説明

変性ポリイミドの製造方法及び変性ポリイミド

【課題】電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れた、ポリカーボネートを含んだ変性ポリイミドの製造方法及び該変性ポリイミド、並びに該変性ポリイミドを含む組成物及びその用途を提供すること。
【解決手段】柔軟性に優れたポリカーボネート部分を含むイソシアネート末端オリゴマーとテトラカルボン酸二無水物とを反応させてポリカーボネート部分を含むテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを合成し、次いで、このオリゴマーをさらに芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物と反応させてポリイミドブロックコポリマーとする方法によれば、芳香族ジアミンの選択の幅が広く、芳香族ジアミンを適切に選択することにより、上記した各種特性を同時に満足する優れた変性ポリイミドを作出することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリイミドの製造方法及び変性ポリイミド並びに該変性ポリイミドの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(以下FPCと言う。)は、その外表面に配線(銅箔パターン等)を保護するための保護膜(カバーレイフィルム)を設ける場合が多い。また、フレキシブル配線基板などの絶縁保護膜として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが用いられている。近年、より耐熱性に優れた保護膜が望まれており、耐熱性に優れるポリイミドからなる保護膜が各種提案されている。それらの樹脂成分には柔軟な成分としてポリシロキサン、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリエステルなどが導入されており、硬化膜に柔軟性、耐屈曲性、低そり性などの特性を付与させている。
【0003】
特許文献1,2には、ジアミノポリシロキサンから誘導されるシロキサン変性ポリイミドからなる組成が開示されている。シロキサン変性ポリイミドは、耐熱性、電気絶縁性が優れ、加えて低弾性であるため低そり性が優れている。しかし、ポリシロキサン成分のために硬化膜表面の密着性が十分でなく、また高温加熱時に生じる環状シロキサンの飛散の問題もあった。
【0004】
特許文献3には、ポリカーボネート変性したポリアミドイミド樹脂からなる組成物が開示されている。この組成物は、低そり性が優れ、硬化膜表面の密着性の問題、環状シロキサンの発生の問題が改善されている。しかし、ポリアミドイミド樹脂単独では耐薬品性が低いためエポキシを用いて熱硬化させる必要があり、そのエポキシ添加に起因して保存安定性の問題がある。また、硬化膜に関してもアミド結合が存在するために吸湿性の問題がある。
【0005】
特許文献4,5には、ポリカーボネート変性したポリイミド樹脂からなる組成物、特許文献6にはポリカーボネート変性及びポリブタジエン変性したポリイミド樹脂からなる組成物が開示されている。その中で、特許文献4ではイソシアネート末端ポリカーボネート及び芳香族イソシアネートとテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより変性ポリイミド樹脂を得ている。しかし、入手し得る芳香族イソシアネートの種類が少なく、また可溶性するために耐薬品性が低くなる傾向があり、依然としてエポキシにより熱硬化性を持たせなければならないという問題がある。特許文献5では、可溶性の変性ポリイミドが得られやすいように、ポリカーボネートジオールと水酸基末端イミドオリゴマー及びジイソシアネート化合物を反応させることにより変性ポリイミドを得ている。しかし、水酸基末端イミドオリゴマーの溶解性の問題から実質的には水酸基とイミド基の間の構造は脂肪族にしなければならず、耐熱性が低くなる傾向がある。また、特許文献6記載の樹脂組成物も特許文献4,5と同様に熱硬化タイプである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−304950号公報
【特許文献2】特開平8−333455号公報
【特許文献3】特開2003−138015号公報
【特許文献4】特開2002−145981号公報
【特許文献5】特開2006−307183号公報
【特許文献6】特開2007−246632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れた、ポリカーボネートを含んだ変性ポリイミドの製造方法及び該変性ポリイミド、並びに該変性ポリイミドを含む組成物及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、柔軟性に優れたポリカーボネート部分を含むイソシアネート末端オリゴマーとテトラカルボン酸二無水物とを反応させてポリカーボネート部分を含むテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを合成し、次いで、このオリゴマーをさらに芳香族ジアミン及び芳香族テトラカルボン酸二無水物と反応させてポリイミドブロックコポリマーとする方法によれば、芳香族ジアミンの選択の幅が広く、芳香族ジアミンを適切に選択することにより、上記した各種特性を同時に満足する優れた変性ポリイミドを作出することが可能であることを見出した。そして、実際にこの製造方法により、上記した各種特性を同時に満足する優れた変性ポリイミドを作出することに成功し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基又はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合若しくはアミド結合で連結された炭素数1〜18のアルキレン基を示し、m、nは、1〜20の整数を示す)
で表されるイソシアネート末端オリゴマーと、一般式(II)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Yは4価の芳香族基を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより一般式(III)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、Rは、上記一般式(I)におけるRと同義、Xは上記一般式(I)におけるXと同義、Yは、上記一般式(II)におけるYと同義、m及びnは、上記一般式(I)におけるm及びnと同義、pは、1〜20の整数を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを合成する第1工程と、
【0016】
得られたテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを、一般式(IV)
NH2-A-NH2 (IV)
(式中、Aは、2価の芳香族基を示す)
で表される芳香族ジアミンと、一般式(II')
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Y'は4価の芳香族基を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させて一般式(V)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、Rは、上記一般式(I)におけるRと同義、Xは上記一般式(I)におけるXと同義、Yは、上記一般式(II)におけるYと同義、m及びnは、上記一般式(I)におけるm及びnと同義、pは上記一般式(III)におけるpと同義、Aは上記一般式(IV)におけるAと同義、Y'は上記一般式(II')におけるY'と同義、qは1〜20の整数を示す)
で表される、ポリカーボネート構造と芳香族ポリイミド構造を有する変性ポリイミドを合成する第2工程とを含み、上記一般式(V)で表される変性ポリイミドに対する上記一般式(V)中の柔軟構造、いわゆる繰返し単位数が上記nで表される繰返し単位の重量比(ただし、Xが芳香族である場合にはXの重量を除く)が0.3〜0.7である、変性ポリイミドの製造方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、一般式(V)
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基又はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合若しくはアミド結合で連結された炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Aは、
【0024】
【化7】

【0025】
(これらの式中、E1、E2及びE3は、互いに独立して、直結、-O-、-SO2-、-S-又は-C(CH3)2-を示す)
で表される2価の芳香族基を示し、Y及びY'は、互いに独立して4価の芳香族基を示し、m、n、p、qは、互いに独立して1〜20の整数を示す)
で表される構造を有し、上記一般式(V)で表される変性ポリイミドに対する上記一般式(V)中の柔軟構造、いわゆる繰返し単位数が上記nで表される繰返し単位の重量比(ただし、Xが芳香族である場合にはXの重量を除く)が0.3〜0.7である変性ポリイミドを提供する。
【0026】
さらに、本発明は、上記本発明の変性ポリイミドを有機溶媒中に含む変性ポリイミド樹脂組成物を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、上記本発明の変性ポリイミド樹脂組成物を成膜し、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去することにより得られた樹脂フィルムを提供する。さらに、本発明は、該本発明の樹脂フィルムの硬化物から成る樹脂フィルムを提供する。さらに、本発明は、上記本発明の樹脂フィルムで一部又は全面が被覆されたプリント配線板を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の樹脂フィルムを含む電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、ポリカーボネートを含んだ変性ポリイミドの製造方法及び該方法を用い、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れた変性ポリイミド及び該変性ポリイミドを含むポリイミド樹脂組成物が初めて提供された。本発明の樹脂組成物から形成される樹脂フィルムは、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性に優れた被膜として利用可能であり、これを含む、信頼性の高いプリント配線板や電子部品が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例で得られた変性ポリイミドのIRの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の製造方法に用いる上記一般式(II)で表されるイソシアネート末端オリゴマーは、一般式(VI)
【0031】
【化8】

【0032】
(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、mは、1〜20の整数を示す。)
で表されるポリカーボネートジオールと一般式(VII)
【0033】
【化9】

(式中、Xは、炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基又はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合若しくはアミド結合で連結された炭素数1〜18のアルキレン基を示す。)
で表されるジイソシアネートと反応させることにより得ることができる。
【0034】
上記一般式(VI)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基、好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基であり、mは、1〜20の整数、好ましくは6〜16の整数である。ここで使用される一般式(IV)で示されるポリカーボネートジオールの数平均分子量は、500〜10000が好ましく、より好ましくは800〜5000である。数平均分子量が500未満になると好適な柔軟性が得られがたく、また平均分子量が10000を超えると粘度が高くなりハンドリング性が悪くなる。ここで用いられるポリカーボネートジオールとしては、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製の製品名デュラノール T6001、T5651、T4691などやダイセル化学(株)製の製品名PLACCEL CD−210、CD−210PL、CD−210HLなどの市販されているものを例示することができる。これらのポリカーボネートジオールは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0035】
また、上記一般式(V)中のXは、炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基又はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合若しくはアミド結合で連結された炭素数1〜18のアルキレン基が好ましく、具体的には1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族及び脂環族ジイソシアネートやトリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートなどを例示することができる。また、炭素数1〜18のアルキレン基の2個以上がエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合又はアミド結合で結合された基であってもよく、上記の各種ジイソシアネートに含まれるアルキレン基2個以上(好ましくは2〜5個)が、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合又はアミド結合で結合された基も好ましい。具体的には、ウレタン結合タイプとして旭化成ケミカルズ(株)製の製品名デュラネート D101、D201のようなイソシアネート末端を有する変性品を例示できる。芳香族ジイソシアネートを用いると脂肪族ジイソシアネートの時と比較して変性ポリイミド樹脂の耐熱性が高くなり、高弾性率化する傾向がある。また、また、耐溶剤性を向上させる目的で、3価以上のイソシアネートをゲル化しない程度、用いることもでき、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製の製品名デュラネート TPA−100のような3価のイソシアネート品を例示することができる。なお、上記イソシアネート化合物は、経日変化を避けるためにアルコール、フェノール、オキシム等でブロック化したものを用いても良い。これらのジイソシアネートは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0036】
上記の一般式(VI)で表されるカーボネートジオールと上記の一般式(VII)で表されるジイソシアネートの配合比は、イソシアネート基数/水酸基数=1.1〜2.5が好ましい。イソシアネート基数/水酸基数=1.1未満になると粘度が高くなり、後工程のイミド化の時に問題となる。また、イソシアネート基数/水酸基数=2.5より大きくなるとイソシアネート同士の反応が起こりやすくなるだけで意味が無い。
【0037】
反応は、無溶媒あるいは有機溶媒の存在下で行なうことができる。反応温度は、40℃〜180℃とすることが好ましく、反応時間は、反応条件、スケールなどにより適宜選択することができ、例えば、30分〜2時間程度である。
【0038】
このようにして得られる一般式(I)で表されるイソシアネート末端オリゴマーが得られる。一般式(I)中、nは1〜20の整数、好ましくは、1〜4の整数であり、その他の符号は上記した通りである。
【0039】
このようにして得られた一般式(I)で表されるイソシアネート末端オリゴマーと一般式(II)
【0040】
【化10】

【0041】
(式中、Yは4価の芳香族基を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより一般式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを合成する。ここで、一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限されないが、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレンビス(トリメリテート)二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物や1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂環族のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
一般式(I)で表されるイソシアネート末端オリゴマーと一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物の配合比は、カルボン酸無水物基/イソシアネート基=1.1以上が好ましい。カルボン酸無水物基/イソシアネート基=1.1未満になると粘度が高くなり、後工程のイミド化の時に問題となる。
【0043】
反応温度は、80℃〜200℃とすることが好ましく、反応時間は、反応条件、スケールなどにより適宜選択することができ、例えば45分〜3時間である。このようにして得られたテトラカルボン酸二無水物オリゴマーは、メタノール等の貧溶媒を用いて単離することも可能であるが経済性が劣るため、そのまま続く第2工程を行なうことが最も好ましい。
【0044】
このようにして得られる、一般式(III)(一般式(III)中、R、X、Y、m及びnは、上記した通りであり、pは、1〜20の整数、好ましくは1〜8の整数を示す)で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーの数平均分子量としては、500〜10000であることが好ましく、1000〜9000であることがより好ましい。数平均分子量が500未満であるとそり性が悪くなる傾向にあり、10000を超えると末端の酸無水物の反応性が低下して、ポリイミド主鎖への導入が困難となる傾向がある。
【0045】
続く第2工程では、上記のようにして得られた一般式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーと、上記一般式(IV)で表される芳香族ジアミンと、上記一般式(II’)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを有機溶媒に溶解させて直接イミド化することによって上記一般式(V)で表されるポリカーボネートジオール変性ポリイミドを製造することができる。テトラカルボン酸二無水物(上記一般式(III)で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーと、上記一般式(II’)で表されるテトラカルボン酸二無水物との合計)とジアミンとの混合比は、酸二無水物の合計量1モルに対して、ジアミンの合計量0.9〜1.1モルとするのが好ましい。合成方法は公知の方法を用いれば良く、無水酢酸/トリエチルアミン系、バレロラクトン/ピリジン系などの触媒を用いた化学的イミド化が好適に用いることができる。反応温度は、通常、80℃〜220℃、好ましくは120℃〜200℃であり、反応時間は、反応条件、スケールなどにより適宜選択することができ、例えば、1時間〜6時間である。
【0046】
第2工程で用いられるジアミン化合物には特に制限はないが、柔軟性、屈曲性、低そり性などの特性はポリカーボネート構造で付与されているために、耐熱性、耐薬品性で優れる芳香族ジアミンが用いられる。ここで、用いる芳香族ジアミンを適切に選択することにより、得られる変性ポリイミドの各種特性を好ましいものとすることが可能である。芳香族ジアミンの例としては、具体的には、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、[3−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]−4−アミノベンゾエート、[4−(4−アミノベンゾイル)オキシフェニル]−4−アミノベンゾエート、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジトリフルオロメチル−1,1’−ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。これらのジアミンは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
これらの中でも、一般式(VI)中のAが
【0048】
【化11】

【0049】
(これらの式中、E1、E2及びE3は、互いに独立して直結(すなわち、隣接するベンゼン環同士が直接結合する)、-O-、-SO2-、-S-又は-C(CH3)2-を示す)
で表される構造を有するものが、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性に優れるので好ましい。特に好ましい構造として、
【0050】
【化12】

【0051】
で表される構造を挙げることができる。
【0052】
上記一般式(II’)で表されるテトラカルボン酸二無水物の好ましい例としては、上記一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物の好ましい例と同様である。上記一般式(II’)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、上記一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物と同じものでも異なったものでもよく、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
上記第1工程及び第2工程で使用する合成溶媒としては、非含窒素系溶媒が好ましく、25℃での蒸気圧が3mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下の溶媒を使用することができる。具体的には、γ−ブチロラクトン、トリグライム、テトラグライム、安息香酸メチル、安息香酸エチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を混合して使用できる。また、樹脂組成物作製時の粘度調整のために希釈剤として、シクロヘキサノンのようなケトン系溶剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートのようなカーボネート系溶剤を用いることもできる。
【0054】
上記した第2工程により、上記一般式(V)で表されるポリカーボネート変性ポリイミドが得られる。一般式(V)中、qは1〜20の整数、好ましくは1〜8の整数を示し、q以外の符号は上記した通りである。
【0055】
一般式(V)で表される変性ポリイミドにおいて、変性ポリイミドの重量に対する柔軟構造、いわゆる繰返し単位数が上記nで表される繰返し単位の重量比(ただし、Xが芳香族である場合にはXの重量を除く)が0.3〜0.7であり、0.4〜0.65が好ましい。0.3未満となると低そり性を満足することができず、0.7を超えると耐熱性、耐薬品性が低下する。
【0056】
このようにして得られたポリイミド樹脂の数平均分子量は、6000〜60000であることが好ましく、7000〜50000であることがより好ましい。数平均分子量が6000未満であると、破断強度などの膜物性が低下する傾向があり、60000を超えると作業性の適したペーストが得がたくなる。
【0057】
一般式(I)で表される変性ポリイミドのうち、Aが上記した
【0058】
【化13】

【0059】
(これらの式中、E1、E2及びE3は、互いに独立して直結、-O-、-SO2-、-S-又は-C(CH3)2-を示す)
で表される構造を有するものは、新規物質であり、本発明は、この変性ポリイミドをも提供するものである。
【0060】
また、本発明は、該変性ポリイミドを有機溶媒中に含む変性ポリイミド樹脂組成物をも提供する。ここで、有機溶媒は、上記した製造方法で合成溶媒として用いられる溶媒をそのまま用いることが好ましく、従って、上記の通り、非含窒素系溶媒が好ましい。また、組成物中の変性ポリイミド樹脂の含有量は10〜50重量%が好ましい。
【0061】
本発明の変性ポリイミドは、低そり性を満足させるため樹脂単独では難燃性について解決していない問題がある。このため、難燃性が必要な用途に関しては変性ポリイミド樹脂100重量部に対して非ハロゲン系難燃剤1〜20重量部を含有していることが好まく、2〜15重量部がより好ましく、2〜10重量部が最も好ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのような水和物系難燃剤、グアニジン化合物等の無機系難燃剤、メラミンシアヌレート等のようなメラミン系難燃剤、トリフェニルホスフェート、環状フェノキシホスファゼン等のリン系難燃剤が挙げられ、特に酸やアルカリにも強いメラミン系難燃剤やリン系難燃剤が好適に使用できる。また、リン酸系界面活性剤により表面処理が施された水酸化金属、金属塩を最も好適に使用できる。この表面処理を施した水酸化マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム塩を用いることにより、印刷性や難燃性を低下させることなく、金メッキ処理におけるポリイミド膜表面の劣化による問題を防ぐことができ(すなわち、酸処理に対する抵抗性が高い)、さらに無電解金メッキ処理を行う場合の劣化も防ぐことができる。
【0062】
リン化合物の具体例としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物である。また、リン酸エステル化合物とホスファゼン化合物を併用することにより難燃性を損なうことなく可撓性を高めることができるため、より好ましい。リン酸エステル化合物の具体例としては、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジクレジル2,6−キシレニルホスフェート、大八化学工業(株)製のCR−733S、CR−741、CR−747、PX−200等が挙げられる。ホスファゼン化合物の具体例としては、大塚化学(株)製のSPH−100、SPB−100等が挙げられる。これらのリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
変性ポリイミド組成物において、リン化合物の含有率は、2〜10重量%が最も好ましい。リン化合物が2重量%未満では、難燃性の効果が得られず、10重量%を超えると、ブリードアウトにより硬化膜の外観を損なう場合がある。
【0064】
また、スクリーン印刷等の塗工にパターン精度を向上させるためにダレ防止剤として有機及び/又は無機の微粒子を添加することができる。本発明で使用する代表的な無機フィラーとしてはシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、ジルコニア(ZrO2)、窒化珪素(Si3N4)、チタン酸バリウム(BaO・TiO2)、炭酸バリウム(BaCO3)、チタン酸鉛(PbO・TiO2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga2O3)、スピネル(MgO・Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3/5SiO2)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、チタン酸アルミニウム(TiO2−Al2O3)、イットリア含有ジルコニア(Y2O3−ZrO2)、珪酸バリウム(BaO・8SiO2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)。有機ベントナイト、カーボン(C)などを使用することができ、これらの1種又は2種以上を使用することもできる。
【0065】
本発明における変性ポリイミド組成物に添加する無機微粒子としては、平均粒子径0.01〜0.03μmの無定形シリカ及び/又は粒径0.1〜5.0μmの球状シリカ又はアルミナ又はチタニアを挙げることができる。また、保存安定性などを高める目的でトリメチルシリル化剤などにより表面処理された無機フィラーを使用することがより好ましい。また、有機フィラーとしてはポリアミド樹脂粒子、ポリイミド樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子等を挙げることができる。これらフィラー添加量はポリイミド樹脂100重量部に対して1〜25重量部とすることが好ましい。1重量部未満では十分なダレ防止効果は得られず、25重量部を超えると密着性が低下する傾向がある。なお、変性ポリイミド樹脂への分散は、らいかい機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー、ディスパー、ホモジナイザー等の分散機で混練攪拌することができる、均一に分散、混合できる方法であれば特に制限されず、十分な分散が行われる方法であれば良い。本発明の変性ポリイミド 樹脂組成物において、回転型粘度計での粘度が25℃で15,000mPa・s〜70,000Pa・s、チクソトロピー係数が1.1以上であるのが好ましい。粘度が15,000mPa・s未満であると、印刷後のインクの流れ出しが大きくなるとともに膜厚が薄膜化する傾向がある。粘度が70,000mPa・sを超えるとインクの基材への転写性が低下するとともに印刷中の版離れが悪い傾向がある。またチクソトロピー係数が1.1未満であると、インクの糸引きが増加するとともに印刷後のペーストの流れ出しが大きくなり、膜厚も薄膜化する傾向がある。
【0066】
ここで、インクの粘度測定はThermo Haake社製レオメーターRS300を使用した。プレート(固定部分)を25±0.1℃に調整後、試料量1.0〜2.0gを載せる。コーン(可動部分)を所定の位置まで移動させ、樹脂溶液がプレートとコーンに挟まれた状態で、温度が25±0.1℃になるまで保持する。コーンの回転を始め、30秒間でせん断速度が1(1/s)になるよう回転速度を徐々に上げ、その速度を保持、1分後の粘度を読み取る。さらに、せん断速度が1(1/s)から100(1/s)に1分間で到達するように回転速度を上げ、100(1/s)時での粘度を読み取る。ペーストのチクソトロピー係数(TI値)は、せん断速度が1(1/s)と100(1/s)のインクのみかけ粘度、η1とη10の比η1/η10として表される。
【0067】
また、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物には、必要に応じて、着色剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の添加剤を添加することができる。着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられる。消泡剤は、印刷、塗工時及び硬化時に生じる泡を消すために用いられ、アクリル系、シリコーン系等の界面活性剤が適宜用いられる。具体的には、BYK Chemi社のBYK−A501、ダウコーニング社のDC−1400、シリコーン系泡消剤として、日本ユニカー社のSAG−30、FZ−328、FZ−2191、FZ−5609等が挙げられる。レベリング剤は、印刷、塗工時に生じる皮膜表面の凹凸を失くすために用いられる。具体的には、約100ppm〜約2重量%の界面活性剤成分を含有させることが好ましく、アクリル系、シリコーン系等のレベリング剤により、発泡を抑えるとともに、塗膜を平滑にすることができる。好ましくは、イオン性不純物を含まない非イオン性のものである。適当な界面活性剤としては、例えば、3M社のFC−430、BYK Chemi社のBYK−051、日本ユニカー社のY-5187、A−1310、SS−2801〜2805が挙げられる。密着性付与剤としては、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、トリアゾール系化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0068】
本発明の組成物としては、(A)ポリイミド100重量部に対して、(B)2種以上の混合溶媒1〜1000重量部、(C)非ハロゲン難燃剤5〜20重量部、(D)有機及び/又は無機の微粒子を5〜20重量部、(E)着色剤、消泡剤、レベリング剤及び/又は密着性付与剤を0.1〜3.0重量部含有するものが好ましい。また、粘度が15000〜70000mPa・s(25℃)であるものが取扱い性の点から好ましい。ここで、(B)2種以上の混合溶媒としては、上記した好ましい非含窒素溶媒の2種以上の混合物を好ましく用いることができる。
【0069】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、上記の合成実施例に代表されるように製造した樹脂に、各成分を常法で混合することによって製造することができる。混合の方法には特に制限はなく、一部の成分を混合してから残りの成分を混合してもよく、またすべての成分を一括で混合してもよい。具体的には、上記の各成分を混合した後、ニーダー、3本ロール、ビーズミル、プラネタリーミキサーなどの公知の混練方法を用いて製造される。
【0070】
本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、基板上などに適当な厚みでスクリーン印刷法にて塗布した後、加熱して溶媒を除去し、乾燥膜を得ることができる。乾燥加熱は、好ましくは100〜140℃の温度範囲で30〜60分行うことができる。該乾燥膜は、硬化させることにより、優れた可撓性を有し、さらに耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、配線基板に対する密着性などの性能を満足する硬化膜を形成することができる。硬化は、乾燥膜を好ましくは160〜200℃の温度範囲で30〜60分加熱することにより行うことができる。そして、この硬化膜は特に可撓性、電気絶縁性に優れるので、片面FPC基板又は両面FPCのような薄い配線基板に使用した場合でもカールが生じず、電気的性能や取り扱い性にも優れた可撓性の良好な絶縁保護被膜を形成することができる。また、本発明の組成物は多層プリント配線基板の層間絶縁樹脂層としても好適に使用できる。
【0071】
絶縁保護被膜は、回路が形成された基板上に変性ポリイミド樹脂組成物を10〜50μmの厚みで塗布した後、100〜140℃の温度範囲で30〜60分乾燥させ、次いで160〜200℃の温度範囲で30〜60分加熱することにより形成することができる。本発明の変性ポリイミド樹脂組成物は、様々な用途に使用できるが、特に、熱特性、基板との密着性、絶縁性、耐熱性、そり性、可撓性等の諸特性が要求されるプリント配線基板の絶縁保護被膜及び多層プリント配線基板の層間絶縁樹脂層としての使用に適している。また、本発明の変性ポリイミド樹脂組成物の乾燥膜は、特に厳しい耐久性が要求される電子部品用途に最適である。
【0072】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、ポリカーボネートジオール、ジイソシアネート化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジアミンの組み合わせにより種々の特性を持ったポリイミドが得られることから、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0073】
合成実施例1
ステンレス製の碇型攪拌器を取り付けた2リットルのセパラブル3つ口フラスコに、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。デュラノールT5651(旭化成ケミカルズ(株)製ポリカーボネートジオール)[分子量986(水酸基価から算出)]98.60g(100ミリモル)、デュラネートD201(旭化成ケミカルズ(株)製ジイソシアネート)[分子量532(イソシアネートの重量%から算出)]106.40g(200ミリモル)、γ−ブチロラクトン(γBL)186gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)62.04g(200ミリモル)、γBL186gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却し3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.42g(100ミリモル)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10.01g(50ミリモル)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン43.85g(150ミリモル)、ブチルカルビトールアセテート248g、トルエン70g、γ−バレロラクトン3.2g(32ミリモル)、ピリジン5.0g(64ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら3時間反応させた。還流物を系外に除くことにより35%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0074】
合成実施例2
合成実施例1と同様の装置を用いた。デュラノールT5651(商品名) 133.11g(135ミリモル)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)45.41g(270ミリモル)、γBL155gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ODPA55.84g(180ミリモル)、γBL155gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却しBPDA39.72g(135ミリモル)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)77.85g(180ミリモル)、γBL310g、トルエン70g、γ−バレロラクトン3.2g(32ミリモル)、ピリジン5.0g(64ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら3時間反応させた。還流物を系外に除くことにより35%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0075】
合成実施例3
合成実施例1と同様の装置を用いた。デュラノールT5651(商品名) 157.76g(160ミリモル)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)67.26g(320ミリモル)、γBL177gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ODPA62.04g(200ミリモル)、γBL176gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却しBPDA5.88g(20ミリモル)、BAPS25.95g(60ミリモル)、γBL353g、トルエン70g、γ−バレロラクトン2.2g(22ミリモル)、ピリジン3.5g(44ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら3.5時間反応させた。還流物を系外に除くことにより30%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0076】
合成比較例1
合成実施例1と同様の装置を用いた。デュラノールT5651(商品名) 147.90g(150ミリモル)、HDI50.46g(300ミリモル)、γBL210gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ODPA62.04g(200ミリモル)、γBL210gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却しBPDA14.71g(50ミリモル)、2,4−ジアミノトルエン12.22g(100ミリモル)、γBL210g、トルエン70g、γ−バレロラクトン2.5g(25ミリモル)、ピリジン4.0g(50ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。還流物を系外に除き、反応終了後さらにγBL210gを加え、20%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0077】
合成比較例2
合成実施例1と同様の装置を用いた。デュラノールT5651(商品名) 49.30g(50ミリモル)、HDI16.82g(100ミリモル)、γBL147gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、BPDA29.42g(100ミリモル)、γBL147gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら1.5時間反応させた。さらに、室温に冷却しODPA62.04g(200ミリモル)、BAPS108.12g(250ミリモル)、γBL294g、トルエン70g、γ−バレロラクトン3.0g(30ミリモル)、ピリジン4.8g(60ミリモル)を加え、170℃、200rpmで攪拌しながら2時間反応させた。還流物を系外に除くことにより30%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0078】
合成比較例3
合成実施例1と同様の装置を用いた。デュラノールT5651(商品名) 118.32g(120ミリモル)、HDI40.37g(240ミリモル)、γBL185gを仕込んだ。室温、窒素雰囲気下、200rpmで15分攪拌した後、140℃に昇温して1時間攪拌した。ついで、ODPA111.68g(360ミリモル)、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート60.06g(240ミリモル)、γBL370gを加え、170℃、200rpmで攪拌しながら6時間反応させた。35%濃度のポリイミド溶液を得た。
【0079】
上記合成実施例1〜3及び合成比較例1〜3で製造された変性ポリイミドの構造式を以下に示す。なお、各構造式中のRは、各例で用いたジイソシアネート由来の基である。また、m、n、p、qの数値は次の通りである。ただし、下記の数値は理論的な平均値であり、実際には、ある程度の範囲のものが分布して存在している。
合成実施例1:m=11、n=1、p=1、q=1
合成実施例2:m=11、n=1、p=3、q=3
合成実施例3:m=11、n=1、p=4、q=1
合成比較例1:m=11、n=1、p=3、q=1
合成比較例2:m=11、n=1、p=1、q=4
合成比較例3:m=11、n=1、p=1、q=1
なお、合成比較例1及び2は、柔軟構造の重量比が本発明で規定する範囲外のものであり、合成比較例3は、一般式(I)中のAの構造が、本発明の変性ポリイミドの範囲外のものである。
【0080】
【化14】

【0081】
さらに、合成実施例1で得られた変性ポリイミドのIRの結果を図1に示す。図1中のT−5651は、上記したポリカーボネートジオールのデュラノールT−5651(商品名)についての結果を示しており、ポリカーボネート構造が導入されていることが分かる。
【0082】
上記の合成実施例、合成比較例で得られたポリカーボネート構造を有する変性ポリイミド樹脂組成物から得た試験体を用いて、以下の項目につき測定し、その結果を下記表1に示す。
【0083】
(a)分子量:変性ポリイミド樹脂の数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーGPC(東ソー社製、HLC−8220GPC)により測定した。カラムは東ソー社製TSKgel GMHHR−Hを使用し、キャリア溶媒としては、DMFにLiBrを0.1Nの濃度で溶解したものを使用した。分子量は、標準ポリスチレン(TSK標準ポリスチレン)を用いて計算した換算値である。
【0084】
(b)熱特性:変性ポリイミド樹脂の熱分解開始温度は、デュポン951熱重量測定装置で測定した。
【0085】
(c)機械特性:変性ポリイミド樹脂等の機械物性は、古河サーキットフォイル(株)製の銅箔F2−WS(18μm)上に、乾燥後に厚さ15±2μmのフィルムなるようにスクリーン印刷にて塗布、その薄膜を、120℃で60分、次いで180℃で30分間、乾燥および熱処理し、銅箔をエッチングして取り除くことにより作製した。その変性ポリイミド樹脂フィルムについて、万能型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン UTM−11−20)で、破断強度、伸び率、初期弾性率を測定した。
【0086】
(d)そり性:そり試験は、厚さ25μmの芳香族ポリイミドフィルム(DUPONT社製、EN−25)上に、乾燥後に厚さ15±2μmになるように塗布し、120℃で60分、次いで180℃で30分乾燥させることにより作製した。そりは、正方形の4つの角の底面からの高さを測定し平均して求めた。そり量は1mm以下を◎、10mm以下を○、10mm以上で測定できる場合を△、測定不能な程そっている場合は×とした。
【0087】
(e)耐薬品性:耐薬品性を評価するためのサンプルは、銅箔をエッチングさせない以外は機械物性測定用サンプルと同様に作製したものを使用した。調べた薬品は、1規定の水酸化ナトリウム水溶液及び有機溶剤のメチルエチルケトンである。膜表面に光沢があり、膜厚の減少が無いものを◎、膜厚の減少が0.1μm以下を○、膜厚の減少が0.2〜0.9μmのものは△、光沢が無くなる、もしくは膜厚の減少が1.0μm以上のものは×とした。
【0088】
【表1】

【0089】
実施例1〜5及び比較例1〜3
以下の表2に示す配合割合の主剤、各添加剤成分をプライミックス(株)製プラネタリーミキサーで混練りすることにより難燃性変性ポリイミド樹脂組成物を調製した。得られた各難燃性変性ポリイミド樹脂組成物について、以下の項目につき評価を実施し、その結果を表2に示す。
【0090】
屈曲性
各難燃性変性ポリイミド組成物を165−3Dメッシュのステンレス製版でスクリーン印刷により基板に塗布し、熱風オーブンにて120℃60分間、180℃30分間加熱を行なった。基板は古河サーキットフォイル(株)製の銅箔F2−WS(18μm)を用いた。得られたポリイミドフィルムを、塗布面を外側に180°に折り曲げて乾燥膜の割れの有無を目視により判定した。判定基準を以下に示す。
○:乾燥膜の割れなし。
×:乾燥膜が割れ、もしくは亀裂が生じる。
【0091】
ハンダ耐熱
JIS・C−6481の試験法に準じて、各難燃性変性ポリイミド組成物を165−3Dメッシュのステンレス製版でスクリーン印刷により基板に塗布し、熱風オーブンにて120℃60分間、180℃30分間加熱を行った。基板は銅箔(厚さ18μm)片面積層ポリイミドフィルム(厚さ31μm)からなるプリント基板〔(登録商標)ESPANEX、新日鐵化学(株)製〕MC18−25−00FRMを使用した。得られた試験片にロジン系フラックスを塗布し、260℃のハンダ浴に5秒間フロートさせることを1サイクルとして、サイクル毎に乾燥膜を目視観察し、"フクレ"、"剥れ"及び"ハンダもぐりこみ"がなく、全く変化が認められないことを確認しながら繰り返したときの最大サイクル回数で表した。
【0092】
燃焼性
燃焼性試験片は、以下の方法で作製した。厚み25μm、200mm×50mmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製,カプトン100EN)の両面に、厚みが20μmの難燃性変性ポリイミド組成物の乾燥膜を設けて試験片とした。燃焼特性は米国のUnderwriters Laboratories Inc.(ULと略す)の高分子材料の難燃性試験規格94UL−VTM試験に準拠した方法で難燃性を評価した。
【0093】
なお、表1中の「VTM」及び「NOT」は、以下の基準による。
VTM−0:下記の要求事項をすべて満足する。
(1)全ての試験片が、各回接炎中止後10秒を越えて有炎燃焼しない事。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が50秒を超えない事。
(3)有炎又は赤熱燃焼が125mmの標線まで達しない事。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しない事。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計が30秒を超えない事。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき又は有炎時間の合計が51秒から55秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが前記(1)から(5)を満足する事。
【0094】
VTM−1:下記の要求事項をすべて満足する。
(1)全ての試験片が、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない事。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えない事。
(3)有炎又は赤熱燃焼が125mmの標線まで達しない事。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火しない事。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計が60秒を超えない事。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき又は有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが前記(1)から(5)を満足する事。
【0095】
VTM−2:下記の要求事項をすべて満足する。
(1)全ての試験片が、各回接炎中止後30秒を越えて有炎燃焼しない事。
(2)各組5個の試験片に合計10回の接炎を行ない、有炎燃焼時間の合計が250秒を超えない事。
(3)有炎又は赤熱燃焼が125mmの標線まで達しない事。
(4)有炎滴下物により、脱脂綿が着火してもよい。
(5)第2回目の接炎中止後、各試料の有炎と赤熱燃焼の合計は60秒を超えない事。
(6)1組5個の試験片のうち1個のみが要求事項に適しないとき又は有炎時間の合計が251秒から255秒の範囲にあるときは、更に5個の試験片を試験し、すべてが前記(1)から(5)を満足する事。
【0096】
NOT:以上のクラス、いずれにも合格しない。
【0097】
HHBT耐性
市販の基板(IPC規格)のIPC−C(櫛型パターン)上に、各難燃性変性ポリイミド組成物を165−3Dメッシュのステンレス製版でスクリーン印刷により基板に塗布し、熱風オーブンにて120℃60分間、180℃30分間加熱を行った。その試験片を85℃、相対湿度85%の雰囲気下において、直流電流100Vを印加した。1000時間後の層内絶縁抵抗値を測定してHHBT耐性を評価した。絶縁抵抗値の測定は、100V直流電圧を加え1分間保った後、その電圧印加状態で電気絶縁計にて行なった。判定基準を以下に示す。
○:絶縁抵抗が108Ω以上のもの。
×:絶縁抵抗が108Ω未満のもの。
【0098】
【表2】

【0099】
印刷性・連続印刷性の評価
印刷は、テスト用印刷スクリーン版(200−3Dメッシュのステンレス製、乳剤厚10μm、枠サイズ550mm×650mm)とLS−25GXスクリーン印刷機(ニューロング社製)を用いて行なった。条件は、スキージ速度30〜80mm/秒、ギャップ(クリアランス)1.5mm〜3.0mm、スキージ角度70°、スキージ押し込み量0.3mmに設定し印刷を行った。評価項目について特性を評価した。ポリイミド保護膜パターン形状については、フレキシブル回路配線板で、回路配線上の印刷性と抜き開口パターンでの印刷性を調査した。具体的には銅配配線パターンがライン/スペース:30μm/30μm、50μm/50μm、100μm/100μm、200μm/200μmの配線基板上にインクを全面印刷し、室温で5〜10分間レベリングを行ない、熱風オーブンにて120℃60分間、180℃30分間加熱して有機溶剤成分を乾燥後にスペース間にインクが埋まっているかを調査した。また抜き開口パターンの印刷性として、パターン形状が丸いもの(直径100μmと200μm)と、正方形のもの(一辺の長さ100μm、200μm)を用意し、250μmピッチで、10行10列に配置したパターンで調査した。なお、印刷は100ショット連続印刷し、印刷開始から10ショット目、それ以降については10ショット毎に100ショットまでパターンサンプルを抜き取り、上記と同様な条件にてレベリング、乾燥した後、前記と同じパターンの形状を目視及び光学顕微鏡で観察した。評価は、回路配線上への埋め込み性不良、パターンの「ニジミまたはタレ不良(パターン幅方向にペーストが広がり、隣のパターンと接続したブリッジ状態の不良)」、「ボイドまたはカケ」、及び「ローリング性(スキージの移動時にペーストがスクリーン上でスキージの進行方向側の前面で、ほぼ円柱状態で回転流動する時の回転状態の不良)」について行なった。その結果を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
金めっき処理
一般的な電解金めっき及び無電解金めっき処理により行なった。すなわち、以下に示す工程順序で行なった。具体的には、サンプルを各工程の槽に順次浸漬した後、乾燥した。
電解金めっき処理工程
脱脂処理(酸性又はアルカリ脱脂)、水洗、酸処理、水洗、ソフトエッチング、水洗、プリディップ処理(酸処理)、水洗、電解ニッケル(ワット浴)めっき、水洗、電解金(シアン化金カリウム)めっき、水洗、乾燥
無電解金めっき処理工程
脱脂処理(酸性又はアルカリ性脱脂)、水洗、酸処理、水洗、ソフトエッチング、水洗、プリディップ処理(酸処理)、塩化パラジウム触媒化、水洗、無電解ニッケルめっき処理工程 (硝酸ニッケル)、水洗、無電解金(シアン化金カリウム)めっき、水洗、乾燥
【0102】
積層体の評価
フレキシブルなプリント配線板の基材としてエスパネックスM(新日鐵化学(株)製)(絶縁層の厚さ25μm、導体層は銅箔F2−WS(18μm))を使用し、ライン/スペース:30/30μm、50/50μm、100/100μm、200/200μmの櫛形配線板を作製した。この配線基板上の一部に難燃性変性ポリイミド組成物を印刷し、印刷しなかった部分に電解ニッケル−金メッキ又は無電解ニッケル−金メッキを行なうことで、それぞれニッケルの厚さ約3〜5μm、金の厚さ約0.03〜0.07μmを施した。インクを印刷した部分へのメッキの潜り込みはマイクロ蛍光X線分析又は断面観察にて確認した。その結果を表4に示す。
【0103】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、ポリカーボネートを含んだ変性ポリイミドの製造方法及び該方法により、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性、保存安定性の優れた変性ポリイミド及び該変性ポリイミドを含むポリイミド樹脂組成物が提供される。本発明の樹脂組成物から形成される樹脂フィルムは、電気的特性、密着性が優れ、更に耐熱性、柔軟性、屈曲性、低そり性、耐薬品性に優れた被膜として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基又はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合若しくはアミド結合で連結された炭素数1〜18のアルキレン基を示し、m、nは、1〜20の整数を示す)
で表されるイソシアネート末端オリゴマーと、一般式(II)
【化2】

(式中、Yは4価の芳香族基を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより一般式(III)
【化3】

(式中、Rは、上記一般式(I)におけるRと同義、Xは上記一般式(I)におけるXと同義、Yは、上記一般式(II)におけるYと同義、m及びnは、上記一般式(I)におけるm及びnと同義、pは、1〜20の整数を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを合成する第1工程と、
得られたテトラカルボン酸二無水物オリゴマーを、一般式(IV)
NH2-A-NH2 (IV)
(式中、Aは、2価の芳香族基を示す)
で表される芳香族ジアミンと、一般式(II')
【化4】

(式中、Y'は4価の芳香族基を示す)
で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させて一般式(V)
【化5】

(式中、Rは、上記一般式(I)におけるRと同義、Xは上記一般式(I)におけるXと同義、Yは、上記一般式(II)におけるYと同義、m及びnは、上記一般式(I)におけるm及びnと同義、pは上記一般式(III)におけるpと同義、Aは上記一般式(IV)におけるAと同義、Y'は上記一般式(II')におけるY'と同義、qは1〜20の整数を示す)
で表される、ポリカーボネート構造と芳香族ポリイミド構造を有する変性ポリイミドを合成する第2工程とを含み、上記一般式(V)で表される変性ポリイミドに対する上記一般式(V)中の繰返し単位数が上記nで表される繰返し単位の重量比(ただし、Xが芳香族である場合にはXの重量を除く)が0.3〜0.7である、変性ポリイミドの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程が、非含窒素系溶媒中で行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記変性ポリイミドの数平均分子量が6000〜60000である請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記一般式(IV)及び一般式(V)中のAが、
【化6】

(これらの式中、E1、E2及びE3は、互いに独立して直結、-O-、-SO2-、-S-又は-C(CH3)2-を示す)
で表される構造を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
一般式(V)
【化7】

(式中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Xは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基又はエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合若しくはアミド結合で連結された炭素数1〜18のアルキレン基を示し、Aは、
【化8】

(これらの式中、E1、E2及びE3は、互いに独立して直結、-O-、-SO2-、-S-又は-C(CH3)2-を示す)
で表される2価の芳香族基を示し、Y及びY'は、互いに独立して4価の芳香族基を示し、m、n、p、qは、互いに独立して1〜20の整数を示す)
で表される構造を有し、上記一般式(V)で表される変性ポリイミドに対する上記一般式(V)中の繰返し単位数が上記nで表される繰返し単位の重量比(ただし、Xが芳香族である場合にはXの重量を除く)が0.3〜0.7である変性ポリイミド。
【請求項6】
数平均分子量が6000〜60000である請求項5記載の変性ポリイミド。
【請求項7】
請求項5又は6記載の変性ポリイミドを有機溶媒中に含む変性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機溶媒が非含窒素系溶媒である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
前記変性ポリイミド樹脂の含有量が10〜50重量%である請求項7又は8記載の組成物。
【請求項10】
前記変性ポリイミド樹脂100重量部に対して非ハロゲン系難燃剤1〜20重量部を含む請求項7〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
(A)ポリイミド100重量部に対して、(B)2種以上の混合溶媒1〜1000重量部、(C)非ハロゲン難燃剤5〜20重量部、(D)有機及び/又は無機の微粒子を5〜20重量部、(E)着色剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤を0.1〜3.0重量部含有する請求項7〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
粘度が15000〜70000mPa・s(25℃)である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の変性ポリイミド樹脂組成物を成膜し、得られた膜を加熱して前記溶媒を除去することにより得られた樹脂フィルム。
【請求項14】
請求項13記載の樹脂フィルムの硬化物から成る樹脂フィルム。
【請求項15】
請求項13又は14記載の樹脂フィルムで一部又は全面が被覆されたプリント配線板。
【請求項16】
請求項13又は14記載の樹脂フィルムを含む電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−260906(P2010−260906A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110914(P2009−110914)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】