説明

変性シリコーン含有多剤式毛髪処理剤

【課題】 毛髪(特に傷んだ毛髪)に、滑らかさ(特にツルツルした滑り)、コーティング感、及び十分な艶を付与し、更にヘアリンス等の塗布効果(又はコンディショニング効果)が持続する、ヘアリンス等を提供することを、目的とする。
【解決手段】
アミノ変性シリコーンを含有するA剤と、カルボキシル変性シリコーン及び/又は高級脂肪酸を含有するB剤とから、少なくとも成る毛髪処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多剤式毛髪処理剤(特に、2剤式ヘアリンス又はヘアトリートメント等)に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を化学的処理(ブリーチ処理等)すると、毛髪表面が損傷を受け、毛髪に滑らかさや艶が失われることがある。
そこで、傷んだ毛髪を修復し、毛髪に滑らかさや艶を付与するため、特定の変性シリコーンを配合したヘアリンスが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、そのような従来のヘアリンスで毛髪処理した場合、毛髪は、滑らかさは付与されるもののザラザラしたものとなり、また厚ぼったい吸着感があり、艶も十分ではなかった。更には、ヘアリンスの塗布効果もあまり持続しない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−85919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事情に鑑み、本願発明は、毛髪(特に傷んだ毛髪)に、滑らかさ(特にツルツルした滑り)、コーティング感、及び十分な艶を付与し、更にヘアリンス等の塗布効果(又はコンディショニング効果)が持続する、ヘアリンス等を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明者が鋭意、検討した結果、下記本願発明を成すに到った。
【0007】
即ち、本願第1発明は、アミノ変性シリコーンを含有するA剤と、カルボキシル変性シリコーン及び/又は高級脂肪酸を含有するB剤とから、少なくとも成る毛髪処理剤、を提供する。
【0008】
本願第2発明は、カルボキシル変性シリコーンが、次式 −A−COH (化−1)
[式(化−1)中、Aはアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を表す。]、又は
【化1】

[式(化−2)中、pは1〜5、qは1〜3、及びrは1〜3の整数を、それぞれ表す。]で表されるカルボキシル基含有有機基を、シリコーン樹脂の側鎖として有するもの、又はシリコーン樹脂骨格における両末端Si原子のそれぞれに結合させたもの、である本願第1発明の毛髪処理剤を提供する。
【0009】
本願第3発明は、高級脂肪酸が、固体状でないものである本願第1発明又は第2発明の毛髪処理剤、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、毛髪(特に傷んだ毛髪)に、滑らかさ(特にツルツルした滑り)、コーティング感、及び十分な艶を付与し、更にヘアリンス等の塗布効果(又はコンディショニング効果)が持続する、ヘアリンス等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のヘアリンスにて処理した毛束の毛髪の電子顕微鏡写真(700倍)である。
【0012】
【図2】ブリーチ・シャンプー処理した毛束(即ち、ヘアリンス処理する前の試験用毛束)の毛髪の電子顕微鏡写真(700倍)である。
【0013】
【図3】比較例5のヘアリンスにて処理した毛束の毛髪の電子顕微鏡写真(700倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明を詳述する。
本願に係る毛髪処理剤のA剤中には、アミノ変性シリコーン(即ち、アミノ基含有シリコーン)を含有する。アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基含有有機基が、シリコーン樹脂骨格におけるSi原子[非末端Si原子及び/又は末端(両末端を含む。)Si原子等]の何れか1個以上に結合したものが挙げられる。
【0015】
アミノ基含有有機基としては、アミノ基が2価有機基(アルキレン基、ポリオキシアルキレン基等)に結合したもの、具体的にはアミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0016】
アミノ変性シリコーンとしては、アミノ基含有有機基をシリコーン樹脂の側鎖として有するもの(側鎖型アミノ変性シリコーン)が挙げられる。側鎖型アミノ変性シリコーンとしては例えば、アミノ基含有有機基がモノアミン構造を含有し、粘度(25℃、mm/s)50〜3000、比重(25℃)0.5〜1.5、屈折率(25℃)1.3〜1.6、官能基当量(g/mol)2000〜18000であるもの、具体的にはKF−864、KF−865、KF−868(以上、信越化学工業社製)等の市販品の1以上を用いることができる。
【0017】
別の側鎖型アミノ変性シリコーンとしては例えば、アミノ基含有有機基がジアミン構造を含有し、粘度(25℃、mm/s)30〜30000、比重(25℃)0.5〜1.5、屈折率(25℃)1.3〜1.6、官能基当量(g/mol)150〜100000であるもの、具体的にはKF−393、KF−859、KF−860、KF−861、KF−867、KF−869、KF−880、KF−8002、KF−8004、KF−8005、X−22−3820W(以上、信越化学工業社製)等の市販品の1以上を用いることができる。
【0018】
別のアミノ変性シリコーンとしては、アミノ基含有有機基が、シリコーン樹脂骨格における両末端Si原子のそれぞれに結合したもの(両末端型アミノ変性シリコーン)が挙げられる。両末端型アミノ変性シリコーンとしては例えば、アミノ基含有有機基がモノアミン構造を含有し、粘度(25℃、mm/s)1〜1000、比重(25℃)0.5〜1.5、屈折率(25℃)1.3〜1.6、官能基当量(g/mol)50〜10000であるもの、具体的にはKF−8008、KF−8010、KF−8012、X−22−161A、X−22−161B、X−22−1660B−3、PAM−E(以上、信越化学工業社製)等の市販品の1以上を用いることができる。
【0019】
更に別のアミノ変性シリコーンとして、上記以外のアモジメチコン市販品や、SF8452 C、SS−3551、AP−8087 FLUID(以上、東レ・ダウコーニング社製)等の市販品の1以上を用いることができる。
【0020】
本願に係る毛髪処理剤のB剤中には、カルボキシル変性シリコーン[即ち、カルボキシル基(カルボン酸基を含む。)含有シリコーン]及び/又は高級脂肪酸を含有する。
カルボキシル変性シリコーンとしては、カルボキシル基含有有機基が、シリコーン樹脂骨格におけるSi原子[非末端Si原子及び/又は末端(両末端を含む。)Si原子等]の何れか1個以上に結合したものが挙げられる。
【0021】
カルボキシル基含有有機基としては、カルボキシル基が2価有機基に結合したもの、例えば、次式 −A−COH (化−1)
[式(化−1)中、Aはアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を表す。]、又は
【0022】
【化2】

[式(化−2)中、pは1〜5、qは1〜3、及びrは1〜3の整数を、それぞれ表す。]で表されるものが挙げられる。カルボキシル基含有有機基(化−2)としては、好ましくは、次式
【0023】
【化3】

で表されるものが挙げられる。
【0024】
カルボキシル変性シリコーンとしては、カルボキシル基含有有機基をシリコーン樹脂の側鎖として有するもの(側鎖型カルボキシル変性シリコーン)が挙げられる。側鎖型カルボキシル変性シリコーンとしては例えば、粘度(25℃、mm/s)1000〜4000、比重(25℃)0.5〜1.5、屈折率(25℃)1.3〜1.6、官能基当量(g/mol)2000〜8000であるもの、具体的にはX−22−3701E(信越化学工業社製)、SENSASIL PCA(クローダジャパン社製)等の市販品を用いることができる。
【0025】
別のカルボキシル変性シリコーンとしては、シリコーン樹脂骨格における両末端Si原子のそれぞれに、カルボキシル基含有有機基が結合したもの(両末端型カルボキシル変性シリコーン)が挙げられる。両末端型カルボキシル変性シリコーンとしては例えば、粘度(25℃、mm/s)100〜500、比重(25℃)0.5〜1.5、屈折率(25℃)1.3〜1.6、官能基当量(g/mol)1000〜5000であるもの、具体的にはX−22−162C(信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0026】
高級脂肪酸としては、毛髪処理剤調製時の周囲温度、例えば常温(具体的には25℃)において、固体状でないもの(ペースト状、液状、又はジェル状等のもの)が好ましい。固体状の場合、毛髪処理剤調製時、他の配合成分との均一混合が困難となり、本願発明効果が十分に奏され得ないことがある。高級脂肪酸としては、C5以上、好ましくはC6〜40、特に好ましくはC10〜35のものが挙げられ、具体的にはヤシ脂肪酸[ルナックL−50(花王社製)等]、ヤシ油脂肪酸、ラノリン脂肪酸[ラノリン脂肪酸NH(日本精化社製)等]、イソステアリン酸[イソステアリン酸EX(高級アルコール工業社製)等]の1以上を用いることができる。
【0027】
本願に係る毛髪処理剤は、少なくともA剤及びB剤から成るが、更に他剤を含んで成ってもよい。
【0028】
本願に係る毛髪処理剤には、添加剤を、何れか1剤以上に加えることができる。添加剤としては、具体的には、炭化水素(流動パラフィン、固形パラフィン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等)、シリコーンオイル[但し、前記アミノ変性シリコーン及びカルボキシル変性シリコーンを除く。粘度が200cs以下のものが好ましい。ジメチコン(メチルポリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等)、ポリエーテル変性又はフェニル変性シリコーン等]、油脂(オリーブ油、リノールサラダ油、ホホバ油、アボカド油、サフラワー油、ヒマシ油等)、ロウ類(カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、ラノリン等)、エステル油[脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等)]、高級(好ましくはC12〜22)アルコール(セタノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール等)、エーテル油(バチルアルコール、キミルアルコール、ジオクチルエーテル等)、カチオン界面活性剤[C12〜C22アルキル(セチル、ステアリル、ベヘニル等)トリメチルアンモニウム塩、ジC12〜C22アルキル(ステアリル等)ジメチルアンモニウム塩等]、アニオン界面活性剤[アルキル硫酸エステル塩、好ましくはC12〜22アルコール硫酸エステル塩(セチル硫酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム等)、アミノ酸系のもの(ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン塩、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム塩等)]、非イオン界面活性剤[POEソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン等)、POEアルキルエーテル(POEオレイルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル等)]の1以上を用いることができる。
【0029】
本願に係る毛髪処理剤の配合組成において、A剤中アミノ変性シリコーンを0.5〜10.0(特に2.0〜7.0)重量%、B剤中カルボキシル変性シリコーン及び/又は高級脂肪酸を合量で0.5〜10.0(特に2.0〜7.0)重量%、がそれぞれ好ましい。
【0030】
本願に係る毛髪処理剤におけるA剤とB剤との使用量体積比(A剤/B剤)は、通常0.5〜2.0(典型的には0.8〜1.2)である。
【0031】
本願に係る毛髪処理剤の使用方法において、各剤の塗布順序は限定されない。例えば、A剤及びB剤の何れを先に塗布してもよい。尚、先の剤が塗布された毛髪は、水洗されることなく、後の剤が塗布されるのが好ましい。
【実施例】
【0032】
<ヘアリンスの調製>
表1及び2に示す配合組成に従い、各配合成分を均一に撹拌混合し、それぞれA剤及びB剤を調製し、ヘアリンス(各実施例1〜11、及び比較例1〜5)を調製した。
<ヘアリンス処理毛の官能評価試験>
【0033】
毛束(長さ25cm×幅6cm、3枚重ね人毛ミノ毛)をブリーチ処理し、更にシャンプー処理した後、水で濯いだ。この試験用毛束は、滑らかさや艶が失われていた。
【0034】
次いで、試験用毛束に、先ずヘアリンスA剤を塗布し、毛束全体によく馴染ませた。その後、その上から同容量のヘアリンスB剤を重ね塗りし、毛束全体によく馴染ませた。その後、この毛束を、水で濯ぎ、タオルドライし、乾燥させた。
【0035】
このようにしてヘアリンス処理された毛束の感触及び外観(艶)について、官能評価した。評価結果を、表1及び2に示す。
【0036】
表中、「ツルツル感」、「コーティング感」、「滑らかさ」、及び「艶」の欄において、「◎」は「非常に強く感じる」、「○」は「強く感じる」、「△」は「少し感じる」、及び「×」は「全く感じない」を、それぞれ表す。「ザラザラ感の少なさ」及び「吸着感の少なさ」の欄において、ザラザラ感又は吸着感を、「◎」は「全く感じない」、「○」は「少し感じる」、「△」は「強く感じる」、及び「×」は「非常に強く感じる」を、それぞれ表す。
【0037】
<ヘアリンス塗布効果の持続性試験>
ヘアリンス処理された毛束を、翌日以降、1日につき1回、洗髪処理(シャンプー、濯ぎ、そして乾燥)を続けた。そして、ヘアリンス処理直後の毛束の感触と各回の洗髪処理後の毛束の感触とを官能検査により比較することで、何回の洗髪処理によりヘアリンス塗布効果が消失したかを確認した。試験結果を、表1及び2に示す。
【0038】
表中、「ヘアリンス塗布効果の持続性」の欄において、「◎」は「7回以上」、「○」は「5回」、「△」は「3回」、及び「×」は「1回」を、それぞれ表す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【作用・機序】
【0041】
本願発明の作用・機序は、以下のように考えられる。
即ち、ブリーチ等の化学的処理により損傷した毛髪は、毛髪表面のキューティクルが捲(めく)れ上がっている(図2)。これが、損傷毛に滑らかさや艶を失わせている原因であると、一般に考えられている。
【0042】
そこで、従来、ヘアリンスを用い毛髪表面にコーティング膜を形成(被覆)させることでキューティクルを毛髪表面に密着させ、その結果キューティクルが捲れ上がるのを防ぐ、という損傷毛の修復方法が採られている。
【0043】
しかし、従来のヘアリンスにより形成されるコーティング膜においては、十分な皮膜強度は無かった。そのため、キューティクルの捲れ上がりを十分に防ぐことはできなかった(図3)。
【0044】
一方、本願のヘアリンスにより形成されるコーティング膜は、A剤の塗布層(就中、アミン基)とB剤の塗布層(就中、カルボキシル基)とが酸・塩基中和反応により強力にイオン結合している結果、非常に皮膜強度の高い強靭膜となっている。その結果、キューティクルの捲れ上がりが完全に防がれる(図1)と共に、コーティング膜の耐剥離性が向上するのでヘアリンスの塗布効果も持続することとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ変性シリコーンを含有するA剤と、カルボキシル変性シリコーン及び/又は高級脂肪酸を含有するB剤とから、少なくとも成る毛髪処理剤。
【請求項2】
カルボキシル変性シリコーンが、次式 −A−COH (化−1)
[式(化−1)中、Aはアルキレン基又はポリオキシアルキレン基を表す。]、又は

[式(化−2)中、pは1〜5、qは1〜3、及びrは1〜3の整数を、それぞれ表す。]で表されるカルボキシル基含有有機基を、
シリコーン樹脂の側鎖として有するもの、又は
シリコーン樹脂骨格における両末端Si原子のそれぞれに結合させたもの、
である請求項1の毛髪処理剤。
【請求項3】
高級脂肪酸が、固体状でないものである請求項1又は2の毛髪処理剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−49658(P2013−49658A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198838(P2011−198838)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(591028980)山栄化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】