説明

変性ポリテトラフルオロエチレン組成物

【課題】 耐圧縮クリープ特性を維持しつつ摩耗特性に優れ、摺動部材やシール材等の用途に好適な変性ポリテトラフルオロエチレン組成物及び該組成物を成形して得られる摺動部材を提供する。
【解決手段】 共重合可能な単量体を1.0重量%以下の割合で共重合させたテトラフルオロエチレン共重合体に、平均粒子径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子を好ましくは1〜40重量%の割合で配合した変性ポリテトラフルオロエチレン組成物、及び該組成物を成形して得られる摺動部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体との共重合体(以下、変性PTFEという)の少なくとも1種に、平均粒子径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子を配合してなる変性PTFE組成物、及び該組成物を用いた摺動部材に関するものである。さらに詳しくは、耐圧縮クリープ特性を維持しつつ摩耗特性に優れた摺動部材やシール材等の用途に好適な変性PTFE組成物、及び該組成物より得られる摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)は低摩擦係数であるとともに耐熱性・耐薬品性に優れているため、耐摩耗性や耐クリープ性を改善する目的で充填材を含有させて摺動部材やシール材として多く使用されている。ここで使用されるPTFEは圧縮成形用粉末であるモールディングパウダーであり、一方、充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト、二硫化モリブデン、ブロンズ粉末等などの無機充填材、又は芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等などの有機充填材が知られている。
【0003】
しかしながら、自動車等の車両用油圧装置や各種摺動用装置においては、近年益々、軽量化、コンパクト化、環境対策等が推進され、アルミニウム合金等の軟質金属を使用する機会、無潤滑の状態で使用される機会が増えて来ている。特に、高温高荷重下における摺動装置おいては潤滑油が供給されない無潤滑状態になり易く、従来の充填材含有PTFEモールディングパウダーから成形された摺動部材やシール材では、相手材がアルミニウム合金等の軟質金属である場合に相手材が摩耗損傷され易いという問題があった。
【0004】
これらの現象を解決するため、PTFEファインパウダー、PTFEモールディングパウダー、タルク粉末からなるPTFE粉末組成物が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、無潤滑状態ではいまだ、軟質金属である相手材の摩耗が大きいという問題がある。また、ポリテトラフルオロエチレン樹脂に、黒鉛および炭素繊維を配合したポリテトラフルオロエチレン樹脂組成物が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この樹脂組成物からなる摺動部材では、回転軸材料と固定部材料との熱膨張率の違いによる空間変化が大きく、摺動面の摩耗は少ないが、黒鉛や炭素繊維を多量に添加すると空隙が増加して摺動部材を流体が浸透(通気)してしまうという問題や、軟質金属である相手材の摩耗は少ないものの摺動部材自身の自己摩耗が多くなり十分な摩耗特性を得ることが出来ていないという問題があった。
【0005】
さらに、熱可塑性樹脂中にその平均直径が1〜150μmの範囲にあるアラミド粒子が、該熱可塑性樹脂に対して3〜35%の体積含有率となるように混合されてなる熱寸法安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物が提案されており、熱可塑性樹脂としてフッ素樹脂の記載がある(特許文献3参照)。しかしながら、該アラミド粒子は吸湿性が高く、充填材として非粘着性の特性を強く有するPTFEに添加された場合には、PTFEと添加されたアラミド粒子との間の密着性が乏しくなるため、得られる成形品(摺動部材)にクラックが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−157472号公報
【特許文献2】特開2001−294720号公報
【特許文献3】特開2005−120213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高温高荷重下、或いは潤滑油が供給されない無潤滑状態においても、相手材であるアルミニウム合金等の軟質金属が摩耗損傷され難い、耐圧縮クリープ特性を維持しつつ摩耗特性に優れた摺動部材やシール材等の用途に好適なフッ素樹脂組成物、及び該組成物より得られる摺動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定のテトラフルオロエチレンに、平均粒子径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子を配合することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体との共重合体の少なくとも1種と、平均粒径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子とを含む変性PTFE組成物、及び該組成物を成形して得られる摺動部材である。
【0009】
上記変性PTFE組成物において、共重合体の重量に対し、1〜40重量%の平均粒径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子を含む変性PTFE組成物は本発明の好ましい態様である。
【0010】
上記変性PTFE組成物において、テトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体が、不飽和フッ素化炭化水素、不飽和フッ素化塩素化炭化水素、及びエーテル基含有不飽和フッ素化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体である変性PTFE組成物は本発明の好ましい態様である。
【0011】
上記変性PTFE組成物において、テトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体が、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド及びビニルフルオライドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体である変性PTFE組成物は本発明の好ましい態様である。
上記変性PTFE組成物を成形して得られる摺動部材は本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐圧縮クリープ特性を維持しつつ摩耗特性に優れ、摺動部材やシール材等の用途に好適な変性PTFE組成物及び該組成物を成形して得られる摺動部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、テトラフルオロエチレン(TFE)と、テトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体との共重合体の少なくとも1種と、平均粒径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子とを含む変性PTFE組成物及び該組成物を成形して得られる摺動部材を提供する。
【0014】
本発明において用いられる変性PTFEは、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体との共重合体である。共重
合可能な単量体としては、エチレン性不飽和単量体であって、不飽和フッ素化炭化水素、不飽和フッ素化塩素化炭化水素、及びエーテル基含有不飽和フッ素化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体が挙げられる。好ましくは、Cn2n+1CF=CF2(n=1〜12)で表されるパーフルオロオレフィン類、Cn2n+1O[CF(CF3)CF2O]mCF=CF2(n=1〜5,M=0〜10)で表されるパーフルオロビニルエーテル類、ClCF=CF2で表されるクロロトリフルオロエチレン、Cn2n+1CH=CH2(n=1〜10)で表されるパーフルオロアルキルエチレン類、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド等の含フッ素単量体が挙げられる。
【0015】
上記含フッ素単量体の内、パーフルオロオレフィン類としては、ヘキサフルオロプロピレンが好ましく、パーフルオロアルキルビニルエーテル類としては、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)のアルキル基が炭素数1〜5、特に1〜3であることが好ましく、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)がより好ましい。また、パーフルオロアルキルエチレンとしては、パーフルオロアルキルエチレンのアルキル基が炭素数1〜5であることが好ましく、パーフルオロ(ブチル)エチレンがより好ましい。上記単量体をテトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下で共重合した変性PTFEは、TFE単独重合体同様、溶融加工性を有しない。
【0016】
本発明において用いられる変性PTFEは、テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な上記単量体から得られる共重合体(変性PTFE)の少なくとも1種であり、2種以上をブレンドして用いても良い。
【0017】
本発明において用いられる変性PTFEの形状としては、粉末状、顆粒状または造粒した粒状のものを使用することができ、公知の懸濁重合法、例えば米国特許第3855191号に記載される懸濁重合法、または乳化重合法、例えば米国特許第2559752号に記載される乳化重合法、により直接粉末状にしたものであっても、塊状重合物を粉砕したもの、例えば、公知の懸濁重合法により得られる変性PTFE粉末を造粒した後、粉砕したものであってもよい。(米国特許第3,155,486号、特公昭34−10177号、特公昭47−28087号等)
この様な変性PTFEの平均粒径は、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。このように微粉化された変性PTFEは、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子と均一に混合するのに有利である。
【0018】
本発明の平均粒子径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子は、無機材料に比べて柔らかいことを特徴とする高強度、高弾性率、耐疲労性、寸法安定性、400℃以上の耐熱性、耐化学薬品性等に優れたパラ型アラミドの1種が粒子化されたものであり、該アラミドを溶液紡糸により繊維化し単離した後、粉砕してパウダー化した微粒子である。その形状は、球状の他、パルプ状、リン片状、針状、繊維状等が混在している。
また、アラミド粒子の孔中に変性PTFEが浸透することによるアンカー効果(界面接着性向上)、熱寸法安定性向上等の観点から、上記コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子は多孔質状であることが好ましい。
【0019】
本発明において用いられるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子の平均粒径は、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜50μmである。この様なアラミド粒子は、特開2005−120213号公報、特開2008−106086号公報に記載されており、商品としては、テクノーラ(登録商標)(帝人プロダクツ株式会社製)が挙げられる。変性PTFE組成物中のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子は、1〜
40重量%であることが好ましい。コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子が40重量%を超える場合には、得られる成形品にクラックが発生し易くなるため好ましくない。
【0020】
本発明の変性PTFE組成物には、引張弾性率の改良等のために少量の熱溶融性フッ素樹脂、具体的には、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニル40エーテル)共重合体(以下、PFAという)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)等を配合することができる。
【0021】
上記熱溶融性フッ素樹脂が、TFEとフルオロビニル化合物との共重合体である場合には、フルオロビニル化合物の共重合割合が0.5〜20モル%程度のものが使用でき、また372℃、5000g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.5〜20g/10分、とくに0.5〜10g/10分程度のものが好ましい。またTFEとエチレンの共重合体である場合には、エチレンの共重合割合が30〜70モル%程度のものの使用が好ましく、297℃、2160g荷重におけるMFRが1〜20g/10分、とくに1〜10g/10分程度のものが好ましい。
【0022】
これら熱溶融性フッ素樹脂の平均粒径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは10〜50μmである。また熱溶融性フッ素樹脂は、変性PTFE組成物中、好ましくは0.1〜20重量%、とくに1〜10重量%の範囲であることが望ましい。
【0023】
本発明の変性PTFE組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、必要に応じ、一般にフッ素樹脂粉末の充填材として配合されている平均粒径200μm以下の無機又は有機の粉末や繊維を配合することができる。例えば、ガラス充填材(例えばガラス繊維またはガラス球)、アルミナ粉末、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムまたは青銅粉末等のような親水性充填材、チタン酸カリウム繊維、タルク、酸化亜鉛粉末、カーボン繊維、二硫化モリブデン、グラファイト粉末等のような半親水性充填材、ポリイミド、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等のような有機充填材等が利用できる。
【0024】
本発明の変性PTFE組成物は、変性PTFE及びコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子とを任意の方法により混合して得ることができる。例えば、従来公知の混合器、V型ブレンダー、タンブラー、ドライ・ブレンダー、ヘンシェルミキサー、または高速で回転するブレードもしくはカッターナイフを有する高速回転混合機等を用いて、公知の方法にて均一混合することにより、変性PTFE組成物を得ることができる。具体的には、例えば、ヘンシェルミキサーを用い、回転数約200〜1000rpm、時間約4〜15分間といったブレンド方法が用いられる。更に、この変性PTFE組成物を造粒して流動性を改善しても良い。
【0025】
本発明の変性PTFE組成物を各種形状の成形品(摺動部材やシール材等)に成形する方法は、とくに限定されるものではなく、例えば、圧縮成形法、ラム押出成形法、ペースト押出成形法、アイソスタティック成形法、ホットコイニング成形法等公知のPTFE粉末の圧縮成形法によって目的とする各種成形品を成形することができる。例えば、本発明の変性PTFE組成物を圧縮成形法によって予備成形し、テトラフルオロエチレン重合体の融点以上の温度で焼成して一次成形品とし、その後、最終成形品の形状に応じて切削加工等を施して製品を製造することができる。このようにして得られた成形品は延伸破断しにくく、変形しにくい等の効果を得ることができる。
【実施例1】
【0026】
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
本発明において各物性の測定は、下記の方法によって行った。
【0027】
A.物性の測定
(1)比重
予め計量した変性PTFE組成物12.0±0.1gを内径28.5mmの金型に入れ、プレス機(エヌピーエーシステム社製)を用い、室温(23℃)、600kg/cm2の荷重で2分間保持して円柱状予備成形品を得た。得られた予備成形品を精密シンター炉(フォートシステム社製)を用い、2℃/分で290℃から380℃まで昇温し、380℃±3℃で30分±10秒保持し、1℃/分で380℃から294℃まで降温し、294℃で1分保持して焼成した後、取り出して室温(23℃)にて2時間静置冷却し、直径28.5mm、厚み9.5mmの円柱状成形品(チップ)2個を得た。得られたチップ(2個)の重量を空気中、及び0.1wt%Triton(登録商標)X−100水溶液中にて各々測定し、下記式にて得られる比重の平均値(n=2)を求めた。
比重=空気中のチップ重量/(空気中のチップ重量−水溶液中でのチップ重量)
【0028】
(2)引張強度、及び伸び値
ASTM D−1457に準拠し、予め計量した変性PTFE組成物14.5±0.1gを3インチねじ込み金型に入れ、ねじ込み高さを調整しながら変性PTFE組成物を平らにならした後、プレス機(エヌピーエーシステム社製)を用い、室温(23℃)、600kg/cm2の荷重で3分間保持して円盤状のシートを得た。得られた予備成形品を精密シンター炉(フォートシステム社製)を用い、2℃/分で290℃から380℃まで昇温し、380℃±3℃で30分±10秒保持し、1℃/分で380℃から294℃まで降温し、294℃で1分保持して焼成した後、取り出し室温(23℃)にて2時間静置冷却し、直径76.2mm、厚み1.8mmの円盤状成形品(シート)2枚を得た。得られたシート1枚につきダンベル形試験片(規格No.ASTM D−2116)を2枚、計4枚のダンベル形試験片を打ち抜いた。
得られたダンベル形試験片4枚の引張強度及び伸び値を、クロスヘッド速度毎分51±1mm、掴み間隔22.2±0.5mmに調整したストログラフ(商品名)引張試験機(東洋精機社製)を用いて測定し、引張強度の平均値(n=4)、及び伸び値の平均値(n=4)を求めた。
【0029】
(3)摩擦摩耗係数
予め計量した変性PTFE組成物400±0.1gを内径50.0mmの金型に入れ、プレス機(エヌピーエーシステム社製)を用い、室温(23℃)、600kg/cm2の荷重で3分間保持して円柱状予備成形品を得た。
得られた予備成形品をシンター炉(東上熱学株式会社製)を用い、1℃/1分で室温(23℃)〜300℃まで昇温し、1℃/3分で300℃から370℃まで昇温し、370℃で3時間保持し、1℃/3分で370℃から150℃まで降温し、1℃/分で150℃から室温(23℃)まで降温して焼成した後、取り出して室温(23℃)にて2時間静置冷却し、直径50mm、高さ100mmの円柱状成形品を得た。得られた円柱状成形品から、外径25.7mm、内径20mm、高さ20mmのリングを切削加工し試験片とした。
得られた試験片の摩擦係数及び摩耗係数を、JIS K7218(A法)に準拠し、2連式摩擦摩耗試験機(株式会社インテスコ製品)を用い、相手材としてSS−41(一般構造用圧延鋼材、JIS G3101(2004)記載)、荷重6.0kg/cm2 、摺動速度0.5m/sの条件下で24時間摺動を行い測定した。
【0030】
(4)摺動温度
オリエンテック製EFM−3F型機を用い、熱電対の先端を相手材の摺動面より約2mm上部にセットして測定を行なった。
【0031】
(5)圧縮クリープ
前記摩擦係数及び摩耗係数の測定と同様にして直径50mm、高さ100mmの円柱状成形品を得た。得られた円柱状成形品から縦、横、高さがそれぞれ12.7±0.5mmの立方体を切削加工し、試験片とした。
得られた試験片の圧縮クリープを、ASTM D−621に準拠し、6連式圧縮クリープ試験機(株式会社オリエンテック製品)を用いて測定した。24Hr変形は温度23℃、荷重140kgf/cm2 にて24時間保持した後の圧縮クリープを測定し、永久変形は測定温度23℃、荷重140kgf/cm2にて24時間保持し、室温(23℃)無荷重にて24時間静置した後の圧縮クリープを測定した。MDは圧縮方向、CDは圧縮方向に対して直角である垂直方向を表す。
【0032】
B.原料
本発明の実施例、および比較例で用いた原料は下記の通りである。
(1)PTFE粉末
三井・デュポンフロロケミカル製、懸濁重合により得られたPTFE粉末(平均粒子径:5〜100μm)。
(2)変性PTFE粉末
三井・デュポンフロロケミカル製、米国特許第3,855,191号に記載される懸濁重合により得られた変性PTFE粉末(パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)の含有量が0.05重量%のテトラフルオロエチレン・パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体、平均粒子径:5〜100μm)。
(3)コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子
帝人テクノプロダクツ株式会社製、テクノーラ(登録商標)、(平均粒径25μm)
(4)グラファイト
呉羽化学工業株式会社製、(平均繊維径14.5μm、平均繊維長120μm)
【0033】
(実施例1〜3、及び比較例1〜3)
表1に示す割合にて、変性PTFE粉末、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子、グラファイトをヘンシェルミキサーに投入し、回転数1600rpmで5分間混合して、変性PTFE脂組成物を得た。得られた変性PTFE組成物の比重、引張強度(MPa)、伸び(%)、圧縮クリープ(%)、摩耗係数(cm3 ・sec・10-6 /MPa・m・hr)、摩擦係数、摺動温度を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の変性PTFE組成物は、無機材料より硬度が柔らかい有機系フィラーであるパラ型アラミド粒子(コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子)と、変性PTFEとを含むことにより、本発明PTFE組成物を成形して得られる成形品は、耐圧縮クリープ特性を維持しつつ、摩耗特性が向上された成形品となる
。本発明の変性PTFE組成物を成形して得られる摺動部材やシール材等は、アルミニウム等の軟質金属からなる相手材に対しても相手材を摩耗損傷し難く、且つ自己摩耗し難い(異常摩耗を起こさない)、優れた特性を有するものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンに対し1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体との共重合体の少なくとも1種と、平均粒子径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子とを含む変性ポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項2】
共重合体の重量に対し、1〜40重量%の平均粒子径20〜50μmのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド粒子を含む請求項1記載の変性ポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項3】
1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体が、不飽和フッ素化炭化水素、不飽和フッ素化塩素化炭化水素、及びエーテル基含有不飽和フッ素化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体である請求項1または2記載の変性ポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項4】
1.0重量%以下の割合の共重合可能な単量体が、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、及びビニルフルオライドからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体である請求項1〜3のいずれかに記載の変性ポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の変性ポリテトラフルオロエチレン組成物を成形して得られる摺動部材。

【公開番号】特開2011−241308(P2011−241308A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115087(P2010−115087)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【Fターム(参考)】