説明

変形量が大きな複合型微小共振器

本発明は、電気的機械的共振器に関するものであって、振動ボディ(4)と、少なくとも1つの励起電極(14,16)と、少なくとも1つの検出電極(10,12)と、を具備してなる共振器において、振動ボディが、第1ヤング率を有した第1材料から形成された第1部分(20)と、第1ヤング率よりも小さな第2ヤング率を有した第2材料から形成された第2部分(22)と、を備え、この第2部分が、少なくとも部分的に、検出電極(10,12)に対向して配置されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小共振器(あるいは、マイクロレゾネータ)という分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微小共振器は、例えば携帯電話という分野においては、フィルタとVCO(電圧制御発振器)と参照用発振器とからなる複合体において使用される。
【0003】
一体化を達成するためには、好ましくは以下の特徴点を有した共振器タイプの構成部材が必要とされる。
−小さな寸法。
−広範な共振周波数(数MHzよりも小さな周波数から、数GHzよりも大きい周波数まで)。
−大きな品質因子。
−信号損失が小さいこと(可能な限りにおいて最大の出力レベル)。このためには、強力な電気的機械的結合が必要とされる。
−温度と時間とに関しての非常に良好な安定性。
−マイクロエレクトロニクス的プロセスに対する互換性。
【0004】
電気的な共振を得るのに際しては、従来的な構成部材から得られる2つのシステムが、使用される。
−RLC回路。この回路は、ウェハ上へと容易に一体化し得るものの、性能が悪い。
−石英共振器。このような共振器は、高性能を有しているものではあるけれども、マイクロシステムテクノロジーに基づく製造プロセスには組み込むことができない。このような共振器は、機械加工によって分離されることが必須であって、その後に、付設される。このため、コストが高くなるとともに、サイズ的に大きなものとなる。
【0005】
MEMS構成部材は、SAW(『表面音響波』)タイプの共振器を備えている。このような構成部材は、圧電材料内における表面波の伝搬を利用する。
【0006】
そのような波は、生成された後に、櫛形電極によって検出される。構成部材の寸法は、波の伝搬が起こる周波数を決定する。信号の他の成分は、伝達されない。
【0007】
SAWは、かなり良好な性能を有している。しかしながら、SAWは、大きなサイズ(1cm )のものであって、マイクロエレクトロニクステクノロジー内に組み込むことができず、周波数的に制限される(臨界寸法)。
【0008】
また、“FBAR”(フィルムバルク音響共振器)タイプの共振器が存在する。この共振器は、『音響絶縁体−電極−圧電材料−電極』タイプの積層体である。音響波は、2つの電極間において伝搬する。共振は、半波長が、進行すべき音響経路に等しくなった時点で、得られる。これら構成部材は、良好な性能を有しているものの、マイクロエレクトロニクス的プロセスには組み込めない。
【0009】
電気的機械的共振器を有した構成部材は、信号をフィルタリングし得るよう、1つの部材の共振を使用する(例えば、非特許文献1に記載されているように、シリンダ内におけるビームの曲げや膨張を使用する)。
【0010】
振動ボディは、互いに異なる3つの方法によって、活性化することができる(そして、検出器が付設されている場合には、検出することができる)。
−圧電材料を使用すること。
−磁界を利用すること。
−静電的な方法(エアギャップの振動による容量的な検出)の使用。
【0011】
最初の2つの技術は、現時点では、組み込むことが困難であり、非常に良好な性能を得ることができない。
【0012】
電気的機械的な励起と容量的な検出とを行う共振器が、最も多く開発されている。これは、良好な性能(品質因子に関して、および、共振周波数に関して)を得ることができることのためであり、また、マイクロエレクトロニクス的プロセス内へと組み込み得る可能性のためである。
【0013】
しかしながら、構成部材の出力側において信号を検出することは、容易ではない。文献においては、テストし得ない構成部材について、言及されている。
【0014】
これは、例えば複数のディスクと複数のプレートとに関して非特許文献2に記載されているように、特に容量波を有した共振器の場合には、小さな変位が起こることのためである。
【非特許文献1】J. Wang et al.,“1.14 GHZ self-aligned vibratingmicromechanical disk resonator”, IEEE Radio Frequency Integrated CircuitsSymposium (2003)
【非特許文献2】V.Kaajakari, T.Mattila, A.Oja, J.Kiihamaki, H.Koskenvuori,P.Rantakari, I.Tittonen, H.Seppa,“Square-extensional mode single-crystalsilicon micromechanical RF-resonators”, IEEE Transducers 03 (2003)
【非特許文献3】M.A. Abdelmoneum, M.U. Demirci and T.C. Nguyen,“Stemlesswine-glass mode disk micromechanical resonators”, IEEE (2003)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による共振器は、圧電的な駆動(および、検出)に対して適合性を有している。一体化という理由のために、静電的な駆動が好ましい。
【0016】
本発明は、電気的機械的共振器に関するものであって、振動ボディと、少なくとも1つの励起電極と、少なくとも1つの検出電極と、を具備してなる共振器において、振動ボディが、第1ヤング率を有した第1材料から形成された第1部分と、第1ヤング率よりも小さな第2ヤング率を有した第2材料から形成された第2部分と、を備え、この第2部分が、少なくとも部分的に、検出電極に対向して配置されていることを特徴としている。
【0017】
本発明による電気的機械的共振器は、容量波共振器(主にディスクおよびプレート)と比較して、特に構成面において、および、得ることができる変位量という点において、差異を有している。
【0018】
従来技術による共振器の振動ボディは、単一の材料(シリコン製ディスク、ニッケル製プレート、等)から形成されている。この材料は、硬さが硬いこと(共振周波数を大きなものとし得るよう、大きなヤング率)やエネルギー損失が小さいこと(例えば、加熱によるエネルギー損失、グレインジョイントのところにおける損失)といったように、機械的特性に基づいて選択されている。他方、それら材料の変形量は小さなものである。このことは、エアギャップ内に於ける振動検出を困難なものとする。
【0019】
本発明による共振器を使用することにより、高い性能(特に、品質因子、共振周波数)を得ることができるとともに、さらに、大きな局所的変形を得ることができる。
【0020】
第1材料は、好ましくは、強い機械的特性を有した材料とされ、特に共振周波数と品質因子という点において、構成部材の良好な性能を確保する。
【0021】
第2材料は、より小さな硬さ(第1材料のヤング率よりも小さなヤング率)を有しており、これにより、大きな変形を可能とし、可能であれば、加熱による損失を小さなものとする。
【0022】
例えば、以下の材料を使用することができる。
−第1材料:単結晶シリコン、ニッケル、または、ダイヤモンド。
−第2材料:アルミニウム、金、亜鉛、または、マグネシウム。
【0023】
例えば、振動ボディは、円形や正方形のものとすることができる。
【0024】
電極は、互いに90°という角度をなして配置することができる。
【0025】
このような共振器の最大寸法は、好ましくは1mm未満とされ、用途に依存することとなる。例えば、携帯電話応用においては、最大寸法は、典型的には、50μm未満とされる。
【0026】
例えば、第2材料は、振動ボディの厚さEの70%〜100%という厚さeのものとして、局所的に存在することができる。
【0027】
このようなデバイスは、有利には、共振器を基体に対して連結するための単一のアンカーすなわちスタンドを具備している。
【0028】
本発明は、また、電気的機械的共振器の製造方法に関するものであって、この方法は、
−第1ヤング率を有した第1材料からなるベース内に、少なくとも1つのキャビティをエッチング形成するステップと、
−キャビティ内に、第1ヤング率よりも小さな第2ヤング率を有した第2材料を、成膜するステップと、
を具備している。
【0029】
この方法は、さらに、第2材料に対向して電極を形成するステップを具備することができる。
【0030】
基板と共振器との間の連結部分として、基板に対しての連結ベースだけを残すようにしてエッチングを行うエッチングステップが行われる。
【0031】
キャビティの深さが、ベースの厚さEの70%〜95%という厚さeとなるようにして、エッチングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下においては、本発明の第1実施形態につき、図1Aおよび図1Bを参照して説明する。
【0033】
これは、容量型の形質導入を有した円筒タイプの共振器を例示している。しかしながら、プレートタイプの共振器とすることもできる。より一般的には、容量波共振器とすることができる。
【0034】
提案された構成部材は、互いに異なる2つの部分2,3を備えている。
【0035】
第1部分2は、機械的共振に専用のものとされている。第1部分2は、振動ボディと、このボディを基体11に対してアンカー止めするためのアンカー止め手段6と、を備えている。『複合型のシリンダ』(互いに異なる少なくとも2つの材料から構成されている)が構成されていて、小さな寸法の円筒形のベース6によって、基部の一方の面の中央のところにおいて、アンカー止めされている。
【0036】
第2形質導入部分3は、電気的信号から機械的信号を生成すること(励起)を目的としたものである、あるいは逆に、機械的信号から電気的信号を生成することを目的としたものである。検出は、2つのポートを有した構成部材の場合には、個別的に行われる。しかしながら、検出は、すべての場合において、必ずしも、励起とは個別的なものとは限らない。
【0037】
この第2部分には、1つまたは複数の電極10,12と、この例においては容量的な手段とされた形質導入手段と、が設けられている。単一の検出電極だけを設けることもできる。
【0038】
さらに、1つまたは複数の励起電極14,16が設けられている。1つまたは複数の励起電極14,16は、振動ボディのところにおいて静電力を発生させる。これにより、機械的な共振を開始させることができる、あるいは、開始させないこともできる。
【0039】
したがって、この例においては、4つの電極が設けられており、これら電極は、相対的な離間角度を90°としつつ、シリンダの側面に対して対向している。2つの検出電極は、直径方向において互いに対向配置されている(2つの励起電極も、また、直径方向において互いに対向配置されている)。変形例においては、同じ電極を使用して、励起と検出との双方を行うことができる。この場合、それら電極のうちの2つを、シリンダ上において、直径方向に互いに対向して配置することができる。
【0040】
『共振器の振動ボディ』という用語は、特定の周波数において共振を開始することを要求された部材を意味している。
【0041】
アンカー6と、このアンカーに対して連結された部材とは、振動ボディとは無関係である。
【0042】
図1Aおよび図1Bからわかるように、振動ボディ4自体は、以下のような2つの部分から構成されている。
−第1部分20。この部分は、第1材料から形成されている。例えば、単結晶シリコンや、ニッケルや、ダイヤモンド、から形成されている。あるいは、より一般的には、ヤング率の大きな材料(典型的には、100ギガパスカルより大)から形成されている。
−第2部分22。この部分は、第2材料から形成されている。例えば、アルミニウムや、金や、亜鉛や、マグネシウム、から形成されている。あるいは、より一般的には、ヤング率の小さな材料(典型的には、100ギガパスカルより小)から形成されている。いずれにしても、確実に、第1材料の第1ヤング率よりも小さなヤング率を有している。
【0043】
検出形質導入のところにおいて大きな表面積にわたって大きな変形を得るためには、第2材料は、電極のところにおいて局所的に、(振動ボディの合計厚さの中で)かなり大きな厚さeを有している。例えば、振動ボディの厚さEの70%〜100%という厚さを有している。
【0044】
この第2材料は、少なくとも部分的に、検出電極に対向して配置されている。あるいは、第1部分20内に形成されたキャビティ内に配置されている。
【0045】
第2材料は、検出電極10,12に対して相互作用し得るようにして、配置されている。
【0046】
この第2材料は、好ましくは、検出電極10,12の形質導入表面に対して、できる限り接近して配置される。第2材料は、形質導入表面のところに位置することさえ可能である。
【0047】
最後に、第2材料の容積は、好ましくは、変形のゲインが、同じ振動ボディのうちの第1材料だけから形成されている部分と比較して十分に大きなものであるものと、されている。
【0048】
要求された振動モードが、時に『ワイングラス』モードと称されるようなさらに非特許文献3に記載されているような、変形形状が図2Aおよび図2Bに示すものであるようなモードである場合には、構成部材には、通常は、4つの電極が設けられ、2つの励起電極と2つの検出電極とが交互に配置される。
【0049】
図1Aは、このタイプの構成部材の一例を示している。
【0050】
この場合、第2材料は、少なくとも部分的には、検出電極のところに配置されている。
【0051】
図2Aおよび図2Bにおける矢印は、変位方向を示しており、ディスクタイプの共振器4における各電極の位置に対応している。
【0052】
構成部材の動作時には、振動ボディが付勢される。入力信号は、励起電極どうしの間に印加された(それぞれ固定されている電極14,16の間に印加された)静電力という態様でもって、励起電極14,16から振動ボディ4へとを伝達される。信号に関し、振動ボディ4の変位は、非常に小さいものであり、出力信号を生成することができない。入力信号が、振動ボディの共振周波数(この共振周波数は、振動ボディの形状に依存する、例えばディスクの半径に依存する)に対応した成分を有している場合には、振動ボディは、機械的共振を開始する。この場合、ディスクは、基体11に対して平行な平面内に位置する変形成分を有しつつ変形する。あるいは、デバイスのボディと電極とによって形成された平面内に位置する変形成分を有しつつ変形する。例えば、振動ボディは、図2Aおよび図2Bに示すように、『ワイングラス』モードでもって変形する。これにより、それぞれ固定されている検出電極10,12内に、電流が生成される。
【0053】
この電流は、電極のところにおける振動ボディの変位が(エアギャップに対して)増大するにつれて、なお一層、増大する。
【0054】
図3Aおよび図3Bは、本発明の一変形例を示しており、この例は、プレートタイプの複合型共振器を例示している。この実施形態においては、材料22の存在は、検出電極10,12に対して最適なものとされている。
【0055】
以下においては、本発明によるデバイスの形成方法について、例示する。
【0056】
このプロセスは、シリコンウェハ100(図5A)の選択と準備とから開始される。
【0057】
このウェハ100上には、二酸化シリコン(SiO )層102が成膜され、この二酸化シリコン層102は、リソグラフィー後にエッチングされる(図5B)。このエッチングにより、基板100上に、開口101,103,105が形成される。この犠牲絶縁体層は、数μmという厚さを有しており、例えば2μmという厚さを有している。
【0058】
次なるステップにおいては、窒化シリコンSi層104を成膜する。この窒化シリコン層をリソグラフィーしてエッチングする(図5C)。この絶縁体層は、およそ1μm厚さとされる。先に形成されたいくつかの開口101,105を充填し、これにより、後の工程で互いに絶縁されることとなる複数の電極を形成可能とする。
【0059】
次なるステップにおいては、約3μmという厚さでもってシリコン層106を成膜する。このシリコン層をリソグラフィーしてエッチングし、これにより、ベース106(図5D)を形成する。ベース106内においては、複数のキャビティ108をエッチングによって形成することができる(図5E)。エッチングの深さは、好ましくは、例えばベースの厚さの70%〜95%といったように、かなりの厚さ部分にわたるものとされる。
【0060】
次なるステップにおいては、リソグラフィーとエッチングとによって、キャビティ108内に、アルミニウム110を成膜する(図5F)。このアルミニウムは、本発明において、実際に、共振器の振動ボディをなす第2材料である(図1および図3における符号22)。
【0061】
次なるステップにおいては、例えば二酸化シリコンSiO からなるような、犠牲層112を、約0.1μm厚さでもって、成膜する(図5G)。
【0062】
次なるステップにおいては、例えばシリコンといったような材料から、電極を形成することとなる材料を成膜する。電極114,115は、成膜後に、平坦化とリソグラフィーとエッチングとを行うことにより、得られる(図5H)。
【0063】
次なるステップにおいては、犠牲層102と犠牲層112とをエッチングして、デバイス自体と基板100との間においてキャビティ120,126を解放することによりおよび振動ボディと電極114,115との間においてキャビティ122,124を解放することにより、構造を解放する(図5I)。
【0064】
本発明の他の実施形態につき、図6A〜図6Jを参照して説明する。
【0065】
このプロセスにおいては、SOI基板200を利用する。SOI基板200は、例えばシリコンからなる基板201と、例えば二酸化シリコンSiO から構成され0.4μm厚さのものとし得る絶縁体層203と、例えば0.2μm厚さのものとされるシリコン層205と、を備えている。
【0066】
第1エッチングステップを行うことにより、層205,203内にパターン210をエッチング形成する(図6B)。パターン210は、その後の工程において、振動ボディのベースを形成するために使用される。
【0067】
次なるステップにおいては(図6C)、基板の表面をクリーニングし、シリコン層212をエピタキシャル成長させる。シリコン層212の厚さは、例えば、約2.8μmとされる。
【0068】
その後、シリコン層212をエッチングすることにより、振動ボディ214を形成する(図6D)。
【0069】
このボディを酸化し、これにより、表面酸化層216を形成する(図6E)。例えば、この層は、熱処理によって形成され、0.01μm〜0.3μmという厚さのものとすることができる。
【0070】
その後、酸化物層216内におよびボディ214内に、ボックス218を、エッチング形成する。このようなボックスの深さは、ボディ214がなす全厚さの70%〜100%とすることができる。
【0071】
次なるステップにおいては、ボックス218内において、アルミニウム220を成膜してエッチングする(図6G)。その後、例えば電極222(図6H)といったような電極を、成膜によって形成する。例えば、P++にドーピングされたポリシリコンから形成することができ、厚さは、2〜3μmとすることができる。
【0072】
その後、振動ボディからなる構造を、SiO からなる犠牲層203をエッチングすることによって、解放する。これにより、複数のキャビティ224を、振動ボディと基板201との間において、および、振動ボディと電極222との間において、露出させる(図6I)。
【0073】
次なるステップにおいては、電極の表面を金属化し、これにより、パッド226を形成する(図6J)。
【0074】
このプロセスを使用することにより、図1Aにおける部分20に対応した部分が、エピタキシャル成長ステップ時に形成された単結晶シリコンから形成されているような、共振器を得ることができる。
【0075】
その後、基板に対しての振動ボディのアンカー止めを、同じ結晶から形成する。
【0076】
これにより、振動ボディの機械的特性を改良することができる。なぜなら、異なる材料どうしの間の境界部分がなす損失源を低減させ得るからである。これは、中心軸が多結晶シリコンから形成されている場合に顕著である。さらに、振動ボディの残部が、単結晶シリコンから、または、グレインジョイントから、形成されているからである。この結果、従来技術によるデバイスと比較して、より良好な性能を得ることができる。
【0077】
本発明によるデバイスには、小さなものとすることができる(典型的には、50μm×50μm)。
【0078】
また、このようなデバイスは、温度に関して、安定的なものである。この構成部材は、温度変化に対して、あまり敏感ではない。単一のアンカー6(この場合には、中心位置に配置されたアンカー)が、温度差による膨張に基づく応力の発現を制限する。
【0079】
さらに、このようなデバイスの技術的製造に関する様々なステップは、集積回路(IC)技術に対して互換性を有している。
【0080】
このデバイスにおいては、さらに、高い共振周波数を得ることができる。大きな機械的特性を有した第1材料の使用は、約10μmという程度の寸法(特に、上記において想定したような寸法。例えば、50μm×50μm。)に関して、大きな共振周波数(100MHzの程度)を得ることができる。
【0081】
さらに、形質導入箇所における大きな変位量を使用することにより、構成部材からの出力部分において、大きな信号レベルを得ることができる。
【0082】
また、有限要素法による計算によって、第2材料22の埋設箇所における形質導入表面に関してより大きな変位が示された。図4は、本発明による構成部材の変形形状を示している。最も大きく変形する領域は、材料22において得られ、とりわけ、検出電極に対して最も接近して位置した領域22−1,22−2において得られる。
【0083】
シミュレーションの実施により、同じ共振周波数(60MHz)において、構造(第1材料:シリコン、第2材料:アルミニウム)の最大変位量が、シリコンだけから構成されたディスクの場合と比較して、10 倍以上という倍率でもって、大きくなることが示された。
【0084】
測定電極から出力電流は、次式によって表される。
【0085】
【数1】

【0086】
ここで、
−V は、振動ボディに対するバイアス電圧であり、
−ε ,ε は、それぞれ、真空中での誘電率、および、エア中での比誘電率であり、
−Sは、検出に関連した形質導入表面積であり、
−d+x は、形質導入表面のところにおけるエアギャップの厚さであり、
−Cは、休止時における検出表面のキャパシタンス値である。
【0087】
エアギャップ内における大きな変化dx(正または負)が、大きな強度変化をもたらし得ること、したがって、大きな信号レベルをもたらし得ること、がわかる。
【0088】
逆に言えば、この関係式は、一定の変位量に関しては、構成部材の振動ボディに対して印加されたバイアス電圧が、振動ボディが単一の材料から形成されている共振器に対して印加されるバイアス電圧と比較して、より小さいことを示している。非特許文献1〜3に記載された共振器は、数十ボルト〜数百ボルト以上というバイアス電圧を有している。一方、本発明による構成部材は、より小さなバイアス電圧を有している。典型的には、数ボルト〜数十ボルトというバイアス電圧を有している。例えば、2V〜5Vといったような、あるいは、20V〜30Vといったような、バイアス電圧を有している。このことは、チップへの組込を考慮した場合には、重要な利点である。
【0089】
産業的な応用は、RF応用(参照用発振器、可変発振器、フィルタ)のための受動的構成部材という分野であり、また、共振器を使用したすのべてのエレクトロニクス分野およびマイクロエレクトロニクス分野である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1A】本発明によるデバイスの一例を示す図である。
【図1B】本発明によるデバイスの一例を示す図である。
【図2A】特定のモードにおけるディスクの変形形状を示す図である。
【図2B】特定のモードにおけるディスクの変形形状を示す図である。
【図3A】本発明によるデバイスの他の例を示す図である。
【図3B】本発明によるデバイスの他の例を示す図である。
【図4】本発明による複合型ディスクの変形形状を示す図である。
【図5A】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5B】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5C】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5D】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5E】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5F】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5G】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5H】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図5I】本発明によるプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6A】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6B】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6C】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6D】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6E】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6F】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6G】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6H】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6I】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【図6J】本発明による他のプロセスにおける各ステップを示す図である。
【符号の説明】
【0091】
4 振動ボディ
6 連結ベース
10 検出電極
12 検出電極
14 励起電極
16 励起電極
20 第1部分
22 第2部分
100 基板
106 ベース
110 第2材料
114 電極
115 電極
120 第2材料
122 電極
200 SOI基板
201 基板
212 エピタキシャル成長層
214 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的機械的共振器であって、
振動ボディ(4)と、少なくとも1つの励起電極(14,16)と、少なくとも1つの検出電極(10,12)と、を具備してなる共振器において、
前記振動ボディが、第1ヤング率を有した第1材料から形成された第1部分(20)と、前記第1ヤング率よりも小さな第2ヤング率を有した第2材料から形成された第2部分(22)と、を備え、
この第2部分が、少なくとも部分的に、前記検出電極(10,12)に対向して配置されていることを特徴とする共振器。
【請求項2】
請求項1記載の共振器において、
前記第1ヤング率が、100GPaよりも大きいものとされていることを特徴とする共振器。
【請求項3】
請求項1または2記載の共振器において、
前記第2ヤング率が、100GPaよりも小さいものとされていることを特徴とする共振器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第1材料が、単結晶シリコン、または、ニッケル、または、ダイヤモンド、から形成されていることを特徴とする共振器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第2材料が、アルミニウム、または、金、または、亜鉛、または、マグネシウム、から形成されていることを特徴とする共振器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の共振器において、
前記振動ボディが、円形とされていることを特徴とする共振器。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の共振器において、
前記振動ボディが、正方形とされていることを特徴とする共振器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の共振器において、
2つの励起電極と2つの検出電極とが、互いに90°という角度をなして配置されていることを特徴とする共振器。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の共振器において、
各々が励起電極と検出電極とを兼ねる2つの電極を具備し、
これら2つの電極が、直径方向に対向して配置されていることを特徴とする共振器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の共振器において、
前記第2材料(22)が、前記振動ボディ(4)の厚さEの70%〜100%という厚さeのものとして、局所的に存在していることを特徴とする共振器。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の共振器において、
共振器を基体に対して連結するためのアンカーすなわち単一ベース(6)を具備していることを特徴とする共振器。
【請求項12】
電気的機械的共振器の製造方法であって、
前記共振器が、振動ボディと、少なくとも1つの励起電極と、少なくとも1つの検出電極と、を具備しているとともに、前記振動ボディが、第1ヤング率を有した第1材料から形成された第1部分と、前記第1ヤング率よりも小さな第2ヤング率を有した第2材料から形成された第2部分と、を備え、前記第2部分が、少なくとも部分的に、前記検出電極に対向して配置されているものとされている場合に、
この方法が、
−前記第1ヤング率を有した前記第1材料からなるベース内に、少なくとも1つのキャビティをエッチング形成するステップと、
−前記キャビティ内に、前記第1ヤング率よりも小さな前記第2ヤング率を有した前記第2材料を、成膜するステップと、
を具備していることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、
さらに、前記第2材料(110,120)に対向して電極(114,115,122)を形成するステップを具備していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12または13記載の方法において、
基板(100,201)と前記共振器との間の連結部分として、前記基板に対しての連結ベース(6)だけを残すようにしてエッチングを行うエッチングステップを具備していることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法において、
前記キャビティの深さが、前記ベース(106)の厚さEの70%〜95%という厚さeとなるようにして、前記エッチングを行うことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法において、
前記ベース(214)を、SOI基板(200)上のエピタキシャル成長層(212)をエッチングすることによって、形成することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法において、
前記ベースを、単結晶シリコンから形成することを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図6J】
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【公表番号】特表2008−504771(P2008−504771A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518665(P2007−518665)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050520
【国際公開番号】WO2006/013301
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】