説明

変性ポリビニルラクタム

変性ポリビニルラクタムおよびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
0.01〜20質量%の少なくとも1つの一般式(I)のエチレン性不飽和化合物(モノマーA)と、
50〜99.99質量%の少なくとも1つの一般式(VII)のN−ビニルラクタム(モノマーB)と、
0〜49.99質量%のモノマーAおよびモノマーBとは異なる少なくとも1つのさらなるエチレン性不飽和化合物(モノマーC)と、
を重合導入された形態で含み、モノマーA、B、およびCの総量が100質量%(全モノマー量)になるコポリマーであって、
このとき式(I)は、R−(C=O)−R1
[式中、
Rは、直鎖C1〜C4アルキル基、分岐状の、場合によっては置換されたC3もしくはC4アルキル基、アリール基、または基R1であり、
1は、基
【化1】

であり、このとき基R2〜R6は、互いに同様または異なり、これらは水素、アルキル、アリール、OH、OCH3、OC25、SH、SCH3、SC25、F、Cl、Br、CN、CO2H、CO2アルキル、CO2アリール、CF3、N(アルキル)2、N(アルキル)(アリール)、N(アリール)2、N+(アルキル)3-、N+H(アルキル)2-であり、このときA-は、酸のアニオンであり、基R2〜R6のうちの少なくとも1個以上多くとも3個以下は、基
【化2】

のうちの1つであり、このとき、
Xは、二価の、場合によっては置換されたアルキレン基−(CH2m−、基
【化3】

(m=1〜10であり、R’およびR’’は、互いに同様または異なり、これらは水素、アルキル、アリール、CO2H、CO2CH3、またはCO225である)、過フッ素化されたアルキレン基−(CF2m−(m=1〜10)、−(CH2n−O−(CH2p−型のオキサアルキレン基、−(CF2n−O−(CF2p−型の過フッ素化されたオキサアルキレン基(n=1〜5であり、p=1〜5である)、または少なくとも1つの−CH2−基、−CF2−基、もしくは−CH2−CH(CH3)−基を介して互いに連結された2〜20個の酸素原子を有する、場合によっては過フッ素化されたポリオキサアルキレン基、または−(CH2a−O−CO−O(CH2b−型、−(CH2a−O−CO−NH−(CH2b−型、−(CH2a−NH−CO−O−(CH2b−型、−(CH2a−CO−(CH2b−型、もしくは−(CH2a−O−CO−(CH2b−型のアルキレン基(a=1〜10であり、b=1〜10である)、場合によってはo−位、m−位、および/またはp−位でアルキル、OH、OCH3、OC25、SH、SCH3、SC25、Cl、F、N(アルキル)2、もしくはN(CH3)C65で置換されたフェニレン基、あるいは5〜10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、または6〜12個の炭素原子を有する(ビス)メチレンシクロアルキレン基であり、
Yは、水素、アルキル、またはアリールであり、
Zは、OまたはNYであるか、
あるいは、Rがアリール基である場合、基R2またはR6のうちの1つは、o−位でアリール基RをR1と結合する硫黄原子であってもよい]であり、
式(VII)は、
【化4】

[式中、
PおよびQは、互いに独立して、水素および/またはアルキルであり、
dは、整数2〜8である]である、コポリマーを提供する。
【0002】
本発明は、本発明のコポリマーを製造するための方法をさらに提供し、また極めて幅広い応用分野における、特にポリマー膜の孔形成および恒久親水化のためのその使用を提供する。
【0003】
UV放射線に対して感受性を有する基を含むコポリマーは、当業者には周知である(これに関しては、例えば、欧州特許公開公報第246848号、欧州特許公開公報第377191号、欧州特許公開公報第377199号、または欧州特許公開公報第1478671号を参照)。この種のコポリマーは、一般に、放射線感受性基を担持するモノマーと、疎水性モノマー単位から実質的に構成される別のモノマー、例えばα,β−モノエチレン性不飽和C3〜C6モノカルボン酸もしくはジカルボン酸のアルキルエステル、ビニル芳香族化合物、ビニルアルコールのアルキルエステル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、または共役C4-8ジエンとを重合させることによって製造される。この種の重合において、親水性モノマー、特にα,β−モノエチレン性不飽和C3〜C6モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、およびそれらのアミドは、少量でしか使用されない。一般的には、得られるポリマーは水不溶性であるか、あるいは非常に限られた程度に水溶性であり、そのため多数の応用分野で使用することができない。
【0004】
したがって、本発明の目的は、放射線感受性基を含み、親水性モノマー単位から実質的に構成され、そのため良好な水への溶解性を有するコポリマーを提供することであった。
【0005】
驚くべきことに、この目的は、冒頭に定義したコポリマーによって達成された。
【0006】
本明細書に関連して、「アルキル」は、直鎖状または分岐状のC1〜C24アルキル基、好ましくはC1〜C10アルキル基、より具体的にはC1〜C4アルキル基を表わし、「アリール」は、C6、C10、もしくはC14の単環式もしくは多環式の芳香族基、例えばフェニル、1−もしくは2−ナフチル、1−、2−、もしくは9−アントラセニル、および1−、2−、もしくは9−フェナントリルを表わし、これらは適切な場合には、1つ以上の置換基、とりわけ、ヒドロキシル、ジアルキルアミノ、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、および臭素、アルキルオキシ、例えばメトキシ、エトキシ、およびn−ブトキシ、またはアルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、およびn−ブトキシカルボニルなどでさらに置換されていてもよい。好適なアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、または2−エトキシエチルであり、好適なアリール基は、フェニル、p−クロロフェニル、およびトリルである。
【0007】
使用されるモノマーAは、一般式(I)の化合物であり、
[式中、
Rは、直鎖C1〜C4アルキル基、好ましくはメチル、エチル、またはn−プロピル、分岐状の、場合によって置換されたC3もしくはC4アルキル基、例えばイソプロピル、2−ヒドロキシイソプロピル、2−ジメチルアミノイソプロピル、2−モルホリノイソプロピル、またはtert−ブチル、アリール基、例えばフェニル、o−、m−、もしくはp−トリル、1−もしくは2−ナフチル、あるいは基R1であり、
1は、基
【化5】

[式中、
基R2〜R6は、互いに同様または異なり、これらは水素、アルキル、アリール、OH、OCH3、OC25、SH、SCH3、SC25、F、Cl、Br、CN、CO2H、CO2アルキル、CO2アリール、CF3、N(アルキル)2、N(アルキル)(アリール)、N(アリール)2、N+(アルキル)3-、N+H(アルキル)2-であり、このときA-は、酸のアニオン、例えばCl-、SO42-、PO43-、CH3CO2-、BF4-、CF3SO3-、SbF6-、AsF6-、またはPF6-であり、基R2〜R6のうちの1個以上3個以下は、基
【化6】

のうちの1つであり、このとき、
Xは、二価の、場合によっては置換されたアルキレン基−(CH2m−、基
【化7】

(m=1〜10であり、R’およびR’’は、互いに同様または異なり、これらは水素、アルキル、アリール、CO2H、CO2CH3、またはCO225である)、過フッ素化されたアルキレン基−(CF2m−(m=1〜10)、好ましくはペルフルオロエチレン基、−(CH2n−O−(CH2p−型のオキサアルキレン基、−(CF2n−O−(CF2p−型の過フッ素化されたオキサアルキレン基(n=1〜5であり、p=1〜5である)、例えばテトラフルオロエチレン、または少なくとも1つの−CH2−基、−CF2−基、もしくは−CH2−CH(CH3)−基を介して互いに連結された2〜20個の酸素原子を有する、場合によっては過フッ素化されたポリオキサアルキレン基、または−(CH2a−O−CO−O(CH2b−型、−(CH2a−O−CO−NH−(CH2b−型、−(CH2a−NH−CO−O−(CH2b−型、−(CH2a−CO−(CH2b−型、もしくは−(CH2a−O−CO−(CH2b−型のアルキレン基(a=1〜10であり、b=1〜10である)、場合によってはo−位、m−位、および/またはp−位でアルキル、OH、OCH3、OC25、SH、SCH3、SC25、Cl、F、N(アルキル)2、もしくはN(CH3)C65で置換されたフェニレン基、あるいは5〜10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、または6〜12個の炭素原子を有する(ビス)メチレンシクロアルキレン基であり、
Yは、水素、アルキル、またはアリールであり、
Zは、OまたはNYであるか、
あるいは、Rがアリール基である場合、基R2またはR6のうちの1つは、o−位でアリール基RをR1と結合する硫黄原子であってもよい]である。
【0008】
これらのモノマーAの製造は、例えば、欧州特許公開公報第377191号(基R2〜R6のうちの少なくとも1つは、式(II)および(III)の構造要素である)、欧州特許公開公報第1478671号(基R2〜R6のうちの少なくとも1つは、式(IV)の構造要素である)から当業者には公知である。これらの明細書において開示されているモノマーAに相当する化合物は、この明白な言及により、本明細書の一部とみなされるものとする。さらに、この種のモノマーAは、例えば、市販製品Uvercryl(登録商標) P 36(Sigma−Aldrich Chemie GmbH社)またはEbecryl(登録商標) P 36(Cytec Surface Specialties Inc.社)(基R2〜R6のうちの少なくとも1つは、式(V)の構造要素である)として入手可能である。モノマーAとして好適なものは、欧州特許公開公報第377191号の実施例19〜34のモノマーAに相当する化合物、欧州特許公開公報第1478671号の4−ビニルオキシベンゾフェノン、ならびに前述の市販製品Uvercryl(登録商標) P 36およびEbecryl(登録商標) P 36である。特に好適なモノマーAは、一般式(I)の化合物であって、
[式中、
Rは、フェニルであり、
2、R3、R5、およびR6は、水素であり、
4は、式(II)の基であり、式中、
Xは、(CH24であり、
Yは、水素であり、
Zは、Oである化合物であるか、
あるいは、式中、
Rは、フェニルであり、
2、R3、R5、およびR6は、水素であり、
4は、式(IV)の基であり、式中、
Yは、水素であり、
Zは、Oである化合物であるか、
あるいは、式中、
Rは、p−クロロフェニルであり、
2、R3、R5、およびR6は、水素であり、
4は、式(V)の基であり、式中、
Xは、(CH22であり、
Yは、水素であり、
Zは、Oである]化合物である。
【0009】
本発明のコポリマー中のモノマーAの総量は、共重合された形態で、0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0010】
使用されるモノマーBは、一般式(VII)
【化8】

[式中、
PおよびQは、互いに独立して、水素および/またはアルキルであり、
dは、整数2〜8である]のN−ビニルラクタムである。
【0011】
このとき、PおよびOは、互いに独立して、水素および/またはC1〜C8アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、およびn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、またはn−オクチル、およびそれらの異性体アルキル基であってもよい。PおよびOとして好適なものは、水素およびメチルである。水素は特に好適である。N−ビニルラクタム(VII)は、メチル基を含まないか、あるいは合計1つのメチル基のみを含むことが多い。
【0012】
本発明によると、dは、整数2〜8であり、しばしば3、4、5、6、および7である。とりわけ、dは3および5である。
【0013】
モノマーBの例は、以下のラクタムのN−ビニル誘導体である:2−ピロリドン、2−ピペリドン、ε−カプロラクタム、およびそれらのアルキル誘導体、例えば、3−メチル−2−ピロリドン、4−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、3−エチル−2−ピロリドン、3−プロピル−2−ピロリドン、3−ブチル−2−ピロリドン、3,3−ジメチル−2−ピロリドン、3,5−ジメチル−2−ピロリドン、5,5−ジメチル−2−ピロリドン、3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、5−メチル−5−エチル−2−ピロリドン、3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、3−メチル−2−ピペリドン、4−メチル−2−ピペリドン、5−メチル−2−ピペリドン、6−メチル−2−ピペリドン、6−エチル−2−ピペリドン、3,5−ジメチル−2−ピペリドン、4,4−ジメチル−2−ピペリドン、3−メチル−ε−カプロラクタム、4−メチル−ε−カプロラクタム、5−メチル−ε−カプロラクタム、6−メチル−ε−カプロラクタム、7−メチル−ε−カプロラクタム、3−エチル−ε−カプロラクタム、3−プロピル−ε−カプロラクタム、3−ブチル−ε−カプロラクタム、3,3−ジメチル−ε−カプロラクタム、または7,7−ジメチル−ε−カプロラクタム。当然ながら、共重合された形態で2つ以上のモノマーBが存在していてもよい。特に有利に使用されるものは、N−ビニルピロリドンおよび/またはN−ビニルカプロラクタムであり、N−ビニルピロリドンが特に好適である。
【0014】
本発明のコポリマー中のモノマーBの総量は、共重合された形態で、50〜99.99質量%、好ましくは90〜99.9質量%、特に好ましくは95〜99.9質量%である。
【0015】
適切なモノマーCには、モノマーAおよびBと簡単にラジカル共重合することができる全てのエチレン性不飽和化合物、例えば、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン、またはビニルトルエン、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニルまたは塩化ビニリデン、ビニルアルコールと1〜18個の炭素原子を有するモノカルボン酸とのエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニル−n−ブチレート、ビニルネオデカノエート、ラウリン酸ビニル、およびステアリン酸ビニル、好ましくは3〜6個の炭素原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸、より具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸などと、一般に1〜12個、好ましくは1〜8個、より具体的には1〜4個の炭素原子を有するアルカノールとのエステル、とりわけ、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、および2−エチルヘキシルのアクリレートおよびメタクリレート、ジメチルもしくはジ−n−ブチルフマレートおよびマレエート、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、およびマレオニトリル、ビニルアルコールと1〜18個の炭素原子を有するアルコールとのエーテル、例えばn−ブチル、シクロヘキシル、ドデシル、エチル、4−ヒドロキシブチル、またはオクタデシルビニルエーテル、ならびにC4-8共役ジエン、例えば1.3−ブタジエン(ブタジエン)およびイソプレンが含まれる。原則として、これらのモノマーは、標準条件下(20℃、1atm(絶対))の水中で、中程度から低い溶解性しか有さない。普通は、前述のモノマーCは、それぞれモノマーCの総量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下の量で、変性用モノマーとしてのみ使用する。しかしながら、特に好ましくは、そのようなモノマーCは全く用いない。
【0016】
前述の条件下で改善された水溶性を示すモノマーCは、少なくとも1つのカルボン酸基またはスルホン酸基、またはその相当するアニオン、および/または少なくとも1つのアミノ基、アミド基、ウレイド基、またはN−複素環式基、および/または窒素でアルキル化またはプロトン化されたそれらのアンモニウム誘導体を含むものである。例として、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、およびイタコン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、およびそれらの水溶性塩、有利にはそれらのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、ならびに2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、および2−(1−イミダゾリン−2−オンイル)エチルメタクリレートを挙げることができる。提示したモノマーは、一般に主モノマーを形成し、これはモノマーCの総量に対して、50質量%以上、好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上の割合を占め、あるいはさらにモノマーCの総量をなす。しかしながら、特に好ましくは、そのようなモノマーCは全く用いない。
【0017】
通例ポリマーマトリックスのフィルムの内部強度を強化するモノマーCは、普通は、少なくとも1つのヒドロキシル基、少なくとも1つのエポキシ基、および/または少なくとも1つのカルボニル基、あるいは少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する。この種のモノマーCの例は、2つのビニル基を含有するモノマー、2つのビニリデン基を含有するモノマー、および2つのアルケニル基を含有するモノマーである。この関連で特に有利なものは、二価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルであり、このモノカルボン酸の中でもアクリル酸およびメタクリル酸は好適である。2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を含有するこの種のモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリレートおよびアルキレングリコールジジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、およびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ならびにジビニルベンゼン、N,N’−ジビニルエチレン尿素、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレート、またはトリアリルイソシアヌレートである。有利には、ヒドロキシル官能化されたアクリル酸もしくはメタクリル酸のアルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートもしくはメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートもしくはメタクリレート、または4−ヒドロキシブチルアクリレートもしくはメタクリレートなどを使用することも可能である。しばしば、前述の架橋性モノマーCは、それぞれモノマーCの総量に対して10質量%以下、好ましくは3質量%以下の量で使用される。しかしながら、特に好ましくは、そのようなモノマーCは全く用いない。
【0018】
本発のコポリマー中のモノマーCの総量は、共重合された形態で、0〜49.99質量%、好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0〜5質量%である。
【0019】
本発明のコポリマーの製造は重大な意味を持たず、これはモノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCの重合、好ましくはラジカル重合によって達成される。モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCのラジカル重合は、バルク重合の形態で、あるいは溶液重合の形態で実施することができる。
【0020】
本発明のコポリマーの製造において、適切な場合には、それぞれ一部または全量のモノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCを重合容器に装入することが可能である。あるいは、モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCのそれぞれ全量、または適切な場合には残部を重合反応中に計量供給することも可能である。この場合、モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCのそれぞれの全量、または適切な場合には残部は、不連続的に1回以上で、または連続的に一定のもしくは変化する体積流量で、重合容器に計量供給することができる。当然ながら、本発明は、段階法または勾配法によって得たコポリマーも包含する。有利には、これらのモノマーの少なくとも一部は、初期装入物中に含まれる。
【0021】
有利には、ラジカル重合は、例えば水または有機溶媒中で溶液重合の形態で実施する。モノマーA、B、および/またはCのラジカル開始溶液重合は、好ましくは、プロトン性もしくは非プロトン性の有機溶媒、特に好ましくはプロトン性溶媒中で実施する。適切なプロトン性有機溶媒には、重合条件下で分子中に少なくとも1つのイオン化可能なプロトンを含む、全ての有機溶媒が含まれる。この種の溶媒の例は、好ましくは、全ての直鎖状、分岐状、もしくは環式のC1〜C8アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパン−1−オール、2−メチルプロパン−2−オール、n−ペンタノールおよび異性体化合物、n−ヘキサノールおよび異性体化合物、n−ヘプタノールおよび異性体化合物、またはn−オクタノールおよび異性体化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、またシクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,2−シクロペンタンジオール、もしくは1,2−シクロヘキサンジオール、さらに前述のアルコールのアルコキシル化誘導体、特にエトキシル化誘導体および/またはプロポキシル化誘導体である。適切な非プロトン性有機溶媒には、重合条件下で分子中にイオン化可能なプロトンを含まない、全ての有機溶媒が含まれる。この種の溶媒の例は、芳香族炭化水素、例えばトルエン、o−、m−、p−キシレンおよび異性体混合物、およびエチルベンゼン、直鎖状もしくは環式の脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、ドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン、および前述の炭化水素と重合可能なモノマーを含まないベンジン留分との混合物、脂肪族もしくは芳香族のハロゲン化炭化水素、例えばクロロホルム、四塩化炭素、ヘキサクロロエタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、および液体C1および/またはC2ハイドロフルオロクロロカーボン、脂肪族のC2〜C5ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、またはバレロニトリル、直鎖状もしくは環式の脂肪族C3〜C7ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−および/または3−ヘキサノン、2−、3−、および/または4−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、直鎖状もしくは環式の脂肪族のエーテル、例えばジイソプロピルエーテル、1,3−もしくは1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、またはエチレングリコールジメチルエーテル、炭酸塩、例えば炭酸ジエチル、アミド、例えばジメチルアセトアミド、および脂肪族のC1〜C5カルボン酸もしくは芳香族カルボン酸と脂肪族C1〜C5アルコールとのエステル、例えばギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸tert−ブチル、ギ酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピオン酸アミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、酪酸イソブチル、酪酸tert−ブチル、酪酸アミル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸n−プロピル、吉草酸イソプロピル、吉草酸n−ブチル、吉草酸イソブチル、吉草酸tert−ブチル、吉草酸アミル、安息香酸メチル、または安息香酸エチル、ならびにラクトン、例えばブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、N−メチルピロリドン、またはN−エチルピロリドンである。
【0022】
しかしながら、それぞれの場合に使用されるラジカル開始剤が容易に溶解するプロトン性有機溶媒を選択することが好ましい。とりわけ、ラジカル開始剤だけではなく、本発明のコポリマーも容易に溶解するプロトン性有機溶媒が使用される。その上、例えば蒸留、不活性ガスストリッピング、および/または蒸気蒸留のような簡単な方法で、得られたコポリマー溶液から分離することができるプロトン性有機溶媒を選択することが特に好ましい。そのようなプロトン性有機溶媒の好適な例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、またはイソプロパノール、および相当するアルコール/水混合物である。溶媒が大気圧(1atmを1.013bar(絶対)と定義する)で、沸点140℃以下、しばしば125℃以下、とりわけ100℃以下を有するか、あるいは水とともに低沸点の水/溶媒共沸混合物を形成することは望ましい。当然ながら、2つ以上の溶媒の混合物を使用することも可能である。しかしながら、極めて好ましくは、重合は水性媒体中で実施する。
【0023】
本発明のコポリマーを製造するときの溶媒の量は、それぞれ100質量部の全モノマーに対して、1〜9900質量部、好ましくは100〜1900質量部、特に好ましくは150〜900質量部である。
【0024】
本発明のコポリマーの製造において、適切な場合には、重合容器への初期装入物中に、溶媒の一部または全量を含めることが可能である。しかしながら、重合反応中に、溶媒の全量または適切な場合には残部を計量供給することも可能である。これに関連して、溶媒の全量または適切な場合には残部は、不連続的に1回以上で、または連続的に一定のもしくは変化する体積流量で、重合容器に計量供給することができる。有利には、重合反応を開始する前に、モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCの全量/一部とともに、溶媒の一部を重合媒体として重合容器への初期装入物に含め、残部をモノマーAおよびB、さらに適切な場合にはC、およびラジカル開始剤とともに、重合反応中に計量供給する。
【0025】
モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCの重合を水性媒体中で実施する場合、ラジカル開始水性エマルジョン重合に関連して当業者が常用している、いわゆる水溶性ラジカル開始剤を使用するのが一般的である。対照的に、これらのモノマーの重合を有機溶媒中で実施する場合、ラジカル開始溶液重合に関連して当業者が常用している、いわゆる油溶性ラジカル開始剤を使用するのが普通である。本明細書の目的で、水溶性ラジカル開始剤とは、大気圧下、20℃で、脱イオン水に対する溶解度が1質量%以上の全てのラジカル開始剤であると理解され、一方油溶性ラジカル開始剤とは、前述の条件下で、溶解度が1質量%未満の全てのラジカル開始剤であると理解される。水溶性ラジカル開始剤は、しばしば、前述の条件下で、2質量%以上、5質量%以上、または10質量%以上の水溶性を有し、一方油溶性ラジカル開始剤は、しばしば、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、または0.1質量%以下の水溶性を有する。
【0026】
水溶性ラジカル開始剤は、この場合、例えば過酸化物あるいはアゾ化合物のいずれかであってもよい。使用することができる過酸化物は、原則として、無機過酸化物、例えば過酸化水素、またはペルオキソ二硫酸塩、例えばペルオキソ二硫酸のモノアルカリ金属塩もしくはジアルカリ金属塩、またはモノアンモニウム塩もしくはジアンモニウム塩、例えばそのモノナトリウム塩、ジナトリウム塩、モノカリウム塩、ジカリウム塩、またはモノアンモニウム塩、もしくはジアンモニウム塩、あるいは有機ヒドロペルオキシド、例えばアルキルヒドロペルオキシド、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンチルヒドロペルオキシド、またはクミルヒドロペルオキシドである。使用されるアゾ化合物は、基本的に、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロピル)二塩酸塩、または2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩である。
【0027】
油溶性ラジカル開始剤の例には、ジアルキル過酸化物およびジアリール過酸化物、例えば過酸化ジ−tert−アミル、過酸化ジクミル、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、過酸化tert−ブチルクメン、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキセン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、または過酸化ジ−tert−ブチル、脂肪族および芳香族のペルオキシエステル、例えばクミルペルオキシネオデカノエート、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシネオデカノエート、tert−ブチルペルオキシネオデカノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセテート、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシイソブタノエート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシアセテート、tert−アミルペルオキシベンゾエート、またはtert−ブチルペルオキシベンゾエート、過酸化ジアルカノイルおよび過酸化ジベンゾイル、例えば過酸化ジイソブタノイル、過酸化ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)、過酸化ジラウリル、過酸化ジデカノイル、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、または過酸化ジベンゾイル、ならびにペルオキシジカーボネート、例えばビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−tert−ブチルペルオキシジカーボネート、ジアセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、またはtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートがある。使用される高油溶性のアゾ開始剤の例には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、および4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)がある。
【0028】
使用される好適なアゾ型のラジカル開始剤は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2.2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、または2,2’−アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩を含む群から選択される化合物である。前述のラジカル開始剤の混合物を使用することも当然可能である。
【0029】
本発明のコポリマーの製造に使用するラジカル開始剤の量は、それぞれ全モノマー量に対して、一般に0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは1〜4質量%である。
【0030】
本発明のコポリマーの製造に関連して、適切な場合には、重合容器への初期装入物中に、ラジカル開始剤の一部または全量を含めることが可能である。しかしながら、重合反応中に、ラジカル開始剤の全量または適切な場合には残部を計量供給することも可能である。その場合、ラジカル開始剤の全量または適切な場合には残部は、不連続的に1回以上で、または連続的に一定のもしくは変化する体積流量で、重合容器に計量供給することができる。特に有利には、ラジカル開始剤は、重合反応中に連続的に一定の体積流量で、より具体的にはラジカル開始剤と使用する溶媒との溶液の形態で、計量供給する。
【0031】
好適な一実施形態において、モノマーA、B、および適切な場合にはCの全量を溶媒中の初期装入物に含め、ラジカル重合開始剤を重合条件下、不連続的に2回以上に分けて計量供給する。
【0032】
本発明のコポリマーは、有利には、10以上130以下の範囲のK値を有する(1質量%濃度の水溶液として25℃で測定)。特に有利には、このコポリマーは、20以上100以下の範囲のK値を有する。本発明のコポリマーを製造する際のK値の設定は、当業者には周知であり、有利には、ラジカル連鎖調節剤と称されるラジカル連鎖移動化合物の存在下でのラジカル開始溶液重合によって達成される。K値の測定も当業者には周知である(例えば、H. Fikentscher, "Systematik der Cellulosen aufgrund ihrer Viskositaet in Loesung", Cellulose−Chemie 13 (1932)の第58頁〜第64頁および第71頁〜第74頁、またはEncyclopedia of Chemical Technology, Vol. 21, 2nd edition (1970)の第427頁および第428頁を参照)。
【0033】
適切なラジカル連鎖調節剤の例は、イソプロパノール、または結合された形で硫黄を含む有機化合物である。これらには、例えば、メルカプト化合物、例えばメルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、ブチルメルカプタン、およびドデシルメルカプタンが含まれる。さらなるラジカル連鎖調節剤は、当業者に周知である。ラジカル連鎖調節剤の存在下で重合を実施する場合、全モノマー量に対して0.01〜10質量%を用いることが一般的である。
【0034】
本発明のコポリマーを製造する際に、重合媒体中の初期装填物に、ラジカル連鎖調節剤の少なくとも一部分を含め、適切な場合には、ラジカル重合反応が開始後に、残部をその重合媒体に添加することが可能であり、この2回目の添加は、不連続的に1回で、不連続的に2回以上で、および連続的に一定もしくは変化する体積流量で行なう。
【0035】
モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCの性質および量を巧妙に変化させることによって、当業者は、本発明に従って、−60〜270℃の範囲のガラス転移温度または融点を有するコポリマーを製造することができる。本発明によると、有利には、コポリマーのガラス転移温度は、40℃以上250℃以下、好ましくは100℃以上≦200℃以下である。
【0036】
ガラス転移温度Tgは、ガラス転移温度の限界値であり、G. Kanig(Kolloid−Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere, Vol. 190、第1頁、方程式1)によれば、前記温度は、分子量の増加に伴ってその限界値に近づく。ガラス転移温度または融点は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中間点測定、DIN 53765)によって測定される。
【0037】
Fox(T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956 [Ser. II] 1, page 123、およびUllmann’s Encyclopaedie der technischen Chemie, Vol. 19, page 18,4th edition, Verlag Chemie, Weinheim, 1980)によると、わずかな架橋度を有するコポリマーのガラス転移温度の場合、
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+・・・xn/Tgn
[式中、
1、x2・・・xnは、モノマー1、2・・・nの質量分率であり、Tg1、Tg2・・・Tgnは、それぞれモノマー1、2・・・nのうちの1つのみから構成されたポリマーのガラス転移温度(Kelvin温度)である]に良好に近似する。ほとんどのモノマーのホモポリマーのTg値は既知であり、例えば、Ulimann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry. 5th edition, Vol. A21. page 169, VCH Weinheim. 1992に記載されている。ホモポリマーのガラス転移温度のさらなる出典には、例えば、J Brandrup, E. H. Immergut, Polymer Handbook, 1st ed., J, Wiley, New York, 1966、2nd ed., J. Wiley, New York, 1975、および3rd ed., J. Wiley, New York, 1989)がある。
【0038】
ラジカル開始重合は、使用するラジカル開始剤に応じて、通例、40〜180℃、好ましくは50〜150℃、より具体的には60〜110℃の範囲の温度で実施する。重合反応中の温度が、溶媒および/またはモノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCのうちの1つの沸点を上回るとすぐに、有利には圧力下(>1atm(絶対))で重合を実施する。温度および圧力条件は、当業者に周知であるか、あるいはいくつかの日常的な実験を行なうことにより、当業者が決定することができる。
【0039】
本発明のコポリマーは、空気の存在下で製造することができる。しかしながら、有利には、重合は、低酸素または無酸素の条件下、例えば窒素またはアルゴンなどの不活性ガス下で実施する。
【0040】
本発明のコポリマーは、常用の重合装置で製造することができる。この目的で、例えば、アンカー型攪拌機、ブレード型攪拌機、羽根型攪拌機、十字型攪拌機、MIG攪拌機、または多段インパルス向流攪拌機を備えた、ガラス製フラスコ(実験用)または攪拌槽(工業規模)を使用する。特に溶媒が少量のみ存在する重合の場合は、常用の1軸もしくは2軸(共回転式または反回転式)混練反応器、例えばList社製またはBuss SMS社製のものなどで重合を実施することは有利となりうる。
【0041】
本発明のコポリマーを有機溶媒中で製造する場合、この有機溶媒は、一般的に少なくとも部分的に、有利には50質量%以上または90質量%以上程度まで、特に好ましくは完全に除去し、このコポリマーを水、有利には脱イオン水中に装入する。対応する方法は、当業者に周知である。したがって、例えば、水での溶媒の置換は、例えば大気圧下、または減圧下(<1atm(絶対))で、1つ以上の段階において、溶媒を留去し、それを少なくとも部分的に、有利には完全に水に置き換えることによって行なうことができる。しばしば、蒸気を導入し、同時に溶媒を水に置き換えることによって、溶液から溶媒を除去することは有利となりうる。これは特に、有機溶媒が一定の蒸気揮発性を有する場合に当てはまる。
【0042】
特に有利な本発明のコポリマーは、20℃および1atm(絶対)で、脱イオン水1000g当たり100g以上、好ましくは300g以上、特に好ましくは500g以上の溶解性を有するものである。しばしば、コポリマーは、脱イオン水に対して無限の溶解性を示す。
【0043】
本発明によると、本発明のコポリマーは、コポリマー粉末の形態(例えば、コポリマー水溶液から、凍結乾燥、ローラー乾燥、または噴霧乾燥によって得ることができる)、あるいは水性媒体または有機溶媒中の溶液の形態で存在してもよく、この形態で本発明により使用することができる。コポリマー粉末または水性媒体中の本発明のコポリマーの溶液を使用することは有利である。とりわけ、コポリマーの重合が行なわれた水性媒体、または有機溶媒の水での置換後に得られた水性媒体中の本発明のコポリマーを使用する。
【0044】
本発明の方法によって得ることができるコポリマーは、一方では水性媒体中の増粘剤としての機能を果たし、他方では水溶性の、またはUV照射後に水不溶性となるフィルムを形成することができる。したがってそれらは、より具体的には、化粧品および医薬製剤において、例えば、ヘアラッカー、整髪剤、もしくはヘアスプレー中の添加剤または賦形剤として、皮膚用の化粧品において、皮膚接着ゲルとして、あるいは免疫化学物質、例えばカテーテルコーティング剤として使用される。本発明のコポリマーの具体的な製薬上の用途には、とりわけ湿潤もしくは乾燥結合剤、マトリックス遅延剤もしくはコーティング遅延剤(持続放出投与剤形)、即時放出コーティング剤、およびパンコーティング補助剤としてのそれらの使用が包含される。本発明のコポリマーは、さらに、農業化学のための助剤として、例えば種子コーティング用、または土壌放出肥料配合物用の助剤として、あるいは魚飼料顆粒の製造における助剤としても使用することができる。
【0045】
本発明のコポリマーは、その有機顔料および無機顔料の双方に対する高い分散作用により、錆防止剤または金属表面からの錆除去剤として、スケール防止剤またはスケール除去剤として、染料顔料分散液中、例えば印刷用インク中の分散剤として適している。これに関連して、インクジェット記録媒体、インクペンペースト、およびボールペンペーストのための本発明のコポリマーの使用も挙げることができる。
【0046】
技術的応用の観点から同様に興味深いことは、本発明のコポリマーが、さらなる有機化合物、例えば低級炭化水素、フェノール、タンニン、または種々の抗酸化剤と、酵素およびタンパク質と、および別の有機ポリマーと複合体を形成する強い傾向である。さらに、本発明のコポリマーは、無機化合物、特に過酸化水素、金属、または金属塩とも複合体を形成することができる。したがって、本発明のコポリマーは、イオン交換体において水性媒体からタンニン、フェノール、タンパク質、または多価カチオンを除去するために、例えば殺菌剤において過酸化水素を安定化するために、または例えば保存料において抗酸化剤を安定化するために、有利に使用することができる。本発明のコポリマーは、さらに、金属コロイドを安定化するためにも使用することができる。これに関連して、銀析出のための貴金属結晶化核の製造するため、さらにハロゲン化銀エマルションの安定剤としての本発明のコポリマーの使用も挙げることができる。
【0047】
本発明のコポリマーは、さらに、表面特性および界面特性を変性するためにも適している。したがってこれらは、例えば表面を親水化するために使用することができ、そのため織物用助剤として、例えば、織物の着色手順における吸尽助剤およびレベリング助剤として、またはテキスタイル捺染法における増白剤として使用することができる。本発明のコポリマーは、その表面変性作用により、有機物質および無機物質をコーティングするために、例えばポリオレフィンに、ガラスに、およびガラス繊維に使用することができる。これに関連して、油水からの油の回収における助剤として、原油および天然ガスの抽出における助剤として、さらに原油および天然ガスの輸送のための本発明のコポリマーの使用も挙げることができる。さらに、本発明のコポリマーは、排水の浄化における助剤として、凝集補助剤としてあるいは排水から残留塗料および残留油を除去する際に使用される。本発明のコポリマーは、さらに、相間移動触媒として、また溶解度向上剤として使用することができる。
【0048】
本発明のコポリマーは、さらに、ポリオレフィンの着色において、界面活性剤中の色移り防止剤として、写真用拡散転写材料のための混色防止剤として、染料の付着促進剤として、リソグラフィ用の助剤として、フォト−イメージングのために、ジアゾタイプ法のために、金属鋳造用助剤および金属硬化用助剤として、金属急冷浴中の助剤として、ガス分析における助剤として、セラミック結合剤中の成分として、特殊紙のための製紙助剤として、紙用コーティングスリップ中の結合剤として、ギプス包帯中の結合剤成分として使用される。
【0049】
本発明のコポリマーは、さらに、プロトン伝導体としても適しており、導電層中で、例えば電荷移動カソード中で、固体電解質として、固体電池、とりわけリチウム電池などにおいて使用することができる。本発明のコポリマーから、コンタクトレンズ、合成繊維、空気フィルタ、例えばたばこ用フィルタ、または膜を製造することも可能である。さらに、本発明のコポリマーは、耐熱層、感熱層、および感熱抵抗において使用される。
【0050】
本発明のコポリマーは、コポリマーの光化学架橋が有利となる応用例に特に有利に適している。これらの利点は、例えば、表面への付着、または架橋されたゲルまたは部分的に架橋されたゲルの生成である。したがって、本発明のコポリマーおよび/またはそのようなコポリマーを含む配合物は、特に薬物の持続放出投与剤形のためのコーティング遅延剤およびゲル形成剤の用途に、種子コーティングに、光化学的に架橋可能な接着剤および接着ゲル、特に皮膚接着ゲルに、インクジェット記録媒体に、印刷用インクに、例えば繊維、フィルム、ガラス、およびあらゆる種類の表面用のコーティング材料に、膜、特にポリマー膜におけるコポリマーの光化学的固定に、より具体的には、膜表面を恒久的に親水性にして、それによりその親水化が洗浄によって除去されないようにするために、有利に適している。
【0051】
本発明のコポリマーは、種子のコーティング材料または処理剤(Beize)として、医薬の結合剤またはコーティング材料として、化粧品調製物におけるフィルム形成剤または増粘剤として、接着剤またはスティック接着剤中の接着成分として、紙、ガラス繊維、または医療用カテーテルのためのコーティング材料として、塗料およびワニスの製造における結合剤として、あるいはポリマー膜の孔形成および恒久親水化のために特に有利に使用される。
【0052】
本発明のコポリマーのフィルムは、コポリマー溶液を基板上または基板中に導入し、その後、大気圧(Normaldruck)下または減圧下で、例えば加熱することによって溶媒を除去し、この方法において、コポリマーはこの手順の間にコポリマーのガラス転移温度または相当するフィルム形成温度よりも高い温度でフィルムを生じ、その後、得られたコポリマーフィルムにUV光を照射して、新しい改善された特性、例えば低下した水溶性、向上した硬度、または改善された伸張性などを有する架橋コポリマーフィルムを形成する。使用することができるUV光源は、常用の光源、例えば低圧、中圧、もしくは高圧水銀蒸気ランプであり、これは出力20〜100J/秒×cm2を有してよい。より高い出力のランプは、一般により迅速な架橋を可能にする。一部の例では、架橋照射工程において、ランプのIR成分により、残留溶媒を同時に除去することができる。
【0053】
本発明のコポリマーをポリマー膜の孔形成および恒久親水化のために使用する場合、とりわけ極性非プロトン性溶媒に対して良好な溶解性を有するが、水性媒体に対する溶解性はごくわずかしか有さないかまたは全く有さない合成ポリマー、例えばポリスルホン、例えばポリエーテルスルホン、特に、Ultrason(登録商標)の商標名でBASF SE社から、またRadel(登録商標)およびUdel(登録商標)の商標名でSolvay GmbH社から販売されている芳香族ポリスルホンポリマーを使用する。さらに、例えば、Kynar(登録商標) PVDFの商標名でArkema S.A.社から、Dyneon(登録商標) PVDFの商標名でDyneon GmbH社から、またはSolef(登録商標) PVDFの商標名でSolvay GmbH社から販売されているポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ならびに適切なポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリエーテル、セルロース誘導体、ポリソルベート、およびポリウレタンは、膜を製造する際に使用される。この膜は、当該合成ポリマーを本発明のコポリマーと一緒に、極性非プロトン性溶媒、特にジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、またはそれらの混合物に溶解し、適切な条件下でこれらの溶液からの沈殿を行なって、多孔質ポリマー膜を形成することによって製造する。
【0054】
これらの場合に、完成したポリマー溶液中の合成ポリマーの量が一般に10〜25質量%、好ましくは12〜20質量%、より具体的には14〜18質量%であり、本発明のコポリマーの量が一般に0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より具体的には2〜8質量%となるように量を選択する。本発明のコポリマー以外に、別の水溶性コポリマー、例えばビニルピロリドンホモポリマーもしくはコポリマーなどを使用することも可能である。
【0055】
ポリマー溶液は、一般に、濾過してから、当業者に周知の方法で、例えばいわゆる沈殿ノズルを用いて、沈殿媒体に導入する(これに関しては、例えば、K. Ohlrogge, K. Ebert, Membranen: Grundlagen, Verfahren und industrielle Anwendungen, Wiley−VCH−Verlag, Weinheim, 2006を参照)。
【0056】
これに関連して、沈殿媒体は、一般に、前述の極性非プロトン性溶媒のうちの1つと水との混合物から構成され、これは合成ポリマーの沈殿を開始するが、同様に親水性コポリマーを部分的に溶出して多孔質膜を形成する。当然ながら、この沈殿媒体は、常用の添加剤を含んでいてもよい。ポリマー溶液を沈殿媒体に導入する方法に応じて、平膜および中空糸膜が選択的に得られる。
【0057】
これに続く得られた多孔質膜のUV光での照射は、膜表面上に残っている本発明のコポリマーを架橋反応させ、その結果として、架橋した本発明のコポリマーは、水に対して不溶性となり、そのため膜表面に恒久的に付着しながら、架橋した本発明のコポリマー親水性特性は事実上変化しない。
【0058】
以下の非限定的な実施例は、本発明を説明することを目的としている。
【0059】
I.ポリマーの製造
ポリマーA
アンカー型撹拌機、還流コンデンサ、および窒素注入口を備えた2Lの4口フラスコに、20〜25℃(室温)および窒素雰囲気下で、N−ビニルピロリドン410gと、脱イオン水870gと、25質量%濃度のアンモニア水1.2gと、メチルエチルケトン中の4−[(ベンゾイルフェノキシ)カルボキシ]ブチルアクリレートの35質量%濃度の溶液11.5gとを装入し、得られた反応混合物を窒素雰囲気下で75℃まで加熱した。この温度に達すると、反応混合物を過酸化水素の30質量%濃度の水溶液10.0gおよび塩化銅(II)の0.01質量%濃度の水溶液0.5gと1回で混合した。これと同時に開始して、25質量%濃度のアンモニア水2.0gをこの重合混合物中に35分間かけて連続的に計量供給し、その後この重合混合物を85℃まで加熱し、その温度で25分間攪拌した。その後、過酸化水素の30質量%濃度の水溶液1.7gと、塩化銅(II)の0.01質量%濃度の水溶液0.2gを1回で添加し、この重合混合物を85℃で1時間攪拌した。その後、過酸化水素の30質量%濃度の水溶液2.9gと、塩化銅(II)の0.01質量%濃度の水溶液0.2gとを1回で添加し、この重合混合物を85℃でさらに1時間攪拌してから、室温まで冷却した。これにより、固形分32質量%のポリマー溶液を得た。得られたポリマーは、K値29を有した。
【0060】
固形分は、全般的に、所定の量のポリマー水溶液(およそ1g)を内径およそ5cmのアルミニウムるつぼに入れて、120℃の乾燥キャビネット内で恒量まで乾燥させた(約2時間)。それぞれ2回の測定を別々に実施した。実施例に示す数字は、それぞれ2回の測定結果の平均値を表わす。
【0061】
Fikentscherの方法によるK値の測定は、全般的に、25℃で、Schott Mainz社製の機器(毛細管:マイクロ−オストワルド;MO−Ic型)を用いて実施した。得られたコポリマー水溶液を脱イオン水と混合して得られた均一溶液は、ポリマー含有量1.0質量%であった。
【0062】
ポリマーB
アンカー型撹拌機、還流コンデンサ、および窒素注入口を装備えた2Lの4口フラスコに、室温および窒素雰囲気下で、N−ビニルピロリドン200gと脱イオン水950gとを装入し、25質量%濃度のアンモニア水を用いてpHを8.5に調整した。続いて、この水性初期装入物を75℃まで加熱した。温度70℃に達すると、イソプロパノール中の2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の25質量%濃度の溶液0.5gを1回で添加し、それと同時に開始して、N−ビニルピロリドン43.6gとメチルエチルケトン中の4−[(ベンゾイルフェノキシ)カルボキシ]ブチルアクリレートの35質量%濃度の溶液6.4gとの混合物を30分間かけて連続的に計量供給した。その後、この重合混合物を攪拌しながら75℃で30分間放置し、その後2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)のイソプロパノール溶液さらに0.5gを1回で添加し、この混合物を攪拌しながら75℃で60分間放置し、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)のイソプロパノール溶液さらに2.0gを1回で添加し、この混合物を攪拌しながら75℃で30分間放置し、次いでこの重合混合物を90℃まで加熱して、その温度で2時間放置した。得られたコポリマー溶液をギ酸を用いてpH3に調整し、30分間攪拌し、次いで25質量%濃度のアンモニア水を用いて中和し、その後およそ500mlの液体が重合容器から蒸留されて蒸留受器に入るまで、得られたポリマー溶液を蒸気で分離した。続いて、得られたポリマー溶液を室温まで冷却した。このようにして得たポリマー溶液は、固形分21質量%を有した。K値は93であった。
【0063】
ポリマーC
ポリマーCをポリマーBの場合と同様に製造したが、4−[(ベンゾイルフェノキシ)カルボキシ]ブチルアクリレートの代わりに、4−ビニルオキシベンゾフェノン2.4gを添加した点が異なった。得られたポリマー溶液は、固形分23質量%を有した。K値は90であった。
【0064】
ポリマーD
ポリマーDをポリマーBの場合と同様に製造したが、4−[(ベンゾイルフェノキシ)カルボキシ]ブチルアクリレートの代わりに、2−(アクリロイルオキシ)エチル4−(4−クロロベンゾイル)ベンゾエート(Uvecryl(登録商標) P36、Sigma−Aldrich Chemie GmbH社)2.4gを添加した点が異なった。得られたポリマー溶液は、固形分25質量%を有した。K値は95であった。
【0065】
ポリマーE(比較例1)
ポリマーEをポリマーAの製造の場合と同じように製造したが、4−[(ベンゾイルフェノキシ)カルボキシ]ブチルアクリレートを用いなかった点が異なった。得られたポリマー溶液は、固形分31質量%を有した。K値は31であった。
【0066】
ポリマーF(比較例2)
ポリマーFをポリマーBの製造の場合と同じように製造したが、4−[(ベンゾイルフェノキシ)カルボキシ]ブチルアクリレートを用いなかった点が異なった。得られたポリマー溶液は、固形分19質量%を有した。K値は、93であった。
【0067】
II.ポリマーフィルムの溶解度研究
前述のポリマー溶液全てを脱塩水で固形分15質量%に調整した。次いで、ポリマーEおよびFのポリマー溶液の一部を凍結乾燥させ、続いてイソプロパノールに装入して15質量%濃度のアルコール溶液を形成し、それぞれポリマー溶液の固形分に対して1質量%の市販の光開始剤、Irgacur(登録商標) 500およびDarocur(登録商標) 1173(Ciba Spezialitaetenchemie Lampertheim社製の市販製品)、ならびにベンゾフェノンとそれぞれ混合した。これらの調製物を5分間攪拌して均一に混合した。その後、ポリマーA〜Fのポリマー溶液、ならびに前述の光開始剤を添加したポリマーEおよびFのポリマー溶液を、8×30cmの大きさの油脂の付いていないガラスプレートに、フィルム厚500μmで2組分塗布し、そのようにして得たコーティングされたガラスプレートを23℃および相対湿度50%の空調チャンバー内で24時間乾燥させた。ガラスプレート上に得られたポリマーフィルムは、フィルム厚およそ50μmを有した。乾燥工程後、放射強度3700mJ/cm2の2つのeta plus M400−U2HCランプ(波長範囲180〜450nmのUVエミッタ)を有する、IST Strahlentechnik Metz GmbH社製のUV照射装置を用いて、コーティングしたガラスプレート1組を照射した。その後、コーティングしたガラスプレートを2組とも室温の脱イオン水に5分間垂直に浸漬させ、その後コーティングしたガラスプレートを綿布で軽く叩いて乾燥させ、それらのコーティングに関する目視評価を行なった。得られた結果を下表に記載する。
【表1】

【0068】
これらの結果から、本発明のコポリマー(ポリマーA〜D)は、UV光の照射後に、水不溶性の、場合によっては容易に膨潤するフィルムを形成した一方、UV照射していない相当するポリマーフィルムは、水に完全に溶解したことがまさに明らかである。対照的に、共重合した形態の一般式(I)のモノマーを含まない、あるいはUV光開始剤が後で別個の成分として混合されたポリビニルピロリドン(ポリマーEおよびF)は、相当するUV照射後であっても、良好な水溶性だけを有するポリマーフィルムを形成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01〜20質量%の少なくとも1つの一般式(I)のエチレン性不飽和化合物(モノマーA)と、
50〜99.99質量%の少なくとも1つの一般式(VII)のN−ビニルラクタム(モノマーB)と、
0〜49.99質量%の前記モノマーAおよびモノマーBとは異なる少なくとも1つのさらなるエチレン性不飽和化合物(モノマーC)と、
を共重合された形態で含み、モノマーA、B、およびCの総量が100質量%(全モノマー量)になるコポリマーであって、
このとき式(I)は、R−(C=O)−R1
[式中、
Rは、直鎖C1〜C4アルキル基、分岐状の、場合によっては置換されたC3もしくはC4アルキル基、アリール基、または基R1であり、
1は、基
【化1】

であり、
このとき基R2〜R6は、互いに同様または異なり、これらは水素、アルキル、アリール、OH、OCH3、OC25、SH、SCH3、SC25、F、Cl、Br、CN、CO2H、CO2アルキル、CO2アリール、CF3、N(アルキル)2、N(アルキル)(アリール)、N(アリール)2、N+(アルキル)3-、N+H(アルキル)2-であり、このときA-は、酸のアニオンであり、基R2〜R6のうちの1個以上3個以下は、基
【化2】

のうちの1つであり、このとき、
Xは、二価の、場合によっては置換されたアルキレン基−(CH2m−、基
【化3】

(m=1〜10であり、R’およびR’’は、互いに同様または異なり、これらは水素、アルキル、アリール、CO2H、CO2CH3、またはCO225である)、過フッ素化されたアルキレン基−(CF2m−(m=1〜10)、−(CH2n−O−(CH2p−型のオキサアルキレン基、−(CF2n−O−(CF2p−型の過フッ素化されたオキサアルキレン基(n=1〜5であり、p=1〜5である)、または少なくとも1つの−CH2−基、−CF2−基、もしくは−CH2−CH(CH3)−基を介して互いに連結された2〜20個の酸素原子を有する、場合によっては過フッ素化されたポリオキサアルキレン基、または−(CH2a−O−CO−O(CH2b−型、−(CH2a−O−CO−NH−(CH2b−型、−(CH2a−NH−CO−O−(CH2b−型、−(CH2a−CO−(CH2b−型、もしくは−(CH2a−O−CO−(CH2b−型のアルキレン基(a=1〜10であり、b=1〜10である)、場合によってはo−位、m−位、および/またはp−位でアルキル、OH、OCH3、OC25、SH、SCH3、SC25、Cl、F、N(アルキル)2、もしくはN(CH3)C65で置換されたフェニレン基、あるいは5〜10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、または6〜12個の炭素原子を有する(ビス)メチレンシクロアルキレン基であり、
Yは、水素、アルキル、またはアリールであり、
Zは、OまたはNYであるか、
あるいは、Rがアリール基である場合、基R2またはR6のうちの1つは、o−位でアリール基RをR1と結合する硫黄原子であってもよい]であり、
式(VII)は、
【化4】

[式中、
PおよびQは、互いに独立して、水素および/またはアルキルであり、
dは、整数2〜8である]である、コポリマー。
【請求項2】
モノマーA0.1〜5質量%と、
モノマーB95〜99.9質量%と、
のみを含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
モノマーBとして、N−ビニルピロリドンおよび/またはN−ビニルカプロラクタムを含む、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
モノマーAとして、
Rは、フェニルであり、
2、R3、R5、およびR6は、水素であり、
4は、式(II)の基であり、このとき、
Xは、(CH24であり、
Yは、水素であり、
Zは、Oである化合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項5】
モノマーAとして、
Rは、フェニルであり、
2、R3、R5、およびR6は、水素であり、
4は、式(IV)の基であり、このとき、
Yは、水素であり、
Zは、Oである化合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項6】
モノマーAとして、
Rは、p−クロロフェニルであり、
2、R3、R5、およびR6は、水素であり、
4は、式(V)の基であり、このとき、
Xは、(CH22であり、
Yは、水素であり、
Zは、Oである化合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のコポリマーを製造するための方法であって、前記モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCをラジカル重合することを特徴とする、方法。
【請求項8】
モノマーAおよびB、さらに適切な場合にはCの全量を溶媒中に導入し、重合条件下でラジカル重合開始剤を計量供給することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
種子のコーティング材料または処理剤として、医薬の結合剤またはコーティング材料として、化粧品調製物におけるフィルム形成剤または増粘剤として、接着剤またはスティック接着剤中の接着成分として、紙、ガラス繊維、または医療用カテーテルのためのコーティング材料として、塗料およびワニスの製造における結合剤として、あるいはポリマー膜の孔形成および恒久親水化のための、請求項1〜6のいずれかに記載のコポリマーの使用。
【請求項10】
基板をコーティングおよび/または変性する方法であって、コポリマー溶液を基板上または基板中に導入し、その後、大気圧下または減圧下で溶媒を除去し、この場合に、前記コポリマーがこの手順の間にフィルム形成し、その後得られたコポリマーフィルムにUV光を照射することを特徴とする、方法。

【公表番号】特表2012−511599(P2012−511599A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540021(P2011−540021)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066188
【国際公開番号】WO2010/066613
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】