説明

変性ポリオレフィン系樹脂

【課題】極性モノマーのグラフト率が高く、かつ、メルトフローレートの上昇が抑制された変性ポリオレフィン系樹脂を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂(A)と、少なくとも1種の不飽和基(a)と少なくとも1種の極性基(b)とを有する化合物(B)と、下記一般式(1)で表されるトリビニル化合物(C)と、有機過酸化物(D)と、を反応させて得られる変性ポリオレフィン系樹脂。


[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜25のアルキル基、及び、炭素原子数3〜25のシクロアルキル基からなる群から選択されるいずれか1種の基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリオレフィン系樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂に、無水マレイン酸やメタクリル酸グリシジル等の極性モノマーをグラフトさせて変性ポリオレフィン系樹脂を得、この変性ポリオレフィン系樹脂を異種ポリマーとアロイ化させることが行なわれている。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン100質量部に対し、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体がエチレン/不飽和カルボン酸あるいはその誘導体のモル比0.3〜5.0の割合であって、2〜30質量部使用し、これに0.1〜20質量部のラジカル反応開始剤を添加することを特徴とする変性重合体の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、粉粒状のポリオレフィンにラジカル反応開始剤を使用して、エチレン存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体を共グラフトするにあたり、該ポリオレフィンを膨潤させ得る連鎖移動性の低い溶媒を、該ポリオレフィン100質量部に対し20〜150質量部共存させることを特徴とする変性重合体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−189809号公報
【特許文献2】特開平4−198206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や2に記載の変性重合体の製造方法では、得られる変性重合体のグラフト率は不十分であり、またメルトフローレートが上昇してしまうという問題がある。
以上の課題に鑑み本発明は、極性モノマーのグラフト率が高く、かつ、メルトフローレートの上昇が抑制された変性ポリオレフィン系樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、当該ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、少なくとも1種の不飽和基(a)と少なくとも1種の極性基(b)とを有する化合物(B)と、下記一般式(1)で表されるトリビニル化合物(C)と、有機過酸化物(D)と、を反応させて得られる変性ポリオレフィン系樹脂を提供するものである。
【0006】
【化1】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜25のアルキル基、及び、炭素原子数3〜25のシクロアルキル基からなる群から選択されるいずれか1種の基を示す。]
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、極性モノマーのグラフト率が高く、かつ、メルトフローレートの上昇が抑制された変性ポリオレフィン系樹脂を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(A)と、少なくとも1種の不飽和基(a)と少なくとも1種の極性基(b)とを有する化合物(B)と、上記一般式(1)で表されるトリビニル化合物(C)と、有機過酸化物(D)と、を反応させて得られるものである。
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
本発明で使用するポリオレフィン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、炭素数4以上のα−オレフィンを主な成分とするα−オレフィン樹脂が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0009】
ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
ポリエチレンとしては、例えば、エチレン単独重合体、炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
炭素数4以上のα−オレフィンを主な成分とするα−オレフィン樹脂としては、例えば、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0010】
ポリオレフィンに用いられる炭素数4以上のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂(A)の重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合又はスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
これらの重合方法は、バッチ式、複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を任意に組み合わせてもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法又はバルク重合法と気相重合法を連続的に行うバルク−気相重合法による方法が好ましい。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、適宜決定すればよい。
【0012】
また、ポリオレフィン系樹脂(A)の製造に用いられる触媒としては、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒が挙げられる。マルチサイト触媒として、好ましくは、チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられ、また、シングルサイト触媒として、好ましくは、メタロセン触媒が挙げられる。
【0013】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレンの場合、ポリプロピレンの製造方法に用いられる好ましい触媒として、上記のチタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられる。
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレンの場合、プロピレン単独重合体とプロピレン−エチレン共重合体との混合物である、所謂プロピレン−エチレンブロック共重合体であることが好ましい。
【0014】
上記プロピレン単独重合体の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
ここで、アイソタクチック・ペンタッド分率とは、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖(以下、mmmmと表す。)の中にあるプロピレンモノマー単位の分率である。アイソタクチック・ペンタッド分率の測定方法は、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定される方法である。
【0015】
具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。この方法によって測定された英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率は、0.944であった。
【0016】
上記ポリオレフィン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.01〜150g/10分であり、より好ましくは0.02〜100g/10分、さらに好ましくは0.02〜50g/10分である。但し、測定温度は230℃で、荷重は21.18Nである。本発明におけるメルトフローレート(MFR)の測定は、JIS K7210に規定された方法に準じて行う。
【0017】
<少なくとも1種の不飽和基(a)と少なくとも1種の極性基(b)とを有する化合物(B)>
本発明で極性モノマーとして用いられる化合物(B)は、少なくとも1種の不飽和基(a)と少なくとも1種の極性基(b)とを有する化合物である。
不飽和基(a)としては、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合が挙げられる。極性基(b)としては、極性基としては、カルボキシル基、エステル基、スルホ基、スルフィノ基及び水酸基アミノ基(−NH基、−NHR基、−NRR´基:但し、R,R´はアルキル基又はアリル基である)、ピリジル基及びピペリジル基が挙げられる。
【0018】
化合物(B)として、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、桂皮酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、2−メタクリロキシエチルコハク酸、2−メタクリロキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−クロロアミドホスホキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロキシエチルアシツドホスフエート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート,N,N−ジブチルアミノエチルアクリレート、N−フエニルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジフエニルアミノエチルメタクリレート、アミノスチレン、ジメチルアミノスチレン、N−メチルアミノエチルスチレン、ジメチルアミノエトキシスチレン、ジフエニルアミノエチルスチレン、N−フエニルアミノエチルスチレン、2−N−ピペリジルエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニル−6−メチルピリジン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
これらのうち無水マレイン酸、マレイン酸、及び、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、メタクリル酸グリシジルからなる群から選ばれるいずれか1種の化合物を用いることが好ましく、無水マレイン酸、フマル酸、及び、メタクリル酸グリシジルからなる群から選ばれるいずれか1種の化合物を用いることがより好ましい。
【0019】
化合物(B)は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して0.01〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部用いる。添加量が0.1質量部未満であるとポリオレフィン系樹脂(A)に対する化合物(B)のグラフト率が低下し、得られる変性ポリオレフィン系樹脂は異種ポリマーとポリオレフィン系樹脂の相容化剤や、フィラーとポリオレフィンの界面強化剤として十分な性能を発揮することが困難となる。また、添加量が20質量部を超えると、変性ポリオレフィン系樹脂中の未反応の化合物(B)の量が増加する。化合物(B)は溶融して可塑剤として働くため、変性ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが上昇してしまう。
【0020】
<トリビニル化合物(C)>
本発明で使用されるトリビニル化合物(C)は、下記一般式(1)で示される構造を有する。
【0021】
【化2】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜25のアルキル基、及び、炭素原子数3〜25のシクロアルキル基からなる群から選択されるいずれか1種の基を示す。]
【0022】
上記「炭素原子数1〜25のアルキル基」は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基等が挙げられる。
また上記「炭素原子数3〜25のシクロアルキル基」としては、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロヘキシル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0023】
トリビニル化合物(C)として具体的には、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、1−メチル−2,3,5−トリビニルシクロヘキサン、1−エチル−2,3,5−トリビニルシクロヘキサン、1−プロピル−2,3,5−トリビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
中でも1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、1−メチル−2,3,5−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリビニルシクロヘキサンを用いることがより好ましい。
【0024】
トリビニル化合物(C)は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部用いる。添加量が0.01質量部を下回ると、ポリオレフィン系樹脂(A)に対する化合物(B)のグラフト率を向上させることが困難となる。また、添加量が20質量部を超えると、変性ポリオレフィン系樹脂中の未反応のトリビニル化合物(C)の量が過多となる。未反応のトリビニル化合物(C)は溶融して可塑剤となるため、得られる変性ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが上昇してしまう。
【0025】
<有機過酸化物(D)>
本発明で用いられる有機過酸化物(D)は、ケトンパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカボネート化合物等の半減期が1分となる分解温度が50〜210℃である有機過酸化物であることが好ましい。
ケトンパーオキサイド化合物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
ジアシルパーオキサイド化合物としては、イソブチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
ハイドロパーオキサイド化合物としては、1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド化合物としては、ジクミパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
パーオキシケタール化合物としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
アルキルパーエステル化合物としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチル−パーオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−ブチルパーオキシトリメチルアジペート等が挙げられる。
パーカボネート化合物としては、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0026】
分解温度が50℃より低いとグラフト率が向上しない。また、分解温度が210℃より高いとグラフト率が向上しない。また、これらの有機過酸化物で好ましいのはジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物、アルキルパーエステル化合物である。成分(D)の添加量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100重量部に対して0.001〜20重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0027】
<変性ポリオレフィン樹脂の製造方法>
本発明に係る変性ポリオレフィン樹脂は、上記ポリオレフィン系樹脂(A)、化合物(B)トリビニル化合物(C)、及び有機過酸化物(D)を反応させて得られる。
具体的には、押出機のような混練手段に各成分を投入して溶融混練する方法や、溶媒に各成分を溶解させて反応させる方法等が挙げられる。このうち溶融混練する方法を用いることが好ましい。
【0028】
溶融混練は、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、又は二軸押出機等を用いて行うことが好ましく、一軸押出機、又は二軸押出機等を用いて行うことがより好ましい。
また、溶融混練を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ブレンダー等を用いて各成分を予め混合して均一な混合物とすることが好ましい。
【0029】
混練手段の混練を行う部分の温度は(例えば、押出機ならシリンダー温度)、100〜300℃、好ましくは160〜260℃である。温度が低すぎるとグラフト率が向上しない場合があり、また、温度が高すぎると樹脂の分解が起こる場合がある。混練時間は、0.1〜30分間、特に好ましくは0.5〜5分間である。混練時間が短すぎると十分なグラフト率が得られない場合があり、また、混練時間が長すぎると樹脂の分解が起こる場合がある。
【0030】
変性ポリオレフィン樹脂を製造する際、その目的、効果を大きく阻害しない範囲で、上記のポリオレフィン系樹脂(A)以外に、1種以上のエラストマーを配合してもよい。エラストマーとしては、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、PVC系エラストマー等が挙げられる。
また、酸化防止剤、耐熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤等の安定剤、気泡防止剤、難燃剤、難燃助剤、分散剤、帯電防止剤、滑剤、シリカ等のアンチブロッキング剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、造核剤や結晶化促進剤等を配合してもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例によって、本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従い、試験温度230℃、試験荷重21.18Nで測定した。
【0032】
(2)無水マレイン酸グラフト率(単位:質量%)
実施例1〜3、比較例1で得られた変性オレフィン系樹脂中の、無水マレイン酸グラフト率は以下のステップからなる方法で測定した。
<1>変性ポリオレフィン系樹脂1.0gをキシレン10mlに溶解して、溶液を調製する。
<2>該溶液をメタノール300mlに攪拌しながら滴下して変性プロピレン系重合体を
再沈殿させる。
<3>再沈殿された変性ポリオレフィン系樹脂を回収する。
<4>回収した変性ポリオレフィン系樹脂を真空乾燥する(80℃、8時間)。
<5>乾燥された変性ポリオレフィン系樹脂を熱プレスして、厚さ100μmのフィルムを作成する。
<6>このフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、1785cm−1付近の吸収強度から、下記方法で算出した検量線に内挿して、無水マレイン酸のグラフト率を算出する。
1785cm−1付近の吸収強度と無水マレイン酸グラフト率の関係を示す検量線はあらかじめ無水マレイン酸の含有量が明らかなポリオレフィンフィルムを用意し、赤外吸収スペクトルを測定し、作成した。ここでは無水マレイン酸の含有量をグラフト率としてみなし、無水マレイン酸の含有量と赤外吸収スペクトルの吸収強度値を用いて検量線を作成した。
【0033】
〔原料組成〕
ポリオレフィン系樹脂(A):プロピレン単独重合体(MFR(230℃)=19g/10分、住友化学株式会社製)
化合物(B):無水マレイン酸
トリビニル化合物(C):1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(東京化成工業社製)
有機過酸化物(D):(1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)(化薬アクゾ株式会社製 商品名パーカドックス14−40C)
【0034】
〔実施例1〜3、比較例1〕
ラボプラストミル(東洋精機社製)を用い、ポリオレフィン系樹脂(A)、化合物(B)、トリビニル化合物(C)及び、有機過酸化物(D)を、表1に記載された組成で、180℃、スクリュー回転数80rpmの条件で5分間溶融混練し、ポリオレフィン系樹脂(A)に化合物(B)をグラフト反応させ変性ポリオレフィン系樹脂を製造した。
得られた変性ポリオレフィン系樹脂のMFR及びマレイン酸グラフト率を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂(A)と、
当該ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、少なくとも1種の不飽和基(a)と少なくとも1種の極性基(b)とを有する化合物(B)0.01〜20質量部と、
下記一般式(1)で表されるトリビニル化合物(C)0.1〜20質量部と、
有機過酸化物(D)0.001〜20質量部と、を反応させて得られる変性ポリオレフィン系樹脂。
【化1】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜25のアルキル基、及び、炭素原子数3〜25のシクロアルキル基からなる群から選択されるいずれか1種の基を示す。]
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレンである請求項1記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
【請求項3】
前記化合物(B)が、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、及び、メタクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
【請求項4】
前記トリビニル化合物(C)が、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン及び/又は1,3,5−トリビニルシクロヘキサンである請求項1〜3いずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。

【公開番号】特開2012−193290(P2012−193290A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58878(P2011−58878)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】