説明

変性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂の製造方法、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、光硬化性・熱硬化性層、インキ、接着剤、及び、プリント回路基板

【課題】潜在熱硬化性、長期間の保存安定性、難燃性、接着性優れ、かつ側鎖にエチレン系不飽和二重結合をもつことにより光硬化性に優れ、さらに連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含むことにより、硬化収縮を緩和し反ることなく、耐折性に優れた塗膜を得ることができる変性ポリエステル樹脂、これらを用いた光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)及び燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)が、酸二無水物(C)とエステル結合してポリエステル骨格を形成し、酸二無水物(C)に基づく残存カルボキシル基の一部と残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および脂肪族骨格を含み、(E)の官能基が反応し化学結合した変性ポリエステル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖中にオキセタン環と、燐原子、酸二無水物に基づくカルボキシル基を有するポリエステル樹脂であって、ポリエステル樹脂のカルボキシル基と反応する官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含む化合物を反応させて得られる変性ポリエステル樹脂及びその製造方法、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、光硬化性・熱硬化性層、インキ、接着剤、及び、プリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フィルム状の接着剤が様々な分野で使用され、特にプリント配線板の接着用途に使用されている。その中でも、フレキシブルプリント配線板(FPC)のカバーフィルム用接着剤や、FPCと硬質基板との接着、FPC同士の接着に用いられるボンディングシートやフラットケーブル用接着剤等の需要が拡大している。
【0003】
例えば、最近フラットケーブルは、自動車用部品や家電製品の配線部品の軽量化や、コストダウンの観点から、多用されている。このフラットケーブル用の接着剤には、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、塩化ビニル、ポリイミドなどのプラスチックフィルム層、接着剤、銅等の金属箔の三層の構成からなることが多い。すなわち、接着剤には、プラスチックフィルムと金属箔の両方に対して、接着性を示すことが求められ、耐久性も要求される。
【0004】
また、長時間、折り曲げて使用される場合や、褶曲部分に用いられる場合に、かなりの高度な耐屈曲性などの機械的特性が必要となる。
【0005】
しかし、従来から提案されてきた接着剤では、このような高度化する要求を満足することまではできていない。
【0006】
また、OA機器や家電製品等においては、部品の誤作動による異常加熱で、万一高分子材料(樹脂材料)に着火し、火災の原因となる恐れがあるため、高分子材料自体に自己消火性(不燃性・難燃性)が要求されている。このような状況の中、より高度な難燃性を付与するため、成形材料の難燃化だけではなく、そこに使用される接着剤やインキ等についても、難燃化を実現する必要がある。
【0007】
これまでの難燃化を実現するため、接着剤においては、樹脂骨格中に、ハロゲン原子を導入する方法や、樹脂と共にハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモン等を併用する方法などが用いられてきた。
【0008】
しかし、ハロゲン原子やハロゲン原子を含む難燃剤は、焼却時にダイオキシンの発生の懸念などから、使用を制限する動きが強まり、特に欧州では製品にハロゲンなどを使用していないことを示すエコラベル添付などの動きが見受けられる。
【0009】
一般的に、ノンハロゲン(ハロゲンフリー)で、低有害化、低発煙化、難燃化を実現する技術としては、燐酸エステル等の燐系難燃剤を添加する方法が挙げられるが、高度の難燃性を発現するためには、これらの難燃剤を多量に添加する必要があり、実用的ではなく、また、多量に添加した場合、接着性や機械的特性、耐熱性などの特性が低下する恐れがあり、また、難燃剤自体がブリードアウトして接着性が経時的に低下するなどの問題が生じることもある。
【0010】
一般に、FPCやプリント配線板においては、回路の保護や実装時の半田付着防止などのため、液状あるいはフィルム状のソルダーレジスト剤が使用されている。前記ソルダーレジスト剤としては、フォトリソ法により、パターンを形成する現像型フィルムタイプが、高精度を得られることから、需要が拡大している。これらのソルダーレジスト剤には、溶剤揮発時の加熱や、保存期間中に反応が進行せず、接着時には、必要な流動性を示し、光や熱により急速に硬化が進行する接着剤が求められている。
【0011】
特に一定温度以上で、熱可塑性から熱硬化性に劇的に変化するような、潜在熱硬化性接着剤が、エポキシ樹脂を用いて、実用化されている。
【0012】
しかし、エポキシ樹脂を主成分とする場合、得られた硬化物は、可とう性に劣り、低温保存や、低温流通が必要であり、高温長時間の硬化処理を必要とする場合など、実用上の問題を抱えている。
【0013】
また、近年、オキセタン化合物の光硬化性及び熱硬化性材料の使用が検討されている(非特許文献1、特許文献1〜3)。これらには、4員環環状エーテルであるオキセタンは、100℃程度では反応せず、150℃を超える場合に、反応が開始することが記載されている。
【0014】
しかし、これらに記載されているのは、オキセタン化合物を硬化剤として使用するものであり、配合比率による性能の依存性が大きいため、正確な配合が要求される。
【0015】
また、オキセタン化合物のような低分子化合物を使用するため、接着時の加熱により、オキセタン化合物自体が滲み出し、被着体を汚染する場合があり、また、接着剤と被着体の界面に溜まり、接着力の低下を招く問題が生じている。
【0016】
更に、オキセタン化合物は難燃性を低下させる原因にもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2004−168921号公報
【特許文献2】WO01/073510号公報
【特許文献3】特開2005−307101号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】ネットワークポリマー、vol.27、38(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明は、主鎖中にオキセタン環と燐原子と酸二無水物に基づくカルボキシル基を有し、潜在熱硬化性、長期間の保存安定性、難燃性、接着性、及び、接着時に要求される流動性に優れ、かつ側鎖にエチレン系不飽和二重結合をもつことにより光硬化性に優れ、さらに連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含むことにより、硬化収縮を緩和し反ることなく、耐折性に優れた塗膜を得ることができる変性ポリエステル樹脂、これらを用いた光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。更には、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、インキや接着剤、またこれらを用いた自動車部品や、電化製品等に使用されるプリント回路基板等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す変性ポリエステル樹脂等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
(1)
オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)及び燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)が、酸二無水物(C)とエステル結合してポリエステル骨格を形成し、酸二無水物(C)に基づく残存カルボキシル基の一部と残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)の官能基が反応し化学結合した変性ポリエステル樹脂であって、前記オリゴマー(A)の数平均分子量が600〜4000であり、前記オリゴマー(B)の数平均分子量が4000以下であり、酸二無水物(C)と 前記オリゴマー(A)と前記オリゴマー(B)のモル比 C/(A+B)が65/100〜98/100または102/100〜135/100であり、変性ポリエステル樹脂に含まれる不飽和二重結合が400〜3000当量/10gであり、変性ポリエステル樹脂の前記化合物(E)由来の連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格が50〜2000当量/10gであり、変性ポリエステル樹脂の数平均分子量が1000〜10000であり、変性ポリエステル樹脂中に燐原子を0.5〜7重量%含有することを特徴とする変性ポリエステル樹脂。
【0022】
(2)
オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)が、オキセタン環含有ジオール化合物中のヒドロキシル基と、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基を反応させて得られるものであることを特徴とする(1)に記載の変性ポリエステル樹脂。
【0023】
(3)
変性ポリエステル樹脂の酸価が350〜2000当量/10gであることを特徴とする(1)または(2)に記載の変性ポリエステル樹脂。
【0024】
(4)
残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)の残存カルボキシル基と反応可能な官能基が、グリシジル基及び/またはヒドロキシル基であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の変性ポリエステル樹脂。
【0025】
(5)
残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)の残存カルボキシル基と反応可能な官能基がグリシジル基であって、当該グリシジル基と酸二無水物(C)に基づく残存カルボキシル基との反応で生成する水酸基と酸無水物(G)とが反応し結合していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の変性ポリエステル樹脂。
【0026】
(6)
オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)、燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)のヒドロキシル基と、酸二無水物(C)を反応させポリエステル樹脂を製造し、さらにポリエステル樹脂中の残存カルボキシル基と、残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)とを反応させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の変性ポリエステル樹脂の製造方法。
【0027】
(7)
前記変性ポリエステル樹脂中に含まれる水酸基と酸無水物(G)とを反応させることを特徴とする(6)に記載の変性ポリエステル樹脂の製造方法。
【0028】
(8)
(1)〜(5)のいずれか記載の変性ポリエステル樹脂、または、(6)もしくは(7)に記載の製造方法により得られる変性ポリエステル樹脂、及び、(メタ)アクリル系モノマーを含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【0029】
(9)
さらに難燃剤を含有することを特徴とする(8)に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【0030】
(10)
(8)または(9)に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を反応させて得られることを特徴とする光硬化性・熱硬化性層。
【0031】
(11)
(8)または(9)に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることを特徴とするインキ。
【0032】
(12)
(8)または(9)に記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることを特徴とする接着剤。
【0033】
(13)
回路基板表面に、(10)に記載の光硬化性・熱硬化性層を有することを特徴とするプリント回路基板。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、主鎖中にオキセタン環と燐原子と酸二無水物に基づくカルボキシル基を有し、潜在熱硬化性、長期間の保存安定性、難燃性、接着性、及び、接着時に要求される流動性に優れ、かつ側鎖にエチレン系不飽和二重結合をもつことにより光硬化性に優れ、さらに連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を持つことにより、硬化収縮を緩和し反ることなく、耐折性に優れた塗膜を達成できる変性ポリエステル樹脂を得ることができる。また、これらを用いた光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、難燃性、アルカリ現像性、感度、半田耐熱性、屈曲性等に優れたインキや接着剤等を得ることができ、更に、これらを用いた自動車部品や、電化製品等に使用されるプリント回路基板等を得ることができ、有効である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0036】
<変性ポリエステル樹脂>
本発明の変性ポリエステル樹脂は、オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)からなるセグメントと、燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)からなるセグメントと、酸二無水物(C)に基づく残存カルボキシル基含有セグメントを含むポリエステル主鎖骨格に、(メタ)アクリル系モノマー(D)及び、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含みかつ不飽和結合を持たない化合物(E)が側鎖として変性されたものであり、主鎖骨格中のカルボキシル基の一部と、前記(メタ)アクリル系モノマー(D)、前記化合物(E)中に含まれるカルボキシル基と反応可能な官能基とが反応して化学結合している。
【0037】
前記変性ポリエステル樹脂の主鎖中にオキセタン環を有することにより、この樹脂を用いた光硬化性・熱硬化性樹脂に、潜在熱硬化性を付与することができる。燐原子を主鎖中に含有することにより、経時変化や環境変化で劣化することのない、安定した難燃性を付与することができる。ポリエステル樹脂の主鎖中にカルボキシル基が残存することにより、アルカリ可溶性(フォトレジスト製造工程におけるアルカリ現像性)を実現することができる。また、側鎖中に(メタ)アクリル系モノマー由来の二重結合を有することにより、光硬化性を付与することができる。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル基またはメタクリル基のいずれかであることを意味する。さらに、側鎖にソフトセグメントとして連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含むことにより、耐屈曲性と低そり性を付与することができる。主鎖中にソフトセグメントを導入することも、耐屈曲性と低そり性を付与するには有効であるが、半田耐熱性等の高度耐熱性が要求される性能が不十分であったり、無電解金メッキ処理などの、高温の水性処理で密着性が減じ、メッキ浸み込みを起こすことがあるのに対して、ソフトセグメントを側鎖に配し、主鎖骨格で耐熱性を担保すれば、かかる不具合を解消できる。
【0038】
本発明のオキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)の数平均分子量は、600〜4000であり好ましくは800〜3000であり、より好ましくは900〜2500である。600未満であると、可とう性に劣り、折り曲げた場合に、クラックが発生し問題となり、一方、4000を越えるとアルカリ現像液への溶解性が不充分となり、現像が不可能となり、好ましくない。
【0039】
本発明の燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)の数平均分子量は4000以下である。好ましくは3000以下であり、より好ましくは2500以下である。好ましくは300以上であり、より好ましくは350以上、さらにより好ましくは400以上である。4000を越えるとアルカリ現像液への溶解性が不充分となり、現像が不可能となり、300未満だと、可とう性に劣り、折り曲げた場合に、クラックが発生したり、加水分解を受けやすくなり、塗膜の耐久性が低くなる。
【0040】
本発明の変性ポリエステル樹脂において、前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)が、オキセタン環含有ジオール化合物中のヒドロキシル基と、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基を反応させて得られるものであることが好ましい。前記ヒドロキシル基と前記イソシアネート基が反応することにより、ウレタン結合を生成する。前記ウレタン結合が複数個含まれる前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)は、オキセタン環を有するため、潜在熱硬化性を有することができる。
【0041】
また、本発明のポリエステル樹脂の製造方法としては、オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)と、少なくとも2個以上のエステル結合と両末端にヒドロキシル基を有する燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールタイプのオリゴマー(B)中のヒドロキシル基と、酸二無水物(C)を反応させることが好ましい。前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)と、前記燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールタイプのオリゴマー(B)とが酸二無水物(C)を介して、反応することにより、両者の特性を組み込むことができ、有効である。
【0042】
前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)に使用されるオキセタン環含有ジオール化合物としては、オキセタン環を分子中に含有し、ヒドロキシル基を2個またはそれ以上有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン、ジ[1−ヒドロキシメチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等が挙げられ、中でも特に3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン(BHO)が、分子鎖中に、所望の割合で、比較的容易にオキセタン環を導入できるため、好ましい。
【0043】
前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)に使用されるジイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、クルード−MDI等、また商品名としてはコスモネートTシリーズ、コスモネートTMシリーズ、コスモネートMシリーズ(いずれも三井武田ケミカル社製)などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
前記オキセタン環含有ジオール化合物と、ジイソシアネート化合物とを反応させて、少なくともオキセタン環と、両末端にヒドロキシル基を有するオキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)を製造することができる。ジオール化合物中のヒドロキシル基と、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基が反応し、ウレタン結合を形成する。なお、両成分の配合量を当量比であらわすと、ヒドロキシル基/イソシアネート基=8/7〜2/1が好ましく、より好ましくは、5/4〜2/1である。前記範囲の8/7を超えると溶剤溶解性に難点がある傾向にある。また前記範囲の2/1未満になると、カルボキシル基と反応するオキセタン環量が不充分であり、熱硬化後の半田耐熱性が劣化し好ましくない傾向にある。本発明の変性ポリエステル樹脂(オキセタン環含有セグメントを分子中に含む)は、オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)を使用することにより、潜在熱硬化性を付与することができる。
【0045】
上記両末端にヒドロキシル基を有するオキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)は、公知の方法を使用することによって得ることができるが、例えば、撹拌器及び温度計を装備した反応缶中で溶剤の存在下60〜100℃の反応温度で、触媒の存在下あるいは無触媒で、2〜10時間の反応時間で製造することができる。この際に使用する溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が使用できる。
【0046】
前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)を製造する際には、上述したように触媒を用いても良い。触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、エチレンジアミンテトラアセテート、トリエチルアミン等を挙げられる。好ましくは、ジブチル錫ジラウレートなどのウレタン化触媒を使用することが、好適である。
【0047】
本発明の変性ポリエステル樹脂において使用する燐原子含有ジオール化合物及び燐原子含有ジオールオリゴマー(B)について説明する。燐原子含有ジオールオリゴマーは、ポリエステル系またはウレタン系が好ましく、燐原子含有ジオール化合物とジカルボン酸やジイソシアネートとを反応させることにより得ることができる。また、前記ジカルボン酸やジイソシアネートに燐原子を含むものを使用しても良い。
【0048】
前記燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)に使用する燐原子含有ジオール化合物としては、2−(9,10―ジヒドロー9―オキサー10―フォスファフェナントレン−10−オキシド)―フェニレン、2−(9,10―ジヒドロー9―オキサー10―フォスファフェナントレン−10−オキシド)―フェニレンのエチエンオキシド付加物、2−(9,10―ジヒドロー9―オキサー10―フォスファフェナントレン−10−オキシド)―フェニレンのプロピレンオキシド付加物等が上げられる。特に、2−(9,10―ジヒドロー9―オキサー10―フォスファフェナントレン−10−オキシド)―1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)フェニレンが反応性が高く好ましい。
【0049】
前記燐原子含有ジオールオリゴマー(B)に使用されるジオール化合物としては、燐原子を含むものとしては、前記の燐原子含有ジオール等をあげることができる。燐原子を含まないジオール化合物としては、ヒドロキシル基を両末端に有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,9−ノナンジオール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、トリシクロデカンジオ−ル、トリシクロデカンジメチロール、スピログリコ−ル、水添ビスフェノ−ルA、水添ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。また、3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6−ヘキサントリオールなども使用することができる。更にポリエーテルポリオールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなども使用できるが、本発明の効果を損なわない程度の重合度である必要がある。なお、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
前記燐原子含有ジオールオリゴマー(B)に使用されるジカルボン酸化合物としては、燐原子含有物としては、2−[(10―オキソー9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレンー10―イル)メチル]コハク酸等が使用できる。その他燐原子を含まないものとしては、カルボキシル基を2個有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4' −ビフェニルジカルボン酸、4,4' −ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4' −ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p' −ジカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
これらジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸も、本発明の特性を損なわない範囲内であれば使用することができ、たとえば、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3' ,4' −ビフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0052】
前記燐原子含有ジオールオリゴマー(B)に使用されるジイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート(2,6−TDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、クルード−MDI等、また商品名としてはコスモネートTシリーズ、コスモネートTMシリーズ、コスモネートMシリーズ(いずれも三井武田ケミカル社製)などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
前記燐原子含有ジオールオリゴマー(B)でポリエステル系のものは、ジオール化合物(または多価アルコール)とジカルボン酸化合物を反応させて、製造することができる。前記製造方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、ジオール化合物(また、本発明において特性を損なわない範囲内であれば、多価アルコールを使用することも可能)とジカルボン酸化合物を、モル比(ジオール化合物/ジカルボン酸)=2.2/1〜1.8/1であることが好ましく、より好ましくは、2/1〜1.9/1である。前記範囲が2.2/1を超えると、エステル化に過度の時間を要したり、不要なグリコール除去に多大なエネルギー消費することとなり、1.8/1未満になると、末端ヒドロキシル基以外にカルボキシル基が生成し、本発明の酸二無水物(C)とヒドロキシル基の反応に寄与しないエステル結合含有ジオールオリゴマーを生成することとなり好ましくない。前記範囲に調整したものをオートクレーブに仕込み、180〜240℃でエステル化反応させた後、230〜270℃で触媒の存在下で系を徐々に真空にし、ジオール化合物を系外に留去することで重合反応させ、目的の数平均分子量を有するポリエステル系の燐原子含有ジオールオリゴマー(B)を得ることができる。
【0054】
前記燐原子含有ジオールオリゴマー(B)を重合する際に、重合触媒として、例えば、無機化合物としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、スズ化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物などが挙げられる。
【0055】
前記チタン化合物としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、特にテトラ−n−ブチルチタネートの使用が好ましい。
【0056】
前記燐原子含有ジオールオリゴマー(B)でウレタン系のものは、ジオール化合物(または多価アルコール)とジイソシアネート化合物を反応させて、製造することができる。ジオール化合物中のヒドロキシル基と、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基が反応し、ウレタン結合を形成する。なお、両成分の配合量を当量比であらわすと、ヒドロキシル基/イソシアネート基=8/7〜2/1が好ましく、より好ましくは、5/4〜2/1である。前記範囲の8/7を超えると溶剤溶解性に難点がある傾向にある。また前記範囲の2/1未満になると、末端にイソシアネート基が残り、前記酸二無水物(C)との反応性が低く、変性ポリエステルの分子量を上げることができず、可とう性が低く実用に耐えない場合がある。
【0057】
上記燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールタイプのオリゴマー(B)でウレタン系のものは、公知の方法を使用することによって得ることができるが、例えば、撹拌器及び温度計を装備した反応缶中で溶剤の存在下60〜100℃の反応温度で、触媒の存在下あるいは無触媒で、2〜10時間の反応時間で製造される。この際に使用する溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が使用できる。
【0058】
上記燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールタイプのオリゴマー(B)でウレタン系のものを製造する際には、上述したように触媒を用いても良い。触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、エチレンジアミンテトラアセテート、トリエチルアミン等を挙げられる。好ましくは、ジブチル錫ジラウレートなどのウレタン化触媒を使用することが、好適である。
【0059】
本発明の変性ポリエステル樹脂の主鎖部分は、前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)と、前記燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)と、酸二無水物(C)とを反応させることにより得られる。前記酸二無水物(C) としては、特に限定されないが、例えば、前記テトラカルボン酸二無水物が挙げられ、具体的には、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェンー2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいものは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)である。
【0060】
前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)と、前記燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)と、酸二無水物(C)とを反応させて、主鎖中に少なくともオキセタン環、カルボキシル基、及び、燐原子を有するポリエステル樹脂を製造することができる。前記オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)及び前記燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)中のヒドロキシル基と酸二無水物を反応させることにより、酸二無水物の開環反応が進行し、一方で、エステル結合を形成し、もう一方で2個のカルボキシル基(残存カルボキシル基)を変性ポリエステル樹脂の主鎖中に形成することができる。このカルボキシル基が存在することにより、変性ポリエステル樹脂にアルカリ可溶性を付与することができる。また、オキセタン環を含有するジオールオリゴマーを使用することにより、主鎖中にオキセタン環を導入することができ、このオキセタン環は100℃程度では開環反応をほとんど起こさず、140℃以上の高温下で、急激に進行するため、本発明の変性ポリエステル樹脂に、潜在熱硬化性を付与することができ、保存安定性に優れ、作業性や利便性という観点においても、有効である。更に、前記変性ポリエステル樹脂中に燐原子を含有するため、難燃性を付与することができる。また、前述のように保存安定性に優れるため、1液タイプのインキや接着剤としても、使用することができ有効である。
【0061】
前記酸二無水物(C)がオキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)、燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)と反応して、鎖延長反応するためには、酸二無水物(C)の配合量は、変性ポリエステル樹脂の主鎖部分の分子量を制御する上で重要である。酸二無水物(C)/(前記オリゴマーA+前記オリゴマーB)のモル比(以下、C/(A+B)と記載することがある)=65/100〜98/100、または、102/100〜135/100の範囲で重合することができる。C/(A+B)は65/100〜95/100、または、105/100〜135/100であることが好ましく、65/100〜90/100または110/100〜135/100であることがより好ましく、65/100〜85/100または115/100〜135/100であることがさらに好ましい。C/(A+B)が65/100よりも小さい、あるいは135/100より大きい場合であると、ポリエステル樹脂の分子量が高くならず、塗膜の物理的・化学的な強度および耐久性が確保できない傾向にある。逆にC/(A+B)が98/100を越え102/100未満であると、ポリエステル樹脂の分子量が高くなりすぎ、アルカリに対する溶解性が低くなり、アルカリ現像性が低下する傾向にある。
【0062】
また、本発明における前記変性ポリエステル樹脂の主鎖部分の数平均分子量は、1000〜10000であることが好ましく、より好ましくは1200〜9000、更に好ましくは1600〜8500である。数平均分子量が1000未満であると、塗膜の物理的・化学的な強度および耐久性が確保できない傾向になり、一方、10000を越えるとポリエステル樹脂の分子量が高くなりすぎ、アルカリに対する溶解性が低くなり、アルカリ現像性が低下する傾向になる。
【0063】
前記鎖延長反応は、具体的には、撹拌器及び温度計を装備した反応缶に溶剤と、オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)、燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールタイプのオリゴマー(B)と触媒を溶解し、ここに酸二無水物(C)を添加して、重合反応を行なう。重合温度は60〜100℃、重合時間は、2〜10時間に設定することにより、所定の分子量のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0064】
前記ポリエステル樹脂の製造の際に用いる反応触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン類;テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム塩;2―エチル4−イミダゾール等のイミダゾール類、アミド類;4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩;スルホニウム塩;スルホン酸類;オクチル酸亜鉛等の有機金属塩等が挙げられるが、より好ましくは、アミン類、ピリジン類、ホスフィン類である。
【0065】
本発明の変性ポリエステル樹脂は、前記変性前のポリエステル主鎖骨格の残存カルボキシル基と、前記残存カルボキシル基と反応する官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)とを反応させることにより、変性ポリエステル樹脂を製造することができる。この際、前記変性ポリエステル樹脂の主鎖中には、前記酸二無水物(C)に基くカルボキシル基が、一部残存していることが好ましく、更に、側鎖中に、エチレン系不飽和二重結合を有する。主鎖中にカルボキシル基が一部残存することにより、アルカリ可溶性を付与することができ、側鎖中に二重結合を有することにより、光硬化性を付与することができる。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル基またはメタクリル基のいずれかであることを意味する。
【0066】
また、本発明の変性ポリエステル樹脂の酸価は、350〜2000当量/10gであることが好ましく、より好ましくは450〜1500当量/10gであり、さらに好ましくは550〜1000当量/10gである。350当量/10g未満であると、アルカリ現像液への溶解性が不充分となり、現像が不可能となる場合があり、2000当量/10gを超えると、光硬化した部位がアルカリ現像液に膨潤し、密着性が不良になり、現像時に基材から剥離する傾向にあるため好ましくない。なお、酸価は、カルボキシル基に由来するものである(カルボキシル基当量に相当)。
【0067】
また、本発明の変性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、1000〜10000であり、好ましくは2000〜8000であり、より好ましくは2500〜7000である。1000未満であると、光硬化した部位がアルカリ現像液に膨潤し、密着性が不良になり、現像時に基材から剥離し現像が不可能となる。一方、10000を超えると、アルカリ現像液への溶解性が不充分となり、現像が不可能となり、好ましくない。
【0068】
また、本発明の変性ポリエステル樹脂は、主鎖中にオキセタン環、カルボキシル基、及び、燐原子を有し、前記オキセタン環が、400〜3000当量/10gであることが好ましく、より好ましくは、600〜2500当量/10gである。前記オキセタン環及びカルボキシル基が上記範囲より小さい場合、架橋性とアルカリ現像性が悪くなる傾向にある。また、オキセタン環が上記範囲を超えると、安定的にポリエステル樹脂を製造することが困難となる傾向にあり、カルボキシル基が上記範囲を超えると、硬化膜(硬化性層)の耐アルカリ性の低下や、電気特性の低下が起こるなど、問題が生じる場合がある。
【0069】
本発明における酸価は、変性ポリエステル樹脂をクロロホルムに溶解し、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定することで求められる。オキセタン環濃度は、重合に供したオキセタン環含有化合物の当量を変性ポリエステルに供した原料の重量で割ることによって、当量/10gを計算値として求めることができる。
【0070】
また、本発明においては、熱硬化に関わるオキセタン環とカルボキシル基を調整することにより、特性を所望の範囲に設定することができる。具体的には、オキセタン環とカルボキシル基の比率は、オキセタン環/カルボキシル基(モル比)=3/1〜1/3が好ましく、より好ましくは、2/1〜1/2である。前記範囲を超えると、架橋性が悪くなる傾向にあり、好ましくない。
【0071】
前記カルボキシル基と反応する官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(D)としては、変性前のポリエステル樹脂中に残存するカルボキシル基と反応できる官能基を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、グリシジル基や、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましい。具体的には、3,4−エポキシシクロヘキシルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0072】
また前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、燐原子を含有するものを使用することもできる。具体的な、燐原子を含有する前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、トリアクリロイルオキシエチルホスフェート、4,4’−ビス(N,N,N’,N’−テトラアリルジアミノフォスフォリル)ビスフェノール、4,4’−ビス(N,N,N’,N’−テトラアリルジアミノフォスフォリル)ビフェニル等が挙げられる。
【0073】
また、本発明の変性ポリエステル樹脂中のエチレン系不飽和二重結合は、400〜3000当量/10gであり、500〜2000当量/10g有することが好ましく、より好ましくは、600〜1500当量/10gである。400当量/10gより少ない場合には、光硬化性が不十分となり、3000当量/10gを超えると、架橋密度が高くなり、可とう性不良や、基材の片面に塗膜を形成した場合に、そりが大きくなるという問題が生じうる。なお、前記範囲は、前記 (メタ)アクリル系モノマーの配合当量を変性ポリエステル樹脂の重量で割ることにより、当量/10gのセグメントで得られる値である。
【0074】
前記残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)としては、変性前のポリエステル樹脂中に残存するカルボキシル基と反応できる官能基を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、グリシジル基や、ヒドロキシル基を含有する連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含む化合物であることが好ましい。グリシジル基を有し、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)として具体的には、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、α−クレシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。ヒドロキシル基を有し、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)として具体的には、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、セタノール(セチルアルコール、パルミチルアルコール)、セトステアリルアルコール、デシルテトラデカノール、フィトステロール(フィトステリン)、ヘキシルデカノール、ラウリルアルコール、水素添加ラノリンアルコール等が挙げられる。特に、反応性が高いことから、グリシジル基を含有するモノマーが好ましく、さらに安全性の面から、ラウリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルが特に好ましい。また、これらの化合物の使用は単独に限らず、2種類以上使用することができる。
また、グリシジルエーテル基、ヒドロキシル基を2以上含む化合物も使用することができるが、架橋反応を起こしゲル化する恐れがあるので、使用量を控える必要がある。
なお、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルは、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を持つが、不飽和結合を有するので、化合物(E)には該当しない。不飽和結合を持つと、光硬化の際、硬化点となり、硬化塗膜の架橋密度が大きくなり、反りを低減する効果がなくなってしまう。
連続した炭素原子数は4以上であれば特に制限されるものではないが、30以下が好ましく、より好ましくは24以下、さらに好ましくは18以下である。30よりも大きくなると、立体的な障害が大きく、変性前のポリエステル樹脂との反応性が悪くなり、未反応の化合物(E)が残り、硬化塗膜が脆くなってしまうことがある。
【0075】
また、本発明において、変性ポリエステル樹脂中、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)由来の連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格が50〜2000当量/10gであり、150〜1500当量/10g有することが好ましく、より好ましくは、250〜1300当量/10gである。50当量/10gより少ない場合には、硬化塗膜に柔軟性を与える効果が不十分であり、2000当量/10gを超えると、架橋密度が小さくなり、耐熱性が不足するという問題が生じうる。なお、前記範囲は、前記化合物(E)の配合当量を変性ポリエステル樹脂の重量で割ることにより、当量/10gのセグメントで得られる値である。
【0076】
本発明の変性ポリエステル樹脂は、前記変性前のポリエステル樹脂中の残存カルボキシル基と、前記残存カルボキシル基と反応する官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)との反応により得られ、特に限定されないが、例えば、撹拌器及び温度計を装備した反応缶内に、溶剤で溶解した前記ポリエステル樹脂に反応触媒とラジカル重合禁止剤を適宜添加し、均一溶液が得られたことを確認した後、所定量の前記(メタ)アクリル系モノマー(D)、前記連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含む化合物(E)を添加する。重合温度は60〜100℃、重合時間は、4〜16時間で変性ポリエステル樹脂のカルボキシル基(酸価)を測定することによって、反応の進行状況および終点を決めることができる。重合温度が高すぎたり、重合時間が長すぎると、オキセタン環がカルボキシル基と反応し、ゲル化を生じる場合があるため、好ましい重合温度65〜90℃であり、好ましい重合時間は4〜12時間である。
【0077】
前記変性ポリエステル樹脂の製造に使用する触媒は、前記変性前のポリエステル樹脂の製造の際と同等の触媒が使用できるが、特に、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類が使用することが好ましい態様である。
【0078】
前記触媒としては、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に固形分比として、通常、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%含有される。前記触媒の添加量が、0.01重量%未満になると触媒効果が不充分となり易く、好ましくない。一方、2重量%を超えると、基材との密着不良を生じる場合があり、好ましくない。
【0079】
前記ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p−キシロキノン、p−トルキノン、2,6−ジクロロキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類;ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン;モノ−t−ブチルハイドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル等のハイドロキノン類;ジ−t−ブチルパラクレゾール等のフェノール類;アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類;フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩等のヒドラジン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキサザレート等の4級アンモニウム塩類;フェノチアジン等のチアジン類;キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類を用いることができる。
【0080】
前記ラジカル重合禁止剤は、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に固形分比として、通常、0.01〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%含有される。前記重合禁止剤の添加量が0.01重量%未満になると、重合禁止剤の効果が不充分であり、反応中および保存中にゲル化を生じるおそれがあり、好ましくない。また、0.5重量%を超えると、光硬化過程で充分な光感度を得ることが困難になり、現像性劣化の原因となる場合があり、好ましくない。
【0081】
本発明において、残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)の官能基がグリシジル基の場合、残存カルボキシル基との反応で生成するヒドロキシル基と酸無水物(G)を反応させることができる。親水性の高いヒドロキシル基をブロックすることにより、硬化後の塗膜の耐水性をあげることができ、また、酸価のコントロールの容易になり、さらに生成するカルボキシル基は、酸無水物(C)由来のポリエステル主鎖に直接結合したカルボキシル基に比して、立体的な障害が少なく、オキセタン環との反応性が高くなるという利点がある。
また、無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸のような不飽和結合を持つ酸無水物を反応させることにより、変性ポリエステル樹脂に含まれる、不飽和結合基濃度の制御を容易にすることができる。
【0082】
本発明で用いられる酸無水物(G)としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等を上げることができるが、低分子で反応性の高い、無水コハク酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0083】
本発明においては、前記変性ポリエステル樹脂は燐原子を含有し、燐原子の含有率が0.5〜7重量%であり、好ましくは、1〜6重量%であり、より好ましくは、2〜5重量%である。0.5重量%未満であると、難燃性を十分に発揮させるためには難燃剤を多量に添加する必要があり、難燃性以外の塗膜物性に悪影響を与える傾向にあり、一方、7重量%を超えると、耐熱性等を悪化させる傾向にあり、好ましくない。
【0084】
<光硬化性・熱硬化性樹脂組成物>
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、前記変性ポリエステル樹脂、及び、(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。
【0085】
前記(メタ)アクリル系モノマーは、反応性希釈溶剤として使用されるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、単官能や多官能アクリレート系のモノマーまたはオリゴマーが好ましく用いられ、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。なお、これらの(メタ)アクリル系モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
前記(メタ)アクリル系モノマーは、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に固形分比として、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜30重量%含有される。前記(メタ)アクリル系モノマーの添加量が5重量%未満になると硬化反応が進まず、残膜率、耐熱性、耐薬品性などが低下する傾向にある。また、この添加量が40重量%を超えるとベース樹脂への溶解度が飽和に達し、スピンコーティング時や塗膜レベリング時に、例えば、使用する重合開始剤の結晶が析出するなど、膜面の均質性が保持できなくなってしまい、膜荒れ発生と言う不具合が生じる恐れがある。
【0087】
また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、前記変性ポリエステル樹脂、及び、(メタ)アクリル系モノマーに加えて、重合開始剤を含有することができる。前記重合開始剤としては、特に限定されないが、紫外線、電離放射線、可視光、或いは、その他の各波長、特に365nm以下の活性エネルギー線の照射により、ラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤などを用いることができる。
【0088】
前記光ラジカル重合開始剤としては、例えば紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントン並びにチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などがある。好ましくは、イルガキュアー184、イルガキュアー369、イルガキュアー651、イルガキュアー907、イルガキュアーOXE02(いずれもチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)などのケトン系及びビイミダゾール系化合物等を挙げることができる。これらの開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
前記光ラジカル重合開始剤は、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に固形分比として、通常、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%含有される。前記重合開始剤の添加量が0.1重量%未満になると硬化反応が進まず、残膜率、耐熱性、耐薬品性などが低下する傾向にある。また、この添加量が5重量%を超えると、基材との密着不良や半田耐熱性を劣化させるという不具合が生じる恐れがある。
【0090】
前記光ラジカル重合開始剤以外の重合開始剤として、熱ラジカル重合開始剤を併用しても良い。
光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を乾燥する温度では反応せず、熱硬化時の温度で熱ラジカルを発生する熱ラジカル開始剤を使用してもよい。例えば、1,1,3,3、−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドのハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類を挙げることができる。
【0091】
なお、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、前記光ラジカル重合開始剤や前記熱ラジカル重合開始剤の重合開始剤は、本発明に係る光硬化性・熱硬化性樹脂組成物に最初から添加しておいてもよいが、比較的長期間保存する場合には、使用直前に光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に分散或いは溶解することが好ましい。
【0092】
前記変性ポリエステル樹脂と、(メタ)アクリル系モノマー、及び、光ラジカル重合開始剤を含有する光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を反応させることにより、具体的には、光ラジカル重合開始剤存在下で、光照射を行うことにより、ラジカルが発生し、架橋反応が起こり、迅速な硬化反応を促進し、感度が向上しエネルギー効率が良いため、短時間で光硬化反応が完了する。これにより、作業性の向上を図ることができる。
【0093】
更に、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含有することが好ましい。難燃剤を添加することにより、難燃性を向上させることができ、有効である。前記難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジルビス(2,6−キシレニル)フォスフェート、2−エチルヘキシルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェート、ジエチル−N,N―ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、燐酸アミド、有機フォスフィンオキサイド、赤燐等の燐系難燃剤、ポリ燐酸アンモニウム、フォスファゼン、シクロフォスファゼン、9,10−ジヒドロー9−オキサー10−フォスファヘナンスレンー10−オキサイド、10−ベンジルー9,10−ジヒドロー9−オキサー10−フォスファヘナンスレンー10−オキサイド、9,10−ジヒドロー9−オキサー10−フォスファヘナンスレンー10−オキサイド誘導体、トリアジン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、シアヌル酸トリアジニル塩、メレム、メラム、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、アセトグアナミン、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の窒素系難燃剤、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、芳香族スルフォンイミド金属塩、ポリスチレンスルフォン酸アルカリ金属塩等の金属塩系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化ジルコニウム、酸化スズ等の水和金属系難燃剤、シリカ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムスズ酸亜鉛等無機系難燃剤、シリコーンパウダー等のシリコン系難燃剤である。なお、これらの難燃剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。特に、燐系難燃剤は、入手も容易であり、簡単に難燃性を付与することができるため、好ましい。
【0094】
また前記難燃剤として、反応性難燃剤を使用することができる。反応性難燃剤とは、光硬化、熱硬化反応により、変性ポリエステル樹脂組成物と反応して、硬化塗膜中に取り込まれる、官能基を分子構造中に持つもので、ビスコート3PA(大阪有機化学製)、FP−1100(伏見製薬所製)、HFA−6007(昭和高分子製)、HFA−6005(昭和高分子製)、HFA−6003(昭和高分子製)等が挙げられる。反応性難燃剤を使用した場合、難燃剤成分が硬化塗膜中の固定されるために、経時変化によるブリードが抑制され、長期間に亙り、安定した特性の維持ができる。これらの反応性難燃剤は、前記の反応性を持たない難燃剤と併用することができる。
【0095】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物においては、燐原子の含有率は、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の固形分比として、燐原子を1.5〜10重量%含有することが好ましく、より好ましくは、2.5〜9重量%であり、更に好ましくは、3.5〜7重量%である。1.5重量%未満であると、難燃性が低くなり、一方、10重量%を超えると、アルカリ現像性、屈曲性、半田耐熱性等が悪化し、好ましくない。
【0096】
本発明に使用される溶剤は、特に限定されないが、変性ポリエステル樹脂、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物、重合開始剤等の配合成分に対する溶解性が良好で、沸点が比較的高い溶剤を使用することができる。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤などの有機溶剤を例示することができる。
【0097】
なお、上記溶剤として、たとえば、接着性フィルム等を製造する際に、溶剤を除去(蒸発)する必要があるため、比較的沸点の低い溶剤を使用することが好ましい。例えば、沸点が約130℃のシクロペンタノンなどが挙げられる。一方、インキや接着剤などを製造する場合には、比較的沸点の高い溶剤を用いることが好ましい。オキセタン環の開環反応の十分に進行させるためである。例えば、沸点が約200℃のγ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0098】
さらに本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物には、耐熱性、密着性、耐薬品性(特に耐アルカリ性)の向上を図る目的で、必要に応じて、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物(エポキシ樹脂)を配合することができる。エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂や脂肪族ポリグリシジルエーテルを例示することもできる。また、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等を樹脂骨格中に含むアクリル共重合体等も有効である。ただし、これらの化合物は、室温でもカルボキシル基と反応するため、長期の保存安定性を必要とする場合は、配合を避けるべきである。
【0099】
本発明の光硬化性・熱硬化性組成物には、必要に応じて上記の成分以外にも、界面活性剤、シランカップリング剤、顔料、充填剤(フィラー)、消泡剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0100】
<インキ等>
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、インキを得ることができる。前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、潜在硬化性を有するため、必要な際に光や熱を加えることにより、硬化させることができ、作業性等に優れている。
【0101】
前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いて、インキを製造する際、塗工や印刷時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、無機あるいは有機フィラーが添加することが好ましい態様である。
【0102】
前記無機あるいは有機フィラーとしては、上記の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物中に分散してペーストを形成し、そのペーストにチキソトロピー性を付与できるものであれば、特に制限はない。
【0103】
前記無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、酸化タンタル(Ta25)、ジルコニア(ZrO2)、窒化硅素(Si34)、チタン酸バリウム(BaO・TiO2)、炭酸バリウム(BaCO3)、チタン酸鉛(PbO・TiO2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga23)、スピネル(MgO・Al23)、ムライト(3Al23・2SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al23・5SiO2)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、チタン酸アルミニウム(TiO2−Al23)、イットリア含有ジルコニア(Y23−ZrO2)、硅酸バリウム(BaO・8SiO2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸カルシウム(CaSO4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、有機ベントナイト、カーボン(C)などを使用することができ、これらは単独でも二種以上を組み合わせて用いても構わない。得られるペーストの色調、透明性、機械特性、チキソトロピー性付与の点から、シリカ微粒子(日本アエロジル(株)製、商品名アエロジェル)が好ましい。
【0104】
前記無機フィラーの平均粒子径は20μm以下が好ましく、最大粒子径としては、40μm以下のものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径10μm以下であり、更に好ましく、平均粒子径5μm以下である。平均粒子径が20μmを超えると、十分なチキソトロピー性を有するペーストが得られにくくなり、塗膜の屈曲性が低下する。最大粒子径が40μmを超えると塗膜の外観、密着性が不十分となる傾向にある。
【0105】
前記有機フィラーとしては、上述した前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の溶液中に分散してペーストを形成し、そのペーストにチキソトロピー性を付与できるものであればよく、ポリイミド樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子等が挙げられる。
【0106】
また、必要に応じて、フタロシアニン・ブルー、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤を添加することもできる。
【0107】
前記無機あるいは有機フィラーの使用量は、前記光硬化性・熱硬化性樹脂組成物のペーストの不揮発分全体を100質量%とした場合に、好ましくは1〜25質量%であり、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは3〜12質量%である。無機あるいは有機フィラーの配合量が1質量%未満では、印刷性が低下する傾向にあり、25質量%を超えると、塗膜の屈曲性などの機械特性、透明性が低下する傾向にある。
【0108】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物は、溶液状態とすることにより、液状コーティング組成物として、基板等に塗布・浸漬することにより、接着剤やシート、フィルムなどを作製することができる。具体的な方法としては、スクリーン印刷、フローコーティング、ローラー塗布、スロットコーティング、スピンコーティング、カーテンコート、スプレーコーティング、浸漬コーティングを含む一般的な方法を用いて基板や支持体上に塗布することができる。基板または支持体上に塗布した後、液状コーティング層を乾燥し、溶剤を除去する。
【0109】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、例えば、支持体上に塗布した後、乾燥することにより、感光層を得ることができる。前記支持体としては、重合体フィルムを用いることができ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるフィルムが用いられ、これらのうち、特に好ましいフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。これらの前記重合体フィルムは、後に、感光層から除去できるものであり、除去ができないような表面処理が施されたり、材質でないことが必要となる。
【0110】
前記重合体フィルムの厚さとしては、通常5〜100μm、好ましくは10〜30μmのものを用いる。前記重合体フィルムは、感光層の両面に積層して使用することもできる。具体的には、ある一方の重合体フィルムを支持体として使用し、もう一方を、感光層の保護フィルムとして使用することが挙げられる。また、本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、上記支持体上に塗布した後、乾燥することにより感光層を形成し、この感光層に配線を形成されたフレキシブルプリント配線板(FPC)を圧着させて、積層体を得ることもできる。さらに、前記積層体は、ロール状に巻き取って貯蔵することも可能である。
【0111】
本発明においては、光硬化性・熱硬化樹脂組成物を用いてフォトレジスト形状を製造する場合、前記の保護フィルムが存在している場合には、保護フィルムを除去後、感光層を加熱しながら、基板に圧着させることにより積層することができる。
【0112】
フレキシブルプリント配線板(FPC)を製造する場合、積層する表面は、通常、エッチング等により配線が形成されたFPCであるが、特に制限されるものではない。感光層の加熱・圧着は、通常、温度が90〜130℃、圧着圧力が3.0×105Paで行われるが、FPCに対する感光層の追従性をさらに向上させるために、4×103Pa以下の減圧下で上記の条件で加熱圧着することが好ましい。減圧下で加熱圧着する場合は、真空チャンバー内で感光層を加熱圧着できる構造の真空ラミネータを使用することが好ましい。さらに、感光層を前記のように加熱すれば予め基板を予熱処理する必要はないが、追従性をさらに向上させるために基板の予熱処理を行うこともできる。
【0113】
また、ロール状のFPCシートを連続的に繰り出して、感光層をこのFPCシートに加熱圧着させることにより連続的に積層する工程を経て、感光層を積層したFPC板シートをロール状に巻き取ることもできる。感光層を連続的に積層する工程において、FPCに対する感光層の追従性をさらに向上させるために、真空ラミネータを用いて4×103Pa以下の減圧下で加熱圧着することが好ましい。
【0114】
このように積層が完了した感光層は、次いで、ネガフィルムまたはポジフィルムを用いて活性光で画像的に露光される。この際、感光層上に存在する重合体フィルムが透明の場合には、そのまま露光してもよいが、不透明の場合には、当然除去する必要がある。感光層保護という点からは、重合体フィルムは透明で、この重合体フィルムを残存させたまま、それを通して露光することが好ましい。活性光は、公知の活性光源、例えば、カーボンアーク、水銀蒸気アーク、キセノンアーク、その他から発生する光が用いられる。光源としては前記のもの以外に写真用フラッド電球、太陽ランプ等も用いられる。
【0115】
露光後、光硬化性・熱硬化性層上に重合体フィルムが存在している場合には、これを除去した後、アルカリ水溶液、界面活性剤水溶液等の公知の現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により未露光部を除去して現像する。アルカリ水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウムあるいはカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウムあるいはカリウムの炭酸塩または重炭酸塩等の炭酸アルカリ、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属燐酸塩、ピロ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸カリウム等のアルカリ金属ピロ燐酸塩などが用いられ、特に炭酸ナトリウムの水溶液が好ましい。現像に用いるアルカリ水溶液のpHは、好ましくは9〜11の範囲であり、また、その温度は光硬化性・熱硬化性層の現像性に合わせて調整される。このアルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を添加してもよい。
【0116】
また、前記界面活性剤としては、特に制限はなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤(ノニオン界面活性剤)のいずれを用いることもできる。
【0117】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0118】
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、ステアリルアミン塩酸塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0119】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられ、特に非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン誘導体などが好ましい。
【0120】
前記界面活性剤の濃度は、アルカリ現像液中、0.01〜15重量%とすることが好ましく、0.1〜10重量%とすることがより好ましく、0.5〜5重量%とすることが特に好ましい。0.01重量%未満であると、洗浄が不充分となり目的のレジスト形状を得られないという不都合がある。15重量%を越えると、現像後の純水洗浄工程で前記界面活性剤が充分洗浄できず、レジスト膜中に取り込まれることによって、電気絶縁性不良の原因となり好ましくない。
【0121】
本発明の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いたインキ(レジスト剤を含む)は、光(活性光)や熱のエネルギーを与えることにより、迅速な硬化反応を得ることができ、作業性に優れたものとなり、難燃性に寄与する燐原子を含有するため、ハロゲンフリーであり、環境保全にも有効である。また、本発明の接着剤(接着性シートやフィルムを含む)も同様である。
【0122】
また、本発明のプリント回路基板は、回路基板表面に、前記光硬化性・熱硬化性組成物を反応させた光硬化性・熱硬化性層を短時間で形成することが可能となり、架橋密度の高い光硬化性・熱硬化性層(硬化物)により、回路基盤表面を保護することができ、更に難燃性をも実現した優れたプリント回路基板を得ることを可能にする。
【実施例】
【0123】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。また以下の各実施例における評価項目は、以下の手法にて実施した。なお、配合内容や評価結果については、以下の表1〜4に示した。
【0124】
<数平均分子量>
変性ポリエステル樹脂などの試料を、樹脂濃度が0.5重量%程度となるようにテトラヒドロフランで溶解および/または希釈し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過したものを測定用試料として、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折計を検出器とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分子量を測定した。流速は1mL/分、カラム温度は30℃とした。カラムには昭和電工製KF−802、804L、806Lを用いた。分子量標準には単分散ポリスチレンを使用した。
【0125】
<樹脂組成>
変性ポリエステル樹脂を重クロロホルムに溶解し、VARIAN社製 NMR装置 400-MRを用いて、H−NMR分析を行ってその積分比より、モル比を求めた。
【0126】
<ガラス転移温度>
セイコーインスツルメンツ(株)製示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用い、測定試料5mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、20℃/minの昇温速度で−100℃から260℃まで昇温した。次に50℃/minの降温速度で250℃から−100℃まで急冷した後、すぐに20℃/minの昇温速度で再度200℃まで昇温した。ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0127】
<酸価>
変性ポリエステル樹脂0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1Nの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、変性ポリエステル樹脂10gあたりの当量(当量/10g)を求めた。その評価結果を表1および表2に示した。
【0128】
<燐原子濃度(燐含有率):(湿式分解・モリブデンブルー比色法による燐の定量)>
試料中の燐濃度にあわせて試料を三角フラスコに量りとり、硫酸3ml、過塩素酸0.5mlおよび硝酸3.5mlを加え、電熱器で半日かけて徐々に加熱分解した。溶液が透明になった後、さらに加熱して硫酸白煙を生じさせ、室温まで放冷し、この分解液を50mlメスフラスコに移し、2%モリブデン酸アンモニウム溶液5mlおよび0.2%硫酸ヒドラジン溶液2mlを加え、純水にてメスアップし、内容物をよく混合した。沸騰水浴中に10分間、前記メスフラスコをつけて加熱発色した後、室温まで水冷し、超音波にて脱気し、溶液を吸収セル10mmに採り、分光光度計(波長830nm)にて空試験液を対照にして吸光度を測定した。先に作成しておいた検量線から燐含有量(重量%)を求め、試料中の燐原子濃度(燐含有率)を算出した。
【0129】
<アルカリ現像性>
電解銅箔に光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布後、70℃×30分間乾燥して、厚さ20μmの乾燥塗膜を調製した。ついで、前記乾燥塗膜(厚み20μm)に、30℃に調整した1重量%炭酸ナトリウム水溶液(商品名:アパクリンKA、日本表面化学製)を、超小型現像装置(株式会社二宮システム製)にスプレーノズル(充角錘:いけうち製)を装着し、スプレー圧0.1MPaの条件で、60秒間現像を行い、乾燥塗膜の現像残りの有無を、目視にて、確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:完全に現像されている
△:塗膜が一部残存している
×:塗膜が完全に残存している
【0130】
<感度>
電解銅箔に光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布後、70℃×30分間乾燥して乾燥塗膜を調製した。ついで、前記乾燥塗膜(厚み20μm)を、ステップタブレット(コダック社製、No.2、全21段)に搭載し、真空下で減圧密着させ、ジェットプリンター JP−2000(株式会社オーク製作所製)を光源として、紫外線積算光量600mJ/cmの条件で、露光し、前記ステップタブレットを取り外した後、前記乾燥塗膜に、30℃に調整した1重量%炭酸ナトリウム水溶液(商品名:アパクリンKA、日本表面化学製)を、スプレー圧0.1MPaの条件で、60秒間現像を行い、残存した塗膜の段数を、目視にて計測することにより、紫外線への感度を評価した。なお、大きい段数のものほど、紫外線への感度が高いことを意味する。8段以上であれば、感度は良好である。
○:8段以上
△:4〜7段
×:3段以下
【0131】
<半田耐熱性>
電解銅箔に光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布後、70℃×30分間乾燥して乾燥塗膜を調製した。ついで、前記乾燥塗膜(厚み20μm)を、紫外線積算光量1000mJ/cmの条件で露光し、160℃で1時間、熱硬化させてレジスト膜積層体を得た(以下、同様に作製したものをレジスト膜積層体と称する)。このレジスト膜に、ロジン系フラックスEC−19S−10(タムラ科研製)を塗布した後、JIS−C6481に準じて280℃の半田浴に30秒間浸漬し、剥がれや膨れ等の外観異常の有無を観察した。
○:外観異常なし
△:わずかに外観異常あり
×:全面外観異常あり
【0132】
<屈曲性>
レジスト膜積層体について、JIS−K5400に準拠して評価をおこなった。心棒の直径は2mmとし、クラック発生の有無を確認した。
○:クラックの発生なし
×:クラックの発生あり
【0133】
<そり>
厚さ25μmのポリイミドフイルム(カネカ製アピカルNPI)に、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布後、70℃×30分間乾燥して乾燥塗膜(厚み20μm)を調製した。ついで、前記乾燥塗膜を、紫外線積算光量1000mJ/cmの条件で露光し、更に、160℃で1時間の熱処理を行なった。得られた積層フィルムを10cm×10cmに切り出した。ついで、この積層フィルムを25℃、相対湿度65%で、24時間調湿し測定試料とし、下に凸の状態で水平なガラス板に載せ、四隅の高さの平均を評価した。
○:高さ2mm未満
△:高さ10mm未満
×:高さ10mm以上
【0134】
<密着性>
レジスト膜積層体を、JIS−K5600に準拠して、1mmの碁盤目を100ヶ所作り、セロテープ(登録商標)による剥離試験をおこない碁盤目の剥離状態を観察した。
○:100/100で剥離なし
△:70〜99/100
×:0〜70/100
【0135】
<難燃性評価>
厚さ25μmのポリイミドフイルム(カネカ製アピカルNPI)に、光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布後、70℃×30分間乾燥して乾燥塗膜(厚み20μm)を調製した。ついで、前記乾燥塗膜を、ジェットプリンター JP−2000(株式会社オーク製作所製)を光源として、紫外線積算光量1000mJ/cmの条件で露光し、更に、160℃で1時間の熱処理を行なった。得られた積層フィルム(厚さ15μm)について、UL94規格に従い、難燃性を評価した。難燃性は,UL94規格において、VTM−1以上が好ましく、VTM−0が最も好ましい。
【0136】
<線間絶縁抵抗>
東洋紡製2層CCL(商品名バイロフレックス)上に線間50μmの櫛型パターンを作成し、1%硫酸洗浄した後、水洗乾燥した。回路上に光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布後、70℃×30分間乾燥して乾燥塗膜(厚み20μm)を調製した。ついで、前記乾燥塗膜を、紫外線積算光量1000mJ/cmの条件で露光し、160℃で1hr、熱硬化させた。直流電圧100V印加時の線間絶縁抵抗を測定した。10Ω以上が好ましい。
○: 1010Ω<
△: 10Ω〜1010Ω
×: 10Ω>
【0137】
<耐薬品性>
レジスト膜積層体を、10%NaOH、メチルエチルケトンに各10分間浸漬し、剥がれや溶解等の外観異常の有無を観察した。
○:外観異常なし
△:わずかに外観異常あり
×:全面外観異常あり
【0138】
<無電解金めっき耐性>
レジスト膜積層体に、後述する工程のように無電解金めっきを行ない、その試験基板について外観の変化及びセロハン粘着テープを用いたピーリング試験を行ない、レジスト皮膜の剥離状態を判定した。
○:外観変化もなく、レジスト皮膜の剥離も全くない。
△:外観の変化はないが、レジスト皮膜にわずかに剥れがある。
×:レジスト皮膜の浮きが見られ、めっき潜りが認められ、ピーリング試験でレジスト皮膜の剥れが大きい。
【0139】
<無電解金めっき工程>
1.脱脂:レジスト膜積層体を、30℃の酸性脱脂液(上村工業(株)製、ACL−800)に3分間、浸漬した。
2.水洗:レジスト膜積層体を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:レジスト膜積層体を、7Vol%の過硫酸ナトリウム水溶液に室温で1分間、浸漬した。
4.水洗:レジスト膜積層体を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:レジスト膜積層体を、5Vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:レジスト膜積層体を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:レジスト膜積層体を、30℃の触媒液(上村工業(株)製、アクセマルタMSR−28)に3分間、浸漬した。
8.水洗:レジスト膜積層体を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:レジスト膜積層体を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき液(上村工業(株)製、ニムデンNPR−12)に15分間、浸漬した。
10.水洗:レジスト膜積層体を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
11.無電解金めっき:レジスト膜積層体を、90℃、pH=6の金めっき液(上村工業(株)製、コブライトTAM−55)に5分間、浸漬した。
12.水 洗:レジスト膜積層体を、流水中に3分間、浸漬した。
13.湯洗:レジスト膜積層体を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗後、水をよくきり、乾燥した。このような工程を経て無電解金めっきしたレジスト膜積層体を得た。
【0140】
<耐マイグレーション性>
東洋紡製2層CCL(商品名バイロフレックス)上に線間70μmの櫛型パターンを作成し、1%硫酸洗浄した後、水洗乾燥した。回路上に光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を塗布後、70℃×30分間乾燥して乾燥塗膜(厚み20μm)を調製した。ついで、前記乾燥塗膜を、紫外線積算光量1000mJ/cmの条件で露光し、160℃で1hr、熱硬化させ、試験基板を得た。この試験基板に無電解金メッキを行い、 電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度85℃、湿度85%RH、印加電圧50V、1000時間。
測定条件:測定時間60秒、印加電圧500V。
○:加湿後の絶縁抵抗値109Ω以上、銅のマイグレーションなし
△:加湿後の絶縁抵抗値109Ω以上、銅のマイグレーションあり
×:加湿後の絶縁抵抗値108Ω以下、銅のマイグレーションあり
【0141】
<オキセタン環含有ジオールオリゴマーの合成例1>
撹拌器及び温度計を装備した反応缶内に、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン(BHO )166重量部を、溶剤であるシクロペンタノン598重量部に溶解し、ここに触媒であるジブチルスズジラウレート0.1重量部を添加し、65℃にて撹拌・溶解した。ついで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)234重量部を添加・撹拌し、80℃×6時間反応させた。これにより、得られたオキセタン環含有ジオールオリゴマーの固形分濃度は、40重量%であり、数平均分子量は、880であった。
【0142】
<オキセタン環含有ジオールオリゴマーの合成例2>
撹拌器及び温度計を装備した反応缶内に、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン(BHO )177重量部を、溶剤であるシクロペンタノン642重量部に溶解し、ここに触媒であるジブチルスズジラウレート0.1重量部を添加し、65℃にて撹拌・溶解した。ついで、1,6−へキサンジイソシアネート(HDI)101重量部を添加・撹拌し、80℃×2時間反応させ、さらに4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)81重量部添加・撹拌し、80℃×4時間反応させた。これにより、得られたオキセタン環含有ジオールオリゴマーの固形分濃度は、40重量%であり、数平均分子量は、1430であった。
【0143】
<オキセタン環含有ジオールオリゴマーの比較合成例1>
撹拌器及び温度計を装備した反応缶内に、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン(BHO )177重量部を、溶剤であるシクロペンタノン642重量部に溶解し、ここに触媒であるジブチルスズジラウレート0.1重量部を添加し、65℃にて撹拌・溶解した。ついで、1,6−へキサンジイソシアネート(HDI)240重量部を添加・撹拌し、80℃×6時間反応させた。これにより、得られたオキセタン環含有ジオールオリゴマーの固形分濃度は、40重量%であり、数平均分子量は、6250であった。
【0144】
<オキセタン環含有ジオールオリゴマーの比較合成例2>
撹拌器及び温度計を装備した反応缶内に、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)オキセタン(BHO )177重量部を、溶剤であるシクロペンタノン642重量部に溶解し、ここに触媒であるジブチルスズジラウレート0.1重量部を添加し、65℃にて撹拌・溶解した。ついで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)94重量部を添加・撹拌し、80℃×6時間反応させた。これにより、得られたオキセタン環含有ジオールオリゴマーの固形分濃度は、40重量%であり、数平均分子量は、242であった。
【0145】
<燐原子含有ジオールオリゴマーの合成例1>
テレフタル酸166重量部、イソフタル酸249重量部、2−(10H−9−オキサ−10−フォスファ−10−フェナンスリルメチル)コハク酸(PPMS)865重量部、3−メチルペンタンジオール649重量部、水添ダイマージオール(商品名:プリポール2033、クローダジャパン製)1008重量部、1,9−ノナンジオール480重量部、触媒であるテトラ−n−ブチルチタネート0.2重量部を、オートクレーブに仕込み、220〜235℃で3時間エステル化反応を実施した。前記反応系を20分かけて5mmHgまで減圧し、この間250℃まで昇温し、250℃で15分間重縮合反応を実施した。
これにより得られた燐含有ジオールオリゴマーの組成は、NMR分析の件、テレフタル酸/イソフタル酸/PPMS/3−メチルペンタンジオール/水添ダイマージオール/1,9−ノナンジオール = 20/30/50/18/50/32(モル比)であった。 また数平均分子量は1550、ガラス転移温度(Tg)はー30℃だった。
【0146】
<燐原子含有ジオールオリゴマーの合成例2>
PPMS 1340重量部、2−メチルプロパンジオール 720重量部、イルガノックス1330(チバガイギー製) 2重量部、触媒であるテトラ−n−ブチルチタネート0.8重量部を、オートクレーブに仕込み、220〜235℃で3時間エステル化反応を実施した。前記反応系を20分かけて5mmHgまで減圧し、この間260℃まで昇温し、260℃で10分間重縮合反応を実施した。
これにより得られた燐含有ジオールオリゴマーの組成は、NMR分析の件、PPMS/2−メチルプロパンジオール = 100/100(モル比)であった。 また数平均分子量は920、ガラス転移温度(Tg)は18℃であった。
【0147】
<燐原子含有ジオールオリゴマーの比較合成例1>
原料の仕込み量は、合成例1と同じで、重合時間のみを変更した。具体的には、220〜235℃で3時間エステル化反応を実施した。前記反応系を20分かけて5mmHgまで減圧し、この間250℃まで昇温し、250℃で50分間重縮合反応を実施した。
これにより得られた燐含有ジオールオリゴマーの組成は、合成例と同じだったが、数平均分子量は4500、ガラス転移温度(Tg)はー19℃であった。
【0148】
<変性ポリエステル樹脂の特性>
[実施例1−1]
撹拌器及び温度計を装備した反応缶内に、オキセタン基含有ジオールオリゴマー(A)として合成例1で得られた溶液を770重量部、燐原子含有ジオール(B)としてHCA−HQ−2EO [ 2−(9,10―ジヒドロー9―オキサー10―フォスファフェナントレン−10−オキシド)―1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)フェニレン ]を144重量部、溶剤であるシクロペンタノン211重量部、触媒である4−ジメチルアミノピリジン3重量部を添加し、65℃にて撹拌・溶解した。ついで、酸無水物(C)として無水ピロメリット酸115重量部を添加・撹拌し、80℃×6時間反応させた。得られた溶液に重合禁止剤であるメチルハイドロキノン0.6重量部、反応触媒であるトリフェニルフォスフィン4.5重量部を添加し、(メタ)アクリル系モノマー(D)として4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成製)91部、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含む化合物(E)として2−エチルヘキシルグリシジルエーテル49部を更に添加し、80℃×10時間反応させた。さらに、酸無水物(G)として無水コハク酸35重量部を添加し、80℃×4時間反応させた。その後、室温まで冷却し、得られた変性ポリエステル樹脂の固形分濃度は、50重量%になるように溶剤のシクロペンタノンにより調整した。この樹脂の特性結果を表1に示した。
【0149】
[実施例1−2〜1−8、比較例1−1〜1−12]
原料の配合を表1のように変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、種々の変性ポリエステル樹脂を得た。これらの樹脂の配合および特性評価結果を表1、2に示した。
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】

【0152】
<ソルダーレジストの特性>
[実施例2−1]
変性ポリエステル樹脂の実施例1−1で得られた変性ポリエステル樹脂溶液100重量部に対して、重合開始剤としてチバスペシャリティケミカル社製「イルガキュアー907」0.3重量部、(メタ)アクリル系モノマーとしてFA731A(日立化成工業製)6重量部と難燃剤として10H−9−オキサ−10−フォスファ−10−フェナンスリルメチルベンゼン(商品名BCA,三光製)15重量部を混合した光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を、厚さ18μmの電解銅箔の光沢面、または厚さ25μmのポリイミドフイルム(カネカ製アピカルNPI)、または東洋紡製2層CCL(商品名バイロフレックス)上に線間50μmの櫛型パターンを作成た回路に乾燥後の膜厚が20μmになるように塗工・乾燥(70℃、30分)し、乾燥塗膜を得た。配合内容については、表3に示した。また、前述した方法で、アルカリ現像性及び感度の評価を行なった。
【0153】
得られた乾燥塗膜を、ステップタブレット(コダック社製No.2、全21段)にのせ、減圧下で真空密着させた。ジェットプリンター JP−2000(株式会社オーク製作所製)を光源として、紫外線積算光量1000mJ/cmの条件で露光し、ステップタブレットを外した後、現像液として、30℃の炭酸ナトリウム水溶液(商品名:アパクリンKA、日本表面化学製)を超小型現像装置(株式会社二宮システム製)にスプレーノズル(充角錘:いけうち製)を装着し、スプレー圧0.1MPaの条件で60秒間現像を行った。更に、160℃で1時間の熱処理を行ない、これを用いて、ソルダーレジスト特性の評価を行なった。それらの評価結果を表3、表4に示す。
【0154】
[実施例2-2〜2-8、及び比較例2-1〜2-12]
実施例2-1と同様に、特性評価を行なった。配合内容及び評価結果を表3、4に示した。
【0155】
【表3】

【0156】
【表4】

【0157】
実施例2-1〜2-8においては、アルカリ現像性等の化学的特性や、そりなどの機械的特性等のすべての評価項目において、良好な評価結果を得ることが確認できた。
【0158】
比較例2-1は、アルカリ現像性、感度が劣る結果となった。ここで使用しているオキセタン含有ジオールオリゴマーは、数平均分子量が高く、本発明の請求範囲より外れている。疎水性部位の分子量が大きくなったためアルカリ現像液への溶解性が低下したものと考えられる。
【0159】
比較例2-2は、感度、半田耐熱、屈曲性、耐マイグレーション性の劣ることが確認された。ここで使用しているオキセタン含有ジオールオリゴマーは、数平均分子量が小さく、未反応の低分子化合物が多いと推定される。そのため、光硬化反応、熱硬化反応においても、反応が不十分であり、感度が悪く。耐熱性も低く、もろいため屈曲性が出ないと考えられる。
【0160】
比較例2−3は、アルカリ現像性、感度が劣る結果となった。個々で使用している燐原子含有ジオールオリゴマーは、分子量が大きく、かつ、変性ポリエステル樹脂の分子量も大きく、本発明の請求範囲を超えている。そのため、乾燥した時の、造膜性が大きく、硬化塗膜の耐熱性等の諸特性は良好ながら、現像性、感度が悪くなっていると考えられる。
【0161】
比較例2-4は、半田耐熱性、屈曲性、無電解めっき性、耐マイグレーション性が劣る結果となった。酸無水物とジオールオリゴマーのモル比が小さく、未反応のジオールオリゴマーが多く、変性ポリエステルの分子量も小さく、本発明の請求範囲より外れている。未反応物が多いため、耐熱性が不十分であり、硬化塗膜も脆くなるため、屈曲性が悪くなると考えられ、めっき試験において、めっき液の潜り込みによる剥離が見られ、耐マイグレーション性もNGになった。
【0162】
比較例2−5は、半田耐熱性、屈曲性、そり、密着性、耐薬品性(NaOH)、無電解めっき性、耐マイグレーション性が劣る結果となった。酸無水物とジオールオリゴマーのモル比が大きく、本発明の請求の範囲を超えており、未反応の酸無水物、乃至その開環物が残存しており、変性ポリエステルの分子量も請求範囲より小さく、酸価は選球範囲よりも大きい。そのために塗膜が脆いために、耐熱性、屈曲性、そり、密着性がNGであり、硬化塗膜のNaOH水の浸漬で剥離が起こった。無電解めっき工程でも、塗膜の膨潤、剥離が起こり、マイグレーション試験もNGであった。
【0163】
比較例2−6は、半田耐熱性、屈曲性、そり、密着性、耐薬品性(MEK),無電解めっき性、耐マイグレーション性が劣る結果となった。この系は、不飽和二重結合量が、本発明の請求の範囲を超えて大きくなっており、硬化反応が進み過ぎて、硬化塗膜が衝撃に対する緩和能力を失っていると推定される。そのためにまず、基材との密着性が悪いため、半田耐熱試験でも、塗膜の剥離が顕著であり、屈曲性試験では、塗膜がすぐに割れてしまう。そりも大きく、無電解めっき試験でも、部分的な塗膜の基材からの剥離があり、耐マイグレーション性もNGになった。
【0164】
比較例2−7は、感度に劣る結果となった。この系は、不飽和二重結合量が、本発明の請求範囲よりも小さく、光硬化反応が不十分である。熱硬化は充分に起こるので、機械特性、耐熱特性は良好であるが、感度がNGになったと推定される。
【0165】
比較例2−8は、屈曲性、反りに劣る結果となった。この系は、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格濃度が低く、本発明の請求の範囲を超えている。架橋密度が大きく、硬化塗膜への衝撃を充分に緩和する能力が小さいため、屈曲性、反りがNGになると推定される。
【0166】
比較例2-9は、半田耐熱性、無電解めっき性、耐マイグレーション性に劣る結果となった。この系は、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格濃度が高く、本発明の請求の範囲を超えている。架橋密度が低く、かつ未反応のモノマーが残っていることが耐熱性の低い原因と推定され、また無電解めっきにもたない原因と推定される。
【0167】
比較例2-10は、難燃性が劣ることが確認された。この例では、変性ポリエステル樹脂に含まれる燐原子濃度が小さく、本発明の請求の範囲よりも小さくなっているためと推定される。
【0168】
比較例2-11は、アルカリ現像性、感度に劣る結果となった。この系は、酸無水物とジオールオリゴマーのモル比が当量に近く、本発明の請求の範囲から外れており、また変性ポリエステル樹脂の分子量も大きく範囲から外れている。そのため、レジストを乾燥しただけでも造膜性が大きく、アルカリ現像ができなくなったと推定される。
【0169】
比較例2-12は、そりに劣る結果となった。この系は、連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格濃度を含まないため、熱硬化における硬化収縮を緩和する能力がないためと推定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)及び燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)が、酸二無水物(C)とエステル結合してポリエステル骨格を形成し、酸二無水物(C)に基づく残存カルボキシル基の一部と残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)の官能基が反応し化学結合した変性ポリエステル樹脂であって、前記オリゴマー(A)の数平均分子量が600〜4000であり、前記オリゴマー(B)の数平均分子量が4000以下であり、酸二無水物(C)と 前記オリゴマー(A)と前記オリゴマー(B)のモル比 C/(A+B)が65/100〜98/100または102/100〜135/100であり、変性ポリエステル樹脂に含まれる不飽和二重結合が400〜3000当量/10gであり、変性ポリエステル樹脂の前記化合物(E)由来の連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格が50〜2000当量/10gであり、変性ポリエステル樹脂の数平均分子量が1000〜10000であり、変性ポリエステル樹脂中に燐原子を0.5〜7重量%含有することを特徴とする変性ポリエステル樹脂。
【請求項2】
オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)が、オキセタン環含有ジオール化合物中のヒドロキシル基と、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基を反応させて得られるものであることを特徴とする請求項1記載の変性ポリエステル樹脂。
【請求項3】
変性ポリエステル樹脂の酸価が350〜2000当量/10gであることを特徴とする請求項1または2に記載の変性ポリエステル樹脂。
【請求項4】
残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)の残存カルボキシル基と反応可能な官能基が、グリシジル基及び/またはヒドロキシル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の変性ポリエステル樹脂。
【請求項5】
残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)の残存カルボキシル基と反応可能な官能基がグリシジル基であって、当該グリシジル基と酸二無水物(C)に基づく残存カルボキシル基との反応で生成する水酸基と酸無水物(G)とが反応し結合していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の変性ポリエステル樹脂。
【請求項6】
オキセタン環含有ジオールオリゴマー(A)、燐原子含有ジオールおよび/または燐原子含有ジオールオリゴマー(B)のヒドロキシル基と、酸二無水物(C)を反応させポリエステル樹脂を製造し、さらにポリエステル樹脂中の残存カルボキシル基と、残存カルボキシル基と反応可能な官能基を含む(メタ)アクリル系モノマー(D)、残存カルボキシル基と反応可能な官能基、および連続した炭素原子が4以上の脂肪族骨格を含み、かつ不飽和結合を持たない化合物(E)とを反応させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の変性ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記変性ポリエステル樹脂中に含まれる水酸基と酸無水物(G)とを反応させることを特徴とする請求項6記載の変性ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか記載の変性ポリエステル樹脂、または、請求項6もしくは7記載の製造方法により得られる変性ポリエステル樹脂、及び、(メタ)アクリル系モノマーを含有することを特徴とする光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに難燃剤を含有することを特徴とする請求項8記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8または9記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を反応させて得られることを特徴とする光硬化性・熱硬化性層。
【請求項11】
請求項8または9記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることを特徴とするインキ。
【請求項12】
請求項8または9記載の光硬化性・熱硬化性樹脂組成物を用いることを特徴とする接着剤。
【請求項13】
回路基板表面に、請求項10記載の光硬化性・熱硬化性層を有することを特徴とするプリント回路基板。



【公開番号】特開2011−122020(P2011−122020A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279374(P2009−279374)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】