説明

変性ポリアセタール共重合体の製造方法

【課題】高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を、長時間安定して連続生産可能な製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の変性ポリアセタール共重合体の製造方法は、水酸基含有化合物(C)と、脂肪族炭化水素、環式炭化水素および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合して混合物(I)を得る第1工程、前記混合物(I)と、環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)とを混合して混合物(II)を得る第2工程、前記混合物(II)と、トリオキサン(A)とを混合して混合物(III)を得る第3工程、ならびに前記混合物(III)と、カチオン性重合触媒とを接触混合することなく重合反応機に供給して、重合を行う第4工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリアセタール共重合体の製造方法に関する。更に詳しくは、ポリアセタール以外の成分をポリマー主鎖に導入した変性ポリアセタール共重合体の連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール共重合体は、剛性、強度、靭性、摺動性、クリープ性に優れた樹脂材料であり、自動車部品や電気・電子部品および各種機構部品を中心に広範に亘って使用されている。これら各種機構部品に使用する際、ポリアセタール共重合体に酸化防止剤やホルムアルデヒド捕捉剤、離型剤、可塑剤、摺動剤などの各種添加剤を添加し、目的とする特性を付与している。
【0003】
しかしながら、これら各種添加剤による特性改良方法は、短期間の使用では充分満足のいく特性を維持することができるが、長期間連続使用する場合は、その特性を維持することが難しい。その理由は、ポリアセタール共重合体が高結晶性樹脂であるため添加した各種添加剤が成形品表面から放出(ブリード)しやすいためである。即ち、ポリアセタール共重合体に添加した安定剤等の各種添加剤は、ポリアセタール共重合体の非晶部にその多くが存在し、各種添加剤の添加量が多いと非晶部が添加剤を保持許容できる範囲を超え、添加した各種添加剤が弾き出され(成形品表面から各種添加剤が放出され)、各種添加剤が成形品に付与していた特性を維持することが困難となる。
【0004】
また、ポリアセタール共重合体における各種添加剤のブリード性を改良するためには、ポリアセタール共重合体の結晶化度を下げる方法が有効である。
【0005】
しかしながら、単にコモノマー成分の導入量を増やし、ポリアセタール共重合体の結晶化度を下げる方法だけでは各種添加剤のブリード性は改善されない。ポリアセタール共重合体を構成する成分以外の成分をポリマー主鎖中に導入することにより、各種添加剤のブリード性は改善され、各種添加剤が成形品に付与していた特性を維持することができる。
【0006】
近年、ポリアセタール共重合体のポリマー主鎖中にポリアセタール共重合体を構成する以外の成分を導入し、ポリアセタール共重合体を変性する試みがなされている。例えば、水酸基を有する連鎖移動反応性ポリマーを用いて変性ポリアセタール共重合体を製造する方法(例えば、特許文献1参照)や、ヒドロキシ末端化脂肪族または脂環式オリゴマーを用いて変性ポリオキシメチレンブロックコポリマーを製造する方法(例えば、特許文献2参照)である。また、ポリアセタール共重合体の製造方法について、環状ホルマールおよび/または環状ホルマールと低分子量アセタール化合物を予め混合し、その後、カチオン重合触媒を添加混合し、得られた混合物をトリオキサンに添加供給し重合する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−070099号公報
【特許文献2】特開2004−156037号公報
【特許文献3】特開平11−255854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の提案されている方法では、変性ポリアセタール共重合体を連続重合する場合、変性ブロック成分が、トリオキサンと、環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合反応速度を遅らせ、高重合収率で生産することが困難となる。また、得られる重合パウダーの粒子径が微細であり、押出し機の喰い込み性が低下し、連続生産することが困難である。
【0009】
この問題点を改善する方法として、重合触媒の添加量を増やし、重合速度を上げることにより、得られる重合パウダーの粒子径を大きくし、押出し生産性を向上させる方法が有効である。
【0010】
しかしながら、重合触媒の添加量を増やすと、ポリマー中に重合触媒が残存ポリマーの熱安定性が低下する。そのため、重合反応時は重合触媒の添加量を極力抑え、また、洗浄等でポリマー中に残存する重合触媒を除去したり、重合触媒の失活化を行い、変性ポリアセタール共重合体の熱安定性の低下を防止している。
【0011】
また、従来の製造方法で得られる変性ポリアセタール共重合体は、一般的に不安定末端基量が多いため熱安定性が低い。したがって、変性ポリアセタール共重合体の熱安定性を高めるために、別途、不安定末端基除去工程が必要となり、連続安定生産性が低下する。
【0012】
即ち、変性ポリアセタール共重合体の熱安定性と連続安定生産性とは相反する傾向にあり、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を連続安定生産することは困難である。
【0013】
本発明は、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を工業的に安定して連続生産可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の工程を経ることにより、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を、安定で且つ連続して生産できることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0016】
[1]
(A)トリオキサンと、
(B)環状エーテルおよび/または環状ホルマールと、
(C)水酸基含有化合物と
を共重合させてなる変性ポリアセタール共重合体の製造方法であって、
水酸基含有化合物(C)と、脂肪族炭化水素、環式炭化水素および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合して混合物(I)を得る第1工程、
前記混合物(I)と、環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)とを混合して混合物(II)を得る第2工程、
前記混合物(II)と、トリオキサン(A)とを混合して混合物(III)を得る第3工程、ならびに
前記混合物(III)と、カチオン性重合触媒とを接触混合することなく重合反応機に供給して、重合を行う第4工程を含むことを特徴とする変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【0017】
[2]
前記第1〜3工程における少なくとも1つの混合が、スタティックミキサーを用いて行われることを特徴とする[1]に記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【0018】
[3]
前記第1工程における有機溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする[1]または[2]に記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【0019】
[4]
前記第1工程における有機溶媒の配合量が、前記混合物(I)全体に対して、1〜50重量%の範囲であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【0020】
[5]
前記水酸基含有化合物(C)が、数平均分子量500〜20000の両末端水酸基を有する化合物であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【0021】
[6]
前記水酸基含有化合物(C)配合量が、前記トリオキサン(A)100モルに対して、0.01〜5モルであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱安定性に優れる変性ポリアセタール共重合体を、長期間連続して安定生産可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本願実施例1における変性ポリアセタール共重合体の製造方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」を言う。)について、説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0025】
〔変性ポリアセタール共重合体の製造方法〕
本発明形態に係る変性ポリアセタール共重合体の製造方法は、(A)トリオキサンと、(B)環状エーテルおよび/または環状ホルマールと、(C)水酸基含有化合物とを共重合させてなる変性ポリアセタール共重合体の製造方法であって、水酸基含有化合物(C)と、脂肪族炭化水素、環式炭化水素および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合して混合物(I)を得る第1工程、前記混合物(I)と、環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)とを混合して混合物(II)を得る第2工程、前記混合物(II)と、トリオキサン(A)とを混合して混合物(III)を得る第3工程、ならびに前記混合物(III)と、カチオン性重合触媒とを接触混合することなく重合反応機に供給して、重合を行う第4工程を含む。
【0026】
本実施形態の変性ポリアセタール共重合体の製造方法における上記第1工程〜第4工程について、更に詳細に説明する。
【0027】
〔第1工程〕
第1工程は、水酸基含有化合物(C)と、脂肪族炭化水素、環式炭化水素および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合して混合物(I)を得る工程である。
【0028】
水酸基含有化合物(C)は、数平均分子量500〜20000の両末端水酸基を有する化合物であることが好ましく、数平均分子量500〜10000の両末端水酸基を有する化合物であることがより好ましく、数平均分子量500〜5000の両末端水酸基を有する化合物であることが最も好ましい。
【0029】
なお、本実施形態において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の分子量である。
【0030】
水酸基含有化合物(C)の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールブロックコポリマー、ポリスチレングリコール、ポリジメチルシロキサン両末端ヒドロキシエチル、ポリジメチルシロキサン両末端ヒドロキシプロピル、ポリジメチルシロキサン両末端ヒドロキシオクチル、ポリジフェニルシロキサン両末端ヒドロキシプロピル、ポリジフェニルシロキサン両末端ヒドロキシエチル、ポリジメチルシロキサンーポリジフェニルシロキサンブロックコポリマー両末端ヒドロキシプロピル、ポリジメチルシロキサンーポリエチレングリコールブロックコポリマー、ポリジメチルシロキサンーポリテトラメチレングリコールブロックコポリマー、ポリジフェニルシロキサンーポリテトラメチルグリコールブロックコポリマー、ポリグリセロール、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、アセチルセルロース、アルキルセルロース、シクロデキストリンや、水素化1,2−ポリブタジエングリコールまたは水素化1,4−ブタンジエングリコールの両末端水酸基を含有するポリオレフィン化合物、水酸基含有ポリスチレン等である。これら水酸基含有化合物(C)の中でも、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、水素化ポリブタジエングリコールの水酸基含有ポリオレフィン、ポリグリセリンが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、水素化ポリブタジエングリコールの水酸基含有ポリオレフィンがより好ましい。最も好ましくは、水素化ポリブタジエングリコールの水酸基含有ポリオレフィンである。
【0031】
このような水酸基含有化合物(C)を用いることにより、ポリアセタール共重合体の特性を維持し、且つ高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定して連続生産することができる。
【0032】
上記水酸基含有化合物(C)の添加量は、トリオキサン(A)100モルに対して、0.01〜5モルであることが好ましく、中でもより好ましくは0.01〜3モルの範囲であり、最も好ましくは、0.01〜1モルの範囲である。水酸基含有化合物(C)の添加量が上記の範囲にあるとき、ポリアセタール共重合体の特性を維持し、且つ高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定に連続生産することができる。
【0033】
水酸基含有化合物(C)と混合する有機溶媒は、脂肪族炭化水素、環式炭化水素および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒であり、水酸基含有化合物(C)の溶解性により適宜選択することができる。
【0034】
本実施形態に用いる有機溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ブタン、ペンタン、シクロオクタン、シクロブタン、シクロプロパン、シクロへキサン、シクロヘプタン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレンである。前記有機溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。
【0035】
これらの有機溶媒は、後述するカチオン性重合触媒(E)の希釈剤としても用いることができ、混合物(I)における有機溶媒とカチオン性重合触媒(E)の希釈剤として用いる有機溶媒とが同一であると、変性ポリアセタール共重合体を得る際の重合反応速度を安定させることができ、変性ポリアセタール共重合体中の水酸基含有化合物(C)の導入量が向上する傾向にある。また、重合機から排出された不安定末端基を有する粗変性ポリアセタール共重合体のパウダー粒子径をコントロールすることができ、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定且つ連続生産できる傾向にある。
【0036】
前記第1工程における有機溶媒の配合量は、前記混合物(I)全体に対して、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、中でも1〜30質量%の範囲がより好ましく、最も好ましくは1〜10質量%の範囲である。有機溶媒の配合量が上記の範囲にあると、主モノマーであるトリオキサン(A)、環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)および水酸基含有化合物(C)の反応性を高めることができ、また、重合パウダー粒子径の微細化を防止し、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定で且つ連続して生産できる傾向にある。
【0037】
水酸基含有化合物(C)と有機溶媒とを混合する際の温度は、20℃から有機溶媒の融点以下の温度範囲であることが好ましく、中でもより好ましくは30℃から有機溶媒の沸点以下であり、最も好ましい温度範囲は、40℃から有機溶媒の沸点以下の温度範囲である。前記混合温度が上記の範囲にあると、水酸基含有化合物(C)と有機溶媒とが相分離することなく混合され、重合反応を安定させることができる傾向にある。
【0038】
水酸基含有化合物(C)と有機溶媒との混合方法は、水酸基含有化合物(C)と有機溶媒とを別々の配管からフィードし、その後、静的混合機を設置した配管に導入し、当該配管内で水酸基含有化合物(C)と有機溶媒とを混合する方法が挙げられる。
【0039】
前記第1工程における混合は、スタティックミキサーを用いて行われることが好ましい。
【0040】
前記混合物(I)の後述する重合反応機への添加量は、トリオキサン(A)100モルに対して、水酸基含有化合物(C)が0.01〜5モルの範囲になるように調整することが好ましく、中でもより好ましくは0.01〜3モルであり、最も好ましい添加量は、0.01〜1モルである。水酸基含有化合物(C)の添加量が前記の範囲にあると、ポリアセタール共重合体の特性を維持し、且つ、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定で且つ連続して生産できる傾向にある。
【0041】
〔第2工程〕
第2工程は、前記第1工程で得られた混合物(I)と、環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)とを混合し、混合物(II)を得る工程である。
【0042】
環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)は、トリオキサン(A)と共重合可能な成分であり、具体的にはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキサタン、3,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等を挙げることができる。これら環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)の中でも、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。
【0043】
環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)の添加量は、トリオキサン(A)100モルに対して1〜20モルであることが好ましく、中でも1〜15モルがより好ましく、更に好ましくは1〜10モルであり、最も好ましくは1〜5モルの範囲である。環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)の添加量が上記範囲にあると、変性ポリアセタール共重合体の機械的特性が維持され、且つ高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定的に連続生産することができる傾向にある。
【0044】
環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)と混合物(I)との混合方法は、環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)と混合物(I)とを別々の配管から、静的混合機、例えば、スタティックミキサー等を設置した配管内にフィードした後、当該配管内で攪拌混合する方法が挙げられる。
【0045】
環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)と混合物(I)との混合温度は、20℃から環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)の沸点未満の範囲で調整することが好ましく、中でもより好ましくは、30℃〜環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)の沸点未満の範囲であり、最も好ましくは40℃から環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)の沸点未満の範囲である。
【0046】
前記混合温度を調整する方法は、例えば、配管内に設置した静的混合機を温水もしくはスチームを用い加温し調整する方法が挙げられる。前記混合温度を前記範囲に調整することにより、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を、安定で且つ連続生産することができる傾向にある。
【0047】
〔第3工程〕
第3工程は、前記第2工程で得られた混合物(II)とトリオキサン(A)とを混合し、混合物(III)を得る工程である。
【0048】
トリオキサン(A)とは、ホルムアルデヒドの環状3量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルマリン水溶液を反応させることにより得られる。このトリオキサン(A)には、水、メタノール、ギ酸、ギ酸メチルなどの連鎖移動する不純物を含有しているので、蒸留等の方法でこれら不純物を除去精製することが好ましい。
【0049】
トリオキサン(A)に含まれる不純物量は、トリオキサン(A)100モルに対して、1×10-1モル未満の範囲で調整することが好ましい。この連鎖移動可能な不純物成分が、1×10-1モルを超える量を含有している場合、重合反応速度を遅らせ、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定で且つ連続生産することができ難くなる。
【0050】
トリオキサン(A)と混合物(II)との混合方法は、トリオキサン(A)と混合物(II)を別々の配管から、静的混合機、例えば、スタティックミキサー等の混合機能を有する装置を設置した配管にフィードした後、該配管内で攪拌混合する方法が挙げられる。
【0051】
また、低分子量オキシメチレン化合物(D)をトリオキサン(A)と同様に、静的混合機を設置した配管内で混合物(II)と混合してもよい。
【0052】
低分子量オキシメチレン化合物(D)とは、メチラール、メトキシメチラール、ジメチキシメチラール、トリメトキシメチラール等のアルコキシ基を有する化合物である。
【0053】
この低分子量オキシメチレン化合物(D)の添加量は、特に制限するものではないが、この低分子量オキシメチレン化合物(D)の添加量を調整することにより、目的とする変性ポリアセタール共重合体の分子量を制御することができる。
【0054】
トリオキサン(A)と混合物(II)との混合温度は、トリオキサン(A)の融点〜120℃の範囲で調整することが好ましく、より好ましくはトリオキサン(A)の融点から〜100℃の範囲であり、最も好ましい温度範囲は、トリオキサン(A)の融点〜90℃の範囲である。前記混合温度の調整方法は、配管内に設置した静的混合機を温水もしくはスチームを用い加温し調整する方法が挙げられる。前記混合温度を前記範囲に調整することにより、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を、安定で且つ連続生産することができる傾向にある。
【0055】
〔第4工程〕
第4工程は、前記混合物(III)と、カチオン性重合触媒とを接触混合することなく重合反応機に供給して、重合を行う工程である。
【0056】
具体的には、上記方法により得られた混合物(III)を、2重管構造を有する配管の外側の配管に流し、重合反応機にフィードする。そして、重合触媒であるカチオン性重合触媒(E)を、上記2重管構造を有する配管の内側の配管から重合反応機にフィードし、前記混合物(III)とカチオン性重合触媒(E)とが、配管内で接触しないよう2重管の構造を調整する。例えば、混合物(III)が流れる外側の配管は、カチオン性重合触媒(E)が流れる内側の配管よりも長くなるよう、2重管の構造を調整し、混合物(III)とカチオン性重合触媒(E)とが配管内で接触しないようにする。混合物(III)とカチオン性重合触媒(E)とが接触混合しないように調整することにより、配管内での重合反応を抑制することができ、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定且つ連続生産を可能とする。
【0057】
本実施形態に使用するカチオン重合触媒(E)は、通常、ポリアセタール共重合体の重合反応に用いられるカチオン性重合触媒である。具体的には、四塩化鉛、四塩化スズ、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化バナジウム、三塩化アンチモン、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジブチルエーテラート、三フッ化ホウ素ジオキサネート、三フッ化ホウ素アセチックアンハイドレート、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯化合物等の三フッ化ホウ素配位化合物、過塩素酸、アセチルパークロレート、t−ブチルパークロレート、ヒドロキシ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の無機および有機酸、トリエチルオキソニウムテトラフロロボレート、トリフェニルメチルヘキサフロロアンチモネート、アリルジアゾニウムヘキサフロロホスフェート、アリルジアゾニウムテトラフロロボレート等の複合塩化合物、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド等のアルキル金属塩、ヘテロポリ酸、イソポリ酸等の1種または2種以上が挙げられる。これらカチオン性重合触媒(E)の中でも特に三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素配位化合物、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘテロポリ酸が好ましい。
【0058】
これらカチオン性重合触媒(E)の添加量は、トリオキサン(A)と環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)との合計100モルに対して、1×10-4モル〜1×10-1モルの範囲で適宜選択することが好ましく、より好ましくは、5×10-4モル〜1×10-2モルの範囲であり、更に好ましくは1×10-3モル〜1×10-2範囲である。
【0059】
また、必要に応じて共触媒を用いてもよい。このカチオン性重合触媒(E)の添加量が上記の下限値未満である場合、重合反応が安定せず、また重合収率も低く、変性ポリアセタール共重合体を安定且つ連続生産することができ難くなる。一方、カチオン性重合触媒(E)の添加量が上記の上限値を超える場合、変性ポリアセタール共重合体中にカチオン性重合触媒(E)の多くが残存し、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を得ることができ難くなる。カチオン性重合触媒(E)の添加量が上記の範囲にあると、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定に且つ連続生産することができる傾向にある。
【0060】
上述したとおり、カチオン性重合触媒(E)の希釈溶媒は、水酸基含有化合物(C)と混合した有機溶媒と同一の有機溶媒を用いることが好ましい。カチオン性重合触媒(E)の希釈溶媒が、水酸基含有化合物(C)で使用した同一の有機溶媒を用いることにより、水酸基含有化合物(C)の連鎖移動反応を安定化することができ、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定して連続生産することができる傾向にある。
【0061】
使用する重合反応機の形状(構造)は特に制限するものではないが、1軸或いは2軸のパドル式やスクリュー式の攪拌混合型重合装置が好適に使用される。重合反応機の温度は、65〜135℃に保つことが好ましく、更に好ましくは70〜120℃の範囲であり、最も好ましくは70〜100℃の範囲である。重合反応機内の滞留(反応)時間は、0.1〜30分の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜25分であり、最も好ましくは0.1〜20分の範囲である。重合反応機の温度および滞留時間(反応時間)が上記の範囲で適宜選択することにより高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定に且つ連続生産することができる傾向にある。
【0062】
従来の製造方法で得られる変性ポリアセタール共重合体は、一般的に、触媒が多量に残存したり、不安定末端基量が多く存在ため、熱安定性が低い。したがって、変性ポリアセタール共重合体の熱安定性を高めるためには、通常、触媒の失活化処理工程や不安定末端基除去工程が必要となる。また、従来の製造方法では、変性ポリアセタール共重合体の粒子径が微細であるため、押出し機への喰い込み性が低下する。結果として、変性ポリアセタール共重合体の連続安定生産性が低下する。
【0063】
しかしながら、本実施形態に係る製造方法で得られる変性ポリアセタール共重合体は、不安定末端基量が極めて少ないため、熱安定性が高く、しかも粒子径が大きいため、押出し機への喰い込み性が良好である。
【0064】
したがって、上記の第1工程〜第4工程を含む本実施形態に係る製造方法によれば、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定に且つ連続生産することができる。
【0065】
上記の第1工程〜第4工程で得られた末端安定化していない変性ポリアセタール共重合体(以下「粗変性ポリアセタール共重合体」とも記す。)は、従来より少ない量であるが、不安定末端基が存在し、またカチオン性重合触媒(E)が残存する。したがって、当該粗変性ポリアセタール共重合体は、成形機を用いて成形すると熱分解を起こし、実用に耐えることができない場合がある。そのため、カチオン性重合触媒(E)の失活化および/または不安定末端基の除去を実施することが好ましい。
【0066】
〔カチオン性重合触媒(E)の失活化処理工程〕
カチオン性重合触媒(E)の失活方法は、重合反応機を出た不安定末端基を有する粗変性ポリアセタール共重合体を、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、有機酸塩等の中和失活剤、または下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム化合物(F)の少なくとも1種を含む水溶液または有機溶剤溶液中に投入し、スラリー状態で数分〜数時間、室温〜100℃以下の範囲で連続攪拌することにより、カチオン性重合触媒(E)を失活化させる方法が挙げられる。
【0067】
【化1】

上記一般式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基もしくは置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基もしくは置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;または炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基もしくは置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基もしくは置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。
【0068】
上記置換アルキル基の置換基は、ハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基またはアミド基である。
【0069】
また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。
【0070】
nは1〜3の整数を表わす。
【0071】
Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、水素酸、オキソ酸、無機チオ酸もしくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。
【0072】
第4級アンモニウム化合物(F)は、前記一般式(1)で表わされるものであれば特に制限はない。具体的には、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクタデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸燐酸、炭酸、硼酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。これらのうち、水酸化物は強アルカリであり取り扱いに注意することが必要であるため、塩の形で使用することが好ましく、特にカルボン酸塩が好ましい。
【0073】
本実施形態においては、これらの第4級アンモニウム化合物を各々単独で、又は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
当該方法における失活剤の濃度は、粗変性ポリアセタール共重合体100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲であることが好ましい。当該失活剤の濃度は、失活剤水溶液の濃度を適宜選択し調整することができる。中でも好ましい失活剤の濃度は、粗変性ポリアセタール共重合体100質量部に対して0.0005〜5質量部であり、最も好ましい濃度は0.001〜3質量部の範囲である。
【0075】
また、上記失活方法における攪拌混合の時間および温度は、特に制限するものではなく、確実にカチオン性重合触媒(E)の活性が無くなるまで攪拌混合し失活化させる時間および温度であればよい。例えば、攪拌混合時間は0.1〜5時間、温度は20〜80℃の範囲で適宜選択することができる。その後、失活剤水溶液から粗変性ポリアセタール共重合体をろ過分離し、水洗、乾燥させ、不安定末端基を有する粗ポリアセタール共重合体を得る。
【0076】
上記失活方法におけるスラリー濃度は、10〜50重量%の範囲で適宜選択することが好ましい。スラリー濃度がこの範囲にあるとき、失活槽内での粗変性ポリアセタール共重合体の攪拌が容易であり、カチオン性重合触媒(E)を短時間に失活化させることができ、変性ポリアセタール共重合体を安定且つ連続生産することができる。
【0077】
〔不安定末端基除去工程〕
不安定末端基を有する粗変性ポリアセタール共重合体の不安定末端基除去方法は、不安定末端基除去剤を粗変性ポリアセタール共重合体に添加し、押出し機等の減圧脱揮可能な設備で溶融混練し、不安定末端基を熱分解除去する方法が挙げられる。
【0078】
当該方法に用いることができる押出し機は、単軸押出し機や2軸押出し機などの減圧脱揮設備を有する溶融混練可能な装置が挙げられる。中でも、2軸押出し機が溶融混練可能であり好ましい。
【0079】
溶融混練時の樹脂温度は、粗変性ポリアセタール共重合体の融点以上、250℃未満の温度範囲であることが好ましく、より好ましくは、粗変性ポリアセタール共重合体の融点以上、230℃未満の温度であり、最も好ましくは粗変性ポリアセタール共重合体の融点以上、210℃未満の温度範囲である。
【0080】
不安定末端基除去剤としては、アンモニアやトリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン、水酸化カルシウムに代表されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物・無機弱酸塩・有機弱酸塩や前記一般式(1)で示される第4級アンモニウム化合物(F)が挙げられる。
【0081】
粗変性ポリアセタール共重合体の不安定末端基除去する際に使用する第4級アンモニウム化合物(F)の添加量は、粗変性ポリアセタール共重合体に対して、下記の計算式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して、0.05〜50ppmである。
【0082】
【数1】

式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物(F)のポリオキシメチレン重合体に対する濃度(ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。
【0083】
第4級アンモニウム化合物(F)の添加方法は、粗変性ポリアセタール共重合体に直接添加してもよいし、第4級アンモニウム化合物(F)を溶媒に希釈し添加してもよく、特に制限するものではないが、溶媒に希釈し添加する方法が好ましい。
【0084】
第4級アンモニウム化合物(F)の希釈溶媒は、特に制限するものではなく、第4級アンモニウム化合物(F)が溶解する溶媒であればよい。通常、水に第4級アンモニウム化合物(F)を溶解させて、粗変性ポリアセタール共重合体に添加する。
【0085】
〔変性ポリアセタール共重合体の分子構造〕
上記の第1工程から第4工程を経て得られた不安定末端基を有する粗変性ポリアセタール共重合体は、水酸基含有化合物(C)をポリマー主鎖中に導入した分子構造を有する。この変性ポリアセタール共重合体の分子構造は、水酸基含有化合物(C)の種類により異なり、ブロック型、グラフト型、分岐・架橋型の何れの分子構造であってもよく、特に限定するものではない。
【0086】
変性ポリアセタール共重合体の分子量は、特に制限するものではないが、変性ポリアセタール共重合体の特性および成形性の観点から、メルトフローレート値(g/10min)で0.1〜100g/10minの範囲の分子量を有するものが好ましい。
【0087】
上記工程を経て得られた変性ポリアセタール共重合体は、100μm以上の大きさの粒子を有することが好ましく、100μm以上の大きさの粒子を70重量%以上含むことがより好ましい。このような変性ポリアセタール共重合体は、上述した不安定末端基除去工程の押出し性を向上させる傾向にあり、安定に且つ連続生産を可能となる。
【0088】
また、粗変性ポリアセタール共重合体の不安定末端基量が、不安定末端基量が10000ppm以下と少ない場合、上述した不安定末端基除去工程の負荷を抑えることができる。これにより、高熱安定性の変性ポリアセタール共重合体を安定生産することが可能となる。
【0089】
〔安定剤添加方法〕
末端安定化された変性ポリアセタール共重合体には、本実施形態において目的とする変性ポリアセタール共重合体の特性を損なわない範囲で、従来公知の各種添加剤を適宜選択し添加することもできる。従来公知の各種添加剤として、例えば、酸化防止剤、ホルムアルデヒド捕捉能力を有する含窒素化合物、耐候(光)安定剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤、結晶化核剤や顔料、無機および有機強化材が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
<実施例および比較例における原料とおよび各種特性測定方法>
〔1.トリオキサン(A)〕
・A−1:トリオキサン
〔2.環状エーテル(B)〕
・B−1:1,3−ジオキソラン
〔3.水酸基含有化合物(C)〕
・C−1:ポリエチレングリコール(三洋化成製PEG−600、分子量:600)
・C−2:ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業製PTG_#650、分子量:650)
・C−3:ポリグリセリン(阪本薬品工業製ポリグリセリン_#750、分子量:750)
・C−4:両末端ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエン(日本曹達製PB GI−2000、分子量:2000)
〔4.カチオン性重合触媒(E)〕
・E−1:三フッ化ホウ素ジブチルエーテル
〔5.有機溶媒(F)〕
・F−1:ベンゼン
・F−2:シクロへキサン
〔6.不安定末端基を有する粗変性ポリアセタール共重合体の粒子径〕
目開きが50μm、75μm、100μmの篩に、重合機から排出された不安定末端基を有する粗変性ポリアセタール共重合体を載せ、下記の篩装置を用いて、前記粗変性ポリアセタール共重合体の粒径毎の重量を測定した。
【0092】
・篩装置:筒井理化学器機(株)製、ミクロ形電磁振動ふるい器(型式:M−100形)
・篩振動時間:15分
〔7.重合収率〕
重合開始後、重合反応機から排出された粗変性ポリアセタール共重合体の単位時間当たりの排出量と、トリオキサン(A)の単位時間当たりのフィード量とから下記式(i)により重合収率を求めた。
【0093】
【数2】

なお、重合収率を求める際、未反応のトリオキサン(A)の重量もカウントする可能性があるので、単位時間当たり粗変性ポリアセタール共重合体の排出量は、必ず、カチオン性重合触媒を失活化し、水洗、乾燥させた後の粗変性ポリアセタール共重合体の重量とした。
【0094】
〔8.変性ポリアセタール共重合体の不安定末端基量〕
カチオン性重合触媒を失活化し、真空乾燥して、得られた変性ポリアセタール共重合体を190℃の温度に調整したオイルバス(窒素雰囲気下)に浸漬させ、不安定末端部からホルムアルデヒドを発生させた。発生したホルムアルデヒドを亜硫酸ソーダ水溶液に吸収させ、硫酸で滴定し、発生したホルムアルデヒドを一定時間ごとに測定した。ホルムアルデヒド発生量が無くなった時点をもって熱分解を終了し、発生したホルムアルデヒド全量をもって変性ポリアセタール共重合体の不安定末端基量とした。尚、ホルムアルデヒドキャリアガスには窒素ガスを用いた。
【0095】
〔9.押出し性〕
不安定末端基を有する粗変性ポリアセタール共重合体を、3kg/hrの量を2軸押出し機に供給し、2軸押出し機(L/D=44、(株)プラスチック工学研究所製、BT−30押出し機)で3時間連続して押出し造粒した。このときの押出し機における電流値と、ダイス部からの吐出量とを測定し、下記基準に従って押出し性を判定した。
【0096】
尚、押出し機シリンダー設定温度は、ホッパー下を180℃とし、その他は全て200℃とし、また、押出し機ベント部の減圧度は−95kPaとした。
【0097】
・押出し性の判定基準
〇:押出し機吐出量の増減値が、フィード量に対して±5%以内であり、且つ、押出し機電流値の振れ幅が、平均電流値に対して±5A以内であった。
【0098】
△:押出し機吐出量の増減値が、フィード量に対して±10%以内であり、且つ、押出し機電流値の振れ幅が、平均電流値に対して±10A以内であった。
【0099】
×:押出し機吐出量の増減値が、フィード量に対して±10%を超えて、押出しがサージング状態となり、且つ、押出し機電流値の振れ幅が、平均電流値に対して±10Aを超えていた。
【0100】
〔10.変性ポリアセタール共重合体中の水酸基含有化合物(C)の導入率〕
変性ポリアセタール共重合体に導入された水酸基含有化合物(C)の導入率を以下のように求めた。
【0101】
まず、重合機から排出された粗変性ポリアセタール共重合体を水酸基含有化合物(C)の有機溶媒として用いた同じ有機溶媒を用いて洗浄し、未反応の水酸基含有化合物(C)を除去した。その後、水洗し真空乾燥し、得られた粗変性ポリアセタール共重合体を塩酸で分解した。この分解溶液から粗変性ポリアセタール共重合体における主鎖中に導入された水酸基含有化合物(C)をエバポレーター等の抽出装置を用いて抽出洗浄し残渣を定量した。この定量値をもって水酸基含有化合物(C)の変性ポリアセタール共重合体中の導入量とした。得られた導入量を、重合時にフィードした水酸基含有化合物(C)の量で割り返し、導入率(%)を求めた。
【0102】
〔11.引張降伏強度、引張破断伸度〕
末端安定化処理を施した変性ポリアセタール共重合体から、下記成形条件でISO引張試験片を作成し、該試験片について引張降伏強度および引張破壊伸度を、ISO527−1&−2(‘93)に準拠して、各々測定した。
【0103】
・射出成形機 :東芝機械(株)製 IS100GN
・成形条件 :シリンダー設定温度 210℃
:金型温度 90℃
:射出/冷却時間 = 20秒/10秒
[実施例1]
〈第1工程〉
ポリエチレングリコール(C−1)を60℃に加温し、ポンプで配管内を流した。同時に別の配管を用いてベンゼン(F−1)を流し、ポリエチレングリコール(C−1)とベンゼン(F−1)とを、スタティックミキサー1を設置した配管内で混合して、混合物(I)を得た。
【0104】
なお、スタティックミキサー1の温度は60℃とした。また、混合物(I)におけるポリエチレングリコール(C−1)の濃度が、混合物(I)全体に対して10質量%になるよう、ポリエチレングリコール(C−1)およびベンゼン(F−1)の流量を調整した。
【0105】
〈第2工程〉
前記混合物(I)と、更に別の配管から送られてきた1,3−ジオキソラン(B−1)とを合流させ、スタティックミキサー2を設置した配管内に導入して混合することにより、混合物(II)を得た。なお、このときのスタティックミキサー2の温度は60℃とした。
【0106】
〈第3工程〉
スタティックミキサー2を設置した配管内を通過後、前記混合物(II)と、別の配管から送られてきたトリオキサン(A−1)(3000g/hr)とを合流させ、スタティックミキサー3を設置した配管内で更に混合し、混合物(III)を得た。なお、スタティックミキサー3の温度は80℃とした。
【0107】
また、1,3−ジオキソラン(B−1)の濃度が、トリオキサン(A−1)100molに対して4.1molになるように、またポリエチレングリコール(C−1)の濃度が、トリオキサン(A−1)100モルに対して0.2モルになるよう、混合物(II)の流量を調整した。
【0108】
〈第4工程〉
前記混合物(III)と、カチオン性重合触媒(E)とを接触混合することなく重合反応機に供給して、重合を行って粗変性ポリアセタール共重合体を得た。
【0109】
カチオン性重合触媒(E)としては、三フッ化ホウ素ジブチルエーテル(E−1)を用いた。この重合触媒の希釈溶媒は、混合物(I)の有機溶媒と同一のベンゼン(F−1)とした。希釈倍率は、カチオン性重合触媒である三フッ化ホウ素ジブチルエーテル(E−1)1質量部に対して、有機溶媒であるベンゼン(F−1)を1000質量部とした。カチオン性重合触媒である三フッ化ホウ素ジブチルエーテル(E−1)の供給量は、トリオキサン(A−1)100モルに対して、0.2×10-2モルとした。
【0110】
前記混合物(III)およびカチオン性重合触媒(E)の供給方法は、2重管構造を有する配管を用いて、2重管の外側に前記混合物(III)を流し、2重管の内側にカチオン性重合触媒(E)を流し、重合反応機に供給する方法とした。また、重合反応機の温度は80℃とした。
【0111】
〈カチオン性重合触媒(E)の失活化処理工程〉
重合反応機から排出された末端安定化していない粗変性ポリアセタール共重合体を、1質量%に調整したトリエチルアミン水溶液に投入してスラリーを得た。このときのスラリー濃度は、25質量%とした。
【0112】
その後、得られたスラリーを、室温で1時間、攪拌混合し、カチオン性重合触媒である三フッ化ホウ素ジブチルエーテル(E−1)を失活化させた。その後、カチオン性重合触媒である三フッ化ホウ素ジブチルエーテル(E−1)を失活化させた粗変性ポリアセタール共重合体を、ろ過、乾燥した。
【0113】
乾燥後、得られた粗変性ポリアセタール共重合体を用いて、重合収率、粒子径、不安定末端基量、水酸基含有化合物(C)の導入率を上述した方法により測定した。測定結果を表2に示す。
【0114】
〈末端安定化処理工程〉
上記失活化処理工程後の粗変性ポリアセタール共重合体に、末端安定化処理剤を添加して、ベント減圧可能な30φ2軸押出し機(L/D=44、(株)プラスチック工学研究所製、BT−30押出し機)を用い、溶融混練することにより不安定末端基が除去(末端安定化処理)された変性ポリアセタール共重合体を得た。
【0115】
尚、押出し機シリンダー設定温度は、ホッパー下を180℃とし、その他は全て200℃とし、また、押出し機ベント部の減圧度は−95kPaとした。
【0116】
また、末端安定化処理剤は、1質量%のトリエチルアミン水溶液を用いた。また、末端安定化処理剤の添加量は、粗変性ポリアセタール共重合体に対して1質量%とした。
【0117】
変性ポリアセタール共重合体の押出し性について、粗変性ポリアセタール共重合体の末端安定化処理を行う際の押出し機の喰い込み性と押出し機電流値とで評価した。
【0118】
末端安定化処理工程後の変性ポリアセタール共重合体について、不安定末端基量を上述した方法により測定した。測定結果を表2に示す。
【0119】
また、得られた変性ポリアセタール共重合体を、上述した方法により射出成形し、引張降伏強度および引張破断伸度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0120】
[実施例2〜11]
表1に示すとおり、原料の種類および供給量を変更した以外は、実施例1と同様にして変性ポリアセタール共重合体を得て、各種測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0121】
[比較例1]
表1に示すとおり、第1工程において、有機溶媒を用いなかった以外は、実施例1と同様にして変性ポリアセタール共重合体を得て、各種測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0122】
[比較例2]
表1に示すとおり、第1工程において、水酸基含有化合物(C)として、ポリエチレングリコール(C−1)に代えて、両末端ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエン(C−4)を用い、また有機溶媒を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして変性ポリアセタール共重合体を得て、各種測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0123】
[比較例3]
表1に示すとおり、第1工程において、水酸基含有化合物(C)として、ポリエチレングリコール(C−1)に代えて、両末端ヒドロキシル化された水素化ポリブタジエン(C−4)を用い、また、有機溶媒として、ベンゼン(F−1)に代えて1,3−ジオキソラン(B−1)用いた以外は、実施例1と同等にして変性ポリアセタール共重合体を得て、各種測定を行った。測定結果を表2に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の製造方法により、熱安定性に優れた変性ポリアセタール共重合体を安定で且つ連続生産することが可能となり、ポリアセタール共重合体の各種特性改良材として提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トリオキサンと、
(B)環状エーテルおよび/または環状ホルマールと、
(C)水酸基含有化合物と
を共重合させてなる変性ポリアセタール共重合体の製造方法であって、
水酸基含有化合物(C)と、脂肪族炭化水素、環式炭化水素および芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒とを混合して混合物(I)を得る第1工程、
前記混合物(I)と、環状エーテルおよび/または環状ホルマール(B)とを混合して混合物(II)を得る第2工程、
前記混合物(II)と、トリオキサン(A)とを混合して混合物(III)を得る第3工程、ならびに
前記混合物(III)と、カチオン性重合触媒とを接触混合することなく重合反応機に供給して、重合を行う第4工程を含むことを特徴とする変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1〜3工程における少なくとも1つの混合が、スタティックミキサーを用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程における有機溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする請求項1または2に記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程における有機溶媒の配合量が、前記混合物(I)全体に対して、1〜50重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記水酸基含有化合物(C)が、数平均分子量500〜20000の両末端水酸基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記水酸基含有化合物(C)配合量が、前記トリオキサン(A)100モルに対して、0.01〜5モルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の変性ポリアセタール共重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−246611(P2011−246611A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121363(P2010−121363)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】