は、粒子の活性細胞への一体化を意味し、とりわけマクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、Bリンパ球等のような、抗原性を発現する能力を持つ細胞における一体化を意味する。この取り込みは、受容体に媒介されるメカニズムおよび受容体に媒介されないメカニズムを含む、生物学的に可能な全てのメカニズムによって行われてよい。1つの実施形態では、この細胞の取り込みは、貪食により行われる。すなわちこの粒子は好ましくは、貪食によって細胞に取り込まれるように製造されている。
【0011】
「形状記憶材料」の概念は、上記で用いられているように、事前に与えられた永続的形状が、適切な成形方法によって一時的な形状に移行し、そしてこの形状に固定することが出来る材料を意味する。外部から刺激を与えることによって、この材料は再び元の永続的形状となる。この一時的形状の変形および固定はプログラミングと呼ばれている。一時的形状から永続的形状への遷移は、復元という概念で捉えられる。この意味で、ここで用いている「形状記憶効果」という概念はまた、形状記憶材料の使用に限定されるものではもちろん無く、更に一般的に1つの刺激によって誘導される形状変化を意味するものとして理解される。
【0012】
この形状変化が誘導可能な粒子は、生物的に安定(biostabil)かまたは、全体または部分的に生分解可能(bio-degradierbar)な材料からなるものであってよい。1つの好ましい実施形態では、この粒子は全体または一部が形状記憶材料、とりわけ形状記憶ポリマー、形状記憶ヒドロゲル、または刺激感受性ゲル(Stimuli-sensitives Gel)から出来ている。この形状記憶材料は、好ましくはスイッチセグメント(Schaltsegmenten)および架橋部位(Netzpunkt)を持った形状記憶ポリマーであり、この形状記憶ポリマーは、通常僅かな水分含有量<5%(m/m)および僅かな水分取り込み容量<5%(m/m)を特徴とする。更にもう1つの好ましい実施形態では、この粒子は全体または一部が高い水分含有量>5%を持つ形状記憶ゲルから出来ている。更にもう1つの好ましい実施形態では、この粒子は全体または一部が刺激感受性ゲルから出来ている。更にもう1つの好ましい実施形態では、この粒子は、核および殻を持つカプセルであり、この殻は、また複数の層から構成されていてよい。
【0013】
1つの好ましい変形実施例では、このカプセル核は、膨潤性ゲル、刺激感受性ゲル、または形状記憶ゲルから出来ている。このカプセルは永続的な球状の形状を持ち、この形状は一時的な、非球状の形状に移行されることができる。カプセルの非球形形状への移行およびこの形状の固定は、この場合は、カプセル殻を利用して行われる。1つの好ましい変形実施例では、このカプセル殻は、全部または部分的に形状記憶ポリマーで出来ている。更にもう1つの好ましい変形実施例では、このカプセル殻は、ワックス状の物質から出来ている。ここで、この球状の基本形状を持つ核は、カプセル殻の成型により弾性的に、一時的な非球形な形状に変形され、取り込み可能でないか、または僅かにのみ取り込み可能な形状になるように強制される。
【0014】
粒子はその球状の形状において、好ましくは貪食可能な大きさである。この粒子の平均的粒子直径は、取り込み可能な形状においては好ましくは0.1から100μmであり、とりわけ好ましくは0.5から10μmである。用いられる粒子は、取り込み可能でないかまたは限定的に取り込み可能な形状を持ち、好ましくはこの粒子はその一時的な形状が、扁平楕円体、扁長楕円体、楕円板、矩形板、いわゆるUFO形状(例えば論文Proc. Natl. Acad. Sci. 103(2006) p.4930-4934)、棒状、またはワーム形状(wurmformig)となっている。適切な刺激によって、この一時的な形状は、球状で取り込み可能な形状に移行する。
【0015】
この粒子は生物学的に活性な物質の担体として用いられる。ここで「生物学的に活性な物質(“biologisch active Substanz”)」または「作用物質(“Wirkstoff”)」という概念は、免疫学的物質または診断薬、およびこれらの混合物を含む、全ての薬理学的活性のある物質を包含する。この概念はまた、医薬、造影剤、放射性ラベルおよびこれらの類似のものも包含する。この用語はまた、体内でその活性のある形状に変化されるような前駆体、活性および不活性の配座および異性体、そして薬理学的および/または免疫学的に活性のあるこれらのフラグメントを包含する。とりわけ、この作用物質は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、リポタンパク質、リポペプチド、サイトカイン、多糖類、DNA、RNA、またはアゴニストまたはアンタゴニストあるいは受容体の阻害剤、酵素、または粒子を取り込む能力のある活性細胞への輸送体を包含する。更に、この概念はまたあらゆる種類のワクチンを包含し、これには細菌、ウィルス、これらの分解産物および合成による類似物質と、同様に免疫刺激剤および免疫増強剤を含む。更にこの概念には、細胞増殖抑制剤、免疫抑制剤、グルココルチコイド、Toll様(Toll-like)受容体リガンド、NOD様(NOD-like)受容体リガンド、抗増殖剤、酵素阻害剤、スタチンを含む。更にこの概念には、親水性物質、疎水性物質、および両親媒性の物質を含む。
【0016】
作用物質を装填した、形状変化を誘導可能な粒子は、これらの作用物質がもたらす生物学的効果を時間的および局所的に切り替え可能(schaltbar)とするために用いられる。この作用物質は、ここでは好ましくは、粒子の基質に埋め込まれるか、またはこの粒子が作用物質を導入できる空洞を備える。作用物質の埋め込みは、共有結合によっても基質材料に埋め込まれることができ、例えば、細胞内の、加水分解、酵素作用、または酸化還元によって開裂可能に結合される。
【0017】
ワクチンを本発明による粒子と協働するように用いることで、既知の何回もワクチン接種する方法の代わりに、即座に利用できるワクチンと、当座は貪食可能でなく、そしてこのため免疫学的に作用のない粒子との混合を用いることができる。後者の粒子は、後になって、意図的に形状変化を誘導して免疫学的な認識、貪食および細胞内の免疫学的処理が可能となる。
【0018】
この粒子からの作用物質の放出レートは、一時的な形状では球状の形状より少ないことが好ましい。言い換えれば、形状変化に誘発されて、例えば空洞への通行が簡単となり、これによって作用物質の拡散が促進される。
【0019】
本発明により提供される粒子はこれより、必要に応じて作用物質が存在する(i)形状記憶ポリマー、(ii)形状記憶ゲル、(iii)刺激感受性ヒドロゲルから出来ているものか、または(iv)所定の形状の核を持った1層または多層のカプセルであり、この核は、他の材料から出来ている、1つまたは多数の層のカプセル殻によって、プログラムされた形状で維持されている。
【0020】
これらの粒子は、永続的な粒子形状の成型の際に、全ての既知の粒子生成の方法(例えば乳液処理、スプレー処理、コアセルベーション処理;Int. J. Pharm. 364(2008)298-327)によって直接に、または後に行われる加工工程で、生物活性のある分子が装填される(例えばこれらの薬剤の適切な溶液中での膨潤によって)。これらの薬剤は、拡散制御または分解制御によって放出される。様々な実施形態で、この作用物質の放出が、形状変化の切り替えとは無関係に、形状変化の切り替えと同時に、またはこれらの形状変化をトリガーとして開始される。粒子装填物の放出は、数秒から数年に渡り行われ、好ましくは1時間以上4週間までである。
【0021】
粒子の一時的な形状の成型に用いられる材料は、低分子の物質であってもポリマーであってもよく、好ましくは形状記憶ポリマー、形状記憶ヒドロゲル、ポリマーベースの刺激感受性ヒドロゲルであり、またカプセル殻の場合はワックス状物質が用いられる。これらの材料は、人間および動物での使用、および生体内、生体外そしてインビトロでの診断的な使用に関して生的適合性がなければならない。粒子は、上記の材料から出来ており、必要に応じて賦形剤<5%(m/m)と作用物質(0.001%−80%[m/m])および必要に応じて1つ以上の被覆材料の層から出来ている。これらの材料はi)生物学的に安定であること、すなわち、この粒子の核が生物学的環境において何年にも渡って分解されないこと、ii)水溶性および排泄可能な、モノマー乃至オリゴマーに完全に生分解可能であること、iii)部分的に生分解可能であること、すなわちこれから、粒子基質全体の分解が行われ、生体から排出可能および/または排出可能でないフラグメントとなること、またはiv)化学的または生化学的な分解以外の他の方法によって排出可能であること、例えば物理的な集合体からなる粒子の個々の小粒子または排出可能な大きさの分子への崩壊が可能であることである。「生分解(“Bioabbau”)」という概念は、とりわけ酵素作用メカニズム、加水分解メカニズム、そして例えばジスルフィド架橋の開裂のような酸化還元反応を含む。
【0022】
形状記憶材料としては、刺激感受性形状記憶ポリマーと形状記憶特性を持った形状記憶ゲルが用いられ、形状変化は、例えば熱伝達(直接接触または、電気的、磁気的、またはその他の刺激による間接的接触)によって、溶剤および可塑剤(水を含む)の作用の下で、光、または化学的および生化学的刺激の作用によって誘発される。これは物理的または共有結合で架橋した高分子ネットワーク関与している可能性がある。
【0023】
粒子基質には、刺激感受性ゲルを同様に用いることができる。この刺激感受性ゲルは、溶剤を多く含有し>5%(m/m)、好ましくは20〜99.999%(m/m)の範囲である。ここで生体適合性のある溶剤として、この応用分野におけるものでは、例えばジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンのようなものであり、好ましくは水でもよい(この物質はこれ以降ヒドロゲルと記載する)。ゲル構成剤としては、小さな分子(超分子ゲル、例えば論文:Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 2699-2715)もまた高分子ネットワークとして用いることができる。これらの小さな分子は、現在の科学技術においては、pH値、温度、イオン強度、電場、または磁場の変化、および酵素の作用によって、これらの大きさが変化する。
【0024】
形状記憶ポリマー、形状記憶ゲル、刺激感受性ゲルを利用して、粒子を非球形の形状に固定し、そして切換可能に球形の形状に移行させることの他に、膨潤可能なゲル、形状記憶ゲル、または刺激感受性ゲルから出来ている粒子核を持つカプセルを用いることができる。この際、この粒子核は事前に与えられた球状の形状を備え、この形状は、外部からの強制なしに取り込まれる。取り込み可能でない、すなわち非球形の粒子形状への移行は、これらの粒子においては、他の材料からなる被覆によってもたらされる。これらの他の材料は形状記憶材料であってよい。これらの他の材料の代替として、形状記憶効果のない材料、例えばワックス状の物質であってもよい。この被覆は、非球形状の粒子形状への移行の前に設けられる。この被覆は、粒子核の復元力に抵抗し、これによってプログラムされた形状を保持することを確実にする。適切な刺激、例えば熱的、電磁気的、化学的、または生化学的刺激の作用によって、体内での分解、または温度上昇による融解などの熱的遷移による緩やかな分解によって、この被覆の機械的安定性は失われる。この被覆が刺激の適用によって球状の形状に移行されるか、または被覆の分解によって粒子の復元力が優勢になると、この粒子の元々の形状、すなわち球状形状への形状復元が行われる。
【0025】
カプセル殻の製造に形状記憶材料が用いられている限り、この核は単に変形可能な材料からできていればよい。適切な刺激をカプセル殻に作用させることにより、例えば熱的、電磁的、化学的、または生化学的な刺激によって、復元が開始される。
【0026】
粒子のプログラミングは、個々の粒子において、または適切な構成においては、多数の粒子の同時プログラミングによって行われる。例えば必要に応じて特殊な表面特性と構造を持った円盤の間で、または例えばフィルムを用いた方法によって行われる。フィルム法で行われる球状粒子から非球状粒子へのプログラミングは、ポリマー基質のこれらの球状の粒子をポリマーフィルム、例えば水溶性のポリマーフィルムへの取り込みよって行われる。この粒子は、適切な条件(例えば高温)で1次元、2次元、または3次元に延伸または固定され、そしてこの非球状の粒子がフィルムの分解によって分離される。このプロセスはポリスチレン粒子の非可逆的変形に関する論文に記載されている(Colloid Polym. Sci. 271(1993) P.469-479; Proc. Natl. Acad. Sci. 104(2007)P.11901-11904)。
【0027】
直径が10μmより小さい粒子、とりわけ5μmより小さい粒子は、組織への投与(例えば筋肉内、皮下、または皮内)の際は、マクロファージまたは樹状細胞によって取り込まれ、そしてリンパ器官を経由して排出される。特殊な細胞、いわゆる異物巨細胞はより大きな粒子を取り込むことができる。インビトロでは、マクロファージの非球状の微小粒子の貪食の量は、低減することが示されている。本発明による、細胞による取り込みが低減される非球状の粒子は、注入後外部からの刺激による形状変化によって球状に移行され、活性細胞に取り込まれ、細胞内部で処理され、場合によってはリンパ器官に輸送され、そして、必要に応じて存在する装填物は免疫的に認識される。これは例えば人間および動物における多数回接種を、1回のみの投与で行う新しい方法として用いることができる。この場合、即座に利用可能な(溶液かまたは球状の粒子の)ワクチンおよび非球状の粒子とが用いられ、これらによって更なる投与を行う代わりに、粒子が断片化されて免疫的に認識可能な形状に移行される。更にこの方法は、診断検査、例えば生理学的、病理学的な変化、または免疫老化で左右される、細胞の貪食活性の変化の解明に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明を以下に1つの実施形態において図を用いて詳細に説明する。
【図1】本発明による、形状記憶効果を持つ粒子の可能な実施形態の2つの例を概略的に示す。
【図2】プログラムされた形状における微小粒子のアスペクト比、およびこの粒子の復元後のアスペクト比を示す。
【図3】形状記憶ポリマーで出来ている微小粒子の、一時的な、プログラムされた形状および永続的な形状への形状復元後の形状の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
最初のステップで、希望するアプリケーションに適合した材料から、細胞による取り込みが可能なように成型された、球状の粒子10が生成される。図1の左側に示された実施形態では、材料は形状記憶ポリマー、形状記憶ゲル、または刺激感受性ゲルであり、この材料には、必要に応じて作用物質が装填されている。プログラミングによって、この粒子10は一時的な、非球状の形状であって、そしてこの形状により、貪食可能でないかまたは僅かに貪食可能な形状12Aに固定される。適切な刺激、例えば温度、pH値、イオン強度の変化、または光の作用によって、この粒子は球状の形状であって、そしてこの形状により貪食可能な形状16に移行し、そして貪食された後で、必要に応じて所望の生物学的効果を奏することができる。
【0030】
図1の右側に示されている第2の変形実施例によれば、球状の粒子11は、膨潤可能なゲル、形状記憶ゲル、または刺激感受性ゲルから出来ており、弾性的または塑性的に変形可能である。この粒子11はこの変形実施例によれば、まず適合した材料、例えばワックスまたは形状記憶ポリマーでコーティングされ(コーティングされた粒子14)、そして成型工程によって一時的な、非球状の形状であって、そしてこの形状により貪食可能でないかまたは僅かに貪食可能な形状12Bに固定される。適切な刺激により、例えばここではコーティングの加水分解により、この粒子12Bは球状の形状であって、そしてこの形状により貪食可能な形状16に移行する。他の適切な刺激によって、コーティングの分解なしに、この粒子が球状の形状であって、そしてこの形状により貪食可能な形状18へ遷移する。この形状18は、形状14と同等とすることができる。
【0031】
図2は微小粒子のプログラムされた形状のアスペクト比および形状復元後のアスペクト比を示す。図3は微小粒子の顕微鏡写真であり、これらの微小粒子は、形状記憶ポリマーから出来ている。この粒子は一時的なプログラムされた形状では、20%、50%、および100%の伸長となる。形状復元後は、再び永続的な形状である球状の形状となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状変化を誘導できる粒子であって、
細胞への取り込みに適した粒子は、使用前には一時的な非球形であって、このため取り込み可能でないかまたは僅かにのみ取り込み可能な形状を取り、この形状は適切な刺激によって球状となり、そしてこれにより細胞への取り込み可能な形状に移行し得ることを特徴とする粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子において、
前記粒子は全体または一部が形状記憶材料、形状記憶ポリマー、形状記憶ヒドロゲル、または刺激感受性ゲルから成ることを特徴とする粒子。
【請求項3】
請求項1に記載の粒子において、
前記粒子はカプセルであり、このカプセルは膨潤性ゲル、刺激感受性ゲル、または形状記憶ゲルから成る変形可能な核と、前記核を包む、前記形状記憶ポリマーから成るカプセル殻とを有することを特徴とする粒子。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粒子において、
前記粒子は多孔質の材料/骨組、または多数の小さな粒子から成ることを特徴とする粒子。
【請求項5】
請求項1に記載の粒子において、
前記粒子はカプセルであり、このカプセルは膨潤性ゲル、刺激感受性ゲル、または形状記憶ゲルから成る変形可能な核と、前記核を包む、形状記憶材料ではないカプセル殻とを有し、
前記核は球状の基本形状を備え、
前記基本形状は、カプセル殻の成型によって弾性的に、前記一時的な非球形な形状に移行され、細胞に取り込み可能でないかまたは僅かにのみ取り込み可能な形状に移行されることを特徴とする粒子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の粒子において、
前記粒子の平均粒子直径は、前記細胞に取り込み可能な形状では、0.1から100μmであることを特徴とする粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の粒子において、
前記粒子の前記平均粒子直径は、前記細胞に取り込み可能な形状では、0.5から10μmであることを特徴とする粒子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の粒子において、
前記粒子は、その一時的な形状では、扁平楕円体、扁長楕円体、楕円板、矩形板、UFO形状、棒形状粒子、またはワーム形状粒子となっていることを特徴とする粒子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の粒子において、
前記粒子は、1つ以上の作用物質を含むことを特徴とする粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の粒子において、
前記作用物質は、粒子基質、または前記粒子基質の一部に、埋め込まれるかまたは結合されていることを特徴とする粒子。
【請求項11】
請求項9または10に記載の粒子において、
前記一時的な形状における、前記粒子からの前記作用物質の放出レートは、貪食可能な形状におけるより少ないことを特徴とする粒子。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載の粒子において、
前記作用物質は、医薬、ワクチン、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、糖脂質、サイトカイン、多糖類、DNA、RNA、グルココルチコイド、免疫抑制剤、免疫刺激剤、免疫増強剤、細胞増殖抑制剤、Toll様(Toll-like)受容体リガンド、NOD様(NOD-like)受容体リガンド、抗増殖剤、酵素阻害剤、スタチン、またはテンシデ(Tenside)を含むことを特徴とする粒子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の粒子において、
前記粒子は貪食によって細胞に取り込まれるように製造されていることを特徴とする粒子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−6415(P2011−6415A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143637(P2010−143637)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(509238292)ゲーカーエスエスフォルシュングスツェントゥルム ゲーストハハト ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】