説明

変性された酸化第二スズゾルおよび酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾルの製造方法

【課題】 プラスチックレンズの表面に施されるハードコート剤の成分、又はその他の用途に用いる安定な変性されたゾルの製造方法を提供する。
【解決手段】 酸化第二スズ粒子または酸化第二スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子との複合体粒子であり、これらの酸化物が重量に基づいてZrO:SnOとして0:1〜0.50:1の割合と4〜50nmの粒子径を有するコロイド粒子(A)を核としてその表面が、アルキルアミン含有Sbコロイド粒子(B1)又は五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子(B2)又は酸化タングステン−酸化第二スズ−ニ酸化珪素複合体コロイド(B3)で被覆され、且つ(B)/(A)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された金属酸化物粒子を含有するゾルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化スズコロイドまたは酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の表面を、アルキルアミン含有Sb25コロイド粒子、五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子、または酸化タングステンと酸化第二スズと二酸化珪素複合体コロイド粒子で被覆することによって形成された、粒子径4〜60nmの変成された酸化第二スズまたは変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウムのコロイド粒子の製造方法に関する。
【0002】
本発明のゾルは、プラスチックレンズの表面に施されるハードコート剤の成分として、その他種々の用途に用いられる。
【背景技術】
【0003】
近年多用されるようになってきたプラスチックレンズの表面を改良するために、この表面に適用されるハードコート剤の成分として、高い屈折率を有する金属酸化物のゾルが用いられている。
【0004】
Al、Ti、Zr、Sn、Sb等の金属酸化物の1〜300nm粒子を含有させたハードコート剤が記載されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
酸化タングステン単独の安定なゾルは未だ知られていないが、珪酸塩の添加によって得られるWO:SiO:MO(但し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウム基を表わす。)モル比が4〜15:2〜5:1であるゾルが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
Si:Snのモル比が2〜1000:1であるケイ酸−スズ酸複合体ゾルが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0007】
4〜50nmの粒子径を有する原子価3、4又は5の金属酸化物のコロイド粒子を核としてその表面がWO/SnO重量比0.5〜100であって粒子径2〜7nmである酸化タングステン−酸化第二スズ複合体のコロイド粒子で被覆されることによって形成された粒子径4.5〜60nmの変性金属酸化物コロイドからなり、そしてこれら全金属酸化物を2〜50重量%含む安定なゾルが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。
【0008】
ZrO/SnOとして0.02〜1.0の重量比と4〜50nmの粒子径を有するSnO−ZrO複合体コロイド粒子を核として、その表面を、0.5〜100のWO/SnO重量比と2〜7nmの粒子径を有するWO−SnO複合体コロイド粒子で被覆した構造の粒子からなる変性されたSnO−ZrO複合体の安定なゾルが提案されている(例えば、特許文献5を参照)。
【0009】
2〜60nmの一次粒子径を有する金属酸化物のコロイド粒子(A)を核として、その表面を酸性酸化物のコロイド粒子からなる被覆物(B)で被覆して得られた粒子(C)を含有し、且つ(C)を金属酸化物に換算して2〜50重量%の割合で含み、そして2〜100nmの一次粒子径を有する安定な変性金属酸化物ゾルが開示されている。そして、核の金属酸化物はSnO粒子、SnO−ZrO複合体コロイド粒子であり、被覆物にアルキルアミン含有Sb粒子(M/Sbモル比が0.02〜4.00)であるゾルが開示されている(例えば、特許文献6を参照)。
【0010】
ケイ酸アルカリ水溶液又はケイ酸ゾル液と、アンチモン酸アルカリ水溶液又はスズ酸アルカリ水溶液とをSi:Sb又はSi:Snのモル比が2〜1000:1となるように混合した後、該混合液を酸型イオン交換体により脱カチオンすることを特徴とするケイ酸−アンチモン酸複合体ゾル液又はケイ酸−スズ酸複合体ゾル液の製造方法が記載されている(例えば、特許文献7)。
【0011】
分散媒中に、SiOとして0.1〜50重量%の無機ケイ酸化合物を含有する酸化アンチモンコロイド粒子を分散せしめたニ酸化珪素酸化アンチモン複合体ゾルが記載されている(例えば、特許文献8)。
【特許文献1】特公昭63−37142号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭54−52686号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特公昭50−40119号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平3−217230号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平6−24746号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2001−122621(特許請求の範囲)
【特許文献7】特公昭50−40119号(特許請求の範囲)
【特許文献8】特公平7−25549号(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の金属酸化物ゾル、特にカチオン性の金属酸化物ゾルをハードコート剤の成分として用いると、得られたハードコート剤の安定性が充分でないのみならず、このハードコート剤の硬化皮膜の透明性、密着性、耐候性等も充分でない。またSbゾルをハードコート剤成分として用いる場合には、Sbの屈折率が1.65〜1.70程度であるから、レンズのプラスチック基材の屈折率が1.6以上のときには、もはやこのSbゾルでは硬化被膜の屈折率が充分に向上しない。
【0013】
上記特開昭54−52686号公報に記載の酸化タングステンのゾルは、タングステン酸塩の水溶液を脱陽イオン処理することにより得られるタングステン酸の水溶液に、珪酸塩を加えることにより得られているが、強酸性においてのみ安定であり、また、ハードコート剤の成分として用いる場合には、塗膜の屈折率を向上させる効果は小さい。
【0014】
上記特公昭50−40119号公報に記載のケイ酸−スズ酸複合体ゾルは、ケイ酸アルカリとスズ酸アルカリの混合水溶液を脱陽イオン処理することにより得られているが、上記同様、やはりハードコート剤の成分として用いる場合には、塗膜の屈折率を向上させる効果は小さい。
【0015】
上記特開平3−217230号公報に記載の変性金属酸化物ゾルは屈折率が1.7以上で、安定であり、プラスチックレンズ用のハードコート剤の成分として用いることができ、要求されるハードコート膜の性能、例えば耐擦傷性、透明性、密着性、耐水性、耐候性などの性能をほぼ満足する事ができる。しかし、レンズのプラスチック基材の屈折率が1.7以上のときは硬化被膜の屈折率が十分には向上しない。
【0016】
上記特開平6−24746号公報に記載の変性酸化第二スズ−酸化ジルコニウムゾルは屈折率が1.7以上で、安定であり、プラスチックレンズ用のハードコート剤の成分として用いることができ、要求されるハードコート膜の性能、例えば耐擦傷性、透明性、密着性などの性能をほぼ満足する事ができる。しかし、やはりこのゾルはレンズのプラスチック基材の屈折率が1.7以上のときは硬化被膜の屈折率が十分には向上しない。
【0017】
本願発明は特開平3−217230号公報や特開平6−24746号公報に記載された変成金属酸化物をハードコート膜にした際の状態、例えば耐擦傷性、透明性、密着性、耐水性、耐候性などについてさらに向上させるためのゾルであって幅広いpH領域で安定かつ屈折率が高い(1.9以上)、変性された酸化第二スズまたは変成された酸化第二スズ−酸化ジルコニウムの安定なゾルを提供し、プラスチックレンズ表面に施されるハードコート膜の性能向上成分として、そのハードコート用塗料に混合して用いることができる金属酸化物ゾルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は第1観点として、下記(a1)工程、(b1)工程、(c1)工程及び(d1)工程:
(a1)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、
(b1)工程:上記(a1)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを、0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c1)工程:(b1)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sb水性ゾルとを、その金属酸化物に換算したSb/SnOの重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d1)工程:(c1)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法、
第2観点として、下記(a2)工程、(b2)工程、(c2)工程および(d2)工程:
(a2)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、
(b2)工程:上記(a2)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを、0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c2)工程:(b2)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sb水性ゾルとを、その金属酸化物に換算したSb/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d2)工程:(c2)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルの製造方法、
第3観点として、下記(a3)工程、(b3)工程、(c3)工程および(d3)工程:
(a3)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、
(b3)工程:上記(a3)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c3)工程:上記(b3)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(Sb+SiO)/(SnO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d3)工程:(c3)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法、
第4観点として、下記(a4)工程、(b4)工程、(c4)工程および(d4)工程:
(a4)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、
(b4)工程:上記(a4)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c4)工程:(b4)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(Sb+SiO)/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d4)工程:(c4)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルの製造方法、
第5観点として、下記(a5)工程、(b5)工程、(c5)工程および(d5)工程:
(a5)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、
(b5)工程:上記(a5)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c5)工程:(b5)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(SnO+WO+SiO)/(SnO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d5)工程:(c5)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法、
第6観点として、下記(a6)工程、(b6)工程、(c6)工程および(d6)工程:
(a6)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、
(b6)工程:上記(a6)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c6)工程:(b6)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(SnO+WO+SiO)/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d6)工程:(c6)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本願発明はアンチモン酸アルカリ塩、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド、更にそれらにニ酸化珪素成分を加えた被覆物、及び五酸化アンチモン−ニ酸化珪素複合体コロイドおよび酸化タングステン−酸化第二スズ−ニ酸化珪素複合体コロイドによる被覆の作用で、従来の金属酸化物コロイドの種々の欠点(分散性、耐候性、長期安定性、ハードコート剤との相溶性、結合性)を改善することができ、優れた変性金属酸化物を得ることができる。本願発明の変性された酸化第二スズおよびまたは酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドをハードコート剤成分として用いると、従来の金属酸化物ゾルを用いたときに見られる紫外線照射による黄変や、膜硬度、耐水性、耐湿性、相溶性の問題を克服することができる。
【0020】
本願発明の目的は、耐水性及び耐候性能の良好な変性された金属酸化物のコロイド粒子の安定なゾルを提供し、プラスチックレンズ表面に施されるハードコート膜の性能向上成分として、そのハードコート用塗料に混合して用いることができるゾルを提供することにある。
【0021】
本発明によって得られる表面変性された金属酸化物コロイド粒子のゾルは無色透明であって、その乾燥塗膜から算出した屈折率は1.9以上を示し、また、結合強度、硬度のいずれも高く、耐候性、帯電防止性、耐熱性、耐摩耗性等も良好である。また、特に耐候性、耐湿性が従来のものに比べ格段に向上している。
【0022】
このゾルは、pHは3〜11.5において安定であり、工業製品として供給されるに充分な安定性も与えることができる。
【0023】
このゾルは、そのコロイド粒子が負に帯電しているから、他の負帯電のコロイド粒子からなるゾルなどとの混和性が良好であり、例えばニ酸化珪素ゾル、五酸化アンチモンゾル、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤、ポリビニルアルコール等の水溶液、アニオン性又はノニオン性の樹脂エマルジョン、水ガラス、りん酸アルミニウム等の水溶液、エチルシリケイトの加水分解液、γ−グリシドキシトリメトキシシラン等のシランカップリング剤又はその加水分解液などと安定に混合し得る。
【0024】
このような性質を有する本発明のゾルは、プラスチックレンズ上にハードコート膜を形成させるための屈折率、染色性、耐薬品性、耐水性、耐湿性、耐光性、耐候性、耐摩耗性等の向上成分として特に有効であるが、その他種々の用途に用いることができる。
【0025】
このゾルを有機質の繊維、繊維製品、紙などの表面に適用することによって、これら材料の難燃性、表面滑り防止性、帯電防止性、染色性等を向上させることができる。また、これらのゾルは、セラミックファイバー、ガラスファイバー、セラミックス等の結合剤として用いることができる。更に、各種塗料、各種接着剤等に混入して用いることによって、それらの硬化塗膜の耐水性、耐薬品性、耐光性、耐候性、耐摩耗性、難燃性等を向上させることができる。その他、これらのゾルは、一般に、金属材料、セラミックス材料、ガラス材料、プラスチック材料などの表面処理剤としても用いることができる。更に触媒成分としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本願発明の第1観点、第2観点によって得られるゾルは、加圧下で100〜350℃、0.01時間〜100時間の加熱処理された酸化第二スズ粒子(A1)、または酸化第二スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子との複合体粒子であり、これらの酸化物が重量に基づいてZrO:SnOとして0.001:1〜0.50:1の割合と4〜50nmの粒子径を有するコロイド粒子(A2)を核としてその表面が、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sbコロイド粒子(B1)で被覆され、且つ(B1)/〔(A1)又は(A2)〕の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された金属酸化物粒子を含有するゾルである。
【0027】
また、本願発明の第3観点又は第4観点によって得られるゾルは、加圧下で100〜350℃、0.01時間〜100時間の加熱熟成された酸化第二スズ粒子(A1)、または酸化第二スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子との複合体粒子であり、これらの酸化物が重量に基づいてZrO:SnOとして0.001:1〜0.50:1の割合と4〜50nmの粒子径を有するコロイド粒子(A2)を核としてその表面が、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子(B2)で被覆され、且つ(B2)/〔(A1)又は(A2)〕の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された金属酸化物粒子を含有するゾルである。
そして、本願発明の第5観点又は第6観点によって得られるゾルは、加圧下で100〜350℃、0.01時間〜100時間の加熱熟成された酸化第二スズ粒子(A1)、または酸化第二スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子であり、これらの酸化物が重量に基づいてZrO:SnOとして0.001:1〜0.50:1の割合と4〜50nmの粒子径を有するコロイド粒子(A2)を核としてその表面が、WO/SnO重量比として0.1〜100、SiO/SnO重量比として0.1〜100の比率に含有する酸化タングステンと酸化第二スズと二酸化珪素複合体コロイド粒子(B3)で被覆され、且つ(B3)/〔(A1)又は(A2)〕の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された金属酸化物粒子を含有するゾルである。
【0028】
上記ゾル中の粒子径は電子顕微鏡観察による粒子径で表される。
【0029】
本願発明のゾルの製造に用いられる核粒子(A1)としての酸化第二スズコロイド粒子は公知の方法、例えばイオン交換法、解膠法、加水分解法、反応法等と呼ばれる方法により、約4〜50nm程度の粒子径を有するコロイド粒子のゾルの形態で容易につくることができる。
【0030】
上記イオン交換法の例としては、スズ酸ナトリウムのようなスズ酸塩を水素型陽イオン交換樹脂で処理する方法、或いは上記塩化第二スズ、硝酸第二スズのような第二スズ塩を水酸基型陰イオン交換樹脂で処理する方法が挙げられる。上記解膠法の例としては、第二スズ塩を塩基で中和するか、或いはスズ酸を塩酸で中和させることにより得られる水酸化第二スズゲルを洗浄した後、酸又は塩基で解膠する方法が挙げられる。上記加水分解法の例としては、スズアルコキシドを加水分解する方法、或いは塩基性塩化第二スズ塩を加熱下に加水分解した後、不要の酸を除去する方法が挙げられる。上記反応法の例としては、金属スズ粉末と酸とを反応させる方法が挙げられる。
【0031】
本願発明では、上記の方法で製造されたSnO濃度1〜50重量%の酸化第二スズ水性ゾルを、そのまま使用する事も出来るが、加圧下で100〜350℃、0.01時間〜100時間の水熱処理によって製造することが好ましい。水熱処理は例えばオートクレーブに上記の酸化第二スズ水性ゾルを入れ、0.1〜40MPa(メガパスカル)の圧力と100〜350℃の温度で、0.01〜100時間の処理が施される。
【0032】
これら酸化第二スズゾルの媒体は、水、親水性有機溶媒のいずれでもよいが、媒体が水である水性ゾルが好ましい。また、ゾルのpHとしては、ゾルを安定ならしめる値がよく、通常、0.2〜11.5程度がよい。本発明の目的が達成される限り、酸化第二スズゾルには、任意の成分、例えば、ゾルの安定化のためのアルカリ性物質、酸性物質、オキシカルボン酸等が含まれていてもよい。用いられる酸化第二スズゾルの濃度としては、酸化第二スズとして0.5〜50重量%程度であるが、この濃度は低い方がよく、好ましくは1〜30重量%である。
【0033】
本願発明のゾルの製造に用いられる核粒子としての酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾル(A2)は、4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する上記酸化第二スズゾルに、0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩をZrO/SnO重量比が0.001〜0.5になるように5〜100℃で0.1〜50時間で混合し、次いでこれを60〜100℃、0.1〜50時間加熱する工程により得ることにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルが得られる。
【0034】
ここで用いる酸化第二スズゾルは予め水熱処理を施したゾル、又は水熱処理を施さないゾルのいずれも使用することができる。
【0035】
このように得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを、
0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う。
【0036】
上記のオキシジルコニウム塩としては、炭酸アンモニウムジルコニル、炭酸カリウムジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウム等がある。これらのオキシジルコニウム塩は固体又は水溶液として用いることができるが、ZrO2として0.5〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%程度の水溶液として用いるのが好ましい。
またオキシ炭酸ジルコニルのように、水に不溶の塩でも酸化第二スズが酸性ゾルの場合は使用することが可能である。
【0037】
酸化第二スズゾルは特にアミンなどの有機塩基で安定化されたアルカリ性のゾルを用いるのが特に好ましく、オキシジルコニウム塩との混合は5〜100℃、好ましくは室温(20℃)〜60℃が好ましい。そしてこの混合は撹拌下で酸化第二スズゾルにオキシジルコニウム塩を加えても、オキシジルコニウム塩水溶液に酸化第二スズゾルを加えてもよいが、後者の方が好ましい。この混合は充分行われる必要があり、0.5〜3時間が好ましい。
【0038】
本願発明の被覆ゾルとして用いられるアルキルアミン含有五酸化アンチモンコロイド(B1)は下記に示す方法(酸化法、酸分解法等)で得ることができる。酸分解法の例としてはアンチモン酸アルカリを無機酸と反応させた後にアミンで解膠する方法(特開昭60−41536号、特開昭61−227918号、特開2001−123115号)、酸化法の例とアミンやアルカリ金属の共存下で三酸化アンチモンを過酸化水素で酸化する方法(特公昭57−11848号、特開昭59−232921号)や三酸化アンチモンを過酸化水素で酸化した後、アミンやアルカリ金属を添加する方法で得ることができる。
【0039】
上記のアミン含有五酸化アンチモンコロイドのアミンの例としてはアンモニウム、第四級アンモニウム又は水溶性のアミンが挙げられる。これらの好ましい例としてはイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−プロピルアミン、ジイソブチルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の第4級アンモニウムが挙げられる。特にジイソプロピルアミンおよびジイソブチルアミンが好ましい。上記、アミン含有五酸化アンチモンコロイド中のアルカリ成分と五酸化アンチモンのモル比はM/Sb2O5が0.02〜4.00が好ましく、これより少ないと得られたコロイドの安定性が乏しくなり、また多すぎるとこのようなゾルを用いて得られる乾燥塗膜の耐水性が低くなり実用上好ましくない。
【0040】
アミン含有五酸化アンチモンコロイド粒子(B1)は、微小な五酸化アンチモンのコロイド粒子であり、その粒子径は電子顕微鏡観察によりオリゴマーまたは一次粒子径が1〜20nm程度であった。アミン成分としてジイソプロピルアミン等のアルキルアミン塩が好ましく、アミン/Sb2O5のモル比は0.02〜4.00である。
【0041】
上記の被覆物には、アミン含有五酸化アンチモンコロイド粒子に、更にアルキルアミン含有ニ酸化珪素粒子を加える事が出来る。
【0042】
本願発明の被覆ゾルとして用いられる五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド(B2)は下記に示す公知の方法(例えば、特公昭50−40119号)で得る事が出来る。即ちケイ酸アルカリ水溶液又はケイ酸液とアンチモン酸アルカリ水溶液とを混合した後、陽イオン交換樹脂により脱カチオンすることにより得ることができる。
【0043】
アンチモン原料としては、好ましくはアンチモン酸カリウム水溶液を用いることができる。ニ酸化珪素原料としてはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらをカチオン交換して得られる活性ケイ酸を用いることができる。SiO/Sbのモル比は
0.55〜55である。粒子径は電子顕微鏡観察によりオリゴマーまたは一次粒子が5nm以下、好ましくは1〜5nmである。
【0044】
本願発明の被覆ゾルに用いられる酸化タングステンと酸化第二スズと二酸化珪素複合体コロイド粒子(B3)は下記に示す方法で得ることができる。
タングステン酸塩、スズ酸塩及び珪酸塩をWO/SnO重量比として0.1〜100、SiO/SnO重量比として0.1〜100の比率に含有する水溶液を調製し、得られた水溶液中に存在する陽イオンを除去する方法で得られる。
このゾルに含まれるWO、SnO及びSiOの合計の濃度は、通常40重量%以下、実用上好ましくは2重量%以上、好ましくは5〜30重量%である。
【0045】
本願発明の目的が達成される限り、他の任意の成分を含有することができる。特にオキシカルボン酸類をWO、SnO及びSiOの合計量に対し約30重量%以下に含有させると更に改良されたゾルが得られる。用いられるオキシカルボン酸の例としては、乳酸、酒石酸、くえん酸、グルコン酸、りんご酸、グリコール酸等が挙げられる。
【0046】
アルカリ成分を実質的に含有しないで安定に存在する事ができる。しかし、アルカリ成分を含有して安定化する事も可能である。そのアルカリ成分は、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属水酸化物、NH、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンである。これらアルカリ成分をWO、SnO及びSiOの合計量に対し約30重量%以下含有させる事ができる。また、これらは2種以上を混合して含有する事が出来る。
【0047】
このゾルは、1〜9のpHを示し、無色透明乃至僅かにコロイド色を有する液である。そして、室温では3ケ月以上、60℃でも1ケ月以上安定であり、このゾル中に沈降物が生成することがなく、また、このゾルが増粘したり、ゲル化を起すようなことはない。
【0048】
このゾルの製造に用いられるタングステン酸塩、スズ酸塩および珪酸塩の例としては、上記アルカリ金属、アンモニウム、アミン等のタングステン酸塩、スズ酸塩および珪酸塩等が挙げられる。特に、タングステン酸ナトリウム(NaWO・2HO)、スズ酸ナトリウム(NaSnO・3HO)及び珪酸ナトリウム(水ガラス)が好ましい。また。酸化タングステン、タングステン酸、スズ酸、珪酸等をアルカリ金属水酸化物の水溶液に溶解したものも使用することが出来る。タングステン酸塩、スズ酸塩、珪酸塩の各粉末を水に溶解させ水溶液を調製する方法や、タングステン酸塩水溶液、スズ酸塩水溶液、及び珪酸塩水溶液を混合して水溶液を調製する方法や、タングステン酸塩とスズ酸塩の粉末及び珪酸塩の水溶液を水に添加して水溶液を調製する方法等が挙げられる。タングステン酸塩の水溶液は、WOとして0.1〜15重量%濃度のものが好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。スズ酸塩の水溶液としては、SnO濃度0.1〜30重量%程度が好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。珪酸塩の水溶液としては、SiO濃度0.1〜30重量%程度が好ましいが、これ以上の濃度でも使用可能である。
【0049】
水溶液の調製は攪拌下に、室温〜100℃、好ましくは、室温〜60℃位で行うのがよい。混合すべき水溶液は、WO/SnO重量比として0.1〜100、SiO/SnO重量比として0.1〜100が好ましい。続いて、ここで得られた水溶液中に存在する陽イオンを除去して水性ゾルが得られる。脱陽イオン処理の方法としては水素型イオン交換体と接触させる方法や塩析により行うことができる。ここで用いられる水素型陽イオン交換体としては、通常用いられるものであり、好都合には市販品の水素型陽イオン交換樹脂を用いることが出来る。
【0050】
このゾルは、濃度が低いときには所望に応じ、この水性ゾルを通常の濃縮方法、例えば、蒸発法、限外濾過法等により、ゾルの濃度を高めることができる。特に、限外濾過法は好ましい。この濃縮においても、ゾルの温度は約100℃以下、特に60℃以下に保つことが好ましい。
本願発明によるアミン含有Sb25コロイド(B1)によって表面が被覆された変成された酸化第二スズまたは変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子はゾル中で負に帯電している。
【0051】
上記の酸化第二スズ(A1)及び酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子(A2)は陽に帯電しており、Sb25コロイドは負に帯電している。従って、混合により陽に帯電している酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の周りに負に帯電しているSb25のコロイドが電気的に引き寄せられ、そして陽帯電のコロイド粒子表面上に化学結合によってSb25のコロイドが結合し、この陽帯電の粒子を核としてその表面を負に帯電したSb25が覆ってしまうことによって、変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子が生成したものと考えられる。
【0052】
核ゾルとしての粒子径4〜50nmの酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子と、被覆ゾルとしてのアミン含有Sb25コロイド(B1)とを混合するときに、核ゾルの金属酸化物(SnO又はZrO+SnO)100重量部に対し、被覆ゾルの金属酸化物が1重量部より少ないと、安定なゾルが得られない。このことは、Sb25のコロイドの量が不足するときには、この複合体のコロイド粒子による酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を核とするその表面の被覆が不充分となり、生成コロイド粒子の凝集が起こり易く、生成ゾルを不安定ならしめるものと考えられる。従って、混合すべきSb25コロイド粒子の量は、酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の全表面を覆う量より少なくてもよいが、安定な変性された酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子のゾルを生成せしめるに必要な最小量以上の量である。この表面被覆に用いられる量を越える量のSb25コロイド粒子が上記混合に用いられたときには、得られたゾルは、Sb25コロイドのゾルと、生じた変性された酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子のゾルの安定な混合ゾルに過ぎない。
【0053】
好ましくは、酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子をその表面被覆によって変性するには、用いられるSb25のコロイド(B1)の量は、核ゾルの金属酸化物(SnO又はZrO+SnO)100重量部に対し、被覆ゾル中の金属酸化物として50重量部以下がよい。
【0054】
本発明による五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド(B2)によって表面が被覆された変成された酸化第二スズまたは変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子はゾル中で負に帯電している。
【0055】
上記酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子は陽に帯電しており、五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドは負に帯電している。従って、混合によりこの陽に帯電している酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の周りに負に帯電している五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドが電気的に引き寄せられ、そして陽帯電のコロイド粒子表面上に化学結合によって五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドのコロイドが結合し、この陽帯電の粒子を核としてその表面を負に帯電した五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドが覆うことによって、変性された酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子が生成したものと考えられる。
【0056】
核ゾルとしての粒子径4〜50nmの酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子と、被覆ゾルとしての五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド(B2)とを混合するときに、核ゾルの金属酸化物(SnO又はZrO+SnO)100重量部に対し、被覆ゾルの金属酸化物が1重量部より少ないと、安定なゾルが得られない。このことは、五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドの量が不足するときには、この複合体のコロイド粒子による酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を核とするその表面の被覆が不充分となり、生成コロイド粒子の凝集が起こり易く、生成ゾルを不安定ならしめるものと考えられる。従って、混合すべき五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子の量は、酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の全表面を覆う量より少なくてもよいが、安定な変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子のゾルを生成せしめるに必要な最小量以上の量である。この表面被覆に用いられる量を越える量の五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子が上記混合に用いられたときには、得られたゾルは、五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドのゾルと、生じた変性された酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子のゾルの安定な混合ゾルに過ぎない。
【0057】
好ましくは、酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子をその表面被覆によって変性するには、用いられる五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド(B2)の量は、核ゾルの金属酸化物(SnO又はZrO+SnO)100重量部に対し、被覆ゾル中の金属酸化物として50重量部以下がよい。
本発明による酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド(B3)によって表面が被覆された変成された酸化第二スズまたは変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子はゾル中で負に帯電している。
【0058】
上記酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子は陽に帯電しており、酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドは負に帯電している。従って、混合によりこの陽に帯電している酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の周りに負に帯電している酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドが電気的に引き寄せられ、そして陽帯電のコロイド粒子表面上に化学結合によって酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドが結合し、この陽帯電の粒子を核としてその表面を負に帯電した酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドが覆ってしまうことによって、変性された酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子が生成したものと考えられる。
【0059】
核ゾルとしての粒子径4〜50nmの酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子と、被覆ゾルとしての酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド(B3)とを混合するときに、核ゾルの金属酸化物(SnO又はZrO+SnO)100重量部に対し、被覆ゾルの金属酸化物が1重量部より少ないと、安定なゾルが得られない。このことは、酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイドの量が不足するときには、この複合体のコロイド粒子による酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を核とするその表面の被覆が不充分となり、生成コロイド粒子の凝集が起こり易く、生成ゾルを不安定ならしめるものと考えられる。従って、混合すべき酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子の量は、酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の全表面を覆う量より少なくてもよいが、安定な変性された酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子のゾルを生成せしめるに必要な最小量以上の量である。この表面被覆に用いられる量を越える量の酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子が上記混合に用いられたときには、得られたゾルは、五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイドのゾルと、生じた変性された酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子のゾルの安定な混合ゾルに過ぎない。
【0060】
好ましくは、酸化第二スズ又は酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子をその表面被覆によって変性するには、用いられる酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド(B3)の量は、核ゾルの金属酸化物(SnO又はZrO+SnO)100重量部に対し、被覆ゾル中の金属酸化物として50重量部以下がよい。
【0061】
本願発明では核に酸化第二スズを用いる場合は、
(a1)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、
(b1)工程:上記(a1)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを、0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で、0.01〜100時間熟成する工程、
(c1)工程:上記(b1)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sb水性ゾルとを、その金属酸化物に換算したSb/SnOの重量割合で0.01〜0.50に混合する工程
(d1)工程:(c)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法である。
この(d1)工程で得られたゾルがアニオンを含有している場合には(e1)工程を追加することが出来る。即ち、(e1)工程は(d1)工程で得られた変性された酸化第二スズ水性ゾルを陰イオン交換体と接触させることにより、当該ゾル中に存在する陰イオンを除去し、その後20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を追加して変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルが得られる。100℃以上の熟成はオートクレーブを用いて行うことが出来る。このゾルは、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズコロイド粒子(A1)を核としてその表面が0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sbコロイド粒子(B1)で被覆され、且つ(B1)/(A1)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズ粒子コロイド粒子を含有するゾルである。
【0062】
また、本願発明では核に酸化第二スズと酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を用いる場合は、(a2)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを調整する工程、
(b2)工程:上記(a2)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で、0.01〜100時間熟成する工程、
(c2)工程:(b2)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sb水性ゾルとを、その金属酸化物に換算したSb/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、
(d2)工程:(c2)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程からなる変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルの製造方法。
このゾルは、酸化物が重量に基づいてZrO:SnOとして0.05:1〜0.50:1の割合と4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子との複合体コロイド粒子(A2)を核としてその表面が、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sbコロイド粒子(B1)で被覆され、且つ(B1)/(A)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子との複合体コロイド粒子を含有するゾルである。
この(d2)工程で得られたゾルがアニオンを含有している場合には(e2)工程を追加することが出来る。即ち、(e2)工程は(d2)工程で得られた変性された酸化第二スズ水性ゾルを陰イオン交換体と接触させることにより、当該ゾル中に存在する陰イオンを除去し、その後20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を追加して変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルが得られる。100℃以上の熟成はオートクレーブを用いて行うことが出来る。このゾルは、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子(A2)を核としてその表面が0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sbコロイド粒子(B1)で被覆され、且つ(B1)/(A2)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子との複合体コロイド粒子を含有するゾルである。
また、被覆物が五酸化アンチモンと二酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルを用いる場合は、(a3)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、(b3)工程:上記(a3)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを 0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で、0.01〜100時間熟成する工程、(c3)工程:上記(b3)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(Sb+SiO)/(SnO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び(d3)工程:(c3)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程からなる変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法である。
【0063】
この(d3)工程で得られたゾルがアニオンを含有している場合には(e3)工程を追加することが出来る。即ち、(e3)工程は(d3)工程で得られた変性された酸化第二スズ水性ゾルを陰イオン交換体と接触させることにより、当該ゾル中に存在する陰イオンを除去し、その後20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を追加して変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルが得られる。100℃以上の熟成はオートクレーブを用いて行うことが出来る。このゾルは、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズコロイド粒子(A1)を核としてその表面が、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子(B2)で被覆され、且つ(B2)/(A1)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズ粒子を含有するゾルである。
また、被覆物が五酸化アンチモンと二酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルを用いる場合は、(a4)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、(b4)工程:上記(a4)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、(c4)工程:(b4)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(Sb+SiO)/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、合する工程、(d4)工程:(c4)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウムコロイド粒子の安定なゾルの製造方法である。
【0064】
この(d4)工程で得られたゾルがアニオンを含有している場合には(e4)工程を追加することが出来る。即ち、(e4)工程は(d4)工程で得られた変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の水性ゾルを、陰イオン交換体と接触させることにより、当該ゾル中に存在する陰イオンを除去し、その後20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を追加して変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルが得られる。100℃以上の熟成はオートクレーブを用いて行うことが出来る。このゾルは、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子(A2)を核としてその表面が、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子(B2)で被覆され、且つ(B2)/(A2)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を含有するゾルである。
【0065】
また、被覆物が酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルを用いる場合は、(a5)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、(b5)工程:上記(a5)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、(c5)工程:(b5)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(SnO+WO+SiO)/(SnO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び(d5)工程:(c5)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法である。
【0066】
この(d5)工程で得られたゾルがアニオンを含有している場合には(e5)工程を追加することが出来る。即ち、(e5)工程は(d5)工程で得られた変性された酸化第二スズ複合体コロイド粒子の水性ゾルを、陰イオン交換体と接触させることにより、当該ゾル中に存在する陰イオンを除去し、その後20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を追加して変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルが得られる。100℃以上の熟成はオートクレーブを用いて行うことが出来る。このゾルは、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズコロイド粒子(A1)を核としてその表面が、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子(B3)で被覆され、且つ(B3)/(A1)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズコロイド粒子を含有するゾルである。
【0067】
また、被覆物が酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルを用いる場合は、(a6)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、(b6)工程:上記(a6)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、(c6)工程:(b6)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(SnO+WO+SiO)/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、(d6)工程:(c6)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウムコロイド粒子の安定なゾルの製造方法である。
【0068】
この(d6)工程で得られたゾルがアニオンを含有している場合には(e6)工程を追加することが出来る。即ち、(e6)工程は(d6)工程で得られた変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の水性ゾルを、陰イオン交換体と接触させることにより、当該ゾル中に存在する陰イオンを除去し、その後20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を追加して変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルが得られる。100℃以上の熟成はオートクレーブを用いて行うことが出来る。このゾルは、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子(A2)を核としてその表面が、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド粒子(B3)で被覆され、且つ(B3)/(A2)の重量比がそれら金属酸化物の重量比に基づいて0.01〜0.50の割合であり、そして4.5〜60nmの粒子径を有する変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を含有するゾルである。
【0069】
本願発明のゾルを得る製造方法は、核に用いる粒子が酸化第二スズである場合と、酸化第二スズと酸化ジルコニウム複合体ゾルを用いる場合が有る。前者はルチル型の結晶構造を有し、また、それらゾルをコーティング組成物として基材に塗布し焼成したものは高い屈折率(塗膜から算出した屈折率が1.9以上)及び優れた透明性を有する。また、後者は、前者の性能に加え、酸化ジルコニウムを複合化することで優れた耐候(光)性能を有する。
【0070】
本発明による変性された酸化第二スズコロイド粒子の水性ゾルまたは変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルはpH3〜11.5を有し、pHが3より低いとそのようなゾルは不安定となり易い。また、このpHが11.5を越えると、変性された酸化第二スズコロイド、及び変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子を覆っている五酸化アンチモンコロイド粒子、五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子および酸化タングステンと酸化第二スズとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子が液中に溶解し易い。更に変性された酸化第二スズコロイド、及び変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子のゾル中の全金属酸化物の合計濃度が60重量%を越えるときにも、このようなゾルは不安定となり易い。工業製品として好ましい濃度は10〜50重量%程度である。
【0071】
本発明の変性金属酸化物ゾルは、本願発明の目的が達成される限り、他の任意の成分を含有することができる。特にオキシカルボン酸類を全金属酸化物の合計量に対し約30重量%以下に含有させると分散性等の性能が更に改良されたコロイドが得られる。用いられるオキシカルボン酸の例としては、乳酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、グリコール等が挙げられる。また、アルカリ成分を含有する事ができ、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属水酸化物、NH、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン;ベンジルアミン等のアラルキルアミン;ピペリジン等の脂環式アミン;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンである。これらは2種以上を混合して含有することができる。また上記の酸性成分と併用することができる。これらを全金属酸化物の合計量に対し約30重量%以下に含有させることができる。
【0072】
ゾル濃度を更に高めたいときには、最大約60重量%まで常法、例えば蒸発法、限外濾過法等により濃縮することができる。またこのゾルのpHを調整したい時には、濃縮後に、前記アルカリ金属、有機塩基(アミン)、オキシカルボン酸等をゾルに加えることによって行うことができる。特に、金属酸化物の合計濃度が10〜40重量%であるゾルは実用的に好ましい。濃縮法として限外濾過法を用いると、ゾル中に共存しているポリアニオン、極微小粒子等が水と一緒に限外濾過膜を通過するので、ゾルの不安定化の原因であるこれらポリアニオン、極微小粒子等をゾルから除去することができる。
【0073】
上記混合によって得られた変性された金属酸化物コロイドが水性ゾルであるときは、この水性ゾルの水媒体を親水性有機溶媒で置換することによりオルガノゾルが得られる。この置換は、蒸留法、限外濾過法等通常の方法により行うことができる。この親水性有機溶媒の例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド等の直鎖アミド類;N−メチル−2−ピロリドン等の環状アミド類;エチルセロソルブ、エチレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。
【実施例】
【0074】
核ゾルの調整
A−1 酸化第二スズゾルの製造
しゅう酸((COOH)・2HO)37.5kgを純水383kgに溶解し、これを500Lベッセルにとり、攪拌下70℃まで加温し、35%過酸化水素水150kgと金属スズ(山石金属社製 AT−SNNO200N)75kgを添加した。
過酸化水素水と金属スズの添加は交代に行った。初めに35%過酸化水素水10kgを次いで金属スズ5kgを添加した。反応が終了するのを待って(5〜10分)この操作を繰り返した。全量添加後、更に35%過酸化水素水10kgを追加した。添加に要した時間は2.5時間で、添加終了後、更に95℃で1時間加熱し、反応を終了させた。過酸化水素水と金属スズのモル比はH/Snとして2.61であった。
得られた酸化スズゾルは非常に透明性が良好であった。この酸化スズゾルの収量は、630kgで比重1.154、pH1.51、SnOとして14.7重量%であった。
得られたゾルを電子顕微鏡で観察したところ、10〜15nmの球状の分散性の良い粒子であった。このゾルは放置によりやや増粘傾向を示したが、室温6ヶ月放置ではゲル化は認められず安定であった。
得られたゾル629kgに35%過酸化水素水231kg、純水52kgを添加し、SnOとして10重量%、仕込み時のしゅう酸に対してH/(COOH)モル比8.0になるように希釈し、95℃に加温、5時間熟成を行った。この操作により含有するしゅう酸を過酸化水素との反応により炭酸ガスと水に分解させた。得られた酸化第二スズスラリーを約40℃まで冷却後、イソプロピルアミンを2.7kg添加、解膠した後、白金系触媒{N−220(ズードケミー触媒(株)製)を約15L充填した触媒塔に通液、循環し、過剰な過酸化水素の分解処理を行った。通液速度は約30L/min.で5時間、循環を行った。更に陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410)を充填したカラムに通液し、アルカリ性の酸化スズゾルを1545kg得た。得られたゾルの比表面積は121m/gであった。
B.被覆物の調製
B−1−1 アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドの調整
100リットルのベッセルに三酸化アンチモン(広東三国製、Sbとして99.5%を含有する。)を12.5kg、純水66.0kgおよび水酸化カリウム(KOHとして95%を含有する。)12.5kgを添加し、攪拌下で、35%過酸化水素を8.4kg徐々に添加した。得られたアンチモン酸カリウム水溶液はSbとして15.25重量%、水酸化カリウムとして5.36重量%、KO/Sbのモル比は1.0であった。
【0075】
得られたアンチモン酸カリウムの水溶液を2.5重量%に希釈し、水素型陽イオン交換樹脂を充填したカラムに通液した。イオン交換後のアンチモン酸の溶液にジイソプロピルアミンを攪拌下で6.6kg添加し、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド溶液を得た。濃度はSbとして1.8重量%、ジイソプロピルアミンとして 1.2重量%、ジイソプロピルアミン/Sbのモル比は1.69、透過型電子顕微鏡による観測で一次粒子径は、1〜10nmであった。
B−1−2 アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイドの調整
100リットルのベッセルに三酸化アンチモン(広東三国製、Sbとして99.5%を含有する。)を12.5kg、純水66.0kgおよび水酸化カリウム(KOHとして95%を含有する。)12.5kgを添加し、攪拌下で、35%過酸化水素を8.4kg徐々に添加した。得られたアンチモン酸カリウム水溶液はSbとして15.25重量%、水酸化カリウムとして5.36重量%、KO/Sbのモル比は1.0であった。
【0076】
得られたアンチモン酸カリウムの水溶液17.6kgを2.2重量%に希釈し、水素型陽イオン交換樹脂を充填したカラムに通液した。イオン交換後のアンチモン酸の溶液にジイソブチルアミンを攪拌下で0.25kg添加し、アルカリ成分含有五酸化アンチモンコロイド溶液を得た。濃度はSbとして1.8重量%、ジイソブチルアミンとして1.36重量%、ジイソプロピルアミン/Sbのモル比は1.79、透過型電子顕微鏡による観測で一次粒子径は、1〜10nmであった。
B−2−1 五酸化アンチモン−ニ酸化珪素複合体コロイドの調整
ケイ酸カリウム水溶液(SiOとして15.4重量%含有)546gを純水542gにて希釈を行った後、攪拌下にアンチモン酸カリウム水溶液(Sbとして14.6重量%含有)を混合して1時間攪拌を続け、ケイ酸カリウムとアンチモン酸カリウムの混合水溶液を得た。
【0077】
得られたケイ酸カリウムとアンチモン酸カリウムの混合水溶液を5重量%になるように純水で希釈した後、カチオン型イオン交換樹脂を充填したカラムに通液することで五酸化アンチモン−ニ酸化珪素の複合体コロイドを得た。
【0078】
B−3−1 酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイドの調整
3号珪そう(SiOとして29.3重量%含有する。)38.9kgを純水830kgに溶解し、ついでタングステン酸ナトリウムNaWO・2HO(WOとして69.8重量%含有する)12.2kgおよびスズ酸ナトリウムNaSnO・HO(SnOとして55.7重量%含有する)15.3kgを溶解する。次いでこれを水素型陽イオン交換樹脂(IR−120B)のカラムに通すことにより酸性の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体ゾル(pH2.2、WOとして0.7重量%、SnOとして0.7重量%、SiOとして0.9重量%を含有し、WO/SnO重量比1.0、SiO/SnO重量比1.33であった。)1201kgを得た。
【0079】
実施例1
(a)工程:粒子径15nm以下、3.7重量%のSnO濃度を有するアルカリ性の酸化第二スズ水性ゾル(A−1)を得た。
(b)工程:(a)工程で得られたアルカリ性酸化第二スズゾル2000kgを処理温度310℃、処理圧力20MPa(メガパスカル)、平均流速538g/mlで加熱処理を行った。比表面積は61m/gであった。
ついで限外ろ化膜のろ化装置にて室温で脱塩処理を行った。得られた酸化第ニスズゾルは比重1.064、pH9.98、11.7%のSnO濃度であった。
(c)工程:(b)工程で得られた水性ゾル62kg(SnOとして7.25kgを含有する。)にB−1−2で調整したアミン成分含有五酸化アンチモンコロイドを22.2kgを攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B−1−2)/SnOの重量割合で0.055に混合した。
(d)工程:(c)工程で得られた水性媒体を95℃で2時間加熱熟成した。
ついで得られた水性媒体を水酸基型陰イオン交換樹脂が充填されたカラムで充填を行った。得られた五酸化アンチモンで被覆された酸化第二スズ水性ゾル(希薄液)を分画分子量10万の限外ろ過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の五酸化アンチモンで被覆された酸化第二スズ水性ゾルを26.1kg得た。このゾルは比重1.328、pH10.65、金属酸化物に換算した濃度は29.1重量%で安定であった。
【0080】
実施例2
(c)工程:実施例1の(b)工程で得られた水性ゾル5983g(SnOとして700gを含有する。)にB−1−1で調整したアミン成分含有五酸化アンチモンコロイドを2188gを攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B−1−1)/SnOの重量割合で0.05に混合した。
(d)工程:(c)工程で得られた水性媒体を95℃で2時間加熱熟成した。
ついで得られた水性媒体を水酸基型陰イオン交換樹脂が充填されたカラムで充填を行った。得られた五酸化アンチモンコロイドで被覆された酸化第二スズ水性ゾル(希薄液)を分画分子量10万の限外ろ過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の五酸化アンチモンで被覆された酸化第二スズ水性ゾルを3062g得た。
上記高濃度の五酸化アンチモン被覆された酸化第二スズ水性ゾルをロータリーエバポレーターにて減圧下でメタノール35リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した五酸化アンチモンコロイドで被覆された酸化第二スズメタノールゾル2390gを得た。このゾルは比重1.092、pH9.3(水との等重量混合物)、粘度1.3c.p.、金属酸化物に換算した濃度は30重量%,電子顕微鏡観察による粒子径は10〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.9であった。
【0081】
実施例3
(a)工程:粒子径15nm以下、3.7重量%のSnO濃度を有するアルカリ性の酸化第二スズ水性ゾル(A−1)2500g(SnOとして92.5gを含有する。)に炭酸アンモニウムジルコニウムを20.8g(ZrOとして2.8g)を添加混合し、攪拌を30分間続行した。さらにこの混合液を100℃で3時間過熱熟成を行った。混合液はZrO/SnO重量比0.03でコロイド色を呈する透明性の良好な酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドのゾルであり、2480gを得た。このゾルはSnOとして3.25重量%、ZrOとして0.09重量%、SnO+ZrOとして3.34重量%であった。
(b)工程:(a)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾルを処理温度240℃、処理圧力3.5MPaで水熱処理を行った。得られたゾルの比表面積は57m/gであった。
(c)工程:(b)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の水性ゾル2480g(SnO+ZrOとして83gを含有する。)にB−1−1で調整したアミン成分含有五酸化アンチモンコロイドを244gを攪拌下で添加し、その金属酸化物に換算した(B−1−1)/(SnO+ZrO)の重量割合で0.05に混合した。
(d)工程:(c)工程で得られた水性媒体を95℃で2時間加熱熟成し、ついで分画分子量10万の限外ろ過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の五酸化アンチモンで被覆された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドを得た。
上記高濃度の五酸化アンチモンで被覆された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドをロータリーエバポレーターにて減圧下でメタノール8リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した五酸化アンチモンコロイドで被覆された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドのメタノールゾル133gを得た。このゾルは比重1.082、pH8.5(水との等重量混合物)、粘度1.8c.p.、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は10〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.9であった。
実施例4
(c)工程:B−2−1で調整した五酸化アンチモン−ニ酸化珪素複合体のコロイド水溶液876g(Sb+SiOとして25.3g含有)に攪拌かに実施例1の(b)工程で得られた水性ゾル3077g(SnOとして360gを含有する。)を純水3000gで希釈したものを攪拌下に添加し、その金属酸化物に換算した(B−2−1)/(SnO)の重量割合で0.07に混合した。
(d):(c)工程で得られた水性媒体を95℃で2時間加熱熟成した。
得られた五酸化アンチモン−ニ酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズ水性ゾル(希薄液)を分画分子量10万の限外ろ過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の五酸化アンチモン−ニ酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズ水性ゾルを1900gを得た。上記高濃度の五酸化アンチモン−ニ酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズ水性ゾルをロータリーエバポレーターにて微減圧下でメタノール22リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した五酸化アンチモン−ニ酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズメタノールゾル1180gを得た。このゾルは比重1.090、pH8.2(水との等重量混合物)、粘度1.6c.p.、金属酸化物に換算した濃度は30重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は10〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.9であった。
実施例5
(c)工程:B−3−1で調整した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイド水溶液1957g(WO+SnO+SiOとして45.0g含有)に攪拌かに実施例1の(b)工程で得られた水性ゾル2564g(SnOとして300gを含有する。)を攪拌下に添加し、その金属酸化物に換算した(B−3−1)/(SnO)の重量割合で0.15に混合した。
(d):(c)工程で得られた水性媒体を95℃で2時間加熱熟成した。
得られた酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズ水性ゾル(希薄液)を分画分子量10万の限外ろ過膜の濾過装置により室温で濃縮し、高濃度の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズ水性ゾルを1327gを得た。上記高濃度の酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズ水性ゾルをロータリーエバポレーターにて微減圧下でメタノール27リットルを少しずつ加えながら水を留去することにより、水性ゾルの水をメタノールで置換した酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素複合体コロイドで被覆された酸化第二スズメタノールゾル1080gを得た。このゾルは比重1.130、pH7.3(水との等重量混合物)、粘度3.9c.p.金属酸化物に換算した濃度は31重量%、電子顕微鏡観察による粒子径は10〜15nmであった。このゾルはコロイド色を呈し、透明性が高く、室温で3カ月放置後も沈降物の生成、白濁、増粘等の異常は認められず安定であった。またこのゾルの乾燥物の屈折率は1.9であった。
【0082】
(変色性試験)
実施例1の(b)工程で得られた高温高圧処理された酸化第二スズ水性ゾル、及び(A−1)で得られた酸化第二スズ水性ゾルを、そのSnO濃度が4重量%から30重量%に濃縮した。これらの濃縮したゾルをそれぞれ20ミリリットルの容器に、15ミリリットル入れて密封した。この容器に水銀ランプで紫外線照射を20分間行った。その後、それらゾルの退色性の比較を行った。
【0083】
実施例1の(b)工程で得られたゾルは、紫外線照射によって淡青色を呈したがその後放置により退色し、もとの淡黄白色に戻った。
【0084】
(A−1)で得られたゾルは、紫外線照射によってそのゾルの色調は黄味が強くなり、その後放置しても元の淡黄白色には戻らなかった。
【0085】
実施例1の(b)工程で得られた高温高圧処理された酸化第二スズゾルは、0.1〜40MPaの圧力と、100〜350℃の温度で水熱処理を施してあるために結晶性が高い。それによって(A−1)の酸化第二スズゾルに比較して酸化第二スズ粒子の比表面積が小さくなる。酸化第二スズは紫外線による酸化還元作用によって変色を起こしやすいが、高温高圧処理を施した酸化第二スズ粒子の比表面積は小さいために、その割合も少なくなり上記の評価結果が得られたものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a1)工程、(b1)工程、(c1)工程及び(d1)工程:
(a1)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、
(b1)工程:上記(a1)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを、0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c1)工程:(b1)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sb水性ゾルとを、その金属酸化物に換算したSb/SnOの重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d1)工程:(c1)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法。
【請求項2】
下記(a2)工程、(b2)工程、(c2)工程および(d2)工程:
(a2)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、
(b2)工程:上記(a2)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを、0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c2)工程:(b2)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、0.02〜4.00のM/Sbのモル比(ただしMはアミン分子を示す。)と1〜20nmの粒子径を有するアルキルアミン含有Sb水性ゾルとを、その金属酸化物に換算したSb/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d2)工程:(c2)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルの製造方法。
【請求項3】
下記(a3)工程、(b3)工程、(c3)工程および(d3)工程:
(a3)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、
(b3)工程:上記(a3)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c3)工程:上記(b3)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(Sb+SiO)/(SnO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d3)工程:(c3)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法。
【請求項4】
下記(a4)工程、(b4)工程、(c4)工程および(d4)工程:
(a4)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、
(b4)工程:上記(a4)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c4)工程:(b4)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、0.55〜55のSiO/Sbのモル比と5nm以下の粒子径を有する五酸化アンチモンとニ酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(Sb+SiO)/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d4)工程:(c4)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルの製造方法。
【請求項5】
下記(a5)工程、(b5)工程、(c5)工程および(d5)工程:
(a5)工程:4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズのコロイド粒子をSnOとして1〜50重量%の濃度に含有する酸化第二スズ水性ゾルを調整する工程、
(b5)工程:上記(a5)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c5)工程:(b5)工程で得られた酸化第二スズ水性ゾルと、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(SnO+WO+SiO)/(SnO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d5)工程:(c5)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズコロイド粒子の安定なゾルの製造方法。
【請求項6】
下記(a6)工程、(b6)工程、(c6)工程および(d6)工程:
(a6)工程:4〜50nmの粒子径と0.5〜50重量%のSnO濃度を有する酸化第二スズ水性ゾルと、ZrOに換算して0.1〜50重量%濃度のオキシジルコニウム塩の水溶液とを、ZrO/SnOとして0.001〜0.50の重量比に混合し、得られた混合液を60〜100℃で0.1〜50時間加熱することにより、4〜50nmの粒子径を有する酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイドの水性ゾルを調整する工程、
(b6)工程:上記(a6)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルを0.1〜40MPaの圧力と100〜350℃の温度で0.01〜100時間の水熱処理を行う工程、
(c6)工程:(b6)工程で得られた酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体水性ゾルと、2〜7nmの粒子径を有し0.1〜100のWO/SnO重量比と0.1〜100のSiO/SnO重量比を有する酸化タングステン−酸化第二スズ−二酸化珪素の複合体コロイド粒子を含有する水性ゾルとを、その金属酸化物に換算した(SnO+WO+SiO)/(SnO+ZrO)の重量割合で0.01〜0.50に混合する工程、及び
(d6)工程:(c6)工程で得られた水性媒体を20〜300℃で0.1〜50時間熟成する工程を含む変性された酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体コロイド粒子の安定なゾルの製造方法。

【公開番号】特開2006−176392(P2006−176392A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322016(P2005−322016)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】